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何故って?
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だって、そこにあるのは立派な作りの舞台だから。草ぼうぼうだけどね。
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周りの地面から50cmほど持ち上がった、一辺20m程の四角い舞台。闇で覆ってる間に地の術で整備したんだ。あ、さすがにこれは僕の力だけじゃ無理なんで、ロジャーおじさんにも手伝って貰ってます。
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ここまでは従来式の四大術だったので、ちょっとスローペース。今、思いついただけの即興だからね。ただ、面白いから後で呪文書に書き加えておこうと思う。
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そんな事を考えながら、次。
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魂倉の方はまだ大丈夫。
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呪文書から、火の呪文を喚起。
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引数に「視線誘導、400、小規模、火柱」と放り込み発動。ごそっと魂倉からエーテルが抜け、立ちくらみのような感覚に耐えて20m四方の舞台に均等に火球を落とす。
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同時に爆発音と3m程の火柱が立ち上る。
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ちょっと音が大きすぎた。ロジャーおじさんから「坊っちゃん、やり過ぎでさぁ。若手が何人か座り込んでしまってますぜ?」とのこと。
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火柱も派手だが直ぐ消える。
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しかし、火勢は衰えない。何故なら一面に生えていた草木が轟々と燃えさかっているから。青いままの草木が、こんなに勢いよく燃えることは無い。術ならではの現象に、驚くのかと思いきや、火を消そうと血相変える人が居る。
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その人の鼻先に、ふわりと白い物が舞い降りた。
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雪だ。
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舞台と、それを見る自警団の人の上にだけ降り積もる雪。
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走り出そうとした団員も思わず足を止める。
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しんと静まった中、火の燃える音と生木が爆ぜる音だけが聞こえる。
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誰かがぼそりと「こんな雪じゃ、あの火は消えねえよ」とつぶやいた。
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確かに雪は段々激しくなって、周囲の気温がちょっと下がる程。けど、火は消えそうにも無い。勿論、それは分かっていて。だから、僕は次の手を打つ。
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呪文書から水の呪文を喚起。
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引数に、火の呪文と同じく「視線誘導、400、小規模、水柱」と入れて発動。
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火球が飛んだ軌道そのままに、白い氷球が飛び、舞台に突き刺さる。
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音も無く400本の水柱が立ち、火が消えて、水も残らない。
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残ったのは、草木の灰や燃え残り。
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予告もなしに突風が吹き荒れ、埃を巻き上げる。
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風が収まった後に残ったのは、黒曜石のように磨かれた舞台。
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「どうでしょう?」
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魂倉、ほとんど空っぽにしてやったんだから、上手く行ってくれよ、と皆さんの方を恐る恐る見て見る。
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皆、口をポカーンと開けてびっくりしてる! やった! 上手く行った! と喜んでいると、頭をガツンと叩かれた。見ると、怖い顔のマルコ様。
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「やり過ぎだ」
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え? やり過ぎ? 駄目だった?
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「見た目は派手ですけど、一つ一つの術はそんなに難しくないはずで……」
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「イノさんが言ってたことを忘れたか? 『ちょっと使えるところを見たい』だったろう。これは、ちょっとか? ん? 火球か何かを数個で十分だったんだ。……どうもサウルは術のことになると我を忘れるようだな」
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どーしよう? とキョロキョロするけど、誰も何も言わない。ロジャーおじさんからは笑いの気配だけで、助けてくれそうに無い。ええと、どーしよう?
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「ギャハハハハハ! 馬鹿じゃねーの? 馬鹿じゃねーの? 馬鹿じゃねーの? も一つおまけに、馬鹿じゃねーの? ギャハハハハ!」
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響き渡る馬鹿笑い。今一番聞きたくない声だーーーー。
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声のした方を見れば、団員の皆さんの後ろに見える三つの人影。うち二つがこっちを指さして笑ってる。一つは当然アラン様。もう一つはハンナ!
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「見て見ろクソガキ! 皆どん引きじゃねぇか!
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誰がここまで気合い入れるって思うかよ、大学入試の実技だってここまで派手にカマス奴ぁいねぇぞ。
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所詮は空気が読めねぇクソガキな!
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時と場合に寄りけりってのが分かってねぇ! 所詮俺様には敵わねぇクソガキ様って事だ! ギャハハハハ! ぜーーっぜーーっ」
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あ、アラン様息切れした。
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団員の皆さんは何となく毒気を抜かれたような様子。息を整えたアラン様に団長のイノセンシオさんがノシノシと近づきつつ声をかける。しゃがれ声で威嚇してるみたいに。
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「おお、こりゃ大学の先生様じゃねぇですか」
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「おう、団長! 久しぶりじゃねぇか! つーか、いい加減俺様の名前覚えろよな。 それと、それ以上近づくな! お前顔こええんだから、夜中に便所行けなくなったらどーすんだよ!」
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「この野郎、ぜってー名前で呼んでやらねぇ」
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「なんか言ったか、ハゲ?」
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団長がアラン様にズカズカと近づいていって、二人の距離は触れ合うほどに……。二人は鼻先まで触れそうになりつつ「あ?」とか、「やんのか?」とか言い合ってる。
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これ、ヤバいんじゃ?
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と、セレッサ様が無言でアラン様の頭をはたき、首根っこ掴んで引きずっていった。ハンナが団員の方にぴょこっと頭を下げて、二人の方に付いていく。
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アラン様はイノセンシオさんになんか言ってる。イノセンシオさんは得意げに何か言い返す。
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やがて訪れるきまずい沈黙。
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そこにマルコ様が、咳払いをしながら口を開く。
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「……これでサウルの能力については証明できたと思うが」
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「お、おう。そうだな」
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団長が頷き、なし崩しに訓練が始まった。た、助かったー。
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僕は、見習いの子達と一緒に基本の素振り。一番小さい子でも8才だから、僕が最年少なんだけどね。
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一番最初の型を、ひたすらに。
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真上に振りかぶって振り下ろす。
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たったそれだけなんだけど、他の子とは全然違う。
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僕の棒切れだけ、描く軌道がガタガタだ。
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頭はこうすればいいと分かってるけど、体が動かない。腕はよれるし、足腰も悲鳴を上げる。他の子は移動しながらの素振りでも軸がぶれないけど、僕だけこけそうだ。
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僕は同じ年の子の中でも体が小さいし、よく病気もした、らしい。だから、他の見習いの子より早くバテる。今だって、女の子より細いし、あばらも出てるからね。それにしたって。
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しばらくすると、僕はちょっと休んでも動けなくなった。他の皆が本格的に体を動かす中、僕だけが看取り稽古。そう、僕は準備だけで体力が尽きていたんだ。
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ゆっくりとは動けるけど、全力の訓練は無理っぽくなったので、別の作業をする。
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広場の隅に、大きな土の桶を10個作る。土から生やしただけなのでその場からは動かない。中に水。5つは温かい水。5つは冷たい水。温かい水の桶は赤く色を付け、冷たい水の桶には青く色を付ける。
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温かい水に僕が持ってきた布を入れてゴシゴシ。綺麗になったところで冷たい水にさらして……。
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顔に乗せる。
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「あああああああああああ」
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気持ちよさに思わず出る声。
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「ねぇねぇ、サウルだっけ? なにやってんのさ?」
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と、顔に乗せた布をどけると、見習い組最年少で8才のパシリオさんがこっちを見ていた。同じく休憩中みたい。あ、今は僕が最年少か。
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「えっと、休憩?」
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「そうじゃなくってさ、その桶、なんなの?」
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「うん。温かい水と冷たい水が入ってて、これで布を濡らしてから体を拭いたりすると気持ちいいんだ」
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「なんで先に温かいのでゴシゴシしてたの?」
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「温かい水だと、汚れが落ちやすいの」
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「へー」
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