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「それではサウル様。よろしくお願い致します。私のことはロベルタとお呼びください」 |
と、頭を下げてきた。 |
「ロベルタ様。アヴァターと言えば神も同然。そんな畏まられても困ります」 |
「いえ、これからは私は一介の神官です。ですからサウル様には相応の礼を取らせていただきます」 |
「サウル、祈りは終わりましたか?」 |
そこに神官様がきた。話がややこしくなるかも、というかまだどういう風に誤魔化すか考えてない! |
「おや、そちらの方は……。ただの人では無さそうですね」 |
「はい。知識神の神官様、私はロベルタ。土地神フラムのアヴァターです。私はサウル様を見守るためにやって参りました。この事は内密に」 |
「ははっ」 |
神官様は跪いて言葉を続ける。 |
「普段の私は放浪の神官です。その様に扱ってください」 |
「わかりました。ではそのように」 |
幸い、コミエ村に来てから、用心のため誰も泡倉から出してなかった。なので「放浪の神官がサウルに神気と運命を感じ、同行することになった」という単純なカバーで押し通すことになったんだ。 |
それからロベルタ様を泡倉に案内し、僕とハンナはコミエ村に泊まることになった。 |
神官様も奥様も、実家で寝てきたらと勧められたんだけど断ったんだ。だって、父が僕を避けてるのに、すごく空気が悪くなりそうだし。そんな事になったら泣いちゃうよ。 |
だから僕は、神殿の僕の部屋で寝たんだ。ハンナは奥さんの部屋に行ったよ。さすがに寝室が別に出来るんだから、一緒に寝るのは良くないよね。 |
ハンナはご主人様のところに居るのは私の務めだ! って抵抗してたけど、僕がお願いしたら聞いてくれたよ。助かった。 |
明日は早い。 |
外の宴会の声と虫の音を聞きながら床に就く。結局宴会に参加したのは最初の挨拶から10分だけだったね。 |
ふと、ロジャーに声をかけてみた。声は聞こえなかったけど、魂倉にピクリと反応があった。 |
何か助けにならないかな、そう思って、その反応があった箇所に向かってエーテルを注ぎ込む。もちろん、純度を高めたものを。ただし、そっとゆっくりと。フラム様に捧げたときより、半分以下の流速で。だって、傷ついてるはずのロジャーに高圧のエーテルをぶつけたらより酷いことになりそうだもの。 |
ロジャーの姿を思い浮かべ、早く元気な姿を見せてください、と祈りを込めながら。 |
気がつけば朝になっていた。 |
どうやらロジャーにエーテルを送りながら寝てしまってたみたい。 |
『おはようございます。昨夜は有り難うございました』 |
『あ、ロジャー! 治ったんだね。よかったよ』 |
『いやまぁやっと声が出せるくらいでして。もうしばらくはお役目を果たせないようで。申し訳ありやせん』 |
『良いよ、元はと言えば僕がしっかりしなかったから、そうなったんだし。ゆっくり治して。僕もエーテルを送るから』 |
『……ありがとうございます』 |
そこから慌ただしく朝食を摂り僕とハンナは出発した。 |
ロベルタ様は泡倉の中。ロジャーは僕の中から外の様子を見てくれている。 |
ロジャーが目を覚ましたお陰で、場所を間違うことは無さそうだね。ほんと助かったよ。 |
【タイトル】 |
062 候補地への道 |
【公開状態】 |
公開済 |
【作成日時】 |
2019-05-15 08:15:25(+09:00) |
【公開日時】 |
2019-05-16 07:00:23(+09:00) |
【更新日時】 |
2019-05-16 07:00:23(+09:00) |
【文字数】 |
3,469文字 |
【本文(119行)】 |
ロジャーが言うには、候補地はコミエ村から約20kmとのこと。 |
川をホバリングで通ってしまえばあっという間なんだけど、ここは陸地を進もうと言うことになった。僕たち以外にも人が通る可能性を考えて。それに川も完全に安全では無いとロジャーに聞いたんだよね。たまに水棲の魔獣が襲ってくることもあるとか。 |
ロジャーはまだ姿を現すことが出来ないそうなので、僕とハンナとロジャーで念話を行いながらの道行き。 |
川岸からちょっと離れて道を作る場所を確認しながらホバリングで進む。だからあまりスピードは出さない。みっしり生えてる草や木をかき分けながら進むとなると大変だけど、ホバリングで避けながら進むので非常に楽だね。進むスピードも普通に走るより速いくらいにしているから、この調子だと1時間もすれば到着しそう。 |
まだ日が高く昇る前だからか、夏の朝は涼しい。川の方から涼しい風が吹くのもその一因かも知れないね。 |
そうしてしばらく進んでいくと |
『サウル。この先にゴブリンが居る』 |
『ひのふの4体ですな』 |
と二人から念話がきた。 |
『向こうは気づいてる?』 |
『ホバリングの音に警戒はしてるようですぜ』 |
『あ、こっちに来る』 |
『よし、ホバリングを解除して迎え撃とう』 |
ホバリングを使っての戦いにはまだ慣れない。突撃するだけで何とかなる状況ならともかく、普通の戦いにも馴れた方が良いはず。ハンナと一緒に戦うのも試しておきたい。 |
こないだゴブリンを倒したときにはあんなに興奮してたのに、今日は妙に冷静で不思議な気分。まるで組合で戦いの訓練をしたときみたいな……。 |
「ハンナが前に出て攪乱するから、サウルは後ろから四大術でとどめを刺して」 |
「分かった」 |
多少見晴らしの良いところに移動してゴブリンを待ち構える。ハンナとロジャーの気配察知には待ち伏せは見あたらないけど、念のためだ。 |
馬鹿正直にまっすぐやってきた4体のゴブリン達が100m程先に見える。見た目には普通のゴブリンみたい。手にはそれぞれさびた剣や木製の槍をもっている。四大術や神術使いは居ないようだ。 |
「よし、行こう」 |
先手必勝。ハンナが膝まである草に隠れるように姿勢を低くして走って行った。地味な色の外套も相まってあっという間に姿が見えなくなる。 |
僕も追いかけるように走るけど、ハンナほどのスピードは出ない。 |
ゴブリン達は一人姿を見せている僕に向かって走ってくる。4体のゴブリンが走り込んでくる様子は、ちょっと怖い。 |
Subsets and Splits
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