具体的内容
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背景・要因
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改善策
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記述情報
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具体情報
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分類
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段階
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疑義があると判断した理由
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不具合の内容
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専門分析班及び総合評価部会の議論
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当事者職種(職種経験年数)1人目
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専門分析班・総合評価部会の議論
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吸入酸素濃度
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挿入した職種
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事故の内容2
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訪問での専門分析班委員の主な意見
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人工呼吸器※
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区分
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詳細
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参照
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画像
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画像2
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事例の分類
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注釈
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種類
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研修医の情報
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発生要因
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S状結腸切除術を行った患者。翌日に飲水テストの指示があった。8時40分頃、当事者は先輩看護師から飲水テストの指示が出ていることと、シールが出ているということを聞いた。すぐに指示の書いてあるシールを先輩看護師から受け取った。指示には飲水テストの指示であったが、当事者は日付を確認せずに飲水テストを行ってしまった。実施後、先輩看護師と指示内容を確認中、飲水テストの日付が翌日になっていることに気付き、事象が発覚した。
指示を受け取った際に内容の確認をしなかった。夜勤明けで日勤への引継ぎが始まる前で急いでいた。業務が全て終わっておらず焦っていた。患者が「喉が渇いた」と言っていた為、早く水を飲ませたいと思っていた。結腸切除後すぐに飲水はしないという知識が無かった。「飲水テスト」の文字しか見ていなかった。先輩も確認していると思い込んでいた。
・指示の日付と名前と内容をしっかり確認する。・先輩と一緒に確認する。・引継ぎが始まるまでの時間の余裕を作るようにする。
実施した行為が誤っていた事例
看護師(0年)
看護師(6年)
気管支鏡検査を予定している患者であり、朝食の欠食が必要であった。新人看護師は、自己学習で検査3時間前から食べないと覚えていたため、朝食は食べて良いと思い、欠食にせず、患者にも「食べて良い」と説明した。実際は医師から朝食止めの指示が出ていた。夜勤の看護師が配膳時に欠食であることに気づき、配膳されず、予定通り検査が実施された。
医師からの指示を確認せずに患者に食べて良いと説明してしまった。看護室でのルール(午前の検査は朝食欠食、午後の検査は昼食欠食となること)を理解していなかった。
・患者に説明する前にリーダーや先輩に確認し、少しでも疑問に思ったことは相談する。・看護室のルールを理解する。
実施した行為が誤っていた事例(誤った行為を実施する前に誤りに気付いた事例)
看護師(0年)
nan
胃管チューブを抜去後に食事開始のところ、新人看護師は食事を延食にしなかった。そのため、食事が配膳されてしまい、胃管チューブ抜去前に食事を食べてしまった。
深夜でオーダを確認したときには、胃管チューブ抜去後に食事開始という指示の意味は理解していた。しかし、どのように配膳をしたら良いのか、どのように助手と連携をとっていくのかという看護師の行動レベルでの指示確認ができておらず、理解できていない指示としての認識がなく、先輩に相談しなかった。食事一覧シートを食事の種類の確認や手術・検査などで禁食になることを記入するものとして活用することは知っていたが、看護師の確認後に食事を配膳する時など延食の記入を行い、配膳のタイミングの記載や助手との連携の手段の一つとして活用することを知らなかった。
・食事が治療に影響を与える患者の食事チェックは、食事内容の確認だけでなく、禁食・延食・配膳可能か注意深く確認し、食事一覧シートへ確実に記載を行う。・担当患者の食事の配膳確認は食事一覧シートへの記載に加え、助手への声かけや配膳室に取り置きされているか、患者の元へ配膳されているかなど看護師自ら確認行動をとる。・初めてのケアや業務を行う際は、指導者やリーダーへその旨を報告し、他職種との連携方法や注意点について指導を求める。
実施すべき行為をしなかった事例
看護師(0年)
nan
直接母乳の前に胃内容物の確認と体重を測ることになっていたが、新人看護師は、胃内容物の確認を忘れてしまった。
体重測定をすることに焦ってしまった。
・新人で病棟勤務6日目であった。・当日、転院搬送・病欠により、スタッフの人数が少なく、プリセプターも患児を担当していた。・面会が重なったため、プリセプター・プリセプティで連携が十分に図れない状況だった。・プリセプター・プリセプティ間の連携を図り、確認を徹底していく。
実施すべき行為をしなかった事例
看護師(0年)
nan
各勤務1回排便がない時は、浣腸を行う指示があった。新人看護師は哺乳前に排便無かったため、肛門刺激を行なったが反応便がなかった。哺乳後に排便がみられなかったら、浣腸を施行しようと思っていたが、そのまま忘れて帰ってしまった。翌日の朝出勤し、深夜のスタッフに聞かれ、忘れていたことを思い出した。
17時の哺乳前、直ぐに施行しなかった。
・先輩看護師は、その都度新人看護師が実施しているか確認していく。・自ら先輩看護師へ実施後の報告をしていく。
実施すべき行為をしなかった事例
看護師(0年)
nan
患者は高体温でふらつきがあった。自分でポータブルトイレに移乗する際、ベッドからずり落ちた。
患者は転倒ハイリスクに加え、高体温でふらつきがあったが、新人看護師は「移乗時にはナースコールで知らせて下さい」と伝えるに留まった。介助バー設置、ポータブルトイレの位置調整などを考慮していなかった。
・転倒ハイリスクに更に高体温が加わり、更にリスクが高い状態であった。・新人を指導する看護師は、患者状況をアセスメントし、一緒に看護計画を評価修正する。・まだ入職2ヶ月目の時期である。新人一人に任せない。
実施すべき行為をしなかった事例
看護師(0年)
nan
リンパ腫の患者は、担当医より外泊退院可との指示があった。17:40日勤担当看護師は外泊・退院チェックリストをもとに退院の準備を行ったが、退院処方はまだ病棟に届いていなかった。日勤担当看護師は会議へ出席のため、退院療養計画書と退院時処方渡しを遅出看護師(3年目)に依頼した。18:30依頼を受けた遅出看護師は、退院時処方が病棟に届いたので父親と本人の元へ行き、退院時処方を薬袋に記載の通りに説明し渡した。母親は家の事情で先に帰宅していた。その後、患者は父親とともに外泊退院した。<退院時処方>1)バクタ配合錠3錠1回1.5錠(1日3錠)1日2回(朝・夕)食後15日分週3回内服2)ロイケリン酸100mg45mg1回45mg(1日45mg)1日1回眠前35日分3)メソトレキセート錠2.5mg1回25mg(1日25mg)1日1回(朝)食後5日分4)カイトリル錠1mg2錠1回2錠(1日2錠)1日1回(朝)食後5日分5日後の午前、担当医より、看護師長へ「患者の母親より口内炎ができて痛いと電話があった。確認すると、遅出看護師からメソトレキセートを毎日飲むよう言われて飲んだようだ。母親は週1回飲む薬だと知っているはず。今まではそのように飲んでいた。」と話があった。看護師長が退院当日の担当看護師と遅出看護師に確認すると、退院処方の薬袋に記載してある通り説明して渡しており、メソトレキセート錠の過剰投与がわかった。翌日、患者は、口内炎が悪化し、食事がとれないことから母親とともに外来を受診し、その後入院となった。
カルテの退院療養計画書の記載の中に「メソトレキセートは週1回内服してください」とあった。しかし、指示、処方にはコメントの記載はなかった。病棟担当薬剤師に持参薬確認時の状況を尋ねると、母親は週1回の内服は理解できていた。薬剤師の持参薬確認時のコメントにも記載はなかった。看護師は、退院処方が抗がん剤や麻薬の場合は、ダブルチェックで確認することになっているが、していなかった。退院処方を渡す看護師が、退院療養計画書の内容を確認し患者へ説明していなかった。退院療養計画書の内服についての記載内容と、処方せんに相違があったが、医師に確認しなかった。看護師は、患者のプロトコールを把握し何の治療をしているかを理解していなかった。今回は前回と同じ処方のため疑義照会はしなかったが、初回の処方の際に疑義照会しており、医師が「母親に説明している」と回答したため、そのまま処方が継続されていた。
・患者は薬袋を見て内服するため、医師は、処方をオーダする際に、内服方法に指示がある場合は必ずコメントを入れる。・看護師は、退院処方が抗がん剤や麻薬の場合は、ダブルチェックで確認することを徹底する。・「ダブルチェックの基準」を徹底する。・看護師は、外泊退院の場合は、外泊時に余裕を持って退院処方を患者に渡せるよう、退院処方はできる限り早めに出してもらうよう医師に依頼する。・医師は、外泊退院の場合は、薬剤の最終搬送が16:00であるため、15:30までには処方を入力する。・退院処方を渡す看護師は、退院療養計画書の内容を確認し患者へ説明する。退院療養計画書に内服についての記載がある場合は、退院処方と照らし合わせて内容を確認する。内容に相違がある場合は必ず医師に確認する。・業務を依頼された看護師は、自分が最終実施者であると同時に責任も依頼されたということを認識して行動する。・看護師は、患者のプロトコールを把握し何の治療をしているかを理解する。疾患の知識、プロトコールについての知識を深めるために勉強会を行う。・病棟では多種の抗がん剤を取り扱っているため、病棟でよく使う抗がん剤の取り扱いや基礎知識を深めるために担当薬剤師を交え勉強会を行う。
慢性リンパ球性白血病治療のため入院で化学療法後、外来での内服治療へと変更となった。メソトレキセート錠2.5mgを週1回内服の予定であったが、連日の処方をした。
外来ではダブルチェックができなかった。院外処方であり、チェック機能が働かなかった。
・抗がん剤の処方を行う時は処方時に上司が内容を確認する。・「プロトコール名」「、週1回」、「毎日」などの注意事項をコメント入力する。・病棟で、退院後の化学療法についてもパンフレットを作成して渡す。・薬剤部でメソトレキセート処方時にアラートがでるようにする。
処方せんに「リウマトレックスカプセル2mg1カプセル/分1朝食後、28日分、リウマトレックスカプセル2mg2カプセル/分2、12時間毎、28日分」と記載されていた。患者は関節リウマチであった。処方せんに記載されている通りに服用すると、休薬期間もなく、毎日服薬することになるため、過量投与となる可能性が推測された。そのため、処方医に疑義照会を行った。医師からは、処方せんの記載ミスということで、実際には「リウマトレックスカプセル2mg1カプセル/分1朝食後、4日分、リウマトレックスカプセル2mg2カプセル/分2、12時間毎、4日分」であり、服用方法は4週に渡って、「毎週金曜の朝と夕に1カプセルずつ、12時間経過後の土曜の朝に1カプセル」とのことだった。(事例番号000000003906)
医師の処方せん記載ミスだった。
・処方せん監査の徹底と、服用方法が複雑な医薬品への知識を充実させる。
患者が整形外科の処方せんを持って来局された。患者より「今回は年末・年始があるので、薬の日数が多くなっていると思う」との申し出あり。処方せんにはRp.リウマトレックスカプセル2mg1日用量2カプセル分1×35日分朝食後服用(週1回月曜日)との記載あり。他の医薬品と同じくリウマトレックスカプセル2mgの処方日数も35日分となっているが、週1回の服用であるならば、リウマトレックスカプセル2mgの処方日数は5日分であると判断し、処方医師に疑義照会を行った。処方内容がRp.リウマトレックスカプセル2mg1日用量2カプセル分1×5日分朝食後服用(週1回月曜日)に変更となる。(事例番号000000035058)
年末・年始で医療機関の休業に伴い処方日数の変更が行われたが、週1回服用のリウマトレックスカプセル2mgも他剤と同じ処方日数に誤って変更してしまったと考えられる。
・年末、年始など長期に処方日数が変更となる際に、リウマトレックス2mgなどの週1回服用の医薬品や抗癌剤など休薬期間が必要な医薬品の処方日数の確認も保険薬局で医療事故を防ぐためには重要な業務となることを薬局全体で共有する。
他院より転院した患者にリウマトレックスとフォリアミンが連日投与の処方が出た。疑義照会にて医師に週1~2回服用の薬であることを伝えると、週1回ずつの服用に処方が変更になった。(事例番号000000037859)
転院先はリウマチ専門医ではなく、紹介状もなかった。お薬手帳には週1回の服用の旨は書いておらず連日服用していたかのような記載だった。そのため処方医はリウマトレックスとフォリアミンを連日服用で処方したものと考えられる。
・MRにも協力してもらい、処方医に用法用量や危険性について伝えた。
執刀医は20万倍希釈のボスミンを使用する予定であったが、口頭指示で「ボスミン」とのみ伝えた。間接介助の看護師はボスミン外用液0.1%と判断し、術野にボスミン外用液0.1%を出した。直接介助の看護師はそれを注射器に吸い上げ、術者に手渡した。術者は薬液の確認をせずに局所注射を施行した。直後に患者血圧が急上昇し、麻酔科医が異変に気づいた。降圧処置をしながら、原因検索をしたところボスミンの誤投与が判明した。
執刀医は非常勤であり、通常勤務している病院ではボスミンと指示すれば20万倍希釈のボスミン注射液が出る約束になっていた。当院では止血目的にはエピネフリン入りのキシロカインが使用されており、当該科の手術時に「ボスミン」を使用する場合はボスミン外用液0.1%をガーゼ、綿球に浸して局所の止血に用いている。間接介助の看護師は当該科担当であり、「ボスミン」の指示にボスミン外用液0.1%で反応してしまった。直接介助の看護師は経験が浅くボスミン外用液0.1%を注射器に移すことに違和感を覚えなかった。
・手術中に使用する薬剤の登録をすすめ、口頭指示のみで処方することがないようにした。・薬剤を術野に出す時のルールを決定した。
nan
障害なし
医師→看護師
中心静脈カテーテル挿入時は臨床工学技士が介助につくことが多いが、その時は部屋に入っておらず、看護師Aが一人で介助を行った。麻酔科医Aはキットが開いた後「へパ水ちょうだい」と看護師Aに口頭指示し「ここに入れて」とだけ声をかけた。通常は中心静脈カテーテル挿入時のへパリン生食水は圧モニタ回路用(ビカーボン液500mL+へパリン2000単位にて作成)をトランスデューサーから注射器でひいて使用するため、当然この時もそうするだろうと麻酔科医は思っており、看護師の行動は見ていなかった。看護師は中心静脈カテーテル挿入の介助につくのは今回が初めてであった。へパ水と言われ何に使うのか疑問に思ったが、へパリン原液を使用すると思い薬品庫に行きへパリン1万単位を取って来た。量の指示がなかったので、少しでいいだろうと思い2~3mL注射器に吸い取り、カップに入れた。この際薬品名の確認や使用量の確認は行わなかった。カップの中に入れた薬剤が少しだったため、麻酔科医は「もう少し入れて」と依頼し、看護師は残りのへパリンを全部カップの中に入れた。麻酔科医は、カップにはへパリン生食が入っていると思い、カテーテルコーティングのために挿入前に1mL程度へパリンを使用した。その他のフラッシュ等にはヘパリンは使用していない。
麻酔科医は指示を的確に伝えず、実施前の確認が行われていない。研修医の指導に重点が置かれていた。新人看護師は医師や指導看護師に確認を行わず理解できないまま実施した。指導看護師は新人看護師に処置の理解の有無を確認しておらず、ひとりで介助につかせた。それぞれが確認をせず、分らなければ聞いてくるだろうという思い込みで処置を行っていた。口頭指示の指示出し、指示受けのマニュアルが徹底されていなかった。中心静脈カテーテル挿入時の準備に対する役割分担が不明確であり、そのためマニュアルに反映されていない。新人看護師に対する技術習得の把握が不十分である。
・指示受け時は、復唱し確認する。・口頭指示で薬を扱う際は、基準に従い口頭指示メモを使用する。・薬の指示を行う場合は、薬品名は略さない。・中心静脈カテーテル挿入時の役割分担を明確にし、準備や介助内容を担当者のマニュアルに反映させる。
nan
障害残存の可能性なし
医師→看護師
20倍希釈のノルアドリナリンを1mL静脈注射を指示したが、研修医Aは原液のノルアドリナリンを1mL静脈注射したため、血圧が240mmHgまで上昇した。
血圧が下がり始めた段階で医師Bは20倍希釈のノルアドリナリンを用意させた。このとき、科内では慣習的に使用している「20倍用意して」という略語を使用した。研修医は室内に準備してあったノルアドリナリンのアンプルを切って、原液のまま1mL注射器に準備した。この準備状況は誰も確認していなかった。次にいよいよ血圧が下がった時にB医師は先ほど用意してあるはずの20倍希釈のノルアドリナリンを1mL静脈注射するように指示した。このときも科内では慣習的に使用している「ノル1ccいって。」という略語を使用した。
・緊急治療中であっても慣習的に使用している略語は使用しない。・心臓血管カテーテル、PCI中使用のノルアドリナリンは原則20倍希釈とすることを部署内で周知した。・ノルアドリナリンのアンプルのそばに希釈を表示した札を置いた。・検査中指示を出す際に「20倍希釈のノルアドリナリンを1mLIV」と、省略せずに指示することとし、必ず復唱・復命する。・臨床科長会議、師長会、リスクマネージャー会議で報告し、スタッフへ周知。・コミュニケーションエラーキャンペーンを実施する。
nan
障害残存の可能性がある(低い)
指導医→研修医
小児外科専修医はオピスタン1mLの静注を口頭で指示した。小児外科指導医は0.5mLへ指示を改めた。小児科専修医はオピスタン35mg(1mL)を1mLシリンジに吸い、そのうち常用量の6.9倍の17.5mg(0.5mL)を静注した(小児に対するオピスタンの常用量1mg/kg/dose((新小児薬用量改定第4版、診断と治療社、2006年))。患児は体重2.52kgに対しての常用量は2.52mgとなるが実際に投与された量が17.5mgなので、6.9倍)。その後胸腔穿刺のため、皮膚消毒をしている際にチアノーゼを認めたため、胸腔穿刺を中止した。SpOは40%台、心拍数は270台に低下し、バッグマスク換気施行、回復に2~3分要した。換気中に四肢強直を認め、フェノバルビタール20mg/kg/dose静注。オピスタン投与量を再確認したところ、過量投与に気づき、ナロキソン0.04mg/kg/doseを静注した。投与後速やかに四肢強直は消失した。その後、SpO2の低下、強直なく経過した。
オピスタン0.5mLの希釈内容はオピスタン35mg/1mL/1Aを9mLの生理食塩水に希釈し(3.5mg/mL)使用ということであった。小児外科医師は前回、オピスタン注射薬が2mL投与されたと記憶していた。前回の薬剤が10倍希釈されている薬剤だとは認識していなかった。小児外科指導医師はオピスタンはすでに希釈され、用意されたものと認識していた。当該事例では、一般注射点滴オーダへの入力をせずに、口頭指示で投与し、投与後にカルテにオピスタンの投与量を記載した。薬剤のオーダ入力がなく、ワークシートと薬剤を確認しなかった。口頭指示の原則である指示内容を正確に伝えることをしなかった。小児科専修医は用量の確認をせず、また投与量の適量の判断が出来なかった。
・注射・点滴を行う際には、緊急時を除き、必ずワークシートにより指示する。
nan
障害なし
指導医→研修医
大腸内視鏡中に受診者が疼痛を訴えたため、介助の看護師Aに医師がドルミカム「2ミリ」を投与するよう口頭で指示をした。介助看護師Aを指導するため一緒に介助していた看護師Bは、生食8mLとドルミカム1A(10mg/2mL)を10mLのシリンジに吸い、介助の看護師に渡した。看護師は生食8mLとドルミカム1A(10mg/2mL)の入った10mLシリンジと、ドルミカムの空アンプルを見せ、「ドルミカム2mLと生食8mLです」と言い医師へ確認を依頼した。医師は、再度看護師に「ドルミカム2ミリだね」と声をかけ、介助看護師が「はい」と返答した。投与前に再度指導の看護師Bが看護師Aへ「(10mL中)2mLを投与」と声をかけた。看護師Aは、「ドルミカム2mL=1A」を投与すると思い込んでいたため、シリンジに吸ったドルミカム1A(10mg/2mL)+生食8mLを全量静脈注射した。その場にいた指導の看護師Bが10mL(ドルミカム10mg)すべて静脈内投与されたことに気づいた。医師は、患者の状態とバイタルサインを確認した後、アネキセート0.25mg×2回を静脈注射した。覚醒は良好であったが、経過観察目的で1日入院となった。
看護師は経験が浅く、上級看護師の指導の下に処置についていた。検査室内におけるドルミカム投与時の口頭指示の時のルールの徹底が不十分であったこと、看護師のドルミカムの薬効についての知識が不十分であったことが要因である。
・処置に使用するドルミカムの投与方法を院内共通とし、マニュアルに追加した。・これらの内容を全職員に周知した。
nan
障害なし
医師→看護師
術後鎮痛薬としてケタラールの持続静注(時間あたり3mg、0.3mL)を予定していた。研修医Aに対して責任医師Bが「時間当たり3ミリ投与するように」指示した。研修医Aは時間当たり3mLと解釈し、投与を開始した。術後時間が経過しても呼名反応がないため、ケタラールの影響を疑い、投与を中止した。投与量の確認を行ったところ、予定の10倍量が約1時間投与されていた。ケタラールの持続投与中止後約5分で呼び掛けに応答し、ほぼ覚醒した。循環動態や呼吸状態に異常はなく、特に治療を必要としなかった。
医師Bは薬剤の単位を省略して、口頭指示した。医師Aは内容を復唱して、指示した医師と確認しなかった。
・やむを得ず口頭指示を行う場合は、薬剤名や単位、量、希釈の条件などを省略せず、明確に伝える。・医師の口頭指示を受けた者は指示内容を復唱し、その内容を指示した医師と確認する。
nan
障害残存の可能性なし
指導医→研修医
低出生体重であった新生児の尿量が低下したため、研修医が指導医師へ報告し対応助言を得た際に、指導医師は「ラシックスを1ミリうってみよう」とコメントした。研修医は、上級医師の指示を充分に確認せず、新生児に対してラシックス1mL(10mg)を静脈内投与した。上級医師の認識は、1mgの投与であった。
研修医の思い込みならびに小児領域における知識不足があった。指導医師の指示、伝達が不十分であった。
・指導医師から研修医への助言、指示は具体的に実施する。・指導内容をカルテに遅滞なく記載するなど、書面で指示が確認することを原則とする。・口頭での指示、特に薬剤投与に係る事項は、薬剤名と単位は略することなく伝達し、復唱することを徹底する。・小児領域研修における薬剤投与に当たっては、特殊性を充分にオリエンテーションする。
nan
障害残存の可能性がある(低い)
指導医→研修医
患者の来院時の血糖値は557mg/dLであった。医師は点滴指示を「生食500mL+ヒューマリンR10単位」と出す予定であったが、入力する際に誤って「ヒューマリンR10V」と入力した。薬剤部から疑義照会があり、処方は「ヒューマリンR1000U、10mL使用量10単位」と修正入力をした。処置室で医師が「生食500mL、ヒューマリンR1V(を薬剤部に取りに行って下さい。)」と伝えた。看護師Aはこれを使用量と思った。看護師Aは他の患者の処置で手が離せなかったため、看護師Bに「高血糖の患者がいるので血管確保をしてほしい。」と依頼した。処置を依頼された看護師Bは、医師の指示内容を出力した点滴ラベルで確認した。このラベルには「生食500mLヒューマリンR1000U1V」と標記されていた。使用量が多すぎると思い、看護師AにヒューマリンRの混注量と滴下速度の再確認を依頼し、処置室に予備として置いてある生食500mLを使用して血管確保を実施し、その後薬剤部にヒューマリンRを受け取りに行った。看護師Aは医師に電話で指示の再確認をしたが、この際ヒューマリンRの混注量を単位で確認せず、「1Vですか。」と尋ねた。医師は看護師Aの電話内容を薬剤部で受け取る量だと思い、「1Vです。」と返答した。看護師AはヒューマリンRの混注量を1Vと思いこみ、看護師Bにベッドサイドで「ヒューマリンR1Vを混注して1時間で投与して下さい。」と伝えた。注射実施のルールは、指示画面を2人で指さし、声だしで確認しなければならないが、看護師Bは、注射ラベルの標記内容を指示内容と理解し看護師Aからの伝達内容とも一致していたため、ヒューマリンRIVを生食500mLに混注、速度調整を実施したうえで看護師Aに実施内容を伝達した。12:05指示で血糖測定したところ、212mg/dLであった。12:30検査に行くために点滴をソルデム3A500mL+ヒューマリンR5単位に変更の指示があった。この際医師が看護師Aに処置室に残っているヒューマリンRを使用するように伝えたが、看護師Aは「使用したバイアルは廃棄することになっています。」と返答し、医師は再度1V処方した。点滴を交換する時点での残量は約100mLほどであった。12:40患者が検査に行くために起立し、歩行を開始したところ気分不良を訴えた。血糖値20mg/dL、血圧94/50mmHg、脈拍120回/分、SpO293%であり、50%ブドウ糖20mL2Aを使用、点滴をソルデム3A500mLに変更した。その後血糖値121mg/dL、15:35状態が落ち着いた。患者が再度気分不良を訴え血糖値を測定したところ20mg/dL未満、50%ブドウ糖20mL2Aを使用した。その後血糖値は安定してきた。看護師Aが記録を整理する際に「生食500+ヒューマリンR10単位(1h)」という医師の記録を見て、インスリンの過剰投与に気付いた。
今回のインスリン過剰投与の背後要因の一つはコミュニケーションエラーである。医師は最初に処方量を間違えたこともあり看護師に処方量を伝達したが、看護師は投与量と解釈した。その後看護師A、Bともに投与量が多いと疑問に思っていたにも関わらず、電話で再確認をした看護師Aは投与量を単位で確認しなかった。医師は処方量を再確認されたととらえ、「1V」と回答しているが、この時看護師Aは投与量を1Vで間違いないと納得してしまっている。今回の事故は基本的知識を持った看護師であれば、起こり得ないと考えられる。看護師Aは医師との確認の過程で思いこみを起こし、看護師Bは自身の知識不足から外来で特殊な治療としてこのようなことがあるのかと思いながらも明らかにおかしいと思い、勤務後に電話をいれたが、看護師Aの「間違いない。」と断定された言い方に引き下がってしまい、事故に気づけたであろう場面があったにも関わらず、有効に機能しなかった。看護師Bは通常は眼科外来に勤務しており、この日は内科外来に応援に来ていた。処置室で業務を実施するのも初めてだった。看護師Bは短時間勤務者で糖尿病患者の看護の経験はほとんどなかった。背後要因の2つ目は、注射指示画面の確認をルールに従い2人で行うことを怠ったことである。画面には使用量がきちんと表示してあったが、看護師Bは注射ラベルと看護師Aからの伝達内容が一致したため、画面を見ずに投与してしまった。基本ルールを遵守していれば事故は防ぐ事ができたのではないかと考える。
・注射準備から実施までの基本ルールがなぜ遵守できなかったかを振り返り、処置室に掲示してある手順のフローシートを活用しながら、ルールに則って確実に実施するように再度周知した。・インスリン専用の注射器の収納場所を工夫し、目に留まりやすいように表示して併せて周知した。・処置室業務を落ち着いて遂行できるよう人員配置を再検討し、常時2名体制とした。・医師・看護師間のコミュニケーションについて、外来では電話での確認場面が多いため、双方が指示画面で確認すべき項目を復唱しながら相互確認をすることを周知した。・インスリン療法の基礎知識について、糖尿病認定看護師による教育を実施した。
nan
障害残存の可能性がある(低い)
医師→看護師
慢性腎不全で人工透析中の患者に対し、術中高カリウム血症に対応するために、50%ブドウ糖注50mLにヒューマリンRU100を50単位混注してGI療法を行っていた。術後、ICUに移動した後、婦人科上級医師が手術中の組成でGI療法を継続するよう若手医師に指示する際に、ブドウ糖50%20mLに「ヒューマリンRU100」を50単位と伝えるべきところ、ブドウ糖50%20mLにヒューマリンR100単位を混注するよう口頭で指示した。若手医師は、ブドウ糖注50%20mLと入力し、ヒューマリンRU100を100単位と入力しようとして、1000単位を手入力したため、インスリンが1時間で330単位注入された。指示受けしたICU看護師はインスリン量が多いと思い、入力した医師に電話で確認したが、指示された数値を伝えないで、「指示通りで良いか」という疑義であったため、医師は間違って入力したと気がつかず、そのまま実施するよう指示した。1時間後血糖20mg/dLまで低下した。直ぐに低血糖に対し50%ブドウ糖がボーラス注射で投与されたが血糖値が正常に復さないため、インスリンを除去する目的で血液透析が施行されて、低血糖から回復した。患者に低血糖による障害は発生しなかった。
麻酔科医の指示を継続する意図で指示を伝えようとしたところ、上級医はシリンジのラベル記載「ヒューマリンRU100」をヒューマリンR100単位の意味と解し、若手医師に100単位混注するよう伝えた。上級医は麻酔科医の指示をそのまま伝えるつもりで、GI療法の標準的な使用法(ブドウ糖3-4gにインスリン1単位)に思い至らず、ブドウ糖10gに対しヒューマリンRを100単位混注するというインスリン過量の指示を出した。若手医師はICUの情報システムの入力方法に習熟しておらず、100単位を入力するつもりで1000単位と入力した。実施した看護師もインスリン量が多いと思って医師に電話で確認したが、このときも指示されたインスリン量を示さなかったため、医師は間違いに気づかず、そのまま実施するよう指示した。1時間後に重度の低血糖となり、インスリン過量投与に気がついた。婦人科の上級医、若手医師ともにGI療法の標準的インスリン量の知識が不足していた可能性がある。また、担当看護師の疑義照会の方法も指示されたインスリン量の数値を若手医師に具体的に伝えなかったこと、およびICUにおけるGI療法の通常量を示さなかった。
・ICUガイアのシステムが不慣れな医師には最初は出来る限る慣れた医師がペアとなり指示入力する。・ヒューマリンRU100の1000単位指示は異常であり、看護師から指示の確認をされた際にはその指示を十分見直してから返答するよう周知する。・今回の事例を病院内で共有して注意喚起する。・医局内でも事例を共有し再発防止のため周知徹底した。・GI療法の標準的ブドウ糖量とインスリン量の比(ブドウ糖3-4gに対してヒューマリンR1単位)を周知し、ICUにGI療法の標準的組成を掲示する。・薬剤について看護師が医師に疑義照会する際は、指示された薬剤名、薬剤量を具体的に伝え、自分の判断を医師に話すようにする。
nan
障害残存の可能性なし
看護師→医師
内視鏡室にて、医師は受診者Aに対して上部内視鏡検査を開始した。受診者Aは嘔吐反射が強く、内視鏡を喉まで進めたところで検査終了となった。看護師は受診者Aを迎えるために内視鏡室に入った。そして洗浄していない内視鏡を次の受診者である受診者Bに使用した。業務終了後、内視鏡の洗浄履歴管理を行った際、検査数と洗浄履歴が一致しなかったことから、受診者Bに洗浄していない内視鏡を使用したことが発覚した。内視鏡室に入った看護師は内視鏡を回収しようとしたが、医師は「検査していない」と言いながら内視鏡を内視鏡の検査台にかけた。看護師は検査に立ち会っていないため、内視鏡は使用していないと理解し内視鏡を洗浄に出さずに受診者Aと一緒に内視鏡室から出た。この時、内視鏡洗浄担当の看護助手は医師と看護師の会話から内視鏡は使用していないと判断した。また、内視鏡室にて検査に立ち会った別の看護師は受診者Aの記録等を行っていたため内視鏡を交換したかわからなかった。
看護師は、「検査していない」との言葉を「内視鏡は使用していない」と思い込んだ。医師は、使用した内視鏡を内視鏡の検査台にかけた(使用した内視鏡を未使用内視鏡と同じ状態にした)。内視鏡洗浄担当の看護助手は、医師と看護師の会話のみで内視鏡を使用していないと判断した。検査に立ち会った別の看護師は、内視鏡の交換を看護師Aと看護助手が対応してくれると思っていた。
・内視鏡室から患者が退出したら、使用の有無に関わらず洗浄済みの内視鏡に交換するルールを検討中。・内視鏡室担当の看護師が洗浄済みの内視鏡に交換したことを確認する手順を入れる。
検査
障害なし
医師→看護師
患者は入院時、排泄、清潔等の日常生活は自立しており見当識障害はなかった。看護師が患者に義歯の有無を確認すると、患者は『無い』と答えたため、担当看護師は電子カルテのアセスメントシートに『無』と記載した。歯磨きは患者自身で行っていた。約3週間後、敗血症ショックによる意識レベル低下あり。口腔ケアは看護師管理となった。3日後にショック状態離脱するがせん妄症状出現していた。その後、予定の胸部CT撮影後、放射線技師がCT画像で義歯が咽頭にあることを発見し主治医に報告。緊急気管支鏡を施行し義歯を摘出した。
義歯の有無について、寝たきりやケア全般に介助が必要な患者の場合は看護師が口腔内を確認していたが、口腔ケアが自立している患者の場合は確認していなかった。入院35日後より、39度台の発熱と意識レベルの低下あり。口腔ケアは看護師管理に変更したが、義歯があることに看護師は気づかなかった。看護師の義歯の種類に関しての知識不足があった。誤飲したのは部分義歯であったが、義歯の有無の情報収集方法として、「入れ歯はありますか」と聴取していた。入院患者の入院時の義歯の確認、記録、管理方法が統一されていなかった。
・入院・転入時、患者全員に義歯の有無を本人もしくは、家族(高齢の場合は子供などにも)に確認する。・義歯の有無を聞く際に「外せる歯はありますか」「自分の歯ではない歯はありますか」など義歯に対する認識の差が生じない様に聴取する。・義歯の有無と、義歯が有る場合は内容部分に総入れ歯・部分入れ歯など詳細を明記する。
療養上の世話
障害残存の可能性なし
看護師→患者
家族性大腸ポリポーシスに対して大腸全摘術、回腸肛門管吻合、人工肛門造設術を施行した。術中は砕石位であった。腸管組織が周囲組織との強固な癒着を認めた為に腸管剥離が極めて困難であり、長時間の手術(17時間)を要した。翌朝、手術が終了となり、手術室よりICUへ入室した。当日昼にICUにて抜管を行った。抜管時に四肢の異常は確認されなかった。しかし、同日夜8時頃より下肢の痛みを訴えるようになり、当直医へ報告されるが下肢の痛みのみであるとの理由で経過観察とされた。翌朝にも痛みが継続し、症状改善していないことより上級医へ報告され、整形外科医へコンサルトとなった。整形外科医の診察後、下肢コンパートメント症候群と診断され、緊急手術(両下肢減張切開)を施行した。
長時間の手術が行われた。その間、頭低位の砕石位が長時間取られた。このことにより両下肢の循環悪化が生じ、下肢コンパートメント症候群が生じた。患者が下肢の違和感・痛みを訴え、夜間当直医に報告されたが、上級医への報告は、翌朝であった。
・砕石位による下肢コンパートメント症候群を周知徹底する。・手術の際、砕石位の体位時間を最短とする(術中の体位変換)。・診療科のみではなく、麻酔科・看護部を含む手術部としてのハイリスクを周知徹底する。・手術時間が長時間に及んだ場合のチェック機構の確立が必要である。
コンパートメント症候群
障害残存の可能性がある(高い)
レビテーターを使用した婦人科砕石位、頭位水平で11時間23分の手術中、下肢拳上を解除しなかった。手術翌日「左下肢の痛みとしびれ」を訴えた。硬膜外麻酔か手術の影響と考え様子観察していた。手術3日後、PCAポンプの使用を制限したことから、下肢の疼痛増強し、左足関節の背屈ができないことを発見した。整形外科に紹介し、下肢コンパートメント症候群と診断された。弾性ストッキングの除去と湿布剤で様子観察となった。
当院では3年前、10時間を越える手術において下肢コンパートメント症候群発症後、レビテーター使用時の砕石位の看護手順が作成された。しかし、「頭低位保持より約4時間を目安に、医師は手を止めて、下肢の拳上を一時的に解除する」と記載されていた。今回は水平であったことより下肢拳上解除されなかった。本来は、ひらめ筋が心臓より高くなった場合に、下肢拳上解除が必要であった。
・マニュアル(レビテーター使用時の砕石位の看護手順)を改訂する。・体位作成時より約4時間を目安に、医師は手を止めて、下肢の拳上を一時的に解除する。・外回り看護師は時間を観察し、4時間経過する前に術者に声をかける。
nan
障害残存の可能性がある(低い)
病棟看護師は、患者に弾性ストッキングを履いてもらった後、手術室へ患者を搬送した。全身麻酔下で卵巣癌根治術を施行した(手術時間7時間10分)。手術中、フットポンプ装着し、砕石位、骨盤高位をとる。出血量は940gであった。抜管後、患者をベッドへ移す際に、両下腿の痛みを訴えた。麻酔科医師診察し、下肢の腫脹、皮膚色の変化はなく、冷罨法を行った。手術室看護師から、「覚醒後、足を痛がっている。経過観察をお願いします。」と病棟看護師に伝えた。その後、主治医と担当した看護師が薄い血尿に気付いた。夜間も両下肢の疼痛が継続し、下肢の腫脹傾向があった。婦人科当番医師へ電話で状況を報告したところ、朝まで経過観察の指示があった。2時間後、尿の色調がコーラ色に変化し、尿量減少のため再度婦人科当番医師に報告し、輸液負荷の指示があった。朝、前日診ていた麻酔科医師が診察し、ミオグロビン尿と判断し、婦人科医師へ整形外科受診をすすめた。整形外科医師はまずDVT否定のための血管超音波を実施した。その後、下腿の内圧測定したところ、コンパートメント症候群の診断がつき家族に連絡した。全身麻酔下で左下腿の減張切開術を施行した。
術後主治医に麻酔科医師からコンパートメント症候群の可能性も伝えられ記録に記載があったが見ておらず、また、今までそのような患者を診た経験がなかったため、ミオグロビン尿を婦人科手術後に見られる一過性の血尿と判断した。夜間報告を受けた婦人科当番医も、血尿と尿量の減少、下肢の痛みや腫脹について電話で報告を受けただけであり、コンパートメント症候群としての認識もなかったため、朝まで点滴負荷と経過観察を指示した。翌日整形外科医師の診察があったが、同様に手術後の患者でのコンパートメント症候群の患者経験がなく、深部下肢静脈血栓症との鑑別を優先した。その後、診断はついたが減張切開術の適応は12時間以内であり、すでに20時間を経過していた。当院では、今回当日関わった麻酔科医師以外の医師、看護師においてもコンパートメント症候群発症の患者の経験がなかった。そのため、どの程度緊急を要する事態か判断ができなかった。膝裏、ふくらはぎ部の阻血が要因とも考えられる。弾性ストッキングのサイズや装着状況、足台の角度、フットポンプの収縮圧等また患者自身が持っているリスク、体格(自分の足の重み)、腹部広範囲にわたる手術の侵襲、出血が多いことによる循環血液量の低下、砕石位骨盤高位という体位を長時間とったことなど、の要因が複雑に絡んだ事象であった。
・ひざ裏の阻血が考えられることから弾性ストッキングが患者にとって適切なサイズか、足首ふくらはぎでの測定と適正なサイズの選定や履かせ方の確認ポイント等を再度職員に周知する。・コンパートメント症候群の認識が当院の職員において低かったので、起こりうる可能性のある病態として、事例の共有を諸会議、部署にて周知する。・万一の発症後は、緊急を要する病態であることを周知する。・手術体位を検討する。長時間に及ぶ場合、左右の術野を変える時に一度手術台をフラットにし下肢へ血液を一度循環させる。・特に出血量が多くなる、時間が長くなる、砕石位をとる手術になる場合は、患者や家族に術前のオリエンテーション時にコンパートメント症候群について加えて説明する。・術前看護師は、術前訪問時に患者のふくらはぎ部分を触診しておく。
nan
不明
直腸癌に対する砕石位、頭低位で腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行した。術直後は特に大きな問題は認めなかった。術後1日目の8時頃、看護師が左下腿の腫脹を認めた。徐々に痛みも出現した。CT撮影施行、左腓腹筋の造影効果の低下、採血でCK値が高値であったため、整形外科にコンサルトした。左下腿コンパートメント圧測定(前方50、60、65mmHg、側方52、39、38mmHg、深後方47、50、48mmHg、浅後方50、63、50mmHg)し、コンパートメント症候群と診断され緊急減張切開術となった。
砕石位、頭低位右ローテーションでの長時間手術(8時間)であった。手術中の2時間毎の体位変換を行わなかった。筋肉量の多い、男性の患者であった。前回にも同様の症例があり、2時間毎の体位変換を行う改善策が立案されていたが実施されていなかった。
・砕石位症例は体位をとるときに圧迫が踵中心にかかるような体位をとる。・2時間ごとに体位の変換、マッサージ、圧迫の程度を確認する。タイマーを用いて忘れないようにする。・ハイリスク症例を決めるのは難しいので、全例上記のことを行う。
nan
不明
直腸癌に対して腹腔鏡下で低位前方切除術を施行した。体位は砕石位で頭低位、やや右下にローテーションをした状態で行った。直腸~S状結腸周囲の癒着が激しく、腫瘍の位置が肛門側に存在したことにより、側方郭清の必要があり、手術開始から6時間後に開腹術による低位前方切除術と側方郭清を行った。手術時間は10時間5分、麻酔時間11時間45分であった。病棟帰室時に左下腿(腓腹筋部位)が腫脹しているのを発見し、整形外科にコンサルトを行った。コンパートメント症候群の可能性があるが、運動、感覚障害がないため安静と冷却で経過観察となった。術後1日目、左下腿の痛みと腫張の軽減はなかった。運動障害、感覚障害はなし。整形外科で筋内圧を測定したところ50~60mmHg、血液検査にてCK値が9762と上昇しており、緊急手術の適応となった。その後手術室へ搬入し、減張切開術を施行した。
鏡視下手術では手術時間が長い傾向にあり、長時間砕石位を必要とする点からコンパートメント症候群を生じるリスクは高いと考えられる。今回、砕石位の手術による下腿圧迫が長時間になり、コンパートメント症候群を発症し減張切開術が行われた。なお、幸いに機能障害は残存しなかった。手術部において関連部署で下肢の固定具(レビテーター)を用いた砕石位で実験をした結果、下記の点が明らかになった。血栓防止のため弾性ストッキングとAVインパルスをつけて下肢の固定具のフットピースで固定されていたが、AVインパルスは足底部を圧迫するので、踵の部分が浮いた状態になり固定され、固定位置が数cmずれ、腓腹筋部位の圧迫が強くなることがわかった。血栓予防のための器具をAVインパルス(足底を包むタイプ)からSCD(下腿全体を包むタイプ)に変更したところ腓腹神経や腓腹筋部位の局所的な圧迫を避ける効果が得られた。
・砕石位での手術のコンパートメント症候群発症予防対策をとる。1)間欠性空気圧迫装置は、AVインパルスタイプからSCD(下腿全体を包む)タイプに変更する。2)体位は水平開脚位に近い状態にする。3)2時間毎にタイムアウトし、砕石位の体位を解除する(観察したり、マッサージを行う)。・当該科だけではなく、砕石位で行う診療科(泌尿器科や婦人科)においても上記対策を実施することを奨励する。・実施した予防対策は評価のために記録を残す。・砕石位での下腿圧迫により生じるコンパートメント症候群は極稀(3500例に1例、当院では開院以来3例目)ではあるが、重篤な機能障害を残す可能性があるのでICの説明文書の偶発症の項目に追加する。
nan
障害残存の可能性なし
性同一性障害のため性別適合手術、S状結腸造腟術を施行した。術中手術体位が砕石位であった。砕石位チェック表に従い医師、看護師にて2時間毎に下肢の観察を行っていた。砕石位から仰臥位へ戻した際、左下腿に腫脹・発赤・硬結を認め、筋膜内圧測定実施したところ左下腿に減圧が必要なコンパートメント症候群を発症していることが発覚し、直ちに左下腿減圧術を実施した。
砕石位チェック表を用いて医師・看護師にて下肢の観察は規定通り2時間毎に実施されていた。砕石位での手術時間の長期化を予測し、下肢の観察がしやすいように透明包布により下肢部の保護を行い、観察しやすい環境はとれていた。砕石位の合併症としてコンパートメント症候群が発症するリスクを術前に説明できている(同意書内記載あり)。
・マニュアルに準じた対応ができており、今後も手順を逸脱することなく早期発見、早期対応に臨めるように対応することを手術部内カンファレンスにて共有した。
nan
障害残存の可能性なし
患者は直腸癌術前検査にて前立腺癌が見つかり、両疾患に対し一期的根治術を希望した。術前検査で全身状態に特に問題はなかった。硬膜外麻酔と経口挿管による全身麻酔下に、血栓症予防のため両下肢に間欠的空気圧迫装置を装着し、レビテーターを用いた砕石位で手術を施行した。直腸切除後、前立腺全摘術を施行した。側方郭清後、直腸吻合、尿道膀胱吻合後、回腸人工肛門造設術施行し手術を終了した。術後、体位解除時右ふくらはぎの硬結と腫脹に気付いた。後日、圧外傷による筋挫滅と診断した。同部に体位支持装置が当たっていたか確認したが明確な圧迫痕等はなかった。全身状態は問題なく、血栓症等の有無に関し血管外科に診察依頼したが特に問題はなかった。全身状態への影響なく経過観察とし、後日整形外科に診療依頼した。手術部にて文献検索および医療機器製造元に確認したが、有用な情報はなかった。近隣の病院をはじめとする医療機関に同様な事例の経験について問い合わせを行った。また、同一体位支持装置を用いシミュレーションにて体圧分散状況について確認した。
レビテーターにて局所的な圧外傷を生じうるという認識が不足していた。
・レビテーターを装着後、術中体位に変換し局所的圧迫を生じないよう設定する。・レビテーター使用中、局所的な圧迫を生じていないか30~60分おきに看護師がモニターする。・圧迫が生じないように工夫されているより新しい機器を購入する。・機器に関する情報を収集しより安全な機器を用いる様にしたい。
圧挫症候群
障害残存の可能性がある(高い)
造腟術(大腿筋皮弁による手術で、婦人科と形成外科による手術:手術時間7時間40分)を行った際に、下肢の固定器具とフットポンプによる圧迫によって起こったと思われる両側腓骨神経麻痺が発症した。麻酔覚醒後から下肢の痛みを訴え経過観察していたが、しびれ感と知覚異常が続くため、麻酔科、神経内科、整形外科に紹介し、腓骨神経麻痺と診断された。その後、リリカカプセル内服を開始した。
長時間術中使用のフットポンプと下肢を固定する器具「レビテーター」による両下肢の腓骨神経部位の圧迫が考えられる。患者の体型(身長:約180cm)への注意・工夫を行うべきであった。手術開始時には両下肢の下腿、膝部、踵骨部は体圧や皮膚症状、血行障害などの観察が行われ記録されているが、手術中はシーツなどで隠れて見えず、また観察の為動かしたりすることは手術部位に影響を及ぼす恐れがあるとしてできていない。
・手術室看護師、形成外科医、婦人科医による合同カンファレンスを行い、対策として以下の点に気をつけることとした。1)術前の体位作成時に医師と看護師は、腓骨神経を圧迫していない事や下肢が外旋していないことを確認する。2)フットポンプ装着時は、硬いチューブなどの部分が皮膚に接して圧迫の原因にならないよう、巻きつけかたに気をつける。3)手術中は外回り看護師が足袋の下から手を入れて腓骨が圧迫されていないかの確認を行うと同時に、術野の助手の医師や器械出し看護師も、ともに協力して腓骨を圧迫していないかの確認を行う。4)観察やケアをした結果は記録に残す。
腓骨神経麻痺
障害残存の可能性なし
15時間半に及ぶ開腹手術を行っていた。膀胱癌のために、砕石位で膀胱全摘、代用膀胱造設術を施行した。砕石位にはレビテーターを使用した。手術開始前に下肢を正しくポジショニングしたが、固定に関してはマット型固定パッドがないタイプであったため、当院手術部で緑色のオイフで作製した固定パッドで固定し、消毒して手術を開始した。手術終了後、手術ドレープを取り外し体位を元に戻す際、左下腿外側部と右下腿外側部に発赤・硬結を認めていたことと、左足は完全に架台からずれて乗っていることに気付いて医師に報告した。麻酔覚醒後、患者に痛み・痺れの有無を確認した。両側に発赤・痛みあり、左下腿外側部に痺れの訴えがあった。
長時間同一体位による手術だった。体位ローテーションをかけた後の、下肢の観察が十分に行えていなかった。日勤帯で踵部がレビテーターよりずれ落ちていないことを確認したが、下腿全体の観察は、行えていなかった。その後、術中、出血していたため、輸血の対応に追われ足の固定部の観察が十分に行えなかった。日勤から夜勤者の看護師に引き継ぎ交替した後、術中体位の観察は十分に行えていなかった。また、交替時にレビテーターと足のずれがないかを確認していなかった。砕石位とその固定は医師がとったが、用意されていた固定システムは手術部の自家製品であり、安全な固定かどうかの認識が医師、看護師ともになかった。
・医師と共に定期的に観察を行う。・レビテーター固定部の位置を確認し、手術の進行状況をみながら、適宜術者に声かけを行い、体位を確認していく。・術中、医師に声をかけ定期的に観察を行う。・患者の可動域範囲を超えた無理な固定をしない。・長時間の手術で負荷のかかる場合は、砕石位ではなく仰臥位で手術が進行できるか医師と検討する。・ポジショニングに対する勉強会をメーカー、医師とともに行い体位固定に対する認識を強化する。・手術体位・固定検討の取り組みを強化していく環境を整える。・砕石位用具の正しい使用方法の講習会などで認識を深める。・今回の固定具は自家製品のため、メーカーとともに推奨策を検討する。
nan
障害残存の可能性がある(低い)
子宮筋腫のため硬膜外麻酔(L4/5)と全身麻酔下で膣式子宮全摘術を施行した(砕石位:2時間50分)。術後、下肢の痺れを自覚し、その後も痺れが改善しないため硬膜外麻酔の影響の可能性を疑い、硬膜外チューブを抜去した。右下肢の痺れは改善したが左下肢のしびれや感覚鈍麻、足関節の背屈不可であった。神経内科を受診、MRIでは圧迫所見はなし、筋力低下:左L5-S2、感覚低下:S1の領域、反射の低下S1・2→左L5-S1の神経根ないし末梢神経障害と診断された。リハビリ開始。患者と家族に周術期に発生した偶発症、MRIで圧迫所見もないので麻酔の影響ではなく、手術中の体位による坐骨神経障害であること、神経の圧迫の程度により回復に時間がかかること、リハビリとビタミンB12の内服で経過をみることを説明した。
砕石位による坐骨神経圧迫による末梢神経障害が発生した。手術時間2時間50分。砕石位のベッドの圧迫除去マット、角度などは通常と変化がなかった。患者の体型はやや痩せ型であった。当院で砕石位の手術での坐骨神経麻痺のケースはなかった。
・手術の体位固定についてはチームでの対応が必要。事例検討を行い情報を共有する。・身体的に体位固定に問題ある場合は術前のシミュレーションが必要である。
坐骨神経麻痺
障害残存の可能性がある(高い)
幽門側胃切除、ハルトマン手術を受け2病日目、仙骨部に11.55×11cmの暗紫色に変色した褥瘡を発見した。その後、CT及びエコーでⅢ度~Ⅳ度の褥瘡であると診断された。
手術は9時間半砕石位で施行されたが、仙骨部に褥瘡発生のリスクが高いことが認識されていなかった。そのため皮膚の観察や除圧の対策が充分ではなかった。エアマットの使用は検討されていなかった。貧血や低蛋白状態であったこと、術後の低血圧が続き患者自身の体位変換が不可能であったことも要因である。
・手術時間が4時間を超える場合はエアマットの使用を検討する。・術中の出血量や栄養状態も含めて、術後に褥瘡リスクのアセスメントをチームで行う。・褥瘡予防対策ケア実施表を使用し、観察と発生リスクに合わせた確実な予防ケアを行う。
仙骨部の褥瘡
障害残存の可能性なし
看護師が定期巡視したところ、患者が布団を頭まで被っていた。布団を外してみたら、心電図モニタコードと酸素投与のチューブを頸部に巻きつけ、ボタン状の気管切開保持チューブは抜けていた。意識は清明であり、患者自身でチューブを巻きつけたことを自覚しており、自殺を図ったとのことだった。
舌癌の病状が進行していると説明を受け精神的に不安定な状態であったが、患者の様子から自殺企図に至ることは予測できなかった。
・ストレスや不安を溜め込みやすい患者は、精神科への受診、精神看護専門看護師の介入の体制を整える。・病室内に鋭利なものやひも状のものなど自殺企図を誘発させるようなものは置かない。・酸素投与の必要性を検討する。・患者本人の精神状態の安定と安全の確保のために家族にできるだけ付き添ってもらえるよう協力を依頼する。
心電図モニタコード・酸素チューブ
患者は、入院3日前から、通常実施しているインスリン注射を打たず、糖尿病性ケトアシドーシスで緊急入院となった。患者は事故当日の朝から、食事拒否や拒薬を認め、終日処置室にベッドを移動してすごしていた。午後になり、頭までタオルケットで覆っており、声をかけても反応がないため、看護師がタオルケットを取ると、頚部に下肢に装着していた弾性ストッキングを結びつけていた。呼名反応はないが、バイタルサインは問題なく、すぐに担当医、精神科医師を呼んだ。診察の途中から徐々に会話できるようになり、患者は亡くなった父から「もういっていいよ。」という声が聞こえたと話をした。頭部MRI検査で異常はなかった。精神科治療を優先したほうがよいということとなり、同日精神科専門病院へ転院となった。
弾性ストッキングによる自殺企図が発生するということを誰も予測していなかった。患者が過去にも自殺企図があったという情報を、家族から得ていなかった。
・同様の患者には、希死念慮の有無について確認をする。・発作的に自殺企図が発生する患者の傾向など、勉強会を開催する。・精神科医師を含め、チームで患者情報交換を密に行う。
弾性ストッキング
ベッドがギャッジアップされ、患者の首に輸液ポンプの電源コードがテンションのかかった状態で巻き付いており、コードのコンセント側がコンセント挿入口につながれ、ポンプ側が頭側ベッド柵に縛り付けられていた状態で発見された。
患者は急性骨髄性白血病であり、造血幹細胞移植後GVHD(肺炎)で入院していた。患者は、感情や思っていることを表出するタイプではなかった。今回の入院では、呼吸困難や筋力低下が出現しており、現在の病状、治癒の可能性、今後の入院期間等を心配するような発言があった。患者の心の状態を心配した家族より、当院での精神ケアを頼まれた。患者に当院精神科の受診を勧めたが、拒否され、注意深く経過を観察している状況であった。治療の長期化に伴い、診療費用を心配するような発言があった。これまで院内において、患者の自殺企図や自殺念慮はなかった。
・改めて医療安全マニュアル「入院患者自殺防止対策」の周知徹底を図る。・特に、「患者に自殺の兆候を少しでも感じた場合は、関係スタッフ間で共有するとともに、専門部署やそのスタッフに相談や対応(診療を含む)を依頼すること」について、関係会議等のあらゆる機会を通じて、医療スタッフに対して周知を図る。
輸液ポンプの電源コード
EMR、ESD施行。2:20、赤外線センサーが反応したためトイレ付き添い歩行し、その後入眠される。3:40、同室者のオムツ交換時に、ベッド上で入眠しているのを確認する。4:00、担当看護師が巡視のため訪室すると、赤外線センサーのコードを抜き、ベッド柵に巻きつけ、それに首をかけて床に座りこんでいるところを発見する。すぐに首に巻き付いているコードを外し、本人の名前を呼ぶと注視あり。「動けますか」と声をかけると、自分で立ち上がろうとしたので介助して、ベッドに臥床してもらった。BP149/80mmHgSpO294%対光反射あり。瞳孔R/L2.0mm左右差なし。「わかりますか」と呼びかけると、「わかる」と返答あり。
食道がんはESD後の経過に問題なく、確認のため内視鏡するも異常なし。入院時に抗不安薬や眠剤が持参薬にあり、脳梗塞の既往はあるが、麻痺等はない。本人からも妻からも精神疾患の既往等について確認したが、特にないと話された。当院精神科の診察後、前医に診療情報提供書を求めたところ、精神疾患があることが判明する。
・家族・本人からの情報で対応せずに前医から複数の内服薬が処方されている時は前医へ照会をする。
赤外線センサーのコード
患者は、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、菌血症から慢性腎不全のため透析導入となり、入院期間が長期化していた。発熱があり、ブラッドアクセスカテーテルによるカテーテル感染が疑われ入れ替えとなった。その後も検査がいくつか行われた。翌日には気管支鏡と胸腔穿刺の予定となっていた。19時頃、担当看護師が訪室した際、患者はテレビ台にのっている鏡をとって欲しいと言われた。鏡を渡すと、顔や首を見ていたが、担当看護師はカテーテルの入れ替えで汚れているのが気になっているのかと思った。その後、2時間おきに病室を訪室したが、特に変わった様子はなかった。1時20分頃、担当看護師が訪室すると覚醒されており、看護師が眠れないか質問すると「眠れない」と返答された。睡眠剤の使用を提案したが、不要ということであった。その時の表情は普段と大きくは変わらなかった。2時頃訪室した際も覚醒されている様子であったが、声はかけずに退室した。2時40分頃ナースコールが鳴ったため訪室すると、患者はナースコールのコードを頸に巻き付けて、ベッドをギャッジアップした状態で頸をつっていた。ナースコールは何かにあたり鳴った様子であった。ベッドをフラットに戻し、ナースコールのコードを解こうとしたが、コードは2回ほど巻き付けてありほどきにくい状態であった。患者は、顔面鬱血状態で白目をむいており、呼吸停止、頸動脈の触知はできなかった。院内緊急コールを行い、CPRを開始。バッグバルブマスクで換気した時点で、自発呼吸を認め、意識も回復した。
患者は、長期入院の状態で、病状の改善が思わしくなく、慢性腎不全による透析導入となった。医師からは、病状の改善傾向について説明されていたが、本人は自宅から離れ長期入院になり、家族も含め親しい人たちと会うことができないことや、携帯電話での連絡ができないことなどで落ち込んでいた。また、不眠も持続しており、心身ともに疲労した状態であった。また、患者は入院時より口数が少なく、医療者は抑うつ状態などに気づくことができなかった。
・長期入院患者への精神的ケアの必要性を検討し、リエゾンナースなどの介入を積極的に行う。・不眠などの症状が継続する場合は、精神科の受診などを積極的に行う。・不眠や抑うつ状態を認めた場合は、自殺リスクのアセスメントを行う。・患者にとって、少しでも良いニュースを伝えるようにする。・患者の気分転換活動を病状に応じて行う。今回は、個室から4床病室への転室を検討している時であったので、3日後に4床病室の窓際へ転室を行った。
ナースコール
18:00担当看護師が訪室すると、患者がナースコールのコードを首に1周巻きつけ、右手で引っ張っているのを発見した。すぐにコードを外すが落ち着かず感情失禁あり。一度退室し5分後に患者のもとへ行くと、再び首にコードを巻きつけていた。患者は、「死ぬの怖い」「どうせ死ぬ、死にたい。」などを訴え、落ち着かないので母親に連絡し、来院を依頼した。
患者は1年半前からベッド上の生活をしている。精神的に不安定で、主治医へ相談しソラナックスを内服していた。看護師は記録やカンファレンスで患者の精神状態の変化を把握していたが、自殺企図をおこす程の思いを抱えていることに気付いていなかった。もともと聴覚障害や構音障害があり手話や文字盤を併用してのコミュニケーションが必要であった。
・ナースコールは患者に必要な伝達手段のため柵に固定し、患者が押せるようにした。・ナースコールのコードはマットレスの下を通し、音楽プレーヤー等のコード類も、床頭台の下に置くなどの対応をした。・コード類などベッド周辺の整理整頓を行い、危険物になるような物を側に置かないようにした。・コミュニケーションについては、手話の活用と文字盤の使用、その他活用出来るものを検討し、思いをくみ取るよう対応し、患者や家族の思いを捉え対応していけるようにしていきたいと考えている。
ナースコール
肝切除・横行結腸切除術予定であったが、根治術ができず総胆管胃吻合術となった。手術翌日に、患者は医師から手術の所見と手術術式について説明をうけ、非常に落ち込んだ様子であった。術後の経過は特に問題なく、患者の発言などにも特に変わった様子はなかった。術後7日目、17時頃、患者は付き添っていた家族に買い物を頼み、家族が買い物から帰室した時にはトイレに入っていた(患者の病室は個室でトイレも個室内にあった)。家族はしばらく待っていたが、トイレから物音がせず、呼びかけても返答がないため不審に思い、トイレの磨りガラスの窓をみるとコードが透けて見えたためトイレのドアをあけたところ、患者がドアと共に倒れた。家族は大声で助けを呼び、看護師が駆けつけたところ心肺停止の状態であった。患者は、トイレ内の上部棚にテーブルタップ(輸液ポンプに使用していた)をひっかけ、便座に座った状態でテーブルタップコードを頸に巻き、体重を後ろにかけた様であった。
患者は根治手術が行えなかった説明を聞いた時、医師に「いっそのこと安楽死させてほしい」と発言しており、その情報は看護師も共有していた。術後家族の付添いもあり、離床がすすみ、食事が開始になる経過では、精神的に安定しているように見受けられ、医師も精神科へのコンサルトなどは検討していなかった。事故発生後振り返ってみると、今回の自殺企図は突発的でなく、家族を意図的に買い物に行かせるなど計画的であったことが考えられる。説明直後の患者の発言に対する気がかりを継続できていなかったこと、回復期にエネルギーがでること、医療者のよくなったという認識と患者の思いの齟齬などが要因と考えられる。
・リスクアセスメントを行う。(患者安全推進ジャーナルに掲載されている「チェックリスト」を使用している。)どのような場合に、どのような時期にアセスメントを行うべきかを検討する必要がある。・院内のホットスポットを再確認し、職員に周知する。・患者の精神面の情報共有を行うとともに、患者へ気がかりを伝える。
延長コード
糖尿病に対してインスリンを投与中の患者。ヒューマログ3単位を皮下注射の指示が出ていた。インスリンの皮下注射は看護師が実施する指示であったので、担当看護師Aが注射伝票でヒューマログ3単位皮下注射の指示を確認後、用意してあったインスリンを確認したところ患者の名前が書かれたキャップにはヒューマログ50ミックスの本体が付いていた。指示されていたものとは違うインスリンが用意されていたので、指示受けをした看護師Bに「これで大丈夫?」とペン型インスリンを見せた。看護師Bはキャップについていた名前を見て「これで大丈夫」と答えたため、看護師Aはそのままヒューマログ50ミックスを皮下注射した。本体の指示はヒューマログ3単位の指示であったため、誤った薬剤が投与された。
患者氏名・インスリンの薬剤名・投与単位数をシールに記載してペン型インスリンのキャップに貼って運用していた。自己注射の患者あるいは自己注射指導中の患者が使用するペン型インスリン注入器は、対象患者すべてのペン型インスリン注入器をペン立て様容器にまとめて入れて管理していた。自己注射等の患者は、時間になると長椅子とテーブルのある処置室に集まり、患者はペン立て様容器に入っているペン型インスリン注入器のキャップに貼られたシールを見て取り出し、看護師がそれを指示書と確認した後、患者が自己注射していた。長椅子には、多い時には3~4人並ぶこともあった。テーブル上には境がなく、外したキャップが同時にテーブル上に何本も置かれることがあり、この時に誤って他人のキャップを取り、気付かずに付け替えてペン立て様容器に戻してしまったことで、キャップと薬剤本体が違う患者のものと入れ替わった可能性がある。注射伝票の指示と薬剤(インスリン本体)の確認を一人で行った(ダブルチェックしていなかった)。指示された薬剤と用意された薬剤が同一で無いことに気付きながらも口頭確認だけでそのまま誤投与してしまった。確認を求められた看護師Bは、キャップの名前と種類・単位数のみで確認していた(シール記載のインスリン名はヒューマログ・3単位であった)。
・インスリン投与前には、インスリンの注射指示書と用意されている薬剤・単位数の確認を看護師2名でダブルチェックする(声だし・指さし確認を実施する)。・キャップに氏名等のシールを貼ることを中止して“インスリン本体”に氏名のみ記載するように変更した。投与単位数はシールに記載せずに指示書で必ず確認する運用に変更した。・院内共通で、専用の引き出し型書類ケースを新たに準備し、患者のペン型インスリン注入器は、一つのトレイ(引き出し)に一人の患者のインスリンとインスリン伝票を入れることにした。注射を実施する際は、トレイのままテーブルに出すことにした。・注射指示書と用意されている薬剤が同一でない場合は、投与前に担当医師に再確認する。
薬剤間違い
薬剤準備
○医療機関によっては、インスリン注入器本体とキャップの両方に氏名を記載したラベルを貼っているところもある。○インスリン注入器は他の注射器と異なり複数回使用するため、ラベルに記載した氏名等の文字が薄くなってくることがあり、注意が必要である。○インスリン注入器は患者が自宅で使うための簡便性や見た目が考慮されている一方で、入院中に病院で管理する際には氏名のラベルを貼る等の必要が生じる。氏名の表記がしやすいような製剤のデザインになるとよいのではないか。○「これで大丈夫?」という質問のしかたでは疑問点が明示されず、確認が適切に行われなかった可能性がある。「ヒューマログの指示と薬剤名が違うが大丈夫か?」のように、具体的に尋ねることが重要である。
看護師が夕食前インスリン実施前の確認をするために、患者Aと患者Bのインスリンを回収し別々のトレイに置いた。指示のインスリン名と単位を2名の看護師で確認する。インスリンを実施するために患者Aの病室に行き、ネームバンド等との確認をしないまま患者Bの名前を呼んだ際「ハイ」と返事があったので、患者Bに指示されているノボラピット3単位とランタス3単位を皮下注射した。夕より指示変更があったインスリンを患者Aに説明するため、患者Aの名前を呼ぶと「私は患者Aではありません」と言われた。ペンタイプのインスリン本体に患者Aの名前があり、指示では患者Aにアピドラ3単位とランタス2単位を実施するところ、患者Bのインスリンで患者Bの単位を実施してしまったことに気づいた。すぐ患者Aの主治医に報告、指示の説明と症状等の観察をした。その後、患者Aに使用した患者Bのペンタイプのインスリンを針のみ交換し、患者Bに指示のノボラピッド3単位とランタス3単位を実施した。
日勤終了時に患者Bのインスリン指示が夕食前より変更となり、薬剤部より供給を待っていた。患者にフルネームで名乗ってもらっていない。患者確認をルールに沿って行っていない。インスリンは注射オーダーではなく電子指示簿で行うので、患者認証システムには載せられない。急激に患者数が増え、重症患者や要監視患者が増えていた。準夜勤で頻回のナースコールにより、看護師2人による確認を短時間で行おうとした。
・患者確認の徹底、指示書の患者名とベッドネーム、リストバンドと患者自身の声による名前で確認する。・インスリンは、注射等と同様で、実施前に患者と指示書の名前、インスリン名、単位を確認する。・患者管理のインスリンは、変更以外は回収しない。・医師への報告は速やかに行い、当直医、主治医、病棟医長と連携を図る。・インスリンの手技を含めた安全・感染リスクの正しい知識をもつ。(感染管理・糖尿病認定看護師介入、通知、勉強会実施)・感染医学医師による説明および6か月後までフォローアップ検査実施する。・インスリン管理方法について再検討する。(感染管理・糖尿病認定看護師介入)
対象者間違い
注射の実施
○複数患者のインスリンを一度に回収すると取り違えを誘発するおそれがあるので、それぞれ単独に回収するとよいだろう。○処方が発生しないと患者認証システムでの確認は難しいため、他の方法での患者確認を確実に行う必要がある。○当事者は、患者Bのインスリンを患者Aに注射した後、感染リスクまで頭に浮かばず、とにかく患者Bにも注射をしなければならないと思った可能性がある。感染防止も含めた教育が重要である。
循環器内科医師Aは、高カリウム血症と高血糖に対し、グルコース・インスリン療法として10%ブドウ糖500mL+Hu-R10単位40mL/h、高血糖に対しHu-R持注0.5mL/hの指示を出した。医師Aは、「Hu-R持注0.5mL/h」の指示について、ヒューマリンR注の原液が1mL=1単位の規格だと思っていたので、0.5単位/hを投与する意図で記載し、シリンジポンプで開始するように指示した。指示を受けた看護師Bは、「原液?」と思い、処方オーダに何か記載がないか確認したが、オーダの画面上も「ヒューマリンR注1V」だけが処方されていたため、医師が出した指示だから原液で良いのだろうと思い、誰にも確認しなかった。看護師Bは、患者用に既に処方されていたヒューマリンR注の使いかけのバイアルと未使用のバイアルの2本を冷蔵庫から取り出し、リーダー看護師Cに薬剤を確認してもらった。看護師Cは当該患者のヒューマリンR注の確認を看護師Bと一緒に行った記憶はなかった。看護師Bは、20mLシリンジにヒューマリンR注の原液11mLを吸い、シリンジポンプにセットして、指示通り0.5mL/hで開始した。2時間後、患者の血糖値を測定したところ339mg/dLであったため、医師AはヒューマリンR持続注入を「0.8mL/h」に増量を指示した。約4時間後、血糖値が30mg/dLであることがわかり、病棟に来ていた循環器内科の当直医DはヒューマリンR持続注入の中止指示を出した。この時、医師DはヒューマリンR注が原液で投与されていることを知らなかった。50%ブドウ糖40mLの静注を実施、一時的に血糖の上昇がみられるが、すぐに下降を繰り返すため、50%ブドウ糖の持続注入開始。その後、脳神経外科医師Eがインスリンの用量が多いことに気付き、過剰に投与していたことがわかった。
指示簿に記載した循環器内科の医師Aは、他院で前期研修を終了後、この医療機関では1年目の後期研修医であった。一般病棟、CCUでも、インスリンの持続点滴の指示をした経験はなかった。指示を受けた看護師Bは、約20年の職種経験があり、当該病棟では3年の経験があった。しかし、この病棟では、インスリンを持続注入で投与することが少ないため、看護師BはヒューマリンR注の側管からの持続注入を取り扱った経験はなく、インスリンをシリンジで持続注入する作業を最初から実施するのは初めてであった。指示した内容のまま投与されると何単位になるか確認していなかった。看護師は一瞬「原液…?」と思ったが、他にも輸液等の指示があり、他患者のケアなどに気を取られて、確認しなかった。投与時のダブルチェックが十分ではなかった。一般病棟では、インスリン持続注入に関する希釈濃度や指示の出し方などの決まったルールはなかった。通常の注射薬は、患者個人の「注射薬」として投与方法や流量などの指示内容を電子カルテでオーダ入力できる。しかし、ヒューマリンR注の処方は、外来処方箋への記載の必要性もあり、「内服薬」でオーダ入力しており、生理食塩水などの希釈液とは別に処方することになっている。そのため、ヒューマリンR注の処方時に希釈方法や流量などの指示内容は書いていなかった。医療機関では、医療安全管理研修において、新採用・異動職員対象の「医療安全管理研修」、全職員対象の「ハイリスク薬」「医薬品の安全管理」などでインスリンについて研修を行っている。
・ハイリスク薬品に対する取り扱いの研修。研修医に対しては全員受講を決定する。・ヒューマリンRの希釈方法を院内統一し、職員全員に周知徹底する。・事例発生後、全病棟で「ヒューマリンRは1単位を1mLに希釈して使用する」ことにした。・医療安全ニュースで「ヒューマリンR注(100単位/mL)のうち、20単位=0.2mLをインスリン専用注射器で採取する。・生理食塩水20mLを採取したシリンジに混注し、合計20mLとする。」と調製例を示し、「ヒューマリンRの希釈ルールの標準化」を院内に通知した。・リスクマネージャー会議において、当該事例を共有、分析した。その後、各リスクマネージャーは所属先職員に事例について周知を行った。
薬剤量間違い(過剰)
指示出し
○事例から、医師が誤った指示を出した場合、後の工程で誤りに気づいて止めることの困難さが示唆される。○医師は職種経験3年で、インスリンの用法・用量の入力の重要性を十分理解していなかった可能性がある。
患者は頸部膿瘍のため当院耳鼻科病棟に入院した。内科にコンサルトし補液開始。「ヒューマリンR50単位生食50mL」の静脈内持続投与の指示あり、夜勤担当看護師Aは、注射指示書の医薬品の欄に「ヒューマリンR注100単位/mL10mL」とあるのを見て「100単位10mL」と思い50単位を5mLと計算した。夜勤担当看護師Aは、日勤の担当看護師Bとダブルチェックする際、処方箋、薬剤、および院内標準希釈のマニュアルの赤枠にある「ヒューマリンR(U-100)50単位+生食50mL1単位=1mL」の記載を見て確認を行った。また、看護師Bは看護師Cに薬剤名は告げず「100単位10mLなので50単位5mLですよね」と確認し、看護師Cは「そうです」と答えた。看護師Aは、インスリン5mL生食50mLを調製し、シリンジポンプ1mL/hで開始した。20時30分に血糖測定し321mg/dLのため、流量を1mL増量し2mL/hとした。0時すぎ、患者から発汗、倦怠感の訴えがあり血糖値の測定をした。51mg/dLであった。持続インスリンを中止し、処置を行い症状は改善した。他の夜勤看護師がカルテを確認、インスリンが5mL(500単位)で調製されていることが判明した。
ヒューマリンR注インスリンの濃度は100単位/mLであるが、看護師Aは注射指示書を見て、100単位10mLは50単位5mLだと判断した。100単位/mLを見落としたか、あるいはこの表記が「1mLが100単位」であるという意味であることを知らなかった可能性がある。看護師Aはインスリン(バイアル)は「1mLが100単位」の薬剤だけであるという認識がなかった。当該病棟では、インスリンの持続投与患者が少なく、看護師A、Bともに持続インスリンの経験が無かった。看護師Aは、初めて持続インスリンを作成するのに作成方法や基準を見なかった。インスリンの名称変更について、オーダリングの変更や各部署への情報提供は行われていたが、インスリン希釈の作成マニュアルにあるインスリン名称の更新はされていなかった。看護師Bはインスリンを確認した時に、看護師Aが先に「100単位10mL、50単位5mLでいいですよね」と口頭で伝えたため、両者に思い込みが生じた。看護師Bは看護師Aが50mLシリンジでインスリンを吸っているのを見て「おかしい」と感じたが、相手に伝えなかった。看護師Cは薬剤名が分からないまま、簡単に返答した。
・インスリン静脈内持続投与の作成手順の内容を再度全部署で再チェックする。・インスリンの学習会を認定看護師に依頼し部署毎に周知する。・インスリン薬剤自体の表記方法の検討をメーカー等に依頼する。・ダブルチェックの確認方法の精度を向上する。・事例の共有を行う。
薬剤量間違い(過剰)
薬剤準備
○インスリンのバイアルと専用注射器を一緒に置いておき、必ず専用の注射器を用いるようにするとよい。○マニュアルの「1単位=1mL」という記載は「希釈後の濃度」であると明記しないと、経験のない者が誤解するおそれがある。マニュアルはわかっている人が作成するものであるが、わからない人が正しく理解できるように記載することが重要である。○ダブルチェックが、「○○ですよね」「そうです」というやり取りになっているが、ダブルチェックは間違いがないかどうか確認するために行うことを意識すべきであろう。○普段インスリンの持続静注を行うことが少ない病棟では、インスリンの希釈について習熟していないスタッフが多いため、注意が必要である。
朝食前低血糖が持続するため、2日前より朝食前のインスリンを昼食前に変更した。注射箋にも「昼食前レベミル注フレックスペン20U」と記載され、ワークシートにも昼食前インスリンと記載されていた。夜勤の看護師はワークシートを確認せず、以前は朝食前に施注していたため、朝食前だろうと思い込み、インスリンの準備をした。朝食前の血糖値52mg/dLであり、指示の40%ブドウ糖40mLを注射した。30分後には221mg/dLであった。血糖値が上昇したため、夜勤のフリー業務の看護師に注射の依頼をした。依頼された看護師は食前の血糖値が低かったため、朝食摂取確認後、患者名、実施日、種類、単位を確認後患者に実施した。昼食前、日勤の担当看護師が昼に実施予定のインスリンが朝実施されていることに気がついた。
2日前にインスリンが変更になっており、患者の情報把握不足があった。出勤した際に業務手順ではワークシートを確認するようになっているにもかかわらず、確認不足であった。注射箋確認時の指差し、声だし確認が出来ていなかった。注射箋と注射ワークシートの照らし合わせという行為が未実施であった。
・確認行為を徹底する。・看護業務手順を遵守する。
投与時間間違い
注射の実施
○インスリンは他の薬剤に比べ指示の変更が頻繁で、数日ごとに投与量が変わることも多い。以前の指示と同じだろうと思い込まず、その都度指示を確認することが重要である。○6R(正しい患者、正しい薬、正しい目的、正しい用量、正しい用法、正しい時間)の確認項目に抜けがないように看護業務手順を工夫するとよいだろう。○インスリン専用の注入器を用いることや患者による自己注射も行われることから、インスリンは他の注射薬と比べ「注射薬」という意識が低いのかもしれない。そのことが確認漏れの要因となっている可能性がある。
12時20分頃、昼の固定打ちインスリン(ノボリンRフレックスペン10単位)を使用している患者に、部屋担当看護師Aは11時30分にインスリンを施行し休憩になるため、後休憩の看護師Bに流動食注入(インスリン実施済みで流動食注入のみ)を依頼して休憩をとった。(※看護師Bはインスリンを施行されていたことは知らなかった)。看護師Bと看護師Cは、通常は12時にインスリンを施行していたので、引き継いだ時、インスリンが未実施だと思っていた。看護師Bと看護師Cはインスリンの患者氏名、種類、量をダブルチェックし準備した。看護師Cはインスリン実施入力画面で●印を目で確認したが●を疑問に思いながらも看護師Aには確認せず、通常12時実施だったため、”未実施”と思い込んだ。看護師Cは更に、看護師Dが病室にいたため患者氏名・種類・量をパソコンで再確認しインスリンを実施した。A看護師の休憩が終わり重複注射がわかった。主治医に報告、2時間後に血糖チェックの指示及び経過観察となった。
休憩前の引き継ぎを受けた看護師への細かい言葉かけ及び、疑問に思ったがそれ以上の行動を起こさなかったという担当者への確認行為が不足していた。
・疑問に感じた場合はすぐに担当看護師に確認し思い込み作業を行わない。・看護師間の申し送りは具体的に行い、曖昧な表現は避ける。・インスリン時間の認識の統一を行う。
重複投与
注射の実施
○看護師Aはできるだけ自分で業務を済ませておこうと考えてインスリン注射を行ってから交替した可能性があるが、インスリン注射から流動食注入までの時間が長くなると低血糖のおそれがある。インスリン注射と流動食注入は一連の業務として行うべきであり、インスリン注射だけを実施して他の看護師に交替するのは避けた方がよい。○12時前後に業務が忙しくなるのであれば、休憩時間のとり方を変えたり、食直前にインスリンを注射してもよいか医師と相談するなど、業務負担を調整する工夫をするとよいだろう。
看護師Aは夜勤のチームであり夕食前の17時30分に患者の血糖測定を行い、スケールを用いインスリンを夜勤フリーとダブルチェックでセットを行った。看護師Bが配膳を行い、患者は食事を食べていた。看護師Aはインスリンがあった事を他の事に気を取られ、忘れていた。19時に思い出し、インスリンの未投与に気がついた。
他患者も夕食前に血糖測定があったが、まだ検査から帰室しておらず他患者の血糖測定を帰室時に測定忘れしないようにと気をとられていた。
・インスリンがある患者は投与前の時間でタイマーをセットしタイマーで動く。・看護助手や、他看護師に配膳前にインスリンがある事を声かけする。・配膳時にインスリンがある患者を紙等にリストアップし他者にもわかるように表示する。
無投与
注射の実施
○配膳の際にテーブルに印をつけておくなど、インスリンを注射するまでは食事をしないことが患者や他のスタッフにもわかるような仕組みができるとよいだろう。○タイマーをかけるという改善策は、多重業務がある時には難しいと思われる。○夕食前の30分間は、血糖測定、インスリンの準備・注射、配膳等があり、非常に忙しい時間帯である。勤務体制(人数、交替の時間等)を工夫してはいかがか。
前日より、インスリン注射が中止になっていた。朝、中止をしていると申し送りがあった。昼食前、他の看護師よりインスリン注射の有無を聞かれ、インスリンがあると思い込み、ヒューマリンR10単位を施注した。
ワークシートに記載があったにもかかわらず、インスリンがあると思い込んだ。他の看護師と指示表を確認しているが、中止の欄の確認まではしていなかった。
・指示表の見方を徹底する。・中止になった場合の表示方法を検討する。
中止時の注射
指示受け
○指示表の中止の欄が見にくかった可能性がある。○当事者は職種経験3ヶ月であった。新人看護師が思い込みをしないようにリーダーやプリセプターが配慮することも必要であろう。
朝食直前にノボラピッド30ミックス14単位投与の指示であった。深夜看護師は看護助手が配膳業務を開始したことを確認し、7時55分にインスリンを投与した。看護助手は当該患者の配膳をし忘れていた。また、深夜看護師も患者が食事摂取を開始したことを確認しなかった。日勤者が朝食摂取終了の頃合を見計らって8時45分に訪室したところ、まだ食事摂取していないと報告を受けた。インスリン投与から50分経過していた。血糖値は49mg/dLであった。直ちに40%ブドウ糖を2アンプル内服し、朝食摂取を開始した。30分後、血糖値112mg/dL、意識清明、バイタルサイン著変なし。11時30分、血糖値50mg/dL、意識清明、冷汗なし、気分不快なし、手指振戦なし。再度、40%ブドウ糖2アンプルを内服した。30分後、血糖値80mg/dL。昼食全量摂取後、13時、血糖値256mg/dL、経過観察となった。
深夜看護師は看護助手が配膳をしているのを見て、すぐに配膳されるものと思い、インスリンを投与した。看護助手はこの日は忙しく、慌てており、配膳の最終確認をしなかったため、未配膳に気がつかなかった。日勤者は7時50分患者が食事を摂取する姿勢になっているのを見て、配膳されていると思い、食事摂取開始の確認をしなかった。
・食直前の超速効型インスリン投与指示のある場合は、インスリン投与者が投与時に配膳も行う。・速やかに配膳できない状況にある場合は、インスリンの投与はしないで、インスリンの投与と配膳を一括して他の看護師に依頼し、確実に伝達する。・看護助手は全員の配膳が終了しているかを必ず、最終確認する。・誰かが行っているという思い込みをせず、実施の有無を自分の目で確認する。
食事等との調整
実施に伴う確認・観察
○インスリン注射と配膳を一連の業務として行うことは重要であるが、看護師が配膳することになると業務が繁忙になり、かえって他のリスク要因となる可能性も考えられる。朝の忙しい時間帯における食事時間の設定や人員配置を検討してはいかがか。○看護助手が配膳する場合も情報共有を行い、配膳忘れを防ぐ方法を考えるとよいだろう。
午後、薬剤師が自己血糖測定・インスリン自己注射指導をデモ器にて実施した時、患者の不安が強いという事でデモ器が病棟へ貸し出しとなった。日勤の新人看護師Aは夕の血糖測定をデモ器にて実施し、デモ器の入っている箱を病室に置いた。深夜勤看護師B、日勤新人看護師A、準夜勤看護師C共にデモ器にて血糖測定・インスリン注射を実施した。看護師Cが血糖測定器のデモ器の表示に気がついた。合計3回のデモ器使用となった。デモ器のインスリンの有効期限は2ヶ月前に切れていた。
薬剤師から貸し出しのデモ器の箱の中身は血糖測定器具セット、針、操作練習用と表示のあるフレックスペン(生理食塩水付き)、操作練習用とは未表示のノボリンR注フレックスペン(インスリン付き)の本来の物と同様の物、腹部針刺しモデルであった。新人看護師Aはデモ器であるとリーダー看護師から受け取ったが、使用してはいけないものと思わず血糖測定をした。患者が練習できればと思い病室に置いた。朝、看護師Bはデモ器の存在は知っていたが、ペンフィルが2本あるため未表示のフレックスペンが患者のものと思い使用した。昼の新人看護師Aと夕の看護師Cの実施時は、未表示フレックスペンと血糖測定器を患者が準備していたため、本来のものと思った。処方された患者用の自己注射セットは、夕方、薬剤師指導の後にリーダー看護師が患者に渡し、翌日から使用すると伝えたが、患者は退院後から使用するものだと思っていた。
・デモ器を使用する場合はナースステーションで管理し、患者のもとに置かない。・医療職種間のコミュニケーションを十分図る。・未表示のフレックスペンがあることの疑問を早く解決する。・未表示の危険な物を患者の側に置かない。・初めて実施する事への患者指導は患者の理解度を確認する。・数ヶ月の経験である新人への指導は細やかに実施する。
その他
その他
○患者教育用にデモ器を使用することがあるため、デモ器に関する事例が複数報告されている。○デモ器にはデモ器と表示し、患者に実際に使用することがないように管理する必要がある。
患者は化学療法目的で入院となった。通常、月曜日入院は前週の金曜日までに主治医が採血などのオーダを入力するが、本件では行われておらず、担当研修医が15時に採血等の指示を出した。担当研修医は、19:29診療録に検査結果を記載・登録した。主治医は、当日は外来日であったため夕方まで病棟を離れていたことから、外来診療中に検査結果画面から血算に関しては確認したが、血清カルシウム値については確認しなかった。翌日、看護師が便秘薬の内服について患者へ説明を行った際に、十分理解できないなどの症状があった。また、化学療法開始日であったが発熱があったため1日延期とされ、採血が追加された。主治医は、最新の採血結果を参照したが、この際に前日のカルシウム値の高値(16.4mg/dL)に気づくことはなかった。23時過ぎに、患者に辻褄の合わない言動が認められたが、状況を説明すると納得され、自室に戻られたため、巡回時の観察を継続していた。2日目、朝の巡回時に心停止状態の患者が発見された。
医師は採血をオーダ、指示したが、検査結果の異常値を見落とした。主治医以外の病棟担当者(病棟医長、副病棟医長、クリニカルリーダーなどの上級医)も、全ての採血結果を見るというルールはなかった。外来化学療法を継続している間、定期採血での血清カルシウム濃度の測定が行われていなかった。外来化学療法における採血セットに血清カルシウムは入っていなかった。看護師は、扁平上皮がんでは副甲状腺ホルモンが腫瘍などから異常に分泌され高カルシウム血症を引き起こす可能性があるという知識が不足していた。入院してから日が浅く患者の病態の理解が不足していた。採血結果を誰がいつ確認するか、異常値であった場合どうするかがルール化されていなかった。<パニック値の報告については、以下のルールがある>・検査結果が決められた条件を満たした場合には、パニック値として各検査室より提出医(検査をオーダした医師)に電話連絡する。・全科共通項目:ナトリウム、カリウム、血糖、アンモニア、白血球数、血小板数・共通項目以外に、小児科、小児外科、代謝内科は、別途条件あり。・提出医が不在の場合は担当医師、担当医師が不在の場合は、それ以外の医師もしくは看護師の順で連絡をする。
・パニック値にカルシウム値(13.0mg/dL以上)を追加した。更に、追加が必要な検査値や、病院独自のパニック値の報告システムについても検査部協力のもと、検討を行う。・インシデントが発生してから病院長までの報告が行われていないことから、診療科での報告体制を見直す。
ペースメーカ挿入患者にMRI撮影の指示を出した。撮影前に診療放射線技師が「金属が含まれた物を体の中に埋め込んでいませんか、もしくは身につけていませんか。例えばペースメーカや時計のような物です。」と質問したところ、患者がペースメーカを埋め込んでいると答え気付いた。
医師は、4年前にMRIを撮影していることから安心し確認を怠った。
・MRI指示時はペースメーカや埋め込み型電子デバイスの有無の確認を徹底する。・患者の掲示板に「ペースメーカ埋め込みあり」と記載した。・医局員全員にこの事実と再発予防策を周知した。
午前中、患者Aは不穏がありベッドから降りようとしたため、他看護師が車椅子に乗せスタッフステーションで対応していた。昼食後、3名分の薬をフルネームが記載してある薬ケースに入れ、3名分を一緒に患者Aのもとに持参した。患者Bの薬ケースを患者Aに見せながら「患者Bさんですね」とフルネームで声をかけた。患者Aが「はい」と返答したため、持参した患者Bの薬ケースに入っていたフロセミド40mg1錠を内服介助した。その直後に、患者のリストバンドの名前が目に入り、患者間違いに気づいた。患者へ謝罪し口渇、気分不良時には看護師へ伝えてもらうよう説明した。主治医へ報告し経過観察の指示を受け、バイタルサインの変動に留意し、訪室時に飲水を促し排尿状態、症状観察を行った。次の勤務者へバイタルサイン、排尿回数、口渇などの観察を引き継いだ。
「患者Bさんですね」と問いかけ、患者に名乗ってもらわなかった。初めて受け持った患者で、午前中の対応で理解力低下と認識しなかった。ナースステーションで与薬を行ったため、ベッドネームでの確認ができなかった。3個の薬ケースを1つのトレイに乗せていた。
・意識レベルが清明でなくフルネームを名乗ることが困難な患者については、病棟で共有できるように入院時アナムネ聴取した看護師や受け持ち看護師が看護計画に反映させ、スタッフが同様に認識できるようにする。・名前を確認する時は、自分で名前を名乗ってもらう。・自分で名乗れない患者はリストバンドまたはベッドネームで確認する。・ベッドを離れた患者の確認はリストバンドで行う。・与薬はベッドサイドで実施する。・朝のカンファレンスで手順を遵守するように働きかける。
患者間違い
配薬・与薬
ナースコールの対応や面会患者のナースコール対応に追われ、患者Aに投与すべき麻薬の投与時間が20分過ぎてしまい慌てていた。担当看護師とリーダー看護師は、オキシコンチンを金庫から出す際にダブルチェックをした。担当看護師はそのまま患者のもとへ向かったが、患者Bを患者Aだと思い込み、誤って患者Bの病室へ入った。リーダー看護師は他の患者のナースコール対応のため病室へは付き添わず、ベッドサイドでのダブルチェックを行わなかった。担当看護師が指示書に書いてある患者Aの名前のフルネームを読み上げ確認したところ、患者Bは誤りに気付かずに「はい」と返答し、「今までは痛み止めが2個だったから減ってよかった」と話した。担当看護師は患者間違いに気がつかずに薬を投与した。投与後、指示書・処方せんに記載してある氏名と投与した患者の氏名が違っていることに気が付いた。
担当看護師は准看護師として5年の経験はあるが、今年度看護師として入職し、夜勤にもまだ慣れておらず、またかなりの多重業務であった。担当看護師は病室番号や患者名表示の確認を行わず、また患者の名前をこちらから読み上げる一方的なものであった。ベッドサイドでのダブルチェックを行わなかった。
・患者に名前を言ってもらうことを徹底する。・名前を言えない患者にはリストバンドで確認をする。
患者間違い
配薬・与薬
19:30患者Aに検温、点滴注射施行のため訪室する。検温後、床頭台に眠前薬を出し、患者Aのコップでミキシングする。ミキシングした後、NGチューブより注入し、部屋を退室した。他病室の患者Cの検温をしていると、廊下から痰がらみのいびきと咳払いが聞こえた。廊下に出ると、看護助手より「患者Aです」と報告があった。急いで患者Aのもとを訪室すると、痰がらみの咳があるため、吸引を施行した。しかし、吸引するが痰を取りきれず、ギャッジアップして様子をみていた。20:30、体位交換時に痰がらみのいびきがあった。1時間前と違う様子だったため、先輩看護師に報告しバイタルサインを測定した。BP:134/83mmHg、BT:36.8℃、P:69回/分、瞳孔不同なし、対光反射あり。麻痺悪化なし。呼びかけに反応なく、痛み刺激には手を払うが、開眼なし。舌根沈下があり、側臥位に体位交換した。この時、数十分前に眠前薬に抗不安薬・睡眠導入剤を内服する患者Bが寝付けず開眼し、ベッド上で臥床している状態だったことを思い出し、1時間前に患者Aに眠前薬がないのに、眠前薬をNGチューブから注入したことに気づく。そこで患者Aのゴミ箱を見ると、患者Bの氏名が記載された薬の空袋があった。空袋を確認すると、アモバン・レンドルミン・レボトミン・ネルボンを投与していた。急いで医師に状況を報告し、舌根沈下に対してネーザル7mmを挿入し、薬の効果がきれるのを待つように指示を受けた。
患者Aと患者Bの病室は、別室であったが、患者A、Bともに男性で、構音障害と意識障害があり、NGチューブが挿入されていて状況が似ていた。患者のネームバンドと1回配薬の袋の患者名を確認するのを怠った。看護師は1年目でひとり立ち準夜勤務の2回目だった。準夜帯で投与する薬剤は、各患者の「夕用」「眠前用」でまず袋にまとめ、その後、担当する全患者の内服薬を一まとめにし、「夕用」「眠前用」のトレイに準備する。そのため、担当している患者の全内服薬を持って各患者のベッドサイドに行っている。与薬時、ベッドサイドには処方箋や指示書などは持参しておらず、薬袋と患者を照合することになっている。患者の照合は、患者に名乗ってもらう、またはリストバンドまたはベッドネームで確認することになっているが、当該病棟の患者は臥床中で意識障害のある患者が多く、ベッドから離れることが少ないため、ベッドネームで確認することが多かった。
・指差し、声だし確認を怠らない。・患者氏名と薬の確認を怠らない。・正しい患者、正しい方法、正しい時間、正しい用量、正しい薬、正しい目的の6Rを遵守する。・内服薬の準備の際に、担当する患者全てをまとめてトレイに入れるのではなく、患者ごとの「朝」「昼」「夕」「眠前」のボックスに変更した。しかし、薬剤カートなどがないため、置き場所の問題などがある。
患者間違い
配薬・与薬
夜勤看護師は、担当の患者の夕食後薬の配薬を行うため、与薬カート、PCを持参した。患者Aのベッドサイドで家族を患者Bの家族と思い込んだ。そのため、与薬車の患者Bのボックスの引き出しから薬を取り出し、PCで患者Bのカルテを開き薬剤(ワーファリン錠1mg、アレグラ錠60mg、メルカゾール錠5mg、リリカカプセル25mg、アイトロール錠20mg、エクア錠50mg、メトグルコ錠250mg、グリミクロン錠40mg)を確認した。その後、患者の家族に薬を渡した。家族から「内服薬の数が多い」「量が増えたのですか」と2回確認があった。その都度、患者Bのカルテを開き確認し、間違いないと返答した。患者Aの家族は、看護師から薬を受け取り患者に渡し内服させた。その後、看護師は隣室の患者Bの元に行き、患者Aの内服薬を渡した。患者Bから質問はなかった。患者Aは20時過ぎに吐気を訴え、当直医が診察後プリンペランの内服が処方された。21時すぎには腹痛を訴え診察後ブスコパンが処方された。翌日14時すぎに患者Aの家族から昨日の夕方の薬を調べてほしいと日勤看護師は依頼された。患者のカルテや状況から患者Aと患者Bの薬剤が間違っていることが判明した。
思い込みや過信から、患者本人との最終確認が実施されなかった。薬剤に患者氏名が記載されていない。「患者確認」のマニュアルが遵守されていなかった。職員への安全教育が不十分であった。
・全ての行為の最終確認の段階で、患者本人に名乗ってもらう。・患者が名乗れないなどの場合は、リストバンドによる確認を徹底する。・疑問を感じた場合や疑義があった場合は、複数で確認する。・配薬の方法等(患者氏名入り容器の使用など)について、看護部で調査・検討を行い、決定したものを委員会で報告する。・患者確認のマニュアルを一部改定する(疑問を感じた場合や疑義があった場合は、複数で確認する)。・患者誤認防止に関する啓発活動を定期的に行う。
患者間違い
配薬・与薬
薬剤に関する出来事
朝食後、ティーエスワン内服開始予定の患者Aより「まだ内服薬が来ていない」と報告があった。確認すると患者Bのカップに患者Aの内服薬が入っていたことが分かった。夜間、カーデックス管理の内服薬は確認後に1人でカップに入れて準備したため、患者Bのカップに誤って入れていたことに気づいた。すでに別の看護師にて与薬されており、内服した後であった。当時、受け持ち看護師は他患者の見送りのため病棟を空けていた。与薬した看護師はダブルチェック済みであると思い、確認しないまま与薬した。ただちに主治医から抗癌剤の誤薬があったことを説明され、胃洗浄を施行した。
・与薬は必ず受け持ちが行う。・やむを得ず与薬できない場合等は確実に申し送りを行う。・自己管理できる患者は『看護手順』の自己管理基準に沿って、自己管理してもらう(服薬後の確認をする)。・自己管理できない患者は薬袋を持っていき、呼称、リストバンドで確認し与薬する。
薬剤間違い-薬剤取り違え
配薬の準備
患者Aの定期内服の眠剤(ハルシオン0.252錠、ロゼレム8mg1錠、グランダキシン501錠)を指示簿と薬袋を確認して準備した。準備する際、内服薬を薬杯に入れたが患者Aの氏名を記載しなかった。就寝前のラウンドの際、患者Bから「眠剤がほしい」と訴えがあったため、準備していた患者Aの眠剤を患者Bの内服薬であると勘違いして、内服させた。その後、患者Aより内服薬の希望があり、患者Bに誤って内服させたことに気づいた。主治医に報告し、呼吸状態に注意し、経過観察となる。
患者に内服薬を渡す際に患者に名前を名乗ってもらい確認しなかった。内服薬と薬袋の氏名を照合し確認を怠った。
・内服薬を渡す際は、患者に名乗ってもらい、氏名の確認を徹底する。・内服薬を渡す際は、薬袋を患者のベッドサイドまで持参し、6Rを確認後、患者に与薬することを徹底する。
薬剤間違い-薬剤取り違え
配薬・与薬
看護師は患者Aが内服する血糖降下剤(アマリールOD1mg1錠、ジャヌビア50mg1錠)を、患者名が記載された配薬カップに入れて準備すべきであったが、配薬カップではなくトレイ内に準備した。その後、他の患者の下膳を終了した。病室(4人床)を訪室し、トレイに準備した患者Aの内服薬を同室患者Bの内服薬と思い込み、患者Bに与薬した。勤務終了後、与薬患者間違いに気づき当直医に報告した。経時的に血糖測定を実施していたが、患者Bは血糖降下剤内服20時間後に低血糖性昏睡に陥った。与薬から55時間不安定な状態が持続したが、処置により昏睡は改善した。
与薬時、患者名の確認を行わなかった。
・誤薬防止のための6Rを徹底する。・患者確認の手順を遵守する。
薬剤間違い-薬剤取り違え
配薬・与薬
患者Aは内服の飲み忘れがあるため、内服薬は、その都度看護師が配薬し、内服していた。名前が似ている患者Bが別室に入院中であったが、配薬した看護師Xは名前が似ている患者がいることに気が付かなかった。患者Bから夕食後の内服薬がまだだとナースコールがあり、看護師Yが患者Bの配薬ケースを確認するが、夕食後の内服薬が無かった。また、患者Aの配薬ケースを確認すると夕の薬が残っていた。その際に、看護師Yは患者Bと患者Aの名前が似ていることに気が付いた。患者Aのベッドサイドのゴミ箱より、患者Bの一包化内服袋が捨てられているのを発見し、患者Bの内服薬を患者Aに内服させたことがわかった。それぞれの患者の内服内容を確認し、当直医へ報告した。患者Aが内服した患者Bの薬剤(オルメテック、アダラートCR、アーチスト、カルデナリン、クレストール)に降圧薬が含まれていたため、速やかにベッド上安静を伝え、30分ごとにバイタルサイン測定を実施した。内服1時間半後に血圧84/42mmHgと低下したため、下肢拳上行い、ナースステーションに一番近い病室へ移動した。心電図モニタ・SpO2モニタ装着を行い観察した。当直医の指示で生理食塩水500mLを60mL/hで持続輸液開始した。退院予定であったが、血圧変動の可能性があったため、翌日へ退院延期となった。
配薬ケースの名前をフルネームで確認していなかった。配薬時に本人と名前を確認していなかった。似ている名前の患者がいないと思い込んでいた。ナースコールと配薬に追われて急いでいた。
・与薬時には配薬する前に配薬ケース、フルネーム、ベッドネーム、患者のリストバンド、本人に名乗ってもらうなどの患者確認を確実に行う。・患者を確認する時は声に出して確認する。・名前が似たような患者がいる場合、間違えやすいことを念頭に置き、勤務申し送り時にスタッフ全員で同姓・同名など、注意喚起の札をルームネームや配薬ケースに表示する。
薬剤間違い-薬剤取り違え
配薬・与薬
16時、担当看護師は受け持ち患者5名分の内服薬を取り出し、個々の患者氏名を記入した25mLの注入用のカテーテルチップに、薬剤を溶解し準備した。1人の患者に対し、溶解した薬剤と微温湯を入れた2本のカテーテルチップを用意し輪ゴムで止めた。カテーテルチップの側面と押し子には患者氏名を記載していた。経管栄養終了まで時間があるため、5名分の薬剤を入れたカテーテルチップを1つのトレイにいれ処置室に置いた。19時45分、経管栄養が終了し夕食後の内服注入のために、5名分の薬剤を入れたカテーテルチップのトレイを患者のベッドサイドに持参した。病室でトレイの中に患者用のカテーテルチップがあることを確認したが、その後カテーテルチップから目を離した。トレイからカテーテルチップの1組を取り出し、ベッドネームを見て患者の胃チューブより薬液を注入した。注入後のカテーテルチップを確認した際、別の患者氏名が記載されていることに気づき、誤注入がわかった。他の患者の薬剤には、当該患者には処方されていないグルコンサンK細粒8mEq(4mEq/g2g)が含まれていた。
食事時間に関係なく、実際に注入する3時間前に薬液を準備した。受け持ち患者全ての薬剤を1つのトレイに入れて管理した。ベッドサイドへ他の患者の薬剤全てを持参した。薬液注入前に、患者氏名・薬剤名・量・時間・方法・目的を確認しなかった。薬剤を全て溶解しているため、5名分が同一色であり、外観からの薬物の判別が出来なかった。
・事象と対応策についての情報共有と、確認行為の徹底をする。・1患者1トレイの原則を守る。・ベッドサイドに行く時は、他の患者のものは持参しない。・電子カルテで与薬直前に、患者氏名・薬剤名・量・時間・方法・目的を声だし指差し確認する。・注入薬は必ずダブルチェックして実施する。・経管栄養を行っている患者が多く、内服薬が多数ある時は、内服用のワゴンを使用し、確認行動が出来るスペースを確保する。・可能な限り溶解置きをせず、実施する時に確認し溶解する。
薬剤間違い-薬剤取り違え
配薬・与薬
担当看護師Xが患者Aの内服薬(ダントリウム25mg、マグラックス330mg、ワーファリン4mg、クラビット500mg)を胃管注入用に水に溶きシリンジに吸い上げ、誤って患者Bのベッドサイドに置いた。看護師Yは患者Bの経管栄養が終わっているのを見て、ベッドサイドにあるシリンジに入った薬剤(患者Aのもの)を投与した。その後、患者Aの経管栄養が終わったため薬剤を投与しようとした際、患者Bのベッドサイドに置いた患者Aの薬剤が誤って投与されたことがわかった。
看護師Xが事前に薬剤を準備し誤って他の患者のベッドサイドに置いた。シリンジには患者名を記載していなかった。看護師Yが薬剤名、患者名等確認せず、投与した。当該病棟では、経管栄養が終わった時に他の看護師が準備した内容が確認できない薬剤でも投与する慣習があった。
・薬剤は投与する看護師が投与する直前に準備する。
薬剤間違い-薬剤取り違え
配薬・与薬
患者Aは、1回配薬を行っており、朝食後、薬を配薬し内服介助を行った。患者AはガスターD錠、ワソラン錠、アルダクトンA錠、ラシックス錠、マグミット錠のみを内服していた。その後、朝食後薬の内容を他看護師に確認してもらった際に、患者Bの内服薬(ワイパックス、アザニン、プレドニン)も投薬したことに気がついた。患者が内服している薬の内容はケアスケジュールシートに記入して確認していたが、朝の内服薬の確認時に処方箋と薬袋を照らしあわせて確認していなかった。また、薬袋の名前を確認せず、薬箱に入っていた内容と薬袋の中身が合っているかのみ見ていた。転院予定であったが延期になった。
まとめていた患者Aの薬袋に患者Bの薬袋が挟まっていた。挟まれているはずはないと思い込み、その患者の薬であるかの確認を怠った。また、患者への配薬時に、何のために薬が使用されているか確認を怠ってしまった。
・内服薬の確認時、処方箋と薬袋を照らし合わせ、6Rの確認を手順通りに行うことを徹底する。
薬剤間違い-薬剤の混入
薬剤の保管
看護師が投薬庫から患者Aの薬袋をまとめて取り出した。その際、患者Bの薬袋が混ざっていたが、薬袋の氏名確認をせずに薬袋から朝食後薬を取り出した。患者Aに渡す際、薬包の氏名、内容を確認したが、薬包のないPTPシート(レナデックス4mg5錠)は氏名確認がなされず、患者BのPTPシートを配薬した。その後、同室者の患者Bからレナデックスを飲んでいないと言うナースコールがあり、看護師が確認したところ誤投与に気付いた。
与薬のマニュアルの手順を怠り、薬袋の氏名確認が出来ておらず薬包の氏名だけ確認をしていた。そのため薬包のないPTPシートの氏名確認がなされずに配薬された。
・マニュアルに沿って配薬する。・6Rを確認して配薬する。
薬剤間違い-薬剤の混入
薬剤の保管
看護師Xは、受持ち患者4名に対し、数時間後に投薬する予定の散剤を順次溶解してシリンジに吸い上げ、それぞれ個別の配薬ボックスに入れて用意していた。水薬は看護師Yが複数の患者分をまとめて用意し、散剤の配薬ボックスとは別のトレイに並べられた状態で用意されていた。看護師Xは与薬時間に訪室する際、患者Aの散剤のシリンジ2本(患者氏名が記名されていた)が入った配薬ボックスと水薬のシリンジ2本を持ち出すべきところ、誤って、患者Bの散剤のシリンジ(無記名であった)1本が入った配薬ボックスと患者Aの水薬のシリンジ2本(記名されていた)を持ち出した。患者Aの病室(個室)前でPC端末上の服薬指示内容と水薬シリンジに記載された患者Aの氏名を確認したが、散剤のシリンジ(無記名であった)及び配薬ボックスに記載されている患者氏名の確認は行わず、患者Aに全て投与した。投与後、配薬ボックスに記載されている患者Bの氏名に気付き誤投薬が判明した。
看護師Yは与薬時間に患者Aの投薬を行おうとして、患者Aの配薬ボックスを一度手にしたが、他の患者の処置を先に行おうと考え直し、配薬ボックスを処置台に戻した。その際、患者Bの配薬ボックスと近接する位置に置いてしまった(元々は離れた位置に置かれていた)。その直後に、その日の日勤の看護師からの電話があり、電話対応を行った。また、看護師Xは夜勤帯のリーダーナースであったため、日勤帯の勤務調整に気を廻さなければならない状況も生じていた。その後、他の患者の処置を終え、患者Aの配薬ボックスを手にするはずが、患者Bの配薬ボックスと取違えてしまった。配薬ボックスの患者氏名は記載が小さく、また、患者Bの散剤のシリンジ自体には患者氏名が記載されておらず、どの患者の物か確認し辛い状況であった。投与直前の確認手順としては、PCの服薬指示画面と投与しようとしている薬剤の種類及び全てのシリンジの氏名を確認し、次いで全てのシリンジの氏名と患者のリストバンドを確認する原則になっていた。しかし、患者AからはMRSAが検出されており感染対策(個室管理)を行っていたため、移動式のPC端末は病室の中には持ち込めず、病室の前で服薬指示と薬剤パック、シリンジの患者氏名を確認し入室する状況となっていた。入室前にすべての確認が終了しているという錯覚に陥りやすく、ベッドサイドではリストバンドとシリンジの確認は行われなかった。
・配薬ボックスを氏名確認のしやすいものに変更する。・随時、処方オーダを見直すこととし、複数薬剤の場合は一包化することを検討していく。以下の院内ルールを、再度、周知徹底した。・投与直前に手に持っている物に記載されている患者名とリストバンドを照合する。・薬剤を準備するときは、1患者1トレイにまとめる。・シリンジに薬剤を準備する際は、吸う前にシリンジに患者氏名を記入する。・無記名のシリンジに準備された薬剤は使用しない。・薬剤の準備は、可能な限り患者への投与直前に行う。
薬剤間違い-薬剤の混入
準備
4年前まで当院を受診されていた患者より、インスリンが連休で切れるため処方して欲しいと、救急外来事務に電話連絡あり、その後現物(ノボリン30Rフレックスペン)を持って来院され、研修医1年目の医師Aが対応した。ノボリン30Rフレックスペンについて、DI情報で検索したところ、DI情報に同じ薬剤が掲載されていた為、当院に採用されている薬剤と思い、電子カルテにて検索したところ、ノボリンRとノボリンNしかなかった。その為、専修医医師Bに確認したところ、ノボリン30RフレックスペンとノボリンRフレックスペンはほとんど同じ薬効であるため、それを処方するよう言われた。疑問に思ったが、ノボリンRを処方し、患者に色が違うがほとんど作用は同じと説明した。当日朝、患者は処方されたノボリンRを36単位皮下注射後、仕事に行くため車を運転中、低血糖と思われる症状が出現(気分不快・意識朦朧)したため、甘い缶コーヒーを飲むなど緊急処置を講じ、朦朧としながら自宅に戻った。帰宅後、血糖値を2回測定したところ、「Low」であったため、食事摂取し、その後血糖値は300mg/dLと改善した。後日、患者が知り合いの薬剤師に確認したところ、間違った薬剤が処方されたことが判明、当院に連絡があった。
研修医・専修医ともに、ノボリン30R注フレックスペンとノボリンR注フレックスペンの薬効についての知識不足があった。当院で処方履歴がない薬剤、処方経験のない薬剤であったが、専門医・薬剤師に確認することなく処方した。専門医や薬剤師へ相談できれば、ノボリン30Rは混合製剤であることや、同じ作用で当院採用の薬剤はイノレット30Rであることを説明できた。当事者は専修医に相談し、ノボリン30RであるべきところをノボリンRでよいとの回答を受けたため、疑問に思ったが他者への相談は憚られた。専修医はDI検索にて当院非採用のノボリン30Rと当院採用のノボリンRが表示されていたため、近似した名称のノボリンRでよいと思い込んだ。結果、患者の状態、治療内容を十分把握することなく、薬剤をそのまま処方した。専門医へ相談していたら、現病歴の聴取や糖尿病の状態を把握するために血糖測定等の診察、あるいは病態を適切に評価した上で処方を行う必要性を説明できた。しかし、専修医に薬剤師や他科専門医に相談する習慣が身についていなかった。
卒後臨床研修センターにて下記1)2)を実施した。1)研修医・専修医は、処方経験がない薬剤を処方する際には、必ず専門医や薬剤師に確認する事を周知・徹底した。2)薬剤のみの処方は無診療処方となるため、必ず診察し処方することを再教育した。電子カルテ文書情報にインスリン製剤一覧を掲載する。血糖降下薬一覧(インスリンの種類と注射のタイミング)を、救急外来の各診察室に掲示する。院内メールにより職員への本事例の周知を行った。
処方
○研修医はDI情報を検索するなど、薬剤について調べる努力をしているが、専門医や薬剤師に問い合わせができるとよかった。○インスリンに関する院内研修・講習や、薬剤部に相談がしやすい体制づくりが重要と思われる。
医療事故
【調剤者】外来調剤でトレシーバを調剤するところ、薬剤を取り間違えてノボリンNフレックスペンを調剤した。そのまま鑑査され患者に渡された。その後、内科外来看護師より薬の確認の連絡があり、間違った薬が患者に渡ったことが分かった。患者はいつもと違うと思い、使用せずに来院した。【鑑査者】インスリンの取り間違いに気が付かずに薬を渡した。
【調剤者】ペン型のインスリン製剤である。名前が全く異なるが、同じようなペン型製剤で、外観のイメージカラーが同じような緑色であり、思い込みで薬剤を手に取ってしまったと思われる。【鑑査者】声だし確認を怠った。緑のイメージで鑑査してしまった。
・薬剤名の確認を必ず行う。・ノボリンNフレックスペンは購入中止になった。
調剤
○経験年数の長い薬剤師はインスリン製剤の色を覚えていて、色のイメージで調剤してしまうことがあるのではないか。○薬剤の配置場所を変えるなどの対策も検討してはいかがか。○交付の際、患者に薬剤を見せて説明をしていれば気づけた可能性がある。
ヒヤリ・ハット
主治医がインスリンスライディングスケールの指示を出した。スケールの単位数を指示簿に記入し、薬剤は電子カルテの処方画面を看護師に見せ、「ノボラピッド」と口頭で指示した。翌日、別の看護師が指示簿に薬剤名がないことに気づき、主治医に確認する。そこで主治医は電子カルテ内のスケール票に単位数を入力、プリントアウトして看護師に渡した。翌日、別の看護師がスケール票には「ノボリンR」、処方されているのは「ノボラピッド」であったため、スケール票が正しいと思い当直医に「ノボリンR」を処方してもらった。夕食前にスケールでインスリン投与となったため、ノボリンRを投与してしまった。
紙の指示簿と電子カルテでの指示が混在している。スケール票を開くと始めから「ノボリンR」と入力されており、間違いやすかった。処方や指示の伝達などルールが守られていなかった。
・スケール票を修正し、薬剤名を抜いたものに変更する。・安全マニュアルに沿った行動の重要性を教育する。
指示出し
○電子カルテ化されていてもスライディングスケールは紙で運用していることがあり、処方と異なる指示になる可能性がある。処方と指示が異なる場合は医師に確認することが基本である。
医療事故
ヒューマログをスライディングスケールで実施している患者。血糖測定実施後、ヒューマリンRのスケールを行っていると思い、インスリン指示簿を食直前注射用のトレイの中ではなく台車の上に置いた。ヒューマリンRの注射を準備している看護師にダブルチェックを求められ確認をしたが、インスリン名は確認しなかった。そのまま患者の部屋へ行き、インスリンを注射する際にも単位は確認したが、インスリン名の確認をしなかったため、気付かずにヒューマリンRを注射した。食直前のインスリンの準備場所に患者のヒューマログがあり、間違って注射したことに気付く。担当医に報告し経過観察となった。
ヒューマログではなくヒューマリンRのスケールと思い込んだ。
・薬剤を取り出す時、つめる時、注射する時の3回確認し、6Rを守り最後まで確認する。・インスリン指示簿にインスリン名を記載する欄はあるが見落とされており、指示簿の見直しも検討する。
指示受け
○入院中、治療の過程でインスリン製剤を変更することはよくあるため、薬剤名の確認は重要である。○今後、新しい製剤が発売される可能性もあるので、薬剤名の確認には一層注意が必要である。○単位数に注目して薬剤名の確認がおろそかにならないよう、指示簿の薬剤名を大きく表示するのも一つの対策である。
ヒヤリ・ハット
毎食直前にヒューマログミリオペン6単位、寝前にランタス注ソロスター14単位を自己注射していた。21時に訪室すると、患者が誤って寝前にヒューマログ6単位を自己注射してしまったと話した。注射前の血糖値は226mg/dLであった。自宅でもたまに間違えて打っていたが、その時はランタスを14単位のままで打ったり、少し減らして打っていたと話す。眼科当直医に報告し、自宅での対処方法でよいと指示を得た。30分後に血糖値を再検し212mg/dLであり、ランタス注を9単位に減らして注射した。
看護師の確認は事後報告であり、投与間違いが今までなかったため大丈夫だと思っていた。ヒューマログとランタスの2種類使用しているため間違いが起きた。
・ヒューマログミリオペンとランタス注ソロスターのキャップに「朝昼夕直前」と「寝る前1回」と記載したシールをそれぞれ貼付する。
患者への説明・指導
○患者は眼科入院中で視覚障害があると思われ、薬剤の自己管理ができるかどうかのアセスメントが重要である。○ペン型インスリン注入器にシールを貼る場合は、貼り間違いやキャップのつけ間違いにも注意が必要である。
ヒヤリ・ハット
糖尿病のコントロール目的にて入院中、当初ランタス注とヒューマログを併用していたが、2週間前よりランタス注のみとなった。患者は視力障害があるが、拡大鏡をペン型インスリンに設置し、単位合わせおよび自己注射を行っていた。朝、本来リーダーである看護師Aがインスリンの準備をするところ、なかなか時間になっても準備をしないためフリー業務の看護師Bが看護師Aに声をかけた。その後他チームの看護師Cもインスリンの準備をしていないのに気が付き、看護師Cがインスリンの注射箋を見ながら薬液を準備した。実施中のインスリン入れには実施する患者すべてのインスリンが入っており、当該患者の名前が貼付されているインスリンを取り出し、16単位準備をした。看護師Aが準備をしようとすると、単位あわせまで行っているインスリンが注射箋と一緒においてあるのを確認した。看護師Bが準備してくれたのだと思い、そのまま患者のもとへ行き、患者名と単位数を確認した。患者に単位数を確認してもらおうとすると「単位が見えない」と言われ、単位数を確認せず自己注射した。その際、インスリンに拡大鏡が付いていないのに気づき、インスリンを確認すると、薬剤が違っていることに気づき、ランタス注ではなくヒューマログ16単位を実施したことが判明した。ただちに主治医に報告、食後2時間、昼食前の血糖値測定の指示があった。患者には低血糖症状なく、食後2時間、昼食前ともに90~100代であった。主治医から追加の指示はなく、その日はランタス注を実施しなかった。
本来実施すべき役割(マニュアル)を違反した。中止になったヒューマログが実施中のインスリンの中に入ったままになっていた。インスリンに記載された名前だけをみた(実施中のインスリン入れに中止になったインスリンがはいっているとは思わなかった)。注射実施時の確認のマニュアル違反があった。
・中止になったインスリンは即座に廃棄する。・夜勤の業務手順を遵守する。・注射実施時の確認を徹底する。
薬剤準備
○作用時間の異なるインスリンを取違えると大きな影響が出ることをあまり意識していないのではないか。○他チームの看護師が薬剤の取り出しから単位数の準備まで行っているが、プロセスの途中で交替することのリスクも考慮するとよいであろう。
医療事故
人工呼吸器を装着し全身管理をしている患者。ヒューマリンR50単位+生食50mL(2mL/h)、ヘパリン5000単位(5mL)+生食45mL(5mL/h)を持続投与していた。夜間3:30分頃、受け持ち看護師Aは、当該患者のシリンジポンプで持続投与中のヒューマリンRとヘパリンの薬液残量が少なくなったので、更新用の薬液、1.ヒューマリンR50単位+生食50mL、2.ヘパリン5000単位(5mL)+生食45mLを各々50mLのシリンジに患者氏名と薬液名を手書きで書いたシールを貼り、患者のベッド足元記録台の上に準備した。その際、ヒューマリンRは「HU-R50U」と略語で記載した。処方箋は薬液シリンジとは別にして同じ記録台の上に置いた。4:00頃、他の患者の体位変換をしていたところ、ヘパリン投与中のシリンジポンプの残量アラームが鳴った。看護師Aが直ぐに対応できなかった為、側を通りかかった看護師Bが「HU-R50U」と記載され準備してあった薬液をヘパリンだと思い、ヘパリン投与中のシリンジと交換した。5:15頃、ヒューマリンRを投与中のシリンジポンプのアラームが鳴った為、看護師Aが交換しようと薬液を探したが見当たらず、ヘパリン投与中のシリンジポンプからヒューマリンRが5mL/hで投与されているのを発見した。BS80でブドウ糖をIVしBS200台まで回復した。
ヒューマリンR50単位を「HU-R50U」と略語で標記してあり、手書きの為RをPと見間違い「HEP50」のヘパリンと解釈した。「HU-R」「HEP」の略語は当院ではルール化された略語ではないが、部署の慣習として使用していた。薬剤と伝票が別々に離れて準備されていた。薬剤投与時、処方箋と薬剤を照合し確認していなかった。
・薬剤を調製しシリンジに準備する際は、シリンジに貼付する薬剤ラベルに、薬剤名をフルネームで表記する。・略語で薬剤名を記載しない。・インスリン持続静脈注射投与の際の薬液表示のルールを定める。
注射の実施
○紛らわしい略語やローカルルールは薬剤間違いの誘因となる。○注射器に準備した薬剤の取違えを防ぐため、注射器を更新する際にダブルチェックをしている医療機関もある。
医療事故
同姓の患者Aに対し患者Bに指示されていたノボラピッド30ミックス22単位を皮下注射した。その後患者Bにインスリンを皮下注射しようとして間違いに気がついた。看護師は、感染の可能性について失念し、マイクロファインプラスを新しいものにして患者Bにノボラピッド30ミックスを皮下注射した。患者A、患者Bは、インスリン自己注射を指導中の患者でありそれぞれ本人もちのインスリンが処方されていたが、自己注射の指導中だったためインスリンは看護師が預かっていた。事例発生後、患者Aと患者Bに対し状況を説明し謝罪した。患者Aは本来ノボラピッド3単位皮下注射の予定だったため、朝までフィジオ35500mL+10%グルコース1Aを朝まで持続投与し1時間おきの血糖測定を行った。血糖値は90-100mg/dLで経過した。感染症の有無を調べるための採血を行い、両患者とも感染症は陰性であった。ウィンドウピリオドを考え6ヵ月後に再度採血を行う予定であり、ノボラピッド30ミックスに血液の混入がなかったか調査を依頼した。
患者が入浴をしたいと言っていたため、看護師はあせってインスリンの皮下注射を行った。又、本来行うべき確認行為(患者氏名、注射伝票、薬剤)を怠った。ノボペンを介しての感染の可能性がある事の知識が不足していた。
・患者確認を徹底する(患者氏名、注射伝票、薬剤を声だし指差し確認する)。・感染症に対する知識を高める。・同姓の患者がいる場合はシールを貼り注意喚起する。・インスリン自己注射を導入する患者に処方されたインスリンは、患者のベッドサイドで管理する。・患者がどの薬剤を何単位使用しているか情報を共有し患者の協力を得る。
注射の実施
○患者Aには本来3単位のところ22単位が投与されており、影響は大きいと思われる。○患者Aに誤ってインスリンを投与した時点で報告ができていれば、その後正しい対応ができたのではないか。○チームでインスリンの投与が確実に行えるように業務量や分担を検討するとよいだろう。
医療事故
リハビリ科入院中の患者A・Bが内科外来受診終了後、主治医は内科医師の診療記録に基づきコンピュータでインスリン指示箋を作成した。その際、患者Aのインスリン指示箋をコピーし、患者Bのインスリン指示箋を作成した。患者名が変更されないままインスリン指示箋が発行された。指示受け看護師はインスリン指示箋の患者名の間違いに気づかなかったが、他看護師が患者名間違いに気づいた。
インスリン指示箋は、オーダリングシステムで作成し、入力欄に入力すると「インスリン指示箋カルテ保管用」「インスリン指示箋控」の2枚が同時発行されるシステムになっている。しかし、内科医師の指示は、既存のインスリン指示箋では血糖値測定指示、スライディングスケールの血糖値範囲、低血糖時の対応指示等の入力ができなかったため、当該内科医師の指示が入力できるインスリン指示箋をコンピュータで作成していた。そのため、インスリン指示箋のコピーを作成することができたので、主治医は同一内科医師の指示であったため患者Aのインスリン指示箋をコピーして患者Bのインスリン指示箋を作成した。主治医は、インスリン指示箋発行後、指示箋の確認を怠った。指示受け看護師は、カルテとインスリン指示箋の患者名を確認しなかった。
・医師は指示入力後、入力した指示内容の確認を徹底する。・看護師は指示受け時、患者名・指示内容の確認を徹底する。
指示出し
○看護師が気づいたためヒヤリ・ハットで済んだ事例である。○指示受けの段階で看護師が患者氏名の間違いに気づくことができれば、更によかったと思われる。○患者Aの指示箋をコピーして患者Bの指示箋を作成できるシステムにも改善が必要ではないか。
ヒヤリ・ハット
部屋担当の新人の看護師Xの時間処置(眠前のインスリン注射)が遅れていたため、指導看護師Yが実施することにした。看護師Yは、インスリンの準備を行い、もう一人の別の看護師Zとダブルチェックを行った。21時過ぎに看護師Yは患者Aの部屋を訪室した。消灯後であったため、スモールライトをつけ、小さい声で、「○○さん(患者B)ですね」と声かけし、患者Aからも「ハイ」と返事があり、患者B本人であると思い込んで、患者Aへ血糖測定を行い、ヒューマリンNミリオペン6単位皮下注射を実施した。その際、患者に氏名を名乗ってはもらわなかった。その後、本来注射をするべき患者Bより、インスリンを打っていないと申し出があり、患者間違いに気が付いた。ヒューマリンNミリオペンは患者Bの持参薬の専用ペン型インスリンであった。さらに、看護師Xは、間違って患者Aに使用された専用のペン型インスリンで、注射針は変えたが、そのまま同じペン型インスリン注入器を使用し、患者Bに指示量の皮下注射を実施した。
新人看護師を手伝おうと、担当部屋患者以外の処置を安易に行ってしまった。準備の段階までのダブルチェックは出来ていたが、消灯後であるからという理由より、実施時のマニュアルに沿った患者誤認予防のための確認行動が不適切であった。(患者の氏名の確認を入口の名札やベッドネーム、患者参加型の確認が行えていない)。実施直後の確認も行えていなかった。間違って別の患者へ、専用ヒューマリンNミリオペンを使用してしまったが、針を変えても、汚染した感染上の問題が生じてくることを判断出来ていなかった。そのため、本来の患者Bへ説明もしないでそのままインスリン注射を行ってしまった。
・患者へ処置を実施する際は、薬剤の名前ラベルとの確認、ベッドサイドでの確認、ベッドネームでの確認、患者参加型確認を実施する。・焦っていたり、気持ちに余裕のないときは、一呼吸を置いてから行動したり、他スタッフへの応援をお願いする。・眠前インスリンなど時間処置は、流れ作業にならないよう、受け持ち看護師が責任をもって実施する。・インスリンについての知識を深め、感染リスク感性を高め、不明な点は他のスタッフへ相談する。
注射の実施
○処置が終わっていない時に消灯すると、患者確認に支障をきたすおそれがある。患者の要望もあるかもしれないが、処置が終わってから消灯することも検討してはいかがか。○インスリンの注射は担当以外の看護師が代わって行うことがよくあるが、間違えた場合の影響の大きさを考慮すると、インスリンの投与は担当看護師が行い、他の業務を代わって行うようにするとよいのではないか。
医療事故
患者は大動脈弁・僧帽弁置換術後、循環器外科で外来フォロー中であった。受診時に易疲労感を訴え、診察前に採血を実施した。診察時Hb7.0g/dLのため、鉄剤を投与され帰宅した。この時、血糖値は検査中となっていた(実際は異常値で再検中)。本来であれば血糖800mg/dLの結果が出たところで検査部よりパニック値として医師に報告されるべきであったが、連絡がなかった。医師もその後、検査結果を確認しなかった。10日後、16時過ぎに患者からだるさの訴えの電話があり、次回予約日を早め受診の指示を患者に連絡した。翌日、医師が前回の検査で血糖値が800mg/dLであったことに気づき、再度患者に連絡し、内分泌糖尿病内科に入院となった。インスリン導入加療にて改善し、その後退院した。
検査部の担当は、入職して日も浅く余裕がなかった。「パニック値」を連絡した際にノートに記載することを聞いていたが正確に理解していなかった。また,昼食時間帯であったため人数が少なく忙しい時間帯であったため記憶もあいまいになってしまった。
・パニック値の判断は1人で行わず、必ず教育指導者に相談して、連絡後は確実にノートに記載する体制を確認した。・新人教育体制を整える。
①パニック値として臨床検査部から連絡がなされなかった事例
グルコース(BS)
外来採血で、PT‐INR7.39で根本値(4)を超えていたが、臨床検査技師は医師に報告しなかった。そのため、ワーファリン2錠(2mg)を投与継続し、10日後、全身的な出血傾向を来し、緊急入院となった。
根本値を超えた場合は、医師へ報告するシステムとなっていたが、報告がなく、継続してワーファリンを服用していた。ワーファリンとジフルカンの相互作用で出血傾向を来す併用注意の事例であったが、併用していた。
・検査異常値(根本値)が出た場合に、検査を実施した人がすぐに根本値であることが判るシステムに変更する。・根本値が出た場合、速やかに主治医に連絡する。・医療の質を落とさないよう、今後も臨床検査技師の教育を行い、誰が検査してもインシデント・アクシデントの起こらないマニュアル作りをしていく。
①パニック値として臨床検査部から連絡がなされなかった事例
プロトロンビン時間国際標準比(PT‐INR)
両側尿管皮膚瘻のステントを抜去して夕方16時頃当院泌尿器科を受診した。家族によると4~5日前より体調不良があった様で、他院に受診を勧めたが本人が拒否し、ステントが抜けていたため、連れてきた様子だった。本人は「何ともない」と言っていたが明らかに脱水様でやや不穏、多弁だった。ステントを再挿入し、ストマケアを行った。意識はしっかりしていたが、容態の悪化を考え入院を勧めたところ、他院に入院を希望されたため、当院に1泊の予定で入院となった。入院後も多弁で看護師が点滴抜去のリスクを考え、看護室脇の検査室へベッド移動した。患者が採血に抵抗したため時間がかかり、18時30分頃検体を採取、点滴治療を開始した。病態は脱水による体調不良を考え、補液による水分補給を行えば回復可能と判断した。意識レベルは特に問題なく会話が成立、時折点滴や検温、食事摂取を拒否する行動や言動がみられ、看護師が交代で観察を密に行っていた。19時45分頃責任番の看護師が病棟巡回を終え再び患者の状態観察のためベッドサイドに戻った。検温、血圧測定をしたところ血圧低下(最高血圧70台)を認め呼吸苦の訴えもあり、他看護師へ声がけし再検していた直後に意識消失を認めた。すぐに医師とともに蘇生を開始した。検査結果を確認したところ、カリウム9.3mEq/Lと異常高値であり、糖尿病、脱水を背景にした高カリウムによる心停止と診断した。ただちに高カリウムの治療としてGI療法、ケイキサレート注腸、体外ペーシングを行い、約20~30分後に心拍回復、自発呼吸は回復した。
検査測定は、18時40分頃検体が到着し、初回測定の検査結果、自動再検結果はともにカリウム(9.3)、尿素窒素(148)と高値であった。検査結果が高値であることを臨床検査技師は確認しており、臨床側にパニック値として連絡する必要があることも知っていたが連絡を怠ってしまい19時34分に結果を送信した。
・臨床側より検査部へ毎回問い合わせる事は困難なため、採血後のパニック値を最初に発見した人が迅速に知らせるシステムの適切な運用が再発予防に重要である。・検査結果のパニック値は検査部から臨床側に連絡をすることになっているため、今後はさらにパニック値の連絡を周知徹底する。
①パニック値として臨床検査部から連絡がなされなかった事例
カリウム(K)尿素窒素(UN)
他院より帯状疱疹の診断で入院要請があり受け入れた。外来受診時、重症丹毒が疑われた。入院とし、血液検査・心電図・胸部X-Pをオーダし、創部処置を実施した。病棟に搬送し、丹毒に対する抗生物質点滴と補液を開始した。同時に採血を実施した。17:30から18:00夜間帯の採血のため、再度入力し直した。採血後、CBC測定用の血液が凝固しているとのことで、再度採血を実施した。患者は意識清明で、末梢に冷感を認めていた。冷汗もあり、呼吸苦はなかった。夜になり、緊急検査室に連絡して検査結果を聞いた。CRPの値が測定上限を振り切っていたため再検中であった。SpO測定と尿測を指示し2た。その後採血結果が出て、炎症所見異常高値、急性腎不全、肝機能障害、CPK異常高値であった。そこで引き続き、凝固系・血液ガス・血液培養採血を施行した。心電図モニタ装着、O2Lカニュラで開始し、SpO2298%であった。血液内科医にコールしたところ、敗血症からのSIRSを指摘され、DICではないとの指摘であった。抗生剤の変更と血糖高値よりヒューマリンRの点滴を開始した。バルーン留置し、尿量は少量であった。敗血症性ショックに対してソルデム1を120mL/hで大量補液した。ICUに受け入れを要請したところ、翌深夜に受け入れ予定とのことであった。BP120/65mmHg、HR150~160回/分。右手末梢ルートよりソルメルコートを開始した。右足に末梢ルートを確保し、レミナロンの点滴、ドパミンを2mL/hで開始した。代謝性アシドーシスを呼吸性代償している状態であったため、メイロンによるアシドーシスの補正を施行した。その後、BP60/38mmHgと低下した。モニタ上脈拍120台であり、意識は清明であった。ドパミンを5mL/hへ増量した。その後、BP40台と低下、意識レベルII-30となり、ドパミンを10mL/hへ増量した。紫斑が出現し、DICが疑われた。
入院時、上級医師から当直医であった医師に十分な連絡がなく疾患の重篤性を十分把握しておらず、他科コンサルト、ICU転棟も思い及ばなかった。本来、パニック値については臨床検査技師の判断で主治医、病棟に連絡することになっていたが、1回目の検査でCRP値に異常があったにもかかわらず、血液凝固があったので再検査依頼をし、パニック値の報告を行わなかった。皮膚科の中で、重症患者について、上級医にコンサルトするシステムがなかった。皮膚科では、救急患者を扱う機会が少なく、救急対応を十分トレーニングされていなかった。
・緊急血液検査は出来るだけ速やかに、採血室もしくは皮膚科外来で採血を実施、評価する。・皮膚科主治医や病棟医長・副医長が速やかに駆けつけられるようにオンコール体制を明確にした。・病棟に医師緊急連絡先一覧表を設置した。また、名刺サイズの医師緊急連絡先一覧表を作成し、常に携帯することとした。・救急治療の必要性が少しでも考えられる症例はICUなど、救急の専門性の高い部署への積極的なコンサルテーションを実施する。・緊急性を要する疾患群を医局会や研究会を通じて自己研鑽に努める。また、医局会や研究会に専門の講師を招聘して、講習会を定期的に実施する。・検査部によるパニック値取り扱いの再確認・パニック値の扱いについて、再度内規の確認、掲示をする。
①パニック値として臨床検査部から連絡がなされなかった事例
C反応性蛋白(CRP)
患者は2歳の時、心室中隔欠損に対し他病院で手術したが、12歳から通院歴はなく検診も受けていなかった。主訴は「寝ていると両手の指先が黒くなり上半身を起こして寝ている」ということで初診であった。15時27分、酸素飽和度94~96%で、重症感はなかった。16時25分、医師Aが診察を担当した。手指は血流が悪く、心雑音があり、ダウン症にともなう心不全を最も考えた。診察ではただちに入院加療を要する状態ではないと判断した。採血、心電図、胸部放射線検査、心エコー検査の結果がそろう2日後に総合診療科受診を予約し診察を終了した。その後、血液検査、心電図、胸部放射線検査、心エコーの順に検査を行い、患者と家族はそのまま帰宅した。医師Aは勤務時間が終了し帰宅した。担当の臨床検査技師Cは血液検査の結果が悪いことに気付いたが、通常通りに確認のため再検査を実施した。18時過ぎに血液検査結果が判明した。グルコース892mg/dL、ヘモグロビンA1c14.7%であった。この血糖値は病院で設定しているパニック値に相当し、ただちに内科に電話連絡したが、誰も電話にはでなかった。また電子カルテを見ると、患者はすでに帰宅していた。患者は2日後に総合診外来に受診予約していたため、臨床検査技師Cはそれ以上報告しなかった。2日後、患者が受診予約をしていた総合診療科の看護師Dは予約患者のカルテを事前にチェックし、患者の検査値を確認し担当医に報告した。予約の時間に来院しないため、患者家族に連絡し救急車を使っても至急来院するよう伝えた。その後、患者は救急外来を受診した。患者は2日前の当院受診後、帰宅してから急に話さなくなり、寝たきりとなり、食事も摂れなくなった。救急外来担当医師Eは患者は高血糖による昏睡状態で肺炎を伴っていると診断し、補液、抗生剤、インスリン点滴などの治療を開始した。
外来の看護師Bは看護師長Gに患者の受診はパート医師か常勤医師か、どうしたらよいか相談した。看護師長Gは、はじめに医師A(パート医師)に診てもらうと判断した。看護師長Gは医師Aにも同様のことを説明した。医師Aは手指のチアノーゼという主訴だったが、一部潰瘍かと思った。ダウン症の初診でベースラインがわからず、心雑音があった。高血糖だという思いに至らず、心不全だと思い重症とは思わなかった。すぐに検査値をチェックするとは考えなかった。臨床検査技師Cはパニック値がでた時に、当日医師に連絡がつかなかった時にどうするか、当直者にこの件を引き継ぐことをしなかった。職場でこういうケースでどうするかを取り決めていなかった。
・外来で夕方や仕事終わりに近い時間帯でアナムネの段階で病状が心配される患者に対しては、パート医師ではなく常勤医師が診察する。・検査室において、内科患者のパニック値については検査結果を印刷して持っていきパニック値であることを報告する。・報告したのかを記載した検査結果用紙を同時に検査室で保管する。・内科以外のパニック値については、今までどおり各科に電話報告を行うことを再確認し徹底することを確認した。・今回の事例のように、依頼科との連絡が取れない場合は救急外来担当医師に報告し、指示を仰ぐこととした。
①パニック値として臨床検査部から連絡がなされなかった事例
グルコース(BS)ヘモグロビン(HbA1c)
他院で胃癌指摘され化学療法を施行し退院した。外来通院と短期入院で化学療法を継続し再入院、シスプラチン注射の予定であった。患者は、2、3日前より体調不良を訴え家族が受診をすすめていたが、予定があり、その後入院するとのことで受診はしていなかった。入院当日、13時48分に入退院予約センターで手続きを行い、採血検査後の14時35分病棟に入室した。14時40分、担当看護師はバイタルサインを測定した。全身倦怠感があり、血圧80/50mmHg、呼吸促迫で経皮的酸素飽和度89%であった。15時に妻より、「つらいみたいで先生を呼んでほしい。」との訴えがあり、担当看護師は主治医の所在を確認するために外来看護師に問い合わせた。しかし、手術中で携帯電話に電話するが繋がらなった。妻には主治医は手術中であると説明した。採血検体は14時30分に受付され15時13分に電子カルテにデータが配信された。臨床検査技師は血中カリウム値がパニック値(6.4mEq/L)であり再検をしたが6.5mEq/Lであったため、15時20分に採血依頼部署である当該科の外来看護師に報告した。外来看護師は、患者はすでに病棟に上がっているため直接病棟に連絡してほしいと臨床検査技師に依頼した。臨床検査技師は、すぐに入院病棟の看護師に報告をした。15時20分、検査室から報告を受けた病棟の看護師は、心電図モニタを装着するために訪室したところ、心肺停止状態の患者を発見し病棟にいた他科の医師が蘇生開始した。担当看護師は手術室に連絡し、主治医は外来医師に応援を依頼した。
患者の重篤な状態報告が主治医以外の医師に報告されなかった。病棟看護師は主治医不在時の連絡方法を知らなった。外来看護師は、パニック値の報告を主治医に報告しなかった。
・重篤な患者状態の場合は、手術室のスタッフに連絡して主治医に報告してもらう(主治医以外の医師に報告する)。・主治医不在時の代行医の連絡方法を把握する。・パニック値の報告手順を周知する。
②パニック値として臨床検査部から連絡はなされたが主治医に伝わらなかった事例
カリウム(K)
中心静脈カテーテル抜去後、呼吸困難、脳梗塞が出現した。カテーテル抜去部から空気を血管内に吸引した事による空気塞栓症が考えられた。抜去目的にベッドサイドに行ったが、患者は座位の状態であり、座位で抜去を行った。止血確認後にシルキーポアドレッシングを貼付した。
医師は座位で中心静脈カテーテルを抜去することが空気塞栓のリスクになることを知らなかった。院内には抜去時の体位、抜去後のドレッシング材の選択等についてのマニュアルがなかった。中心静脈カテーテル抜去時の注意点について、教育されていなかった。
・中心静脈カテーテルの取り扱いに関するマニュアルを作成する。・中心静脈カテーテルの取り扱いに関する研修会の項目に抜去時の注意事項を含めてもらう。
手術の際、右内頚に中心静脈カテーテル(トリプルルーメン8.5Fr)を挿入した。術後4日目16:35、医師と研修医は座位で中心静脈カテーテルを抜去した。その後、硬膜外チューブを抜去し、患者に声をかけたが反応がないため看護師を呼んだ。16:45、末梢ルートを確保した。バイタルサインは、BP106/60mmHg、P73回、SpO73%であった。216:54、気管挿管し、CТを施行した。移動途中指示動作可能になった。17:56、気管チューブを抜管し、四肢の動き、感覚に問題なく、意識レベルクリアで特に障害は認めなかった。神経内科にコンサルトし、CT上、静脈洞内にairはあるが症状をきたすほどではなく、意識消失の原因としては、中心静脈カテーテル抜去に伴う空気流入による塞栓の可能性もあるとのコメントがあった。
今回は、硬膜外チューブと中心静脈カテーテルの両方の抜去をするため、患者の安楽な体位と効率を考慮して座位で行った。中心静脈カテーテル抜去時の空気塞栓に関するいくつかの文献報告があるが、右左シャントを有する場合、奇異性脳空気塞栓症を起こす事もあり、抜去時の注意として、操作部を心臓より下にして行うこと、深呼吸や会話をしないなどがある。これらのことに関して、医師は、知識が不足していた。当院の中心静脈に関するガイドラインでは、挿入に関するマニュアルはあるが、抜去に関する記載はなかった。
・中心静脈カテーテルガイドラインに、抜去時の注意を記載し周知を図る。・中心静脈カテーテル挿入研修会にて、抜去に関する注意点も教育する。
医師は介助看護師と共に患者の自室内で車椅子に乗車中の患者の右内頸静脈から中心静脈カテーテルを抜去した。抜去後皮膚消毒を行い、出血するだろうと予測しガーゼで圧迫を行った。しかし、全く出血が無かったため、おかしいなと思いながらガーゼによる圧迫を看護師と交替した。患者より呼吸困難の訴えがあり、続いて下肢硬直、眼球上転、口唇チアノーゼの症状が出現した。呼吸状態はしばらくして改善したが、下肢硬直は約1時間持続し意識レベルはJCS10程度であった。頭部CTにて矢状洞に空気が存在し、カテーテル抜去後の空気塞栓症によるけいれん発作であると考えられた。
当該医師は、中心静脈カテーテルを挿入した経験も少なく、挿入時は頭低位というのは習った記憶があるが、抜去時に頭低位という知識は無かった。介助についた看護師にも体位についての知識は無く、当該医師が行う処置の介助を行った。回診を医師と看護師の2名で実施しており、車いすに乗車中の患者を一旦ベッドへ戻すためのマンパワーが不足していた。時間的な余裕も無く、車いすに乗車中の患者をベッドへ戻すのは気の毒であると判断し、座位の状態で処置を実施した。今回挿入されていた中心静脈カテーテルが太く、患者は皮下脂肪が少ないため、カテーテル抜去時に空気が流入しやすい状況にあった。
・中心静脈カテーテル抜去時は臥位および頭低位で実施するという原則を遵守する。・医師、看護師に中心静脈カテーテル抜去時の留意事項を再教育する。・診療経験の少ない症例や処置を実施する際には、上司による指導、フォローアップを強化する。
新人看護師は、患者の移動前に中心静脈カテーテルルートのヘパリンロックを行う際、セイフAプラグとセイフCカニューラ間の接続を外すべきところを、延長チューブの間を外した。外した接続部をアルコール綿で消毒中に、患者が呼吸苦を訴えたため他スタッフと医師に連絡した。酸素投与により30分程度で症状は改善した。
本来は点滴をしたまま検査に行くが、当該患者は状態が落ち着いていたため、ヘパリンロックとした。注射の院内認定を受けていない新人看護師が1人でヘパリンロックを行おうとした。新人看護師は前日、中心静脈カテーテルルートのヘパリンロックの見学をしていた。末梢静脈点滴の静脈注射は独り立ちの許可をもらっていたので、指導看護師は中心静脈点滴も同様に考え、1人で実施することになった。ヘパリンロックの手技を新人看護師が実施可能かどうか、スタッフの認識が曖昧であった。ヘパリンロックの手順がなかった。当該患者の中心静脈カテーテルにはスライドクレンメが付いていたが、新人看護師は使用しなかった。処置をした際、患者の体位は座位であった。中心静脈カテーテルルートの処置は基本的には臥位で行うルールになっているが、周知・徹底できていなかった。セイフAプラグがあることで安心し、注意が低下している現状がある。急変時の対応は各部署での教育に任せていた。
・新人の注射実施について、部署認定を受けるまでは監視下で行うことを周知する。・部署認定を受けるまでの過程について明示する。・ヘパリンロックの手順を作成し周知する。・中心静脈カテーテルルートからの静脈注射を含めた基準を作成する。・中心静脈カテーテルルート管理に関する学習会を開催する。・救急患者の対応について、シミュレーション教育を実施する。・新人研修の中で、中心静脈カテーテルルートの取り扱いは項目として上がっていなかったが、当該事例を含め、中心静脈カテーテルルートの事例が続いたため、新人研修の項目とすることになった。
ERCP後、看護師が検査衣からパジャマに更衣介助の際、通常外すべき接続部(シュアプラグ部)が外れなかったため、誤って中心静脈カテーテルの接続部を外した。この時患者は座位で且つ中心静脈カテーテルのクレンメを止めなかったため、カテーテルより空気が混入し、空気塞栓による脳梗塞を発症した。
右内頸静脈より中心静脈カテーテルが挿入されている患者の更衣介助の際、通常外してはならない接続部より外した。この時患者は座位で且つ中心静脈カテーテルのクレンメを止めなかったため、空気が混入した。当該看護師は、座位にてカテーテルを開放することで空気が混入することの知識はなかった。
・中心静脈ルートは原則接続部を外さず看護行為を実施する(看護手順の遵守)。・やむを得ず外す必要がある場合はクレンメを止め、シュアプラグの部分を外す。・中心静脈カテーテル管理についての研修会を実施する。・看護手順を改訂する。
ルート交換日であったためルートを外した。外したルートから空気を引き込み、急いでルートをつなごうとした。直後に呼吸困難感、頸部違和感、眼のかすみ等の症状が発現した。
新人看護師で2回目の手技であった(すでに、研修は終えており1人で行うこととなっていた)。通常、座位では行わない行為であったが、座位で行っていた。中心静脈カテーテルルートは接続部分より一つ上の接続コネクタ(閉鎖系が保てるコネクタ)部分から変えることとなっていたが、その対応もできていなかった。
・看護師に向けて、中心静脈カテーテルの正しい手技を通知文で共有した。・今後、中心静脈カテーテルの扱いについて、ダブルチェック体制化、もしくは、講義・研修受講者のみ扱える資格制にする運用へ変更する予定である。
9時20分頃から仰臥位で包交、三方活栓を交換し、その後患者は座位になった。看護師は10時20分頃にカテーテル(赤)の三方活栓の蓋をはずし、血栓溶解剤を接続する前に、シリンジポンプを早送りして延長チューブ内の空気を除去した。この時、患者は意識消失し、救急処置を開始した。11時頃のCT上、脳の小動脈(主に右半球)に空気塞栓が判明した。
患者の中心静脈圧が大気圧より低くなったことによる空気の引き込みと考えられる。
・中心静脈カテーテルルートに逆流防止弁及びフィルターを設置する。・輸液等の操作は仰臥位で行う。
他院で血液透析用のブラッドアクセス留置用カテーテル(商品名:ブラッドアクセスUK-カテーテルトリプルルーメン外径4.0ミリ)が右内頸静脈に留置されていた。入院時に医師が患者を診察したが、中心静脈カテーテルはガーゼで覆われていたため、カテーテルの種類を確認することはせずに、高カロリー輸液の点滴に通常使われるカテーテル(外径2ミリ前後)が挿入されているものと思い込んだ。看護師は、高カロリー輸液の再開を指示されたので、輸液を準備したのちに患者のベッドサイドを訪れ、座位になっていた患者に声をかけながら中心静脈カテーテルの状況を確認した。カテーテルの外観が、当院で通常使っているものとは違っていることに気付いたが、透析用の太いカテーテルが入っているとは思いが及ばず、他院ではメーカーの違うカテーテルを使っていると考えて、他の看護師や医師に相談することはしなかった。そして、患者を座位にしたまま、まずカテーテルのキャップを取り外し、いつもと同じ手順でカテーテルのクランプを外し、注射器を繋いでヘパリン加生食水をフラッシュしようとした。その時、患者が突然意識を消失し、前のめりに倒れ込みそうになった。看護師は、前に倒れ込もうとする患者を支えるために、持っていた注射器を手放して手を差し伸べたが支えきれず、患者は前屈みの姿勢のままベッドに倒れ込んだ。応援要請の緊急コールを行った後に、救急処置のため患者を仰向けにしたところ、カテーテルから注射器が外れており、患者が大きく息を吸い込む音を看護師は聞いた。緊急コールで集まった医師たちが、意識消失発作の原因検索のため種々の検査を行ったところ、心臓エコー検査で心臓内にエアーが混入している所見を認め、血管内に空気が流入して重要臓器の急性機能障害を来し、それにより意識消失発作が生じたものと推定した。その後、詳しく心臓エコー検査を行ったところ、心房レベルで右左シャントが認められ、中心静脈に流入した空気は右心房から左心房、そして左心室を経由して体循環に入り、その一部が脳に到達して脳梗塞を生じたものと判断した。後日、画像診断においても脳梗塞の所見が認められた。以上の経過から、カテーテルのクランプを外した時点で、一瞬ではあるがルートが大気下に開放されており、また座位であったことも影響して空気を吸い込みやすくなっていたため、注射器でヘパリン加生食水をフラッシュしようとした直前に、患者の中心静脈に空気が流入して意識消失発作を生じたものと考えた。
マニュアルの不備があった。当院では、中心静脈カテーテル挿入・留置した時には、感染防止と針刺し予防のため静脈ライン用コネクタ(商品名:シュアプラグ)を装着して閉鎖回路とすることを推奨している。したがって、クランプ解除と注射器接続の順番をマニュアルに厳密に規定していなくても、空気流入などのトラブルが発生することはなかった。この安全策が、現場での作業手順が曖昧なままでも問題を生じないため、これが却って盲点になっていた可能性がある。また、心不全などによって座位のままで中心静脈カテーテルを処置しなければならない患者も少なくなく、カテーテル操作時は臥位を基本とすることを徹底していなかった。関係者の情報共有が不十分であり、他院からの診療情報提供書には、中心静脈カテーテルの状況に関する記載はなく、当院の受け持ち医は白血球除去療法については別ルートで行ったものと理解して、中心静脈には点滴用のカテーテルが留置されているものと思い込んでいた。一方、看護師の申し送り書には、透析用カテーテルの商品名である「バスキャス」の記載が2か所あったが、当院で採用している商品ではないため、これを透析用の太いカテーテルであることを理解できたのは、比較的経験のある看護師に限られており、今回最初に患者を受け持った看護師は「バスキャス」が何を意味する言葉なのか判らなかった。当院では、透析用のカテーテルは「FDLカテーテル」もしくは「ブラッドアクセス」という呼び方をしているが、後日調査したところでは、当該病棟の約半数の看護師は、「バスキャス」という商品名を知らなかった。
・注意喚起文を作成して院内に周知した。・安全管理対策委員会、及びリスクマネジャー会議にて、事例の概要を報告して情報の共有を図った。・関係するマニュアルの改訂に着手し、中心静脈カテーテルに関する取扱いについて見直す。・従来から行っている中心静脈カテーテル挿入に関する講習会と連携して、看護職を対象としたカテーテル管理に関する研修の実施を計画する。・当院の安全管理担当者が紹介元の病院を直接訪問して、先方の安全管理担当者および主治医と情報共有する機会を持った。
11時に中心静脈カテーテルのルートを交換した。13時にCT撮影のため移動した。医師は、CT検査台に移動時、中心静脈カテーテルルートのコネクタが外れて点滴が漏れていることに気づいた。点滴を止めたが、患者側の末端には閉鎖式のキャップと思いこんだものが、実はコネクタ(ねじ式ロック)であったため、ルートが開放の状態となった。その状態でCT検査を施行した。病棟帰室後、車椅子からベッドに端座位になった直後、全身チアノーゼ、意識消失、痙攣を起こし、数回の換気で蘇生し、意識が回復した。その後頭部CTや神経学的諸検査を施行した結果、異常所見は認められなかった。
知識不足や思い込みがあった。
・静脈ライン用コネクタ(インターリンクシステム)の技術・知識習得の場を設ける。・複数の医師等による確認を行う。
食道裂孔ヘルニアがある患者に、医師がエンテラルフィーディングチューブを挿入した際、挿入困難があった。数日後、チューブの入れ替えをしたが挿入困難で中止した。翌日、再度挿入をしたが、食道で反転していたため抜去した。再々度挿入したが、エックス線写真で気管に迷入していたため、抜去した。何れの挿入時にも、咳嗽反射はなかった。その後、Sp0が70%まで低下し、胸部エックス線2とCTで気胸を発生していることが分かった。
咳嗽反射が低下している患者で気管に迷入する可能性があった。食道裂孔ヘルニアがあり、挿入困難であった。エンテラルフィーディングチューブはガイドワイヤー付きであったため、穿孔のリスクがあった。転院前に入れ替えを実施した経緯があり、消化器医師へコンサルトする時間的余裕がなかった。
・食道裂孔ヘルニア患者にエンテラルフィーディングチューブを挿入する際は、挿入困難が考えられるため透視下で行う。・咳嗽反射のない患者にエンテラルフィーディングチューブを使用する際は気管迷入のリスクがあり、患者の状態を観察しながら無理な挿入はしない。必要であれば透視下で行う。・エンテラルフィーディングチューブの挿入は医師が行い、留置の確認をエックス線撮影で行う。
障害なし
右下葉肺腺癌切除手術目的にて手術室へ入室し、全身麻酔を施行し、気管支鏡を挿入して切除する右気管支を確認後、ダブルルーメンの気管チューブを挿入し、片肺換気を開始した。その後、体勢を仰臥位から左側臥位に体位変換し、16Frのセイラムサンプチューブを挿入した。最初に挿入した時には抵抗があり、麻酔科医を替えて再度挿入を試み、胃管が挿入できた。胃内容物は吸引できなかったが、口腔内に胃管がとぐろを巻いていたり屈曲していないことを確認した。更に10mLのシリンジにて気泡音の聴取をすると、音は小さいものの確認でき、胃管より呼吸音は聴取できなかったので、胃内に挿入できたと判断した。右肺下葉を切除後、手術室内で呼吸器外科医師が検体処理中に、摘出検体より胃管の断端と思われる異物を発見した。術者及び麻酔科医師に報告し、切断面を確認したところ、胃管の一部が見つかり摘出する。口腔から抜去した胃管と検体から見つけた断端、切離断端から摘出した一部が一致することから、体内に胃管の遺残のないことを確認し、切離面を再縫合した。
側臥位で胃管を挿入したため、気管支に入りやすかった。胃管を挿入した際に、胃内容物が引けず、気泡音も小さいという、胃内留置が不確実であるにもかかわらず、胃管から呼吸音を認めなかったために胃内に留置されたと判断し、他の麻酔科医師に相談せずに手術を始めてしまった。気管チューブのカフが障害物となるため、胃管が気管支内に挿入されることは稀なケースであったため、気管内に挿入したという認識がなく、他の医師に確認してもらうことを考えなかった。
・胃管の挿入は仰臥位で行い、その後、側臥位をとる。・胃管挿入後の気泡音の確認は、2人の麻酔科医師で聴取し確認する。・気管支鏡による気管チューブの位置確認を行う前に胃管を挿入し、気管支鏡挿入時に胃管が気管内に挿入されていないことを確認する。
障害なし
患児はAMLで強化療法を受けていた。当日は、朝から嘔気があり、制吐剤を使用して内服を試みたが、3回嘔吐した。母親、医師と相談し、母児の同意のもと、看護師Aが児を抑え、看護師Bが胃管を挿入した。半分ほど挿入したところ激しく啼泣し、飲み込みの協力が得られなくなった。そのため、ゆっくり32cmまで挿入した。吸引しても胃液は引けず、看護師2名で気泡音聴取を数回確認するが聞こえなかった。口腔内に胃管はなかったため、児の啼泣と咳嗽が収まるのを待って再度確認することにした。その後、留置状況を確認した際、胃液様の物が胃管の半分まで引け、気泡音は3回目で聴取できたため胃内に入っていると判断し、内服薬5mLを注入した。抵抗なく注入できたが、咳嗽が多く粘調痰が多量に喀出された。しばらくすると咳嗽も落ち着き、患児は入眠した。その後、他看護師により2回内服薬が注入された。翌朝の回診で胸部エックス線写真を撮影することになり、撮影したところ、気管に胃管が挿入されているのが分かった。
患児は強化療法の影響で吐き気が強く普段であれば内服できる薬を嘔吐してしまい、内服できない状況にあった。また、過去の治療中にも内服ができない時は、胃管を挿入し与薬していた。看護師Bは、胃管挿入の経験が浅く、不慣れであった。院内の業務基準では、「1.胃内容物の確認、2.胃内の空気音を確認する、以上の2点が両方なければ、エックス線撮影による胃管先端の確認を行う」となっていたが、1、2の確認が不確実であるにも関わらず、与薬を実施した。
・業務基準に則り行動し、不確実な状況では胃管を抜去する。・エックス線で胃管の先端を確認するまで内服薬を与薬しない。
障害残存の可能性がある(低い)
医師は胃管の入れ替えを行ったがうまく入らなかったため、時間をかけて何度もやり直した。看護師が交代して経鼻胃管の挿入を行ったところ、何とか入った。院内基準に従って、送気音、挿入の長さ、口腔内のたるみがないことを確認した。医師も送気音を確認し、胃管が胃内に挿入されていると判断した。看護師は経管栄養を開始する際、事前に送気音を確認し、投与した。25分後、看護師が巡回したときは、患者は顔色異常なく、咳込みなし、呼名に対して「はい」と返事があった。さらに25分後、看護師は経管栄養の終了を確認しようと訪室したところ、呼吸停止している患者を発見した。医師を呼び心停止を確認した。口腔内から栄養剤が吸引されたため、死後にエックス線検査、CT検査を実施し、胃管が左気管支内に挿入されていたことが分かった。
院内の基準が送気音による確認、挿入の長さの確認、口腔内のたるみの確認だった。患者は誤挿入のハイリスク患者で咳嗽反射が低下、抑制されていた。ハイリスク患者に対する確認が基準化されていなかった。
・患者のリスク評価を実施する(ハイリスクとは意識障害、認知機能障害、嘔気・嘔吐がある、麻酔・鎮静剤投与中、気管内挿管中、嚥下機能低下、咳嗽反射が弱いなど)。・患者、家族への説明と同意を行い、経管栄養の意義、胃管の気管への迷入や誤嚥のリスク、その他対処法などを説明する。・胃管による経管栄養は、原則1ケ月程度の代替栄養を行うことを目的とする。・挿入実施者は当面、全例医師が実施とし、実施時間は日勤帯とする。
死亡
右頬粘膜切除術終了時、術後経管栄養目的で気管挿管中に経鼻胃管を挿入した。通常、麻酔科医により気泡音の確認を行うところ1年目看護師が気泡音の確認を行った。気泡音が心窩部で聴取できたため、医師へ音が聞こえた旨を伝え45cmで経鼻胃管を固定した。胃管を挿入した場合、必ず胸部エックス線撮影を行うことが院内の取り決めとなっていたが、手術室で挿入した場合に、手術室内で撮影するとは決まっておらず、特に耳鼻咽喉科においては退室後に撮影することが通例であった。主治医は手術室入室後に手術室での胸部エックス線写真撮影のオーダを入力していたが、手術室看護師へ伝えていなかった。手術室看護師は手術室でエックス線撮影を行う認識がなかったため、撮影連絡をしないまま退室準備が終了した。そのため主治医は、手術室撮影のオーダを退室前に削除した。帰室後も、胸部エックス線撮影もしくは術後喉頭ファイバーでの挿入経路確認は行わなかった。術後1日目、朝食より経管栄養開始の指示があった。夜勤の看護師は、留置位置が浅いのではないかと思い主治医へ「いいのか」と確認したところ、「いいです」との返答であった。夜勤看護師はこのことを早出看護師(2年目)へ申し送った。早出看護師は、45cm固定の位置確認を行い、気泡音を確認したところ音が聞こえたため問題ないと判断し、経管栄養を開始した。開始後、息苦しさなど変わった様子はなかった。9:15トイレコールあり、日勤看護師がトイレへ付き添った。トイレ後、自ら病室へ戻ってベッドに臥床し、咳嗽が見られた。その後も咳嗽あり、誤嚥の可能性があると判断した日勤看護師は、経管栄養剤(残量300mL、注入量約100mL)を直ちに止めた。SpOは69%と低下して2おり、直ちに酸素投与を開始し、鼻腔と口腔内より吸引を実施した。また、主治医へ報告し、応援要請にて対応した。患者の処置を行い、12:30胸部エックス線撮影を行い主治医が画像を確認したところ、胃管先端が右気管支に挿入されていることが分かった。
院内ルールである胃管挿入後の胸部エックス線撮影を経管栄養開始前までに実施されなかったことが最大の要因である。手術室で胃管を挿入した場合に手術室でのエックス線撮影が必須でなかったことが、共通認識の欠如となった。もし、手術室でのエックス線撮影が必須であったならば、看護師もその認識で手術室を退室することなく、医師への確認作業が行えたと考える。また気管挿管中の胃管挿入であったため、気管内に入る可能性は低いと考え、留置後の気泡音確認だけで判断したことも要因となった。さらに気泡音の確認は、本来麻酔科医師にて実施されるところ、経験が浅く気泡音を確認したことのない1年目看護師に実施させたことも問題である。翌日、正しく胃管挿入されている気泡音を再聴取させたところ、全く違った音であったことが分かった。胃内容物の吸引を実施することを院内ルールにしているが、実施されなかったことも誤挿入に気付けなかった要因の一つと推察される。当日経管栄養を開始した看護師(2年目)も、肺に誤挿入されている音を聞き分けた経験はなく、主治医の「いいです」という返答を信頼し、疑問を持つことなく開始している。これも気付けなかった要因の一つと考える。
・気管挿管中であっても、胃管を気管支へ誤挿入されることがあるということを認識する。・気泡音は肺へ誤挿入されていても、気泡音として聴取可能であることを認識する。・院内ルールである胃管留置後のエックス線撮影を徹底し、医師は読影の結果を電子カルテへ記録する。・手術室で胃管挿入した場合は、手術室でのエックス線撮影を院内ルールとして追加する。・気泡音は3カ所確認(1.右下肺野、2.左下肺野、3.心窩部)を基本とし、気泡音(ゴボッという音)が聴こえるかと最強音が心窩部であることを確認する。・胃液(胃内容物)の吸引を行う。・看護師は注入液を入れる前に胃管のマーキング位置が正しいことと胃液の吸引、気泡音3カ所の確認を行い電子カルテに記録する。
障害残存の可能性がある(高い)
朝の注入終了後、看護師が交換のため胃管を抜去した。過去2回の挿入はスムーズであったため、医師の指示で看護師が実施することになった。右鼻腔より前回使用と同じ胃管12Frで挿入開始したが、20~30cm挿入したところで抵抗があった。8Frに変更したが同様に抵抗あり、挿入困難であった。担当研修医と病棟医Aがスタイレット付き胃管(コーフローフィーディングチューブ10Fr)を挿入した。40cm程度挿入したところで抵抗感を感じることが2、3回あったが、頭部の位置をずらしながら何度か挿入を試みた。抵抗感なく挿入できる位置があったため挿入し、55cmまで挿入した。胃管から空気を注入したところ気泡音の聴取はあったが、胃管から胃液は吸引できなかった。胸部エックス線写真にて、胃内ではなく左気管支に誤挿入していたため直ぐさま抜去した。その後、病棟医Bと共に再び胃管挿入を試みた。再度胃管を挿入し、抵抗なく鼻腔から50cmまで挿入した。確認のため胃管から空気を注入したところ気泡音の聴取ができた。胃管から注射器で吸引すると薄赤色漿液性の液体が流出し、酸臭に乏しいこと、100mL以上吸引されたことから、胸腔内に先端が迷入した可能性も疑い、胸部エックス線写真にて位置確認を行ったところ、1回目の撮影と同様に左気管支に誤挿入されていることを確認した。吸引された液体が胃液か否かの判断のため、テステープにてpHを測定したところ、pH7.5程度であり、胃液の可能性は低く、状況から胸腔穿破を生じ胸水が引けたものと考えた。緊急胸部CTを撮影したところ、気管から左主気管支~底区枝を経由し、左肺下葉実質内~左胸腔内、背側へチューブが挿入されていた。呼吸器科へコンサルトし、抜去すると緊張性気胸になる危険性があったため、胸腔ドレーンを挿入、持続吸引を行った。
硬化性粘液水腫のために頚部の屈伸が困難であり、さらに意識障害があり、一般的に気管内に胃管が入ってしまった場合に生じる咳嗽反射などが生じないという点から、挿入に伴う難易度は高かった。サイズが小さい胃管のためカフと気管との間を胃管が通りえた。長期間の人工呼吸器管理により肺が脆弱であった。普段使用していないスタイレット付きの胃管が通常の胃管よりコシがある分、穿孔のリスクが増加することについて十分な考慮が足りなかった。研修医や経験の浅い医師しかおらず、上級医が不在な状況で実施した。初めて使用する胃管であったが、添付文書を読んでいなかった。
・挿入が困難な場合は無理に挿入を継続せず、一度挿入を中止し、上級医と相談し、透視下での挿入を検討したり、他科に相談して内視鏡的手技を併用することなどを考慮する。・通常胃管の交換は2週間毎に行っているが、意識障害などで挿入が難しいと予想される患者については、胃管の位置がずれていたり、経腸栄養滴下時に滴下が不良である、血性成分が吸引される、鼻粘膜に潰瘍形成などの異常がなければ、胃管交換の間隔を長めにする。
死亡
エンテラルフィーディングチューブ(EFT)の交換をした。患者に、咳込みがあったが、顔色などを観察し咳込みが落ち着いたところで、胃液が吸引できるか注射器で吸引を試みた。胃液は引けなかった。胃管の位置確認のため、ガストログラフィンを注入した後、エックス線撮影したところ、肺に誤挿入されているのを発見した。酸素飽和度の低下があり酸素吸入開始、モニタ管理、絶食とし輸液管理となった。
患者は横隔膜ヘルニアがあり、月1回のEFT交換時、ガストログラフィンを注入しエックス線撮影で確認していた。5年間同じ方法で確認していたが、今まで誤挿入はなかった。患者家族へ処置に対するリスクを前もって説明していなかった。記録にも残されていなかった。
・EFT交換など、処置に関するリスクは、患者・家族へ説明し、同意をもらってから行う。・胃内容物が引けないときには、気泡音を聞き、確認できないときには単純撮影を行い胃管の位置を確認する。・EFT交換が難しい事例は、透視下で処置を行う。
障害残存の可能性なし
入院3日目、当事者は栄養目的にて胃管を挿入した。胸部エックス線写真で胃管の先端を確認し、確認したことをカルテに記載し、看護師にも伝えた。翌朝、担当看護師は気泡音の確認のみ行い、5:30頃から経管栄養を開始した。約30分後から酸素飽和度が低下し始めたため、酸素流量を出ていた指示に従い調節し状態を観察した(昨夜から時々酸素飽和度が低下し、酸素流量を指示に従い調節していた)。酸素流量を指示に従い増量しても、酸素飽和度の上昇が悪くなってきた。他の看護師に気泡音の確認を依頼し、気泡音の確認ができたため、経管栄養300mL全量注入した。8:30日勤の看護師に申し送りを行った。その後、来棟した整形外科医師に状態を報告した。胸部エックス線写真、胸部CT撮影の結果胃管の誤挿入が発見された。
医師は胃管挿入後の院内マニュアルに沿って、胸部エックス線撮影を実施している。そのエックス線写真の確認では胃管の先端は胃内であるとの判断であった。この確認段階では誤挿入に気付かなかった。エックス線写真の確認は画面の小さいノートパソコンで行った。胃管を挿入した夜に患者から、息苦しさの訴えがあり酸素飽和度の低下があったが、看護師は頸髄損傷の病態から起こっていることと判断し、出ていた指示に従い酸素の流量を調節して対応していた。経管栄養注入開始の確認では、気泡音の確認のみ行い、胃液の確認は行っていなかった。経管栄養を開始後30分頃から酸素飽和度が低下してきたことに疑問を感じ、他の看護師にも気泡音の確認をしてもらったこと、カルテでエックス線写真で胃管を確認したことの記載を確認し経管栄養を続行した。
・再度院内マニュアルの周知を徹底する(胃管の挿入、交換も含め、必ずエックス線撮影を行い胃管の先端を確認することになっている)。・エックス線写真確認時の指さし呼称をする。・経管栄養開始時の手順を見直す。・「胃液の確認」「気泡音の確認」以外に確認項目を検討する。・胃液が引けない時の対応の統一を行い、チェック票導入を検討する。
不明
左下顎骨関節突起骨折に対し、全身麻酔下に観血的整復術および経鼻胃管を留置した。経鼻胃管は3回目にようやく抵抗なく挿入できた。腹部聴診において送気による空気注入音を確認した。その後、患者が頸部違和感を訴えていたが、気管挿管による咽頭刺激症状と考え経過観察とした。翌朝、経管栄養開始となり留置した胃管より濃厚流動食のアイソカルを注入した。直後より嘔気を認めたが、注入速度を緩徐にすることにより改善したため注入を継続した。注入開始から約50分後に訪室すると、強い咳嗽、白色の排痰、SpOは90%前後に低下したため注入を2中止(130mL注入時点)した。胸部エックス線撮影を行ったところ、胃管先端が左気管支へ誤挿入されていることを確認し、抜去した。
医療安全マニュアルにおいて胃管挿入時の確認は、内容液のpH測定またはエックス線撮影により確認することが定められているが、今回は送気による聴診の確認しか行われなかった。当事者は、術中の気管挿管時であり気管が塞がれている状態では、気管への誤挿入の可能性はないと判断した。また、マニュアルの周知が不十分であり、当事者はこのマニュアルの存在を知らなかった。手術室で胃管挿入される術式のほとんどはガーゼなどの遺残確認のためエックス線撮影が行われ、同時に胃管先端の確認が行われる。しかし、今回の術式のようにまれに胃管挿入されるにも関わらずエックス線撮影されない術式が存在していた。手術室と病棟間の連携において、胃管の挿入確認の有無についての情報が不十分であり、病棟では手術室において、胃管は正しく挿入されていることを確認していると理解しており、発見が遅れた。
・医療安全マニュアルを遵守し、胃管挿入時には内容液のpH測定またはエックス線撮影による留置の確認を徹底する。・マニュアルの周知方法について検討する。・手術室で胃管挿入されるにも関わらずエックス線撮影されない術式について検索し、該当する術式を施行する診療科については胃管挿入時の確認の重要性を周知する。・手術室と病棟間の連携において、胃管挿入患者については挿入確認の有無について申し送ることを徹底する。
障害残存の可能性がある(低い)
呼吸不全のため気管切開され、ICUから病棟に転棟した。末梢点滴と、胃管から経管栄養が注入されていた。6時頃、胃管が抜けていたので、看護師は再挿入し、空気注入音による確認を行った。その後、当直医に報告し、エックス線のオーダをしてもらったが、撮影や挿入位置の確認までに低血糖になることを恐れて20mL/hで経管栄養を開始した。その後、エックス線撮影(ポータブル)の結果、胃管が気管内に挿入されていることが分かり、栄養剤注入は中止、酸素開始となった。
胃管が抜けていて、再挿入した際に、エックス線で確認するまで栄養剤の注入を止めておかなかったため気管内に注入した。
・胃管など巡視の時間に抜けているか否かの確認を強化し、巡視の時間を頻回にする。・胃管抜去について医師の指示に従う。
障害残存の可能性なし