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 その後、職人さんや生き残った警備の人の治療を行ったんだ。彼ら全員がお腹を下しててたのが、襲われて余り抵抗できなかった理由とのこと。
 どう考えても陰謀だよね。
 ちなみに昨日の晩食事当番だった職人グループは、何故か戦闘の最初に殺されたそう。不思議だね。
「天耳天目……、普通に腐った物に、下剤が込められてますね」
 吐瀉物などを確認して、治療。面倒な病気などは無いみたい。しかし、寄生虫なんかもある程度排除されたから、子供達は却って調子良くなるかも知れないね。
 ……。まぁ僕も子供ですけどね。6才です。時々忘れるけど。
 お腹の調子が良くなっても、失われた体力は戻らないよね。なので、一端ここで夜を明かすことになったんだ。だってもう15時過ぎてるし。夏とは言え、この距離を頑張っても門が閉まるまでには間に合わないよ。
 とはいえ。食料が無い。水は僕出せるけど。食料買ってくるしか無いかな。
 僕とハンナがアレハンドロまで飛ばして、買って戻ってくれば大丈夫じゃないかな。と移動しようとすると、アラン様に止められた。
 僕とハンナが会った変なナンパ師に覚えがあるらしくて。
 その状況なら戻らない方が良いだろうと。
 食料については、周辺の村を回れば何とかならないか? とのことなんだけど……。
『セニオ、彼らを僕の泡倉に入れる。いつもの屋敷前を整備してくれ。後、食料を分けて欲しい』
『何故でございます? 彼らはただの人間では? 彼らの苦境は彼ら自身の物。私が分ける理由には無いかと』
 カチンときた。
『……セニオ。いや、セニオリブス。僕、前々から思ってたんだけどね。君は何の管理人?』
『おや、お忘れですか? 私はこの泡倉を管理し保全するのが最大の役目の管理人でございます』
『そしてその泡倉は、僕の、だ。僕が僕のために与えられた物だ。今までは遠慮してくたけど、もう止める。僕の大事な人とその関わりを持った人のために。だから命令(オーダー)だセニオリブス。泡倉のオーナーであるサウル・コミエが命じる。僕の命令を全て確実にこなせ。分かった?』
『……了解致しました。サウル様の命令、しかと』
 あーもー腹立った! 酷いよセニオ。もう遠慮せずにバンバン使っちゃうから。ちょっと怖いけど。
 いつもだと、ここでロジャーの突っ込みが入るところだけど、今は無い。
 彼は、ちょっとお疲れなんだ。しばらく静かだろう。3日か3ヶ月か、分からないけど……。それだけ主人に抵抗するのは大変なんだ、って言ってた。
 ……? となるとセニオも大変なのかな? 何故そこまでして意地を張ってたのかな? そのうち聞いてみよう。
 1時間後、準備を終えたセニオから連絡があったので、アラン様やみんなに話をした。
 例の泡倉に皆を迎え入れると言う話。以前から知ってた人はともかく、職人さんや護衛の人なんかは、僕の頭がおかしくなったと言わんばかりの目で見てくる。
 そりゃそうだよね。普通財布一つ分の大きさの泡倉が500km四方あって、中には古代文明時に滅んだとされたハイエルフが世話をしてくれるとか。まぁ確かに頭がおかしい。
 ただ、僕が本気を見せるために三級の契約術を用意し始める、アラン様もセレッサさんも仕方が無いと言う顔を見せると、皆、動揺し始めた。
 なんだかんだで更に1時間。やっと泡倉に入ったときには夕方。実は泡倉の光に馬がおびえて入れるのが大変だった。ハイエルフの中で一番馬の扱いに優れた者達を寄越して貰ってなんとかしたけどね。
 屋敷に入れる事は出来ないけど、その門前で安全を保証され、食料もこの世界の中では抜群に美味い肉と魚とパンと米。香辛料もたっぷりあって皆大喜びだったよ。
 夜のテントでは、蒸し暑かったので僕が冷たい風の術を作って皆を楽にした。アラン様にも手伝って貰おうと思ったけど、風と水の応用が上手く行かず駄目だった。残念。
 明日お昼頃にアレハンドロにたどり着いて、そこからどうなるかなぁ。
【タイトル】
055 夜闇に死人が起き上がる話
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2018-12-02 18:16:14(+09:00)
【公開日時】
2018-12-02 18:16:14(+09:00)
【更新日時】
2018-12-02 18:16:14(+09:00)
【文字数】
1,007文字
【本文(35行)】
 泡倉で寝るのは初めてだなぁ。
 昔はよく中央山の中腹でキャンプを張ったもんだが。あの山2万メートルもあるから、山頂というわけにも行かなかったんだ。
 と、自分の意識に気がついた私は身を起こした。
 見慣れない少年の体。見慣れない粗末な天幕。
 ハンナが何故か同じテントにいてびっくりする。キラキラと光る目は、私が誰か気がついているようだ。
「コタロ?」
「あぁ、私だよ。しかし私が出てくるとなると、幾つかの条件が有ったはずだが。どれだ?」「私めへの命令。泡倉への10名以上の招待。ご自身の初の大ダメージでございます。コータロー様。いえ、名も無き大神よ」
「セニオか。その名は止めてくれ。私は飽くまでアドバイザーでしかない。信仰を集めることも無いから大神どころか神ですら無い」
「だからこその此度の転生でありましょう?」
「私の出生は地球だし、色々と特殊だから、まともに下で転生できるか疑問だったが。上手く行って何よりだ。
 しかし、なんだかこの彼も大変なようだね。サウル君、だったか?」
「うん。サウル頑張ってる。でも不安。自分が誰かいつも考えてる。コタロ、何とかしてあげて欲しい。」
「あー、アイディンティティなぁ」
 幾ら私の知識や、あの頃のネットのアーカイブに、神界での研鑽した内容の一部があるとは言え、それは力でしか無いからなぁ。
「もうちょっと積極的に何か道筋を示してあげるべきなのだろうね。セニオ頼めるかい?」
「はっ。ではそのように。浩太郎様の教えに寄りますと、『デレ』ですな。よろしい。最高のデレを提供致しましょう。」
「そういえばロジャーはどうしたんだ? あのうるさい奴がいないのは変だな」
「そう。そしてあのやかましい下品な男は、昨日サウル様が陥った激情を醒ますために干渉致しまして。ダメージを癒すために休眠中でございます」
「無茶するなー、大丈夫か?」
「おそらくは大丈夫かと。幾らか激励と共に差し入れを致しましたので」
「それ、激励の方がダメージで掛かったりしないだろうな?」
「さぁ?」
 私からは彼に干渉できないし、彼も私に干渉できない。
 私は一度死んだ身で、この体に宿っている魂はサウル君のものだ。私はたまたまくっついてる寄生虫みたいなもの。サウル君が死なないようにある程度の干渉は出来るが、それまでだ。
 私がこうして意識を取り戻すことはあと何度有るか。出来れば無い方が良いのだけど。
 幾つか、最初に想定されてなかった事を相談すると私は眠りに就いた。