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【タイトル】
051 教育振興とドライブ
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2018-09-08 17:22:15(+09:00)
【公開日時】
2018-09-08 17:22:15(+09:00)
【更新日時】
2018-09-08 17:22:15(+09:00)
【文字数】
3,339文字
【本文(127行)】
 ハンナがあっという間にホバリングを習得すると、組合の人やたまたま居た冒険者の人達が寄ってきた。
 とは言え、まだ姿勢制御が甘いし、制動が遅れる。機動性の高い魔物や馬などと渡り合うのは難しいかも。
 ……。
 僕の場合は度胸の面で難しいかも知れないけどね。
 ハンナはその辺、僕より思い切りが良い。
 幾つもの風の流れを出して浮かび、姿勢を制御する。強い風を背中から吹き出して帆船のように進む。
 ホバリングは、それだけの術。とはいえ、僕とハンナ以外にはまだ成功してない。術者は身体感覚が弱い人が多いし、複数の流れを制御し続ける、という事に慣れてない。
 もし、僕がホバリングを広めるつもりなら、ホバリングの前段階にあたる課題を出すべきかも知れない。
 ふむ。なら。
 皆が物珍しさも相まってハンナと騒いでる間に、僕はちょっとした物を作ろう。
 四大術を使う前に、十分エーテルを呼吸する。
 今回はひたすら地を使う。仙骨近くの霊的センターを十分に意識する。
 さて、まずは大理石の机。
 幅1.5m、奥行き3m。
 ずずずずっと演習場の地面から沸いてくる。
 台の周囲には高さ10cm程の壁。
 これも大理石。
 コミエ村で石舞台を作ったときは、簡単に作ってしまえたんだけど、ちょっと疲れたな。
 次に、術理具の試作用に持っていた、ちょっと良い皮を取り出して、ちっさなクッションを作る。一辺5cm程の正方形高さは3cm程。転びやすいように丸みを付けておく。中にはボロ布を入れて型崩れしないように。
 そうして、手前と奥の壁に30cmほどの穴を空け、代わりにゲートを付ける。ゲートの間には荒い丈夫な網も付けた。
 コウタロウライブラリの卓球、サッカー、エアホッケーからアイディアを頂いてみた。で、このクッションを台に乗せ、エアで浮かせる。前後左右で自在に動くことを確認すると、こちらと向こうのゲートの前に、5個ずつ置く。
 ふと気づくと、さっきまでハンナと騒いでた組合職員と冒険者達がじーっと台と僕を見つめてる。
「えーとホバリングの練習用にゲームを作ってみました」
「おお」「見事な台だな」「なんで大理石?」「皮のクッション?」
「二人で行う対戦のゲームです。まず、このクッション5つが一チーム。先に、全てのクッションを相手のゲートに入れた方の勝ちです。
 ただし、台の中に手を入れてはいけません。棒なども無し。四大術だけで操ってください。それと、クッションが台についても構いませんが、移動するときは必ず浮上すること。後、この台の壁より上に行ったら反則ですし、相手のクッションに術を掛けても駄目です」
「つまり、四大術でクッションを一度に複数操作して、相手との駆け引きをさせようと?」
 組合の事務方の人がそうまとめた。
 確か、術関係の申請などを行ってる人。
「そういうことです。実戦でも使えるように、と考えると、中々良い訓練方法でしょ?」
「これは、サウルさんが考えたのですか?」
「ええ、まぁそうです。急ごしらえなので穴はあると思いますが」
「いやいや、中々これは面白そうです。ルールについては追い追い改良すれば良いでしょうし」
 早速一つ大理石の台を誰かが作ってた。クッションを別な人が作ってる。
 僕の方が上手だけどね。と、ちょっと鼻が高い。
 ハンナも何故か威張ってた。可愛い。
 そこから、僕とハンナが模範試合(?)を行う流れに。まぁしょうがないよね。
 なんとか僕が勝ったのは良かった。
 ……ちょっと練習しておこう。
 模範試合が終わると、四大術を使える人達が早速練習を始めていた。周りもワイワイとあーでもないこーでもないと騒いでいる。
 皆の注目が無くなったところで、僕とハンナは組合を離れた。
 職員さんが見てた気がするけど、止められなかったから良いんだと思う。
 しばらく歩いて、壁から出る。振り返れば、アレハンドロの壁はいつも通り分厚く信頼できそうだった。
「さて、ハンナ、もうちょっと先に行ったらホバリングを使おう。ここだと、砂をまき散らして迷惑をかけちゃうからね」
「分かった」
 そういうと、ハンナは走り出した。あれは闘気法を使った走り。
 僕も慌てて闘気法を使い、走った。
 自分の中とエーテルと魂倉を使ってエネルギーを生み出し、循環させ、自分を思い通りに変える。
 別な系統を起動するときには、切り替えに覚悟が要る。いきなりのことだったから、ちょっと出遅れてしまったよ。 
 しばらく走ると人が少なくなったので、ホバリングに切り替えた。
 ホバリングは気は使うが、体は楽。
 そのうち姿勢制御も術で補えるようにならないかと考えてる。
 まだ上手く行ってないけど。
 最初は人が走るほどのスピードから始め、馬の駆歩、闘気法での持久走のスピードへ。そして最終的には時速60km程になった。
 ハンナは大喜びで、更にスピードを上げようとしたが止めておいた。
 どうも細かい制御が怪しい感じがするんだよね。
 なので、ちょっと追いかけっこしたり、じゃれ合ったりしながらホバリングの練習。一度転倒しそうになってヒヤリとした。
 以前、試したんだ。
 だって、落馬したら死んじゃうこともあるって聞いたし。猪が人にぶつかって死んだ話も聞いた。ならホバリングで転んだり何かとぶつかったら?
 要らない革袋に泥を詰めたものを幾つか。泡倉のハイエルフの一人にお願いして。
 泡倉の海岸で革袋を落としたり、立木に当てたり。
 中の泥を赤く染めたいたずら者がいて、中々迫真に迫っちゃってたよ。
 一応それを確認してから、手槍での突撃練習とかしたんだ。
 今付けている防具は、要所を皮で守ってるだけの厚手の服。道で転ぶくらいなら何とかなるかも知れないけど、ぶつかったら死んじゃう。