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 と返事をし、魂倉のロジャーに指示を出す。魂倉が活性化し、金色のエーテルが吹き出さない程度の出力を確保する。
 今回はとりあえずの柵だから土を固めた物で行こう。
 中心から見て外側から土をすくい取り、ロベルタさんが歩いた場所に土を固めて作った柵を出す。高さは2m。柵の目は細やかで僕の握りこぶしを通さない。地面の下にも2m近く埋めている。土は僕の力の及ぶ限り固めて変質させたから普通に叩いたくらいじゃ壊れない。多分牛がぶつかっても大丈夫。これに土地神のアヴァターであるロベルタさんが加護を加えたら相当頑丈な物になるに違いない。
 だって、土地神って元々魔物から人間を守護するために特化した神様だから。
 ただ、さすがに頑丈すぎる柵を作ったお陰でロベルタさんから遅れがち。職人さん達はすごいすごいと大喜びだけど、アラン様は苦い顔だ。
「あんまり調子に乗って倒れるなよ!」
 と注意されちゃった。でも多分大丈夫。僕も目覚めた頃からすれば結構成長したからね。コミエ村の石舞台を作ったときに比べたら。
 ゆっくり歩いて行って30分ほどで高い柵に囲まれた集落予定地ができあがる。柵の外側は少し浅い堀が出来た。掘りとしては余り役に立たないかも知れないね。これはまた考えよう。
 職人さんの荷馬車やテント、大工道具を出すために入り口を作り、皆さんに取りに行ってもらう。
 もちろん泡倉の部下達には連絡済みなので、スムーズに受け渡しはできた。
 荷馬車付の馬たちは早速そこらの草を食む。職人さん達は今日の休憩所を作るために動き始めた。部下達もそれを助けるけど、職人さん達が主になるように念話で言いつける。
 僕はちょっと気になることがあったのでハンナとアラン様、セレッサさんを伴って集落予定地を見て回ることにした。
【タイトル】
064 古代文明の遺産
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2019-05-22 08:07:28(+09:00)
【公開日時】
2019-05-22 08:07:28(+09:00)
【更新日時】
2019-05-22 08:07:28(+09:00)
【文字数】
3,140文字
【本文(102行)】
 気になる物は柵を作った後の堀にある。そのためには柵を乗り越えなきゃいけない。だってまだ柵に門を付けてないから。
 ホバリングを起動して柵を乗り越えようと思ったとき、アラン様に呼び止められた。近くにはセレッサさんもいる。
「何か有ったのか?」
「実はさっき柵を作ったときに気になる物があって、確認しようかと」
「そっか、じゃぁ俺も一緒に行こう」
 アラン様はキャンプ地設置を手伝わないのかな? と言おうとして思いだした。今アラン様は片手なんだった。
 となると僕がホバリングして捕まってもらうというのも難しい。
 それなら柵の一部を一回壊して作成しなおそう。
「分かりました、ではここを一回壊して」
 鉄のように堅くなってる柵だけど、僕自身が壊す分には簡単。何せ作った本人だし、こんなこともあろうかと一定範囲毎にキーワードを設定してる。キーワードといっても呪文を唱える物では無くて、特定のイメージを流し込む形にしている。だから、キーワードというよりはキーイメージという方が正しいかも。もし誰かが壊そうとしても簡単にはいかない。僕のエーテルを真似た上で、キーイメージを流し込む必要がある。
 キーイメージを流し込まれた柵の一部が、ドサリと音を立てて土の山に戻った。
「お、中々便利に作ってるじゃねぇか。キーイメージとお前自身のエーテル反応を利用してるのか」
「そうです。しかし、見ただけで分かるんですか?」
 セキュリティを強化した方が良いんだろうか? 簡単に見破られちゃうのは想定外だなぁと思ってると、
「一応教授なんだぜ? 普通の術者じゃ分析出来ない事も俺様に掛かっちゃ朝飯前だ」
「なるほどー、ではキーイメージは分かりますか?」
「そいつは無理だな。出来ねぇわけじゃないんだが、お前がキーイメージを流し込むときにお前や柵に触れているとかしねぇと」
「じゃぁ滅多なことではやられないのですね」
「ま、そういうこったな」
 ちょっと一安心
「ところで、この術はどこで学んだんだ?」
「前世の記憶と魂倉の管理人からです」
「ほんの少し会わない間にこんなのまで使えるようになるとはなぁ。大学の学生達がガックリきそうだな。くくく。まぁ最初に泡倉で術を使ったときも中々の物だったから、これくらい当たり前かもなぁ」
 後は、魂倉の部屋で練習するときにはほとんど時間が経たないからね。魂倉の中でしっかり勉強して練習しても、外ではほんの数分という感じだし。
「では行きましょうか。こっちです」
 柵を出て、堀の中に入り、皆を案内する。ほんのちょっとだけ歩くと、目指すポイントについた。
 一見すると、周囲と何も変らないように見える堀だけど、この辺りで違和感があったんだよね。地のエーテルを練り、違和感があったところの土を掘る。掘ると言っても自分の手では無くて四大術でなんだけど。
 避けた土を地上に放り出して行くと
「ん? なんだこりゃ、土の下から……。あれは……」
 何やら円筒形の物が出てきた。直径は1.5m程。長さは5mほど。材質は……なんだろう? 木では無さそうだけど、土を固めて焼いた物? レンガじゃないね。
「土管だな。お、あそこから中を覗けそうだ。うまくすりゃ良いもんがあるかもしれん」
「いいもの? どういうことです? それにこれは誰が埋めたんでしょう?」
「ん? あぁ」
 隙間の方に行こうとしてたアラン様。こっちを向いてこう言った。
「グレートリセットだ」
「グレートリセット……?」
「あぁ。幻魔大戦の最後、今は名を失った母神が起こしてしまった『|永遠の一日《エターナルワン》』。その永遠に繰り返す一日を英雄王ディーノが破壊した。その際に起きた現象だ」
「……」
「古代文明があった当時、地にはどこまでも都市が続き、人の居ない地はなかったという。しかしグレートリセットによりほとんど土地は原野に還った。それがグレートリセットだ。だけどな。不思議な事に、ときどき遺跡として当時の物が出てくることがある。この土管もそれだ。
 俺の専門は一応古代文明の研究となってるんだが。こういう土管は都市の地下を走り汚物なんかを処理施設に流す為のものだったらしい。たまに中に当時の落とし物が残ってることがある」
「汚物、ですか?」
「あぁ。あ、大丈夫だ。もうグレートリセットから400年以上経ってるんだ。中の汚物はただの砂になってる」
「世界中にこんな遺物が残ってる可能性があるんですか?」