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 ロジャーおじさんが8割残ってることを報告してくれたから嘘じゃ無いよ。
「ちっ、可愛くねぇガキだな」
 周り中、色んな匂いがしてる。木を切った時の匂い、熱した土の匂い、焦げた草の匂い。見れば、ハンナはまだほかほかの沼の跡地を木の枝でツンツンして遊んでる。戦士様は、折れた大木の様子を見に行ってて、アラン様は壊れた岩の欠片をナイフでつついてる。
 皆の様子を視ていると、神官様が気楽な調子で近づいてきた。
「じゃぁ、神術やってみようか? 基本は、こないだやった祈りだね。祈りに願いを乗せる。霊的センターのことは気にしないで良いよ。ひたすら対象の神に願いを届けるんだ。だからほんとは神についてよく勉強しなきゃ行けないんだけど……。まっ、サウルならできそうな気がするからやってみよう。今からちょっと治癒を試すから、真似して」
「あ、はい」
 神官様は、そのままスタスタと戦士様のところに歩いて行って、斜めだけど、辛うじて立っている木に近づく。あ、僕もちゃんと付いていったよ。
 そして、神官様がちょっと深呼吸をして、息を吐く。手のひらを木に向けると、手のひらと木が白く光る。エーテルの光だ。木が、ぐぐぐっとまっすぐに戻っていく。そして、枝が、葉がきれいに戻っていく。
「こんな感じだけど、どうかな?」
「ええと、はい。多分。あ、でも……」
「なんだい?」
「どの神様にお祈りすれば良いんでしょう? 僕、まだ特定の神様への信仰が……」
「あぁ、確かに神格についての勉強もまだだしね。それなら、コミエ村の辺りを管轄されている土地神様にしてみてはどうかな?」
 あの女神様かぁ……。確かに生まれた時から見てくださってる神様なんだし。
「分かりました。この木のこと、お願いしてみます」
 こういう形で神様にお願いして良いのかな? とかちょっと思いながらも、切り替える。
 木が元通りになりますように。女神様のことを思い出しながら、祈りを捧げ、願いを乗せる。
 そして《《神の力》》が還ってきて。聞こえ『サウル、コミエ村のサウル。あなたに力を貸しましょう』土の香りがする音が、その振動が僕を満たしていきあふれ『再生』の意思と共に力が僕を通る……。
 白く光る木が再生していく。
 《《逆回し》》のように欠けた幹が満たされ枝が生え、葉が茂る。
 女神様の力と高揚感が僕から去ると、木は綺麗になって立っていた。元の姿なんて覚えてないけど、きっと元通りに違いない。
「ふむ。やはり」
 神官様は満足そうに頷いてる。
「土地神様の力をここまで引き出すのは、サウルが神との縁が強いのか、土地神様が活性化しているのか。信仰心については、まだ浅いだろうしね」
「は、はぁ」
 どう返事して良いのか分からなかったので、生返事。ハンナは向こうでピカピカの泥団子作って遊んでる。
「魂倉はどうかな? 他に身体に異常はあるかい?」
『調子はどう? ロジャーおじさん』
『残7割って所ですかね。しかし、坊っちゃん、これじゃまだ実践は難しいですぜ』
『良いんだよ、《《初めて》》だし』
「はい、神官様。まだ行けると思います」
「残り3割くらいになったら終わりにしよう。その辺りは魂倉に問いかければ、なんとなく雰囲気で答えてくれるはずだよ」
 魂倉管理人は、普通居ないってロジャーおじさん言ってたっけ。しかし、なんで皆さん泡倉と魂倉の管理人について聞いてこないんだろう。不思議だな。
【タイトル】
018 泡倉と修行3 質問と提案
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2017-07-21 20:32:49(+09:00)
【公開日時】
2017-07-21 20:32:49(+09:00)
【更新日時】
2017-07-21 20:32:49(+09:00)
【文字数】
4,229文字
【本文(125行)】
「おい、クソガキ! 今日はこれくらいにしといてやるぜ! ギャハハ!」
 へたり込んで座り込む僕に、アラン様が声をかけたのはお昼頃。泡倉に来てから2時間ほど経った頃。
 涼しくて気持ちいい風が吹いている。風に乗ってくるのは木の焦げた匂い、泥の匂いに、折れた木の匂い。バタリと倒れ込むと、隣にはハンナが大の字になってる。
 神術で木を再生させた後、一通り初歩的な術の使い方をやってみた。神官様とアラン様の実演付き。で、その後、乱取りをすることになった。乱取りというのは、自由に戦う事みたい。とりあえず、大きな怪我はしないように手加減すること、とだけ言われる。
 その後は、ハンナとやり合ったり、戦士様に転がされたり。ハンナと僕で組んで戦士様とやったりした。戦士様は強かった。ハンナと二人がかりで、僕は隙を見て四大術を挟んだりしたのに、全然駄目。気がついたらハンナが飛んでて、僕も地面にキスしたりしてた。
 色んな所がズキズキしてて、ハンナはグズグズといじけてる。素早い動きと四歳とは思えないスタミナに自信があったみたい。僕? 僕はまぁこういうの初めてだったから何とも言えないというか……。
 あ、闘気法使っても、元の体力が増えるわけじゃ無いし、元が低いのに大きく増幅しようとすると『ビキッ』って来るから、鍛えないと駄目だって分かったよ。ほんと、すぐ息が切れちゃうから、ハンナみたいに動き回るのは無理っぽい。どうしたら良いのかなあと思っていると、セレッサ様がよく冷えた布を渡してくれた。
「簡易な冷却術を使ったものですよ」
「あ、セレッサ様、ありがとうございます」
「うふふ、どういたしまして」
 ハンナが起き上がって、「ああああああ」と、子供らしからぬ声を上げている。冷たい布を顔に当てて喜んでる。確かにこれは気持ちいいなぁ。今度から訓練の後にやろうっと。これなら簡単だし。
 セレッサ様とアラン様がいつの間にやらお昼ご飯を作ってくれていた。アラン様が意外と手際が良くて面白い。
 大きめの竈を二つ作って、そこに平鍋と深鍋をかけて料理を作ってた。凄く良い匂いがする。今まで嗅いだことの無い香り。懐かしいような、物足りないような。
 配膳だけ手伝って、皆で食べたよ。平鍋から出てきたのは、白い粒。麦とは違う。これが米なんだって。陸稲を作ってるのは良く見てたけど、食べるのは初めて。米と具材をスープで炊いて作った料理でピラフというんだってさ。なんか物足りないなぁ。
「あら? 石でも混じってた?」
 とセレッサ様。
「ええと、そうじゃないんですけど。その、魚のアラとかで出汁を取って、塩を濃くするといいのになぁって……。生意気言ってすいません」
「ブヒャヒャ! サウル、おめぇこんな野外で何言ってんだよ! あ、そーいや、王都でよ、ギラソルんとこの親父のピラフがすげーうめーんだけど、出汁がどーのとか言ってやがったな。あー、あの子羊の骨付き肉、また食いてーな!」
「えと、ごめんなさい。出汁なんて取ってたら時間掛かりますしね」
「うふふ、ほんとねー。しかし、サウル君は出汁の事なんてよく知ってたわね」