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 全員が雨具を装着し、倍力の術理具を付け、道の整備も簡単とはいえ行って。なおかつ複数の馬車全てに改造を行った訳で。これならさすがに進みも早い。ロジャーさんに聞くと、昨日進んだのは一日掛けてほんの数キロだったみたいだけど、今日はほぼノンストップ。進行速度もまるで道を歩くみたい。一回だけ車輪が嵌まったけど、倍力の術理具と重量軽減の術のお陰ですぐ出発できた。
 後は、遠くに凄い遠吠えがしたんだけど、ロジャーさんに追い払って貰ったよ。皆、何故逃げたのか分からなくて不思議そうだったけど。
 早朝から出発して、お昼頃には最初の村まであと少しの所まで近づいてた。折角だから安全なところで早く休もうと言うことになって、そのまま1時間。村に到着したんだ。
 折角なので、村でゆっくりしていこうということになり、テント設営の許可を取ってゆっくりすることになったんだ。
 辺境の村とはいえ、柵の中。見張りを立てずに休憩できるのは、冒険者や人足さん達には嬉しい話。開放された集会所で昼間っから酒を飲んでたよ。
 僕は、ちょっと疲れたので休憩すると席を外して泡倉へ。
 セニオさんと部下の人達に報告をしておいた。セニオさんはともかく部下の人達は大喜びだったので、こっちもうれしくなってきたよ。
 大人達は、この村のまとめ役の人達とお話し合いと懇親会みたい。僕にも混ざって欲しい雰囲気だったけど遠慮したよ。さすがに半日以上、ぶっつけ本番の術理具の運用を見守ってたんだから疲れたのは本当だったんだ。
 村の子供なんかが近づいてきたけど、構わずお昼寝。起き上がったら空き時間は術理具の調整と改良をして……。ハンナも構わないで居たら、指噛まれたよ。ヒドい!
【タイトル】
033 道行きとスカウト3
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2018-05-03 21:06:25(+09:00)
【公開日時】
2018-05-03 21:06:25(+09:00)
【更新日時】
2018-05-03 21:06:25(+09:00)
【文字数】
3,302文字
【本文(94行)】
 コミエ村を出発して4日目。今日の夕方に最後の村。次はアレハンドロに到着の予定。
 今は、初日と二日目のヒドい天気が嘘のように晴れてるんだ。朝は肌寒いけど、10時くらいには温かくなってて眠い。僕がうとうとしてると必ずハンナが重なってくる。起きるとちょっと汗ばんでるんだよね。でもハンナに文句言えない。
 ぼーっと馬車の荷台から外を見ながら考え事。空には何か大きな鳥が飛んでる。ぴーよぴーよと鳴いてて、猛禽類だと人足の人に教えて貰ったよ。春先によく鳴くんだそう。
「……あ!」
 そしたら、ふと閃いちゃった。なんで今まで気づかなかったんだろう? あーもう恥ずかしい。
『ねぇロジャーさん』
『へい。お呼びで?』
 何か作業中だったかな? 何か気もそぞろなロジャーさん。ロジャーさんもセニオさんも、持ち場で待ってるだけじゃなくてそれぞれの思惑でも動いてるところ有るよね。
『青髪のフラムさん、コミエ村辺りの土地神様だったり?』
『恐らく。お気づきだとばかり』
『恥ずかしながら……』
 と、魂倉の中に居たらしいロジャーさんと話をしていると、そのフラムさんがこっちを見た。うん。さっき僕が声を上げて、そこから虚空を見つめてじっとしてたわけで。そりゃ気にするよね。
 狭い馬車の荷台には他の人も居るから、おおっぴらに話をするわけにも行かない。さてどうしよう。
 とりあえず、にこっと笑ってみた。フラムさん、なんか動揺してる。面白いのでニコニコしたまま近づいてみた。
「ねぇねぇフラムさん」
「なんだい、坊や?」
 ハスキーな声。きつめの目に高い鼻筋。厚ぼったい唇に蓮っ葉な言動。同じ冒険者仲間にも人足の人達にも人気が有る。カッコイイ女性だ。ドレスより男性用の礼服のようなシャープな服、コウタロウライブラリー的には、スーツ? あれが似合いそう。
 さて、フラムさんが僕をじっと見つめる。あ、この視線、知ってる。村の神殿で感じたことあるよ。そっか。なら……。
「フラムさんは《《この辺の出身》》?」
「そうだ。長いこと離れてたけど、ついこないだ帰って来れたんだ。《《ある方のお陰》》でな」
 そういうと、フラムさんは僕の目をのぞき込む。僕が5才の無垢な子供じゃなかったら顔が赤くなりそうな雰囲気。……じゃなくて、フラムさんが目覚めたのは、僕が関係しているみたいだね。
「そうなんですね。その方はどんな人なんです?」
「ふむ。そうだな。名前は《《ここで》》言うことは出来ないけどよ」
 と、荷台を見渡した。
「見た目は可愛らしいんだけど、中身はエグいな。後、あれだ。腹にもう一人くらい飼ってそうだったな」
「へ、へぇ。腹黒ですか? なんか怖いですね」
「いや、んなことないさ。あの方は、自分のことが良く分かってないみたいで色々抜けてるところもあるんだ。見てると面白いぜ?」
 バチーンとセクシーなウィンク。なんか僕、口説かれてる気分。あれ? おかしいな。僕がからかうつもりだったのに……。
『……』
 ロジャーさんが何か言いたそうにしてるけど……。あ、後で聞くね!
「その方、今はどうされてるのです?」
「さぁてね。どこにいるのやら。案外近くに居るのかも。もしゆっくり話す事があるなら、あたいが居た場所にお連れしたいところさ。あそこじゃあたいは下っ端だったけど、あの方なら……」
 土地神、というのは神のヒエラルキーの中では下位にあたる。自分の領域を持たず、守護を任された土地から余り離れることも出来ない。かつて、復活歴の前、神と人の世界が断絶していなかった時代には、年に一度神々の集会が神界で開かれていたと言う。
 フラムさんが土地神なのだとしたら、この話には裏の意味が出てくる。
 いつか神界に僕を連れて行く。そして神にしたい、ということ。
 神官様が近くで聞いてるなら何か感じたかも知れないけど。今はこの荷台に居ない。だから大丈夫。
「その方、そこまでの方なのです?」
「あたいはそう思ってるよ。ところであの魔導具、じゃかなった術理具ってのは全部坊やの創作なのかい?」
「そうですね。ですけど、前世の記憶に似たモノがあったりしたのでそれは真似しました」
「へぇ。あたいは初めて見たよ」
 さすがにコウタロウさんの話を深く突っ込まれるのはまずいと思う。全部話してフラムさんの考えも聞いてみたい気がするけど。あの夜、コウタロウさんは『この世界の神と知り合いで』と言ってた。多分特殊な例なんだと思う。ただの古代文明人とは思えない。
 少なくとも、今、誤魔化しながら出来る話じゃない、と思う。
 ちなみにその後、ロジャーさんにかなりの嫌みを言われたよ。急にあんな話に持っていくなんて聞いてないとか色々。ロジャーさんって、ワルっぽい雰囲気の大人なのに、どこか心配性というかお母さんぽいところある。
 夕方、というのは早い時間。大小様々な集落を通った先に大きめの集落、いや町かな? それが見えてきた。アレハンドロに近づくにつれ、集落の密度が上がってきて、人の往来も増えてくる。
 コミエ村から出たことの無い僕にとっては大変な人の数。