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「勝てるけど。サウルは、まだ人を殺してないよね?」
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そう。僕の実戦は、こないだのゴブリンだけ。いつかは人ともやり合うつもりだったけど。さっきのならず者相手にはびびってしまってた……。
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「……でもやるよ。アラン様を助ける」
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「分かった。ハンナはサウルを助ける」
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「でも、なるべく遠距離で行くけど」
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「良いと思う」
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どう攻めるか。まずは人間の襲撃者からだね。上手く助けたいから。そうだな。
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「よし、僕がホバリングで突っ込んで、一発大きいのでびっくりさせるよ。ハンナは僕がやってから突っ込んで。僕は後を追う。そしてアラン様を助けるよ」
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「分かった」
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「僕は全速を出すけど、ハンナは無理せずにね」
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さて、やってみよう。
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ホバリングの術式を魂倉に取りに行く。魂倉の呪文書から術を呼び出す。
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呼び出された術は僕が与えたパラメータとエーテルを取り込んで具象化する。
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「ホバリング、開始」
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いつものパラメータセットとは違うホバリング。
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野生動物などを追い払いながら進むために作ったセット。
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いつもの倍以上の騒音と、砂埃。はっきり言って目立つはず。でもそれが目的だから問題ない。
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ハンナはかなりびっくりして、僕から一歩離れてしまってる。
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「ぼ!!! ……そ!!! …… !?」
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術の音が大きすぎて、ハンナの声が聞こえない。でも、多分「暴走か?」みたいな事を言ってるんだと思う。
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大丈夫という印に、僕は両腕で大きく丸を書いて、その後、進行方向を指した。
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「行くよ!」
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聞こえたかどうか分からないけど、発進だ。
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さすがに人が居る近くで全速を出すと危ないので、最初はゆっくり。
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しかし、すぐ急加速をかける。
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ただしほんの数秒だけ!
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練習でも出したことの無い加速に体がひっくり返りそうになる。
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必死で前傾姿勢を保とうとする。
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景色が流れる。
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頬が引っ張られてよだれが垂れる!
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前しか見えない!
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ちらりと右下を見れば時速150km? 160?。
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風が痛い。
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目を開けられない。
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でも、僅かな視界の先に、見える。あれだ!
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そしてアラームが鳴り、急ブレーキ!
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か、体が! 前に吹っ飛ぶ!
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想定外!!
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慌てて、というか何も考える前に反射的に5本の風の管が僕にぶち当てられる。
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めっちゃ痛い!でも、無事に止まったんだよ。助かった。
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視界が晴れ、全体が見える。
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およそ100m程先には半壊した馬車と炎の壁、襲撃者に魔物、アラン様も。
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皆こっちを見てる。
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よし!
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僕は名乗りもせずに、次の手を打つ。
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頭上に輝く円が《《4つ》》。それぞれ泡倉の区画に繋がってる。
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そこにあるのは、椎の実型の鉄片。一つ数グラムのそれだけど、音より早く打ち出せば、先日の手投げ矢どころの威力じゃ無い。
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問題は……
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「ウワーーーーーーーーー!!」
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僕の叫び声が、炎の壁が立てる音と混ざる。
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《《まずは、100発》》!
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4つの穴から弾が出る端から全力で撃つ!
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恐ろしい雷のような音がドロドロと鳴る。
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狙ったのは、真ん前の襲撃者の手前。
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街道の地面をほじくり、弾丸は《《その辺》》に撃ち出される。
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次の瞬間そこにあったのは赤い霧と襲撃者のすねから下。
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余りの光景に、僕の心は凍ったままだ。
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そして、僕は気づいた。
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アラン様の体に無数の傷が有り、左手首の先が無い事を。
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沸騰する。
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沸騰する。
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沸騰する!!
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ゆるせない
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ゆるせないぞ!!
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あいつら
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あいつら!
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あいつら!!
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ころす
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ころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころ……
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ガツン
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唐突な衝撃に僕は冷えた
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気づくと、僕の横にロジャーが居て僕をじっと見ていた。
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その目の色は分からない。
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「お目覚めですかい? 坊っちゃん?」
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僕は、ぶるりと震えた。
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【タイトル】
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053 守護者の情
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