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【本文(97行)】 |
夜中に一度起きてトイレに行ったんだけど、結構怖かった。暗いし。穴が見えないし。前の家は、夜はおまるだったから僕にも楽だったんだけど、神殿は、子供用便座も無いし、落ちたらどうしようかと思ってドキドキしたよ。 |
朝起きて、ロジャーおじさんにその事を話したら、すっごく笑われてなんか腹が立った。 |
今日は5月11日、薄曇りで気温は9度。起床したのは5時くらい。既に日は昇っていたみたい。寒いので服を重ね着。暖かい寝床が恋しい。 |
水瓶から柄杓で水をすくい大きめの器に入れる。簡単に顔を洗うと冷たさで目が覚める。手で適当に水を払って口をゆすぐ。井戸の水とちょっと味が違うのかな? 聞いてみよう。 |
外に出て僕の仕事を聞くことにする。大きな中庭を戦士様達が走っていた。話しかけづらかったので、台所へ。奥様が大きな水瓶に何か術を掛けていらっしゃった。終わったところで話しかけてみる。 |
「おはようございます。今日からよろしくお願いします!」 |
挨拶はこちらから先に元気良く。そんな声が聞こえた気がした。 |
「あぁ、ちゃんと起きれたのかい? えらいね」 |
「何かお手伝いすることはありますか?」 |
「そうさね。まずは井戸から水を汲んで貰おうか。ちょっとついておいで」 |
奥様の手近にあった桶を僕が手に取り、ついていく。 |
庭の直ぐ分かるところに井戸があった。共同井戸とは別らしい。 |
「神殿はね、いざという時の砦でもあるからさ、井戸は別なんだよ。もう一つ井戸があるけど、それはまた今度教えようか。じゃぁ、台所までその桶で10回くらいかね。頑張るんだよ」 |
「はい!」 |
前の家より多いなぁ、大変だなぁと思いながら井戸に張られた綱を引っ張るんだけど。距離が近いから前より楽。だけど、神殿の中だから前みたいにこっそり泡倉に入れてずるができない。3回くらいは良かったけど、全部終わる頃には息が上がっちゃった。 |
水汲みが終わると、料理の手伝い。神殿は大人の男性が多いから、量が多くて大変なんだって。僕も一生懸命手伝った。 |
お水のことをちょっと聞いてみた。 |
「あぁ、あたしも分からないんだけどね。井戸の違いかねぇ」 |
と、あっさりしたものだった。 |
6時過ぎに礼拝堂(名付けの儀をしたところ)に集合してお祈り。ぽつぽつと村の人達も参加してる。僕が神官様と一緒に居るのを見て、微妙な顔をする人も居た。ちょっと辛い。 |
そして例によって女神様からの強い視線。多分勘違いじゃ無いと思うので、後で神官様に相談しようと思う。 |
神官様がその後も色々されている中、他の皆は朝食の準備。僕も頑張ったけど、勝手が分からず右往左往。ちょっと邪魔だったかも知れないなぁ。反省。 |
朝食を摂りながら、神官様が |
「朝食の片付けが終わったら、今日の予定を説明するよ」 |
と仰った。しかし、相変わらず綺麗な髪をしていらっしゃる。ひげも綺麗に剃ってるなぁ。どんな刃物を使っているんだろう。専用の刃物なんだろうか? |
まぁそれはさておき、昨日の話の続きなんだろう。僕の色んな力を見る、「試し」という事みたいだね。そして僕の処遇が決まる、と。 |
……捨てられなきゃ良いんだけど。 |
急に食事が味気なくなったよ。なんかお腹いっぱいになっちゃったけど、何とか割り当ては食べてみた。 |
お片付けして、もう一度皆が席に着くと神官様がお話をはじめられた。 |
「皆、サウルはちょっと曰く付きでね。先日、本鑑定したときに、その古代文字を読むことができたんだ。私は凄く驚いたよ。私が古代語を読めるようになったのは、13の時で、それでも天才だ、秀才だと結構持ち上がられたものだよ。ちょっと悔しかったね。折角なので、他にも何か無いか見て見ようと思う。まずは読み書きと計算、次に四大術と神術、その後は武器戦闘と探索術、闘気法をやってみようと思う。まあ見ての通りの子供だから、試しというよりは、初歩の指導になると思うけど。担当が終わったら、次に送って。まぁ食事の度に進捗を話し合おうか」 |
戦士様が、戦士団を代表するように、しかめっ面で |
「こんな痩せた子供が武器戦闘や探索術、ましてや闘気法というのは、ちょっと無理があるのでは?」 |
「まぁそうかもしれないね。その時は、最初の指導をちょっと長めにとってもらえるかい?」 |
「んーーんむ。分かりました」 |
「あー、後は探索術なんだけど、さすがに山というのは駄目だろうから、近場でどうにかして。では読み書きに計算、行ってみようか」 |
「我々はどうしましょう?」 |
「良かったら見ていって」 |
戦士様達が口々に了承の返事をする。奥様が本を数冊と蝋板を僕の目の前に持ってきてくださった。奥さんが口を開く。 |
「まずはこの本を読んでみな」 |
「はい」 |
本を開くと、簡単な絵本。多分、買うと高いんだろうな。手書きで、色が付いてる。書いてる文字は簡易文字。2種類の表音文字と数字。どちらも、《《見たことが有る字にそっくり》》。なので、普通に読むことが出来た。 |
次は、農業の暦。天候や雨の量について、作物の病気について書かれている。問題なく読めた。皆さん感心した顔。 |
次は、分厚くて大きな本。革の装丁がされていて、すごい。偵察の人が、「本気かよ」とつぶやいて戦士様に叱られていた。 |
破れたら嫌だなと思いながらページをめくろうとすると、奥様が、「ここを読んでみな」と開けてくれた。 |
そこの内容は、四大術におけるエーテルの循環法について。魂倉と霊的センターの関連付けについて書かれていた。文字はところどころ古代文字が混じっている。古代文字も《《見たことが有る》》。《《熟語》》も問題ない。 |
数ページを読み終えると、奥様が内容について質問してくる。初見なので、自信が無いところも有る。霊的センターの相互作用なんかは分からないし、その《《象徴もあやふや》》だ。 |
質問を終えると奥様は肩をすくめながら |
「テオ、あたしもあんたの意見に賛成だ。この子はエルフだと思うよ。ただし15歳じゃ無い。20歳だね」 |
と言って大笑いしてた。偵察の人も「そいつぁ良いや」と大笑い。他の方もびっくりされてるようだった。神官様が |
「サウル、君の読んだ最後の本は王都の高等教育か、四大術士の教本で使う内容だよ。所々、古代文字が混じっているよね。古代文字は三千種類以上合って、その組み合わせで読みや意味が変わる難物だ。普通はこの本に載っている簡単なものでも、マリの言うとおり20歳というところだね。さて、これなら字を書くのは問題ないかな? 次は計算をしてみようか」 |
僕が蝋板を手にすると、神官様が計算問題を出してくださった。まずは一桁の加減乗除。繰り上げが入る問題が出て、大きな桁の計算も入ってきた。暗算というわけにも行かないので、筆算をすると、神官様も奥様も戦士様も興味深そう。見張りの人、偵察の人は困惑。 |
蝋板が埋まると、奥様が手をかざして綺麗にならして下さった。 |
小数の計算、面積の計算。円の面積では、定数は3.14だった。なんで僕、こんなのできちゃうんだろう。前世の影響なんだろうけど。なんか怖いなぁ。 |
最期に一次関数。これは口頭じゃ無くて、問題文を神官様が蝋板に示された。変数の表記の仕方に戸惑ったけど、問題自体は《《簡単だった》》。 |
問題を解き終わると、偵察の人は居眠りしていて、見張りの人はあくびをかみ殺していた。戦士様と奥様はびっくりした顔をして、神官様は呆れた顔をした。 |
なんだか申し訳ないなぁ。僕の能力じゃ無いと思うんだ。だって、《《目覚める前》》は簡易文字は読めなかったし、古代文字なんて知らなかったんだよね。数も5つまでしか数えられなかったし、小数なんて知らなかった。おかしいんだよね。もうなんだかだんだん慣れてきた気がするけど。 |
「字も読めて、計算もできる。小数も円の面積もできるなんて、できすぎだよ、びっくりだよ! 関数は大学だしね。これは、この段階で王都の役人を務められそうだ。学者の助手でも大丈夫だろう」 |
「でもセリオ、こんな小さな子をそんな所に放り込めないよ」 |
「分かってる、マリ。冗談だよ。マリは本当に優しいね」 |
「う、うるさい」 |
「はっはっは。さーてマルコの顔が怖いから次に行ってみよう。四大術だからマリの部屋だね。私とマリで見るから、皆はそれぞれの仕事をしていて」 |
というわけで、戦士様達は食堂から出て、 |
「さて、私たちも移動しようか」 |
と、神官様が仰って、僕たちは奥様の部屋へ移動した。 |
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