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「あぁ、そうだな。色んな所を掘ったりすると出てくることがある。
 そうそう。アレハンドロなんかのでかい街や王都なんかの壁は遺物だぜ。王都の壁はとても頑丈で、今の技術で作るとしたらとんでもない金が掛かる。
 もちろん、この柵みたいにサクサク作るわけにもいかねぇ。あの壁一つ見ても古代文明ってのがどうして幻魔に対抗出来なかったのか分からん。もし今幻魔の大攻勢があったらあっという間に俺たちは滅んじまうだろうな」
「この土管もその遺物の一つ、ですか」
「そういうこった」
 グレートリセットか。確かに古代文明は地を覆うくらいに栄えていたと聞いたことがある。でも今の僕たちの回りは森ばかりだ。森を通っても古代文明の跡地は見たことが無い。そういう現象が起きたのだったら納得いく。
「おい、クソガキ、面白そうなもんがあったぞ、ちょっと見て見ろ」
 ぼーっと考えてた僕にアラン様が声をかける。いつの間にか隙間から奥をのぞき込んでた。そこを代わって貰い中を見る。中にはアラン様がつくった灯りがぷかぷか浮かんでた。土管の底にみえるのは、キラキラと輝くボール状のものが10個ほど?
「ガラスのボール?」
「いや、あれはスライムだな」
「スライム?」
「そうだ。古代文明では改良したスライムを使ってし尿処理をしてた。まぁ要は出た物をトイレから土管で処理施設に流し、そこをスライムが食って肥料に変えてたんだ。そのスライムの卵だな」
「卵、ですか?」
「そうだ。環境が厳しくなると、スライムはあーして卵になって耐える。また環境が良くなると卵からかえるんだ。王都でも一部で使われてるんだが。上手く世話をしないと死んじまうデリケートな奴でもある。コツがあるらしいが……」
 ふーん。ちょっとずるいけど聞いてみようかな。
『ロジャー、セニオ、心当たりはある?』
『ちっと分かりませんな』
『泡倉の屋敷でもスライムは使っております。担当の者に聞いておきましょう』
『ありがとう。助かる』
 やっぱり泡倉の方では使ってるんだ。僕の前世は古代文明の人なんだし、そうじゃないかと思ってたんだけど。しかし、コータローさんって何者だったんだろう。あんな大きな泡倉を持ってたんなら、きっと有名な人だったに違いないと思うんだけど。
「アラン様、泡倉の方で心当たりがありそうなので調べて貰います。なので、ちょっとこのスライムを使った村づくりを考えてみませんか?」
「おう。面白そうだな、やってみな。俺はこの手をどうにか出来ねぇか色々試したい」
「えぇ、なるべくお手を煩わせないように頑張ってみます」
「頑張れよ。あぁ、後、また泡倉の物をもらえるか? 鉱石なんか有ると良いんだが。もちろん金は払う」
「分かりました、後で泡倉の部下に聞いておきます」
 土管の前後をより深く掘ってみる。土を避けていくと、中に入れるようになった。僕の身長だとまだ立って入れる。
「これが……」
 土管の中に入り、手元に灯りを作る。ふわふわと鬼火がきらめく。灯りの術理具で使ってる冷たく青白い炎だ。
 そうして土管の底を見ると、スライムの卵があった。
 手に取る。表面はガラスのようだけど、それほど硬くない。ぐっと握るとむにゅっと形を変えた。下水処理のための改良されたスライムなんだから、水につければ戻るんじゃないかな。とりあえず、集めて泡倉に入る。僕のための倉庫というか小屋があるので底に放り込んでおいた。
【タイトル】
065 縄張りと村長
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2019-05-26 10:06:43(+09:00)
【公開日時】
2019-05-26 10:06:43(+09:00)
【更新日時】
2019-05-26 10:06:43(+09:00)
【文字数】
3,341文字
【本文(84行)】
 真夏の夕方、皆汗だくで作業をしてる。いつも涼しげな顔をしているハイエルフ達も玉の汗をかいている。
 海の方に日が沈む頃になると、ひとまずテントと術理具作成の作業をするだけの小屋が出来た。小屋と言ってもほんとうに屋根と壁があるだけの粗末な物で、いずれ作り直すことは間違いないとおもう。
 当初神殿を優先に、という事だったんだけど、作業小屋がないと神殿に相応しい材料も確保出来ないということでそうなったみたい。
 僕は、皆の意向を聞きながら集落の縄張りをしていたんだ。中心に神殿と井戸と広場。それを囲うようにそれぞれの家が建つ。開拓村では普通にあるレイアウト。
 でも、下水を作るとなると中々そうはいかない。僕は皆を説得して四角形にブロックを作ってみた。
 最初皆は不満そうだったけど、僕がスライムを確保して、世話の仕方も分かるということになると安心したみたい。
 集落の家が建つ場所に沿って下水管を設置する。今の僕の腕では、直接土の中に土管は作れないので、一回掘ってそこに土管を埋め込むことになる。
 簡単な縄張りをする。縄張りと言っても実際に縄を張るのではなくて、細くて浅い溝を掘る。間違えて足を引っかけても安全なように。
 土管ができ次第、溝に沿って埋め込む予定。
 土管はスライムが入ってた土管と同じサイズにする予定だ。今の人数では持て余すサイズだと思うけど、中に入るかも知れないし、この集落の人数が大幅に増えるかも知れないし。拡張しやすくしておきたいんだよね。
 処理場は集落の柵の外に作る事になった。集落から出た土管と汚水は、スライムが待ち構える処理場にたどり着く。処理された水は川に帰る。
 処理する中で生まれる汚泥は、肥料として優秀らしいので、集落で使ったり、コミエ村に持っていったりしよう。そう思って部下のイェニに話して見ると、ハイエルフ達も使ってるらしい。結構効果が高いようなので楽しみ。
 それから残った時間で簡単なお風呂を作った。
 屋根もないただ壁で囲ったスペースに浴槽と洗い場。中にはちょっと温めのお湯を沢山入れて置いた。コミエ村もそうだけど、湿度が高いから、ちゃんと体を拭かないと臭くて敵わない。やっぱりなるべく清潔にしたいよね。疫病なんか出たら嫌だし。
 そうそう、不潔にしていると病気になりやすいというのは本当らしい。以前コミエ村の奥様からそう聞いた。王都でも薬師として有名だった奥様の話は中々広まらなかったらしいけど、疫病で半壊した村を助けるときに、清潔を心がけたらある程度二次被害を止めることが出来たんだって。
 浴場から出た汚水は壁の外に溜めて、僕が焼却処分する。下水が出来るまでの間に合わせだけど、まぁ大丈夫でしょ。
 井戸は後回し。一応僕が水を必要な分だけ作り出せるから。聞いてみると一人二人分ならともかく、十数人分の水と二つの風呂を用意するというのは、術者でも中々難しいことなんだって。これでもっと腕が上がったらとんでもない事になるかも知れないとアラン様は言ってた。僕の魂倉はかなりの高性能、ということなんだろうね。
 まぁ守護者がいる魂倉なんてアラン様も聞いたことが無いというし、コウタロウさんの|贈り物《ギフト》だと思って割り切るしかないんだろうなぁ。
 とにかく井戸は明日作成の予定。台所も明日。
 今日はとりあえず無事を祝っての宴会になったみたい。
 縄張りで広場とすることにした場所に皆集まり、たき火を囲む。
 肉や魚、パン。これらは商隊の荷台に合った物や泡倉から持ちだした物。泡倉のセニオには、当分手厚く手助けするように命じている。
 ここが順調に回るようになるまで、食料が足りないという事は無い、はず。ただ、同時に稼げるようになったらバスカヴィル商会から買い付けて持ってくるようにしないといけないだろうね。
 そんな事をぼんやり考えていたら、親方のまとめ役になったカンデラリオさんが開会の挨拶をするところだった。
「なんだか良く分からんうちにあれよあれよと動いて、なんかこんなことになっちまったがよ、なんだか楽しそうじゃねぇか。貴族の横やりも、他の職人の嫌がらせもない自由な物造りが出来るなんてよ」
 周囲の人々の顔は真剣だけど悲観している風には見えない。強いな、そう思った。
「俺たち全員でここに良い居場所を作ろう。なーに村長やアランの旦那にハイエルフの皆さんも助けてくれる。きっとどうにかなるな! さ、俺の方からはここまでだ。村長に一言挨拶もらおうじゃねぇか」
 ん? 村長って誰? と思ったら皆僕の方を見てる。僕の後ろにはハンナが居るけど、ハンナも僕を見つめてる。