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アラン様の目が殺気を帯びはじめたところで僕は割り込んだ。ここで手を出して本当の犯罪者になってしまっては困るからね。
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「アラン様、行きましょう。ここで押し問答しても無駄ですよ。今はどうしようもありませんし、一端出直しましょう」
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「お、昨日のガキじゃねぇか。出直しても無駄さ。あ、そうだ。昨日の姉ちゃんを寄越してくれたら、お前だけは中に入れてやっても良いぞ」
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「いえ、結構です。僕たちは行きずりに警護を請け負っただけですので、普通に冒険者として出入り出来ますからね」
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僕がそう言うと、門番も頷いた。さすがに冒険者組合までは抱き込んでないみたいだね。ちょっとほっとしたよ。
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「じゃぁ、僕はもうしばらくこの人達と一緒に行きます。おかしな事をしないか見ておいた方が良いでしょう?」
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と提案するとビダルがニヤニヤとして
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「そういう事なら構わねぇさ。戻って来たら報告しろよ?」
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「ええ」
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「おい、クソガキ! おかしな事ってどういう事だ!」
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「さぁ? とりあえず、後ろもつっかえてますし、動きましょう」
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不機嫌なままのアラン様達を僕が引き連れる形になったんだ。行く方向は東。西に向かえばコミエ村だから、反対方向。
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1時間ほど進んで、門からつけてきている人が居ない事を確認する。ロジャーはまだ動けないみたいなので、そこはハンナに頼んだ。こちらをずっと進めば他の町に着く。しかしそれにはまた時間が掛かる。そして僕はそこまで行くつもりはなかった。
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「おい、クソガキ、どうすんだ。こっちはコミエ村と反対だぞ」
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「ええ、ちょっと考えがありまして」
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周辺の道にも人が居ない事を確認すると、僕たちは再び泡倉に入った。
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すると早速アラン様が寄ってきた。
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「なるほど考えたな」
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「何をです?」
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「とぼけるなよ。このお化け泡倉に俺たちを入れて置いて、お前だけでコミエ村に向かうって寸法だろ?」
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「違いますよ」
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「じゃぁどうするんだ」
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「コミエ村の方に向かうのは確かですけど、コミエ村には入りません。多分見張り役がいると思うんです。だからそこを通り過ぎて海まで出ようと思います。海辺に僕の部下が見つけた良い場所があるんですよ。そこに村を作ったらどうかと思って」
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「村、か。といっても一緒に来てるのは術理具なんかの職人だけだぞ。大工はいねぇんだ。そこはどうす……、あぁ、エルフに頼るのか?」
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「えぇ、まぁそうしようと思います」
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「お前の力があれば、魔物が入ってこない壁くらいは作れるか。しかしそれでも中心に神殿が必要だな。神殿がない村も有るには有るが、病気や怪我があったとき周りが助けてくれるからだ。自警団も必要だし、村を作るのは中々難しいんじゃねぇか?」
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「神殿には僕が仮に入りますよ。一応神殿の預かり子ですし、神術も使えます。自警団についてはアラン様、誰かいませんか?」
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「んーー、宛てが無いわけじゃ無いが、王都に戻ってみないと何とも言えんな」
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「形が付くまでは、泡倉に住んでもらうようにしましょう。僕も大して詳しく考えてるわけじゃ有りませんし、皆で話しあえばもうちょっと良い考えが浮かぶかも知れません」
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そうしてるとハンナが
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「……皆待ってるよ」
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と告げにきた。
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その後、僕のたたき台を元に皆と話し合いをしたんだ。
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【タイトル】
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058 出発準備
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【公開状態】
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公開済
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【作成日時】
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2019-05-11 17:34:43(+09:00)
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【公開日時】
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2019-05-12 07:00:07(+09:00)
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【更新日時】
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2019-05-12 07:00:07(+09:00)
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【文字数】
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3,080文字
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【本文(122行)】
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村を作るという案は、僕が発案だったけど、アラン様もセニオも賛成してくれた。お陰で職人さん達も説得に応じてくれたみたい。
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何にしても今更王都に戻るのは無理だし、僕が作った倍力の術理具や草刈りの術理具などは役に立つと認めてくれた。
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物資の補給については、泡倉からも出すけど、僕がアレハンドロや他の土地から買ってくることで何とかなりそうだ、と分かった。
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家や壁が出来るまでは泡倉のテントを借りることが出来るようになったし。
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しかしまぁ職人さん達、すごく楽しそうだった。僕の術理具を売ることでコミエ村の危機が去り、ひるがえってさっきの奴らにやり返せるんだから。
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「さて」
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「行こう、サウル」
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職人さん達の乗ってきた3台の馬車と職人さん達は、泡倉でお留守番。
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僕とハンナで村の候補地に向かう。ロジャーが道案内してくれると助かるんだけど……。制約とやらを踏み越えたダメージはまだ大きいらしく、僕の声には応えてくれない。
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仕方ないので、僕とハンナで向かってみる。
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予定地はコミエ村から数十キロ西。海辺の場所。川沿いだけど高台にあって安全な場所、と聞いてる。
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これは、以前ロジャーがコミエ村周辺を偵察してきたときに聞いた話なんだ。だから周辺に盗賊が隠れているなんて事も無いだろうし、他の村も無いと思う。大体、コミエ村がアレハンドロから一番西の村のはずだしね。
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でも、今でも時々幻魔大戦時にはぐれてしまった隠れ里が見つかることも有るそうだから油断為らないけど。多分大丈夫。
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森の中にホバリングの爆音が響く。
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アレハンドロから目標の地点は100キロ以上離れてる。けど、ホバリングで行けば夕方には着くはず。ホバリングの弱点は木より高いところを飛べないところ。でも、ホバリングは道の代わりに川の上を走ることも出来る。音が大きいからアレハンドロの近くでは倍力の術理具を使って走るとして。そこから先は海辺まで一直線。
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ついでにちょっとコミエ村にも寄っていこうと思うんだ。
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まさか、隊商が5日も掛かるコミエ村まで半日もしないうちに行けるとは思わないだろうしね。状況だけでも報告しなきゃ。
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そうそう、それと。
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『フラム様フラム様』
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『やっと思い出したか』
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フラム様の不機嫌そうな声が頭に響いた。ちょっと怖い。
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『実は、この辺りに隠れ里を作る事になりました』
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頭の中に地図を思い浮かべ、ピンを刺す。
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