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JCRRAG_002101
物理
結果および考察: 応力測定に先立ち、まず試験片の回折測定をおこなった。IT500試験片のX線回折測定結果を示す。ZrO₂に対応したピークだけでなく、γ-Niに対応したピークが確認された。つまり、75keVのX線を用いてトップコート層を透過してボンドコートの回折を測定可能であることを確認した。一方、IT500を含むいずれの試験片においても、TGOの主成分であるα-Al₂O₃[4]のピークは確認できなかった。これは、TGO層の厚さがトップコートの10分の1程度しかないことに加え、NiやZrに比較してAlの原子散乱因子が小さいことに起因していると考えられる。次に、VHTの試験片の室温及び高温(1100°Σ)での応力測定を実施したときのNi(311)回折の測定結果を示す。高温においては熱振動の影響により回折ピーク強度が低下しているが、ピーク自体の測定は可能であった。回折ピークをガウス関数でのフィッティングすることで回折代表角を求め、2θ-sin²ψ線図を作成した。さらにこのデータからボンドコートの内部応力の値を計算した。ボンドコートの内部応力は、いずれの試験片においても室温付近では引張応力を示した。トップコートの線膨張係数はαTC≈11×10-⁶/°Σ、ボンドコートの線膨張係数はαBC≈15×10-⁶/°Σであり、トップコートに比してボンドコートの線膨張率が大きいため、熱処理後室温に冷却される過程で引張応力が生じたと考えられる。高温になるに従い、ボンドコートの引張応力は減少し、圧縮側に推移していくが、これも線膨張率の違いによるものと考えられる。一方、700°Σ以上では圧縮応力がほとんど増加しなくなるが、これはボンドコートの軟化によるものと推定される。一般的に、ボンドコート材のNiCoCrAlYは500°Σ~850°Σの間で急速に軟化し、弾性変形をほとんど生じなくなるとされており[5]、このために700°Σ以上の環境では応力が増加しなくなったと考えられる。熱処理によるボンドコート応力の差異を比較してみると、高温酸化試験を行っていないVHTと高温熱処理をおこなったCT75、IT75、IT500の試験片では挙動が異なり、特に室温での引張応力がVHTのみ著しく大きい。TGOの線膨張係数はαTGO≈8×10-⁶/°Σであり[1]、トップコートの線膨張係数より小さいことから、熱膨張率の差のみからはこの残留応力の低下の説明がつかない。したがって、残留応力の低下は高温での熱処理によってトップコートもしくはTGO内に欠陥やき裂が発生し、それによってボンドコートの応力が解放された効果によるものと考えられる。実際IT500の試験片には前述のとおりボンドコートとTGO、あるいはTGO内部に多数のき裂が確認されている。また大気酸化処理中の高温、長時間保持によるトップコートの焼結や、TGO生成も応力を緩和する方向に働くと考えられる。これらの挙動は、残留応力の低下に影響を与えている可能性がある。 今後の課題: 今回の実験では、高温熱処理をおこなった3つの試験片、つまりIT75、IT500、CT75のボンドコートの応力変化挙動はほぼ同じ傾向を示した。つまり、高温酸化時のサイクル数や、酸化時間の違いによるボンドコート残留応力の変化は確認できなかった。一方、これまでの研究により、静的な高温酸化試験と熱サイクル試験でTBCの剥離寿命が大きく異なることが指摘されている[6]。酸化物成長挙動の違いや、冷却速度の違いが残留応力を大きくしていることが疑われたが、今回の試験結果では残留応力の観点からは差異が見いだせなかった。TBCの剥離には残留応力だけでなく、界面粗さの変化や界面き裂の成長等様々な要因が複合していると考えられ、これらの影響を理解することが今後の課題である。また今回の測定ではボンドコートの応力のみを評価したが、TBCの損傷挙動を評価するためにはトップコート、TGOの応力評価手法についても検討する必要がある。そして今回の手法による応力測定では1点の測定に1時間以上かかってしまうが、より高速に応力評価することができるようになれば、加熱、冷却中の動的な応力変化の過程を評価することが可能になる。高エネルギーに対応した2次元検出機等を活用することで、このような測定が実現できる可能性がある。
TGOの主成分は何ですか。
TGOの主成分はα-Al₂O₃です。
JCRRAG_002102
物理
以下は、篠原邦夫氏による論文「粉末素材調製プロセス開発のための微粒子工学」より抜粋したものである。 貯槽や移動層反応装置を用いて粉粒体の流動・接触・反応操作を均一に,高効率で行うために,まず容器内における粉粒体の塊状流動モデル解析を行い,閉塞限界径が層高や頂角と共に増大することや,応力伝播による脈動流量の推算ができた。さらに,ボアスコープを用いて層内の粒子流下速度・滞留時間分布測定が可能になった。また,混合粒子の場合には,飾層モデルによる機構解析に基づき,容器からの排出時には粗粒子間隙を通過する小粒子の速度差により偏析を起こし成分組成の経時変化として偏析模様が得られ,容器充填時には堆積物傾斜表面で流動性の劣る成分が流下の際遅れるために供給点付近に集まり偏析模様を呈することが分かった。移動層の場合は,両者の組み合わせとして,速度分布による対流効果および飾層透過による拡散的効果により,容器内下部と壁面付近で偏析模様が薄まることが分かった。
ボアスコープを用いて、何の測定が可能になりましたか。
層内の粒子流下速度・滞留時間分布の測定が可能になりました。
JCRRAG_002103
物理
固体粒子の流れを数値解析する手法として,離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が広く用いられている。DEMは粒子間の接触力をバネとダッシュポットでモデル化して与えるものであるが,流体力や付着力などの付加的な力についても,モデル化して与えさえすれば,容易にそれらを考慮した数値解析手法に拡張できる。また,CFD(Computational Fluid Dynamics)の手法とカップリングさせることで,流動層などの粒子系混相流の数値解析にも拡張されている。 流動層では,造粒やコーティングのプロセスにおいて,液を添加することがある。また,最近になって,数mm程度の粗大粒子からなる流動層に少量の液体を加えることで,粒子運動が著しく促進される現象が報告されている。これは未知の物理現象という点で興味深いだけでなく,流動層装置稼働時の省動力化などの実用的な課題とも直結する。 流動層内の粒子流動は高濃度かつ高速の現象であるため,そのメカニズムの詳細を実験で調べることには限界がある。したがって,そのメカニズムの解明には,DEM-CFDシミュレーションが有力なツールとなり得る。DEMに液架橋の影響を考慮したモデルはすでに考案されているが,液を粒子層内に均一分散させ,定常状態を扱ったものが多く,液の輸送をモデル化したものは報告例が少ない。 本研究では,液添加時の粒子流動メカニズム解明のための数値解析手法の確立を目指し,DEMに液輸送モデルを組み込むことを試みる。
流動層内の粒子流動のメカニズムの詳細を実験で調べることに限界があるのはなぜですか。
流動層内の粒子流動は高濃度かつ高速の現象なので、実験でそのメカニズムの詳細を調査するのには限界があります。
JCRRAG_002104
物理
結果および考察: TbM₄,₅吸収端で測定したXASの生データを示す。バックグラウンド処理は行っていない。測定時間はスペクトル1本あたり15分である。X線エネルギーに対してゆるやかに上昇するAu基板からのバックグラウンドの上に、Tbの信号が重畳しているスペクトルが得られた。バックグラウンドに対するTbXAS信号の強度比は、M₅吸収端では14%、M₄吸収端では6%である。この信号とバックグラウンド比は、(a)に示す面直磁場(θ=0°)と(b)のほぼ面内磁場(θ=80°)で大きな差は見られなかった。左右円偏光に対するXASの差で与えられるXMCD信号は、面内磁場の方がやや大きい。信号に対するバックグラウンド強度は大きいが、スペクトルの統計精度自体は高く、ノイズの少ない良好なスペクトルが得られている。 バックグラウンドのスペクトルを二次関数で近似して差し引いた結果を示す。XASスペクトルのM₅端でのピーク強度を1に規格化してプロットしている。十分に解析に耐えうる明瞭なXASおよびXMCDスペクトルが得られた。XMCD信号のノイズレベルは、およそ0.005と評価できる。これは、XASのピーク強度の0.5%の精度であり、このデータにsum rule解析を行うことでTbイオンの磁気モーメントの値を0.01μBの精度で決定することができる。ただし、基板からのバックグラウンドがXAS信号よりも大きいため、sum rule解析による磁気モーメントの値の絶対値は、主にバックグラウンドの引き方によって左右される。θが0°から45°、80°と磁場の角度が面内方向になるにつれてXMCDスペクトルの強度が増大しており、試料が面内の磁気異方性をもつことがわかる。 TbM₅吸収端のエネルギーにて測定したESMを示す。XMCDの結果と同様に、θ=80°で最も信号強度が大きく、試料が弱い面内磁気異方性をもつことを示している。測定に用いた最大磁場1.9TでもESM磁化曲線は飽和しておらず、試料が飽和磁化した状態での磁気モーメントの値を決定するにはより強磁場での測定が必要である。 今後の課題: 単原子層膜厚の希土類分子磁石からのXASおよびXMCDスペクトルを良好な測定精度で得ることができた。BL25SUでのTEY法による測定では、1原子層よりも薄い膜厚もしくは希土類磁性原子の密度の小さい試料での測定が可能であることがわかった。今回の結果から見積もると、実効膜厚0.02ML程度の希土類原子密度でもXMCDスペクトルによる磁気モーメント評価が行えると考えられる。ただし、その場合には相対的によりバックグラウンドが増大するため、スペクトルのバックグラウンドを適切に差し引く方法を確立することで、より精度の高い磁気モーメントの誤差評価を行う必要がある。それによって、さまざまな低濃度希土類のXMCD測定のユーザーニーズに応えていくことができる。本研究で得られた測定感度の情報は、今後の低濃度希土類試料の測定において有用な指針を与えると期待される。
XMCD信号のノイズレベルはいくつだと評価できますか。
XMCD信号のノイズレベルはおよそ0.005だと評価できます。
JCRRAG_002105
物理
フェムト秒可視光レーザーをGe₂Sb₂Te₅多結晶ナノ薄膜に照射した際に発現する格子膨張の時間変化を、SACLAの高強度、フェムト秒パルスX線によるフェムト秒パルスX線回折法を用いて、回折ピークの散乱角の時間変化から精密に測定し解析することで、Ge₂Sb₂Te₅ナノ薄膜の弾性特性の情報を得られることを明らかにした。 背景と研究目的: 我々は、SACLAから発生する高強度で、数10フェムト秒の時間幅のパルスX線を用いたフェムト秒時間分解X線回折法を開発し、DVDやBlu-ray光ディスクの記録媒体に広く利用されているカルコゲナイト系Ge-Sb-Te光励起構造相転移材料に適用することで、フェムト秒可視光レーザー照射後の0.2ピコ秒から数ピコ秒の時間領域での光励起構造相転移の前駆現象を明らかにした[1]。フェムト秒可視光レーザー照射による原子の励起状態は、時間の経過と共に、エネルギーが格子に伝わり、結晶格子の膨張が始まる。立方晶系のGe₂Sb₂Te₅薄膜の場合、結晶格子の膨張は20ピコ秒付近から顕著になり、111、220、200について、それぞれの格子膨張の時間変化を見積ることができる。バルク結晶の弾性定数を実験的に見積もるためには、結晶中を伝播する超音波の縦波及び横波の速さを測定する方法が一般的である。しかし、ナノ結晶の場合、このような方法を適用することは困難である。そこで本研究では、光によって励起された格子ひずみが結晶中を伝播する様子を、格子膨張率の時間変化で捉え、その結果を解析することで、ナノ薄膜試料における弾性特性を明らかにすることを目的とする。 実験: 測定には、Si(100)ウエハー基板(Nilaco社製)にRFマグネトロンスパッタリング装置((株)アルバック)を用いて、40nm厚さで成膜したGe₂Sb₂Te₅薄膜を用いた。成膜後の薄膜の組成は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)を用いた化学組成分析を行い、Ge₂.₀₆Sb₂.₀₆Te₅とほぼ期待通りの組成が得られていることを確認した。なお、大気暴露による酸化やレーザー照射によるアブレーションを防ぐために、Ge₂Sb₂Te₅薄膜には3nm厚さのSiO₂膜をスパッタ法により被覆した。スパッタ法により成膜した試料はアモルファスであるため、Arガス雰囲気中で170°Cに保持して結晶化させた後、測定に用いた。SACLAでの測定は、光構造相転移を励起するためのポンプ光として、波長800nm、パルス幅30fsのTi-sapphireレーザーを使用した。ポンプ光のフルーエンスは、照射によって試料の破壊やアモルファス化が起らないよう、20mJ/cm²/pulseという十分に小さいエネルギーを採用した。レーザー照射後、構造変化を捉えるためのプローブ光としては、SACLAからのパルスX線をモノクロメータで単色化した10keVのパルスX線を用いた。測定には、ポンプ光照射後、パルスX線による測定までの時間をピコ秒スケールで小刻みに変化させて構造変化を観測するポンププローブ法を用いた。試料は縦型2軸ゴニオメータを用いて、検出器にSACLAで開発した2次元検出器MPCCDを用いて対称反射法で測定した。なお、対称反射法を採用した場合、試料上でのポンプ光及びプローブ光の試料位置による到着時間の差による時間分解能が約2psである。本研究での解析対象となる格子膨張の時間周期が約20psであり、本解析には膨張係数の振動周期を用いることから、本測定での時間分解能の影響はないと考える。
実験で用いたGe₂Sb₂Te₅薄膜の厚さはどれくらいですか。
Ge₂Sb₂Te₅薄膜の厚さは40nmです。
JCRRAG_002106
物理
結果および考察: 応力測定に先立ち、まず試験片の回折測定をおこなった。IT500試験片のX線回折測定結果を示す。ZrO₂に対応したピークだけでなく、γ-Niに対応したピークが確認された。つまり、75keVのX線を用いてトップコート層を透過してボンドコートの回折を測定可能であることを確認した。一方、IT500を含むいずれの試験片においても、TGOの主成分であるα-Al₂O₃[4]のピークは確認できなかった。これは、TGO層の厚さがトップコートの10分の1程度しかないことに加え、NiやZrに比較してAlの原子散乱因子が小さいことに起因していると考えられる。次に、VHTの試験片の室温及び高温(1100°Σ)での応力測定を実施したときのNi(311)回折の測定結果を示す。高温においては熱振動の影響により回折ピーク強度が低下しているが、ピーク自体の測定は可能であった。回折ピークをガウス関数でのフィッティングすることで回折代表角を求め、2θ-sin²ψ線図を作成した。さらにこのデータからボンドコートの内部応力の値を計算した。ボンドコートの内部応力は、いずれの試験片においても室温付近では引張応力を示した。トップコートの線膨張係数はαTC≈11×10-⁶/°Σ、ボンドコートの線膨張係数はαBC≈15×10-⁶/°Σであり、トップコートに比してボンドコートの線膨張率が大きいため、熱処理後室温に冷却される過程で引張応力が生じたと考えられる。高温になるに従い、ボンドコートの引張応力は減少し、圧縮側に推移していくが、これも線膨張率の違いによるものと考えられる。一方、700°Σ以上では圧縮応力がほとんど増加しなくなるが、これはボンドコートの軟化によるものと推定される。一般的に、ボンドコート材のNiCoCrAlYは500°Σ~850°Σの間で急速に軟化し、弾性変形をほとんど生じなくなるとされており[5]、このために700°Σ以上の環境では応力が増加しなくなったと考えられる。熱処理によるボンドコート応力の差異を比較してみると、高温酸化試験を行っていないVHTと高温熱処理をおこなったCT75、IT75、IT500の試験片では挙動が異なり、特に室温での引張応力がVHTのみ著しく大きい。TGOの線膨張係数はαTGO≈8×10-⁶/°Σであり[1]、トップコートの線膨張係数より小さいことから、熱膨張率の差のみからはこの残留応力の低下の説明がつかない。したがって、残留応力の低下は高温での熱処理によってトップコートもしくはTGO内に欠陥やき裂が発生し、それによってボンドコートの応力が解放された効果によるものと考えられる。実際IT500の試験片には前述のとおりボンドコートとTGO、あるいはTGO内部に多数のき裂が確認されている。また大気酸化処理中の高温、長時間保持によるトップコートの焼結や、TGO生成も応力を緩和する方向に働くと考えられる。これらの挙動は、残留応力の低下に影響を与えている可能性がある。 今後の課題: 今回の実験では、高温熱処理をおこなった3つの試験片、つまりIT75、IT500、CT75のボンドコートの応力変化挙動はほぼ同じ傾向を示した。つまり、高温酸化時のサイクル数や、酸化時間の違いによるボンドコート残留応力の変化は確認できなかった。一方、これまでの研究により、静的な高温酸化試験と熱サイクル試験でTBCの剥離寿命が大きく異なることが指摘されている[6]。酸化物成長挙動の違いや、冷却速度の違いが残留応力を大きくしていることが疑われたが、今回の試験結果では残留応力の観点からは差異が見いだせなかった。TBCの剥離には残留応力だけでなく、界面粗さの変化や界面き裂の成長等様々な要因が複合していると考えられ、これらの影響を理解することが今後の課題である。また今回の測定ではボンドコートの応力のみを評価したが、TBCの損傷挙動を評価するためにはトップコート、TGOの応力評価手法についても検討する必要がある。そして今回の手法による応力測定では1点の測定に1時間以上かかってしまうが、より高速に応力評価することができるようになれば、加熱、冷却中の動的な応力変化の過程を評価することが可能になる。高エネルギーに対応した2次元検出機等を活用することで、このような測定が実現できる可能性がある。
TBCの剥離はどのような要因によるものだと考えられていますか。
TBCの剥離は、界面粗さの変化や界面き裂の成長などの要因によるものだと考えられています。
JCRRAG_002107
物理
フェムト秒可視光レーザーをGe₂Sb₂Te₅多結晶ナノ薄膜に照射した際に発現する格子膨張の時間変化を、SACLAの高強度、フェムト秒パルスX線によるフェムト秒パルスX線回折法を用いて、回折ピークの散乱角の時間変化から精密に測定し解析することで、Ge₂Sb₂Te₅ナノ薄膜の弾性特性の情報を得られることを明らかにした。 背景と研究目的: 我々は、SACLAから発生する高強度で、数10フェムト秒の時間幅のパルスX線を用いたフェムト秒時間分解X線回折法を開発し、DVDやBlu-ray光ディスクの記録媒体に広く利用されているカルコゲナイト系Ge-Sb-Te光励起構造相転移材料に適用することで、フェムト秒可視光レーザー照射後の0.2ピコ秒から数ピコ秒の時間領域での光励起構造相転移の前駆現象を明らかにした[1]。フェムト秒可視光レーザー照射による原子の励起状態は、時間の経過と共に、エネルギーが格子に伝わり、結晶格子の膨張が始まる。立方晶系のGe₂Sb₂Te₅薄膜の場合、結晶格子の膨張は20ピコ秒付近から顕著になり、111、220、200について、それぞれの格子膨張の時間変化を見積ることができる。バルク結晶の弾性定数を実験的に見積もるためには、結晶中を伝播する超音波の縦波及び横波の速さを測定する方法が一般的である。しかし、ナノ結晶の場合、このような方法を適用することは困難である。そこで本研究では、光によって励起された格子ひずみが結晶中を伝播する様子を、格子膨張率の時間変化で捉え、その結果を解析することで、ナノ薄膜試料における弾性特性を明らかにすることを目的とする。 実験: 測定には、Si(100)ウエハー基板(Nilaco社製)にRFマグネトロンスパッタリング装置((株)アルバック)を用いて、40nm厚さで成膜したGe₂Sb₂Te₅薄膜を用いた。成膜後の薄膜の組成は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)を用いた化学組成分析を行い、Ge₂.₀₆Sb₂.₀₆Te₅とほぼ期待通りの組成が得られていることを確認した。なお、大気暴露による酸化やレーザー照射によるアブレーションを防ぐために、Ge₂Sb₂Te₅薄膜には3nm厚さのSiO₂膜をスパッタ法により被覆した。スパッタ法により成膜した試料はアモルファスであるため、Arガス雰囲気中で170°Cに保持して結晶化させた後、測定に用いた。SACLAでの測定は、光構造相転移を励起するためのポンプ光として、波長800nm、パルス幅30fsのTi-sapphireレーザーを使用した。ポンプ光のフルーエンスは、照射によって試料の破壊やアモルファス化が起らないよう、20mJ/cm²/pulseという十分に小さいエネルギーを採用した。レーザー照射後、構造変化を捉えるためのプローブ光としては、SACLAからのパルスX線をモノクロメータで単色化した10keVのパルスX線を用いた。測定には、ポンプ光照射後、パルスX線による測定までの時間をピコ秒スケールで小刻みに変化させて構造変化を観測するポンププローブ法を用いた。試料は縦型2軸ゴニオメータを用いて、検出器にSACLAで開発した2次元検出器MPCCDを用いて対称反射法で測定した。なお、対称反射法を採用した場合、試料上でのポンプ光及びプローブ光の試料位置による到着時間の差による時間分解能が約2psである。本研究での解析対象となる格子膨張の時間周期が約20psであり、本解析には膨張係数の振動周期を用いることから、本測定での時間分解能の影響はないと考える。
ポンプ光として使用されたレーザーの波長はどれくらいの長さですか。
使用されたレーザーの波長は800nmです。
JCRRAG_002108
物理
構造性流体中の表面間力計算を行うためには,それに先立ち,その流体自体を適切に表現できなければいけない。そこで,筆者はまず大規模な界面活性剤水溶液のシミュレーションの実現を試みた。その結果,界面活性剤が集合体を形成する様子や,集合体が分裂する様子が観察された。また,筆者が水中における界面活性剤ミセルのシミュレーションを行った結果,実験で示されるようなミセル内部の流動性を表現できることが示された。このミセルの内部構造は,水分子まで含んだ通常の分子動力学法により,膨大な計算時間を費やして得られた結果とも良好に一致した。さらに,陰溶媒モデルにより,電解質によるミセルの安定化を表現できることも確認された。以上のように,本研究の手法により界面活性剤水溶液を表現できることが示された。 DLVO理論では,表面間力は固液界面に形成される電気二重層の重なりによる静電反発力と,van der Waals引力との釣り合いで表現される。このDLVO理論により,電解質水溶液中における表面間力は正確に記述することができる。そこで,塩化ナトリウム水溶液中に二つの球形粒子を導入したシミュレーションにより,表面間力の解析を行い,得られた結果をDLVO理論と比較,検証した。その結果,本手法により粒子表面間力を適切に表現できることを確認すると共に,DLVO理論では不明であった粒子・溶液界面での詳細な溶質分子分布を明らかにした。 以上のように,これまでに界面活性剤水溶液やコロイド粒子分散系へ適用可能な,大規模シミュレーション手法の開発に成功し,界面活性剤水溶液のような構造性流体中における粒子表面間力算出のための基礎を確立した。筆者は,今後,これまで開発した手法を組合せ,界面活性剤水溶液中における粒子表面間力算出という,これまでは実現できなかったシミュレーションに取り組んでいく予定である。
DLVO理論では、表面間力は何で表現されますか。
DLVO理論では、固液界面に形成される電気二重層の重なりによる静電反発力と、van der Waals引力との釣り合いで表面間力が表現されます。
JCRRAG_002109
物理
顆粒体の加圧成形プロセスにおける粉体構造の変化過程を模式的に示す。セラミックスの製造において解決すべき基本的な課題として、強度の信頼性改善やニアネットシェイププロセスの確立などが挙げられる。これらの問題解決のアプローチを粉体工学的に考えた場合、成形体段階での粉体構造制御が極めて重要になる。成形体中に微量含まれる粗大気孔や粗大粒子といった不均質構造は、焼結過程を経て破壊源になるため、成形体段階で除去する必要がある。一方、焼結体の割れや変形などに影響する因子としては、成形体中の密度分布に加えて粒子の配向性なども考慮する必要がある。これらの構造制御は、ニアネットシェイプ実現の観点からも重要である。 以上の成形体構造制御を行うためには、その評価技術の開発が必要であり、これまで浸液透光法やX線トモグラフィーなど先進的な方法が開発されている。したがって、これらの方法により観察された構造と、顆粒体、スラリー、原料粉体特性との関係を明確化することにより、焼結体の信頼性向上などを実現する液中微粒子分散特性の制御が可能になる。 ここで、筆者は、スラリー中の微粒子分散状態を変えた場合と、スラリー中の微量粗大凝集粒子サイズを変えた場合の二つを具体例として取り上げ、液中粒子分散状態が焼結体特性に及ぼす影響について考えてみる。
成形体中に微量含まれる粗大気孔や粗大粒子といった不均質構造は、なぜ成形体段階で除去される必要がありますか。
成形体中に微量含まれる粗大気孔や粗大粒子といった不均質構造は、焼結過程を経て破壊源になるため、成形体段階で除去されなければなりません。
JCRRAG_002110
物理
顆粒体の加圧成形プロセスにおける粉体構造の変化過程を模式的に示す。セラミックスの製造において解決すべき基本的な課題として、強度の信頼性改善やニアネットシェイププロセスの確立などが挙げられる。これらの問題解決のアプローチを粉体工学的に考えた場合、成形体段階での粉体構造制御が極めて重要になる。成形体中に微量含まれる粗大気孔や粗大粒子といった不均質構造は、焼結過程を経て破壊源になるため、成形体段階で除去する必要がある。一方、焼結体の割れや変形などに影響する因子としては、成形体中の密度分布に加えて粒子の配向性なども考慮する必要がある。これらの構造制御は、ニアネットシェイプ実現の観点からも重要である。 以上の成形体構造制御を行うためには、その評価技術の開発が必要であり、これまで浸液透光法やX線トモグラフィーなど先進的な方法が開発されている。したがって、これらの方法により観察された構造と、顆粒体、スラリー、原料粉体特性との関係を明確化することにより、焼結体の信頼性向上などを実現する液中微粒子分散特性の制御が可能になる。 ここで、筆者は、スラリー中の微粒子分散状態を変えた場合と、スラリー中の微量粗大凝集粒子サイズを変えた場合の二つを具体例として取り上げ、液中粒子分散状態が焼結体特性に及ぼす影響について考えてみる。
焼結体の割れや変形などに影響する因子として考慮される必要があるものはなんですか。
成形体中の密度分布や粒子の配向性などが考慮される必要があります。
JCRRAG_002111
物理
構造性流体中の表面間力計算を行うためには,それに先立ち,その流体自体を適切に表現できなければいけない。そこで,筆者はまず大規模な界面活性剤水溶液のシミュレーションの実現を試みた。その結果,界面活性剤が集合体を形成する様子や,集合体が分裂する様子が観察された。また,筆者が水中における界面活性剤ミセルのシミュレーションを行った結果,実験で示されるようなミセル内部の流動性を表現できることが示された。このミセルの内部構造は,水分子まで含んだ通常の分子動力学法により,膨大な計算時間を費やして得られた結果とも良好に一致した。さらに,陰溶媒モデルにより,電解質によるミセルの安定化を表現できることも確認された。以上のように,本研究の手法により界面活性剤水溶液を表現できることが示された。 DLVO理論では,表面間力は固液界面に形成される電気二重層の重なりによる静電反発力と,van der Waals引力との釣り合いで表現される。このDLVO理論により,電解質水溶液中における表面間力は正確に記述することができる。そこで,塩化ナトリウム水溶液中に二つの球形粒子を導入したシミュレーションにより,表面間力の解析を行い,得られた結果をDLVO理論と比較,検証した。その結果,本手法により粒子表面間力を適切に表現できることを確認すると共に,DLVO理論では不明であった粒子・溶液界面での詳細な溶質分子分布を明らかにした。 以上のように,これまでに界面活性剤水溶液やコロイド粒子分散系へ適用可能な,大規模シミュレーション手法の開発に成功し,界面活性剤水溶液のような構造性流体中における粒子表面間力算出のための基礎を確立した。筆者は,今後,これまで開発した手法を組合せ,界面活性剤水溶液中における粒子表面間力算出という,これまでは実現できなかったシミュレーションに取り組んでいく予定である。
筆者は、今後何に取り組む予定ですか。
筆者は、これまで開発した手法を組合せ、界面活性剤水溶液中における粒子表面間力算出に取り組む予定です。
JCRRAG_002112
物理
本研究では,粒子表面の濡れ特性の異なる3種類の粒子を用いて,相対湿度変化が流動化状態及び物体浮沈に与える影響について検討し,疎水性の高い粒子を用いることで,高湿度下においても粒子群の流動性が悪化することなく,密度差通りの浮沈が行なわれることが明らかとなった。これまで本研究室では,僅かな密度差の物体や形状の異なる物体など様々な物体の乾式比重分離を試み,高精度の分離に成功した。しかし,それらは低湿度下において行ったものである。従って,時期により相対湿度が大きく変化する地域で乾式比重分離を行なう場合,相対湿度を制御する装置が必要となる。実用化を考える上で分離精度だけでなくコスト面も重要視されることから,それらを必要としない疎水性粒子を用いた乾式比重分離は,設備コストを削減可能な点からも有用な技術と考えられる。今後のさらなる検討課題として,湿潤物体の分離が挙げられる。本手法を鉱石の分離に利用する場合,濡れた鉱石の流動層への投入が想定される。また,廃棄物の素材分離に利用する場合も同様に考えられる。従って,本研究で得られた情報をベースに,疎水性粒子を用いた流動層による湿潤物体の分離を今後行っていきたい。
今後のさらなる検討課題は何ですか。
今後のさらなる検討課題は湿潤物体の分離です。
JCRRAG_002113
物理
顆粒体の加圧成形プロセスにおける粉体構造の変化過程を模式的に示す。セラミックスの製造において解決すべき基本的な課題として、強度の信頼性改善やニアネットシェイププロセスの確立などが挙げられる。これらの問題解決のアプローチを粉体工学的に考えた場合、成形体段階での粉体構造制御が極めて重要になる。成形体中に微量含まれる粗大気孔や粗大粒子といった不均質構造は、焼結過程を経て破壊源になるため、成形体段階で除去する必要がある。一方、焼結体の割れや変形などに影響する因子としては、成形体中の密度分布に加えて粒子の配向性なども考慮する必要がある。これらの構造制御は、ニアネットシェイプ実現の観点からも重要である。 以上の成形体構造制御を行うためには、その評価技術の開発が必要であり、これまで浸液透光法やX線トモグラフィーなど先進的な方法が開発されている。したがって、これらの方法により観察された構造と、顆粒体、スラリー、原料粉体特性との関係を明確化することにより、焼結体の信頼性向上などを実現する液中微粒子分散特性の制御が可能になる。 ここで、筆者は、スラリー中の微粒子分散状態を変えた場合と、スラリー中の微量粗大凝集粒子サイズを変えた場合の二つを具体例として取り上げ、液中粒子分散状態が焼結体特性に及ぼす影響について考えてみる。
筆者は、液中粒子分散状態が焼結体特性に及ぼす影響について考える際、どのような場合を具体例として取り上げていますか。
筆者は、スラリー中の微粒子分散状態を変えた場合と、スラリー中の微量粗大凝集粒子サイズを変えた場合を具体例として取り上げています。
JCRRAG_002114
物理
液体Se-Te混合系は温度や組成の変化により、連続的な構造転移を示すことが古くから知られている。転移に伴い密度がメゾスコピックに不均質になることが1980年代には提唱されていたが、永らくその実験的な証拠は得られていなかった。この問題に対して我々は、SPring-8/BL04B2を利用した小角X線散乱測定により、その微小な密度ゆらぎの変化を検知することに初めて成功し、2012年の論文で発表した。ただこの実験には不備な点が一つあった。BL04B2は分光結晶が一枚ふりであるため入射光への高調波の混入を避けらないが、検出器にエネルギー分解能のないイメージングプレートを使用したため、完全な単色X線の散乱スペクトル測定ではなかった。そこで今回、Ge半導体検出器とシングルチャンネルアナライザーから成る測定システムを用いることで、散乱光をエネルギー選別した測定を行い、前回の実験結果の妥当性の検証を行った。 キーワード:液体-液体相転移、密度ゆらぎ、小角散乱 背景と研究目的: Se-Te系は全率固溶の2成分系である。液体相にあっては、温度や組成を変化させることにより、液体Seに類似の2配位的な低密度構造から、液体Teに類似の3配位的な高密度構造へと連続的に転移することが調べられている[1-3]。この転移は半導体から金属への変化も伴っている。また転移領域では、温度上昇に伴う負の熱膨張係数[4]や音速の極小[5]など、顕著な熱力学異常も観測されている。熱力学異常を含め、本系の現象を包括的に説明するモデルとして、転移領域では両相がメゾスコピックに混ざり合っているとする「不均質モデル」が1980年代には提唱されていた[6]。ただ不均質性については当時直接的な実験証拠はなく、また「熱平衡な液体が不均質になり得ていいのか?」という本質的な問いも相まって、永らく論争になっていた。この課題に対して、我々はSPring-8を用いた液体Se-Te混合系の小角X線散乱を行い、転移に伴う微小な密度ゆらぎの変化、および転移領域の中心でその強度が極大を示すことを初めて観測し、2012年に論文発表した[7]。この密度ゆらぎの変化は、組成や圧力を変えた場合も転移に連動して変化しており、密度ゆらぎの起源が連続相転移であることも立証した。ただこの実験結果は、定性的な変化としては十分な証拠であったものの、測定した散乱光には、(分光結晶が一枚であることによる)高調波散乱や、Teの蛍光成分など正味の試料からの散乱ではない成分も含まれていた。いくつかの工夫によりこれら余分な成分を見積り、バックグランドとして取り除いてはいたが、実験の不完全性が残されていた。そこで今回、Ge半導体検出器とシングルチャンネルアナライザーを用いた計測システムを用い、測定光をエネルギー選別して高調波成分やTeの蛍光成分を有意に除去することで、これまでの結論の検証を行った。
Se-Te混合系の液体状態における構造転移はどのような変化を伴いますか。
構造転移は低密度の2配位構造(Seに類似)から高密度の3配位構造(Teに類似)へ連続的に変化します。
JCRRAG_002115
物理
本研究では,微粒子凝集体1個の力学的特性を測定するためにマイクロ圧縮試験装置を製作し,ポリスチレン微粒子凝集体を対象とした圧縮試験を試みた。結果として,ポリスチレン微粒子凝集体の圧縮力-変位曲線を示すとともに,破壊強度に及ぼす凝集体サイズの影響を明らかにした。しかし,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性を定量的に議論するのに十分なデータを獲得できたとは言い難い。そこで筆者は,今後以下のような課題を課し,研究を進めて行きたいと考えている。 1) マイクロ圧縮試験装置により,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性(圧縮力-変位,ひずみ曲線,破壊強度の測定)に及ぼす調整条件(一次粒子サイズ,スラリー組成,せん断速度,凝集剤添加等)の影響を更に検討し,凝集体の調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。 2) 1)の構造と力学的特性の相関をより詳細に検討するために(実験では観察できない部分を補うために),微粒子凝集体の圧縮変形過程の数理モデル化を行う。 3) 冒頭の「 研究目的」で述べたように,測定対象を化学的機械研磨(CMP)において使用される無機微粒子(シリカやアルミナ微粒子)凝集体に拡張し,その調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。また,研究で得られた知見をCMPプロセスの最適化のための基礎データとして蓄積する。
研究で得られた知見は何のための基礎データとして蓄積されますか。
研究で得られた知見はCMPプロセスの最適化のための基礎データとして蓄積されます。
JCRRAG_002116
物理
【システム COP】 筆者らは, システムCOP=正味の放熱量/消費電力量 と定義した。 正味の放熱量とは外壁からの放熱量から地中伝熱量を差し引いたもので,外壁からの放熱量計算では,ガラス外表面の対流伝熱係数が重要な意味を持つが,通常の観測では測定されない。多くの実測例が,Takakura and Fang (2002) に整理されているが,データ間にはかなりのバラツキがあり,どれを用いるかは問題である。本研究では,平均的な値として,外表面の対流伝熱係数は,Vを外部風速(m/s)とし,7.3+3.8Vを用いた。換気熱損失に関しては,風速の関数として,内外気温差を乗じて求めた。「エコモード」1晩と「通常モード」の2晩のデータは、かなり変動し誤差も含まれて多少大きめに出ていると思われるが,今回の計算はすべて 10分間のデータに基づくもので,いわば非定常状態のCOPであることから,変動が大きいこと,また,定義から 1以下にもなりうるし,通常の機械単体のCOPの値よりも大きくなることもありうること,さらに地中伝熱量のすべてが暖房負荷軽減になるとしたが,一部は潜熱のままであることが考えられ,この項が過大評価されていると思われるが,この項を正確に測定できないことから,これ以上の修正は行わなかった。
外壁からの放熱量計算において、通常の観測では測定されないものは何ですか。
通常の観測では測定されないものは、ガラス外表面の対流伝熱係数です。
JCRRAG_002117
物理
固気流動層は,密度や粘度など液体と類似した性質を持つことが一般的に知られている。固気流動層に物体を投入すると,固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体は浮揚し,逆に密度の大きい物体は沈降するため乾式で比重分離が可能である。比重分離の方法として,比重調整した液体を用いる湿式法が存在するが,1)廃液処理が必要,2)装置からの液漏れ,3)分離後の乾燥工程が必要,4)比重調整剤のコスト高といった問題が生じるため,上述の乾式法が注目を集めている。しかし,分離媒体として粒子を用いているため,粒子群の流動化状態は空気の相対湿度の影響を大きく受け,特に高湿度下においては粒子表面への水の付着により粒子同士が凝集し,良好な流動化状態を保つことができず物体浮沈にも大きな影響を与える。従って,高湿度下においても粒子群の流動性が損なわれない粒子を用いれば,それらの問題を解決できるのではないかと考えられる。そこで筆者は,本研究で,分離媒体として用いる粒子表面の濡れ特性(親水性と疎水性)に注目し,それらの違いが相対湿度変化にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。具体的な研究内容として,分離媒体に濡れ性の異なる粒子を用い,下部から送り込む空気の相対湿度変化が流動化状態にどのような影響を与えるのかについて検討を行うため,圧力プロファイル測定と固気流動層の見掛け密度測定を行った。
筆者は本研究で何の測定を行いましたか。
筆者は圧力プロファイル測定と固気流動層の見掛け密度測定を行いました。
JCRRAG_002118
物理
結果および考察: 応力測定に先立ち、まず試験片の回折測定をおこなった。IT500試験片のX線回折測定結果を示す。ZrO₂に対応したピークだけでなく、γ-Niに対応したピークが確認された。つまり、75keVのX線を用いてトップコート層を透過してボンドコートの回折を測定可能であることを確認した。一方、IT500を含むいずれの試験片においても、TGOの主成分であるα-Al₂O₃[4]のピークは確認できなかった。これは、TGO層の厚さがトップコートの10分の1程度しかないことに加え、NiやZrに比較してAlの原子散乱因子が小さいことに起因していると考えられる。次に、VHTの試験片の室温及び高温(1100°Σ)での応力測定を実施したときのNi(311)回折の測定結果を示す。高温においては熱振動の影響により回折ピーク強度が低下しているが、ピーク自体の測定は可能であった。回折ピークをガウス関数でのフィッティングすることで回折代表角を求め、2θ-sin²ψ線図を作成した。さらにこのデータからボンドコートの内部応力の値を計算した。ボンドコートの内部応力は、いずれの試験片においても室温付近では引張応力を示した。トップコートの線膨張係数はαTC≈11×10-⁶/°Σ、ボンドコートの線膨張係数はαBC≈15×10-⁶/°Σであり、トップコートに比してボンドコートの線膨張率が大きいため、熱処理後室温に冷却される過程で引張応力が生じたと考えられる。高温になるに従い、ボンドコートの引張応力は減少し、圧縮側に推移していくが、これも線膨張率の違いによるものと考えられる。一方、700°Σ以上では圧縮応力がほとんど増加しなくなるが、これはボンドコートの軟化によるものと推定される。一般的に、ボンドコート材のNiCoCrAlYは500°Σ~850°Σの間で急速に軟化し、弾性変形をほとんど生じなくなるとされており[5]、このために700°Σ以上の環境では応力が増加しなくなったと考えられる。熱処理によるボンドコート応力の差異を比較してみると、高温酸化試験を行っていないVHTと高温熱処理をおこなったCT75、IT75、IT500の試験片では挙動が異なり、特に室温での引張応力がVHTのみ著しく大きい。TGOの線膨張係数はαTGO≈8×10-⁶/°Σであり[1]、トップコートの線膨張係数より小さいことから、熱膨張率の差のみからはこの残留応力の低下の説明がつかない。したがって、残留応力の低下は高温での熱処理によってトップコートもしくはTGO内に欠陥やき裂が発生し、それによってボンドコートの応力が解放された効果によるものと考えられる。実際IT500の試験片には前述のとおりボンドコートとTGO、あるいはTGO内部に多数のき裂が確認されている。また大気酸化処理中の高温、長時間保持によるトップコートの焼結や、TGO生成も応力を緩和する方向に働くと考えられる。これらの挙動は、残留応力の低下に影響を与えている可能性がある。 今後の課題: 今回の実験では、高温熱処理をおこなった3つの試験片、つまりIT75、IT500、CT75のボンドコートの応力変化挙動はほぼ同じ傾向を示した。つまり、高温酸化時のサイクル数や、酸化時間の違いによるボンドコート残留応力の変化は確認できなかった。一方、これまでの研究により、静的な高温酸化試験と熱サイクル試験でTBCの剥離寿命が大きく異なることが指摘されている[6]。酸化物成長挙動の違いや、冷却速度の違いが残留応力を大きくしていることが疑われたが、今回の試験結果では残留応力の観点からは差異が見いだせなかった。TBCの剥離には残留応力だけでなく、界面粗さの変化や界面き裂の成長等様々な要因が複合していると考えられ、これらの影響を理解することが今後の課題である。また今回の測定ではボンドコートの応力のみを評価したが、TBCの損傷挙動を評価するためにはトップコート、TGOの応力評価手法についても検討する必要がある。そして今回の手法による応力測定では1点の測定に1時間以上かかってしまうが、より高速に応力評価することができるようになれば、加熱、冷却中の動的な応力変化の過程を評価することが可能になる。高エネルギーに対応した2次元検出機等を活用することで、このような測定が実現できる可能性がある。
700°Σ以上でボンドコートの圧縮応力が増加しなくなる理由は何だと推定されますか。
700°Σ以上でボンドコートの圧縮応力が増加しなくなるのは、ボンドコートの軟化によるものだと推定されます。
JCRRAG_002119
物理
以下は、山本英夫・松山達 両氏による論文「粒子の帯電現象と粉体技術への応用」(『粉砕』46巻, 2002)より、コンデンサーモデルの解説部分について抜粋を行ったものである。 コンデンサーモデル 二つの物体が接触したとき,電荷の移動が生じていわゆる静電気が発生することは古くから知られている.接触による電荷の移動は金属同士の接触でも起こる.ただし,金属は導電体なので接触面分離の際に電荷が完全に緩和してしまい,「静電気」として観測されないだけなのである.金属同士の場合の接触では,表面の電子のエネルギー状態の差に起因するいわゆる接触電位差が電荷移動の駆動力となる.この点については,議論が確立していると考えてよい.実際には,電荷が移動した結果として接触電位差が発生するのであるが,等価回路的には,接触電位差Vcの電池を接続したコンデンサーの極板と見なすと考えやすい. これは一般にコンデンサーモデルと呼ばれている.
金属同士の接触で静電気が観測されないのはなぜですか。
金属は導電体であり、接触面分離の際に電荷が完全に緩和してしまうため、静電気が観測されません。
JCRRAG_002120
物理
1980年代中頃にドイツのH.Gleiterらが,低温においてNanophase Ceramicsが大きな塑性変形性を示すことを報告したのをきっかけにして,新材料としてのナノフェーズ材料の研究が盛んとなった.ナノフェーズ材料の生成過程では,焼結の際の粒界形成や粒界滑り,更にクラスターの回転などといった様々な微視的現象が複雑に関わり合ってくると考えられるため,より現実に近い数値解析を目指す立場としては,実験状況と同じ程度の大きさの微粒子を100個以上配置した大規模なシミュレーションを行なえることが望ましい.筆者を含むルイジアナ州立大学並列材料計算研究所のメンバーは,総原子数百万個のナノフェーズSi₃N₄の並列MDシミュレーションを世界に先駆けて実施し,高温高圧下でのナノフェーズSi₃N₄の焼結過程および焼結体の室温での機械的特性を解析した. 高温高圧下で,ナノフェーズ・セラミックスは非常に速く(ナノ秒程度)ネックが成長し,空孔が消滅していく.微粒子界面付近でのナノフェーズ・セラミックスの粒子拡散は微粒子内部に比べ10倍以上速く,粒界付近の原子の動きやすさと粒径の小ささが,このように速い焼結過程を特徴づけている. 更に,微粒子内部に結晶構造を保ったナノ微結晶(上記のサイズとほぼ同じ)108個の集合に1700℃の温度下,異なる外圧で加圧することにより,様々な密度の焼結体“サンプル”を作った. 得られた焼結体の弾性定数の空孔度と粒径依存性に注目すると,密度比(空孔度に逆比例),粒径のいずれに対しても弾性特性が大きく依存することがわかる.粒径が小さく微粒子の体積に対する界面相の比が大きいため,粒界挙動がバルクな性質に与える影響が大きい.微粒子間境界相とバルク結晶相,および空孔のサンプル内体積比のそれぞれの相の弾性定数を重ね合わせる模型計算(多相構造模型)とシミュレーション結果との良い一致からも,上記の説明が裏付けられる.
低温においてNanophase Ceramicsが大きな塑性変形性を示すことを報告したのは誰ですか。
H.Gleiterらが、低温においてNanophase Ceramicsが大きな塑性変形性を示すことを報告しました。
JCRRAG_002121
物理
多くの酸化物系セラミックスでは,表面・界面での原子間電荷移動の局所的変化が系の性質に有為に影響する場合が多い.例えば,ナノ微粒子系の凝集・分散機構においては,表面電荷二重層形成による微粒子間の静電反発力が主要な役割を演じるが,通常のMD法では直接この効果を表現することは難しい.このような原子間電荷移動の自由度を,ポーリングの電気陰性度平衡則に従って経験的にMDに組み入れる方法を原子電荷移動型分子動力学法(Variable-charge Molecular Dynamics, 以下VC-MDと略す)と呼ぶ.1980年代にこの方法は生体分子の安定構造を効率よく求める方法として良く使われていたが,最近になってF.H. StreitzらがAl/Al₂O₃界面のMD計算を目的とした相互作用模型に適用し,材料シミュレーションへの本格的応用が始まった. また,この方法は原子配位の変化と電荷移動の変化が複雑に絡み合う物質に適用できるので,強誘電性材料の計算にも適している.尾形(山口大)らと筆者は最近,酸化チタン(TiO₂)のVC-MD模型の構築に成功した.ルチル型のTiO₂は強い誘電率異方性を持ち,強誘電体前駆物質として知られている.我々は,2つの異なる結晶相(ルチル型とアナターゼ型)の機械的・電気的特性を表現し,かつ表面での緩和や電荷移動の変化までを,他の高精度計算と同程度の精度で表現できる電荷可変型原子間相互作用模型を構築した.そして,このモデルをナノ微粒子系の焼結過程解析に適用し,2つの異なる結晶相で表面構造と電荷二重層とが果たす複雑な役割について解析した.さらに,圧力下での緻密化過程において,微粒子の回転によって自己組織形成的に互いの結晶方位を変えようとする振る舞いも観察している.
ルチル型のTiO₂は何として知られていますか。
ルチル型のTiO₂は強誘電体前駆物質として知られています。
JCRRAG_002122
物理
既に50年以上前,KunkelがLeobを引用して「電気というものが人類に知られるようになったその一番最初の形態は摩擦電気であったのにもかかわらず,これがどのような機構で起こるのかについては,未だに良くわかっていない」と書いた. 実際,摩擦帯電に関する議論は,科学史上で最も古いエピソードの一つであるのにもかかわらず,現在もなお,そのメカニズムがはっきりと理解されているとは言えない.その一方で,乾式の静電塗装技術やレーザープリンターや静電複写機等の技術的進歩のなかで,粉体粒子の帯電制御の問題はますます重要性を高めており,その意味でこの問題は,最も古くて最も新しい課題であると言える. 粒子の帯電メカニズムは,これまで,多くの人たちによってコンデンサーモデルなるもので説明されてきた.確かに,帯電のし易さや帯電傾向は,粒子の接触面での電位差(二物体の仕事関数の差)で定性的に説明できるようであるが,接触・分離プロセスの結果として粒子が最終的に得る電荷量については説明できない.本稿では,この電荷量を説明する新しいモデル(「放電緩和モデル」)について,実験データを交えながら解説する.
粒子の帯電メカニズムは、これまで何モデルで説明されてきましたか。
粒子の帯電メカニズムは、コンデンサーモデルで説明されてきました。
JCRRAG_002123
物理
本研究では,微粒子凝集体1個の力学的特性を測定するためにマイクロ圧縮試験装置を製作し,ポリスチレン微粒子凝集体を対象とした圧縮試験を試みた。結果として,ポリスチレン微粒子凝集体の圧縮力-変位曲線を示すとともに,破壊強度に及ぼす凝集体サイズの影響を明らかにした。しかし,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性を定量的に議論するのに十分なデータを獲得できたとは言い難い。そこで筆者は,今後以下のような課題を課し,研究を進めて行きたいと考えている。 1) マイクロ圧縮試験装置により,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性(圧縮力-変位,ひずみ曲線,破壊強度の測定)に及ぼす調整条件(一次粒子サイズ,スラリー組成,せん断速度,凝集剤添加等)の影響を更に検討し,凝集体の調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。 2) 1)の構造と力学的特性の相関をより詳細に検討するために(実験では観察できない部分を補うために),微粒子凝集体の圧縮変形過程の数理モデル化を行う。 3) 冒頭の「 研究目的」で述べたように,測定対象を化学的機械研磨(CMP)において使用される無機微粒子(シリカやアルミナ微粒子)凝集体に拡張し,その調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。また,研究で得られた知見をCMPプロセスの最適化のための基礎データとして蓄積する。
圧縮試験の結果、何が明らかになりましたか。
圧縮試験の結果、ポリスチレン微粒子凝集体の圧縮力-変位曲線が得られ、凝集体サイズが破壊強度に及ぼす影響が明らかになりました。
JCRRAG_002124
物理
本研究では,粒子表面の濡れ特性の異なる3種類の粒子を用いて,相対湿度変化が流動化状態及び物体浮沈に与える影響について検討し,疎水性の高い粒子を用いることで,高湿度下においても粒子群の流動性が悪化することなく,密度差通りの浮沈が行なわれることが明らかとなった。これまで本研究室では,僅かな密度差の物体や形状の異なる物体など様々な物体の乾式比重分離を試み,高精度の分離に成功した。しかし,それらは低湿度下において行ったものである。従って,時期により相対湿度が大きく変化する地域で乾式比重分離を行なう場合,相対湿度を制御する装置が必要となる。実用化を考える上で分離精度だけでなくコスト面も重要視されることから,それらを必要としない疎水性粒子を用いた乾式比重分離は,設備コストを削減可能な点からも有用な技術と考えられる。今後のさらなる検討課題として,湿潤物体の分離が挙げられる。本手法を鉱石の分離に利用する場合,濡れた鉱石の流動層への投入が想定される。また,廃棄物の素材分離に利用する場合も同様に考えられる。従って,本研究で得られた情報をベースに,疎水性粒子を用いた流動層による湿潤物体の分離を今後行っていきたい。
疎水性粒子を用いた乾式比重分離は、どのような点で有用な技術ですか。
疎水性粒子を用いた乾式比重分離は、設備コストを削減可能な点で有用な技術です。
JCRRAG_002125
物理
本研究では,微粒子凝集体1個の力学的特性を測定するためにマイクロ圧縮試験装置を製作し,ポリスチレン微粒子凝集体を対象とした圧縮試験を試みた。結果として,ポリスチレン微粒子凝集体の圧縮力-変位曲線を示すとともに,破壊強度に及ぼす凝集体サイズの影響を明らかにした。しかし,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性を定量的に議論するのに十分なデータを獲得できたとは言い難い。そこで筆者は,今後以下のような課題を課し,研究を進めて行きたいと考えている。 1) マイクロ圧縮試験装置により,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性(圧縮力-変位,ひずみ曲線,破壊強度の測定)に及ぼす調整条件(一次粒子サイズ,スラリー組成,せん断速度,凝集剤添加等)の影響を更に検討し,凝集体の調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。 2) 1)の構造と力学的特性の相関をより詳細に検討するために(実験では観察できない部分を補うために),微粒子凝集体の圧縮変形過程の数理モデル化を行う。 3) 冒頭の「 研究目的」で述べたように,測定対象を化学的機械研磨(CMP)において使用される無機微粒子(シリカやアルミナ微粒子)凝集体に拡張し,その調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。また,研究で得られた知見をCMPプロセスの最適化のための基礎データとして蓄積する。
本研究での圧縮試験の対象は何ですか。
本研究での圧縮試験の対象はポリスチレン微粒子凝集体です。
JCRRAG_002126
物理
既に50年以上前,KunkelがLeobを引用して「電気というものが人類に知られるようになったその一番最初の形態は摩擦電気であったのにもかかわらず,これがどのような機構で起こるのかについては,未だに良くわかっていない」と書いた. 実際,摩擦帯電に関する議論は,科学史上で最も古いエピソードの一つであるのにもかかわらず,現在もなお,そのメカニズムがはっきりと理解されているとは言えない.その一方で,乾式の静電塗装技術やレーザープリンターや静電複写機等の技術的進歩のなかで,粉体粒子の帯電制御の問題はますます重要性を高めており,その意味でこの問題は,最も古くて最も新しい課題であると言える. 粒子の帯電メカニズムは,これまで,多くの人たちによってコンデンサーモデルなるもので説明されてきた.確かに,帯電のし易さや帯電傾向は,粒子の接触面での電位差(二物体の仕事関数の差)で定性的に説明できるようであるが,接触・分離プロセスの結果として粒子が最終的に得る電荷量については説明できない.本稿では,この電荷量を説明する新しいモデル(「放電緩和モデル」)について,実験データを交えながら解説する.
放電緩和モデルとは何ですか。
放電緩和モデルとは、接触・分離プロセスで粒子が最終的に得る電荷量を説明する新しいモデルのことです。
JCRRAG_002127
物理
以下は、篠原邦夫氏による論文「粉末素材調製プロセス開発のための微粒子工学」より抜粋したものである。 貯槽や移動層反応装置を用いて粉粒体の流動・接触・反応操作を均一に,高効率で行うために,まず容器内における粉粒体の塊状流動モデル解析を行い,閉塞限界径が層高や頂角と共に増大することや,応力伝播による脈動流量の推算ができた。さらに,ボアスコープを用いて層内の粒子流下速度・滞留時間分布測定が可能になった。また,混合粒子の場合には,飾層モデルによる機構解析に基づき,容器からの排出時には粗粒子間隙を通過する小粒子の速度差により偏析を起こし成分組成の経時変化として偏析模様が得られ,容器充填時には堆積物傾斜表面で流動性の劣る成分が流下の際遅れるために供給点付近に集まり偏析模様を呈することが分かった。移動層の場合は,両者の組み合わせとして,速度分布による対流効果および飾層透過による拡散的効果により,容器内下部と壁面付近で偏析模様が薄まることが分かった。
混合粒子の場合には、粉粒体はなぜ容器充填時に供給点付近に集まりますか。
粉粒体は容器充填時に堆積物傾斜表面で流動性の劣る成分が流下の際遅れるために、供給点付近に集まります。
JCRRAG_002128
物理
【システム COP】 筆者らは, システムCOP=正味の放熱量/消費電力量 と定義した。 正味の放熱量とは外壁からの放熱量から地中伝熱量を差し引いたもので,外壁からの放熱量計算では,ガラス外表面の対流伝熱係数が重要な意味を持つが,通常の観測では測定されない。多くの実測例が,Takakura and Fang (2002) に整理されているが,データ間にはかなりのバラツキがあり,どれを用いるかは問題である。本研究では,平均的な値として,外表面の対流伝熱係数は,Vを外部風速(m/s)とし,7.3+3.8Vを用いた。換気熱損失に関しては,風速の関数として,内外気温差を乗じて求めた。「エコモード」1晩と「通常モード」の2晩のデータは、かなり変動し誤差も含まれて多少大きめに出ていると思われるが,今回の計算はすべて 10分間のデータに基づくもので,いわば非定常状態のCOPであることから,変動が大きいこと,また,定義から 1以下にもなりうるし,通常の機械単体のCOPの値よりも大きくなることもありうること,さらに地中伝熱量のすべてが暖房負荷軽減になるとしたが,一部は潜熱のままであることが考えられ,この項が過大評価されていると思われるが,この項を正確に測定できないことから,これ以上の修正は行わなかった。
換気熱損失はどのように求められましたか。
換気熱損失は、風速の関数として内外気温差を乗じて求められました。
JCRRAG_002129
物理
半導体加工技術の進歩がこのまま継続するならば,10年以内に電子デバイスの基本構造は10ナノメータ程度にまで微細化が進むと言われている.また,ナノメーターの粒径をもつセラミックス焼結体が示す特異な性質を利用して,新しい構造材料を設計しようとする研究が盛んに行われている.それらナノ構造物質には,結晶格子定数の数倍から数十倍程度におよぶ周期の非一様性があり,応用上重要となるマクロな物理量を理論解析から引き出すためには,数百万個から数十憶個の原子一つ一つを真正面から取り扱えることが望ましい. 一方,近年の計算科学技術の進歩は目覚ましく,計算機性能,特に安価なPCをベースにした並列計算機が普及し,そのような計算資源に適応する科学計算コードの並列化技術,ならびに大規模データの効率的処理のためのデータ可視化技術の成長により,上記のような10⁶~10⁹原子を直接扱う分子動力学 (MD) シミュレーションと,その結果を効率的に解析・表現する基盤技術が整いつつある. 本稿では,上記のような並列計算技術を援用したセラミックス・ナノ微粒子集合体の分子動力学 (MD) シミュレーションについて,筆者がこれまでに関わってきた研究を中心に概説する.
ナノ構造物質の応用上重要となるマクロな物理量を理論解析から引き出すためには、何をすることが望ましいですか。
数百万個から数十憶個の原子一つ一つを真正面から取り扱えることが望ましいです。
JCRRAG_002130
物理
1980年代中頃にドイツのH.Gleiterらが,低温においてNanophase Ceramicsが大きな塑性変形性を示すことを報告したのをきっかけにして,新材料としてのナノフェーズ材料の研究が盛んとなった.ナノフェーズ材料の生成過程では,焼結の際の粒界形成や粒界滑り,更にクラスターの回転などといった様々な微視的現象が複雑に関わり合ってくると考えられるため,より現実に近い数値解析を目指す立場としては,実験状況と同じ程度の大きさの微粒子を100個以上配置した大規模なシミュレーションを行なえることが望ましい.筆者を含むルイジアナ州立大学並列材料計算研究所のメンバーは,総原子数百万個のナノフェーズSi₃N₄の並列MDシミュレーションを世界に先駆けて実施し,高温高圧下でのナノフェーズSi₃N₄の焼結過程および焼結体の室温での機械的特性を解析した. 高温高圧下で,ナノフェーズ・セラミックスは非常に速く(ナノ秒程度)ネックが成長し,空孔が消滅していく.微粒子界面付近でのナノフェーズ・セラミックスの粒子拡散は微粒子内部に比べ10倍以上速く,粒界付近の原子の動きやすさと粒径の小ささが,このように速い焼結過程を特徴づけている. 更に,微粒子内部に結晶構造を保ったナノ微結晶(上記のサイズとほぼ同じ)108個の集合に1700℃の温度下,異なる外圧で加圧することにより,様々な密度の焼結体“サンプル”を作った. 得られた焼結体の弾性定数の空孔度と粒径依存性に注目すると,密度比(空孔度に逆比例),粒径のいずれに対しても弾性特性が大きく依存することがわかる.粒径が小さく微粒子の体積に対する界面相の比が大きいため,粒界挙動がバルクな性質に与える影響が大きい.微粒子間境界相とバルク結晶相,および空孔のサンプル内体積比のそれぞれの相の弾性定数を重ね合わせる模型計算(多相構造模型)とシミュレーション結果との良い一致からも,上記の説明が裏付けられる.
サンプルはどのように作られましたか。
サンプルは、微粒子内部に結晶構造を保ったナノ微結晶108個の集合に、1700℃の温度下で異なる外圧で加圧することで作られました。
JCRRAG_002131
物理
多くの酸化物系セラミックスでは,表面・界面での原子間電荷移動の局所的変化が系の性質に有為に影響する場合が多い.例えば,ナノ微粒子系の凝集・分散機構においては,表面電荷二重層形成による微粒子間の静電反発力が主要な役割を演じるが,通常のMD法では直接この効果を表現することは難しい.このような原子間電荷移動の自由度を,ポーリングの電気陰性度平衡則に従って経験的にMDに組み入れる方法を原子電荷移動型分子動力学法(Variable-charge Molecular Dynamics, 以下VC-MDと略す)と呼ぶ.1980年代にこの方法は生体分子の安定構造を効率よく求める方法として良く使われていたが,最近になってF.H. StreitzらがAl/Al₂O₃界面のMD計算を目的とした相互作用模型に適用し,材料シミュレーションへの本格的応用が始まった. また,この方法は原子配位の変化と電荷移動の変化が複雑に絡み合う物質に適用できるので,強誘電性材料の計算にも適している.尾形(山口大)らと筆者は最近,酸化チタン(TiO₂)のVC-MD模型の構築に成功した.ルチル型のTiO₂は強い誘電率異方性を持ち,強誘電体前駆物質として知られている.我々は,2つの異なる結晶相(ルチル型とアナターゼ型)の機械的・電気的特性を表現し,かつ表面での緩和や電荷移動の変化までを,他の高精度計算と同程度の精度で表現できる電荷可変型原子間相互作用模型を構築した.そして,このモデルをナノ微粒子系の焼結過程解析に適用し,2つの異なる結晶相で表面構造と電荷二重層とが果たす複雑な役割について解析した.さらに,圧力下での緻密化過程において,微粒子の回転によって自己組織形成的に互いの結晶方位を変えようとする振る舞いも観察している.
原子電荷移動型分子動力学法が強誘電性材料の計算に適しているのはなぜですか。
原子電荷移動型分子動力学法は、原子配位の変化と電荷移動の変化が複雑に絡み合う物質に適用できるので、強誘電性材料の計算に適しています。
JCRRAG_002132
物理
以下は、山本英夫・松山達 両氏による論文「粒子の帯電現象と粉体技術への応用」(『粉砕』46巻, 2002)より、コンデンサーモデルの解説部分について抜粋を行ったものである。 コンデンサーモデル 二つの物体が接触したとき,電荷の移動が生じていわゆる静電気が発生することは古くから知られている.接触による電荷の移動は金属同士の接触でも起こる.ただし,金属は導電体なので接触面分離の際に電荷が完全に緩和してしまい,「静電気」として観測されないだけなのである.金属同士の場合の接触では,表面の電子のエネルギー状態の差に起因するいわゆる接触電位差が電荷移動の駆動力となる.この点については,議論が確立していると考えてよい.実際には,電荷が移動した結果として接触電位差が発生するのであるが,等価回路的には,接触電位差Vcの電池を接続したコンデンサーの極板と見なすと考えやすい. これは一般にコンデンサーモデルと呼ばれている.
金属同士の接触では、何が電荷移動の駆動力となりますか。
金属表面の電子のエネルギー状態の差に起因する接触電位差が電荷移動の駆動力となります。
JCRRAG_002133
物理
既に50年以上前,KunkelがLeobを引用して「電気というものが人類に知られるようになったその一番最初の形態は摩擦電気であったのにもかかわらず,これがどのような機構で起こるのかについては,未だに良くわかっていない」と書いた. 実際,摩擦帯電に関する議論は,科学史上で最も古いエピソードの一つであるのにもかかわらず,現在もなお,そのメカニズムがはっきりと理解されているとは言えない.その一方で,乾式の静電塗装技術やレーザープリンターや静電複写機等の技術的進歩のなかで,粉体粒子の帯電制御の問題はますます重要性を高めており,その意味でこの問題は,最も古くて最も新しい課題であると言える. 粒子の帯電メカニズムは,これまで,多くの人たちによってコンデンサーモデルなるもので説明されてきた.確かに,帯電のし易さや帯電傾向は,粒子の接触面での電位差(二物体の仕事関数の差)で定性的に説明できるようであるが,接触・分離プロセスの結果として粒子が最終的に得る電荷量については説明できない.本稿では,この電荷量を説明する新しいモデル(「放電緩和モデル」)について,実験データを交えながら解説する.
乾式の静電塗装技術やレーザープリンターや静電複写機等の技術的進歩のなかで、ますます重要性を高めている問題は何ですか。
粉体粒子の帯電制御の問題がますます重要性を高めています。
JCRRAG_002134
物理
本研究では,粒子表面の濡れ特性の異なる3種類の粒子を用いて,相対湿度変化が流動化状態及び物体浮沈に与える影響について検討し,疎水性の高い粒子を用いることで,高湿度下においても粒子群の流動性が悪化することなく,密度差通りの浮沈が行なわれることが明らかとなった。これまで本研究室では,僅かな密度差の物体や形状の異なる物体など様々な物体の乾式比重分離を試み,高精度の分離に成功した。しかし,それらは低湿度下において行ったものである。従って,時期により相対湿度が大きく変化する地域で乾式比重分離を行なう場合,相対湿度を制御する装置が必要となる。実用化を考える上で分離精度だけでなくコスト面も重要視されることから,それらを必要としない疎水性粒子を用いた乾式比重分離は,設備コストを削減可能な点からも有用な技術と考えられる。今後のさらなる検討課題として,湿潤物体の分離が挙げられる。本手法を鉱石の分離に利用する場合,濡れた鉱石の流動層への投入が想定される。また,廃棄物の素材分離に利用する場合も同様に考えられる。従って,本研究で得られた情報をベースに,疎水性粒子を用いた流動層による湿潤物体の分離を今後行っていきたい。
本研究室はこれまでに何を試みましたか。
本研究室はこれまでに様々な物体の乾式比重分離を試みました。
JCRRAG_002135
物理
以下は、山本英夫・松山達 両氏による論文「粒子の帯電現象と粉体技術への応用」(『粉砕』46巻, 2002)より、コンデンサーモデルの解説部分について抜粋を行ったものである。 コンデンサーモデル 二つの物体が接触したとき,電荷の移動が生じていわゆる静電気が発生することは古くから知られている.接触による電荷の移動は金属同士の接触でも起こる.ただし,金属は導電体なので接触面分離の際に電荷が完全に緩和してしまい,「静電気」として観測されないだけなのである.金属同士の場合の接触では,表面の電子のエネルギー状態の差に起因するいわゆる接触電位差が電荷移動の駆動力となる.この点については,議論が確立していると考えてよい.実際には,電荷が移動した結果として接触電位差が発生するのであるが,等価回路的には,接触電位差Vcの電池を接続したコンデンサーの極板と見なすと考えやすい. これは一般にコンデンサーモデルと呼ばれている.
金属同士の接触では、何が移動した結果として接触電位差が発生しますか。
電荷が移動することで接触電位差が発生します。
JCRRAG_002136
物理
絶縁性物質の電荷移動機構に関する研究も,これまでも広く行われてきたが,何らかの物性値から直接的に電荷量を予測できる段階までは進んでいない.長くなるので,この問題についての詳細なレビューは省略することにし,ここでは,L. B. Scheinのグループの考え方のみを紹介する. Scheinのグループは,トナー等,絶縁性粉体のブローオフ帯電量の濃度依存性のデータから,絶縁性粒子の帯電においても,電荷移動を "high density limit" に基づいて考えてもよいとしている.これは,「絶縁性物質表面の電子状態密度が充分高い」という意味で,もっと簡単な言い方をすれば,「絶縁体の接触帯電を,金属-金属接触の電荷移動機構と同じに取り扱っても良い」とする主張である.つまり,金属の場合は,接触電位差Vcを金属の仕事関数(W₁, W₂)の差で表現できる(Vc=(W₁−W₂)/e)のに対して,絶縁体にも有効仕事関数Wpを定義して,金属-絶縁体間の接触電位差もVc=(Wm−Wp)/eとして,電荷移動機構をコンデンサーモデルで取り扱うことができることになる.これまで,絶縁体の接触帯電に関する研究論文のほとんどが,この有効仕事関数という概念のもとに議論されており,絶縁性粒子の接触電位差測定装置なるものも開発され市販されている.筆者らの接触帯電に関する最初の論文でもこの考え方を基礎に議論を進めた.しかしながら,Scheinらも認めているように,一般の絶縁性粒子で観測される帯電量は,コンデンサーモデルの予測からはオーダーで小さくなってしまうのである.
絶縁性物質の電荷移動機構に関する研究は、どの段階までは進んでいないですか。
絶縁性物質の電荷移動機構に関する研究は、何らかの物性値から直接的に電荷量を予測できる段階までは進んでいません。
JCRRAG_002137
物理
絶縁性物質の電荷移動機構に関する研究も,これまでも広く行われてきたが,何らかの物性値から直接的に電荷量を予測できる段階までは進んでいない.長くなるので,この問題についての詳細なレビューは省略することにし,ここでは,L. B. Scheinのグループの考え方のみを紹介する. Scheinのグループは,トナー等,絶縁性粉体のブローオフ帯電量の濃度依存性のデータから,絶縁性粒子の帯電においても,電荷移動を "high density limit" に基づいて考えてもよいとしている.これは,「絶縁性物質表面の電子状態密度が充分高い」という意味で,もっと簡単な言い方をすれば,「絶縁体の接触帯電を,金属-金属接触の電荷移動機構と同じに取り扱っても良い」とする主張である.つまり,金属の場合は,接触電位差Vcを金属の仕事関数(W₁, W₂)の差で表現できる(Vc=(W₁−W₂)/e)のに対して,絶縁体にも有効仕事関数Wpを定義して,金属-絶縁体間の接触電位差もVc=(Wm−Wp)/eとして,電荷移動機構をコンデンサーモデルで取り扱うことができることになる.これまで,絶縁体の接触帯電に関する研究論文のほとんどが,この有効仕事関数という概念のもとに議論されており,絶縁性粒子の接触電位差測定装置なるものも開発され市販されている.筆者らの接触帯電に関する最初の論文でもこの考え方を基礎に議論を進めた.しかしながら,Scheinらも認めているように,一般の絶縁性粒子で観測される帯電量は,コンデンサーモデルの予測からはオーダーで小さくなってしまうのである.
Scheinのグループは、絶縁性粒子の帯電において、電荷移動を何に基づいて考えてもよいとしましたか。
Scheinのグループは、絶縁性粒子の帯電において、電荷移動を"high density limit"に基づいて考えてもよいとしました。
JCRRAG_002138
物理
従来,液相中における微粒子表面間力は主にDLVO理論により説明されてきたが,このDLVO理論は無機電解質溶液中の表面間力にしか適用できない。しかし,実際の液相微粒子分散系では,分散剤・凝集剤として界面活性剤や高分子電解質がしばしば用いられるため,DLVO理論では解釈できない表面間力が観察される。このような表面間力の理解には分子レベルの解析が必要であるため,分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられるが,計算機の能力による制約から,その実現は困難である。そこで本研究では,次のような手法の開発を試みた。 (1) 溶媒とイオンや界面活性剤などの溶質に対して詳細な分子モデルを用いた小規模な分子動力学計算から,定量的な溶質間相互作用と自己拡散係数を算出する。 (2) (1)で得られた結果を用いて,溶媒を陰に扱うシミュレーションを行う。 このような手法により計算量を大幅に削減することで,微粒子を含む界面活性剤溶液や高分子電解質溶液(構造性流体)のシミュレーションの実現が可能になると考えられる。
本研究で開発を試みた手法では、何が可能になると考えられますか。
微粒子を含む界面活性剤溶液や高分子電解質溶液(構造性流体)のシミュレーションが実現可能になると考えられます。
JCRRAG_002139
物理
半導体加工技術の進歩がこのまま継続するならば,10年以内に電子デバイスの基本構造は10ナノメータ程度にまで微細化が進むと言われている.また,ナノメーターの粒径をもつセラミックス焼結体が示す特異な性質を利用して,新しい構造材料を設計しようとする研究が盛んに行われている.それらナノ構造物質には,結晶格子定数の数倍から数十倍程度におよぶ周期の非一様性があり,応用上重要となるマクロな物理量を理論解析から引き出すためには,数百万個から数十憶個の原子一つ一つを真正面から取り扱えることが望ましい. 一方,近年の計算科学技術の進歩は目覚ましく,計算機性能,特に安価なPCをベースにした並列計算機が普及し,そのような計算資源に適応する科学計算コードの並列化技術,ならびに大規模データの効率的処理のためのデータ可視化技術の成長により,上記のような10⁶~10⁹原子を直接扱う分子動力学 (MD) シミュレーションと,その結果を効率的に解析・表現する基盤技術が整いつつある. 本稿では,上記のような並列計算技術を援用したセラミックス・ナノ微粒子集合体の分子動力学 (MD) シミュレーションについて,筆者がこれまでに関わってきた研究を中心に概説する.
安価なPCをベースにした並列計算機などに適応する科学計算コードの並列化技術や、大規模データの効率的処理のためのデータ可視化技術の成長により、何が整いつつありますか。
10⁶~10⁹原子を直接扱う分子動力学 (MD) シミュレーションと、その結果を効率的に解析・表現する基盤技術が整いつつあります。
JCRRAG_002140
物理
構造性流体中の表面間力計算を行うためには,それに先立ち,その流体自体を適切に表現できなければいけない。そこで,筆者はまず大規模な界面活性剤水溶液のシミュレーションの実現を試みた。その結果,界面活性剤が集合体を形成する様子や,集合体が分裂する様子が観察された。また,筆者が水中における界面活性剤ミセルのシミュレーションを行った結果,実験で示されるようなミセル内部の流動性を表現できることが示された。このミセルの内部構造は,水分子まで含んだ通常の分子動力学法により,膨大な計算時間を費やして得られた結果とも良好に一致した。さらに,陰溶媒モデルにより,電解質によるミセルの安定化を表現できることも確認された。以上のように,本研究の手法により界面活性剤水溶液を表現できることが示された。 DLVO理論では,表面間力は固液界面に形成される電気二重層の重なりによる静電反発力と,van der Waals引力との釣り合いで表現される。このDLVO理論により,電解質水溶液中における表面間力は正確に記述することができる。そこで,塩化ナトリウム水溶液中に二つの球形粒子を導入したシミュレーションにより,表面間力の解析を行い,得られた結果をDLVO理論と比較,検証した。その結果,本手法により粒子表面間力を適切に表現できることを確認すると共に,DLVO理論では不明であった粒子・溶液界面での詳細な溶質分子分布を明らかにした。 以上のように,これまでに界面活性剤水溶液やコロイド粒子分散系へ適用可能な,大規模シミュレーション手法の開発に成功し,界面活性剤水溶液のような構造性流体中における粒子表面間力算出のための基礎を確立した。筆者は,今後,これまで開発した手法を組合せ,界面活性剤水溶液中における粒子表面間力算出という,これまでは実現できなかったシミュレーションに取り組んでいく予定である。
塩化ナトリウム水溶液中に2つの球形粒子を導入したシミュレーションにより、何が明らかになりましたか。
DLVO理論では不明だった粒子・溶液界面での詳細な溶質分子分布が明らかになりました。
JCRRAG_002141
物理
園芸用ハウスの風荷重については,Hoxey and Richardson (1983, 1984) による平均風圧の実測例があるが,扱っているハウスは主に円弧型であり,我が国で一般に普及しているパイプハウスの断面形状とは大きく異なっている。近年,森山ら (2008) は我が国の代表的なパイプハウスを対象として,境界層乱流を用いた風洞実験により,ハウスに作用する風圧分布に及ぼす風向や妻面開口の影響を検討した。しかし,測定しているのは,Hoxey and Richardson (1983, 1984) と同様,平均風圧係数のみであり,動的荷重効果については検討していない。 植松ら (2008) は,現在我が国で一般的に用いられるパイプハウス形状に対して,風洞を用いて境界層乱流中で風圧の多点同時測定を行い,動的荷重効果の観点より,構造骨組設計用風荷重の評価方法を検討した。その結果,設計上クリティカルな荷重効果は風上側柱脚部の曲げモーメントであること,および,LRC (Load Response Correlation) 法で風荷重を概ね妥当に評価できることを示した。本報では,その結果を受け,風圧分布のより詳細な測定を行い,その結果に基づき構造骨組設計用外圧係数のモデルを提案する。
植松らは、現在我が国で一般的に用いられるパイプハウス形状に対してどのような測定を行いましたか。
植松らは風洞を用いて、境界層乱流中で風圧の多点同時測定を行いました。
JCRRAG_002142
物理
園芸用ハウスの風荷重については,Hoxey and Richardson (1983, 1984) による平均風圧の実測例があるが,扱っているハウスは主に円弧型であり,我が国で一般に普及しているパイプハウスの断面形状とは大きく異なっている。近年,森山ら (2008) は我が国の代表的なパイプハウスを対象として,境界層乱流を用いた風洞実験により,ハウスに作用する風圧分布に及ぼす風向や妻面開口の影響を検討した。しかし,測定しているのは,Hoxey and Richardson (1983, 1984) と同様,平均風圧係数のみであり,動的荷重効果については検討していない。 植松ら (2008) は,現在我が国で一般的に用いられるパイプハウス形状に対して,風洞を用いて境界層乱流中で風圧の多点同時測定を行い,動的荷重効果の観点より,構造骨組設計用風荷重の評価方法を検討した。その結果,設計上クリティカルな荷重効果は風上側柱脚部の曲げモーメントであること,および,LRC (Load Response Correlation) 法で風荷重を概ね妥当に評価できることを示した。本報では,その結果を受け,風圧分布のより詳細な測定を行い,その結果に基づき構造骨組設計用外圧係数のモデルを提案する。
本報では風圧分布のより詳細な測定の結果に基づき、何が提案されますか。
本報では構造骨組設計用外圧係数のモデルが提案されます。
JCRRAG_002143
物理
パイプハウスは単独で設置されるばかりでなく複数棟が並列して設置されることも多い。森山ら (2008) は,2あるいは3棟のパイプハウスが並列して設置されたとき,風が桁行方向に垂直(妻面に平行)に吹く場合の平均風圧係数分布を測定し,棟数および隣棟間隔がハウスに作用する平均風圧に及ぼす影響を検討した。その結果,隣棟間隔が風圧分布に大きな影響を与えることが示された。つまり,複数棟配置の場合,パイプハウス相互の影響を受けて風圧の分布や大きさが単独で設置される場合に比べて変化する。本研究では,複数棟モデルを用いた風洞実験も併せて行い,並列して配置される場合について,風圧分布および動的荷重効果に及ぼす隣棟間隔の影響を把握する。また,単体モデルの結果に基づき提案された外圧係数分布モデルが複数棟配置の場合にも適用できるかどうかも検討する。 壁面や屋根に作用する風力は外圧と内圧の差で与えられるが,内圧は壁面や屋根に存在する隙間や開口の位置と大きさによって複雑に変化するため一般化・定量化は難しい。本研究で対象とする閉鎖型では,内圧は場所によらずほぼ一定で,時間的変動も小さいと考えられる。本研究では,既報(植松ら,2008)と同様,外圧のみを扱うものとする。
森山らは2あるいは3棟のパイプハウスが並列して設置されたとき、風が桁行方向に垂直(妻面に平行)に吹く場合の何を測定しましたか。
森山らは平均風圧係数分布を測定しました。
JCRRAG_002144
物理
絶縁性物質の電荷移動機構に関する研究も,これまでも広く行われてきたが,何らかの物性値から直接的に電荷量を予測できる段階までは進んでいない.長くなるので,この問題についての詳細なレビューは省略することにし,ここでは,L. B. Scheinのグループの考え方のみを紹介する. Scheinのグループは,トナー等,絶縁性粉体のブローオフ帯電量の濃度依存性のデータから,絶縁性粒子の帯電においても,電荷移動を "high density limit" に基づいて考えてもよいとしている.これは,「絶縁性物質表面の電子状態密度が充分高い」という意味で,もっと簡単な言い方をすれば,「絶縁体の接触帯電を,金属-金属接触の電荷移動機構と同じに取り扱っても良い」とする主張である.つまり,金属の場合は,接触電位差Vcを金属の仕事関数(W₁, W₂)の差で表現できる(Vc=(W₁−W₂)/e)のに対して,絶縁体にも有効仕事関数Wpを定義して,金属-絶縁体間の接触電位差もVc=(Wm−Wp)/eとして,電荷移動機構をコンデンサーモデルで取り扱うことができることになる.これまで,絶縁体の接触帯電に関する研究論文のほとんどが,この有効仕事関数という概念のもとに議論されており,絶縁性粒子の接触電位差測定装置なるものも開発され市販されている.筆者らの接触帯電に関する最初の論文でもこの考え方を基礎に議論を進めた.しかしながら,Scheinらも認めているように,一般の絶縁性粒子で観測される帯電量は,コンデンサーモデルの予測からはオーダーで小さくなってしまうのである.
金属の場合、接触電位差Vcは金属の仕事関数(W₁, W₂)を用いてどのように表せますか。
接触電位差Vcは、Vc=(W₁−W₂)/eで表現できます。
JCRRAG_002145
物理
パイプハウスは単独で設置されるばかりでなく複数棟が並列して設置されることも多い。森山ら (2008) は,2あるいは3棟のパイプハウスが並列して設置されたとき,風が桁行方向に垂直(妻面に平行)に吹く場合の平均風圧係数分布を測定し,棟数および隣棟間隔がハウスに作用する平均風圧に及ぼす影響を検討した。その結果,隣棟間隔が風圧分布に大きな影響を与えることが示された。つまり,複数棟配置の場合,パイプハウス相互の影響を受けて風圧の分布や大きさが単独で設置される場合に比べて変化する。本研究では,複数棟モデルを用いた風洞実験も併せて行い,並列して配置される場合について,風圧分布および動的荷重効果に及ぼす隣棟間隔の影響を把握する。また,単体モデルの結果に基づき提案された外圧係数分布モデルが複数棟配置の場合にも適用できるかどうかも検討する。 壁面や屋根に作用する風力は外圧と内圧の差で与えられるが,内圧は壁面や屋根に存在する隙間や開口の位置と大きさによって複雑に変化するため一般化・定量化は難しい。本研究で対象とする閉鎖型では,内圧は場所によらずほぼ一定で,時間的変動も小さいと考えられる。本研究では,既報(植松ら,2008)と同様,外圧のみを扱うものとする。
森山らの平均風圧係数分布の測定結果から、パイプハウスの隣棟間隔が何に大きな影響を与えることが示されましたか。
風圧分布に大きな影響を与えることが示されました。
JCRRAG_002146
物理
パイプハウスは単独で設置されるばかりでなく複数棟が並列して設置されることも多い。森山ら (2008) は,2あるいは3棟のパイプハウスが並列して設置されたとき,風が桁行方向に垂直(妻面に平行)に吹く場合の平均風圧係数分布を測定し,棟数および隣棟間隔がハウスに作用する平均風圧に及ぼす影響を検討した。その結果,隣棟間隔が風圧分布に大きな影響を与えることが示された。つまり,複数棟配置の場合,パイプハウス相互の影響を受けて風圧の分布や大きさが単独で設置される場合に比べて変化する。本研究では,複数棟モデルを用いた風洞実験も併せて行い,並列して配置される場合について,風圧分布および動的荷重効果に及ぼす隣棟間隔の影響を把握する。また,単体モデルの結果に基づき提案された外圧係数分布モデルが複数棟配置の場合にも適用できるかどうかも検討する。 壁面や屋根に作用する風力は外圧と内圧の差で与えられるが,内圧は壁面や屋根に存在する隙間や開口の位置と大きさによって複雑に変化するため一般化・定量化は難しい。本研究で対象とする閉鎖型では,内圧は場所によらずほぼ一定で,時間的変動も小さいと考えられる。本研究では,既報(植松ら,2008)と同様,外圧のみを扱うものとする。
なぜパイプハウスの内圧の一般化・定量化が難しいのでしょうか。
内圧は壁面や屋根に存在する隙間や開口の位置と大きさによって複雑に変化するため、一般化・定量化が難しいです。
JCRRAG_002147
物理
固気流動層は,密度や粘度など液体と類似した性質を持つことが一般的に知られている。固気流動層に物体を投入すると,固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体は浮揚し,逆に密度の大きい物体は沈降するため乾式で比重分離が可能である。比重分離の方法として,比重調整した液体を用いる湿式法が存在するが,1)廃液処理が必要,2)装置からの液漏れ,3)分離後の乾燥工程が必要,4)比重調整剤のコスト高といった問題が生じるため,上述の乾式法が注目を集めている。しかし,分離媒体として粒子を用いているため,粒子群の流動化状態は空気の相対湿度の影響を大きく受け,特に高湿度下においては粒子表面への水の付着により粒子同士が凝集し,良好な流動化状態を保つことができず物体浮沈にも大きな影響を与える。従って,高湿度下においても粒子群の流動性が損なわれない粒子を用いれば,それらの問題を解決できるのではないかと考えられる。そこで筆者は,本研究で,分離媒体として用いる粒子表面の濡れ特性(親水性と疎水性)に注目し,それらの違いが相対湿度変化にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。具体的な研究内容として,分離媒体に濡れ性の異なる粒子を用い,下部から送り込む空気の相対湿度変化が流動化状態にどのような影響を与えるのかについて検討を行うため,圧力プロファイル測定と固気流動層の見掛け密度測定を行った。
固気流動層はどのような性質を持ちますか。
固気流動層は、密度や粘度など液体と類似した性質を持ちます。
JCRRAG_002148
物理
園芸用ハウスの風荷重については,Hoxey and Richardson (1983, 1984) による平均風圧の実測例があるが,扱っているハウスは主に円弧型であり,我が国で一般に普及しているパイプハウスの断面形状とは大きく異なっている。近年,森山ら (2008) は我が国の代表的なパイプハウスを対象として,境界層乱流を用いた風洞実験により,ハウスに作用する風圧分布に及ぼす風向や妻面開口の影響を検討した。しかし,測定しているのは,Hoxey and Richardson (1983, 1984) と同様,平均風圧係数のみであり,動的荷重効果については検討していない。 植松ら (2008) は,現在我が国で一般的に用いられるパイプハウス形状に対して,風洞を用いて境界層乱流中で風圧の多点同時測定を行い,動的荷重効果の観点より,構造骨組設計用風荷重の評価方法を検討した。その結果,設計上クリティカルな荷重効果は風上側柱脚部の曲げモーメントであること,および,LRC (Load Response Correlation) 法で風荷重を概ね妥当に評価できることを示した。本報では,その結果を受け,風圧分布のより詳細な測定を行い,その結果に基づき構造骨組設計用外圧係数のモデルを提案する。
植松らが風圧の多点同時測定を行った結果、設計上クリティカルな荷重効果は何であることが示されましたか。
設計上クリティカルな荷重効果は風上側柱脚部の曲げモーメントであることが示されました。
JCRRAG_002149
物理
筆者らは,高分子の球形粒子を1個ずつ金属板に衝突させて,一回の衝突(接触)で移動する電荷量を測定する実験を行ってきた。空気銃で打ち出された粒子は二重円筒型ファラデーケージを通過して金属板に衝突する。衝突前の粒子が持っている電荷は二重円筒型ファラデーケージから得られる波形の高さから計算できる。衝突直前の速度はこの波形の幅で計算される。また,衝突で粒子が新たに得る電荷量は分離後に金属板に残された電荷の逆符号としてエレクトロメータで観測される。 衝突帯電量は,粒子の初期帯電量に対して直線的に依存している。この結果は,前述の "high density limit" とするモデル,あるいはコンデンサーモデルと大変相性がよい。つまり,接触時とは,コンデンサー回路が閉じた状態に対応し,コンデンサーは速やかに飽和電荷まで充電されると考えると,初期帯電量は回路が閉じる前にコンデンサー極板が既に持っていた電荷に対応する。したがって,衝突帯電量は,この初期帯電量と飽和帯電量の差し引きに対応すると考えることができる。もう少し詳しく言うと,この結果は,絶縁性物質の表面電子状態密度が充分に高い ("high density limit") か,または一様に分布していることに対応していると考えて良い。 ところが,実験結果の詳細な検討結果は,上のような考え方を支持するものではなかった。衝突帯電量ΔQが初期帯電量Qiと飽和帯電量CVcの差し引きに対応すると考えると,ΔQ=CVc−Qi (1)となる。ここで,Cはコンデンサーの容量である。初期帯電量(ΔQ=0 )の値を平衡帯電量Qeと称するが,この値は式(1)より,Qe(=Qi)=CVc=C(Wm−Wp)/e (2)となり,同じ絶縁体粒子でも,衝突する金属によって変わる(金属の仕事関数に比例する)のである。しかし実験結果は,金属の仕事関数には依存しなかった。この結果は,粒子と金属が接触している状態では,充電電荷量はコンデンサーモデルに従って金属の仕事関数に依存するにせよ,分離後の電荷(観測される粒子帯電量)は仕事関数(別な言い方をすれば接触電位差)には依存せず,むしろ粒子側の物性に依存していることを示唆している。
実験において、粒子と金属が接触している状態では、充電電荷量は何に依存していましたか。
充電電荷量はコンデンサーモデルに従って金属の仕事関数に依存していました。
JCRRAG_002150
物理
筆者らは,高分子の球形粒子を1個ずつ金属板に衝突させて,一回の衝突(接触)で移動する電荷量を測定する実験を行ってきた。空気銃で打ち出された粒子は二重円筒型ファラデーケージを通過して金属板に衝突する。衝突前の粒子が持っている電荷は二重円筒型ファラデーケージから得られる波形の高さから計算できる。衝突直前の速度はこの波形の幅で計算される。また,衝突で粒子が新たに得る電荷量は分離後に金属板に残された電荷の逆符号としてエレクトロメータで観測される。 衝突帯電量は,粒子の初期帯電量に対して直線的に依存している。この結果は,前述の "high density limit" とするモデル,あるいはコンデンサーモデルと大変相性がよい。つまり,接触時とは,コンデンサー回路が閉じた状態に対応し,コンデンサーは速やかに飽和電荷まで充電されると考えると,初期帯電量は回路が閉じる前にコンデンサー極板が既に持っていた電荷に対応する。したがって,衝突帯電量は,この初期帯電量と飽和帯電量の差し引きに対応すると考えることができる。もう少し詳しく言うと,この結果は,絶縁性物質の表面電子状態密度が充分に高い ("high density limit") か,または一様に分布していることに対応していると考えて良い。 ところが,実験結果の詳細な検討結果は,上のような考え方を支持するものではなかった。衝突帯電量ΔQが初期帯電量Qiと飽和帯電量CVcの差し引きに対応すると考えると,ΔQ=CVc−Qi (1)となる。ここで,Cはコンデンサーの容量である。初期帯電量(ΔQ=0 )の値を平衡帯電量Qeと称するが,この値は式(1)より,Qe(=Qi)=CVc=C(Wm−Wp)/e (2)となり,同じ絶縁体粒子でも,衝突する金属によって変わる(金属の仕事関数に比例する)のである。しかし実験結果は,金属の仕事関数には依存しなかった。この結果は,粒子と金属が接触している状態では,充電電荷量はコンデンサーモデルに従って金属の仕事関数に依存するにせよ,分離後の電荷(観測される粒子帯電量)は仕事関数(別な言い方をすれば接触電位差)には依存せず,むしろ粒子側の物性に依存していることを示唆している。
筆者らは、高分子の球形粒子を1個ずつ金属板に衝突させることで、何を測定しましたか。
筆者らは、1回の衝突(接触)で移動する電荷量を測定しました。
JCRRAG_002151
物理
1980年代中頃にドイツのH.Gleiterらが,低温においてNanophase Ceramicsが大きな塑性変形性を示すことを報告したのをきっかけにして,新材料としてのナノフェーズ材料の研究が盛んとなった.ナノフェーズ材料の生成過程では,焼結の際の粒界形成や粒界滑り,更にクラスターの回転などといった様々な微視的現象が複雑に関わり合ってくると考えられるため,より現実に近い数値解析を目指す立場としては,実験状況と同じ程度の大きさの微粒子を100個以上配置した大規模なシミュレーションを行なえることが望ましい.筆者を含むルイジアナ州立大学並列材料計算研究所のメンバーは,総原子数百万個のナノフェーズSi₃N₄の並列MDシミュレーションを世界に先駆けて実施し,高温高圧下でのナノフェーズSi₃N₄の焼結過程および焼結体の室温での機械的特性を解析した. 高温高圧下で,ナノフェーズ・セラミックスは非常に速く(ナノ秒程度)ネックが成長し,空孔が消滅していく.微粒子界面付近でのナノフェーズ・セラミックスの粒子拡散は微粒子内部に比べ10倍以上速く,粒界付近の原子の動きやすさと粒径の小ささが,このように速い焼結過程を特徴づけている. 更に,微粒子内部に結晶構造を保ったナノ微結晶(上記のサイズとほぼ同じ)108個の集合に1700℃の温度下,異なる外圧で加圧することにより,様々な密度の焼結体“サンプル”を作った. 得られた焼結体の弾性定数の空孔度と粒径依存性に注目すると,密度比(空孔度に逆比例),粒径のいずれに対しても弾性特性が大きく依存することがわかる.粒径が小さく微粒子の体積に対する界面相の比が大きいため,粒界挙動がバルクな性質に与える影響が大きい.微粒子間境界相とバルク結晶相,および空孔のサンプル内体積比のそれぞれの相の弾性定数を重ね合わせる模型計算(多相構造模型)とシミュレーション結果との良い一致からも,上記の説明が裏付けられる.
微粒子界面付近でのナノフェーズ・セラミックスの粒子拡散は微粒子内部に比べ何倍以上速いですか。
微粒子界面付近でのナノフェーズ・セラミックスの粒子拡散は微粒子内部に比べ10倍以上速いです。
JCRRAG_002152
物理
これまでの衝突帯電実験では,直径1~3mm程度の比較的大きな高分子粒子を用いて実験を行ってきた。したがって,この実験結果が,通常の粉体粒子サイズにもそのまま適用可能なのかどうか,また,どの程度の粒子径まで電荷緩和モデルが適用可能なのかを詳細に検討することは,今後の重要な課題である。この衝突帯電実験における適用粒子サイズの制約は,特に1個粒子を用いた衝突帯電実験であるための帯電量計測の感度の問題に起因する。 最近,筆者らは,新しい衝突帯電実験装置を開発し,この1個粒子による衝突帯電実験の適用粒子サイズを100ミクロン程度にまで拡張することに成功した。適用粒子サイズを小粒径側に拡張するための細々した工夫は色々とあって,紙幅の都合もあるのでここにあまりくどくどと書き並べるわけにもいかないのだが,1個のファラデーケージの中に衝突ターゲットを設置したところが特徴の1つだ。 まず最初に「初期帯電」電荷を持った粒子がファラデーケージに入ってくると,このトータルの電荷量に対応した出力が得られる。粒子がターゲットに衝突して電荷のやりとりがあっても,このトータルの電荷は保存されているので,この段階ではファラデーケージの出力には変化がない。この衝突の後,反跳した粒子がファラデーケージから飛び出て行くと,ファラデーケージの中にある電荷が残留する。これは,衝突の際の粒子との間の電荷移動の結果,ターゲット側に残された電荷であって,それは電荷保存の原則から,粒子側へ移動した「衝突帯電量」と絶対値が等しく符号が反対な電荷量になっている。これにより,1個のファラデーケージからの出力波形によって,粒子の初期帯電量と衝突帯電量をいっぺんに決定することができる。
衝突帯電実験の今後の重要な課題は何ですか。
実験結果が、通常の粉体粒子サイズにそのまま適用可能なのかどうか、またどの程度の粒子径まで電荷緩和モデルが適用可能なのかを詳細に検討することが、今後の重要な課題です。
JCRRAG_002153
物理
これまでの衝突帯電実験では,直径1~3mm程度の比較的大きな高分子粒子を用いて実験を行ってきた。したがって,この実験結果が,通常の粉体粒子サイズにもそのまま適用可能なのかどうか,また,どの程度の粒子径まで電荷緩和モデルが適用可能なのかを詳細に検討することは,今後の重要な課題である。この衝突帯電実験における適用粒子サイズの制約は,特に1個粒子を用いた衝突帯電実験であるための帯電量計測の感度の問題に起因する。 最近,筆者らは,新しい衝突帯電実験装置を開発し,この1個粒子による衝突帯電実験の適用粒子サイズを100ミクロン程度にまで拡張することに成功した。適用粒子サイズを小粒径側に拡張するための細々した工夫は色々とあって,紙幅の都合もあるのでここにあまりくどくどと書き並べるわけにもいかないのだが,1個のファラデーケージの中に衝突ターゲットを設置したところが特徴の1つだ。 まず最初に「初期帯電」電荷を持った粒子がファラデーケージに入ってくると,このトータルの電荷量に対応した出力が得られる。粒子がターゲットに衝突して電荷のやりとりがあっても,このトータルの電荷は保存されているので,この段階ではファラデーケージの出力には変化がない。この衝突の後,反跳した粒子がファラデーケージから飛び出て行くと,ファラデーケージの中にある電荷が残留する。これは,衝突の際の粒子との間の電荷移動の結果,ターゲット側に残された電荷であって,それは電荷保存の原則から,粒子側へ移動した「衝突帯電量」と絶対値が等しく符号が反対な電荷量になっている。これにより,1個のファラデーケージからの出力波形によって,粒子の初期帯電量と衝突帯電量をいっぺんに決定することができる。
衝突帯電実験における適用粒子サイズの制約は何に起因しますか。
適用粒子サイズの制約は、特に1個粒子を用いた実験であるための帯電量計測の感度の問題に起因します。
JCRRAG_002154
物理
園芸用ハウスの風荷重については,Hoxey and Richardson (1983, 1984) による平均風圧の実測例があるが,扱っているハウスは主に円弧型であり,我が国で一般に普及しているパイプハウスの断面形状とは大きく異なっている。近年,森山ら (2008) は我が国の代表的なパイプハウスを対象として,境界層乱流を用いた風洞実験により,ハウスに作用する風圧分布に及ぼす風向や妻面開口の影響を検討した。しかし,測定しているのは,Hoxey and Richardson (1983, 1984) と同様,平均風圧係数のみであり,動的荷重効果については検討していない。 植松ら (2008) は,現在我が国で一般的に用いられるパイプハウス形状に対して,風洞を用いて境界層乱流中で風圧の多点同時測定を行い,動的荷重効果の観点より,構造骨組設計用風荷重の評価方法を検討した。その結果,設計上クリティカルな荷重効果は風上側柱脚部の曲げモーメントであること,および,LRC (Load Response Correlation) 法で風荷重を概ね妥当に評価できることを示した。本報では,その結果を受け,風圧分布のより詳細な測定を行い,その結果に基づき構造骨組設計用外圧係数のモデルを提案する。
森山らは、我が国の代表的なパイプハウスを対象として、どんな実験により、ハウスに作用する風圧分布に及ぼす風向や妻面開口の影響を検討しましたか。
森山らは、境界層乱流を用いた風洞実験により、ハウスに作用する風圧分布に及ぼす風向や妻面開口の影響を検討しました。
JCRRAG_002155
物理
筆者らは我が国で一般に用いられている園芸用パイプハウスを対象とし,一連の風洞実験により,閉鎖型の場合の詳細な外圧性状を把握した。 次に,設計上最も重要な荷重効果として風上側柱脚部にはたらく曲げモーメントに着目し,LRC法を用いて最大応答に対応する等価静的外圧係数分布を求めた。その結果,中央断面より風上妻面に近い断面に,風向θ=30°のときに曲げモーメントが最大となることが明らかとなり,そのときの等価静的外圧係数分布を基に設計用外圧係数のモデル化を行った。モデルの作成に当たっては,風上側柱脚部の曲げモーメントだけでなく,場合によっては設計上重要になると考えられる柱脚部の引き抜き力にも着目した。作成した設計用外圧係数の提案モデルを用いてフレームに作用する曲げモーメントを計算した結果,LRC法の結果から直接計算される結果とほぼ同じ結果が得られることを確認した。 園芸用パイプハウスは複数棟が並列して設置されることも多く,その場合には相互の影響を受けて風の流れが変化しパイプハウスにはたらく風荷重にも変化が生じる。本研究では,2ないし3棟が並列して設置される場合についても風洞実験を行い,相互干渉がハウスフレームの動的荷重効果に及ぼす影響についても検討した。複数棟の場合も,風上柱脚部の曲げモーメントが設計上重要な荷重効果であることを明らかにした上で,単体モデルと複数棟モデルについて,それらの最大値を比較した結果,いずれの棟数の場合でもほとんど単体モデルの値以下であるということがわかった。このことから,複数棟を並列して設置する場合にも単体用のために提案する構造骨組設計用外圧係数を用いることができると考えられる。
筆者らは、曲げモーメントが最大となるときの等価静的外圧係数分布を基に何のモデル化を行いましたか。
筆者らは、設計用外圧係数のモデル化を行いました。
JCRRAG_002156
物理
【システム COP】 筆者らは, システムCOP=正味の放熱量/消費電力量 と定義した。 正味の放熱量とは外壁からの放熱量から地中伝熱量を差し引いたもので,外壁からの放熱量計算では,ガラス外表面の対流伝熱係数が重要な意味を持つが,通常の観測では測定されない。多くの実測例が,Takakura and Fang (2002) に整理されているが,データ間にはかなりのバラツキがあり,どれを用いるかは問題である。本研究では,平均的な値として,外表面の対流伝熱係数は,Vを外部風速(m/s)とし,7.3+3.8Vを用いた。換気熱損失に関しては,風速の関数として,内外気温差を乗じて求めた。「エコモード」1晩と「通常モード」の2晩のデータは、かなり変動し誤差も含まれて多少大きめに出ていると思われるが,今回の計算はすべて 10分間のデータに基づくもので,いわば非定常状態のCOPであることから,変動が大きいこと,また,定義から 1以下にもなりうるし,通常の機械単体のCOPの値よりも大きくなることもありうること,さらに地中伝熱量のすべてが暖房負荷軽減になるとしたが,一部は潜熱のままであることが考えられ,この項が過大評価されていると思われるが,この項を正確に測定できないことから,これ以上の修正は行わなかった。
本研究では、外表面の対流伝熱係数はいくつが用いられましたか。
外表面の対流伝熱係数は、Vを外部風速(m/s)として、7.3+3.8Vが用いられました。
JCRRAG_002157
物理
筆者らは我が国で一般に用いられている園芸用パイプハウスを対象とし,一連の風洞実験により,閉鎖型の場合の詳細な外圧性状を把握した。 次に,設計上最も重要な荷重効果として風上側柱脚部にはたらく曲げモーメントに着目し,LRC法を用いて最大応答に対応する等価静的外圧係数分布を求めた。その結果,中央断面より風上妻面に近い断面に,風向θ=30°のときに曲げモーメントが最大となることが明らかとなり,そのときの等価静的外圧係数分布を基に設計用外圧係数のモデル化を行った。モデルの作成に当たっては,風上側柱脚部の曲げモーメントだけでなく,場合によっては設計上重要になると考えられる柱脚部の引き抜き力にも着目した。作成した設計用外圧係数の提案モデルを用いてフレームに作用する曲げモーメントを計算した結果,LRC法の結果から直接計算される結果とほぼ同じ結果が得られることを確認した。 園芸用パイプハウスは複数棟が並列して設置されることも多く,その場合には相互の影響を受けて風の流れが変化しパイプハウスにはたらく風荷重にも変化が生じる。本研究では,2ないし3棟が並列して設置される場合についても風洞実験を行い,相互干渉がハウスフレームの動的荷重効果に及ぼす影響についても検討した。複数棟の場合も,風上柱脚部の曲げモーメントが設計上重要な荷重効果であることを明らかにした上で,単体モデルと複数棟モデルについて,それらの最大値を比較した結果,いずれの棟数の場合でもほとんど単体モデルの値以下であるということがわかった。このことから,複数棟を並列して設置する場合にも単体用のために提案する構造骨組設計用外圧係数を用いることができると考えられる。
本研究で筆者らは、2ないし3棟のパイプハウスが並列して設置される場合について風洞実験を行うことで、何について検討しましたか。
筆者らは、パイプハウスの相互干渉がハウスフレームの動的荷重効果に及ぼす影響について検討しました。
JCRRAG_002158
物理
粉体工学において「何のために何を作るか?に関する機能性粉体材料・粒子の設計工学」を展開するのは容易でない。とくに,新しい材料や機能物質の創出は主としてケミストが担当しており,学の独立の点からは,ケミストと異なる工学的方法(=数理工学的方法)による材料追求法を確立しなければならない。 ご承知の通り,粉体工学の分野では,早くから粒子設計なる言葉が飛び交い,その言葉の下に種々の研究がなされたが,基本的なコンセプトとアプローチの方法が不明瞭なように思う。 機能性粒子とは,ある環境に置かれたとき,目的の特性を発現する粒子である。例えば,設定した電場内で目的のとおりに挙動するように帯電設計をした粉体トナー粒子,あるいは体液に浸されて目的の位置で溶解する医薬品粒子などがこれに該当する。また,機能性材料とは入力エネルギーを異なる出力エネルギーに変化するエネルギー変換材料である。したがって,これらの機能性粒子や材料の設計は,通常の人工物や化学装置の設計と同様に,まずこれら機能の発現機構に対する数理モデルが明らかにされ,それにもとづいて所望の機能を発現する材料構造が定量的に設計されなければならない。これが,粉体工学が永い間にわたって培った工学センスを生かす独特の粉体材料・粒子設計法の一つであろう。次代の粉体工学は新しい粉体材料や粒子の開発を包含し,「機能粒子と粉体材料の設計からその生産に関する工学」としてその完結性を高め,粉体技術の進展の基盤とならなければならない。
医薬品粒子とはどのような粒子ですか。
医薬品粒子とは体液に浸されて目的の位置で溶解する粒子のことです。
JCRRAG_002159
物理
液中での粒子分散状態は、スラリー特性のみならずスラリーから作製される塗膜や成形体、さらには焼成後の焼結体特性などにも大きく影響する。このことは、粒子分散状態の制御が、材料の特性向上や新機能創製のキーテクノロジーであることを示している。しかしながら、多くの材料がその製造過程において粒子の液中分散状態を利用するにもかかわらず、粒子分散特性の制御はこれまでノウハウとして扱われ、材料特性との因果関係などについてはあまり発表されていない。 そこで筆者らは、産業競争力強化の土台としての粉体プロセス技術基盤を構築する観点から、セラミックスの製造プロセスを例として取り上げ、原料粉体からスラリー、顆粒体、成形体、焼結体に至るまでの各中間段階における粉体構造の形成過程を明らかにする評価技術の開発とともに、実際にこれらの評価技術を用いて焼結体特性に及ぼすスラリー特性の影響などの検討を進めてきた。この事業は経済産業省の材料分野における技術基盤整備事業(1996年度~2001年度)としても位置づけられ、筆者らが(財)ファインセラミックスセンター在籍中に、産官学の連携を得ながら進めたものである。 その後、材料分野はナノテクノロジー・材料分野として各技術プログラムの基盤として位置づけられることになったが、ナノテク分野においても液中におけるナノ粒子の分散制御は、基礎研究を実用化するための重要技術として位置づけられている。このように、液中粒子の分散制御は、基盤から先端に至るまでの産業横断的な重要技術であり、今後粉体工学としても積極的に取り組むべき学問領域であると言える。
液中での粒子分散状態は何に影響しますか。
液中での粒子分散状態は、スラリー特性や、スラリーから作製される塗膜や成形体、焼成後の焼結体特性などに影響します。
JCRRAG_002160
物理
以下は、佐瀬勘紀・奥島里美・石井雅久・髙倉直・林真紀夫各氏による論文「ヒートポンプ暖房温室における暖房法の比較」(農業施設40巻(2009)3号)からの抜粋である。 【地中伝熱量】 昼間に太陽エネルギーが温室内地面に蓄えられる。それが夜間に放出されるので,もしそれがそのまま顕熱となれば,それだけ暖房負荷が軽減される。昼間の蓄熱が大きければそれだけ夜間の放出量も多くなることが示されている。ノコギリ歯のようにほぼ定期的に地中伝熱量が少なくなっている場合がある。この日はヒートポンプが能力を落として運転しており,地表面付近の気温の変動に呼応していると思われるが,測定した地表0.9mの気温変動はわずかで,明確な相関関係は見つからなかった。 地中伝熱量の大きさは放射熱損失量と比較しても,かなりの量であり無視できない。ただし,土壌表面で蒸発が起こると,それにはエネルギーが消費される。今回,土壌温度も観察したが,十分な時間の観察はしなかったものの,地表面上90cmの気温との差が小さく,地表面での顕熱移動量は地中伝熱量の10~20%程度と見積もられた。
土壌表面で蒸発が起こると何が消費されますか。
エネルギーが消費されます。
JCRRAG_002161
物理
背景と研究目的: ガスタービンの高温部の部品には、高温ガス流から部品を保護するために遮熱コーティング(Thermal Barrier Coatings, TBC)が適用されている。TBCは、Ni基合金の基材の上にMCrAlY合金(M = Ni or Co)のボンドコート層を施工し、その上にイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia, YSZ)を施工したものである。TBCは各種のガスタービンに広く適用されているが、しばしば剥離損傷を起こすことが問題となる。TBCはトップコートとボンドコートの線膨張係数の違いから、ガスタービンの始動停止による加熱冷却サイクルによって内部に熱応力を生じ、損傷を受ける。また、高温での長時間の運用により、ボンドコートが酸化されトップコートとボンドコートの界面に酸化物層(Thermally Grown Oxide, TGO)が生じる。TGO層は非常に強い圧縮応力場となっていることが報告されており[1]、TBCの剥離き裂発生に影響を与えていると考えられる。したがって、TBCの剥離挙動の解明、寿命予測のためには、熱サイクルや酸化によるTGOの生成とTBC各層の内部残留応力挙動の関係性を理解する必要がある。トップコートに対しては、X線回折法(ラボ機によるX線回折及び放射光ひずみスキャニング法)による残留応力測定が試みられている[2]。またTGOの応力測定法としては、Cr³⁺の蛍光ピークシフトを利用した方法が知られている[1]。さらに、ボンドコートの応力測定の試みとして、放射光施設での高エネルギーX線を用いた残留応力測定が実施されている[3]。しかし、ガスタービンの運用中に与えられる種々の熱履歴によってボンドコート内部の応力状態がどのように変化するかについては、これまでの研究では十分に調べられていない。そこで本研究では、長時間の熱劣化を模擬したTBCの試験片を作製し、この試験片のボンドコートの応力状態を測定することを試みた。 実験: 実験者はNi基合金CMSX-4の基材の上にボンドコートとしてNiCoCrAlY(Ni-23Co-17Cr-13Al-0.45Y)を高速フレーム溶射法で約100μm施工した。その上に8wt%-Y₂O₃-ZrO₂を大気プラズマ溶射し、約80μmのトップコート層を施工した。これを幅10mm、長さ20mm、厚さ1.5mmの大きさに加工した後、真空中で後熱処理し試験片とした。この試験片に対し、大気中で種々の熱処理を実施した。IT75、IT500の試験片は静的な条件での連続加熱をおこなったものである。それぞれ1100°Σの大気炉中で75h、500hの連続的な熱処理をおこなった。CT75は、試験片を自動で炉内に出し入れする機構を持った大気炉を用い、10min昇温、1100°Σ、30min等温加熱、10min空冷のサイクルを150回繰り返したものである。したがってIT75とCT75の1100°Σでの保持時間はどちらも合計75hとなる。測定前の大気中熱処理を実施していない試験片VHTでは、トップコートとボンドコートの間のTGO層はほとんど存在しない。一方、累計75hr大気中熱処理おこなった試験片CT75、IT75には、ともに界面にTGO層が成長していることが確認できる。さらに長時間の熱処理を受けた試験片IT500では、TGO層がより厚く成長している。また、IT500のトップコート/TGO界面、TGO/ボンドコート界面及びTGO内部には界面に平行なき裂が生じていることが確認された。残留応力測定は、SPring-8のBL16B2にて実施した。ボンドコートの回折を測定するためにはX線がトップコートを透過しなければならないため、透過力の高い高エネルギーX線(約75keV)を使用した。Si(311)分光結晶にて単色化したX線を入射X線として用い、X線エネルギーはCeO2粉末の回折測定により較正した。応力測定温度は25°Σ、500°Σ、700°Σ、900°Σ、1100°Σとし、高温残留応力測定は試料を高温ステージ(Anton Paar社DHS1100)に設置して実施した。高温測定では測定温度で10min以上キープしてから応力測定を実施した。また実験中は試料チャンバー内に100ml/minの乾燥空気を通気した。X線回折測定はHUBER製6軸回折計上で実施した。入射スリット幅はW2.0mm×H0.5mmとし、高エネルギーX線の回折光を高いS/Nで検出するためCdTe検出器を用い、受光スリットにはソーラスリット(角度分解能:0.08°)を用いた。またX線エネルギーが高く回折角が小さくなるため、応力測定には側傾法を用いた。応力測定には、γ-Niの(311)面回折のピークを用いた。応力計算に必要な室温での応力定数の値は、文献値(実験的に求められたX線的弾性係数及びポアソン比の値[2])を用いて算出した。また、高温でのボンドコートの応力定数は、Ni基超合金のヤング率の温度依存性をもとに比例計算により求めた。散乱角(2θ角)の測定ステップは0.001°、各ステップでの測定時間は2sとした。
TBCとは何ですか。
TBCとは、Thermal Barrier Coatings(遮熱コーティング)の略です。これはNi基合金の基材の上にMCrAlY合金(M = Ni or Co)のボンドコート層を施工し、その上にイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia, YSZ)を施工したものです。
JCRRAG_002162
物理
液中での粒子分散状態は、スラリー特性のみならずスラリーから作製される塗膜や成形体、さらには焼成後の焼結体特性などにも大きく影響する。このことは、粒子分散状態の制御が、材料の特性向上や新機能創製のキーテクノロジーであることを示している。しかしながら、多くの材料がその製造過程において粒子の液中分散状態を利用するにもかかわらず、粒子分散特性の制御はこれまでノウハウとして扱われ、材料特性との因果関係などについてはあまり発表されていない。 そこで筆者らは、産業競争力強化の土台としての粉体プロセス技術基盤を構築する観点から、セラミックスの製造プロセスを例として取り上げ、原料粉体からスラリー、顆粒体、成形体、焼結体に至るまでの各中間段階における粉体構造の形成過程を明らかにする評価技術の開発とともに、実際にこれらの評価技術を用いて焼結体特性に及ぼすスラリー特性の影響などの検討を進めてきた。この事業は経済産業省の材料分野における技術基盤整備事業(1996年度~2001年度)としても位置づけられ、筆者らが(財)ファインセラミックスセンター在籍中に、産官学の連携を得ながら進めたものである。 その後、材料分野はナノテクノロジー・材料分野として各技術プログラムの基盤として位置づけられることになったが、ナノテク分野においても液中におけるナノ粒子の分散制御は、基礎研究を実用化するための重要技術として位置づけられている。このように、液中粒子の分散制御は、基盤から先端に至るまでの産業横断的な重要技術であり、今後粉体工学としても積極的に取り組むべき学問領域であると言える。
筆者らは何の評価技術の開発を行いましたか。
筆者らは、原料粉体からスラリー、顆粒体、成形体、焼結体に至るまでの各中間段階における粉体構造の形成過程を明らかにする評価技術の開発を行いました。
JCRRAG_002163
物理
フェムト秒可視光レーザーをGe₂Sb₂Te₅多結晶ナノ薄膜に照射した際に発現する格子膨張の時間変化を、SACLAの高強度、フェムト秒パルスX線によるフェムト秒パルスX線回折法を用いて、回折ピークの散乱角の時間変化から精密に測定し解析することで、Ge₂Sb₂Te₅ナノ薄膜の弾性特性の情報を得られることを明らかにした。 背景と研究目的: 我々は、SACLAから発生する高強度で、数10フェムト秒の時間幅のパルスX線を用いたフェムト秒時間分解X線回折法を開発し、DVDやBlu-ray光ディスクの記録媒体に広く利用されているカルコゲナイト系Ge-Sb-Te光励起構造相転移材料に適用することで、フェムト秒可視光レーザー照射後の0.2ピコ秒から数ピコ秒の時間領域での光励起構造相転移の前駆現象を明らかにした[1]。フェムト秒可視光レーザー照射による原子の励起状態は、時間の経過と共に、エネルギーが格子に伝わり、結晶格子の膨張が始まる。立方晶系のGe₂Sb₂Te₅薄膜の場合、結晶格子の膨張は20ピコ秒付近から顕著になり、111、220、200について、それぞれの格子膨張の時間変化を見積ることができる。バルク結晶の弾性定数を実験的に見積もるためには、結晶中を伝播する超音波の縦波及び横波の速さを測定する方法が一般的である。しかし、ナノ結晶の場合、このような方法を適用することは困難である。そこで本研究では、光によって励起された格子ひずみが結晶中を伝播する様子を、格子膨張率の時間変化で捉え、その結果を解析することで、ナノ薄膜試料における弾性特性を明らかにすることを目的とする。 実験: 測定には、Si(100)ウエハー基板(Nilaco社製)にRFマグネトロンスパッタリング装置((株)アルバック)を用いて、40nm厚さで成膜したGe₂Sb₂Te₅薄膜を用いた。成膜後の薄膜の組成は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)を用いた化学組成分析を行い、Ge₂.₀₆Sb₂.₀₆Te₅とほぼ期待通りの組成が得られていることを確認した。なお、大気暴露による酸化やレーザー照射によるアブレーションを防ぐために、Ge₂Sb₂Te₅薄膜には3nm厚さのSiO₂膜をスパッタ法により被覆した。スパッタ法により成膜した試料はアモルファスであるため、Arガス雰囲気中で170°Cに保持して結晶化させた後、測定に用いた。SACLAでの測定は、光構造相転移を励起するためのポンプ光として、波長800nm、パルス幅30fsのTi-sapphireレーザーを使用した。ポンプ光のフルーエンスは、照射によって試料の破壊やアモルファス化が起らないよう、20mJ/cm²/pulseという十分に小さいエネルギーを採用した。レーザー照射後、構造変化を捉えるためのプローブ光としては、SACLAからのパルスX線をモノクロメータで単色化した10keVのパルスX線を用いた。測定には、ポンプ光照射後、パルスX線による測定までの時間をピコ秒スケールで小刻みに変化させて構造変化を観測するポンププローブ法を用いた。試料は縦型2軸ゴニオメータを用いて、検出器にSACLAで開発した2次元検出器MPCCDを用いて対称反射法で測定した。なお、対称反射法を採用した場合、試料上でのポンプ光及びプローブ光の試料位置による到着時間の差による時間分解能が約2psである。本研究での解析対象となる格子膨張の時間周期が約20psであり、本解析には膨張係数の振動周期を用いることから、本測定での時間分解能の影響はないと考える。
Ge₂Sb₂Te₅薄膜には厚さ何nmのSiO₂膜が被覆されましたか。
Ge₂Sb₂Te₅薄膜には、厚さ3nmのSiO₂膜が被覆されました。
JCRRAG_002164
物理
背景と研究目的: ガスタービンの高温部の部品には、高温ガス流から部品を保護するために遮熱コーティング(Thermal Barrier Coatings, TBC)が適用されている。TBCは、Ni基合金の基材の上にMCrAlY合金(M = Ni or Co)のボンドコート層を施工し、その上にイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia, YSZ)を施工したものである。TBCは各種のガスタービンに広く適用されているが、しばしば剥離損傷を起こすことが問題となる。TBCはトップコートとボンドコートの線膨張係数の違いから、ガスタービンの始動停止による加熱冷却サイクルによって内部に熱応力を生じ、損傷を受ける。また、高温での長時間の運用により、ボンドコートが酸化されトップコートとボンドコートの界面に酸化物層(Thermally Grown Oxide, TGO)が生じる。TGO層は非常に強い圧縮応力場となっていることが報告されており[1]、TBCの剥離き裂発生に影響を与えていると考えられる。したがって、TBCの剥離挙動の解明、寿命予測のためには、熱サイクルや酸化によるTGOの生成とTBC各層の内部残留応力挙動の関係性を理解する必要がある。トップコートに対しては、X線回折法(ラボ機によるX線回折及び放射光ひずみスキャニング法)による残留応力測定が試みられている[2]。またTGOの応力測定法としては、Cr³⁺の蛍光ピークシフトを利用した方法が知られている[1]。さらに、ボンドコートの応力測定の試みとして、放射光施設での高エネルギーX線を用いた残留応力測定が実施されている[3]。しかし、ガスタービンの運用中に与えられる種々の熱履歴によってボンドコート内部の応力状態がどのように変化するかについては、これまでの研究では十分に調べられていない。そこで本研究では、長時間の熱劣化を模擬したTBCの試験片を作製し、この試験片のボンドコートの応力状態を測定することを試みた。 実験: 実験者はNi基合金CMSX-4の基材の上にボンドコートとしてNiCoCrAlY(Ni-23Co-17Cr-13Al-0.45Y)を高速フレーム溶射法で約100μm施工した。その上に8wt%-Y₂O₃-ZrO₂を大気プラズマ溶射し、約80μmのトップコート層を施工した。これを幅10mm、長さ20mm、厚さ1.5mmの大きさに加工した後、真空中で後熱処理し試験片とした。この試験片に対し、大気中で種々の熱処理を実施した。IT75、IT500の試験片は静的な条件での連続加熱をおこなったものである。それぞれ1100°Σの大気炉中で75h、500hの連続的な熱処理をおこなった。CT75は、試験片を自動で炉内に出し入れする機構を持った大気炉を用い、10min昇温、1100°Σ、30min等温加熱、10min空冷のサイクルを150回繰り返したものである。したがってIT75とCT75の1100°Σでの保持時間はどちらも合計75hとなる。測定前の大気中熱処理を実施していない試験片VHTでは、トップコートとボンドコートの間のTGO層はほとんど存在しない。一方、累計75hr大気中熱処理おこなった試験片CT75、IT75には、ともに界面にTGO層が成長していることが確認できる。さらに長時間の熱処理を受けた試験片IT500では、TGO層がより厚く成長している。また、IT500のトップコート/TGO界面、TGO/ボンドコート界面及びTGO内部には界面に平行なき裂が生じていることが確認された。残留応力測定は、SPring-8のBL16B2にて実施した。ボンドコートの回折を測定するためにはX線がトップコートを透過しなければならないため、透過力の高い高エネルギーX線(約75keV)を使用した。Si(311)分光結晶にて単色化したX線を入射X線として用い、X線エネルギーはCeO2粉末の回折測定により較正した。応力測定温度は25°Σ、500°Σ、700°Σ、900°Σ、1100°Σとし、高温残留応力測定は試料を高温ステージ(Anton Paar社DHS1100)に設置して実施した。高温測定では測定温度で10min以上キープしてから応力測定を実施した。また実験中は試料チャンバー内に100ml/minの乾燥空気を通気した。X線回折測定はHUBER製6軸回折計上で実施した。入射スリット幅はW2.0mm×H0.5mmとし、高エネルギーX線の回折光を高いS/Nで検出するためCdTe検出器を用い、受光スリットにはソーラスリット(角度分解能:0.08°)を用いた。またX線エネルギーが高く回折角が小さくなるため、応力測定には側傾法を用いた。応力測定には、γ-Niの(311)面回折のピークを用いた。応力計算に必要な室温での応力定数の値は、文献値(実験的に求められたX線的弾性係数及びポアソン比の値[2])を用いて算出した。また、高温でのボンドコートの応力定数は、Ni基超合金のヤング率の温度依存性をもとに比例計算により求めた。散乱角(2θ角)の測定ステップは0.001°、各ステップでの測定時間は2sとした。
実験者は何μmのトップコート層を施工しましたか。
実験者は80μmのトップコート層を施工しました。
JCRRAG_002165
物理
粉体は固体粒子群集合体の総称である。一般に,物質は気体,液体および固体の三態をとり,常温・常圧下では固体状態を呈する物質が圧倒的に多い。化学便覧には,およそ数千種の代表的な無機および有機物質の物性が一覧表で掲載されている。それによると常温,常圧下で無機物質の約75%,有機物質の約60%が固体である。そこで,人類は太古の昔から,固体を利用するため,あるいは食べ易くするには,「細かい粒子の集合体である粉体にすれば良い」ことを知っていた。したがって,我々の身の回りには粉体が満ち溢れ,食品,医薬品,自然の土や砂あるいは絵の具など,我々の生活や文化はこの粉体が育み,粉体によって支えられていると言っても過言ではない。 昭和30~40年代から我が国は工業化社会に突入し,我々の住む社会を便利で,豊かにするために,物質の大多数を占める固体物質を有用な物質に変えて,多様な機能を持つ材料を大量生産するようになった。この材料生産プロセスでは,(a)物質組成の分離,混合や精製を容易にする,(b)反応性を高くする,(c)固体物質を流動させて固体の連続プロセシングを可能にするために,固体を「粉体」にして,流体プロセスと同じように固体物質の連続処理プロセスを構築して物質の大量生産を行った。 粉体工学と技術は,この粉体プロセスの操作や設計のために形成され,大量生産,コストダウンや品質安定化がキーワードであった‘工業化社会’で,大変大きな貢献を果たし,社会から熱い眼差しを得た。その頃の謳い文句は「粉体を征する者,材料を征す」であった。この言葉は,粉体流動挙動の‘御しにくさ’を意味していた。粉体は流動するけれども,流体の流動とは全く異なる性質を持つ。たとえば,容器に入った粉体をその容器の底に排出口を設けて流出させるとしよう。このとき,容器底部からの粉体表面の高さが異なっても,排出量はいつも一定である。液体の場合は,言うまでも無く,液体面の降下とともに排出量が少なくなる。この原因は,粉体の流動では粉体層内にすべり帯と呼ぶ不連続帯が発生するからである。このすべり帯に関係する摩擦相互作用と環境に依存して変化する粒子間付着相互作用が粉体挙動の理論的取り扱いを阻み,粉体挙動の基礎的理解が進まず,思いのままに制御することが難しかったのである。その後の大いなる努力により粉体状態論や粉体力学が整備され,いわゆる「物作りの工学,プロセス工学」としての粉体工学の骨格がしっかり形成された。
「粉体を征する者、材料を征す」という言葉は、粉体流動挙動のどのような特徴を意味していますか。
「粉体を征する者、材料を征す」という言葉は、粉体流動挙動の御しにくさを意味しています。
JCRRAG_002166
物理
液体Se-Te混合系は温度や組成の変化により、連続的な構造転移を示すことが古くから知られている。転移に伴い密度がメゾスコピックに不均質になることが1980年代には提唱されていたが、永らくその実験的な証拠は得られていなかった。この問題に対して我々は、SPring-8/BL04B2を利用した小角X線散乱測定により、その微小な密度ゆらぎの変化を検知することに初めて成功し、2012年の論文で発表した。ただこの実験には不備な点が一つあった。BL04B2は分光結晶が一枚ふりであるため入射光への高調波の混入を避けらないが、検出器にエネルギー分解能のないイメージングプレートを使用したため、完全な単色X線の散乱スペクトル測定ではなかった。そこで今回、Ge半導体検出器とシングルチャンネルアナライザーから成る測定システムを用いることで、散乱光をエネルギー選別した測定を行い、前回の実験結果の妥当性の検証を行った。 キーワード:液体-液体相転移、密度ゆらぎ、小角散乱 背景と研究目的: Se-Te系は全率固溶の2成分系である。液体相にあっては、温度や組成を変化させることにより、液体Seに類似の2配位的な低密度構造から、液体Teに類似の3配位的な高密度構造へと連続的に転移することが調べられている[1-3]。この転移は半導体から金属への変化も伴っている。また転移領域では、温度上昇に伴う負の熱膨張係数[4]や音速の極小[5]など、顕著な熱力学異常も観測されている。熱力学異常を含め、本系の現象を包括的に説明するモデルとして、転移領域では両相がメゾスコピックに混ざり合っているとする「不均質モデル」が1980年代には提唱されていた[6]。ただ不均質性については当時直接的な実験証拠はなく、また「熱平衡な液体が不均質になり得ていいのか?」という本質的な問いも相まって、永らく論争になっていた。この課題に対して、我々はSPring-8を用いた液体Se-Te混合系の小角X線散乱を行い、転移に伴う微小な密度ゆらぎの変化、および転移領域の中心でその強度が極大を示すことを初めて観測し、2012年に論文発表した[7]。この密度ゆらぎの変化は、組成や圧力を変えた場合も転移に連動して変化しており、密度ゆらぎの起源が連続相転移であることも立証した。ただこの実験結果は、定性的な変化としては十分な証拠であったものの、測定した散乱光には、(分光結晶が一枚であることによる)高調波散乱や、Teの蛍光成分など正味の試料からの散乱ではない成分も含まれていた。いくつかの工夫によりこれら余分な成分を見積り、バックグランドとして取り除いてはいたが、実験の不完全性が残されていた。そこで今回、Ge半導体検出器とシングルチャンネルアナライザーを用いた計測システムを用い、測定光をエネルギー選別して高調波成分やTeの蛍光成分を有意に除去することで、これまでの結論の検証を行った。
SPring-8を用いた液体Se-Te混合系の小角X線散乱により、何が初めて観測されましたか。
転移に伴う微小な密度ゆらぎの変化と、転移領域の中心でその強度が極大となる現象が観測されました。
JCRRAG_002167
物理
従来から日常生活や工業製品用の粉末素材を調製するためには,粉体特性測定,装置設計,最適操作に基づき,総合的に調製プロセスを構築する必要がある.最近はとみに高品質で高機能な高付加価値材料の創製が求められてきている.そのためには,これまでの粉粒体集合体に対する操作工学から,より微視的に粒子を取り扱う微粒子工学的観点が必要であり,その際,微粒子の設計のみならずプロセス化のための現象解析と操作原理の探求が不可欠であり,その結実として材料の性能によりトータルな微粒子プロセス操作が評価できる. ここでは,一例として筆者の研究についてその関連性を考察し,今後の先端微粒子系材料開発への工学的展望としたい. これまでの研究は,粉体素材プロセス開発の観点から,大まかに粒子調製,粉粒体流動機構,粉粒体材料特性の三分野に大別される.これらは,粉体のレオロジー的基礎現象をプロセス開発に結びつけるため,微粒子調製により粒子物性および集合体特性を調節し,粉粒体現象の機構解析に基づく装置設計および操作条件の選定により,粉粒体の圧密材料を作製し,その特性でプロセスの評価を行うという系統的,定量的,微視的アプローチで行った.その中には,不連続性,不均一性,分布特性,構造特性などの視点を含んでいる.
最近では、どのような高付加価値材料の創製が求められてきていますか。
高品質で高機能な高付加価値材料の創製が求められてきています。
JCRRAG_002168
物理
防虫網を被覆した施設において,作物生産に好適な環境を維持するためには,防虫網の通気特性を明確にする必要がある。防虫網の通気特性については,森山ら(2008)のように防虫網の風上と風下の風速によって評価した例もあるが,換気設計を行う場合は一般的に圧力損失で評価される(板本ら,2002)。また,Sase and Christianson(1990)は施設の換気窓に防虫網を被覆した場合の換気特性を数値解析により評価しているが,解析に不可欠な防虫網の圧力損失は風洞実験によって求めている。このように,防虫網の通気特性の評価は風洞実験によることが多いが,風洞実験は容易には行えない。防虫網の糸径,間隙の長さ,開口比などの防虫網の諸元から,圧力損失が求められれば,防虫網の通気特性を比較的簡便に評価できることになり,営農現場では有効な情報となる。例えば,Ishizuka(1987)は金網について,Bailey et al.(2003)やValera et al.(2004)は防虫網や通気性のある保温カーテンなどの風洞実験のデータを利用して,圧力損失係数や予測式の係数を決定している。 本研究で筆者らは,南西諸島の園芸施設に被覆する防虫網の通気特性を評価する際の基礎資料を得ることを目的に,防虫網の圧力損失と風速の関係を実測し,圧力損失係数とレイノルズ数の関係についても整理した。次に,諸元の一つである開口比から圧力損失係数を推定する回帰式を導いた。また,既報の圧力損失係数の予測式の精度を検証した。
本研究で筆者らは、防虫網の開口比から何を推定する回帰式を導きましたか。
筆者らは、開口比から圧力損失係数を推定する回帰式を導きました。
JCRRAG_002169
物理
防虫網を被覆した施設において,作物生産に好適な環境を維持するためには,防虫網の通気特性を明確にする必要がある。防虫網の通気特性については,森山ら(2008)のように防虫網の風上と風下の風速によって評価した例もあるが,換気設計を行う場合は一般的に圧力損失で評価される(板本ら,2002)。また,Sase and Christianson(1990)は施設の換気窓に防虫網を被覆した場合の換気特性を数値解析により評価しているが,解析に不可欠な防虫網の圧力損失は風洞実験によって求めている。このように,防虫網の通気特性の評価は風洞実験によることが多いが,風洞実験は容易には行えない。防虫網の糸径,間隙の長さ,開口比などの防虫網の諸元から,圧力損失が求められれば,防虫網の通気特性を比較的簡便に評価できることになり,営農現場では有効な情報となる。例えば,Ishizuka(1987)は金網について,Bailey et al.(2003)やValera et al.(2004)は防虫網や通気性のある保温カーテンなどの風洞実験のデータを利用して,圧力損失係数や予測式の係数を決定している。 本研究で筆者らは,南西諸島の園芸施設に被覆する防虫網の通気特性を評価する際の基礎資料を得ることを目的に,防虫網の圧力損失と風速の関係を実測し,圧力損失係数とレイノルズ数の関係についても整理した。次に,諸元の一つである開口比から圧力損失係数を推定する回帰式を導いた。また,既報の圧力損失係数の予測式の精度を検証した。
防虫網の通気特性の評価はどのような実験によることが多いですか。
防虫網の通気特性の評価は風洞実験によることが多いです。
JCRRAG_002170
物理
以下は、佐瀬勘紀・奥島里美・石井雅久・髙倉直・林真紀夫各氏による論文「ヒートポンプ暖房温室における暖房法の比較」(農業施設40巻(2009)3号)からの抜粋である。 【地中伝熱量】 昼間に太陽エネルギーが温室内地面に蓄えられる。それが夜間に放出されるので,もしそれがそのまま顕熱となれば,それだけ暖房負荷が軽減される。昼間の蓄熱が大きければそれだけ夜間の放出量も多くなることが示されている。ノコギリ歯のようにほぼ定期的に地中伝熱量が少なくなっている場合がある。この日はヒートポンプが能力を落として運転しており,地表面付近の気温の変動に呼応していると思われるが,測定した地表0.9mの気温変動はわずかで,明確な相関関係は見つからなかった。 地中伝熱量の大きさは放射熱損失量と比較しても,かなりの量であり無視できない。ただし,土壌表面で蒸発が起こると,それにはエネルギーが消費される。今回,土壌温度も観察したが,十分な時間の観察はしなかったものの,地表面上90cmの気温との差が小さく,地表面での顕熱移動量は地中伝熱量の10~20%程度と見積もられた。
太陽エネルギーが温室内地面に蓄えられるのはいつですか。
太陽エネルギーが温室内地面に蓄えられるのは昼間です。
JCRRAG_002171
物理
結果および考察: TbM₄,₅吸収端で測定したXASの生データを示す。バックグラウンド処理は行っていない。測定時間はスペクトル1本あたり15分である。X線エネルギーに対してゆるやかに上昇するAu基板からのバックグラウンドの上に、Tbの信号が重畳しているスペクトルが得られた。バックグラウンドに対するTbXAS信号の強度比は、M₅吸収端では14%、M₄吸収端では6%である。この信号とバックグラウンド比は、(a)に示す面直磁場(θ=0°)と(b)のほぼ面内磁場(θ=80°)で大きな差は見られなかった。左右円偏光に対するXASの差で与えられるXMCD信号は、面内磁場の方がやや大きい。信号に対するバックグラウンド強度は大きいが、スペクトルの統計精度自体は高く、ノイズの少ない良好なスペクトルが得られている。 バックグラウンドのスペクトルを二次関数で近似して差し引いた結果を示す。XASスペクトルのM₅端でのピーク強度を1に規格化してプロットしている。十分に解析に耐えうる明瞭なXASおよびXMCDスペクトルが得られた。XMCD信号のノイズレベルは、およそ0.005と評価できる。これは、XASのピーク強度の0.5%の精度であり、このデータにsum rule解析を行うことでTbイオンの磁気モーメントの値を0.01μBの精度で決定することができる。ただし、基板からのバックグラウンドがXAS信号よりも大きいため、sum rule解析による磁気モーメントの値の絶対値は、主にバックグラウンドの引き方によって左右される。θが0°から45°、80°と磁場の角度が面内方向になるにつれてXMCDスペクトルの強度が増大しており、試料が面内の磁気異方性をもつことがわかる。 TbM₅吸収端のエネルギーにて測定したESMを示す。XMCDの結果と同様に、θ=80°で最も信号強度が大きく、試料が弱い面内磁気異方性をもつことを示している。測定に用いた最大磁場1.9TでもESM磁化曲線は飽和しておらず、試料が飽和磁化した状態での磁気モーメントの値を決定するにはより強磁場での測定が必要である。 今後の課題: 単原子層膜厚の希土類分子磁石からのXASおよびXMCDスペクトルを良好な測定精度で得ることができた。BL25SUでのTEY法による測定では、1原子層よりも薄い膜厚もしくは希土類磁性原子の密度の小さい試料での測定が可能であることがわかった。今回の結果から見積もると、実効膜厚0.02ML程度の希土類原子密度でもXMCDスペクトルによる磁気モーメント評価が行えると考えられる。ただし、その場合には相対的によりバックグラウンドが増大するため、スペクトルのバックグラウンドを適切に差し引く方法を確立することで、より精度の高い磁気モーメントの誤差評価を行う必要がある。それによって、さまざまな低濃度希土類のXMCD測定のユーザーニーズに応えていくことができる。本研究で得られた測定感度の情報は、今後の低濃度希土類試料の測定において有用な指針を与えると期待される。
試料はどのような磁気異方性をもっていますか。
試料は面内の磁気異方性をもっています。
JCRRAG_002172
物理
背景と研究目的: MLCCは内部電極とそれに挟まれた誘電体素子を1ユニットとして、多積層化された材料である。現在,MLCC内の誘電体層及び電極層の厚みはそれぞれ1μm、0.5μm以下が実現されており、更なる薄膜化を目指してメーカーがしのぎを削っている。しかしながら、この薄層化による電極/誘電体界面の構造・電子状態の影響が、誘電特性の向上を妨げる大きな要因となり、一方で誘電体素子の薄膜化や誘電体粒自身の微小化に伴って誘電率が低下することも古くから知られており[1,2]、MLCCチップの小型大容量化が頭打ちになっている現状がある。この現状を打破するためには、1.誘電体厚と内部電極厚、及び2.電極/誘電体界面の構造と電子状態、について、情報を得て、特性劣化の微視的機構を明らかにし、新たな物質開発・設計に繋げて行く必要がある。しかし、層内や層間の局所領域の構造や歪み、電子状態についての情報が全く得られていないため、実材料の構造において、ナノスケールで何が起こっているのか、その局所構造あるいは局所歪みがどのように物性発現・特性向上、あるいは特性劣化につながっているか、殆ど明らかにされていない。現状では、仮説・検証を繰り返す試行錯誤と、その結果として得られた知見の積み重ねにより、これらのパラメータの最適化が行われている。従って、MLCCの更なる小型化・高性能化を実現するためには、この現状を打破し、微小領域の構造・歪み解明と、それらを生かした構造制御、すなわち“Materials by Design”の確立が極めて重要な鍵を握っている。本課題の目的は、MLCC実材料における誘電体層の内部(グレイン集合体)の構造と、電極/誘電体界面付近の構造について、それらの空間分布をマッピングし、構造が局所的にどのように変化し、また歪みがどのように入っているかを明らかにすることである。 実験: 実験はSPring-8のBL-40XUに設置されたマイクロX線回折計を用いて行われた。試料架台はXYZ方向のサブマイクロオーダーの位置制御が可能なピエゾモーターステージがあり、μm領域を高い位置再現性で制御可能である。MLCC実材料は村田製作所から提供され、BaTiO3誘電体素子部分の厚みが9、4、3μmの3種のものが用いられた。Ni電極の厚みは全て1μmである。 X線エネルギーは8keVに固定し、試料位置でのビームサイズを1μm、0.7μmに集光した。Ni電極とBaTiO3誘電体素子部分にビームを当てて、回折パターンを振動写真で取得し、縦方向(Z方向)と横方向(X方向)にスキャンして、回折パターンの2次元マッピングを取得した。BaTiO3の正方晶ドメインによりピークが分裂する111回折と、分裂する002/200、102/201/210、112/211回折が観測可能な領域を確保するため、散乱角中心を45°に固定した。2次元高速検出器を用いることで、35°≤2θ≤55°の範囲の回折パターンを同時に観測することができた。低角側からそれぞれ111、002/200、102/201/210、112/211回折に対応している。 結果および考察: ビームサイズに対してBaTiO3の結晶グレインサイズが同程度のため、選択配向がかなり強く出ている。そこで回折パターンの位置依存性を比較するめ、X方向にスキャンしたデータを全て足し合わせて平均化し、さらに4本回折線に対して、Z方向の最大強度で強度を規格化して回折パターンのZ方向依存性をマッピングした。縦軸がZ方向、横軸が2θ方向に対応している。2θ方向に水平に走っている強度は,Ni電極からの蛍光X線であり、Ni電極の位置にそのまま対応していると考えて良い。回折線のピーク位置は実験精度の範囲内でほとんど変化していないように見えるが、Ni電極付近で系統的にズレているのが見られる。更にBaTiO3素子厚が3μmに減少すると、線幅が増大しているのも分かる。この傾向は、他の111、002/200、102/201/210回折においても観測された。 素子厚3μmの場合の112/211回折のPeak Positionと線幅HWHMのZ方向依存性を示した。点線位置がNi電極の位置に対応しているが、電極付近でPeak Positionが減少して格子定数が長くなっていると同時に、線幅が増大している。これは、電極からの応力によりBaTiO3の構造が歪みを受けていることを示唆している。定量解析はこれから行う予定であるが、電極付近で素子の構造が変化していることが分かった。 今後の課題: 今後は定量解析を進めるとともに、更に高角領域の反射データを取得して、構造変化、或いは歪みの情報について、より精度の高い情報を引き出すことが必要である。更には電場印加時や温度変化など、よりオペランドに近い状態でMLCC実材料の構造が微視的にどのように変化しているか、その変化と誘電特性の変化がどのように対応しているか、解明につなげて行くことが必要である。 参考文献: [1] G. Arit et al., Journal of Applied Physics 58, 1619 (1989). [2] S. K. Streiffer et al., Journal of Applied Physics 86, 4565 (1999).
研究の目的は何ですか。
研究の目的は、MLCC実材料における誘電体層の内部(グレイン集合体)の構造と電極/誘電体界面付近の構造についてそれらの空間分布をマッピングし、構造が局所的にどのように変化し、また歪みがどのように入っているかを明らかにすることです。
JCRRAG_002173
物理
背景と研究目的: 一般に、金属を保持したタンパク質の分子内部に見られる「金属結合部位(活性中心)」は、そのタンパク質が生体中で定められた機能を発揮するために最適な幾何学構造をとっていると考えられている。この概念は、1968年に初めてProf. R.J.P. Williamsによって“エンタティック(entatic)”という言葉を用いて提案され[1]、今もなお、酵素や触媒化学等の分野で幅広く引用・支持され続けている。一方、20種類のアミノ酸が数百〜千個繋がったポリペプチド鎖から成るタンパク質では、その独特の折り畳まれ方に応じて、局所的に強固な立体構造を保持する領域や、比較的、変化を起こし易い“柔らかい”部分などを併せ持つ構造的性質を有する。そのため、タンパク質分子内部で「どういった配位環境が特別な活性金属中心(構造)を生み出す要素となるか」について定義することは一般に難しいとされる。そこで、本研究では“エンタティック”に関わるタンパク質の立体構造情報を実験的に得るために、これまでよく知られている銅含有亜硝酸還元酵素(CuNiR(図1))を材料として用い、その“エンタティック”な部位としての2種類の銅結合部位(タイプ-1および-2銅部位)を異種金属イオンで置換し、その時にどのような構造的差異が生じるか調べることを目的とした。著者らはこれまでに様々な酸化還元金属酵素の分子間電子伝達について研究を継続しており[2,3]、本研究から得られる基礎データは、それら分子間電子伝達機構解明の一助になると期待される。 実験: 銅以外の金属を含む金属置換体タンパク質は、N末端に6xHisタグを導入した亜硝酸還元酵素を遺伝子工学的に作成し大腸菌での発現系を用いて発現させ、Ni-NTAアフィニティーカラムクロマトグラフィーで精製したものを用いた。精製後の試料は50mM EDTAを含む中性緩衝液中に一週間以上漬けることで金属を含まないアポ型タンパク質として調製し、その試料に対し各種金属(M2+: Co, Ni, Zn)イオンを含む緩衝液で透析する(4℃で一週間)ことで各金属置換体を調製した。続いて、過剰なM2+イオンを除去後、各金属置換体タンパク質の結晶化とX線回折実験を行った。X線回折実験は大型放射光施設SPring-8 蛋白研ビームラインBL44XUにて実施した。各々の回折データおよび構造精密化統計値を表1に示す。分子置換法により初期位相の決定およびRefmacによる構造精密化を行い、最終的にR因子値が〜20%程に到達したところで精密化を終了した。Znに置換した試料についてはタイプ-1銅部位およびタイプ-2銅部位がZnに置換された構造は確認できたが、分子表面の所々に不明瞭かつ解釈不能な電子密度が多く見られ、今回は精密化途中の段階で断念することとし、参考データ程度として扱うことのみにした。 実験: 著者らは銅以外の金属を含む金属置換体タンパク質は、N 末端に 6xHis タグを導入した亜硝酸還元酵素を遺伝子工学的に作成し大腸菌での発現系を用いて発現させ、Ni-NTA アフィニティーカラムクロマトグラフィーで精製したものを用いた。著者らは精製後の試料は 50 mM EDTA を含む中性緩衝液中に一週間以上漬けることで金属を含まないアポ型タンパク質として調製し、その試料に対し各種金属(M2+: Co, Ni, Zn)イオンを含む緩衝液で透析する(4℃で一週間)ことで各金属置換体を調製した。続いて、過剰な M2+イオンを除去後、各金属置換体タンパク質の結晶化と X 線回折実験を行った。X 線回折実験は大型放射光施設 SPring-8 蛋白研ビームライン BL44XU にて実施した。各々の回折データおよび構造精密化統計値を表1に示す。分子置換法により初期位相の決定およびRefmac による構造精密化を行い、最終的に R 因子値が〜20%程に到達したところで精密化を終了した。Zn に置換した試料についてはタイプ-1銅部位およびタイプ-2銅部位が Zn に置換された構造は確認できたが、分子表面の所々に不明瞭かつ解釈不能な電子密度が多く見られ、今回は精密化途中の段階で断念することとし、参考データ程度として扱うことのみにした。
筆者らは試料を、金属イオンを含む緩衝液でどれくらいの期間かつ何度で透析しましたか。
筆者らは試料を4℃で一週間透析しました。
JCRRAG_002174
物理
1980年代中頃にドイツのH.Gleiterらが,低温においてNanophase Ceramicsが大きな塑性変形性を示すことを報告したのをきっかけにして,新材料としてのナノフェーズ材料の研究が盛んとなった.ナノフェーズ材料の生成過程では,焼結の際の粒界形成や粒界滑り,更にクラスターの回転などといった様々な微視的現象が複雑に関わり合ってくると考えられるため,より現実に近い数値解析を目指す立場としては,実験状況と同じ程度の大きさの微粒子を100個以上配置した大規模なシミュレーションを行なえることが望ましい.筆者を含むルイジアナ州立大学並列材料計算研究所のメンバーは,総原子数百万個のナノフェーズSi₃N₄の並列MDシミュレーションを世界に先駆けて実施し,高温高圧下でのナノフェーズSi₃N₄の焼結過程および焼結体の室温での機械的特性を解析した. 高温高圧下で,ナノフェーズ・セラミックスは非常に速く(ナノ秒程度)ネックが成長し,空孔が消滅していく.微粒子界面付近でのナノフェーズ・セラミックスの粒子拡散は微粒子内部に比べ10倍以上速く,粒界付近の原子の動きやすさと粒径の小ささが,このように速い焼結過程を特徴づけている. 更に,微粒子内部に結晶構造を保ったナノ微結晶(上記のサイズとほぼ同じ)108個の集合に1700℃の温度下,異なる外圧で加圧することにより,様々な密度の焼結体“サンプル”を作った. 得られた焼結体の弾性定数の空孔度と粒径依存性に注目すると,密度比(空孔度に逆比例),粒径のいずれに対しても弾性特性が大きく依存することがわかる.粒径が小さく微粒子の体積に対する界面相の比が大きいため,粒界挙動がバルクな性質に与える影響が大きい.微粒子間境界相とバルク結晶相,および空孔のサンプル内体積比のそれぞれの相の弾性定数を重ね合わせる模型計算(多相構造模型)とシミュレーション結果との良い一致からも,上記の説明が裏付けられる.
何が焼結体サンプルの密度比と粒径に大きく依存することがわかりますか。
弾性特性が焼結体サンプルの密度比と粒径に大きく依存することがわかります。
JCRRAG_002175
物理
従来,液相中における微粒子表面間力は主にDLVO理論により説明されてきたが,このDLVO理論は無機電解質溶液中の表面間力にしか適用できない。しかし,実際の液相微粒子分散系では,分散剤・凝集剤として界面活性剤や高分子電解質がしばしば用いられるため,DLVO理論では解釈できない表面間力が観察される。このような表面間力の理解には分子レベルの解析が必要であるため,分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられるが,計算機の能力による制約から,その実現は困難である。そこで本研究では,次のような手法の開発を試みた。 (1) 溶媒とイオンや界面活性剤などの溶質に対して詳細な分子モデルを用いた小規模な分子動力学計算から,定量的な溶質間相互作用と自己拡散係数を算出する。 (2) (1)で得られた結果を用いて,溶媒を陰に扱うシミュレーションを行う。 このような手法により計算量を大幅に削減することで,微粒子を含む界面活性剤溶液や高分子電解質溶液(構造性流体)のシミュレーションの実現が可能になると考えられる。
実際の液相微粒子分散系で、DLVO理論では解釈できない表面間力が観察されるのはなぜですか。
実際の液相微粒子分散系では、界面活性剤や高分子電解質が分散剤・凝集剤としてしばしば用いられるため、DLVO理論では解釈できない表面間力が観察されます。
JCRRAG_002176
物理
固体粒子の流れを数値解析する手法として,離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が広く用いられている。DEMは粒子間の接触力をバネとダッシュポットでモデル化して与えるものであるが,流体力や付着力などの付加的な力についても,モデル化して与えさえすれば,容易にそれらを考慮した数値解析手法に拡張できる。また,CFD(Computational Fluid Dynamics)の手法とカップリングさせることで,流動層などの粒子系混相流の数値解析にも拡張されている。 流動層では,造粒やコーティングのプロセスにおいて,液を添加することがある。また,最近になって,数mm程度の粗大粒子からなる流動層に少量の液体を加えることで,粒子運動が著しく促進される現象が報告されている。これは未知の物理現象という点で興味深いだけでなく,流動層装置稼働時の省動力化などの実用的な課題とも直結する。 流動層内の粒子流動は高濃度かつ高速の現象であるため,そのメカニズムの詳細を実験で調べることには限界がある。したがって,そのメカニズムの解明には,DEM-CFDシミュレーションが有力なツールとなり得る。DEMに液架橋の影響を考慮したモデルはすでに考案されているが,液を粒子層内に均一分散させ,定常状態を扱ったものが多く,液の輸送をモデル化したものは報告例が少ない。 本研究では,液添加時の粒子流動メカニズム解明のための数値解析手法の確立を目指し,DEMに液輸送モデルを組み込むことを試みる。
数mm程度の粗大粒子からなる流動層に少量の液体を加えることで、何が著しく促進される現象が報告されていますか。
粒子運動が著しく促進される現象が報告されています。
JCRRAG_002177
物理
せん断流中での微粒子の凝集挙動,さらには凝集体自体の力学的特性を理解することは,微粒子製造プロセスや研磨スラリーを用いた研磨プロセス等における最終製品の特性の把握・制御において極めて重要である。例えば,半導体デバイス製造プロセスのキーテクノロジーである化学的機械研磨(CMP)プロセスにおいては,被研磨面のスクラッチといった欠陥の発生が問題視されているが,その発生要因の一つとしてスラリー中の微粒子凝集体の存在が考えられている。従って,研磨粒子のせん断場での凝集状態や圧縮,ずり応力に対する凝集体の変形・分裂挙動といった微粒子凝集体の力学的特性を明らかにすることは,CMPプロセスの高効率化において極めて重要と考えられる。従来より,微粒子凝集体のサイズや構造に及ぼすせん断場の影響に関しては,多くの実験あるいは数値シミュレーションによる検討が行われてきているが,せん断場で形成された凝集体自体の力学的特性に関する研究はほとんど行われていないのが現状である(著者の知る限りでは,Z.Zhang et al., Part. Part. Syst. Charact., 16, 278 (1999) くらいである)。
せん断流中での微粒子の凝集挙動や凝集体自体の力学的特性を理解することは、何において極めて重要ですか。
せん断流中での微粒子の凝集挙動や凝集体自体の力学的特性を理解することは、微粒子製造プロセスや研磨スラリーを使用した研磨プロセス等における最終製品の特性の把握・制御において極めて重要です。
JCRRAG_002178
物理
固体粒子の流れを数値解析する手法として,離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が広く用いられている。DEMは粒子間の接触力をバネとダッシュポットでモデル化して与えるものであるが,流体力や付着力などの付加的な力についても,モデル化して与えさえすれば,容易にそれらを考慮した数値解析手法に拡張できる。また,CFD(Computational Fluid Dynamics)の手法とカップリングさせることで,流動層などの粒子系混相流の数値解析にも拡張されている。 流動層では,造粒やコーティングのプロセスにおいて,液を添加することがある。また,最近になって,数mm程度の粗大粒子からなる流動層に少量の液体を加えることで,粒子運動が著しく促進される現象が報告されている。これは未知の物理現象という点で興味深いだけでなく,流動層装置稼働時の省動力化などの実用的な課題とも直結する。 流動層内の粒子流動は高濃度かつ高速の現象であるため,そのメカニズムの詳細を実験で調べることには限界がある。したがって,そのメカニズムの解明には,DEM-CFDシミュレーションが有力なツールとなり得る。DEMに液架橋の影響を考慮したモデルはすでに考案されているが,液を粒子層内に均一分散させ,定常状態を扱ったものが多く,液の輸送をモデル化したものは報告例が少ない。 本研究では,液添加時の粒子流動メカニズム解明のための数値解析手法の確立を目指し,DEMに液輸送モデルを組み込むことを試みる。
流動層内の粒子流動のメカニズムの解明には、何が有力なツールとなり得ますか。
DEM-CFDシミュレーションが有力なツールとなり得ます。
JCRRAG_002179
物理
せん断流中での微粒子の凝集挙動,さらには凝集体自体の力学的特性を理解することは,微粒子製造プロセスや研磨スラリーを用いた研磨プロセス等における最終製品の特性の把握・制御において極めて重要である。例えば,半導体デバイス製造プロセスのキーテクノロジーである化学的機械研磨(CMP)プロセスにおいては,被研磨面のスクラッチといった欠陥の発生が問題視されているが,その発生要因の一つとしてスラリー中の微粒子凝集体の存在が考えられている。従って,研磨粒子のせん断場での凝集状態や圧縮,ずり応力に対する凝集体の変形・分裂挙動といった微粒子凝集体の力学的特性を明らかにすることは,CMPプロセスの高効率化において極めて重要と考えられる。従来より,微粒子凝集体のサイズや構造に及ぼすせん断場の影響に関しては,多くの実験あるいは数値シミュレーションによる検討が行われてきているが,せん断場で形成された凝集体自体の力学的特性に関する研究はほとんど行われていないのが現状である(著者の知る限りでは,Z.Zhang et al., Part. Part. Syst. Charact., 16, 278 (1999) くらいである)。
せん断場で形成された凝集体自体の、何に関する研究がほとんど行われていないのでしょうか。
力学的特性に関する研究がほとんど行われていません。
JCRRAG_002180
物理
本研究では,微粒子凝集体1個の力学的特性を測定するためにマイクロ圧縮試験装置を製作し,ポリスチレン微粒子凝集体を対象とした圧縮試験を試みた。結果として,ポリスチレン微粒子凝集体の圧縮力-変位曲線を示すとともに,破壊強度に及ぼす凝集体サイズの影響を明らかにした。しかし,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性を定量的に議論するのに十分なデータを獲得できたとは言い難い。そこで筆者は,今後以下のような課題を課し,研究を進めて行きたいと考えている。 1) マイクロ圧縮試験装置により,ポリスチレン微粒子凝集体の力学的特性(圧縮力-変位,ひずみ曲線,破壊強度の測定)に及ぼす調整条件(一次粒子サイズ,スラリー組成,せん断速度,凝集剤添加等)の影響を更に検討し,凝集体の調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。 2) 1)の構造と力学的特性の相関をより詳細に検討するために(実験では観察できない部分を補うために),微粒子凝集体の圧縮変形過程の数理モデル化を行う。 3) 冒頭の「 研究目的」で述べたように,測定対象を化学的機械研磨(CMP)において使用される無機微粒子(シリカやアルミナ微粒子)凝集体に拡張し,その調整条件-構造-力学的特性の相関を明らかにする。また,研究で得られた知見をCMPプロセスの最適化のための基礎データとして蓄積する。
筆者は、なぜ微粒子凝集体の圧縮変形過程の数理モデル化を行いたいと考えていますか。
筆者は、1)の構造と力学的特性の相関をより詳細に検討するために(実験では観察できない部分を補うために)、微粒子凝集体の圧縮変形過程の数理モデル化を行いたいと考えています。
JCRRAG_002181
物理
固体粒子の流れを数値解析する手法として,離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が広く用いられている。DEMは粒子間の接触力をバネとダッシュポットでモデル化して与えるものであるが,流体力や付着力などの付加的な力についても,モデル化して与えさえすれば,容易にそれらを考慮した数値解析手法に拡張できる。また,CFD(Computational Fluid Dynamics)の手法とカップリングさせることで,流動層などの粒子系混相流の数値解析にも拡張されている。 流動層では,造粒やコーティングのプロセスにおいて,液を添加することがある。また,最近になって,数mm程度の粗大粒子からなる流動層に少量の液体を加えることで,粒子運動が著しく促進される現象が報告されている。これは未知の物理現象という点で興味深いだけでなく,流動層装置稼働時の省動力化などの実用的な課題とも直結する。 流動層内の粒子流動は高濃度かつ高速の現象であるため,そのメカニズムの詳細を実験で調べることには限界がある。したがって,そのメカニズムの解明には,DEM-CFDシミュレーションが有力なツールとなり得る。DEMに液架橋の影響を考慮したモデルはすでに考案されているが,液を粒子層内に均一分散させ,定常状態を扱ったものが多く,液の輸送をモデル化したものは報告例が少ない。 本研究では,液添加時の粒子流動メカニズム解明のための数値解析手法の確立を目指し,DEMに液輸送モデルを組み込むことを試みる。
すでに考案されている、DEMに液架橋の影響を考慮したモデルは、どのような状態の液を扱ったものが多いですか。
粒子層内に均一分散させられた、定常状態の液を扱ったものが多いです。
JCRRAG_002182
物理
従来,液相中における微粒子表面間力は主にDLVO理論により説明されてきたが,このDLVO理論は無機電解質溶液中の表面間力にしか適用できない。しかし,実際の液相微粒子分散系では,分散剤・凝集剤として界面活性剤や高分子電解質がしばしば用いられるため,DLVO理論では解釈できない表面間力が観察される。このような表面間力の理解には分子レベルの解析が必要であるため,分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられるが,計算機の能力による制約から,その実現は困難である。そこで本研究では,次のような手法の開発を試みた。 (1) 溶媒とイオンや界面活性剤などの溶質に対して詳細な分子モデルを用いた小規模な分子動力学計算から,定量的な溶質間相互作用と自己拡散係数を算出する。 (2) (1)で得られた結果を用いて,溶媒を陰に扱うシミュレーションを行う。 このような手法により計算量を大幅に削減することで,微粒子を含む界面活性剤溶液や高分子電解質溶液(構造性流体)のシミュレーションの実現が可能になると考えられる。
DLVO理論は何にしか適用できないですか。
DLVO理論は無機電解質溶液中の表面間力にしか適用できません。
JCRRAG_002183
物理
固体粒子の流れを数値解析する手法として,離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が広く用いられている。DEMは粒子間の接触力をバネとダッシュポットでモデル化して与えるものであるが,流体力や付着力などの付加的な力についても,モデル化して与えさえすれば,容易にそれらを考慮した数値解析手法に拡張できる。また,CFD(Computational Fluid Dynamics)の手法とカップリングさせることで,流動層などの粒子系混相流の数値解析にも拡張されている。 流動層では,造粒やコーティングのプロセスにおいて,液を添加することがある。また,最近になって,数mm程度の粗大粒子からなる流動層に少量の液体を加えることで,粒子運動が著しく促進される現象が報告されている。これは未知の物理現象という点で興味深いだけでなく,流動層装置稼働時の省動力化などの実用的な課題とも直結する。 流動層内の粒子流動は高濃度かつ高速の現象であるため,そのメカニズムの詳細を実験で調べることには限界がある。したがって,そのメカニズムの解明には,DEM-CFDシミュレーションが有力なツールとなり得る。DEMに液架橋の影響を考慮したモデルはすでに考案されているが,液を粒子層内に均一分散させ,定常状態を扱ったものが多く,液の輸送をモデル化したものは報告例が少ない。 本研究では,液添加時の粒子流動メカニズム解明のための数値解析手法の確立を目指し,DEMに液輸送モデルを組み込むことを試みる。
固体粒子の流れを数値解析する手法として、何が広く用いられていますか。
離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が用いられています。
JCRRAG_002184
物理
構造性流体中の表面間力計算を行うためには,それに先立ち,その流体自体を適切に表現できなければいけない。そこで,筆者はまず大規模な界面活性剤水溶液のシミュレーションの実現を試みた。その結果,界面活性剤が集合体を形成する様子や,集合体が分裂する様子が観察された。また,筆者が水中における界面活性剤ミセルのシミュレーションを行った結果,実験で示されるようなミセル内部の流動性を表現できることが示された。このミセルの内部構造は,水分子まで含んだ通常の分子動力学法により,膨大な計算時間を費やして得られた結果とも良好に一致した。さらに,陰溶媒モデルにより,電解質によるミセルの安定化を表現できることも確認された。以上のように,本研究の手法により界面活性剤水溶液を表現できることが示された。 DLVO理論では,表面間力は固液界面に形成される電気二重層の重なりによる静電反発力と,van der Waals引力との釣り合いで表現される。このDLVO理論により,電解質水溶液中における表面間力は正確に記述することができる。そこで,塩化ナトリウム水溶液中に二つの球形粒子を導入したシミュレーションにより,表面間力の解析を行い,得られた結果をDLVO理論と比較,検証した。その結果,本手法により粒子表面間力を適切に表現できることを確認すると共に,DLVO理論では不明であった粒子・溶液界面での詳細な溶質分子分布を明らかにした。 以上のように,これまでに界面活性剤水溶液やコロイド粒子分散系へ適用可能な,大規模シミュレーション手法の開発に成功し,界面活性剤水溶液のような構造性流体中における粒子表面間力算出のための基礎を確立した。筆者は,今後,これまで開発した手法を組合せ,界面活性剤水溶液中における粒子表面間力算出という,これまでは実現できなかったシミュレーションに取り組んでいく予定である。
筆者が大規模な界面活性剤水溶液のシミュレーションを試みた結果、何が観察されましたか。
界面活性剤が集合体を形成する様子や、集合体が分裂する様子が観察されました。
JCRRAG_002185
物理
構造性流体中の表面間力計算を行うためには,それに先立ち,その流体自体を適切に表現できなければいけない。そこで,筆者はまず大規模な界面活性剤水溶液のシミュレーションの実現を試みた。その結果,界面活性剤が集合体を形成する様子や,集合体が分裂する様子が観察された。また,筆者が水中における界面活性剤ミセルのシミュレーションを行った結果,実験で示されるようなミセル内部の流動性を表現できることが示された。このミセルの内部構造は,水分子まで含んだ通常の分子動力学法により,膨大な計算時間を費やして得られた結果とも良好に一致した。さらに,陰溶媒モデルにより,電解質によるミセルの安定化を表現できることも確認された。以上のように,本研究の手法により界面活性剤水溶液を表現できることが示された。 DLVO理論では,表面間力は固液界面に形成される電気二重層の重なりによる静電反発力と,van der Waals引力との釣り合いで表現される。このDLVO理論により,電解質水溶液中における表面間力は正確に記述することができる。そこで,塩化ナトリウム水溶液中に二つの球形粒子を導入したシミュレーションにより,表面間力の解析を行い,得られた結果をDLVO理論と比較,検証した。その結果,本手法により粒子表面間力を適切に表現できることを確認すると共に,DLVO理論では不明であった粒子・溶液界面での詳細な溶質分子分布を明らかにした。 以上のように,これまでに界面活性剤水溶液やコロイド粒子分散系へ適用可能な,大規模シミュレーション手法の開発に成功し,界面活性剤水溶液のような構造性流体中における粒子表面間力算出のための基礎を確立した。筆者は,今後,これまで開発した手法を組合せ,界面活性剤水溶液中における粒子表面間力算出という,これまでは実現できなかったシミュレーションに取り組んでいく予定である。
筆者が水中における界面活性剤ミセルのシミュレーションを行った結果、何が示されましたか。
実験で示されるようなミセル内部の流動性を表現できることが示されました。
JCRRAG_002186
物理
固気流動層は,密度や粘度など液体と類似した性質を持つことが一般的に知られている。固気流動層に物体を投入すると,固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体は浮揚し,逆に密度の大きい物体は沈降するため乾式で比重分離が可能である。比重分離の方法として,比重調整した液体を用いる湿式法が存在するが,1)廃液処理が必要,2)装置からの液漏れ,3)分離後の乾燥工程が必要,4)比重調整剤のコスト高といった問題が生じるため,上述の乾式法が注目を集めている。しかし,分離媒体として粒子を用いているため,粒子群の流動化状態は空気の相対湿度の影響を大きく受け,特に高湿度下においては粒子表面への水の付着により粒子同士が凝集し,良好な流動化状態を保つことができず物体浮沈にも大きな影響を与える。従って,高湿度下においても粒子群の流動性が損なわれない粒子を用いれば,それらの問題を解決できるのではないかと考えられる。そこで筆者は,本研究で,分離媒体として用いる粒子表面の濡れ特性(親水性と疎水性)に注目し,それらの違いが相対湿度変化にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。具体的な研究内容として,分離媒体に濡れ性の異なる粒子を用い,下部から送り込む空気の相対湿度変化が流動化状態にどのような影響を与えるのかについて検討を行うため,圧力プロファイル測定と固気流動層の見掛け密度測定を行った。
固気流動層に物体が投入されると、固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体はどうなりますか。
固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体は浮揚します。
JCRRAG_002187
物理
固気流動層は,密度や粘度など液体と類似した性質を持つことが一般的に知られている。固気流動層に物体を投入すると,固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体は浮揚し,逆に密度の大きい物体は沈降するため乾式で比重分離が可能である。比重分離の方法として,比重調整した液体を用いる湿式法が存在するが,1)廃液処理が必要,2)装置からの液漏れ,3)分離後の乾燥工程が必要,4)比重調整剤のコスト高といった問題が生じるため,上述の乾式法が注目を集めている。しかし,分離媒体として粒子を用いているため,粒子群の流動化状態は空気の相対湿度の影響を大きく受け,特に高湿度下においては粒子表面への水の付着により粒子同士が凝集し,良好な流動化状態を保つことができず物体浮沈にも大きな影響を与える。従って,高湿度下においても粒子群の流動性が損なわれない粒子を用いれば,それらの問題を解決できるのではないかと考えられる。そこで筆者は,本研究で,分離媒体として用いる粒子表面の濡れ特性(親水性と疎水性)に注目し,それらの違いが相対湿度変化にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。具体的な研究内容として,分離媒体に濡れ性の異なる粒子を用い,下部から送り込む空気の相対湿度変化が流動化状態にどのような影響を与えるのかについて検討を行うため,圧力プロファイル測定と固気流動層の見掛け密度測定を行った。
湿式法の問題は何ですか。
湿式法は、廃液処理と分離後の乾燥工程が必要であることと、装置から液漏れすることと、比重調整剤のコストが高いことが問題です。
JCRRAG_002188
物理
固気流動層は,密度や粘度など液体と類似した性質を持つことが一般的に知られている。固気流動層に物体を投入すると,固気流動層の見掛け密度よりも密度の小さい物体は浮揚し,逆に密度の大きい物体は沈降するため乾式で比重分離が可能である。比重分離の方法として,比重調整した液体を用いる湿式法が存在するが,1)廃液処理が必要,2)装置からの液漏れ,3)分離後の乾燥工程が必要,4)比重調整剤のコスト高といった問題が生じるため,上述の乾式法が注目を集めている。しかし,分離媒体として粒子を用いているため,粒子群の流動化状態は空気の相対湿度の影響を大きく受け,特に高湿度下においては粒子表面への水の付着により粒子同士が凝集し,良好な流動化状態を保つことができず物体浮沈にも大きな影響を与える。従って,高湿度下においても粒子群の流動性が損なわれない粒子を用いれば,それらの問題を解決できるのではないかと考えられる。そこで筆者は,本研究で,分離媒体として用いる粒子表面の濡れ特性(親水性と疎水性)に注目し,それらの違いが相対湿度変化にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。具体的な研究内容として,分離媒体に濡れ性の異なる粒子を用い,下部から送り込む空気の相対湿度変化が流動化状態にどのような影響を与えるのかについて検討を行うため,圧力プロファイル測定と固気流動層の見掛け密度測定を行った。
筆者は本研究で何について検討していますか。
筆者は、分離媒体として用いる粒子表面の濡れ特性(親水性と疎水性)の違いが相対湿度変化にどのような影響を与えるのかについて検討しています。
JCRRAG_002189
物理
本研究では,粒子表面の濡れ特性の異なる3種類の粒子を用いて,相対湿度変化が流動化状態及び物体浮沈に与える影響について検討し,疎水性の高い粒子を用いることで,高湿度下においても粒子群の流動性が悪化することなく,密度差通りの浮沈が行なわれることが明らかとなった。これまで本研究室では,僅かな密度差の物体や形状の異なる物体など様々な物体の乾式比重分離を試み,高精度の分離に成功した。しかし,それらは低湿度下において行ったものである。従って,時期により相対湿度が大きく変化する地域で乾式比重分離を行なう場合,相対湿度を制御する装置が必要となる。実用化を考える上で分離精度だけでなくコスト面も重要視されることから,それらを必要としない疎水性粒子を用いた乾式比重分離は,設備コストを削減可能な点からも有用な技術と考えられる。今後のさらなる検討課題として,湿潤物体の分離が挙げられる。本手法を鉱石の分離に利用する場合,濡れた鉱石の流動層への投入が想定される。また,廃棄物の素材分離に利用する場合も同様に考えられる。従って,本研究で得られた情報をベースに,疎水性粒子を用いた流動層による湿潤物体の分離を今後行っていきたい。
本研究で明らかになったことは何ですか。
疎水性の高い粒子を用いることで、高湿度下においても粒子群の流動性が悪化することなく、密度差通りの浮沈が行なわれることが明らかになりました。
JCRRAG_002190
物理
本研究では,粒子表面の濡れ特性の異なる3種類の粒子を用いて,相対湿度変化が流動化状態及び物体浮沈に与える影響について検討し,疎水性の高い粒子を用いることで,高湿度下においても粒子群の流動性が悪化することなく,密度差通りの浮沈が行なわれることが明らかとなった。これまで本研究室では,僅かな密度差の物体や形状の異なる物体など様々な物体の乾式比重分離を試み,高精度の分離に成功した。しかし,それらは低湿度下において行ったものである。従って,時期により相対湿度が大きく変化する地域で乾式比重分離を行なう場合,相対湿度を制御する装置が必要となる。実用化を考える上で分離精度だけでなくコスト面も重要視されることから,それらを必要としない疎水性粒子を用いた乾式比重分離は,設備コストを削減可能な点からも有用な技術と考えられる。今後のさらなる検討課題として,湿潤物体の分離が挙げられる。本手法を鉱石の分離に利用する場合,濡れた鉱石の流動層への投入が想定される。また,廃棄物の素材分離に利用する場合も同様に考えられる。従って,本研究で得られた情報をベースに,疎水性粒子を用いた流動層による湿潤物体の分離を今後行っていきたい。
時期により相対湿度が大きく変化する地域で乾式比重分離を行なう場合、何が必要ですか。
相対湿度を制御する装置が必要です。
JCRRAG_002191
物理
半導体加工技術の進歩がこのまま継続するならば,10年以内に電子デバイスの基本構造は10ナノメータ程度にまで微細化が進むと言われている.また,ナノメーターの粒径をもつセラミックス焼結体が示す特異な性質を利用して,新しい構造材料を設計しようとする研究が盛んに行われている.それらナノ構造物質には,結晶格子定数の数倍から数十倍程度におよぶ周期の非一様性があり,応用上重要となるマクロな物理量を理論解析から引き出すためには,数百万個から数十憶個の原子一つ一つを真正面から取り扱えることが望ましい. 一方,近年の計算科学技術の進歩は目覚ましく,計算機性能,特に安価なPCをベースにした並列計算機が普及し,そのような計算資源に適応する科学計算コードの並列化技術,ならびに大規模データの効率的処理のためのデータ可視化技術の成長により,上記のような10⁶~10⁹原子を直接扱う分子動力学 (MD) シミュレーションと,その結果を効率的に解析・表現する基盤技術が整いつつある. 本稿では,上記のような並列計算技術を援用したセラミックス・ナノ微粒子集合体の分子動力学 (MD) シミュレーションについて,筆者がこれまでに関わってきた研究を中心に概説する.
半導体加工技術の進歩がこのまま継続すると、何が進むと言われていますか。
10年以内に10ナノメータ程度までの電子デバイスの基本構造の微細化が進むと言われています。
JCRRAG_002192
物理
筆者らは,高分子の球形粒子を1個ずつ金属板に衝突させて,一回の衝突(接触)で移動する電荷量を測定する実験を行ってきた。空気銃で打ち出された粒子は二重円筒型ファラデーケージを通過して金属板に衝突する。衝突前の粒子が持っている電荷は二重円筒型ファラデーケージから得られる波形の高さから計算できる。衝突直前の速度はこの波形の幅で計算される。また,衝突で粒子が新たに得る電荷量は分離後に金属板に残された電荷の逆符号としてエレクトロメータで観測される。 衝突帯電量は,粒子の初期帯電量に対して直線的に依存している。この結果は,前述の "high density limit" とするモデル,あるいはコンデンサーモデルと大変相性がよい。つまり,接触時とは,コンデンサー回路が閉じた状態に対応し,コンデンサーは速やかに飽和電荷まで充電されると考えると,初期帯電量は回路が閉じる前にコンデンサー極板が既に持っていた電荷に対応する。したがって,衝突帯電量は,この初期帯電量と飽和帯電量の差し引きに対応すると考えることができる。もう少し詳しく言うと,この結果は,絶縁性物質の表面電子状態密度が充分に高い ("high density limit") か,または一様に分布していることに対応していると考えて良い。 ところが,実験結果の詳細な検討結果は,上のような考え方を支持するものではなかった。衝突帯電量ΔQが初期帯電量Qiと飽和帯電量CVcの差し引きに対応すると考えると,ΔQ=CVc−Qi (1)となる。ここで,Cはコンデンサーの容量である。初期帯電量(ΔQ=0 )の値を平衡帯電量Qeと称するが,この値は式(1)より,Qe(=Qi)=CVc=C(Wm−Wp)/e (2)となり,同じ絶縁体粒子でも,衝突する金属によって変わる(金属の仕事関数に比例する)のである。しかし実験結果は,金属の仕事関数には依存しなかった。この結果は,粒子と金属が接触している状態では,充電電荷量はコンデンサーモデルに従って金属の仕事関数に依存するにせよ,分離後の電荷(観測される粒子帯電量)は仕事関数(別な言い方をすれば接触電位差)には依存せず,むしろ粒子側の物性に依存していることを示唆している。
高分子の球形粒子を1個ずつ金属板に衝突させて、1回の衝突(接触)で移動する電荷量を測定する実験では、衝突前の粒子が持っている電荷は何から計算できますか。
衝突前の粒子が持っている電荷は、二重円筒型ファラデーケージから得られる波形の高さから計算できます。
JCRRAG_002193
物理
従来,液相中における微粒子表面間力は主にDLVO理論により説明されてきたが,このDLVO理論は無機電解質溶液中の表面間力にしか適用できない。しかし,実際の液相微粒子分散系では,分散剤・凝集剤として界面活性剤や高分子電解質がしばしば用いられるため,DLVO理論では解釈できない表面間力が観察される。このような表面間力の理解には分子レベルの解析が必要であるため,分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられるが,計算機の能力による制約から,その実現は困難である。そこで本研究では,次のような手法の開発を試みた。 (1) 溶媒とイオンや界面活性剤などの溶質に対して詳細な分子モデルを用いた小規模な分子動力学計算から,定量的な溶質間相互作用と自己拡散係数を算出する。 (2) (1)で得られた結果を用いて,溶媒を陰に扱うシミュレーションを行う。 このような手法により計算量を大幅に削減することで,微粒子を含む界面活性剤溶液や高分子電解質溶液(構造性流体)のシミュレーションの実現が可能になると考えられる。
分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが実現困難なのはなぜですか。
分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションは、計算機の能力による制約のため、実現が困難です。
JCRRAG_002194
物理
従来,液相中における微粒子表面間力は主にDLVO理論により説明されてきたが,このDLVO理論は無機電解質溶液中の表面間力にしか適用できない。しかし,実際の液相微粒子分散系では,分散剤・凝集剤として界面活性剤や高分子電解質がしばしば用いられるため,DLVO理論では解釈できない表面間力が観察される。このような表面間力の理解には分子レベルの解析が必要であるため,分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられるが,計算機の能力による制約から,その実現は困難である。そこで本研究では,次のような手法の開発を試みた。 (1) 溶媒とイオンや界面活性剤などの溶質に対して詳細な分子モデルを用いた小規模な分子動力学計算から,定量的な溶質間相互作用と自己拡散係数を算出する。 (2) (1)で得られた結果を用いて,溶媒を陰に扱うシミュレーションを行う。 このような手法により計算量を大幅に削減することで,微粒子を含む界面活性剤溶液や高分子電解質溶液(構造性流体)のシミュレーションの実現が可能になると考えられる。
DLVO理論では解釈できない面間力の理解には分子レベルの解析が必要であるため、何に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられますか。
分子動力学法やモンテカルロ法に基づく計算機シミュレーションが有効であると考えられます。
JCRRAG_002195
物理
 成長速度の比較的早い0.27と0.20ML/sの成長条件では、実験結果と計算結果は一致し、一つの偏析係数で表現することが可能であった。ここで使用した偏析係数Rはそれぞれ0.82と0.84であり、成長速度が遅いほうが、Rが大きい傾向であった。これらの値は、先行研究と同程度の値である[2,3]。  一方、成長速度の遅い0.10ML/sでは、一つの偏析係数での再現は不可能であった。膜厚が薄い領域(膜厚37ML)では大きな偏析係数(R=0.92)を使用しないと実験結果と一致しないが、そのままの値では膜厚増加に伴う変化と一致せず、70ML以上の膜厚では、より小さい偏析係数(R=0.87)での計算結果と一致した。この結果は、特に成長速度が遅い場合において、これまでの偏析モデルを修正する必要を示唆している。成長速度が低いほど熱平衡状態に近い点や成長に伴い歪みが変化する点を考慮する必要があると考えられる。 まとめおよび今後の課題:  MBE法を用いたGaAs(001)基板上へのInGaAs薄膜成長中のIn偏析過程の解明を目指し、SPring-8BL11XUのMBEとX線回折計が直接組み合わされた装置を利用して、成長中のリアルタイム測定を行なった。回折強度計算と実験結果との比較から、成長中の膜中のIn分布の変化を算出し、成長中の偏析係数を見積もった。成長速度が早い場合は(0.20, 0.27ML/s)、一つの偏析係数で計算結果と実験結果が一致したが、成長速度が遅い場合(0.10ML/s)では1つの偏析係数で説明することが不可能であった。以上の結果は、特に成長速度が遅い場合において、これまでの偏析モデルを修正する必要を示唆している。
実験結果と計算結果が一致し、1つの偏析係数で表現することが可能であった成長速度の比較的早い成長条件は、何ML/sと何ML/sですか?
実験結果と計算結果が一致し、1つの偏析係数で表現することが可能であった成長速度の比較的早い成長条件は、0.27ML/sと0.20ML/sです。
JCRRAG_002196
物理
 硫化ニッケルのα-βの相転移温度が化学組成(硫黄成分の含有量)の違いで異なることはNi-S状態図の解析だけでなく実験結果からも示された.DTAの測定は窒素雰囲気中で約50個のサンプルに対して行われた.  α相の硫化ニッケルが5°C/minの加熱によって177°C付近でβ相転移(発熱反応)した後に,270°C付近と396°C付近でα相に相転移する現象(吸熱反応)が確認された.このことはそれぞれNi₁₋ₓSとNi₇S₆のβ相からα相への相転移を示すと考えられる.彼らは上記の相転移の現象を考慮してオフライン・ヒートソーク試験の加熱温度の上限を260°Cと提案し,さらにヒートソーク炉内での保持温度を240±20°Cとして設定した.  これらの結果はSakai and Kikutaによっても明確に示され,さらにEN14179-1-2005の290±10°Cの保持温度に対してβ相転移した硫化ニッケルの一部が再びα相へ相転移する危険性を指摘した.
何が5°C/minの加熱によって177°C付近でβ相転移(発熱反応)しましたか?
α相の硫化ニッケルが5°C/minの加熱によって177°C付近でβ相転移(発熱反応)しました。
JCRRAG_002197
物理
溶鋼の凝固過程における二次介在物の生成は、ミクロ偏析がきっかけとなり生じる。ミクロ偏析の進行は液相線温度を低下させるため、凝固界面温度の低下をもたらし、その結果、介在物の溶解度(積)が低下する。これに加え、ミクロ偏析の進行に伴い液相中の溶質濃度が増大するため、介在物の溶解度を超えた場合に、ある確率で介在物の核生成を生じる。このように二次介在物の生成は、そのきっかけこそ明白であるものの、種々の複合的な要因の結果生じる複雑な現象と言える。凝固後の組織における二次介在物の分散制御は、鋼材の特性を大きく左右する重要な課題であるため、凝固後の組織における介在物のサイズおよび分散状態から、その生成挙動が検討されてきた。しかし、凝固後の介在物の分布は、必ずしも介在物の生成位置と一致するとは限らず、液相中でいつ、どこで、どの過飽和度で介在物が晶出したのかは推定の域を出ない。よって、介在物の分散制御に向け、その生成挙動を明らかにすることが望まれている。
溶鋼の凝固過程における二次介在物の生成は、何がきっかけとなり生じますか?
溶鋼の凝固過程における二次介在物の生成は、ミクロ偏析がきっかけとなり生じます。
JCRRAG_002198
物理
溶鋼の凝固過程における二次介在物の生成は、ミクロ偏析がきっかけとなり生じる。ミクロ偏析の進行は液相線温度を低下させるため、凝固界面温度の低下をもたらし、その結果、介在物の溶解度(積)が低下する。これに加え、ミクロ偏析の進行に伴い液相中の溶質濃度が増大するため、介在物の溶解度を超えた場合に、ある確率で介在物の核生成を生じる。このように二次介在物の生成は、そのきっかけこそ明白であるものの、種々の複合的な要因の結果生じる複雑な現象と言える。凝固後の組織における二次介在物の分散制御は、鋼材の特性を大きく左右する重要な課題であるため、凝固後の組織における介在物のサイズおよび分散状態から、その生成挙動が検討されてきた。しかし、凝固後の介在物の分布は、必ずしも介在物の生成位置と一致するとは限らず、液相中でいつ、どこで、どの過飽和度で介在物が晶出したのかは推定の域を出ない。よって、介在物の分散制御に向け、その生成挙動を明らかにすることが望まれている。
ミクロ偏析の進行は何をもたらしますか?
ミクロ偏析の進行は液相線温度を低下させるため、凝固界面温度の低下をもたらします。
JCRRAG_002199
物理
 硫化ニッケルのα-βの相転移温度が化学組成(硫黄成分の含有量)の違いで異なることはNi-S状態図の解析だけでなく実験結果からも示された.DTAの測定は窒素雰囲気中で約50個のサンプルに対して行われた.  α相の硫化ニッケルが5°C/minの加熱によって177°C付近でβ相転移(発熱反応)した後に,270°C付近と396°C付近でα相に相転移する現象(吸熱反応)が確認された.このことはそれぞれNi₁₋ₓSとNi₇S₆のβ相からα相への相転移を示すと考えられる.彼らは上記の相転移の現象を考慮してオフライン・ヒートソーク試験の加熱温度の上限を260°Cと提案し,さらにヒートソーク炉内での保持温度を240±20°Cとして設定した.  これらの結果はSakai and Kikutaによっても明確に示され,さらにEN14179-1-2005の290±10°Cの保持温度に対してβ相転移した硫化ニッケルの一部が再びα相へ相転移する危険性を指摘した.
オフライン・ヒートソーク試験の加熱温度の上限は何℃で提案されましたか?
オフライン・ヒートソーク試験の加熱温度の上限は、260℃で提案されました。
JCRRAG_002200
物理
 硫化ニッケルのα-βの相転移温度が化学組成(硫黄成分の含有量)の違いで異なることはNi-S状態図の解析だけでなく実験結果からも示された.DTAの測定は窒素雰囲気中で約50個のサンプルに対して行われた.  α相の硫化ニッケルが5°C/minの加熱によって177°C付近でβ相転移(発熱反応)した後に,270°C付近と396°C付近でα相に相転移する現象(吸熱反応)が確認された.このことはそれぞれNi₁₋ₓSとNi₇S₆のβ相からα相への相転移を示すと考えられる.彼らは上記の相転移の現象を考慮してオフライン・ヒートソーク試験の加熱温度の上限を260°Cと提案し,さらにヒートソーク炉内での保持温度を240±20°Cとして設定した.  これらの結果はSakai and Kikutaによっても明確に示され,さらにEN14179-1-2005の290±10°Cの保持温度に対してβ相転移した硫化ニッケルの一部が再びα相へ相転移する危険性を指摘した.
硫化ニッケルのα-βの相転移温度は化学組成の違いで異なりますか?
はい、硫化ニッケルのα-βの相転移温度は化学組成(硫黄成分の含有量)の違いで異なります。