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 ちなみに3ヶ月前、名付けの儀の頃は98cm、14kg。おおよそ3ヶ月で《《40cm》》伸びたんだよね。周りも驚くけど、僕も驚いた。と言うか大変だったんだ。
 お腹いっぱいに食べても直ぐお腹減るし。我慢すると直ぐ倒れそうになるし。ていうか、2回倒れたし。代謝も凄いから、出る物も凄くてね。酷いもんだったよ。筋肉痛、成長痛も! 僕が神術で痛み止めできなかったら大変だったと思う。
 成長はまだ止まってないけど、やっと最近落ち着きつつある、かな? でも、服は直ぐ使えなくなるから、まるで犯罪奴隷のような粗末な貫頭衣が日常着。さすがにそれじゃ人と会えないから、外出する度に服を買い換えるものだから支出が凄いことになってた。最終的に、大きめの服を何通りも買っておいて、紐や布を巻いて調整する事にしたんだけど。でもこれ、脱ぎ着が面倒なんだよね。どうにかならないかな。
 身長が伸びたので、周りに余り子供扱いされなくなったのは嬉しいのか嬉しくないのか良く分からないや。140cmというと、成人男性でも居ない訳じゃない。女性だと割と普通に居る。コウタロウさんの時代より大分平均が違うみたいだね。顔つきは十代前半みたいになったし。今の僕を見て6才だと当てられる人は居ないんじゃないかな?
『坊っちゃん。そろそろ』
『あぁ、うん。分かったよ、ロジャー』
 僕の魂倉管理人は日に日に心配性になってきてる気がする。見た目はガラの悪い黒づくめなんだけどねぇ。まぁ何度か僕目当ての襲撃があれば仕方ないのかな?
 僕はささっとベッドを降りる。神殿の養い子に過ぎない僕に個室を渡してくれたのは嬉しい。お陰で《《色々》》はかどってるし。
 洗浄力を持たせた冷たい水を作って、ざっと顔を洗い。6才にして生えてきた髭を剃り。マッサージ器を改造して作った術理歯ブラシで口内を清潔に。最期に臭いを抑えるミストを体に吹き付ける。……体臭強いからね。
 階下に降りると
「おう、サウル。もう姐さん来てるぜ」
 店の人が指さしながら教えてくれた。
 店の表には二人の女性。スラッと背の高い剣士と、ウェイトレスの女性。ウェイトレスの女性は剣士にしなだれかかってて、悔しいけど絵になる。
「おはようございます。フラムさん」
「あぁ、おはようサウル。寝坊するんじゃないかと心配したよ」
 フラム様は、冒険者になった。アレハンドロに腰を据えて仕事をしている。今は、ジーンさんと一緒に暮らしてる。ジーンさんは、アレハンドロに来たときに最初に立ち寄った飯屋のウェイトレスさん。
 二人は友達……、には見えないね。もっとこう親密な何かっぽいですね。
 僕、子供だから分からないけど。
「さぁ行こうか、サウル。今日がお前のデビューになる」
【タイトル】
039 参入者へ1
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2018-08-01 20:34:27(+09:00)
【公開日時】
2018-08-01 20:34:27(+09:00)
【更新日時】
2018-08-01 20:34:27(+09:00)
【文字数】
2,536文字
【本文(80行)】
 僕はフラム様達と一緒に冒険者組合に向かった。僕の右下には05:25の文字。そんな早朝なのに組合の側には屋台が幾つかあって、そこにたむろする人達がいた。
 アレハンドロから離れた場所に行って依頼を果たす場合、泊まりがけか日帰りかになるけど、日帰りならなるべく早い時間に出かけたい。ちょっと予定外のことがあれば暗闇を歩かないといけないし、それは生存率を下げてしまう。
 だからこんな時間でも組合の前には人が居て、屋台も有る、ってフラム様が言ってた。
「じゃあね、サウル君。お姉様また後で!」
「あぁ、ジーン。土産話でも楽しみにしててくれ」
 フラム様とジーンさんが、今生の別れのような顔で見つめ合ってる。
「えっと、すいません。中に入りたいんですけど」
「あ、あぁ、すまん」
「ごめんね! じゃあまた!」
 周囲の冒険者さん達の視線が痛いけど、僕はさっさと中に入りたいんで。
 中に入ると結構な人が居て、カウンターも並んでる。僕とフラム様はその列の最後尾にならんだ。気づいたおじさん達が声をかけてくれる。
「お、いよいよ、今日だっけ?」
「死ぬなよ!」
「死ぬなら、最期にマッサージしてってくれ!」
 冒険者組合はパーティを一つの単位とした工房の互助会という体を取っている。パーティは通常数人。ただ、王都などに行くと幾つかのパーティが団体を作る事も有るっていってた。
 で、僕はソロを希望した。ソロというのは単独行動ということ。フラム様もいつもはソロで行動して、時々、他のパーティと組んで依頼を行ったりする。ただ、僕がソロで登録しようとしたときに問題発生。まぁ当たり前だよね。僕昨日まで5才だったんだし。
 四大術の腕については、キマイラの咆吼の皆さんが保証してくれた。実践でも問題ないって。剣術の方も、一当てして逃げ出すくらいのことは出来るだろうと。でも、いかんせん体が子供。闘気法の心得があると言っても持久力の問題があるし、採取や討伐の荷物をどう持ち帰るかの問題もある。
 幾ら命の安い時代と言っても、無駄に死なせるのは寝覚めが悪い。
 そういう事で……
「はーい、次の方!」
「おはようございます!」
「はい、おはようサウル君。いつも元気良いねぇ」
「ありがとうございます、パティさん。それで昇格の方なんですけど」
「ええ、今日の実地審査に合格すれば10級の見習いから9級の参入者になれるよ。怪我しないようにね」
「ええ。夕方には無傷で帰ってきます」
「はぁ。でも私はまだ心配だわ。幾ら体が大きくなったと言っても、まだ5才でしょ?」
「えっと、今日から6才です!」
「あぁ、うん。6才ね。お金に困ってるスラムの子だって、6才は街の中でお手伝いが精一杯なのに、なんでサウル君が……」
 また長い話になりそうだと思ってると、呆れたようにフラム様が口を出す。
「パティその事は既に何度も話したではないか。サウルは力を示した。四大術、剣術、それに特大の泡倉。子供らしくない用心深い性格。探索術が無くてもソロでやっていける。その上で今日の審査だ」
「そうなんですけどねぇ。まぁいいです。タブレット出してください」
 ガチガチガチーンと鑑定機みたいな音を立ててパティさんが、今日の審査をタブレットに打ち込む。一応、今日の審査は依頼扱い。付き添いとしてフラム様と黒剣団というパーティが付いてくるんだってさ。
 ほんとはキマイラの咆吼の皆さんが希望してたんだけど、それだと公平にならないってことで。まぁ確かにあそこの皆さんとは仲も良いし、甘やかしてくるからね。
 そうそう。しれっとフラム様話したけど、僕の泡倉、ちょこっとだけお知らせしたんだ。そうじゃないとさすがに今後支障を来すだろうって事で。ただ、これまで組合で確認されてる泡倉の最大量が《《1000リットル》》だったってことで、僕の泡倉は《《それくらい》》ってことにして貰ったんだ。持ち帰りの量は気をつけなきゃいけないなー。
 あ、ちなみに1000リットルは、各辺1mの立方体だよ。
 受付が終わって休憩コーナーに行くと黒剣団の皆さんが待ってたよ。ただ、ちょっと冷たい雰囲気、かな?
「おはようございます。今日はよろしくお願いします!」
 こういう時は元気な挨拶が一番だよね。