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と、眼帯の男性と遊んでいたハンナを引き剥がし、組合の中に入ってみる。 |
しかしあの眼帯男、すごく不気味な見た目してるのに、子供好きなのかぁ……。僕にも愛想良かったし。良い人なのかも。乾燥果物を袋一つくれたし。 |
今は、ええと、午後3時10分。室温は22度。外より涼しい。大きめのホールにはカウンターがあって、数人の男女が冒険者とやり取りしてる。なんか露店でやり取りしてるみたいな。砕けた雰囲気だ。カウンターの上には札が下がってる。字と絵で内容が分かるんだ。 |
奥の方には、机と椅子が幾つかあって、壁際には売店? 喫茶店? もある。商談にも使うのかな? 商人風の人と、ヒゲ面のおじさんがキスしそうな程顔を寄せて話してる。 |
鋼の匂い、触媒に使うだろう薬の匂い。酒とタバコの煙。いいね、すごく良い。雰囲気ある! 僕が興奮気味にキョロキョロしてると、奥のテーブルから神官服を身につけた女性がフラム様に飛びついてきた。 |
「あ! フラムさまぁ! お久しぶりですぅーーーーん」 |
「おっと、アマダじゃないか。もう帰ってきたのかい?」 |
「ええ、フラム様に会いたくて、急いじゃいましたの。でも遺産を幾つか見つけたので収支は黒ですわよ?」 |
「遺産か! そりゃすごいね」 |
「ええ、幾つもお話ししたいことがありますわ。もし良かったらこれから、お姉様と二人で……」 |
おいおい、ちょっと待って。 |
「あ、あのぉ」 |
無害な子供を装って、いちゃつきはじめた二人に声をかける。護衛なんだからしっかりしてよ。 |
「あ、あぁ。こちらはアレハンドロ冒険者組合、新進気鋭の中堅パーティ『キマイラの咆吼』の神官、アマダだ。で、こっちの二人が、コミエ村のサウルと、王都から来たハンナ・マサース」 |
「コミエ村のサウルです。よろしくお願いします」 |
「アラン・マサースの娘、ハンナ。よろしく」 |
なんか凄い目を向けてくるアマダ。そして一転にっこりと微笑み |
「んふふぅ。『キマイラの咆吼』のアマダよ。神官戦士してるわ。よろしくねぇん?」 |
見た目はそこらの町娘のような体つき、だけど、さっきフラム様に抱きついた時の体裁きは半端じゃなかった。これに闘気法が加われば、十分に戦える筈。神官戦士は嘘じゃ無いと思う。 |
「サウルは、ちょっと用事があってバスカヴィル商会とお話ししに来たのさ。ハンナはマサース教授と同行してる」 |
「え? あのマサース教授?!」 |
声がしたのは、アマダの後ろ。前世の釣り野郎みたいに沢山ポケットの付いたベストを着た若い男性が大きな声を上げていた。 |
【タイトル】 |
037 試技 |
【公開状態】 |
公開済 |
【作成日時】 |
2018-05-15 20:45:56(+09:00) |
【公開日時】 |
2018-05-15 20:45:56(+09:00) |
【更新日時】 |
2018-05-15 20:45:56(+09:00) |
【文字数】 |
3,264文字 |
【本文(102行)】 |
「なるほど、そちらのお嬢さんはマサース教授のご息女でしたか」 |
「うん。養女」 |
「それで、そちらのお坊ちゃんは、マサース教授の教えを受けたと」 |
なんだろう。僕は坊っちゃん属性でもあるんだろうか? 良く言われるんだけど。育ちが良い、わけじゃないんだけど。だって、開拓村の農民の子で、預かり子だし。 |
「え、えぇ。その。多少エーテルの使い方などを」 |
「それは素晴らしい! 私など、王都の自宅前に何度も通ったのですが……」 |
ポケットだらけのジャケットの上にカーキグリーンのロングコートを身につけた若い男が、やや大げさに手を広げる。 |
彼、コンラッドさんは、四大術師としてアラン様を尊敬しているとのこと。 |
色々と話してて分かってきたのは、コンラッドさん自身もかなりの腕前の四大術師で有り、弓師であるということ。「伝説に歌われるエルフほどのことではありませんが」と謙遜するけど。 |
しかし、エルフって伝説なの? 泡倉管理人の部下ってエルフだった気がするんだよね。耳が長かったし。んーー。 |
『ロジャーさん? 泡倉の住人のことなんだけど』 |
『へい。彼らはエルフの中でも原種に近いハイエルフと呼ばれる者達でさ。あ、普通のエルフもいますぜ』 |
『コウタロウさんの記憶では、この世界には、人間、エルフ、ドワーフ、ミグ、プランツェル、ティターンがヒトとして居たはずだけど……』 |
『あー、それはまた大分古い話ですな。古代魔法文明の中期くらいまではそうでしたが。今、この近辺では人間とドワーフ、ミグだけです。後は不明です。滅んだとするのが通説でさー。泡倉のハイエルフは例外だと思ってくだせー』 |
『ミグ、か。小さい子供のような姿をし、精霊に近い種族。風のように動く彼らを誰も縛れない。彼らがそうと魂倉に刻まない限り。ただ、その筆はしばしば旅に出る、だったっけ。精霊術が苦手な僕としては一度会っておきたい、かな』 |
ロジャーさんとの会話は一瞬。周囲にはそうと知られない。 |
話は移り変わり、僕とハンナが主体になっていった。 |
確かに5才の元農民の預かり子が神官とやってきて、商会に用があると言えば何か有ると思うよね。神殿なら何か珍しい技能でもあったか、となるだろうし。それにアレン様と繋がってるし。神官様もコミエ村に隠遁する前は冒険者として有名だったみたいだね。 |
ハンナはハンナで、変わり者として有名なアレン・マサース教授の養女だし。 |
うん。知りたがるのも仕方ない。 |
「ええ、まぁその。ちょっとだけ。水を出したり火を出したりするくらいで。既存の術は使えないです」 |
オリジナルの四大術。そう、泡倉でアラン様達と開発した、あれ。あれは使えるけど、見せたら駄目な奴だよね。誰かに聞くまでも無い。そうなると、僕の手は大した物にならない。 |
ハンナが恨みがましく見て来るけど、ダメダメ。 |
「……ハンナは、ちょっとだけ四大術。後は闘気法。早さに自信あり」 |
「なるほど! ハンナちゃんとサウル君が組んだら良いパーティになるね!」 |
「うん。もう村で何度か組んだよ。ハンナとサウルは相性抜群なの」 |
「おお、それはすごい。未来の若きエースというわけだね。一度見て見たいものだ!」 |
コンラッドさんはお世辞見え見えの態度。まぁそりゃそうだ。僕が5才。ハンナに至っては4才だもの。幾ら子供も戦力に数える世界だとは言え、早すぎるよね。 |
「確かにそうだな」 |
と、フラム様が目の前のジョッキを見つめながら口を開いた。ちなみに中身は冷えていて、冷やし料は別。 |
「コンラッドもアマダも、ちょっと見て見たいよな? 《《あの》》マサース教授の秘蔵っ子達の腕前」 |
「あら? いいのです? こんな子達を味見しちゃって」 |
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