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030 村と商人2
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2018-04-22 15:50:43(+09:00)
【公開日時】
2018-04-22 15:50:43(+09:00)
【更新日時】
2018-04-22 15:50:43(+09:00)
【文字数】
3,984文字
【本文(109行)】
 僕は何を作ろうとしてたのかアラン様に説明してみることにしたんだ。
 初めて大がかりなものを作るんだし、ちょっと自慢したい。アラン様も期待してるみたいだし。
「えっと、道路敷設車、です。ここに有る、大きな円柱二つの上に車体を乗っける感じになるんですけど。御者が運転するだけで、草刈り、地ならし、圧縮、舗装まで完全にやってくれるんです! 確か聞いた話だとここコミエ村から、行商の人達がきたアレハンドロまでは80kmほど。ほんとは5日もかかる場所じゃ無いと思うんです。ちゃんとした道があれば、馬車なら2日、早馬なら1日で着くんじゃ無いですか?」
「ん? そりゃちゃんとした石畳とまでは行かなくとも、ある程度均した道ならそうなるな。つーか。アレハンドロの領主どもはよ、ちったーこっち方面の道の整備もしやがれってんだ。ほとんど獣道みたいな所ばっかりだしよ。あれじゃ馬車は通すだけでも一苦労で、歩く速さが出りゃ御の字だ。
 で? どういう具合に道路を作るんだ? 他に何を使う?」
「理論的には、僕が発明した道路敷設車一台動くだけで、完全な道路を作る事が可能なんですよ!」
 アラン様驚いたかな? むふっ!
「車両前方から、大出力の草刈り用円盤が突き出て、雑草は元より直径50cmまでの木も排除可能です。前方車輪は、重量増加術式により2tから20tまで可変可能、1分間3万回以上の高速振動、その他術式の組み合わせにより刈り取った草木を巻き込み何も無かったかのように粉砕、混合し、地ならしを行います」
「……お、おう」
「更に!」
 僕は叫ぶ! ここが苦労したんだ!
「前輪でかさが減った部分には地属性の構成物を自動感知! そして充填! この地中感知と照準にはかなり苦労しました! 更に後輪では独立式高濃度大出力エーテルリアクターの馬力に物をいわせ、土層の表面から3cmを石化。継続的な道路運用をお約束します! ふんはっ!!」
 思わず鼻息が漏れる。
 同時に僕はいつの間にか振り上げていた手をビシッと振り下ろし、アラン様を指さしたんだけど、そこに特別意味は無い。コウタロウさんのライブラリによれば、ノリ、という奴らしい。
 アラン様は右手でこめかみを揉みながら
「……色々突っ込みたいところはあるんだが。まぁ製造法というか何でそんな高度な知識を……」
「前世知識です」
「製造期間は?」
「何分初めてなことなので、部品製造に10日ほど見込んでます。後、組み立てと調整に10日、という感じです。ただ、テスト法が確立されていないし、何分初めての作品なので、予想確度が高くないのが残念なんですが、そこに今考えてい」
「あー、今はそれで良いとして」
 折角、前世知識(コウタロウライブラリ)を利用したテストフレームワークについて話そうとしてたのに。
「で、これ、誰が運用するんだ?」
「え?」
 何を当たり前のことを?
「もちろん、これは行商の人達へのプレゼントなので、そこの人なんじゃ無いですか?」
「なるほど。で、お前ならこれどれくらい連続で使える?」
「そうですねー、かなりすごい作りにしたので、大型のエーテルバッテリーを突っ込んでも3時間くらいですね。まぁ僕が直接エーテルを供給すれば、倍は持つと思いますけど?」
 アラン様、何聞いてるんだろう? 僕の道路敷設車初号機、パヴィ君は最強ですよ?
「まず一つ。ロージーとシルビオ達、行商人がここを立ってアレハンドロに戻るのは明後日だ。プレゼントするには間に合わねぇよ、馬鹿。
 それとな。普通の人足はクソガキの1割もエーテルを魂倉にため込めねぇ。お前に匹敵するようなエーテル容量のある術者を雇うくらいなら、人足を100人雇って人力で工事した方がマシだ。
 後な、あんなデカ物、どうやってアレハンドロまで持っていくよ? この泡倉に隠したままか? 道路作りながらか? いつあっちに着くか分かったもんじゃねぇ」
「え? つまり、この僕のパヴィ君は?」
「無駄とまでは言えねぇが、今回は使えねぇな。ったく期待して損したぜ。ま、お前もまだまだ経験不足のガキってこったな! ギャハハハハ!
 それによ、お前、こんな出鱈目な出力の術使って作る術理具、量産できねぇだろ。それとも国中の道路敷設車、お前一人で作るか? ばっかじゃねーの? ギャハハハハ!」
 アラン様、凄く楽しそうに笑ってる。くっそう。でも、ほんと、咳出なくなったなー。ずっと元気で居て欲しいな、って思う。知り合ってまだそんなに経ってないけど、なんか好きなんだ。
 それから、パヴィ君の他に作ろうと思っていた術理具のアイディアをアラン様に話し、幾つか一緒に作って貰った。
 そうして、思ったのは、僕のやり方はまだまだってこと。
 ギフトとコウタロウライブラリがあるから皆が驚くような事も出来るけど、それを形にするとなると無理、無駄、未熟。どうすれば良いかな……。
 術理具を作って、後、幾つか泡倉で見つけた珊瑚やら珍しい石を直ぐ取り出せるようにして。僕は泡倉からコミエ村に戻った。
 勝手に泡倉に籠もってたことを神殿の皆さんに叱られて。ついでに村の様子を聞き、お手伝いをして、と、慌ただしく過ごすうちに僕はセリオ様に呼ばれてセリオ様のお部屋に向かった。
 ノックする。
「サウルです。お呼びでしょうか?」
「あぁ、サウル。はいって」
 セリオ様の応えを待ってドアを開ける。いつも通りの執務室にいつも通りじゃない人達が居る。村長さん、ロージーさんとシルビオさんの商隊の二人、アラン様、セリオ様に奥様だ。 さすがにこの人数だと狭い。椅子も食堂から持ってきた幾つかある。すでに長いこと話し合いをしていたような疲労した空気。皆さん、それぞれ違う意図の目をしている。
「さて、サウル。そこに座って」
 セリオ様に示された椅子に腰掛ける。大人用だけど、なんとか乗り込む。すると右手に影。ハンナだ。あれ? 居なかった気がするんだけど。まぁいいか。
「さて」
 口火を切ったのは村長さん。僕をチラリと見てから
「サウルも来たようだし、現状を再確認だ。まず、コミエ村の税軽減措置期間がもうすぐ終わる。もう一つ。王城から押しつけられた開拓も行き詰まったままだ。ただでさえ資金不足だというのに、このままでは村は解散だな。そうなったら神殿はともかく我々はどうなるか分からん」
「ええと、すいません。村が解散とはどういうことでしょう?」
 村長さんが凍り付く。まさか5才の僕がいきなり質問するとは思わなかったのかな?
「そうだな……」
「私が簡単に説明しましょう」
 セリオ様が後を引取った。