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「それで何故自警団なんです?」
「神殿の中だけでは世界が狭いからね。積極的に色んな人間と関わって欲しいんだ」
「先日の話と繋がることですね」
「うん。そういうこと」
「……今の僕は、前世の比重が高い。なら今の僕が重くなれば良い、重くなるには異論無い経験でこの世に|縁《えにし》を作る、と」
「相変わらず、頭でっかちなクソガキだな! つべこべ言わずに、目の前のことに飛び込んでみろや」
 ほんと、この人、天才なんだろうね? 疑問。
 マルコ様が
「このマルコ。兵として生きてきた中で、身についた動きもまた人物であると信じるに至りました。剣の振り方、歩き方。体に刻んだ物は裏切りませぬ。間違いなくサウルを作ると確信しております」
「まぁそういうことでよ、クソガキは四の五の言わず体動かして村に馴染めや」
「言うことは乱暴ですけど、まぁそういうことですね。サウルがサウルであるために、まず村人になりましょうか」
 食事を終えると、鍛錬のために泡倉の海岸へ。
 エーテルが濃いので回復が早いし、怪我もしにくいから、ということで。戦士団の皆さんは僕を置いて砂浜で走り込みしたり、泳いだり、乱取りしたり。仕事とは思えないほど、楽しそうだった。ヒトデを投げつけ合ったりね。
 それを横目に僕とハンナは走り込み。ただし、油断するとアラン様から空気の球が投げつけられる。怪我はしないけど痛い。
 ハンナとの乱取りは大変だ。横の動きが激しくて、首を振って対応しようとするとあっという間に視野から外れる。引いて視野を広くするか、視野に頼らず捉えるか。どちらも上手く行かないので、僕は自分の周りに空気の壁を張る。ハンナが掛かると密度の高い壁に阻まれ一瞬動きが止まるからそれで対応する、という訳だ。
 しかし、これはエーテルの消費が激しいし、神経が疲れる。後、ハンナが小さいから良いけど、体の大きな魔物なんかが突っかかってきたらどうすれば良いか、考えなきゃ。
 アラン様は、昨日話した新しい四大術の話を試作型にしていた。僕のとはちょっと違う気もするけど。《《引数》》についてはまだ上手く行ってなかったようなので、数学を引き合いにして話して見た。後は、人に対して指示を出す場合のやり方や、書類で必要事項を埋めるやり方とか。
 書類や人に対する指示の話を持ち出すと、アラン様よりセレッサ様の方が食い気味なのが面白かった。
 鍛錬は2時間ほどだったけど、凄く疲れた。それになんだか全身が筋肉痛。戦士団の皆さんも同じみたい。エーテルが濃い場所では成長や回復が促進されるので、そのためだろう、とのこと。
 でも、僕、これの弱い痛みなら、目覚めからずっとあるんだよね。なんだろう。
 帰るまでにちょこっとだけ、ハンナと浜辺で遊ぶ。追いかけっこしてるうちに乱取りになってたのはご愛敬。後、ちょこっとだけ、単独行動。
 夏のような日差しの海岸から、曇り空のコミエ村へ。気温も5度は違う。
 軽い昼食をとって、マルコ様と一緒に訓練場へ。自警団の訓練は村外れの広場。柵の外だが、十分な広さがある。村の時計は1日3回鳴る鐘の音だ。昼食を取って、集合することになってるけど、食休みをする人も居て、中々集まらない。
 自警団は現在、正団員15名、見習い4名。僕は5人目の見習いになるみたい。
 僕たちが来て30分後、ようやく全員集まったところで、団長のイノセンシオさんが声をかけた。イノセンシオさんは、農夫だけど、兵役にも長く就いていたことがあるのだそうだ。見た目は堅気に見えない怖い顔。マルコ様は180cmの身長の威圧感が凄いけど、イノセンシオさんは身長160くらいでそれほどでもない。でも、顔に走る刀傷にスキンヘッド。右目のアイパッチとただの農夫には見えない。
「では、今日の訓練を始めるぞー! 今日の指導はマルコさんだ。全員、怪我のないようにな。
 そうそう、今日から見習いが1名増える事になった。神殿の預かり子のサウルだ。サウルのことについては皆知ってると思うが、まぁよろしくやってくれ。では、班ごとに整列して素振りから!」
「団長! ちょっと待ってくれ」
 声をかけたのは3班の班長、アリリオさん。この人も兵役経験者。今は木工職人。細身で一番上のお子さんは15才。2班の剣士パウリオさん。
 この辺の情報は、マルコ様、じゃなくてロジャーおじさんから。実はロジャーおじさん、付近の地図を作ったりするのにあわせて、村人の情報も集めてたんだ。細かな機微は別として大まかなことは分かる。
「なんだ、パウリオ?」
「サウルは、こないだ名付けの儀を受けたばかりだろ? 見習いにしても早すぎるんじゃねーか?」
「あぁ。それなんだがな。サウルが、前世と素質持ちだって話しは聞いてるな?」
 皆さん、正団員も見習いの子達も頷く。神殿からそういう説明があったと、聞いてる。でも、父と村長さんが話し合いをしたことは知られているし、実家の家計が火の車だったのは、村の皆の共通認識。なので、神殿がいうのは《《建前》》だと思っているみたいだった。
 確かに、普通そうだよね。
「サウルは既に四大術と闘気法をちょっと使えるそうだ。ただ、体が小さいから大人と混ざっての乱取りは無理だろう。なので見習いで慣れてもらう」
「いや、団長、それ本当かい?」
「あ?」
 イノセンシオ団長の隻眼がパウリオさんを貫く。パウリオさんが一瞬動きを止める。
「まぁ確かにパウリオが言うことも分かる。俺も実はそんな都合の良い話は信じてねぇ。
 だってよ、ドミンゴが新種に手を出してやべーことになったのは村の人間なら皆知ってんだ。名付けの儀でこのサウルが痩せこけてろくに飯を食ってねぇのも見た。
 それにこないだ血相変えてドミンゴと村長が話してるのも知ってる。まぁ経緯はともかく神殿の預かり子になったのはいいや。どんな村だって多かれ少なかれ有る話だ。
 でも、前世有り、才能有りだってんで、ゴリ押しで自警団に話ってんなら話は別よ。幾ら神殿の皆さんが推しても俺らは納得いかねぇよ。
 だからよ、ちょっと使えるところ見せてもらえるか? サウル?」
 隣を見ると、マルコさんが無言で頷く。
 まぁそんな事になる気がしました。
【タイトル】
021 村人になる2 術士の需用
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2017-07-31 12:04:38(+09:00)
【公開日時】
2017-07-31 12:04:38(+09:00)
【更新日時】
2017-07-31 12:04:38(+09:00)
【文字数】
4,393文字
【本文(157行)】
 マルコ様に頂いたアドバイスは、『驚かせるべきだが、壁を作られては駄目』だ。
 村の四大術士はマリ様だけ。過去、街で暮らしていた人は、ある程度四大術士を知っている。
 適度に目を引き。でもやり過ぎない。
 考えているうちに、やることは決まった。
 広場の北の方を指しながら、団長のイノセンシオさんに声をかける。勿論、人が居ないのは確認済み。その辺りは、青々とした草が僕の背丈以上に伸びていて、ところどころ低い木も生えている。ちょっとした密林だ。
「では、あちらに術をかけます」
 数回、四拍呼吸を行う。
 今できる最高効率で魂倉にエーテルを入れ込む。
 最初の時のようなエーテル漏れはしない、つもりで。僕は想定したエリアに両腕を突き出し、気合いを入れて叫び腕を頭の上に上げる。あー、ちょっと、いや、結構漏れてるかな? 金色の光が目に入る。僕もまだまだ。
 最初は、闇。
 僕が指さした辺りは、真っ暗闇に覆われた。
 高さ5m一辺20mの四角い闇の箱。
 最初に闇を使ったのは、今日は闇の日だからと言うわけじゃ無くって、闇の術が珍しいから。目論見通り、周りから「なんだありゃ!」だの「真っ黒になっちまったぞ!」「光ってる!」と大好評みたい。あ、闇だけだと地味なので、所々表面に光を這わせています。
 しばらくすると、闇が晴れ中の様子が見える。やっぱり皆びっくりしてくれたようだ。