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「失われし者達」
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するとセリオ司祭が優しい顔になり言った。
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「お帰りサウルにハンナ。二人とも予想以上に大きくなってびっくりだよ。さぁ中に入って。そろそろ風が冷えるからね」
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村の境界に集まってた皆がわっと歓声を上げた!
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「サウルが随分変わって帰ってきたぞ! 今日は宴会だ!」
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【タイトル】
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061 コミエ村にて
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【公開状態】
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公開済
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【作成日時】
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2019-05-13 21:44:21(+09:00)
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【公開日時】
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2019-05-15 07:00:32(+09:00)
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【更新日時】
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2019-05-15 07:00:32(+09:00)
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【文字数】
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3,555文字
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【本文(119行)】
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「なるほど、事情は分かりました。それでしたらアラン達をコミエ村で匿うことは出来ませんね。サウルの泡倉が無かったらどうなっていたことやら」
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外ではまだ宴会の騒ぎ声がする。松明まで掲げて賑やかにやっている。主役の僕たちがいないのに盛り上がってるのは、なんだかんだと口実を付けて騒ぎたいのだと思う。
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それだけ鬱憤がたまってるのかな? そのはけ口になったのなら良いのだけれど。
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「ええ、あのままですと、どこか別の都市へと放浪するしか無かったと思います」
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「そうなったら、次の手の者がやってきて今度こそ死んでたかも知れませんね」
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神官様がカップを手に持ち、ゆっくりとお茶を飲んだ。
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あの宴席の中に父は居ない。ブラス兄さんと母さんは居るのに。やっぱり父は僕のことを嫌ってるのかな。
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ブラス兄さんはとても驚いてた。こないだまでやせっぽちのちびっ子だった僕が、あっという間に自分より大きくなって、ホバリングというすごい術でアレハンドロからあっという間にやってくるようになってるんだから。
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でも、兄さんは僕のことを気味悪がらずに受け入れてくれた。「だって、サウルはやっぱり泣き虫だから。俺がいないと駄目だからな」って。実際には、ゴブリンも倒せない兄さんが僕の手助けになるとは思えない。でも、そう言って貰って僕はすごく嬉しくて。泣いた。
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母さんは何も言わず僕を抱きしめてくれた。ほんの二ヶ月しか経ってないのに大きくなってしまった僕をちゃんと受け止めてくれた。
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やっぱり嬉しい。
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この人達を守りたい。
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だから父が来なかったのがすごく悲しかった。つい涙が出てしまう。
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「これからどうします?」
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「魂倉の管理人が、良さそうな場所を教えてくれました。そこに隠れ里を作ろうと思います。移動にはホバリングがありますし、資材は泡倉から調達できるでしょう。食料はバスカヴィル商会から」
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「んー、そうですね。ただ私はその負荷が君にだけ掛かってくるのが心配です。君に何か有ったら直ぐ破綻しかねない、そんな危うさがありますね」
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「それは確かにそうですね。泡倉の出入り口は僕の周辺にしか出せませんから、僕が倒れたら荷物の運送ができません。もし僕が死んでしまったら泡倉は消えてしまうかも知れません。でも今はこれしか無いと思っています」
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と、そこでフラム様から念話。
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『おーい、神殿に着いたら声かけるようにって言ってただろう? 今何してる?』
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『あ、すいません。直ぐ行きます』
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わずかに硬直した僕を見て神官様が苦笑いしながら
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「何かお告げでもあったのかい?」
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「えぇ。すいません。すぐに神殿でお祈りするようにと。すいませんが、ちょっと席を外します」
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そこから神殿の広間に行く。そのいちばん前、神官様の説教をするところまで進み、跪いた。そのままでは真っ暗なので、広間に仕掛けられている灯りの術理具を使って明るくしている。
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そして跪き、祈りをする体勢になると、呼吸を整え、エーテルを練る。呼吸に合わせ魂倉を通しながら全身を循環させる。
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エーテルが僕の体の隅々を通りながら純度を高めていく。
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各属性の霊的センターを通し、練ったエーテルを溜めて、それを更に純度高め、ある程度自分の中に高純度のエーテルが溜まったところで、頭頂部から神に捧げる。
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特定の効果を願うわけではない、純粋にエーテルを捧げる行為。
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この高純度のエーテルが神の糧になる。
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さて、捧げ物をしたところで、念話をしようか、と思った途端。
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僕の肩に手を置かれた。今まで人の気配なんてしなかったのに!
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僕は頭を上げる事が出来なかった。
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非常に高純度のエーテルを感じたから。
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「ふふ。驚いたかい?」
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その声は! 慌てて頭を上げると、そこに居たのは緩やかなローブを身につけたフラム様だった。いつもの冒険者スタイルとは違い神気に溢れていた。
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「フラム様はアレハンドロにいたのでは? それにそのお姿は?」
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「これはあたいのアヴァターさ。もう一人のあたいと言ってもいいかもな。坊やが隠れ里に神殿を建てたら、こいつを派遣してやるよ。まぁこれだと目立つから、もうちょっと姿をいじるがね」
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「ありがとうございます」
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「そうそう、移動のことなんだけどね。あたいは自分を信奉する者が居るエリアにはある程度自由に転移出来るんだよ。何か有ったら頼ってくれて良い。ただ、それ相応の代償が必要となるから、頻繁にと言うわけにも行かないがね」
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「すると、隠れ里からアレハンドロまでも転移出来ると言うことですか?」
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「あぁ、今のあたいの力では週に一回一往復がやっとだがね。もっとも、坊やが沢山のエーテルを捧げてくれるならもう少し頻度も高められるかも知れないが……」
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「……あはは。ご期待に添えるよう努めます……。ちなみにその時にはどれくらい同伴出来るんですか?」
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「今はあたいとその装備だけだな」
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「なら」
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「そう、残念ながらサウルを連れてアレハンドロに潜入する事はできない」
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「でも、通信をお願いしたり出来そうです。それだけでも随分楽になると思います。しかし、『今は』ということは」
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「将来的には人を連れて行けるようになる」
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「夢が広がりますね」
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「良質のエーテルを大量に頼むよ、坊や」
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「頑張ります」
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そうだ。もし、人工的にエーテルを高純度にする方法が出来たら神殿にお供えしよう。自動功徳器とか名前を付けて。うん。面白そう。出来るかどうかは分からないけど。
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「じゃぁ、このアヴァターは適当に言い訳付けて同行させてくれよ」
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そういうと、フラム様のアヴァターは容姿も服装も変わっていった。
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特徴的な青髪が普通のくすんだ栗色に。表情も柔らかく慈悲溢れる優しいまなざしに。とてもじゃないけど、高位の剣士だとは思えない。
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服装も純白のローブから生成りの質素な神官服に。
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