text
stringlengths
0
257
「ひょっとして、僕?」
 皆が頷いた。アラン様もロベルタさんも親方3人も頷いてる。
「そんなの聞いてないですよ」
「そりゃそうだ! クソガキには黙って決めたからよ! ギャハハ!」
 とアラン様は嬉しそう。でも
「ちょっと待って、僕、養い子だし、人をまとめる仕事なんてしたことないですよ」
「養い子になるときの借金なら俺が払っといた」
「えーーー! 金貨数枚分(数十万クレ)は有ったはずですよ。安い術理具なら買えちゃうじゃないですか!」
「ギャハハ! そのびっくりした顔が見たかったからよ」
「いたずらにしちゃやりすぎですよ。ほんとはどうしたんです?」
「そりゃよ、養い子のままだとお前は神殿の庇護を得られるが、同時に色々横やりを入れられることもあるはずなわけよ。今後お前がすげー成果をあげたときに神殿がまるごと奪いに来る可能性だってある。そう考えて、俺とセリオで決めたのさ」
「しかし、お金は……」
「ま、先行投資というか、命を助けて貰った礼みてーなもんだ。あんときお前とハンナが来なかったら俺たちは今頃こうしてないぜ。気にすんな」
 みんなも同じ意見みたいだね。となると
「分かりました。ではそれは受け入れます。アラン様、養い子からの開放ありがとうございました。先行投資が無駄だったと言わせないようにします。
 それで、あの、村長に、というのは? 正直言って僕じゃなくても著名な学者であるアラン様や神官のロベルタさんでも良いでしょうし、親方方のまとめ役であるカンデラリオさんでも良いはずです。多少術が得意とは言え、まだ6才の僕が村長というのは……」
 周囲で「え? 6才? 12、3だとばかり」という声があがる。
「年より大きく見えるのは、前世の影響なんです。すごく背が伸びるのが早いんですよ」
「大人びて見えるのも前世の影響。ハンナはこう見えて4才。若い」
 とハンナがフォローしてくれた。ちょっと笑いが起きる。前世の影響で普通と違ったことが起きるというのは、割と起きることなので、皆受け入れやすいみたい。
 カンデラリオ親方がこっちを見て、しみじみと言った。
「俺たちを救ってくれたこと、泡倉に入れてくれたこと、ここまで連れてきてくれたこと。
 手伝いを付けてくれたこと。しかもそれが電設のハイエルフと来たもんだ。おまけに村を立てるための素材まで提供してくれる。どれを取っても生中な恩じゃないぜ。だから俺たちはあんたを村長にするって事に決めたんだ。
 何、難しいことを一人でさせるってわけじゃないさ。あんたをもり立てる為に俺たちだって相談に乗るさ。間違ってると思ったら意見もする。だからサウルさんよ、村長になってくれ」
「そうだぜ、俺たちの気持ち受けてくれ。それによ。貴族だって生まれたばかりの赤子が当主になることだってあるんだ。6才のクソガキが村長になっちゃいかんって事はねえだろ。それによ、ここまでのお前の采配、悪くねぇとおもったしな」
 と、アラン様。村長になってもクソガキ呼ばわりは変らないのですね……。いやまぁいいですけど。
「ふう、分かりました。こんな小さな集落ですし、とりあえず僕が村長になります。でもむらが大きくなって僕が長ではまずいと言うことになったら誰かに代わって貰いますからね。それでも良いですか?」
 皆が拍手をし、僕は立ち上がって礼をした。これで僕が村長ということになった。養い子だった僕が、村長かぁ。思いもしない展開だな。
「村長さんよ。村の名前はどうする?」
「そうですね。ただの隠れ里という訳にもいかないでしょうしねぇ。でもちょっと思い付かないので、皆で2、3日考えましょうか。
 まぁそれはともかく、料理が冷めないうちに食べましょう!」
【タイトル】
066 土木工事
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2019-05-27 08:49:54(+09:00)
【公開日時】
2019-05-27 08:49:54(+09:00)
【更新日時】
2019-05-27 08:49:54(+09:00)
【文字数】
3,411文字
【本文(64行)】
 その夜は結構遅くまで起きていたので、翌朝起きたときには既に日が昇ろうとしていた。周囲の草むらから虫の声。河原の方からは蛙の鳴き声。ちゃんと確認して無かったけど、湿地が有るのかも知れない。
 起きて、昨日の宴会の残り物で朝食を済ませる。
 さて、どうしよう。
 コミエ村やアレハンドロの皆さんにどのタイミングで知らせるか。
 僕とハンナのホバリングなら、一日のうちに往復できる。今から出発してお昼に戻ることも可能だと思う。ただ、ちょっと早すぎて怖いけど。こないだの戦闘に突入するときに出した150kmくらいのスピードなら1時間もしないうちにアレハンドロに着く。あれは怖かったのでやりたくないなぁ。もし障害物にぶつかったら死んじゃうと思う。
 僕はしばらく考えてたけど、どうしたら良いか分からない。こういう時には大人に頼ろう。
 丁度アラン様とロベルタさんが話をしているところを見かけたので、話しかけてみる。
「今の状況を早めに知らせた方が良いかなぁと思うんですけど、どうしましょう?」
「ん? コミエ村まで2日くらいの距離だろ? アレハンドロまで行くとしたら10日は見た方がいいだろうし。
 っと、待てよ。お前ここまでどうやって来た? アレハンドロを追い出されてからここに来るまで2日だったな。コミエ村にはその日のうちについてたし。あ、あれか。あの時の戦いに飛び込んできたときのあのクソでかい音を立てた術か?!」
「はい。ホバリングという遺失術をコウタロウライブラリから発掘しました。馬や鳥より早く地面を走ることが出来ます」
「ちょっとやって見ろ」
 ということになり、その場でホバリングを披露することに。最高速度が時速100kmを超えること、出したことは無いが200kmも可能という話になると、アラン様は食い付いた。
「よし、その術すぐに教えろ、いや、後でもう少し詳しく見せろ。習うのはなんか抵抗がある」
「あの、マサース教授。今はその話でなく、いつコミエ村やアレハンドロに行くか、と言う話ですよ」
 とロベルタさんが話を引き戻してくれる。
「あ、あぁ、後で必ず見せろよ。まぁともかく、そんな便利な術があるなら急いだ話じゃないな。とりあえず、お前、下水だけでも整えてしまえ。そしたらその上に建物を建てるようにするから。そしたらお前がしばらくいなくてもどーにかなるだろ」
「分かりました。急いで下水を整えますね。後、スライムを入れるための池と術理具を準備します」
「お、スライムのための術理具ってのはなんだ? どんなコツだったんだ?」
「スライムは改良された際に、水だけじゃなくて風のエーテルも必要になったそうなんです。なので、スライムを育てる場所には、風を含ませるために|曝《ばっ》|気《き》という処理が必要なんだと聞きました」
「具体的にはどうするんだ」
「簡単に言うと、水に空気を含ませれば良いとか。で、今回の場合だと、水底に小さい穴を沢山空けたチューブを用意して、そこから空気をぶくぶく吹き出させます」
「そんなんで大丈夫なのか?」
「まぁ実際にやってる部下達がいますので大丈夫だと思います」
「分かった。じゃぁちょっとホバリングを見せてくれ」
 と言うことで簡単にホバリングのやり方をアラン様に見せる。初期の起動から浮上、それから背後のチューブから空気を吹き出すところまで。