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【更新日時】
2019-05-20 15:56:59(+09:00)
【文字数】
3,202文字
【本文(113行)】
 しばらく川に沿って海を目指してみると、小高い土地を見つけた。ロジャーが言ってたのはここかな?
『へい。その通りでさ。この台地は水もありやすし、海も近い。木材をとるのに適した森もありやす。好条件かと』
 川沿いから台地に上ってみると、まばらに木が生えた土地が広がっている。遠くに森が見えているし、西を向けば海が見える。
 今世では初めての海。もちろん泡倉の中の海も見ているから本当に初めてというわけじゃないんだけど。こっちの方が海の色が暗い気がする。
 さて、候補地についてちょっと見回ってみようかな。どこに家を建てるか井戸を掘るか。ゴミ捨て場をどうするか。考えなきゃ。
 あ、その前に、候補地に着いたって泡倉のみんなに知らせなきゃね。
 周囲に魔物やその巣が無いことを確認する。これは僕は苦手なのでハンナに全面的に頼る形になった。
 そうして安全が確認出来たところで泡倉の中に入り、近くのハイエルフに皆を集めるようにお願いする。
 しばらくするとアラン様にセレッサさん職人と家族の皆さん、計16人の人達が集まってきた。
「アラン様から聞いてると思いますが、隠れ里の候補地につきました。見て貰って明日から作業を開始しようと思います」
 互いに見合う職人と家族の皆さん。すると、親方と呼ばれる三人の内一人が苦々しげな顔をして言い放った。
「俺たちは王都でやっていけなくなって出てきた。どうせあのままならスラムに落ちるか飢えて死ぬくらいのもんだったんだ。隠れ里に入るのは構わねぇ。でもよ、俺たちは力仕事に向いてねぇ。木工だって大工向きのことはやったことねぇぞ。その辺どうするんだ」
 あぁそうだよね。皆さん術理具やらその飾りに関した職人さんだものね。
「大丈夫です。力については、倍力の術理具を人数分提供します」
「俺たちが作る予定だった一つだな。あれは王都でも噂になってた。それを使うと子供や腰の曲がった婆さんでも力仕事が出来るとか。本当なのかい?」
「本当ですよ。ちょっと持ってきて貰って試しましょう」
 直属の部下として与えられた三人、イェニ、アーダ、マルックに人数分の倍力の術理具を持ってきてもらうよう。
 それを全員に配り、付けてもらう。子供も交じってるけど、サイズ調整は革紐を調整するだけなので簡単だ。
 サイズ調整が終わったら起動してもらう。倍率は最小に。
「どうですか? 使えると思うのですけど」
「あぁ、こりゃすげーな。自分のエーテルと魂倉を術理具に貸す形になってるのか。これなら安い魂倉だけでいけるわけか」
「わわ! こんな大きな石を持ち上げても辛くない!」
「歩くのも楽だし、荷物を背負っても動きやすいわね」
 しばらく皆さんに使って貰う。荷物を持ち上げてみたり歩き回ったり。
「でもよ、ちょっとだけ反応が遅れるな。走るのにもちょっとコツが要る」
「戦いにも使えたらって思ったけど、かなり訓練が必要かもな」
「俺は戦いには使えないと思うがなぁ」
 と言うような意見も有った。僕も戦いに使うにはちょっと難しい気がする。頑丈な鎧なんかと組み合わせたらひょっとしてって思うけど。
 満足して貰ったところで、今付けている術理具は差し上げます、と告げた。修理や部品の交換は無償で行うけど、そのうち自分でやって貰います、とも告げる。
 勿論皆さん術理具職人なのでその辺に文句はない。
「それで、家のことですけど、ここにいる部下達が皆さんを助けます。家の設計図なんかも出しますので、皆さんが主になって作業を進めていただけたらと思います」
「作って貰うってわけにはいかないのかい? 慣れない作業は正直気が重い」
「その気持ちも分かります。しかし、望まぬ形での事とはなりましたが、皆さんの村ですからね。みなさんが主になって作るべきかと思いました」
 そこでアヴァターのロベルタさんが
「もし怪我や病気をしても私が居ますから安心してくださいね」
 と、にっこり笑みを作った。するとほとんどの人が安心した顔を作ったのには驚いた。いつの間に信頼を勝ち取ったんだろう? 後でアラン様に聞いてみようかな?
「では実際に見て見ましょうか」
 ということになり、候補地に移動する。
 今回の入り口は門のような形を作ってみた。
 出入り口は、二種類できる。今回のような門を作るときと地面に陣を作るとき。陣は動かせない物の下に作れるので重量物を動かすときに使いやすい。門は人などが通るときに使いやすい。
 今回は沢山の人を通すので門の形にしたんだ。
 入り口の門を僕が最初に通る。次にハンナ、アラン様セレッサさんと続く。そして職人の皆さんがやってきて、周辺を見渡した。
「草原だ」「海が見える」「木はまばらだな」「北は山、南は川、西が海で東は草原か」「土に石が少ない。畑も作れそうだ」「ちょっと風が強いか。冬は寒そうだ」
 皆口々に感想を言ったり、話しあったりしているけど、不満なんかは聞こえてこない。とりあえずここを隠れ里にしても問題ないかな? え? 草原だから隠れてないって? まぁそれは言いっこなしで。
「しかしよ」
 と親方の一人。
「俺たちコミエ村に厄介になるつもりだったから建物を建てる道具なんてねぇぞ。そのへんどうすんだ?」
「数は十分でないかも知れませんが、部下達に持ってこさせましょう」
「ずうずうしいが、テントも借りられると助かる」
「えぇこれだけ予定が狂ったんです、仕方ないですよ。まず仮の神殿を作りましょう」
 神殿がないと魔物除けの結界が張れないからね。集落の周辺の柵が貧素な物でもある程度魔物を防げるのは神殿のお陰。だからまずは神殿を建てなきゃ。
「ロベルタさん、指図をお願いしても良いですか?」
「はーい、お任せ下さい。ではとりあえずの縄張りをしてしまいましょう。サウルさん、仮の村の境を決めますので、私の後を付いてきて分かりやすい目印を立ててもらえますか?」
「わかりました」
 ロベルタさんはしばらくうろうろと歩き回り土地の高低や土の質を見ているようだった。そして、
「では、先ほどのあそこを神殿にしましょう」
とちょっと離れた所にある一本の木を指した。そして
「ここから柵を作りましょう」
 と、足元を指したので
「はい」