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「まったくだね。銀や鋼鉄、ミスリル、魂倉に本。触媒だってたっぷり欲しい」
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「それに、だ。サウルの術理具がばれたら、面倒な奴らも寄ってくる」
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「確実にバレるだろうさ。賭けたって良い」
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お二人とも何言ってるんだろう?
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「鼻薬も欲しいやね」
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「鼻薬ってなんですか?」
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「そうさね、5才の子供に話すのは早い気もするけど」
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「まぁサウルなら飲み込めると思う」
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その後しばらくお話をしたんだ。色々必要な物を決める。泡倉を探査したりセニオさんに聞いたりして、計画を修正していく。
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色々と決めていったよ。神官のセリオ様も奥様のマリ様もすごく楽しそう。ちょっと悪い顔してた。村長さんも巻き込むんだって。アレハンドロの奴らにひと泡吹かせる、って。
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正直、良く分からないところも沢山あるけど。
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あ、アレハンドロというのは、この村から5日ほど行ったところにある都市のこと。ここコミエ村はアレハンドロの管理下にあるだってさ。
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『まぁ良いんじゃないすかね』
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って計画を聞いてたロジャーさんも言ってるし。
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『ただの人間にしては、面白いことを考えていますな。私としては協力しても良いかと』
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と、セニオさんも言ってるし。なるようになるか、な?
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明けて5月16日。今日も雨。昨夜は遅くまで起きていたから自分で起きることが出来なかった。ロジャーさんが起こしてくれなかったら、お手伝い間に合わなかったと思う。危ない危ない。
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僕は術理具造りに集中。ロジャーさんセニオさんには色々お願いした。
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他の人は色々。雨の中、村長さんの家に色んな人が代わる代わる集まって僕の術理具の使い方を習っていく。ほんとは、雨具の発達してないこの世界で雨の日の外出は基本的に禁止。万が一風邪でも引けば、重症化の可能性は高いんだってさ。神術も薬草もただじゃ無い。助けたくても助けられないことはある。ってロジャーさんが言ってた。
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でも、今日はどうしてもそうしなきゃいけないってことで、村長さんとセリオ様、戦士団の人達が協力して人集めをしているんだそうだ。
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術理具の感想を聞きたいけど、明日まで我慢。明日は晴れるそうだから、皆さんが使ってる様子も見えるだろうし。
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晩ご飯が終わった後、ロジャーさんが話しかけてきた。部屋には僕とロジャーさんの二人だけ。シンプルな僕の部屋には、術理具の灯りが一つ。これも預かりの孤児には過ぎた品らしい。術理具自体は金貨数枚でも、維持には魔物の加工済み魂倉が必要で。それは安くない。
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「坊っちゃん、お疲れ様で。ちと、報告とお伺いしたいこととが一個ずつ」
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「はい。ロジャーさんもお疲れ様。明日は多分ゆっくりできると思うよ」
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「まず一つ報告ですがね。魔物をちょいちょい見かけるようになってきましたぜ。まぁ雑魚ですがね」
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ロジャーさんやセニオさんの雑魚認定は当てにならないと思う。だって戦士長のマルコ様のことだって評価が高くないんだもの。
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「んっと。どんな魔物なの?」
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「あっしが確認したのは、コボルト、ゴブリン、狼ですな」
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「……んーと、それぞれどんな魔物? 確認したいな」
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僕の知識は、ほとんどがコウタロウさん由来だけど。なんかちょっとずれている気がするからね。新しい術理具も、きっと誰か作ってると思ったし。
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「コボルトってーのは、犬頭の小さい人型の魔物でさ。いっちょ前に魂倉を持ってやすがね、大人が棒を持っていれば簡単に追い払えまさぁ。数が増えると面倒ですがね。こいつが50くらいの群れが一つ」
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「……」
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「ゴブリンは、コボルトより大きいですが、大人の男よりは小さい。潰れたエルフのような耳に猿のような顔してまさ。狼は、こないだ河原で見かけた野犬。あれの倍くらいの体高がありますな。坊っちゃんなら、首筋噛みついたまま山の奥まで走って持って行けるかと」
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「うわっ。怖いね。自警団、対応出来るの?」
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「余裕でしょう。コボルトの数が多いんで、ちと畑が荒らされる可能性がありますがね」
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「僕はどうすれば良いと思う?」
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「状況の把握だけで、良いんじゃ無いですかね。坊っちゃんが呼ばれる事も無いと思いますがね」
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「分かった。まぁ僕が直接対応することは無いと思うけど、考えておく。で、聞きたいことってなんです?」
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「……。小っさい話しなんすがね。あっしの呼び方、何故変わったんで?」
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ロジャーさんが、ちょっとだけ間を置いて聞いた。
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「……そうだね。意識してなかったよ。だけど、多分、こないだ前世の人、コウタロウさんと話をした結果、だと思う。前世の人は、僕と話して姿を消した。でも、あの人が持っていた物は、消えるどころか僕の深いところにもっと深く結びついた、そんな気がする。それが影響したんじゃないかな」
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「あっしらの事もお分かりに?」
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「多少、ね。コウタロウさんは多少の知識は残したけど、記憶のほとんどには鍵を掛けてる。なんでそんな事してるのか分からないけど。でも、ロジャーさんやセニオさんが、前世で関わりがあったというのは分かるよ。懐かしい感じがするんだ。あの泡倉もね」
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ロジャーさんが僕から目をそらす。黒ずくめで黒髪のおじさんが目をそらす。僕はあの顔を、表情を何度か見たことが有る。
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村の共同墓地。空き地に木の棒が立つだけの墓地。その下に死体は無い。遺灰があるだけ。形のある死体は不死者になることがある。なので、切り刻んで別の場所に埋めるか燃やすかする。余程のことが無ければ、燃やすという。セリオ様が司祭の顔をしてそう言ってた。
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ロジャーさんは、逸らしていた顔を戻して僕を見る。僕を墓標のように見ていた。
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【タイトル】
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027 企みの始まり
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【公開状態】
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公開済
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【作成日時】
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2017-11-08 11:28:12(+09:00)
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【公開日時】
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2017-11-08 11:28:12(+09:00)
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【更新日時】
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2017-11-09 16:03:05(+09:00)
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【文字数】
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3,400文字
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【本文(75行)】
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5月17日。ロジャーさん達が言うように晴れた。
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きれいな空に、少し雲がかかる。太陽の光が雲に映って黄金のように見えた。まぁ、黄金の色は前世の知識で知っただけで、今回生まれてからは見たこと無いけどね。
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午前5時の気温は10度。
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風が少し吹いている。僕の服は薄手でごわごわで。つぎはぎもあって、風が通るんだよね。だから、寒い。でも、さわやかで草の匂いが混ざってて素敵な風。
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ロジャーさんの報告によると、待ち人は10時くらいに来るみたい。どんな人たちなのか、村人総出の作戦は上手くいくのか。
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みんなの作業が楽になれば、僕の食費が稼げれば、と、思って動いたことがいつの間にやら村全体を巻き込んだ話になっていて、ドキドキする。
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神殿の皆さんは何かウキウキそわそわしている。今日、待ち人が来るだろうとは思っていても、確証はないはず。でも、祭りの前みたい。
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朝食を終え、ちょっと村の様子を見に行ってみる。
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街の側にある入り口。こないだ真っ黒の石舞台を建てた広場周辺では、術理具を持った人達がおっかなびっくり作業していた。
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慣れない術理具を操って、草を抜き、細い木を切り倒し。木の根を起こして一所に集めている。
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草を抜くのは草かきの術理具。土に先端を埋め込んで土を引っ張るだけで草が地面に浮き上がる。後はそれを熊手やほうきで集めるだけ。木を倒すにはちょっと足りないので、別の術理具を作ってみた。棒の先に回転する板を取り付けた術理具。板には刻み目を付け硬い刃にしている。板は高速回転して木を切り倒す。山に生えている太い木には通じないし、闘気法を十分に使える人の振るう斧にも敵わない。でも、農作業や村の整備には役立つと思う。
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僕は様々な術が使えるけど、普通は2つの系統を使えるだけでも《《稀》》。全ての体系の道が開いているとなると、知識の神の神官であるセリオ様にも、四大術者のマリ様もアラン様にも覚えが無いとのこと。
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逆に1つも使えない、という人がほとんどなのだそうだ。そういう人でも、霊的センターは存在するし、魂倉もある。だから、無意識に空気中のエーテルを呼吸しているし、体内に蓄積している。ただ、術に至る霊的な道が開けない。
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