text
stringlengths
0
257
 言うなり座ってしまった。今後徐々に距離を測ってみるかなぁ。
 見張りの人と偵察の人が、しばし言い争って。
 見張りの人が立ち上がった。戦士様、えーと、マルコ様よりちょっと年下かな? 175cmくらいで体つきも程良く筋肉が付いている。服の胸の辺りはきつきつでズボンの太もももパンパンだ。
 この人の素顔は初めて見た気がする。肌の色がかなり黒い。僕たちも日焼けしているけど、それとは異質の黒さ。髪の毛はかなり縮れていて細かく編んでいる。まるですだれが垂れているみたいで、その髪が肩まで垂れている。
 にこりと微笑むと
「俺はパストル。みんなには見張りの人って呼ばれてる。戦士団の盾をしているよ。びっくりしたかい?」
 僕は何とも言えず、ギクシャクと首を横に振った。
「そうかい、ありがとよ。まぁこんな肌の色なんで小さい頃から色々有ったのさ。だから極力鎧を脱がないようにしてるんだ。まぁよろしくな」
 戦士様が後を継いで
「パストルの様な肌の人間は、王都では見かけるが、コミエ村ではパストルだけだな。海を渡った南の大陸はこういう人種ばかりらしい」
 と仰った。そういえば、この村には人ばかりでドワーフもエルフもいない。鋳物屋のゴンザロさんも人だし。
 最期に偵察の人。この人は余り見たことが無い。猟師の人達と一緒に行動しているのを見たことが有るくらい。ほとんど村の外にいると聞いた。大変だよね。
 背は165cmくらい。ちょっと高め。体型は戦う人には見えないくらいの細身に見える。だらしない着こなしだけど、服自体は凄く綺麗にしているのが分かるし、動きを阻害しないようになっている。幾つかの場所には何か仕込んでそうだ。長い金髪は頭の後ろで縛って背中に垂らしている。無精ひげも生えているけど、見苦しい感じはしない。多分、これ、手入れしてるんじゃ無いかな?
「あんまりじろじろ見るなよ。恥ずかしいじゃねえか。あー、おいらはテオだ。普段は村の外で色々やったり、街にお使いに行くのが仕事。どういう事情かは知らんけど、セリオとマルコが決めたんなら歓迎するぜ」
 見張りの人が席に着くと、僕に視線が集まった。これだけの大人に注目されるってだけでも結構なプレッシャー。おそるおそる立ち上がる。
「ドミンゴの子、サウルです。8月生まれの5歳です。先日名付けの儀で名乗りを許されるようになりました。……まだ何もできない子供ですが、よろしくお願いします」
 僕が席に着くと同時に神官様がみんなに向かって
「サウルは、ドミンゴが税を払いきれないということで人別帳から外れたんだ。そこを私が引き取った形になる。今後対応を決めようと思っているけど、神殿付の孤児か、神官見習いか、戦士団見習い、うちの養子、まぁ色々先入観無しに決めようと思っているんでよろしくね」
 戦士様は、呆れた様子。見張りの人、偵察の人は互いに顔を見合わせた。奥様は納得している顔。
「明日以降は、サウルの能力を見ていくから、皆都合を付けておいて」
 神官様が付け足す。僕もびっくりだ。ギフトがあるとは言え、5歳の子供に何をさせるつもりなのだろう? 偵察の人も同じようで、口を開く。
「なぁセリオ、こいつまだ5歳なんだろ? 何かできるとは思えないんだけど」
「大丈夫きっとびっくりするよ」
「セリオがそう言うなら良いけどよ……」
 渋々と言った様子。その後は雑談になった。
 神官様のお子様が王都にいらっしゃるのは初めて聞いた。お二人とも男の方で、一人は冒険者、もう一人は城に勤めていると。
 名付けの儀に来るはずだったお客様がようやくやってくることになったとか。
 ここ数年、収穫が多くて助かっていること。それに伴って、もう少し人を増やして街にしてはどうか打診されていること。人口200人を超え、自衛能力ができあがったら街なのだそうだ。この国には城壁付きの都市は王都を含め3つしかない。
 ただ、街にするなら神官が一人ではまずいとかで、神官を増やさないといけないのだが、それが嫌で神官様は街にしたくないらしい。戦士様も、馴染みの無い兵を増やすのが嫌なようだ。
 元々、神官様も戦士様達も一緒にコミエ村にやってきたとかで、仲間意識が強いのだろうね。
 たまに相づちを求められるので適当に答えていく。5才なんですけど。
 なんだかんだと話しているうちに結構な時間になってたみたい。僕のグラスにはハーブティーが入ってたんだけど、大体無くなってた。
 神官様が、さて、そろそろ締めようか、と仰った。
「で、皆、サウルのことどう思った?」
 と聞くと、見張りの人が
「気が利く子だと思いました」
偵察の人は
「5才ってのは嘘でしょう? おいらは15才のエルフだと思いますがね」
 とニヤニヤ笑い。戦士様は
「如才ない、ですね。これくらいの子供はもっと落ち着きが無い物ですが、大した物です」
 妙に褒められて、むずむずしたよ。神官様は満足げに
「なるほどなるほど。さて、サウル。今日は戦士団の長屋に部屋を用意しているんだ。しばらくはそこに泊まっておくれ」
 ということで解散になって、僕は荷物を持って部屋に向かった。一人じゃ無くて、戦士様が先導して下さったんだけどね。暗い外廊下では、戦士様が指先に四大術の灯りを灯してくれたので楽に歩けたよ。戦士様は術も使えるのですね、と感心すると、使えるのはこれくらいだ、と謙遜されちゃった。
 木造の長屋は5つばかり部屋が有った。場所も余裕があるし、多分増築できると思う。通された部屋は一番端っこ。中は4m四方、かな。子供一人で寝るには広い部屋だと思う。
 大きな寝床に大きな窓が一つ。窓枠には例の虫の目が嵌まってる。タンスが一つ。服を掛ける台が一つ。書き物机に椅子一つ。僕の家より。……僕の前の家より良い感じ……。
 トイレは共同。体を拭くときには奥様がお湯を用意して下さるのだそうだ。お湯で体を拭くなんて、凄い贅沢。さすがだなぁと思った。普通はそういうことは下男がすることなので、ここが特別らしい。
 一通り注意を言うと、戦士様は部屋に灯りを灯す。1時間ほどは光っているそうだ。そして戦士様が部屋を去ると、僕は部屋で一人になった。
 いつもならこういうタイミングでロジャーおじさんに声をかけるんだけど、なんとなくそんな気分にならなかった。
 布に包んだ荷物を取り出して、ゆっくりだらだらとタンスにしまう。
 なんだか良く分からない気分だったので、さっさと寝ることにした。明日は早いらしい。
----
戦士様の体重がkmだったので修正しました。
【タイトル】
010 試し1
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2017-06-18 22:38:43(+09:00)
【公開日時】
2017-06-18 22:38:43(+09:00)
【更新日時】
2017-06-18 22:38:43(+09:00)
【文字数】
3,347文字