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古代文明の頃から様々な試みがされていたそうだけど、《《まもとに使える方法》》は生まれなかったんだって。何があったのか、ちょっと怖いね。
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まぁとにかく、僕の術理具は、そういう『《《ほとんどの人達》》』が使えずに持っている体内のエーテルで使えるようにしたもの。色々改良点はあるようだけど、とっかかりにはなる、と思う。
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今回の術理具は、そういう『《《ほとんどの人達》》』、特に肉体労働に従事している人にとっては、助かるものだと思う。その辺りは、今日の売り込み次第だけど……。元々は、イノセンシオさんの頼みで作った物だけど、折角なら色んな人に使って欲しい。
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集めた草木は、僕が貰う事になっている。ちょっと試したいことがあるので、泡倉に持っていく。今、大量の草木を置くための倉庫をセニオさんとその部下の人達が作っているはず。
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そう! 驚きの新事実! セニオさんには部下がいるんだってさ。しかも沢山みたい。具体的な人数は教えてくれなかったけど。屋敷だけじゃ無くて、泡倉の色んな所に住んでいるんだって。確かにあの屋敷を維持するにも人が要るだろうし、巨大な泡倉全体をセニオさん一人で管理できるわけも無く。セニオさんには部下が与えられているのだということ。ちなみに僕には会わせてくれないみたい。もっと僕が力を示さないと駄目なんだとか。
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ロジャーさんにしてもセニオさんにしてもそうなんだけど、手伝いをするにはそれなりの制約があるみたい。条件が良く分からないけど。その条件自体も、僕が《《力》》を付けないと教えてくれない、みたい。
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色々とギフトを与えたり、管理人を付けたりする割りには変な制約があったりするのはもやもやする。でもその辺りの条件を決めたのは、コウタロウさんとそのお友達の神様みたいで変更はできないみたい。神術を鍛えると、神界と交信できるってセリオ様に聞いたので、頑張ってみようかなぁ。
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村の皆が術理具に慣れてきた。途中、エーテル使いすぎてバテてしまった人が何人か居たけど。僕はちょっとコツを教えたりした。最初は僕みたいな子供が本当に術理具を作ったのか疑問に思った人も居たみたいだけど。セリオ様やマリ様、という神殿関係者が僕を尊重してくれる様子を視て、納得いったみたい。
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日が高くなって、奥さん達がそろそろ食事の準備をしようかとする頃、ロジャーさんから報告が来た。1km程先に商隊が来たと。
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しばらくすると、狩人の格好をした人がやってきて商隊の到着を告げた。僕が、今の僕になってからは正体を見るのは初めてなので、すごくワクワクする。
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騎馬に乗った冒険者とおぼしき人が二人。その後に馬車が見えてきた。御者台に人が見える。
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道の一番西の端にあるコミエ村。この先には集落は無い。最寄りの村からは徒歩で二日かかるし、滅多に人も来ないので、商隊が来る道も獣道のようなもの。大きな岩や邪魔な木は払われているけど、草はぼうぼうと生えているし、舗装なんてされてない。だから、馬車は人が歩くのと同じか、下手をするともっとゆっくりだった。
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僕や神殿のセリオ様やマリ様、それに戦士団の人達はちょっと離れたところから見ている。商隊の歓迎と交渉は村長さんの役目だからだ。村長さんの側には同じ年のエミルや先代の村長、下働きの人達が揃っている。
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「おー、これはヘクターさん、わざわざお出迎え有り難うございます。お元気そうで何よりです」
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「ははは、丈夫なだけが取り柄でね。シルビオさんも元気そうだ」
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村長さんと、シルビオと呼ばれた四十絡みのおじさんが固い握手をする。柔和な表情をしているけど、あれは油断できないな、と、僕の中のコウタロウさんがいう。
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シルビオさんの横に若い女性が立った。赤い髪に黒縁の眼鏡。くりっとした目にそばかすが可愛い顔立ち。美人というわけでも無いけど、明るい雰囲気を感じる人だ。着ているのは仕立ての良い服で赤と黒のチェック柄のワンピース。僕は生まれて初めて柄の付いた布地を見たよ。この世界では眼鏡は術理具のことが多いんだってさ。だからその値段はびっくりするくらい高い。おまけに見たことも無い布地の服! あの女性は疑いも無くお金持ち!
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「おや、これはロージーちゃん、いや、もうお嬢様かな? 久しぶりだね。王都で勉強していたんじゃ無かったのかい?」
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「んふふー、お久しぶりです。ヘクターおじさん。そろそろ母の手伝いをしたいと思って、帰ってきました」
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「そうか。ロージーちゃんもそんな年か。月日が経つのは早いものだ」
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「ところでヘクターおじさん、幾つか聞きたいことがあるんですけど」
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ロージーさんは、眼鏡をくいっとすると周囲を見渡した。周囲の村人も神殿関係者も緊張の面持ち。
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「……あのおっきな舞台、どうしたのですか? さっき馬車からも見えてたからシルビオに聞いたけど、前は無かったって。あれ、そんなにすぐできないですよね?」
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村長、頑張れ!
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「あれは、マリ様の弟子が作ったんですよ。四大術で」
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「そうなんですか! お弟子さんって何人くらいいらっしゃるのですか? 一ヶ月で作られたと言うことは、5人くらいです?」
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ん? 普通そんなに掛かるかな? ロジャーさんに聞いてみるけど答えてくれなかったので、マリ様に聞いてみる。
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「あの石舞台なら、普通そんなもんだろうよ」
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「僕、10分で作ったんですけど……」
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なんか、悪い予感がする……。
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村長さんが口を開いた。得意げに。
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「いやいや、一人さ。しかもあっという間に作っちまったんだよ」
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「えぇーーーーーーーーーーーーー!!」
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ロージーさんが凄い声を上げる。隣のシルビオさんは、ロージーさんの様子に驚いてる様子。
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「そ、そんなわけ無いでしょ。あの石舞台、ただの石じゃ無いんですよ? 私の眼鏡には凄い濃度のエーテルが見えてるんですから! あんな濃度の素材をあの量で生み出してたらあっという間に干からびてしまいます! 幾らマリ様のお弟子さんでも無理ですよ!」
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「うむ。ロージーちゃんもそう思うわな。それが普通だ」
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「そ、そのお弟子さんに会わせてください!」
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「いや、その前に村の様子を見て見ないか? 弟子にはその後会わせるから」
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ロージーさんとシルビオさんは、村長の様子に何か感じたのか、素直に着いていった。
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2017/11/09 探索者→冒険者
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【タイトル】
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028 場違いな品
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【公開状態】
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公開済
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【作成日時】
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2017-11-15 12:06:48(+09:00)
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【公開日時】
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2017-11-15 12:06:48(+09:00)
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【更新日時】
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2017-11-15 12:06:48(+09:00)
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【文字数】
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3,219文字
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【本文(82行)】
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村の門に、村長さんと商隊の人達が向かおうとした時、冒険者の一人が声を上げたんだ。それは青い髪をした女性で革鎧を身につけている。剣士だと思う。しかし、《《青髪》》かー。初めて見たよ。
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『ねぇ、ロジャーさん。青い髪って初めて見たんだけど、良く見るの?』
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『いえ、坊っちゃん。今の世の中には青髪は居ない筈ですぜ。それに、あの女冒険者、あっしには栗色の髪に見えますな』
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『分かった。気をつけてみてくれる?』
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『分かりやした』
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圧縮された時間の中でやり取りを終えると、僕の魂倉からロジャーさんの気配が消える。女冒険者は、黒い石舞台の側で作業している村人の方を指しながら、雇い主である商隊の長、ロージーさんとシルビオさんに呼びかけている。
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草刈りの術理具に注目してくれたみたい。助かった。村長さんそこの説明抜きで村に行こうとしてたから。緊張してたのかも。
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ふと、背中に物理的な重圧。気がつくとハンナがいつの間にやら寄ってきて、僕の背中によじ登ろうとしてる!
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「ハンナ止めてよ! 背丈も変わらないんだから、乗ったら、僕潰れちゃうよ!」
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「レディに体重のことをいうのはマナー違反」
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「いや、レディは肩車ねだらないと思うよ?」
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「良いから乗せる。もしくは撫でろ」
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「なんだろう、この理不尽感」
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仕方ないので、ハンナの頭を撫でてやると、ハンナはにへーっとご満悦。神殿勢はなんか良い物見たような表情してるけど、なんか僕は納得いかない。
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撫でていると、ハンナが、んっ、と顎を上げた。どういう事?
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