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所有 | 今野大力 | あらゆる所有の王国に呪いあれ
万民平等なる母体の胎児たりし時
卿等に所有の観念の兆せしや否や
我古代より現代に至る
社会の変遷による人々の苦悩は
個人があやまれる自由の曲訳により
所有の観念のあやまれる故なりと断ずるなり
自由とは何ぞや
あらゆる個人の所有を許さざる万民平等の時
神人等が私慾の一点も加えられざる処
これあるのみ
我ここに按ずるに
所有の生みなせる処の
社会の空中に燦然たる
電波線前面に
大玻璃板を設らえ
これを中断せずんばあるべからず云々
我拙なき咏嘆を東京の詩人凉木優輝兄におくる―― | 54522_57406.html | NDC 911 | null | 新字新仮名 |
コレラ | 原民喜 | コレラが流行り出した。コレラはもう四五町先までやって来た。胃腸の弱い彼はすっかり神経を鋭らせた。買はないと云ふのに魚屋は毎日勝手口からやって来て、お宅の井戸は、と賞めながら勝手に水を飲む。用事もない奴等が出入りする度に彼は冷々した。到頭、我慢がならないので、
コレラ流行につき無用の者出入りすべからず
と一筆貼り出した。
すると翌朝、巡査と医者がやって来た。「御宅に病人があるさうですが......」と二人は彼がまだ寝てゐるところへどかどか侵入して来た。「患者と云ふのはあなたですな。」と医者は彼を一目で判断した。
「いや、僕は胃腸が悪いことは事実ですが、まだコレラには罹ってゐませんよ。」と彼は拙く弁解した。
「それでは一つ規... | 48448_50102.html | NDC 913 | null | 新字旧仮名 |
源氏物語 | 紫式部 | 死ぬる日を罪むくいなど言ふきはの涙
に似ざる火のしづくおつ (晶子)
右衛門督の病気は快方に向くことなしに春が来た。父の大臣と母夫人の悲しむのを見ては、死を願うことは重罪にあたることであると一方では思いながらも、自分は決して惜しい身でもない、子供の時から持っていた人に違った自尊心も、ある一つ二つの場合に得た失望感からゆがめられて以来は厭世的な思想になって、出家を志していたにもかかわらず、親たちの歎きを顧みると、この絆が遁世の実を上げさすまいと考えられて、自己を紛らしながら俗世界にいるうちに、ついに生きがたいほどの物思いを同時に二つまで重ねてする身になったことは、だれを恨むべくもない自己のあやまちである、神も仏も冥助を垂れ... | 5051_14567.html | NDC 913 | 「源氏物語」 | 新字新仮名 |
崩れる鬼影 | 海野十三 | 月光下の箱根山
それは大変月のいい夜のことでした。
七月の声は聞いても、此所は山深い箱根のことです。夜に入ると鎗の穂先のように冷い風が、どこからともなく流れてきます。
「兄さん。今夜のようだと、夏みたいな気がしないですネ」
「ウン」兄は真黒い山の上に昇った月から眼を離そうともせず返事をしました。
兄はなにか考えごとを始めているように見えました。兄の癖です。兄は理学士なのですが、学校の先生にも成らず、毎日洋書を読んだり、切抜きをしたり、さもないときは、籐椅子に凭れ頭の後に腕を組んでは、ぼんやり考えごとをしていました。なんでも末は地球上に一度も現れたことの無い名探偵になるのだということです。探偵名を帆村荘六といいます。... | 3379_20506.html | NDC K913 | null | 新字新仮名 |
雨 | 森川義信 | ### 1
どこかに妹がきてゐる
tom・tomとゴムまりをついてゐる
ぼくの心のゴムまりを
妹はtom・tomとだまつてついてゐる
### 2
もうとどかない花の日がぬれてゐる
思ふことがみんな童話になつてはくづれてゆく
ふるいオルゴオルのふるい折返しからの歌よ
こはれた心のひびきよ ふるさとの声よ 雨の音よ | 54345_64943.html | NDC 911 | null | 新字旧仮名 |
青い顏 | 三島霜川 | "古谷俊男は、椽側に据ゑてある長椅子に長くなツて、兩の腕で頭を抱へな(...TRUNCATED) | 197_22598.html | NDC 913 | null | 旧字旧仮名 |
眼鏡 | 織田作之助 | "三年生になった途端に、道子は近視になった。\n\n「明日から、眼鏡を掛(...TRUNCATED) | 47831_36049.html | NDC 913 | null | 新字新仮名 |
嘘 | 渡辺温 | "雪降りで退屈で古風な晩であった。\n\n 井深君の邸に落ち合った友達が五(...TRUNCATED) | 883_28332.html | NDC 913 | 初出、「新青年」1927年3月。 | 新字新仮名 |
畜犬談 | 太宰治 | "私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰いつかれるであ(...TRUNCATED) | 246_34649.html | NDC 913 | 「畜犬談」 | 新字新仮名 |
皇海山紀行 | 木暮理太郎 | "降りがちな天候は、十一月に入ってもからりと晴れた日は続かなかった。(...TRUNCATED) | 49580_38158.html | NDC 291 786 | null | 新字新仮名 |
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