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ハンナは周囲を見渡す。もうギャラリーは居ない。けど、誰か探索者が聞き耳を立てている可能性はある。
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『ロジャー、見張りと何か適切な処置を』
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『分かりやした。ずいぶん久しぶりのまともな仕事ですな』
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周囲に僕の知らない四大術が展開された。二層、いや三層かな? 僕たちを包んでいる。
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『これは?』
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『防音と偽装音でさ』
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『なるほど』
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僕が真似するには研究が必要かな? 多分、術自体も隠蔽できるような手段が取られている。
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「もう大丈夫だよ。手は打ったから」
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「え? ん。これはサウルが?」
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「僕の部下みたいな人がね」
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「どこにいるの?」
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「それは秘密」
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お腹の中とは言えないよね。
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「私、以前、私が機人だということは話したよね。本来、機人は人工子宮の中で成人になるまで過ごすの。私も子宮の中でそれなりに育ってたみたい」
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「でも、前回は子供だったね」
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「うん。アランとセレッサに発見されたとき、私はほとんど死にかけてたみたい。肉も皮も骨もほとんど使い物にならなくなって、子宮は復元できない状態。
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アランは他の発掘隊の反対を押し切って私の《《生きてる》》部分を取り出し持ち帰った。
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王都の研究室では子宮の復元は出来なかったので、アランは非常手段を取ったの。私の生きてる部分、ほとんど脊髄と脳だけだったんだけど、それを定着できる体を作って動かした。
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つまり前回会った私は、超未熟児だったの。本来子宮で行われる教育を間に合わせの体を使って、外で行ったってわけ」
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「話が飛びすぎて良く分からないな。じゃぁ、今のハンナは本来の? それと肝心の話し、どうやってその体に?」
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「あの体は成長できなかった。今のもそうだけど。そうね、それで前の体がぎゅうぎゅうになったから、王都でもう一回《《組み立てた》》の。《《色んな部分》》を取り出して。肉も骨も良くなった。だから《《今度》》はマスターの役に立てる」
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「んーーー、ちょっと考えさせて……」
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僕は魂倉のライブラリに降りたって、大急ぎで検索する。
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コウタロウライブラリから幾つかの物語がピックアップされ、概要が知らされる。前世でも、心臓部を新しい体に移してパワーアップする思想はあったみたいだね。でも、それはもっぱらゴーレムなどの話。人間やそれに類するものの移植は禁忌に近いみたい。
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肝心の機人については合致するものは無かった。
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でも、手足が無くなったときに交換するという思想はあったようだね。
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「何となく分かった。けど、なんで教えてくれたの? もちろん教えて貰ったのは嬉しいけど」
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「だって私のマスターだから。前世もその前も。ずっと私のマスターだったから」
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【タイトル】
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048 二人と前世
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【公開状態】
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公開済
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【作成日時】
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2018-08-29 16:51:37(+09:00)
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【公開日時】
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2018-08-29 16:51:37(+09:00)
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【更新日時】
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2018-08-29 16:51:37(+09:00)
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【文字数】
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2,390文字
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【本文(76行)】
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僕は、戸惑った。
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ハンナと僕のテンションが大きく違う。
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彼女は、ハンナは一世一代の告白をしている。でも僕はひどく冷静なんだ。ここは《《驚くべきなんだろうけど》》ついていけてない。
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何がそうさせるんだろう。情報が足りない。
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「前世、僕とハンナは一緒だったの? 古代文明の時代、どこにいたの? 僕の記憶にあった術理具、アラン様も土地神のフラム様は知らないと仰ってた」
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「ん? マスターは覚えてないの?」
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ハンナの口調が、ちょっとだけ以前の物に戻った。どっちも可愛い。
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「そうだね。知識や技能は有っても記憶は無いんだ。お陰で折角のギフトも宝の持ち腐れ。コータローライブラリにはもっともっと凄い物が入ってるのは分かるんだけど失敗ばかりだよ」
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「そんなことないとハンナは思うけど……」
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「……いや、で、僕達の過去は?」
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「ん。そうね……」
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ハンナが居住まいを正す。
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「ハンナが、一番最初に覚えているのは、大きな鉄の檻。私はそこで飼われている獣だった。後から聞けばデグーというネズミだったっていう話。マスターは私の飼い主だった。昼間ずっと私は一人だったし、マスターが帰ってくるのが遅くなったりして放っておかれた事も度々有ったけど、私はマスターが好きだった」
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ハンナの顔が悲しそうに歪んでいく。
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「でも、ある日。あなたはお風呂に行ってそこで死んだ。その事を理解したのはずっと後だったけど。だって、その頃私はただのデグーだったし。
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灯りが消えて、部屋が冷え、餌も水も無くなって。それでもマスターは帰らなかった。だって死んでたから。
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沢山の時間が過ぎた後、私も死んだ。飢えと寒さとマスターがいない寂しさで。
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呼び鳴きをしても、おねだりのダンスをしても部屋は暗くて寒いままだったから」
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僕の中を何とも言えない気持ちが渦巻いてるけど、ハンナの話は続いた。
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「次に気がつくと、私は人の形をしていて、人としての能力を持っていて、そして再びマスターと共にいたの。マスターが神々に頼んで私を蘇らせてくれたと知った。当時、マスターは、マスターと私が別の世界から魂だけ取り出されたのだと仰ってた。
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この世界はこれまで7回作られたと言われてるよね。これまで有ったと言われているのが、混沌生物の世界、巨人の世界、竜の世界、精霊の世界、水棲人の世界、石人の世界の六つ。そして今は100万年前に作られた七つ目の世界。
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それぞれの世界はどこからか主神となる魂を導いてくる。そしてマスターとハンナは今の主神であるメトラル様と同じ世界から来たと聞かされた。
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そして、私たちは管理する神の居ない領域、つまり地上ではない場所で暮らしたの。そして様々な事をした。剣も魔法も鍛冶も学問も思い付くことは全て。マスターは元の世界の全ての知恵を参照することが出来たし、何度死んでもやり直すことが出来たし、無限に鍛えることが出来た。ハンナは。私はできるだけ連れ添い、フォローしたの。
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そしてある日、マスターは言ったわ。別の人間として転生するって。理由は教えてもらえなかったけど、きっと何か神々と取引したんだと思う。
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ハンナは来るなって言われたんだけど。嫌だったから、仲の良かった女神様に頼んでこっそり転生した。でも、急いでたし魂が普通じゃ無いからかな。サウルと同じ所には行けなかった」
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元々の世界で、僕は何か有って死んだ。ハンナも死んで、この世界にやってきた。主神メトラルと同じ世界から。そしてどこかの神の領域で過ごしてた? 何か有って転生して僕になった……。
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んーー。
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全然分からないよ……。
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「知ってる限りで良いけど教えてくれる?」
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「もちろん」
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「主神メトラルと同じ世界から来たって事は、僕たちって神なの?」
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