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ひょっとすると、ここにもスパイがいるかも知れないから、全部のことを言うわけには行かないよね。
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「良かった、お前が短慮を起こして、あのいけ好かない兄弟に果たし合いを挑むんじゃないかって皆心配してたんだ」
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「確かに、あのお二人が元凶なのは間違いないでしょうけど、殴って終わりという性質のものじゃないでしょう?」
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「ホラ見ろ、やっぱりサウルは冷静じゃねぇか」「お前よりよっぽどな!」「わっはっは!」
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いえ、僕だって怒ってますよ。なんというか、昨日今朝と色んな衝撃が続いたこともあって感情が動いてなかったけど、段々腹が立ってきたよ。ほんとに。
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なんで政争に負けたとは言え、ここまでされなきゃいけないのか、分かんない。この国の王は何をしてるんだって思う。
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でも僕はきっと見返してみせる。アラン様やコミエ村の皆を傷つけようとする奴らを打ち倒してみせる。
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そのためにもまずはお金だ。税金を払えるようにしなきゃいけない。
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僕にできる事は何でもやるぞ。
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今日は八月十二日で光の日。税金の取り立てが来る来年の三月まであと半年くらい。これまでの三倍の税を払えるようにしなきゃ。
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コミエ村の皆と離れたくないから。
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「まぁサウルよ。余り思い詰めて無茶するなよ」「何か有ったら相談しろよ!」「そん時は冷えたエールも一緒にな!」
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数人の先輩方が口々に励ましてくれる。なんだかとても嬉しい。嬉しいのに、なんだか涙が出てくるのは何故だろう……。
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「サウル、これ」
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ハンナがハンカチを渡してくれた。うう。良い匂いがする。ぐずっ。
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ほんとは光の日は半休取る日だけど、事は一刻を争うんだ。そろそろ行かなきゃ。
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「皆さん有り難うございます。僕たちは、出かけます。自棄を起こさないように落ち着いていきますから安心してくださいね。では!」
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と、格好良く離れようとしたら、袖口をぐいっと引っ張られた。受付のパティさんが布袋を押しつけてきた。
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「まだお昼食べてないでしょ。良かったらこれ二人で食べて」
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「ありがとうございます。いただきます」
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「ありがとうございます」
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僕とハンナで礼を言うと、今度こそ冒険者組合の建物から出て、門の方に向かった。
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今日は光の日だからか、通りに人が多い。
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一週間は闇、地、水、火、風、光の六つで出来てる。そのうち光の日はコウタロウさんの知識にある「半ドン」の日だ。特に用事の無い日は午後はお休み。
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なので、昼間っから屋台に繰り出す人もぼちぼちと見受けられた。
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とはいえ、お店の人なんかは一斉に休むことも出来ず、交代制みたいだけど。
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町中でホバリングするわけにも行かないからゆっくりと道を進む。その僕たちに後ろから声をかける人が居た。
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「お、坊や、デートかい?」
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振り返りながら
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「フラムさん、そう思うなら邪魔しないでくださいよ」
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と返事をする。
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振り返るとやはり土地神のフラム様だった。今はソロの冒険者として頑張ってる。隣にはパートナーのジーンさん。
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「まぁそう言うな。そうそう、坊やに一つ伝言だ。土地神様の領土を移動するときには神殿で声をかけて欲しい、ということだ」
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「どなたからでしょうか?」
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「それは秘密さ」
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というと、人差し指を立てながらウィンクを飛ばす。まったく、この神様はほんとに軽い。僕の持っていた神様に対するイメージが大分崩れてしまった。
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「分かりました。今からちょっと遠くに出かけますので、出先の神殿で声をかけてみます」
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わざわざ念話じゃなくて声をかけてきたって事は、実際にその場になるまで教えてくれないってことなんだろうね。まぁいいさ。
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「おや、今すぐじゃ無いのかい?」
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「そうですね。ちょっと今はこの町に居たくないので」
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「そうか、それは仕方ないな」
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ともあれ、やっとアレハンドロの門を抜けると午後も三時頃になっていた。夏の日は中々落ちないとは言え、夜になるまでにはコミエ村に着いておきたい。
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「じゃぁ、急ごうか、ハンナ」
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「うん」
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体内のエーテルを喉付近にある風の属性のセンターに集める。
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風に染まったエーテルを作り替え、体に何本ものパイプを生やす。そこから強力に勢いよく大気を通過させると、ゴウゴウと音がし、僕とハンナの体は地面を押しつけるようにふわりと浮いた。
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周囲に大量の砂埃が舞うけど、知ったことじゃない。
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僕とハンナはホバリングでコミエ村を目指した。泡倉にアラン様達を載せたまま。
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もしあの兄弟の手下達が後を付けていたとしても、まさか泡倉の中に居るとは思うまい。僕には付けているようには思えなかったし、探索術に優れたハンナも何も警告しなかったからね。きっとバレてない。
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コミエ村まで80km。しかしそれは素直に道を進んだとき。川の上をホバリングで飛ばせば、障害物もなくあっという間だ。時速80km近くで吹っ飛ばすと1時間もしないうちにコミエ村にたどり着いた。
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川岸にホバリングで登り、そのまま地上を進む。石なんかのデコボコを無視出来るので非常に楽なんだよね。
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ホバリングの轟音に村の人達が集まってきている。
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「止まれ! お前達は何者だ!」
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前に出てきて誰何したのは自警団長のイノセンシオさんだ。久々の再会という雰囲気じゃないね?
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「僕です。ドミンゴの息子で、神殿の養い子のサウルですよ! そしてこっちはアラン様の養女のハンナです!」
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「馬鹿言え! あいつらはまだ5才とかそんなんだぞ、そんな図体がでかいはず有るか!」
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「あれ? こないだの手紙で大きくなったって書いたはずですけど」
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「それにしたってでかくなりすぎだろ!」
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「じゃぁセリオ司祭に確認して貰いましょうよ! それで駄目なら諦めますから」
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しばらくするとセリオ司祭が、神殿戦士の人達とやってきた。僕と村の境界までは30mほど。険しい顔でお互い叫ぶように言い合う。
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「君がサウルかい?」
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「はいそうです!」
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「では私の質問に答えて貰おう!」
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「何でも聞いて下さい!」
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「では、君は空と海と大地を手に入れてるかね?」
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「はい」
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「その大きさは?」
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「この国より大きいでしょう」
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「そこに住まうのは?」
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