具体的内容
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背景・要因
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改善策
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記述情報
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専門分析班・総合評価部会の議論
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吸入酸素濃度
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人工呼吸器※
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詳細
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参照
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事例の分類
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注釈
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種類
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研修医の情報
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発生要因
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大量メソトレキセート療法を行った際、利尿薬の選択として本来避けるべきであるフロセミド(ラシックス注)を使用してしまった。結果として腎障害、メソトレキセートの排泄遅延が生じた。
レジメンプロトコールは、原則支持療法を含めて作成されているが、当該診療科においては、支持療法は別に作成されていた。医師Aは、化学療法、支持療法のオーダ入力の経験がほとんどなく不慣れであった。化学療法及び支持療法のオーダは、医師Bが行っていた。医師Aは、メソトレキセート投与時の尿のアルカリ化と輸液によるWashoutは理解していたが、利尿剤の選択にあたって、酸性化する薬剤(フロセミドの使用)を避けるという事を理解していなかった。化学療法の入力は、がん専門医である指導医によるチェックを行っている。今回、医師A、医師Bが1週間交代で休暇を取った。通常オーダを行う医師Bが休暇を取るため、医師Aによってレジメンオーダの入力が行われた。医師Aは、支持療法の理解が不十分であると判断し、2日目以降の支持療法を先にオーダした。1日目が未完成の状態であったが、すでにオーダ済みであると医師Bに報告した。その際、医師Bはがん専門医である指導医Cの確認を受けるように指示した。その後、骨髄抑制のため化学療法の開始が1週間延期された。1週間後、化学療法開始前に指導医Cはレジメンオーダを確認したが、支持療法の確認はしなかった。血液検査の結果、化学療法がさらに延期され、医師Aが休暇に入る際、医師Aから医師Bにオーダ内容の確認を受けるように申し送ったが、その際、1日目の支持療法の入力ができていないこと、支持療法について指導医Cの確認を受けていないことを伝えていなかった。医師Bは、指導医Cによる化学療法及び支持療法のチェックはすでに受けているものと誤認し、確認依頼を聞き流しプロトコルと照らし合わせての確認を行わなかった。その後、医師Bは初日の支持療法が入力されていないことに気付いたが、延期前の化学療法が火曜日開始であったため支持療法の入力が1日ずれているものと誤認し、支持療法のオーダを前倒しにした。薬剤師による注射処方の監査において、レジメンの確認はできていなかった。よって疑義照会は行っていなかった。この結果、本来、1日目の大量輸液、ダイアモックス注射用による利尿、2日目以降はメソトレキセートの血中濃度が下がったことを確認後、大量輸液+ラシックス注による利尿を行うべきところを、1日目から大量輸液+ラシックス注による利尿となり、腎障害を生じた。
・化学療法および支持療法入力の際は、必ず複数の医師で確認をするとともに、確認したかどうかのチェックも徹底する。・レジメンプロトコールを再検討し、支持療法を含めたプロトコールの作成を行う。・病棟常駐薬剤師により時系列での処方の相互作用についてチェック体制の強化を行う。
支持療法の間違い
○医師は腫瘍用薬の処方に注意が向くため、支持療法の内服薬の処方忘れが生じるのであろう。○腫瘍用薬のレジメンに支持療法で投与する薬剤を含んで登録している医療機関もある。○メソトレキセート投与時の利尿剤の選択にあたって、メソトレキセートの処方に慣れている医師はラシックスなど尿を酸性化する薬剤の使用を避けることは、当然に知っている事柄であるが、事例のように経験の少ない医師には支援する体制が必要である。そのため、薬剤師からの情報提供や疑義照会が重要である。
医療事故情報
歯科医師は、左下8のメタルコアの試適の際に口腔内にコアを落とした。胸部エックス線撮影で、右気管支に不透過像を認め、他院救命救急センターに搬送した。CТ撮影後、全身麻酔下で気管支内異物除去術が行われた。
修復物の試適・装着時には、ガーゼスクリーンやラバーダムで誤飲・誤嚥を予防するが、できていなかった。
・口腔内での装着操作では、落下事故が起こる可能性があることを意識する。・落下事故は、水平位診療が最も多いことを認識する。・ガーゼスクリーンやラバーダム使用による予防を徹底する。・落下しやすい小器具には、チェーンや糸など落下防止器具を装着して用いる。・洗浄針などの緩みを処置前に確認する。・落下事故発生時には必ずエックス線撮影を行い、内科医師の診断を受け、最終排出まで確認して診療録に記録する。
nan
歯科医師は、印象用のコーピングを外す際に誤って口腔内に落としてしまい、患者が誤飲してしまった。
しっかり把持しておくべきだったが、落としてしまった。ラバーダム等を装着せず、コーピングに糸を通していなかった。
・ラバーダム等の使用や、コーピングに糸を通しておくことを推奨する。・誤嚥時の対応フローチャートを作成する。
nan
左下3歯冠修復処置時、研修医1人で歯科用エアータービン及び形成用バーにて歯牙を切削中、タービンから形成用バーが外れ、舌後方口腔内へ落下した。目視にて口腔、咽頭にバーを確認できず、誤飲したと判断し上級医に報告した。確認のため胸部・腹部エックス線撮影をしたところ、胃内にバー様の不透過像を認めたため、消化器内科医師に相談し、内視鏡下でバーを摘出した。落下したバーによる患者への影響はなかった。
使用前に、形成用バーをタービンに装着した際の確認不足であり、奥まで挿入していなかった。バーの把持状態の確認不足であり、バーを下に向けて空回しして、外れないことを確認していなかった。担当指導医が不在時に、経験不足の研修医が単独で処置にあたっていた。診療補助者がおらず、1人で歯牙の切削を行っていたため、バーの落下に対する対処が遅れた。
・歯科用タービンの器械の点検を実施したが問題はなかった。・点検表を作成し、月1回定期的にハンドピースの点検を実施する。・歯科用タービンハンドピース使用時の注意事項、チェック事項、歯科治療中の誤飲・誤嚥予防策を医局員、外来スタッフ全員で再確認し、実施を徹底した。・原則として研修医は担当指導医と一緒に診療することを再確認し徹底した。・シフトを点検し、指導医と研修医が一緒に診療できるようにした。・歯科口腔外科診療における医療事故防止マニュアルを整備し、医局内で研修会を実施した。・マニュアルは縮小印刷し、病院の医療事故防止ポケットマニュアルに挟み携帯し、常に確認できるようにしている。
nan
歯科医師が口腔内を歯石除去中に、エアスケーラーのチップの先端が破損した。破損確認後、直ちに患者の口腔内を確認し、口頭での状況確認と洗口の指示をしたが、破損片は確認できなかった。スピットン内や周囲を捜索したが、破損片は発見されなかったため、院内の医科を受診し、胸部・腹部エックス線撮影を行った。撮影の結果、胃内に破損片が発見されたため、担当医同伴のもと他院を受診し、内視鏡検査を行ったところ、経過観察の診断となった。
エアスケーラーチップの先端が破損した(院内で他の報告事例あり)。
・スケーラーの破損は起こり得るものとして、迅速な対応を行えるように準備する。・破損片不明時のチェアサイド、院内、院外紹介の流れについてシミュレーションを行う。
nan
歯科医師は、患者が誤嚥しないよう座位で治療を行っていた。当日は、左上4番と6番の金属冠を装着する予定であった。最終的な使用感の確認後、冠を外そうと口を開けてもらったところ、左下顎臼歯部舌側の口腔底に左上6番の冠が自然脱落した。冠を把持するためピンセットを取ろうとしたところ、患者が喀出しようと突然起き上がって前傾姿勢になった。直後に、口腔内、咽頭部を直視下で確認したが金属冠はなかった。胸部エックス線撮影し、左主気管支に金属冠と認める不透過性像を確認した。
金属冠の着脱を行う際、患者が口を開けた時に金属冠が自然脱落する可能性があることに十分注意を払えなかったことが、最も大きな要因だったと考える。患者は以前から誤嚥を繰り返しており、歯科治療中も頻回にうがいが必要なため、少量の水でもなるべく誤嚥しないように細心の注意を払い毎回座位で処置を行っていた。金属冠の着脱時に患者が臥位の場合、術者が手を滑らせて冠が口腔咽頭内に落ちることはあり得る状況のため、術者のミスによる誤嚥を防ぐために当日も座位で治療していた。上顎の金属冠装着のため、座位になると重力により金属冠が口腔内に落ちる可能性がある。その可能性に注意していたものの、金属冠の咬合調整で何度も出し入れを問題なくできていたため、最後の調整で注意力が失われたことが要因と考える。患者は、摂食嚥下機能評価で、嚥下機能の低下を認めていた。特に咽頭収縮能の低下および喀出機能の低下があった。
・歯科領域では口腔内への異物落下への効果的な対策があまりなく、基本は術者の注意深さにかかってくる。・本患者のように誤嚥する可能性が高い患者には、その場の状況に合わせて柔軟に対応する(金属冠がゆるめであれば、先に装着してから最終的な咬合調整をする等)ことが必要である。・術者本人は誤嚥に注意していても事故につながったという点から、事故は常に起こり得ること、自分では注意していても十分ではない可能性があることを念頭におき、細心の注意を払いながら診療を行っていくことを再確認する。
nan
歯科医師は、感染根管治療中にカルテを確認するため、口腔内より目を離し診察台より離れた。その際、患者が2、3度むせ込み、上体を起こして含嗽した。再度水平位にして口腔内を確認し、予定の診察を終了した。患者は、夕方より腹痛を自覚し近医を受診したが、様子観察となり帰宅した。腹痛に対しては鎮痛剤を服用したが改善なく、翌日(日曜日)昼間に救急外来を受診した。CT上、胃壁部に金属製の異物を認め、内視鏡下にて摘出した。摘出した金属性の異物は、根管治療の際に使用する器具で、むせた時に誤飲したものだった。
患者がむせた時に、口腔内に根管治療用器具は見当たらなかった。カルテの確認のため診察台を離れる際に、診察台に同様の器具があったため、口腔内からその治療用器具を除去したと誤認した。
・鋭利な器具を使用する際には、口腔内に留置せず、患者から目を離さないことを徹底する。・誤飲の可能性がある場合、体位を完全水平位にはしない。・むせた時には誤飲の可能性を考え器具を確認する。・使用前後での器具の数の確認を徹底する。・数の確認を容易にするため、必要最小限の器具を収納するボックスを使用する。・ラバーダム(防湿器具であるが器具の誤飲予防に有効)の使用を検討する。
nan
4歳の患者は、ベッド上安静中であった。9時20分、看護師Aはバイタルサイン測定のため訪室し、患者に向かって右側から体温測定を行った。その後、母親が横シーツの交換を希望したため、看護師Aは患者に向かって左側へ移動し、作業がしやすいようにベッド柵を一番下まで下げ横シーツを交換した。右側のシーツは母親が整えた。シーツ交換中に、ペア看護師Bが病室へ来た。看護師Aは横シーツを交換後、左側のベッド柵を中段まで上げ、患者の血圧測定と聴診を行い、測定結果を看護師Bへ報告した。その際、ベッド柵が中段であることに気付いていた。この時、看護師Bはカーテン越しに患者の足元で電子カルテの入力作業を行ったため、看護師Aのいる左側のベッド柵は見えていなかった。バイタルサイン測定が終了後、看護師Aは母親がいるから大丈夫だと思い左側ベッド柵を一番上まで上げず、中段のままで看護師Bと退室した。この時、母親へ左側のベッド柵が中段になっていることは伝えなかった。看護師Bもベッド柵の確認は行わず退室した。20分後、別の病室付近を歩いていた看護師Aが「ドン」という音を聞き病室へ駆けつけた。同時にナースコールがあり看護師Bも同室へ駆けつけた。看護師AとBが駆けつけた時は、母親が患者を抱っこし、ベッド右側の椅子に座っていた。患者は「痛い、痛い」と啼泣していた。看護師Aがすぐに当直医師へ報告した。意識レベル清明、血圧137/92mmHg、脈拍120回/分であった。母親に聞くと、尿器を片付けようとベッドサイドを離れた際に転落したとのことであった。患者は通常右側からベッドの乗り降りをしており、左側の柵はいつも一番上まで上がっていた。今回、患者がベッドの上に立った状態でいつものように左側の柵に寄り掛かろうとし、柵が中段までしか上がっておらず転落したと考えられる。
通常、母親はベッドの右側におり、左側はカーテンが足元中央まで引かれていた。左側のベッド柵はいつも最上部まで上げられていた。患者の身長は約98cmであり、ベッドのマットレスから中段になったベッド柵の上部までの高さは28cm、床面から中段になったベッド柵上部までの高さは97cmであった。看護師Aは、母親がいるから上段まで上がっていなくても大丈夫と判断した。看護師Aは、母親にベッド柵が上段まで上がっていないことを伝えなかった。マニュアル遵守ができておらず、危機管理意識も不足していた。ペア看護師Bは、カーテン越しに患者の足元で電子カルテの入力作業を行っており、看護師Aに十分注意を払えていなかった。加えて、バイタルサイン測定時、ベッド柵が中段であったことに気付いていたが、退室時にベッド柵の確認を怠った。看護師Bは、看護師Aがベッド柵を上げないことはないとの思い込みがあった。ベッド柵に対する教育は常日頃から看護師に行っており、いつもベッド柵は上げていたので、ベッド柵に対する安全管理意識は身についていると思い込んでいた。危険度1の患者の再評価が漏れがちであった。看護師Aは、新採用から2ヶ月がたち、療養上の世話に関する看護行為は自立しているという認識があり、ペアで行う看護行為の最終確認ができていなかった。
・ベッド柵に注意喚起の掲示を追加した。・移動用ノートPCに「ベッド柵確認」の注意喚起を掲示した。・病棟PCに転棟転落アセスメントシートの再評価の時期とタイミングの一覧を掲示した。・朝のカンファレンスの時に、転棟転落アセスメントスコアシートの再評価が必要な患者をチェックする。・病棟スタッフでKYTを実施した。・今回の事象を時系列で整理し、P-mSHELL分析を病棟スタッフで実施した。・パートナーシップ・ナーシング・システム体制における確認について話し合い、意識の共有を行った。
ベッド柵を中段にしていた事例
兄妹で入院していたため、2つのベッドを隣接させて設置しており、患者はそれぞれ自分のベッド上にいた。看護師は母親に抱かれた妹の点滴挿入部のテープ交換をしていた。その際、兄(3歳)が自分のベッド上で飛び跳ね遊んでいたため、中止するよう声掛けを行っていた。看護師がテープ交換に集中していたところ物音が聞こえ、確認すると兄がベッドの下に仰臥位で倒れていた。主治医が診察し、エックス線撮影後、整形外科にコンサルトした。左上腕骨顆上骨折と診断され、翌日、手術を実施した。
看護師は、妹の点滴挿入部のテープ交換に意識が集中していた。兄側のベッド柵は中段までしか上がっていなかった。兄がベッド上で飛び跳ねていたが、転落するかもしれないというリスク感性が欠如していた。付き添いの母親は、妹を抱いていた。
・入院時、転落事故防止パンフレットを配布する。・転落防止ポスターをベッドに貼付する。・訪室時は必ずベッド柵を確認する。
ベッド柵を中段にしていた事例
6時の巡視時、0歳10ヶ月の患者の胸郭の動きを確認した。その際、小児用ベッド内で母親が添い寝しており、ベッド柵は患者側が一番上まで、母親側は中段になっていた。50分後、啼泣している患者を抱っこした母親がナースステーションへ来て「ベッドから転落した」とリーダー看護師に伝えた。受け持ち看護師は血圧121/80mmHg、SpO:100%、四肢の動きは活発で視線が合2うこと、右側頭部に3cm大の円形の陥没があることを確認した。小児科当直医に報告し診察、小児科医から脳神経外科当直医へ連絡し診察を受けた。脳神経外科医師の指示にてCT検査を施行し、骨の陥没を認めるが頭蓋内に出血は認められず、様子観察となった。脳神経外科医師より食事摂取可能との指示を受け、半量の食事を摂取しミルク200mLを哺乳したが、その後、消化器症状はなかった。母親へ確認するとベッド柵を半分の高さまで下げた状態で、母親が患者に対し背中を向けた際に転落したと言われた。
入院時のオリエンテーションの際、患者から離れる時にはベッド柵を一番上まで上げるよう母親へ説明していた。母親がおもちゃをとろうとして患者に背を向けた際、患者が床に転落していた。ベッド柵は中段であった。患者の身長は71cm、ベッドのマットレスから中段の柵までの高さは27cmであった。患者から離れるときはベッド柵を上げるよう入院時に説明していたが、患者から目を離すとき、背を向けるときにもベッド柵を一番上まで上げるように説明は行っていなかった。また、患者の身長、成長発達段階に応じたアセスメントが不十分であり、患者に対する個別性のある説明、計画が不十分であった。
・入院という環境の変化を踏まえて家族に転落に対しての注意の説明を行い、転落予防に参画してもらう。・パンフレットの内容を読んで説明するだけでなく、実例を上げて説明する。・患者の発達段階に合わせた転倒・転落予防対策を立てる。・最低限行わなければならない説明内容のチェックリストを作成し、使用すると共に、説明内容を各自が理解して説明できるようなスタッフ用の詳細なマニュアルを作成する。
ベッド柵を中段にしていた事例
入院時転倒転落の危険性について口頭で説明した。翌日夕方、母親がベッド柵を下ろした状態でベッド上に座り、0歳7ヶ月の患者を抱っこしていたため、看護師が転落に注意するよう声掛けを行った。21時前、母親から患者がベッドから落ちたとナースコールがあり訪室した。訪室時は母親がすでに患者を抱いており、患者の口唇より出血を認めた。すぐにバイタルサイン測定を行っていたが呼吸数の減少、徐脈、意識レベルの低下を認めたため、他の看護師と一緒に処置室に移動した。HR:70~130回/分、SpO:88~100%。母親は2「ベッドの端のほうでオムツを換え、ごみ箱に捨てようと目を離した時に寝返り、お腹を下にして転落した。」と転落時の状況を述べた。直ちに他の看護師に応援要請を行い、外科・小児科当直医師、当直師長に報告した。処置室にてモニタを装着した。医師到着後も意識レベル低下があり呼吸状態が不安定であったため医師の指示のもと肩枕を入れ、酸素8~9L/分マスクにて施行した。その後、SpO2の低下無く、医師の指示にて酸素は中止したが、刺激しないと意識レベルが低下した。頭部CT撮影を行った結果、左急性硬膜下血腫と診断され、脳神経外科医師が診察を行った。脳神経外科医師より父親に病状及び手術の必要性について説明し、手術についての同意を得た。その後、穿頭洗浄術を施行した。手術後は全身管理のためPICUに転棟となった。
入院時にベッドからの転落についての説明を行い、ベッド柵を上げることを指導していた。しかし、ベッド柵を上げることが守られていなかった。訪室時ベッド柵を下げているのを発見した時、柵を上げるように指導したが守られていなかった。また、看護師が柵を上げなかった。
・家族に対して転落に対する危険性を口頭で説明するだけでなく、発達に応じた危険性の説明について書面を使用して行う。・看護師は訪室時にベッド柵を下げている状況を発見した時はベッド柵を直ぐに上げる。・ベッド柵を上げることを守れない家族は、転落に対する認識が低いと考え、転落の危険性と転落防止の必要性を再度説明し、適宜床面に衝撃吸収マットレスを敷くようにする。
ベッド柵を上げていなかった事例
医師はアモキサンカプセルの処方を意図し、誤ってアモキシシリンカプセルの処方を行った。誤った内服薬の処方が継続され、在宅医療目的で他院に紹介した際に処方内容の照会があり、判明した。
外来で疼痛管理と共に化学療法中の患者であった。毎回化学療法の内容変更が続いていたため、指示出しの煩雑な状態が続いており新規内服薬の処方の確認を怠った。
・処方内容の再確認が必要である。
処方の事例
患者はアレルギー性鼻炎があり、他院からアレロック錠5が処方され内服していた。入院中にアレロック錠5を飲み切ったため、当院からの処方を希望した。回診時に看護師はアレロック錠5の空シートを読み上げ、口頭にて医師に処方を依頼した。オーダリング入力をした際、「アテレック錠(10)0.5錠5回分」と入力されていたが、確認をせずに指示受けを行った。内服自己管理中であったため、薬剤科から届いた薬剤を夜勤看護師が患者に渡した。内服をした患者から「いつもと薬が違う気がする」と言われ、内服薬が間違っていることに気が付いた。
他院で処方されたアレロック錠5は、屯用で5回分の処方であった。入院時、担当した看護師が内服状況を確認し、持参薬、お薬手帳を預かり、薬剤科に検薬を依頼することになっていたが、今回は患者からの情報提供がなく、検薬用紙が作成されていなかった(当院にはアレロック錠がないため、同効薬を処方するためにも検薬を行っておく必要があった)。検薬は、土日祝日の日中は平日と同じく薬剤科で対応するが、夜間は翌朝の処理となる。オーダリング入力の際、3文字入力での入力だが、看護師もしくは医師が薬剤名を勘違いし、“アテレ”と伝えたか入力をした。回診前に別件で患者から訴えがあり、すぐに対応しなければという焦りがあった。処方依頼を行った看護師は、アレロック錠・アテレック錠の薬効を知っており、処方間違いしやすい薬剤という認識はあった。持参薬の切り替え時に検薬結果用紙を医師に見せながら依頼するというルールがあったが、検薬されていなかったため、医師から薬剤名を問われ、口頭で伝えた。空のシートを残してあったが、医師に見せて処方の依頼をするというルールはなかった。
・持参薬の処方希望があった時、検薬されていない場合には検薬後の処方とする(医師は検薬用紙を見ながら処方の入力を行う)。・オーダリング入力の際、処方間違いをしやすい薬剤については薬剤名の後に種類などの注意書きが入れられるので、アテレック(降圧剤)と注意書きを入れる。・自己管理の内服薬を患者に渡す際には、薬剤情報用紙を患者に見せながら説明し、薬剤について理解しているか評価を必ず行う。理解していない場合には、自己管理を中止する。
処方の事例
抗がん剤治療目的で入院し、翌日からMEC療法(メソトレキセート、エピルビシン、シスプラチン)を行うことになった。前日13時頃に、翌日投与のメソトレキセートの副作用防止のため、ロイコボリン錠1日4回1回1錠を処方するつもりでオーダリングシステムの処方画面に「ロイコ」と入力し、ロイコボリン錠を処方したつもりで誤ってロイコン錠1日4回1回1錠を処方した。患者は翌朝8時頃にロイコン錠を内服した。その日の朝9時頃に薬剤部より誤っていることの指摘があり、残りのロイコン錠を返品し、ロイコボリン錠を改めて処方した。
他の患者への対応に追われており、確認を怠った。
・処方画面には薬剤名を最後まで入力し、処方した薬剤の名称と量、投与日数を何度も確認する。
処方の事例
嘔気があり、脱水で入院予定の患者の点滴に制吐剤のプリンペラン0.6Aを入れるために処方しようとして、誤ってプリンクを処方した。間違った処方(プリンク10μg0.6A+KN1号200mL)を受けた看護師は、初めて使用する薬剤で疑問を持ちながらも、別の看護師に薬剤の効能を尋ね、薬剤師から払い出しを受ける時に添付文書ももらったが、医師に確認せずに施行した。診療を引き継いだ別の医師が気づいた。薬剤による影響はないと判断した。
「プリン」で3文字検索した医師は、上部に候補表示されたプリンク(劇プリンク10μg2mL(パルクス)と表示された)をクリックして処方した。施行した看護師に尋ねられた看護師は、血液をさらさらにする薬と答えたが、それ以上の判断はできなかった。薬剤師は小児に使用すると聞いたが、0.6Aなので考慮された上での処方と思い尋ねなかった。施行した看護師は、初めて使用する薬剤であり、別の看護師に薬効を確認し、薬剤師に添付文書をもらったが、それ以上尋ねず医師にも確認しなかった。
・プリンクを別の後発医薬品のアルプロスタジルに変更した(当院の電子カルテでの警告は今以上出せない)。・ニュースの発信と医局報告を行った。
処方の事例
スイニー錠(100mg)56日分1日量2錠朝1錠夕1錠内服と処方されたが、薬剤部で調剤時に取り違え、スーグラ錠(50mg)56日分1日量2錠朝1錠夕1錠を調剤した。薬をピッキングする薬剤師と鑑査する薬剤師は別の者であったが、両方の確認をすり抜けた。患者は口渇・ふらつき・倦怠感が生じたが、薬が異なっている事に気が付かずに服用を継続した。次の受診日の直前に薬の説明書と内服している薬の名前が異なることに気が付き、病院へ連絡をして誤調剤が判明した。この時点まで患者は異なる薬を約2か月間内服していた。今回の服用により8%前後であったHbA1cが9%に上昇し血糖コントロールが乱れた疑いがあるために、予定されていた眼科の手術は中止となり、血糖コントロール目的の入院となった。
調剤する薬は、錠剤台に薬の効能別にまとめており、今回取り間違えたスイニー錠とスーグラ錠は、同じ糖尿病に対して使用されることから、同じ棚で隣同士の配置となっていた。また、両薬剤の名称が似ていたこと、外観の包装が類似していたこと、採用されて間もないため意識が低かったことなどから、調剤者と鑑査者の両方を通過した。また、患者に薬の内容について説明を十分に行っていなかった。受け取った患者も、薬剤名が少し異なるが後発医薬品へ変更されたものだと思い込んでいた。
・スイニー錠とスーグラ錠を配置する棚を変更することにより、薬剤の位置を離した。・リスクの高い一部の薬剤に関しては、別の薬剤師が確認を行うことによりチェック体制を強化した。
調剤の事例
「半夏厚朴湯」が処方されたが、薬剤師が誤って「半夏瀉心湯」を払い出した。病棟に薬剤が払い出され、夜勤看護師A・Bで翌日分の準備の際、看護師Aが指示画面を「ハンゲコウボクトウ」と読み上げ、看護師Bは現品を薬袋から取り出し、「ハンゲコウボクトウ」と声に出し、一日分を各食前薬の袋に入れる作業を行った。翌朝、朝食前に看護師Bが当該薬剤を投与し、昼食前の分を看護師Cが投与した。夜勤の看護師Dが夕食前薬を投与しようとした際に、指示と薬剤の現品の名称が違うことに気がついた。
「半夏」で始まる名称類似薬剤のため、思い込みが生じた。薬剤部では誤調剤を防ぐために薬剤名の前にツムラ○番と番号を印字するようにしており、その番号も含めて読み上げるように指導している。今回はそれを怠っていた。漢方薬の番号の確認不足と類似薬(漢方薬)に関する知識不足も要因としてある。内服準備時や投与時のルールに沿った確認方法や、誤認を防止するための指差し呼称などが不足していた。
・漢方薬の番号の確認を徹底する。・内服薬準備・投薬時の指差し呼称を徹底する。・投薬時の確認方法(6R)の周知と監査を行う。・漢方薬は名称類似が多いことはよく知られているため、必ず番号も含め最後まで呼称して調剤をするように指導を行った。
調剤の事例
5時にベニロン-I(2.5g)8Vが処方された。当直の薬剤師が、7時30分頃、ICU看護師より薬剤を取りに行くとの連絡を受け、誤ってグロベニン-I(2.5g)8Vを調剤し、鑑査をすり抜け払い出された。ICU看護師が、薬剤をICUに持ち帰り、看護師B・Cで指示を確認後、8時より1V目の投与を開始した。11時、看護師D・Eでダブルチェック後、2V目の投与を開始した。16時、看護師D・Eでダブルチェック後、3V目を開始した。18時、夜勤看護師F・Gで確認の際、指示薬剤と投与されている薬剤が異なることに気がついた。
グロベニン-Iとベニロン-Iは過去にも誤調剤があり、様々な注意喚起がなされてきた。その上で必ず薬剤名を指でなぞりながら呼称するように厳しく指導されてきた。しかしながら、当事者はそのルールを遵守していなかった。夜勤帯の単独業務のために特に慎重に行うべきであった。薬剤部の払い出しに間違いはないという思い込みと、急変対応による焦りがあった。環境因子としてお互いの声が聞き取りにくい状況であったが、思い込みもありそのまま投与した。
・輸血同様クロスチェックを実施する。・同時に読み上げるのではなく、1人ずつ読み上げる。・6Rを遵守する。・臨時カンファレンスで、血液製剤が輸血同様の重要性があることを再認識し、投与する責任について話し合い共有を行った。また、特に救急対応時は間違うリスクが高いことを認識し、気持ちの焦りや環境に左右されない常に基本的な信頼できる確認が実践できるよう注意喚起した。・グロベニン-Iとベニロン-Iの誤調剤はこれまでも複数回あり、その都度対策を立ててきた。指差し呼称の徹底とともに、処方せんへの印字色を製品イメージカラーに合わせてグロベニン-Iが緑、ベニロン-Iが赤で表示されるように変更した。
調剤の事例
左腎臓摘出術を施行した。乳癌の既往に対して術前からタモキシフェン錠20mgを内服していた。術後、嘔気が強くなかなか食事摂取が進まなかった。本日朝、患者本人から「乳癌の薬を術後から飲んでないんですけど、いいですか」と質問があった。術後の内服薬についての指示はなく、主治医の記録に、「手術で飲水中止中のみ薬剤の投与を中止で問題ないことを薬剤部に確認した」と記録があった。
術後5日目、タモキシフェン錠を内服していないことが判明した。
・術後の内服薬について主治医に確認し、指示を出してもらう。
指示出し/無投与
○手術で絶飲食になった際に中止した腫瘍用薬を術後に再開することを忘れた事例である。○中止の指示はされるが再開は忘れがちであるため、事例のように術後の飲水が可能になれば再開することが可能な薬剤に関しては、パスやカレンダー機能で、事前に再開を入力しておくとよいだろう。
ヒヤリ・ハット事例
ティーエスワン配合OD錠が1日2回朝・夕に投与されていたが、副作用による血球減少のため中止となった。医師はティーエスワン配合OD錠内服中止に関して指示簿上で終了実施は行ったが、処方カレンダーで中止指示を行わなかった。中止後2日目、看護師Aは、翌日の内服準備を行った。この時ティーエスワン配合OD錠の薬袋には「○日から○日分」とコメントが印字されていたため、看護師Aは、印字通りに内服準備を行った。その後、処方カレンダーを用いて看護師Bとダブルチェックを行い、朝の薬を患者に与薬した。夕方、中止中のティーエスワン配合OD錠が患者の配薬箱に準備されていたことに疑問を持った看護師Cが、誤投与を発見した。医師へ報告を行い経過観察となった。
ティーエスワン配合OD錠の内服に関して、指示簿上で終了実施があり、内服中止等の文言がなかったため看護師に伝わらなかった。医師は、処方カレンダー上で中止指示を行わなかったため、処方カレンダー上にはティーエスワン配合OD錠を与薬する状態で残ってしまった。薬袋に「○日~○日分」とコメント入力されていたが、中止処理がされない状態で残っていたため、看護師Aは配薬準備を行い患者に与薬した。
・処方カレンダー上で中止指示を行う。・必要時には、指示簿にも中止指示を入力し、情報共有を行う。・内服中止の指示が出た時点で、中止する薬剤の処理を行う。
指示出し/中止時の投与
○指示簿と処方カレンダーは連動していることが多いが、事例のように指示の入力や記載が複数必要になると意図した指示が伝わらない可能性が高まる。できるだけシステム内で指示簿と処方カレンダーを連動させることを検討することが重要である。○事例のように指示変更する場合、医師と看護師が情報のやり取りをどう共有するか検討しておく必要がある。
ヒヤリ・ハット事例
入院時から血中腫瘍量が多く化学療法(キロサイド注を24時間持続投与)を施行していた。血中腫瘍量が減少したため本日11時30分に中止の指示が出ており、リーダー看護師Aが確認した。主治医は11時30分に点滴ルートに接続したままの状態でクレンメを閉じ、キロサイド注の輸液ポンプの電源をOFFにした。リーダー看護師Aは患者の部屋を訪室し、キロサイド注を投与している輸液ポンプの電源がOFFになり、クレンメが閉じられていることを確認した。患者はその状態で眼科を受診した。リーダー看護師Aは看護師Bに患者が眼科を受診していることは伝えたが、キロサイド注の中止指示は伝えていなかった。患者が帰室後、看護師Bは訪室した際に、キロサイド注が投与されていないことに気づいたが、眼科受診の間だけキロサイド注の投与を中断し出棟していたと思い込み、輸液ポンプの電源をつけ、キロサイド注を7mL/hで開始した。約10分後、リーダー看護師Aが主治医にキロサイド注を本日再開する予定がないことを確認し、薬剤を破棄するために患者の部屋を訪室した際、キロサイド注が再開されており、約10分間過剰投与されたことが判明した。
<リーダー看護師A>中止の指示を受けた際、キロサイド注の輸液ポンプの電源がOFFになっていることを確認したが撤去しなかった。主治医にキロサイド注を再開する予定があるか否かを確認した後に、看護師Bに伝えようと思っていた。中止にしたキロサイド注が再開されてしまう可能性を考慮していなかった。<看護師B>輸液ポンプのバッテリーがなくなりそうだったので、リーダー看護師Aがキロサイド注の投与を中断して眼科に出棟したと思い込み、なぜ投与が中断されているのかを考えなかった。他の入院患者でキロサイド注を24時間投与している患者がおり、短時間なら投与中断可の指示があったため、患者も短時間であれば投与中断可の指示があると思い込んだ。リーダー看護師Aが眼科出棟のためにキロサイド注の投与を中断したと思い込んでいたため、再開する前に点滴ラベルの流量だけを見て開始し、指示簿や注射箋の確認等、点滴投与時の手順を遵守しなかった。
・指示は速やかにメンバーに伝える。・再開する可能性があり一旦中止している場合は中止していることがわかるよう輸液ポンプに付箋を貼って表記するか撤去する。・輸液ポンプの電源が切られている点滴を発見した際には、必ず指示簿を確認しリーダーに声をかける。・思い込むのではなく、少しでも疑問に思ったことは必ずリーダー、ペアに相談する。・点滴投与時の手順を遵守する。・キロサイド注投与時は腫瘍量や好中球量によって流量が変動することを理解する。
指示受け/中止時の投与
○リーダー看護師Aは、医師がキロサイド注を中止にした意図を知っていれば、キロサイド注を速やかに片付けた可能性がある。治療の目的を明確にし、共有することは重要である。○リーダー看護師Aには、一度中止した腫瘍用薬を再開したという経験があるのかも知れない。指示の際に、「中止」なのか再開の可能性がある「一時的な中止」なのか、明確に伝える必要がある。
ヒヤリ・ハット事例
保険薬局による剤形の誤った交付によって本来エヌケーエスワン配合OD錠20mg×6錠(120mg)のところ、25mg×6錠(150mg)を16日間服用した結果、著明な白血球減少と血小板減少が生じ、出血性腸炎、口腔・外耳道粘膜障害、出血、発熱を来たし、当院救急部に搬送され入院となった。保険薬局に確認したところ、薬剤師が後発医薬品への変更の意向を患者に確認し、ティーエスワン配合OD錠からエヌケーエスワン配合OD錠へ変更した。その際に規格を間違えて調剤した。その後もチェックできず、そのまま患者に交付していた。
保険薬局において、患者に誤った量の薬剤が手渡された。<保険薬局からの報告内容>調剤者は後発医薬品への変更に注意力が集中してしまい規格の確認が不十分であった。鑑査者は後発医薬品への変更の際に適応症について処方医へ疑義照会を行い、変更可否に気をとられ、規格の確認が不十分だった。交付者は薬を薬袋から全て出して説明したが、処方せん、薬剤情報提供文書を用いて確認を行わなかったことで誤りに気づかず交付した。
【当院】・当該薬局へ薬局から日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業への報告、周辺薬局への情報共有を依頼した。・当院薬剤部より門前の保険薬局へ、特に抗がん薬の調剤時の取扱いを注意喚起するファックスを送付した。・当院薬剤部と門前の保険薬局10店との合同勉強会の場で、当該保険薬局から要因分析と改善策を含めた事例報告を行い情報共有した。【保険薬局】<調剤時>・医薬品名・規格・用量・用法まで全て指差し声出し調剤を徹底する。できていない職員に対してその場で相互に注意指導する内規とした。・調剤者は全ての調剤後に自己鑑査する事とし、その後に処方せんに押印し鑑査者へ引き継ぐ事に内規を変更した。<鑑査時>・医薬品名、規格、用法用量の処方せん確認事項全てにチェックマークをつける事とし、チェック機能を強化した。<交付時>・処方せんと医薬品名、規格、用法・用量を確認した上で、全ての薬剤を薬袋から出し、患者と相互に確認した上で渡すことを徹底する。<環境>・錠剤台には規格間違いが発生しないように規格注意を喚起する札を認識しやすいように設置した。・引出しの保管薬剤は使用頻度の高いものを手前に配置した。
薬剤量間違い/過剰
○ティーエスワンは後発医薬品が多く、さらに後発医薬品は適応疾患が少ないので、保険薬局の薬剤師は後発医薬品への変更に伴う適応疾患の確認に注意が向き、規格の確認が疎かになった可能性がある。○経験年数18年の薬剤師が調剤し、経験年数1年の薬剤師が鑑査をしているが、腫瘍用薬はハイリスク薬であり、他の薬剤より鑑査が精密にできる体制の検討が必要であろう。○医療機関が中心となって近隣の保険薬局と事例の共有ができたことはよかった。
医療事故情報
薬剤師Aは当直時間帯に、エピルビシン塩酸塩注射液50mg1瓶を調剤しなければならないところ、エピルビシン塩酸塩注射液10mg1瓶を調剤した。薬剤師Bの鑑査でも発見されず、病棟へ搬送された。
<調剤した薬剤師A>保険薬局からの問い合わせ、医師からの問い合わせ、救急外来の患者対応で、院内の調剤に割ける時間が少なかった。さらに翌日分の注射薬であり、調剤が終わり次第、連絡することを病棟看護師に伝えていたが、遅いとの連絡があり、急いで調剤したため、規格を良く確認しなかった。注射せんには、通常複数規格存在する薬品に付く●印が付いていなかった。<鑑査した薬剤師B>払い出し時、2規格あると思ったが、複数規格存在する薬品に付く●印が注射せんになかったため、勘違いと思い規格の確認をしなかった。抗がん剤であり、素手で業務を行っていたため、袋上からの確認となり規格まで目が行き届かなかった。<その他>薬剤部の当直は2人体制をとっているものの、救急外来での薬剤交付業務もあり、多忙である。本件と一緒に、他患者の当日夕分と翌日分の払い出しの依頼を受けていた。業務が多忙であること、翌日の日中使用分であることなどから、分けて払い出すことを病棟に提案したが、何度も薬剤部に取りに行けないと提案を拒否された。
・業務が忙しい場合でも、必ず規格まで確認して払い出す。・病棟には薬剤部の当直体制を理解してもらい、依頼の優先順位を考えてもらう。・医師に時間内にオーダを行うことを依頼する。
薬剤量間違い/過少
○薬剤の規格間違いへの対策は、医療機関によりさまざまであり、複数規格を意識するため薬剤同士を近くの棚に配置する方法と、取り違えを防ぐために離れた棚に配置する方法があるようである。医療機関の状況に合わせた検討がなされるとよいだろう。○夜間の腫瘍用薬の払い出しであるが、緊急の薬剤の払い出しのルールが不明である。緊急の薬剤の払い出しのルールを院内で明確にするための検討が必要であろう。○調剤鑑査をした薬剤師は「複数規格あるのでは?」と疑問を感じている。このような場面は、必ず疑問に対して確認を行うことが重要である。
ヒヤリ・ハット事例
腫瘍用薬5-FU注の○月3日~16日までの連投患者であったが、○月10日以降、門注用カテーテル閉塞のため、投与が中止になった。○月14日までは調剤していなかったが、○月15日投与分について中止に気がつかず調剤し病棟に搬送した。病棟から連絡があり投与前に回収した。
5-FU注の連投レジメンについては、投与日数が決められており途中で削除を行うと再入力出来ないシステムである。再開もあるので、中止日以降をまとめて処方削除を行わず、中止日以降の処方せんを発行しないよう発行操作時に注意をしている。また、印刷された薬歴に手書きで中止の記入をして調剤時に確認し対応している。今回処方せんが発行され、調剤者がこの薬歴を確認せず調剤した。
・調剤、鑑査、調製時に薬歴を確認することを徹底する。
中止時の投与
○システム上、一旦中止すると、再開ができないのであれば、「中止」の指示を出して、再開時は指示を出し直すことが望ましいだろう。医師が意図している治療内容が反映されていない指示を、後の工程で処理することを原則とするルールは、誤りを生じやすいだろう。
医療事故情報
処方せんには「エクザール注射用10mg7mg生食PB20mL」と記載されていた。エクザール注射用は冷所保存の薬剤であったため、1患者1トレイになっていた薬剤のセットをばらしてエクザール注射用のみ冷蔵庫に保管した。その際、もう1名の患者の分と同じトレイに無記名でエクザール注射用が保管されていた。当日、調製者は、冷蔵庫より2バイアルを取り出した。そのため、調製時、本来エクザール注射用1バイアル(10mg)を使用し7mgを調製するところ、調製者はエクザール注射用を2バイアル使用し17mg調製した。鑑査者も間違いに気づかず、患者に投与された。同日、調製者が調製内容を入力した際、間違いに気づいた。
冷所医薬品が患者個別に保管されていなかった。前日に1患者1トレイで外来化学療法室に払いだされていたが、抗がん剤の調製内容の記載「7/10/17mL(抜き取り量/溶解量/最終的な溶解量)」の統一がされていなかった。エクザール注射用は使用頻度の少ない薬剤で、調製者は2バイアルを当該患者に使用するものだと思った。ダブルチェックが十分に機能していなかった。鑑査者は、注射器に17mLが充填されていることは確認したが、使用されたバイアル数と処方せんに記載されているエクザール注射用の投与量7mgとの照合が不十分であった。
・冷所医薬品を患者個別に保管する(1患者1トレイ)。・腫瘍用薬の調製内容の記載の統一を行った。・化学療法処方監査者、調製者、鑑査者の役割を明確にし、それぞれが担う役割を再度見直し、明文化した。
調製/薬剤量間違い/過剰
○処方の内容を適切に読めていれば、調製者は溶解量を間違えなかった可能性がある。処方せんに調製方法を記載する場合、誰でも分かりやすい内容に統一することを医療機関で取り決めることが重要である。○腫瘍用薬を冷蔵庫で保管する際も、1患者1トレイで保管するとよい。
医療事故情報
前立腺癌治療薬ジェブタナ点滴静注の投与量を間違え、過量投与となった。ジェブタナ点滴静注には専用の溶解液が付いており、溶解液全量を用いて溶解し、必要量を秤取する。しかし、全量で溶解しなかったため、濃い濃度でジェブタナ溶解液が作られた。これを原液として必要量を秤取し投与した為、処方量の約20%増量で投与されてしまった(医師処方量33mg/body、実際に投与したと思われる量38mg/body)。
ジェブタナ点滴静注は患者限定薬で、院内では1名のみ使用している。準備した薬剤師は全量で溶解することを知らなかった。またそれを鑑査する薬剤師も確認しなかった。
・処方せんに「全量溶解」と記載し、注意を促すこととした。
調製/薬剤量間違い/過剰
○溶解方法が特殊な薬剤は、製薬企業の医薬情報担当者から医療機関へ情報提供がされるので、情報共有できる仕組みを作っておくことが大切である。○溶解方法が特殊な薬剤は、薬剤ラベルにその旨が表記されるなど、製薬企業による注意喚起の工夫があるとよいのではないか。
ヒヤリ・ハット事例
サンラビン点滴静注用250mg1バイアルは25mLの溶解液で溶解して使用する薬剤であり、一般的な計算式であれば1mLあたり10mgの薬剤が含有されるが、本剤は1.1mLあたり10mgのエノシタビンが含有されるという特徴のある薬剤だった。その特徴を知らず300mgの指示に対して30mLをミキシングし患者に投与した。翌日、27mgの過少投与が判明した。
初めて取り扱う薬剤であり、サンラビン点滴静注用の計算式を知らなかった。
・腫瘍用薬などの勉強会を計画し、一覧表の必要性の有無について話し合い、今後の再発防止に努める。
調製/薬剤量間違い/過少
○溶解方法が特殊な薬剤は、溶解前に必ず手順を確認する必要がある。○サンラビン点滴静注用の具体的な調製方法の資料を製薬企業が作成しているので、調製室に準備しておくとよい。○サンラビン点滴静注用の調製には専用の「溶解鍋」と「溶解ラック」が必要であり、調製できる部署を決めている医療機関もある。
ヒヤリ・ハット事例
化学療法当日、アブラキサン点滴静注用とカルボプラチン点滴静注液を投与する指示があった。アブラキサン点滴静注用をフィルターを通して準備し投与開始した。開始後すぐに閉塞アラームが鳴り、解決できなかったため他のスタッフを呼び確認したところ、フィルターを通さず投与する薬剤であることがわかった。医師に報告し投与量が微量であるため、継続して投与して良いと指示を受けた。
薬剤の分類表の確認で見落とした。初めて扱う薬剤であり、フィルターを通さず投与しなければならない薬剤であることの知識がなかった。当日は化学療法を施行する患者が3人いたため、慌てていた。ダブルチェックの際にルートを流れ作業で確認した。
・初めて扱う薬剤のときは先輩スタッフに声をかける。・フィルターあり、なしの確認も薬剤分類表を用いてダブルチェックの際に行う。・化学療法を施行する患者が複数いるときは、流れ作業で確認をしない。・新人看護師が初めて行う点滴(化学療法)の時には、ルートの接続方法やフィルターの必要性など具体的に指導し、患者に施行する前に点検する。・新人看護師は初めての処置の時には必ず先輩看護師にそのことを伝え、患者に施行前に確認してもらってから実施する。
その他/カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い
○フィルターを使用する薬剤、使用しない薬剤を一覧表で確認できるように明示しておくとよい。○特定の腫瘍用薬については、薬剤部から薬剤を払い出すときに「フィルターなし」などと記したカードをつけて注意喚起を促すという方法もある。
ヒヤリ・ハット事例
卵巣癌で中心静脈ポートから腫瘍用薬の投与を実施した。当事者が前投薬に続いてパクリタキセル注射液を投与し、100mL投与されたあと、先輩看護師がルートにフィルターがついていないことに気付いた。ルート内に目視で確認できる析出はなかった。
当事者は、パクリタキセル注射液はフィルター付きのルートを使用することは理解していた。しかし、以前同じ治療を担当したときに、前投薬もフィルター付きのルートを使用していたため、今回も同様だろうと思い込んだ。そのため、パクリタキセル注射液投与時にルートの確認をせずに、前投薬と同様のルートで投与した。また、注射ラベルの薬剤の部分は確認していたが、その下の注意事項に目を留めていなかった。
・同じ技術や治療でも思い込みで実施せず、その都度確認する。・注射ラベルの薬剤の部分だけではなく、「フィルター」など注意事項が書かれた部分も確認する。
その他/カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い
○特定のフィルターが必要な腫瘍用薬については、薬剤部から薬剤と一緒に払い出すという取り組みをしている医療機関もある。
ヒヤリ・ハット事例
腫瘍用薬を病室に持っていく時にカゴや袋に入れずに、手で持って歩いていたため、運んでいる時に注射器が身体に当たって薬液が漏れた。腫瘍用薬の取り扱いについての知識が不足していた。腫瘍用薬の開始予定時間が迫っていたため、焦りがあった。
5-FU注の投与予定の患者で、詰め所で投与の準備を行い患者の病室へ行った。訪室後5-FU注をシリンジポンプにセットしようとした時に、詰め所で確認した量とシリンジポンプにセットしようとした時の量が違うことに気がついた。5-FU注のルートの先端を確認するとルートの先端から薬液が漏れていて、病室の床にも薬液が漏れていた。
・腫瘍用薬の取り扱いについて医療安全マニュアルを再読する。・腫瘍用薬の運搬時は点滴用のカゴやビニール袋で運び、漏れない様に注意して取り扱う。
その他/その他
○病棟内では、薬剤はトレイに入れて搬送するのが基本であろう。院内で定められたマニュアルを遵守することが重要である。
ヒヤリ・ハット事例
心臓カテーテル検査前、膀胱留置カテーテルの挿入を研修医と看護師で行った。研修医は膀胱留置カテーテルを尿道へ挿入していたところ途中で進まなくなったため、まだ膀胱まで達していないと考えていた。しかし、介助していた看護師は研修医の手が止まったので膀胱内に入ったと判断し、「入れますね」と声をかけてバルーン内に滅菌蒸留水を5mL注入した。この時に抵抗はなかった。研修医はすぐにバルーン内の滅菌蒸留水を抜くように指示した。出血がなかったため、研修医はさらに膀胱留置カテーテルを奥に進め、膀胱留置カテーテルがすべて入った状態で尿の流出を確認し、滅菌蒸留水を注入してバルーンを拡張させた。その後、血尿はなかったが外尿道口から出血を認めたため尿道の損傷と判断し、膀胱留置カテーテルで圧迫している状態で予定通り心臓カテーテル検査を施行した。検査終了後、膀胱留置カテーテルを抜去したところ出血が続いており、泌尿器科にコンサルテーションを行った。尿道鏡で確認したところ尿道球部に損傷があり、圧迫止血のために再度膀胱留置カテーテルを留置した。
看護師は研修医の手が止まったことで膀胱内にカテーテルが入ったと思った。バルーンを拡張させてよいか研修医に確認しなかった。看護師は膀胱留置カテーテル内に尿が流出したことを確認しないでバルーンに滅菌蒸留水を注入した。
・膀胱留置カテーテル内に尿の流出があることを確認してからバルーンを拡張させる。・お互いに声を掛け合い、共通認識を持って対処する。・事例を院内で周知して、同様の事例の発生を防ぐ。
医師
医師は、膀胱留置カテーテルを挿入後にバルーンを拡張し固定を行った。その後、尿の流出がないため抜去を試みたが途中で抜去困難となり、陰茎部の一部に膨隆がみられた。出血を認めたため泌尿器科医師へ連絡し、抜去を依頼した。しかし、膀胱留置カテーテルの先端が湾曲していることにより抜去が困難であった。泌尿器科医師が膀胱留置カテーテルを抜去後に再挿入し、5病日目に抜去したが、尿道部からの出血が続くため、6病日目に泌尿器科に紹介し、透視で尿道部からのリークを確認し、1ヶ月程度膀胱留置カテーテルを留置することになった。
膀胱留置カテーテルの挿入の際に抵抗を感じたにも関わらず、無理に挿入を進めたことが、カテーテルの先端部が湾曲した要因と考える。また、膀胱留置カテーテル内への尿の流出を確認せずバルーンを拡張したことや、カテーテルの先端が湾曲した状態で抜去を試みたことが尿道損傷の要因と考える。
・膀胱留置カテーテルの挿入困難例に対しては、挿入操作の際に先端部が湾曲する可能性があり、抜去の際はその可能性も十分考慮する必要がある。・挿入困難例や挿入の際に出血がある例については、早い段階で泌尿器科へ相談する。
医師
患者は吐血のため救急搬送され、ショック状態(血圧・意識レベル低下)であった。気管挿管し、人工呼吸器管理を開始した。医師が尿量の観察のために膀胱留置カテーテルを留置した。その際、尿の流出により膀胱内に留置されたことを確認しないまま滅菌蒸留水にてバルーンを拡張して固定した。他の医師が尿の流出がないことに気づき、エコー下にて膀胱留置カテーテルが膀胱内に留置されていないことを確認した。抜去したところ、外尿道口より血尿を認めた。
出血性ショックにより救急搬送され、意識レベル・全身状態が悪く、緊急処置が必要な状態であった。患者は人工呼吸器を装着し鎮静されていたため、苦痛を訴えることがなかった。医師は膀胱留置カテーテルの挿入の経験があり、男性への膀胱留置カテーテルの挿入と女性への膀胱留置カテーテルの挿入の手技は変わりないと考え、膀胱留置カテーテルを挿入した。医師は膀胱留置カテーテルを挿入しても尿の流出がないことに疑問を持たず、膀胱内にカテーテルが留置されたかどうか確認せずに、滅菌蒸留水にてバルーンを拡張した。
・膀胱留置カテーテル挿入時の手技について、留意点、観察点、危険性について指導した。・研修医は、必ず上級医の指示のもとに実施する体制を検討した。
医師
胃瘻造設の当日で安静指示あり、患者と家族の希望で膀胱留置カテーテルを留置することになった。胃瘻造設後に一年目の看護師とカテーテルを挿入した。その際、尿の流出を目視できなかったが、20cm以上スムーズに入った。また、1時間30分前に自尿を確認していたため、痛みがないことを確認し滅菌蒸留水を注入した。1時間後、膀胱留置カテーテル内に数滴の血液と少量の尿を確認した。尿量が増えるか観察をしていたが増えず、挿入から2時間後に担当医に報告した。その後、泌尿器科医師が透視下にて確認し、膀胱留置カテーテルが膀胱に到達する前にバルーンを拡張したことが分かった。膀胱留置カテーテルを2週間挿入することになった。
指導目的にて、新人看護師が挿入し、先輩看護師は介助に入った。先輩看護師は、自身が挿入していないので挿入時の抵抗感などはわからなかったが、見ていてスムーズに20cm以上挿入できていた。尿の流出を確認したうえでバルーンを固定することになっていたができていなかった。腹部を圧迫したが尿の流出を確認できず、患者に痛みがないため、滅菌蒸留水をバルーンに注入し尿の流出を待つことにした。
・手順を遵守する。・膀胱留置カテーテルの挿入時に尿の流出がない場合は、絶対にバルーンに滅菌蒸留水を注入しないことを看護部全体に周知した。・新人看護師の指導の際は、正しい手順で指導することを併せて周知した。
看護師
看護師は、肝動脈塞栓術のために膀胱留置カテーテルを留置したところ、患者より尿道痛の訴えがあった。カテーテルを抜去すると出血し、尿道損傷を起こしていた。
カテーテルの挿入時に尿の流出が認められなかったが、患者が排尿したばかりだと発言したため滅菌蒸留水を注入した。看護業務マニュアルでは、尿の流出が認められなければ滅菌蒸留水を注入してはいけないルールとなっていたが、守られていなかった。
・マニュアルを遵守する。・経験の浅い看護師への教育を充実する。
看護師
看護師は、定期の膀胱留置カテーテルの交換を実施した。カテーテルは抵抗なく規定の長さまで挿入できたが、尿の流出はなく、下腹部を圧迫しても尿の流出を認めなかった。しかし、時間が経てば流出があると考え、バルーンに滅菌蒸留水を注入した。しばらくしても尿の流出がないため、滅菌蒸留水を抜きカテーテルを抜去したところ、尿道口より鮮紅色の出血があった。すぐに尿道口を圧迫し、止血を確認後、担当看護師に報告した。その後、主治医に報告し、新しい膀胱留置カテーテルを再挿入し、挿入できなければカテーテルを16Fr、14Frとサイズダウンして再挿入するよう指示があった。看護師は、18Fr、16Fr、14Frを再挿入しようとしたが抵抗があり挿入できなかった。主治医が診察し、止血剤の投与を指示した。その後、外科医へ応援を要請し、外科医はエコー下でガイドワイヤーを使用し、フォーリーカテーテル16Frを挿入し、尿の流出を確認した。
膀胱留置カテーテルが規定の長さまで挿入されていたが、尿の流出がなかったことから、尿道でカテーテルが屈曲していた可能性があり、尿道でバルーンを膨らませたことで尿道損傷が生じた。一度止血後、カテーテルのサイズを変更し、何度も再挿入を試みたことで尿道の損傷部を刺激し、出血を助長させたと思われる。膀胱留置カテーテル挿入時のチェックリストを確認しながら挿入していたが、以前に同様のケースで、時間が経った後に尿の流出を認めた経験があったため、大丈夫だと思い、滅菌蒸留水を注入した。患者は、膀胱留置カテーテルの挿入が難しいという情報があったことから、年齢的にも前立腺肥大の可能性もあり、膀胱留置カテーテルの挿入自体がハイリスクだったと思われる。
・決められた手順やチェックリストの意味を考え遵守する。・膀胱留置カテーテル挿入時のチェックリストを見直し、周知する。・前立腺肥大や尿道損傷の危険性のある患者をアセスメントし、危険性の高い患者への膀胱留置カテーテルの挿入は医師に依頼する。・モデル人形を使用し、手技の確認を行う。
看護師
午前中、看護師Aは、膀胱留置カテーテルの定期交換を実施した。カテーテルの1/2まで挿入した際に抵抗があり、カテーテルを抜去した。その後、看護師B、Cに交代し挿入を試みたが、同じく途中で抵抗を感じ、交換を一旦中止した。カテーテル交換ができなかったことを主治医、病棟師長に報告した。午後、看護師D、Eにカテーテル交換を依頼した。依頼された看護師Dはカテーテルを規定の長さまで抵抗なく挿入したが、陰嚢下部にカテーテルの先端が触れ抜去した。看護師Eに交代し、カテーテルを1/2程度挿入したところ、カテーテルから約20mLの尿の流出があり、ベッドサイドの主治医にバルーンの固定を行っても良いか確認した。医師の指示のもと、看護師Eが滅菌蒸留水を4mL注入したところ抵抗があり、滅菌蒸留水を回収、カテーテルを抜去した。尿道口から出血はなかった。再度、看護師Eはカテーテルを分岐部まで抵抗なく挿入したが、尿の流出はなかった。看護師Eは挿入に抵抗がなかったため、固定のためバルーンに滅菌蒸留水を9mLまで注入したところ抵抗があった。カテーテルを引き、固定を確認し膀胱内に留置されたと考えた。ルートに薄ピンク色の尿が少量流出していたが、看護師Eは、数回のカテーテル交換による出血と考え処置を終了した。他の処置で訪室していた外科医師と看護師Fは、患者の膀胱留置カテーテルの挿入の長さが浅いことに気付き、患者の陰嚢の下部を触診したところ、バルーンに触れた。外科医師はカテーテルを抜くよう指示し、看護師Fがカテーテルを抜いた。直後、尿道口から出血があり、外科医師、内科主治医はエコーガイド下にチーマン・カテーテルのサイズを変え挿入を試みたが挿入できず、泌尿器科医師に往診を依頼した。泌尿器科医師は超音波ガイド下、金属カテーテルの挿入は可能であったが、膀胱留置カテーテルの挿入が困難であったため、膀胱瘻を造設することになった。
膀胱留置カテーテルを規定の長さまで抵抗なく挿入していたが、尿の流出がなかったこと、カテーテルの挿入後に規定量の滅菌蒸留水が注入できなかったことから、尿道でカテーテルが屈曲していた可能性が高く、尿道でバルーンを拡張し尿道損傷が生じた。患者の膀胱留置カテーテルの交換に計5名の看護師が交代してカテーテルの挿入を試みている。度重なるカテーテルの挿入が刺激となり尿道粘膜の胞弱化、抗凝固剤服用等により出血等を助長させたと考える。出血後、カテーテルのサイズを変えて何度も挿入を試みた事が損傷部を刺激したと考える。
・決められた手順、チェックリストの意味を考え遵守する。・膀胱留置カテーテル挿入時のチェックリストを見直し、周知する。・教育研修にモデル人形を使用し、解剖生理を理解した手技を確認する。
看護師5名
胆管炎で入院中の患者に、ワイスタールを投与した1分後、アナフィラキシーショック症状が出現した。看護師は救急カートを持ってベッドサイドへ行った。医師より「ボスミン」の指示があり、看護師は救急カート内にボスミンがないことを伝えた。再度、医師からは「アドレナリン」の指示があった。看護師は、アドレナリンはアンプルだと思い込んでいたためプレフィルド製剤のアドレナリン注0.1%シリンジは目に入らず、「ノルアドレナリンならあります」と伝えた。医師から「0.3mL」と指示があったため、ノルアドリナリン注をダブルチェックして0.3mL準備し、医師に「ノルアドレナリン、0.3mLです」と言い、渡した。患者の状態が落ち着いた後、医師は救急カートをチェックし、アドレナリン注0.1%シリンジを見て「アドレナリンはあります」と言った。医師がアドレナリン注0.1%シリンジを指示していたことが分かった。
記載なし
・ボスミン注がアドレナリン注0.1%シリンジに変更になっていることを、実物を提示して申し送り、注意喚起を行う。・救急カートにもその旨を表示した。・急変時であっても、医師の指示が理解できない場合は医師に再度確認する。
nan
甲状腺癌手術の際、他院からASOの情報が届いていたが、周術期に弾性ストッキングを両下肢に装着した。術後より左下肢に疼痛が出現した。病棟看護師は、患者からの訴えがあった時点で医師に報告し、医師の診察後に弾性ストッキングを除去した。術後1日目、循環器外科にコンサルトし、診察の結果、ASOの悪化による症状と判明し保存的加療の方針となった。症状は徐々に改善した。
ASOの既往があったが、手術室にて術前に看護師が足背の拍動を触知した際、弱いが触知できた。そのため、医師は弾性ストッキングの装着を指示した。病棟、手術室の看護師ともに患者にASOの既往があることを把握していた。弾性ストッキングの装着については、院内の医療安全管理マニュアル内に「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」があり、それに則り医師が判断し、指示して実施している。1.医師が各領域別危険因子の基準をもとに判断2.患者(家族)への説明・承諾3.静脈血栓塞栓症予防方法の実施
・ASOの既往がある場合は、術前の足背の拍動の有無にかかわらず、血栓のリスクが低い場合は弾性ストッキングの装着を行わないことを医師及び看護師の間で共通認識として徹底を図る。・診療科、看護部、手術部では、事例を周知した上で対応策を検討し、院内の全診療科で共有すべき事例と判断して、院内のリスクマネージャー連絡会議で教訓事例として報告し、注意喚起した。・「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」の改訂について、ワーキンググループを立ち上げて検討中である。
nan
頸動脈ステント留置術を受ける場合、翌朝まで床上安静となるため、治療室へ行く前に、患者に弾性ストッキングを装着する。当該患者にも他の患者と同様に、弾性ストッキングを装着した。治療後、医師は、病棟帰室前の12時15分に足のしびれについてカルテに記載した。12時30分に帰室後、看護師は足背動脈を触知し、拍動が微弱であることを観察し、カルテに記載した。その後、14時に患者が足のしびれと末梢冷感を訴えたため、主治医に報告し、弾性ストッキングを除去した。医師は、看護師からの報告を受けて鎮痛剤などの内服対応を行い、16時にも追加で鎮痛剤を使用した。その後、患者が激痛を訴えたため、ソケイ部のシース抜去後に圧迫止血していたテープを取るなどの対応をした。17時50分に下肢造影CT検査を実施し、術前と同じく両側下肢動脈に狭窄はあるが、血流があることを確認した。翌日、心臓血管外科を受診し、ABI(足関節上腕血圧比)検査を行った。また、心臓血管外科から下肢エコー検査を勧められ、治療後7日目に下肢エコー検査を行い、治療後10日目に循環器内科にコンサルトした。しかし、患者は他院での治療を希望して退院した。退院2日後、下肢の疼痛のために救急搬送された。保存的に経過観察していたが、最終的には下肢を切断することとなった。
治療前の血管造影時、左右大腿動脈の穿刺を試みたが穿刺は困難であり、右前腕正中動脈より穿刺して検査を行った。下肢MRI検査で、右外腸骨動脈、左総大腿動脈に描出不良部を認め、狭窄が疑われていた。医師は血管の評価を行い、治療時の穿刺部位を検討していたが、この内容を看護師に伝えていなかった。弾性ストッキングの装着について、医師の指示はなかった。血管内治療の際のクリティカルパスは存在したが、緊急入院であったためパスは適用されなかった。また、パスには弾性ストッキングの項目はなかった。当該病棟では、血管内治療の際、慣例として出棟時に一律に弾性ストッキングを装着していた。看護師は治療後の安静時間を考慮し、患者に弾性ストッキングを装着した。装着の指示のみならず、除去する際の指示もなく、装着する時間は患者によって様々であった。看護師は、ASOの患者には弾性ストッキングの装着が禁忌であることを認識していなかった。入院治療計画書には、「肺血栓塞栓症のリスク評価と予防計画」の項目があり、「低リスク」と評価されていた。予防対策には、抗凝固療法、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法の3つが定型の選択項目としてあるが、低リスクのため選択する必要がなく、弾性ストッキングを装着する必要はなかった。血管内治療後の検査や他科受診後、血管造影や治療を勧めたが、患者は他院での治療を希望して退院した。しかし、この経過を患者の家族に説明していなかった。患者に理解力、判断力はあったが、患者・家族を踏まえた説明を行っておらず、意思統一になっていなかった。
・弾性ストッキングに対する知識不足があるため、弾性ストッキング・コンダクターである麻酔科医師に院内研修を担当してもらい、知識の向上に努めた。・事例の内容と共に弾性ストッキング使用時の注意点、一律に弾性ストッキングを使用するリスクについて緊急回覧し、注意喚起した。・「弾性ストッキング禁忌患者リスト」を作成しなおした。疾患カテゴリ、疾患名が一緒に明記されていたが、疾患カテゴリ、疾患名を分けて、より具体的に疾患名を記載した。また、備考には疾患によって、院内で禁忌とする理由、主治医の検討が必要などのコメントを記載した。・従来、「弾性ストッキング禁忌患者リスト」は術前診察を受ける全身麻酔患者に、術前診察室において使用されていた。作成しなおしたリストを全部署に配布し、全身麻酔時のみでなく、弾性ストッキング適応の判断時に使用できるようにした。・事例を共有し、医師と看護師の連携不足及び患者・家族への説明不足について、各部署で検討した。
nan
ASOの既往あり(3ヶ月前に左PTA施行)、膀胱腫瘍のため、膀胱全摘出術を予定していた。手術3日前、手術室看護師、麻酔科医師による術前訪問を実施した。手術前日、病棟看護師は弾性ストッキングの装着の可否を主治医に確認し、主治医は口頭で可と回答した。手術当日、病棟看護師は弾性ストッキングを両下肢に装着し、手術室へ出棟した。手術中は弾性ストッキングの上からフットポンプを装着した。手術終了時に、下肢に発赤があり、弾性ストッキングを除去した。そのことを病棟看護師へ引継ぎし、HCUへ帰室した。帰室後、下肢にしびれ、運動障害、知覚鈍麻がないこと確認し、弾性ストッキングを除去したままフットポンプを使用した。手術翌日も下肢の発赤は持続しており、患者は左下肢に疼痛があると言った。看護師はASOの既往があり、フットポンプの使用は不適切ではないかと思い主治医へ確認したところ、主治医より使用禁止と指示が出された。術後10日目、下肢の疼痛が続き、形成外科に診察を依頼した。形成外科にてASOが増悪していると診断され、循環器内科を受診するよう指示があった。循環器内科にて前回の治療時より左下肢の潰瘍が増悪、ASOによる左下肢の虚血が進行していると診断された。循環器内科からの指示でセフメタゾールの投与を開始した。また、形成外科からの指示で下肢の処置を継続した。退院が近くなり、抗生剤をクラビットの内服に変更し、再度循環器内科に診察を依頼した。循環器内科の診察にて、下肢の潰瘍の増悪なく、炎症は改善傾向であり、潰瘍の治療として再度左下肢の血行再建が必要であるが、退院後に外来で検討することになった。
入院時の担当看護師はASOの既往があること、毎日下肢の処置を行っていることの情報を得ていた。ASOの患者に対して、弾性ストッキングが禁忌であることを医師と看護師は認識していなかった。形成外科、循環器内科、皮膚・排泄ケア認定看護師が術前に関わっていたが、主治医と情報共有できていなかった。手術患者に対する弾性ストッキングの使用はルーチン化しており、禁忌症例をチェックするシステムがなかった。
・ASOの患者のリスク対策として、検査科に協力を依頼し、術前に全患者に対してABI(血圧差)検査を行い、スクリーニングする。結果に異常があればエコーも行い、主治医が循環器内科に依頼する。既往や治療歴がある患者には、初めからエコーを行い、依頼をする。・ASOまたはPE(肺塞栓症)のどちらの対策を優先するかは、主治医が循環器内科や形成外科とよく検討して最終的に判断し、指示を出す。・病棟看護師は、患者の既往と下肢の皮膚を確認し、情報があれば主治医へ報告、弾性ストッキングの装着について指示を確認する。・術前チェックリストの項目に追加する。・手術室看護師は、フットポンプを装着する際に、下肢に傷がないか最終確認する。・ASOまたはPE(肺塞栓症)どちらかの対策を優先するような場合は、そのリスクについてしっかり説明をする。・ASOの患者への弾性ストッキングの装着は禁忌であることを、医師および看護師に浸透させるため、勉強会を実施し注意喚起する。
nan
回腸上行結腸端側吻合、左尿管皮膚瘻、右尿管結紮手術、手術時間(3時間49分)、手術体位(砕石位)、術中はフットポンプを使用していた。14時37分に硬膜外チューブよりアナペイン2mL/hで持続注入のまま手術室を退室した。14時45分に病棟に帰室し、弾性ストッキングとフットポンプを装着した。左下肢に冷感、一部チアノーゼのような皮膚色の不良あり、触覚はあるが自力で左下肢を動かすことはできなかった。主治医に患者の状態を報告した。主治医は麻酔科医師に相談し、麻酔科医師から、硬膜外チューブを挿入していることの影響や、手術中の体位による神経麻痺の可能性があるのではないかとのコメントがあった。16時に主治医が診察し、硬膜外チューブからのアナペインの投与を中止した。17時に主治医が診察した際、左下肢はわずかに動かすことができたが、皮膚色の不良は持続していた(下肢の左右差等は確認していなかった可能性がある)。22時11分、左下肢の触覚あり、自力での膝立ては可能であった。術後1日目、10時10分、左下肢の膝から下の触覚なく、冷感あり、皮膚色の左右差はなく、左下肢の挙上で疼痛の訴えがあった。10時36分に主治医が診察し、硬膜外チューブによる神経障害の可能性を考え硬膜外チューブを抜去した。砕石位による坐骨神経の圧迫症状、レビテーターによる膝窩の圧迫症状についても考えた。21時、患者の付添者より痛がっていると訴えあり、オピスタン1Aを筋肉注射した。23時29分、患者は「足が痛い、機械を外して」と希望し、両足のフットポンプと左足の弾性ストッキングを除去した。左足の弾性ストッキングを脱がせる際、足に触れるだけで疼痛を訴え、左足の甲や指先の触覚はなかった。硬膜外チューブの抜去後も左足のしびれや疼痛の変化はなく、左膝下の皮膚色はやや紫色で、冷感があった。術後2日目、6時16分、患者は「(創部痛に対しての)痛み止めの注射をしてから少し眠れた。」と言い、足のしびれ、冷感等には変化がなかった。看護師は、医師へ夜間の状態を報告した。下肢動脈・静脈エコー検査、CT造影検査の結果、左膝窩動脈付近で動脈の途絶が認められた。11時45分~13時20分、緊急で動脈塞栓除去術が施行された。フォガティーカテーテルにて膝窩動脈3本の血管のうち、1本の血管の血栓を除去した。術後より、パルクス注、ミオコール静注の投与を開始した。左足背、左内踝動脈触知不可、冷感あり、皮膚色不良、右足背・右内踝動脈触知可、疼痛はあるが術前より良いとのことであった。15時50分、左足背、左内踝動脈触知不可、ドップラーでの聴取不可、膝窩動脈は触知できた。22時、左下肢に腫脹、水疱の形成あり、23時、左下肢の腫脹、水疱ともに悪化した。術後3日目、CK2207に上昇した。左膝下より末梢の皮膚色は不良であった。左下肢に緊満あり、整形外科へコンサルトした。左下肢の内圧を測定しコンパーメント症候群と診断され、減張切開術を施行した。その後、左下肢の切断となった。
術前よりASOの既往に関する情報がなかった。動脈硬化の所見がいつの時点から出ていたか不明である。手術時の体位及び硬膜外チューブ挿入中であること等から、神経麻痺の疑いを考えた。過去に動脈が閉塞した症例の経験がなかった。事例発生後、検査でASOが以前よりあったことが分かったが、患者に自覚症状はなかった。
・少しでも疑いがある場合には、動脈エコー、CT検査等を実施する。・触診できないときは、ドップラーを使用し血流の音を聴取する。
nan
右慢性硬膜下血腫に対してドレナージ術を施行する際に、左右を取り違えたまま、左側の手術を開始した。皮膚切開前の確認を行ったが、手術室に在室している全員で、十分な確認がされなかった。病変と対側の左側頭部を皮膚切開し、骨を切除した際に取り違えが分かり、硬膜切開には至らず、閉創した。その後、右側に消毒・ドレーピングを行い、右側の病変に対する手術へと移行した。予定通り、手術を施行し、ドレーンを留置し、止血を十分に確認した後、閉創した。ドレーンのエア抜きを行って、手術を終了した。術後の頭部CT画像では後出血はなかった。
手術患者の病変画像を手術室の画面に呈示し、十分に供覧できる環境を整えていた。しかし、術直前に他の入院患者の治療方針について、医師間で確認を行い、その後、手術患者の画像を開かないまま、手術が開始となった。また、ジアゼパム投与後、ポジショニングを行う際に、患者が自分で右を向いていたため、健常側(左)が上になっていた。上級医はそれを見て「ポジショニングした後である」と誤認し、頭部を固定した。当事者は固定されている様子を見て、「上級医が体位をとってくれた」と誤認した。
・医師の確認を徹底する(画像を供覧できる環境にしていたが、手術開始時に同様の環境であることの確認)。・医師と手術部看護師で左右に関する相互確認を行う。・左右のある片側病変については、入室前にマーキングをすることを徹底する。
手術中に左右の取り違えに気付いた事例
執刀医は患者入室後、画像モニタを見て、助手医師と外回り看護師と共に「右側」であることを確認した。承諾書の術式には左右の記載はなかった。手術台で患者の顔は右側を向き、右側が下になっていることに誰も気づかず、執刀医は、左側の頭部を剃毛し、局所麻酔を行った。執刀医、器械出し看護師が手洗いした後、助手医師は頭部が動かないように顎部をガーゼとテープでベッドに固定した。執刀医が消毒・ドレーピングを行い、皮膚切開前の確認時、患者名、疾患名、術式、術側は右側と宣言した。その際、画像との照合は実施しなかった。左側の頭部の皮膚を切開し、骨を削った後、硬膜に達する前に、助手医師が画像の所見とは異なることに気づき左右を取り違えたことが分かった。直ちに閉創し、右側の手術へと移行した。
疾患名には右慢性硬膜下血腫と記載があったが、術式には左右の記載は無かった。執刀医が剃毛を始めていたため、誰もが頭部の向きは正しいと思い込んでいた。執刀医が皮膚切開前の確認のため術側の宣言をした際に、患者の頭部の向きを確認しなかった。器械出し看護師は、術側の把握を怠った。また、画像との照合を実施しなかった。各科手術部位誤認防止対策に記載されていなかった。
・承諾書の疾患名および術式には左右の記載をすることを徹底するよう医師へ依頼する。・処置開始前に医師、看護師が共に、術側の指さし確認を行った後、剃毛を実施する。・皮膚切開前の確認時、執刀医が疾患名、術式、術側を宣言する際に、頭部の向きの確認を徹底する。その際、患者の画像も確認する。・各科手術部位誤認防止対策に記載することを検討する。
手術中に左右の取り違えに気付いた事例
患者は左上下肢に運動麻痺が出現し、当院救急センターを受診した。医師はCTで右側の慢性硬膜下血腫と診断した。緊急手術となり、手術申し送り書に右側とオーダした。手術室看護師も右と確認し手術の準備を行った。患者が手術室に入室後、画像で手術部位の再確認をしたがマーキングをしなかった。看護師Aが手術器械の展開、看護師Bが患者のバイタルサインを測定している間に医師は左側を剃毛した。剃毛後、医師は「右慢性硬膜下血腫の手術を行います」とつぶやき、左側の頭部の皮膚を切開した。看護師Aは、医師が右側と言ったのを聞いたが、すでに覆布がかかっていたため患者の頭部は直視できなかった。骨穿頭、硬膜切開したところ血腫がなく、執刀医は左右の取り違えに気付いた。左側の創を閉じ、右側の手術を行った。
左右の取り違えが起こりやすいことを予想して事前に事故を防ぐシステムができていたが、守られていなかった。執刀直前の確認が形式的に行われており、医師・看護師ともに手術部位を見て確認する行為になっていなかった。医師が準備をどんどん先に進めていたので、看護師は左右を確認する余裕がなかった。剃毛前に部位を確認する手順であったが、剃毛後の確認となっていた。剃毛時に画像をみて部位を同定し、マーキングするが今回は省略されていた。通常は、介助する医師と確認していたが、夜間のため医師が一人であった。リスクを予想した皮膚切開前の確認の必要性の認識が低かった。
・患者確認、部位確認、左右確認は、手術直前に複数のスタッフでチェックリストを活用して確実に行う。・医局会、手術室会議等で周知を徹底した。
手術中に左右の取り違えに気付いた事例
脳膿瘍の疑いがあり、同日緊急で嚢胞穿刺排膿術を行うことになった。17時に手術室へ入室となり、手術準備を開始した。画像上、前後方向の位置として前頭部毛髪線近辺に皮膚切開することで穿刺が可能であることを確認し、左右の確認は怠ったまま右前額部の剃毛を行った。U字型ビニールドレープを貼り、ブラッシング、イソジン消毒を行い、術者は手洗いを行うために手術室を出た。手術開始の時点で助手医師が「皮膚切開前の確認を行う」と伝えたところ、外回り看護師から「局所麻酔の手術の場合は皮膚切開前の確認を行いません」と言われたため、確認は行わずに手術を開始した。創部にキシロカインで局所麻酔を行い、皮膚切開、穿頭後、超音波画像で嚢胞の存在を確認して穿刺を行うが、嚢胞内容物の吸引が出来なかった。このため、超音波画像で再度方向や深さなどを確認していたところ、手術の実施状況を見に来ていた主治医から、間違えて右に穿頭を行っていることを指摘された。対側からの穿刺では、左右の大脳半球を隔てている大脳鎌が存在するために、穿刺針が届かない構造となっており、穿刺困難な状況であった。同部位を縫合閉鎖し、改めて本来の術野である左側に剃毛、消毒、局所麻酔を行い、手術を再開した。皮膚切開、穿頭後に嚢胞穿刺と排膿を問題なく行うことができ、手術を終了した。手術終了後にCTを撮影して、術後管理病棟へ入室した。
手術申込書には「穿頭ドレナージ術」と記載され、左右の記載はなかった。画像と部位の十分な確認をせずに手術を開始した。当該事例発生時は全身麻酔手術のみ皮膚切開前の確認を行っており、局所麻酔手術では実施しないルールであった。剃毛前に、医師は手術室内に提示している画像の所見を確認して、剃毛していた。手術準備から間違いに気が付くまでの間に、外回り看護師、器械だし看護師からは、部位に関しての指摘は受けなかった。これは、頭部手術では、術野がドレープで覆われ、外からの部位認識が困難となること、前額部の手術の際には、部位が右でも左でも、器械だし看護師の立ち位置はほぼ同じであるために、術者も含めて、間違いに気づきにくい状態であるからと考える。
・手術申込書、手術説明同意書に部位、左右の記載を行う。・入室前の左右確認を行う。・局所麻酔手術であっても皮膚切開前の確認を行う。
手術中に左右の取り違えに気付いた事例
患者は、右急性硬膜下血腫の進行により切迫脳ヘルニアをきたしていた。Hb3.5g/dL、血小板1.3万等、全身状態から全身麻酔による大開頭手術には耐えられないと判断した。上記の旨を家族に説明し、承諾を得た後、ICUで緊急穿頭血腫ドレナージ術を行った。その際、救命医と看護師が、頭髪の剃毛と消毒を行ったが、本来の術側とは反対の左側を剃毛していた。執刀医は術野の確認を怠り、そのまま消毒、手術を行った。術中所見としては易出血性で硬膜切開時に噴出上の血腫を認め、硬膜下腔の確認は出来なかったが、研修医からの報告で、瞳孔不同の改善を認め、持続する出血に対して、疑うことなく皮下にドレーンを留置し閉創した。閉創後、執刀医は間違いに気付き、すぐに右側に同様の穿頭術を行った。しかし、急性硬膜外血腫が進行してしまい、緊急開頭血腫除去術を行うことになった。
緊急性があり、焦っていた。脳外科医と救命医の思い込みがあった。看護師は状況を共有しないまま、介助に入ったため、気付くことができなかった。
・皮膚切開前の確認の実施についての現状を把握し、推進する。
手術終了後に左右の取り違えに気付いた事例
両側に急性硬膜下血腫があり、脳浮腫の強い左側の骨弁除去による外減圧術の予定であった。手術室で主治医は画像を確認し、剃毛実施前にポジショニングを行う際、主治医は患者の右肩を持ち上げ、助手に右肩の下に肩枕を挿入してもらった。その後、頭部を左に向け頭髪を剃毛しマーキングした。皮膚切開前の確認の際に、主治医は「外減圧術を実施します」と言い、外回り看護師は左右の記載のない手術同意書の術式を読み上げたため、左右の確認がないまま手術を開始した。手術終了後のCTで左右の取り違えを発見し、再手術となった。
緊急手術であったため、担当した手術室看護師は情報収集不足であり術側の確認が不十分であった。システム上、外減圧術の場合は左右を入力しなくても手術申し込みが可能であった。手術チェックカードには外減圧術と記載され左右の明記がなかった。外減圧術のみ左右の記載がないことが常態化しており、左右を確認する体制として不十分であった。患者は意識がなく、手術室入室時の確認において患者自身に左右を言ってもらうことができなかった。剃毛を病棟で実施しておらず、病棟看護師からの申し送り時にも左右の確認がなかった。「麻酔導入前の確認」を複数で確認する体制が崩れており、看護師一人で確認し、マーキング適応外にチェックした。患者入室時に麻酔研修医は左の手術と認識していたが、体位固定や剃毛の際に関与していなかった。体位固定や剃毛前の複数での左右の声だし確認が実施されなかった。剃毛は助手が実施したが、左右を認識していなかった。麻酔医は「皮膚切開前の確認」の時点で次の緊急手術の対応のため不在であった。麻酔管理的に左右どちらの開頭であっても対応できるため左右確認の必要性の認識が乏しかった。両側に急性硬膜下血腫があり開頭した際に主治医も助手も明らかな違和感がなかった。部位誤認防止マニュアル・手術安全マニュアルの周知が不足していた。手術安全マニュアルの「麻酔導入前」「皮膚切開前」「手術室退室前」の確認の役割分担や照合手順が不明確であった。「皮膚切開前の確認」が形骸化していた。チーム内のコミュニケーション不足があった。
・緊急手術であっても剃毛・マーキングは手術室入室までに実施する。・部位誤認防止マニュアルを再周知する。・手術申し込み書、手術同意書、手術チェックカードへの左右記載の徹底を図る(左右記載がない場合は必ず主治医に確認する)。・手術安全マニュアルを見直す(「麻酔導入前」「皮膚切開前」「手術室退室前」の確認時のタイミングや役割分担および何をもとに確認するかを明記する)。・手術に関わるスタッフへの安全確認とコミュニケーションに関する教育を実施する。
手術終了後に左右の取り違えに気付いた事例
5年前から両手関節などの疼痛が出現し、近医整形外科で関節リウマチと診断され、メトトレキサート(以下「MTX」)6mg/週の投与が開始された。その後すぐに、糖尿病治療中の他院の紹介で、当院リウマチ膠原病内科を受診した。関節リウマチと診断し、MTXの投与を継続した。その後、関節リウマチの病勢を抑えるためにMTXを12mg/週まで段階的に増量した(同年に同量投与で関節痛改善)。4年前、AST/ALTが41/45と軽度肝機能障害を認めたが、MTXによる薬剤性肝障害と考えて経過観察とし、次の外来でAST/ALTは正常化した。関節リウマチの病勢が悪化したため、MTXに加えブシラミン200mgの投与を開始した。以後、関節リウマチは寛解状態となり、最終外来まで継続した。3年前、1年前に数回のAST/ALT上昇をみたが、いずれも正常値の上限3倍以内であったため経過観察とし、グリチルリチン酸投与のみで正常化した(MTX投与量は変更せず)。今回、AST/ALTが68/90と上昇していたが、正常値の上限の3倍以内であったため薬剤性肝障害と判断した。副作用軽減のためMTX服用24時間後の葉酸服用を指示した(これまでは48時間後の服用指示)。12日後頃より嘔気・嘔吐・食欲不振があったため近医受診し、黄疸を指摘された。その後、当院消化器内科を予約外で受診し、AST/ALTは362/368と強い肝障害を認めて緊急入院した。入院翌日、無症候性キャリアからのB型肝炎ウイルス再活性化による急性肝炎・重症肝不全と診断され、ステロイドパルス療法、エンテカビル、インターフェロンβによる治療を開始した。肝炎ウイルス再活性化にMTXが関与した可能性は否定できず。入院2日目、肝性脳症をきたしB型肝炎が劇症化した。その後も重症肝不全が改善せず、血圧低下、呼吸状態悪化が進行し、死亡となった。
メトトレキサート投与にあたり、当該科では肝炎ウイルス検査を実施していなかった。経過中、他科で2度手術を実施しており、その術前検査でHBsAg陽性が判明していたが、その対応が不十分であった。
・メトトレキサートの使用に際し、肝炎ウイルス検査及び肝機能検査を確実に行い、適切に対処する。
スクリーニング
4年前のHBV関連検査にて、HBs抗原(-)HBs抗体(+)HBc抗体(-)であった。同年、難治性濾胞性リンパ腫に対して同種骨髄移植を施行した。GVHD予防でセルセプト及びプログラフを投与していたが、1年後に終了した。その1ヶ月後、GVHD発症のためプログラフを再開しプレドニゾロン20mg/日を開始した。同月にIgM-HBc抗体(-)、3ヶ月後にHBs抗原(-)を確認した。薬剤は徐々に漸減しプログラフは1年間で中止、プレドニゾロンは2.5mg/日で維持投与となった。3ヶ月前の尿検査で蛋白尿、血尿等を認め腎臓内科を紹介受診した。腎生検前のスクリーニングでHBs抗原陽性化が判明した。その後、腎生検を施行され、膜性腎症、糖尿病性腎症等と診断された。肝障害、再度HBs抗体の陽性化を認めたことから、HBV再活性化に伴う急性肝炎の発症の可能性が高いと考えられた。
4年前のHBV関連検査にて、HBs抗原(-)HBs抗体(+)HBc抗体(-)であったが、HBV再活性化リスクのある患者であるという認識が不十分であった。
・抗がん剤治療や免疫抑制療法予定患者で、HBs抗体やHBc抗体陽性患者については、肝胆膵内科への紹介受診を検討する。
スクリーニング
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の患者にR-CHOP(リツキサンとステロイドを含む)を含む治験による治療が開始された。当該患者は、治療開始前、HBs抗原陰性、HBc抗体陽性、HBVDNAは陰性であった。B型肝炎の既感染パターンを呈していた。日本肝臓学会作成のB型肝炎治療ガイドラインによると、リツキサンとステロイドを含む化学療法中は、月1回のHBVDNA定量を行うこととされており、血液内科領域においても広く知られていた(標準的)ことと考えられる。しかし、当該患者においては、治療開始後HBVDNA定量は行われていなかった。5コース終了後(約3ヶ月目)に肝機能障害が認められ、HBs抗原陽転化が確認され、HBVの再活性化による肝炎と診断された。ただちに、核酸アナログ製剤が投与されたが、肝炎の鎮静化が見られず、劇症肝炎への進行が危惧される状態である。
治療前に患者がB型肝炎の既感染者であることは把握していた。主治医の交代もあり、このことがプロブレムリストとして引き継がれなかった。また、治験であったため、採血をCRCに任せていたことも要因の一つである。
・チェックリストを作成し、運用する。・病院全体として、電子カルテシステムにおける警告機能を検討中である。
モニタリング
3年前に急性骨髄性白血病が発症し、HBVキャリアの患者。2年前に非血縁間同種骨髄移植を施行した。移植時はHBs抗原陽性であり、エンテカビルを内服していた。その後、2年以上継続でHBVDNA陰性であること、肝障害も認めていないこと等から5ヶ月前からエンテカビルを休薬とした。以後も定期的に血液検査(肝機能、HBVDNA)は行っていた。しかし、4ヶ月前の採血ではHBVDNAは陽性化していたものの検査結果の確認ができておらず、エンテカビルは休薬のままだった。また、2ヶ月前の検査でもHBVDNAは上昇していたが、検査結果を確認できていなかった。1ヶ月前から倦怠感、食欲低下などがあり、近医を受診した。肝機能障害・黄疸・凝固異常などを認め、翌日に当科に紹介され、急性肝炎のため緊急入院した。
外来で施行した外注検査が当日中に結果を確認できない検査であり、その後も未確認のままとなってしまったことが原因と考えられる。
・外来での検査結果は、当日に結果確認できないものは、翌週に必ず確認し、また医師以外の職種(医療クラーク)にも介入してもらう。
モニタリング
胸腺腫で長年経過観察となっていた。赤芽球癆を併発し、血液内科を受診した。7ヶ月前より同科でシクロスポリンの内服を開始した。投与1ヶ月前に既感染パタンでHBVDNA(-)を確認し、輸血後の感染症確認のため、投与開始3ヶ月後の採血でHBVDNA量測定を行った。投与開始3ヶ月後の時点では、DNA量<2.1であったが、4ヶ月前に(-)であったウイルスが(+)に転じていた。その時点で、陽性転化を認識していなかったため、処方担当の血液内科への連絡もなされなかった。肝機能は増減しながら徐々に増悪し、4ヶ月後の採血でAST、ALT共に600台と上昇しており、B型肝炎の再活性化と考えられた。
そもそもシクロスポリンの投与のみでB型肝炎の再燃リスクがあるという認識に乏しかった。HBVのDNA量は2.1以下と出てきた部分に注意をとられ、その上に表示される+、-という表記には注意が足りなかった。
・B型肝炎のキャリア(投薬時はセロコンバージョンしているが)であるという情報が、共有できていないことが最も大きな原因であるため、カルテをコピーペーストする時にも、重要なメッセージに抜けがないか主治医が責任を持って確認する。
モニタリング
1年4ヶ月前に急性骨髄性白血病に対して同種造血幹細胞移植(臍帯血移植)を施行した。事前の血液検査でHBcとHBs抗体は陽性であった。2ヶ月後、尿路感染で入院した。HBV定量検査にてHBVDNAの陽性化を認識した。退院処方にエンテカビルを追加し、退院した。退院サマリーにその旨を記載した(記載日は退院6日後18時)。サマリー記載日の日中、外来受診した際、エンテカビルは継続されなかった。以後AST/ALTが58/59と上昇し、HBV定量は高値となる。さらにAST/ALTが149/310と肝障害が悪化し、緊急入院となった。翌日、エンテカビルによる治療を開始した。その後、肝不全及び敗血症により死亡した。死後に解剖を行った。剖検結果では、死因は敗血症による多臓器不全であった。肝臓ではGVHDの増悪やB型肝炎ウイルスによる劇症肝炎といえる所見はなかったとの結果であった。
・HBV再活性化の危険性に関する認識が不十分であった(エンテカビルの開始基準等が科内で統一されていなかった)。B型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会2013年4月第1版)が、2013年~2014年にかけて改正され、化学療法時にB型肝炎陽性化の対処法が整備されつつある。・入院担当医から外来担当医への情報伝達が不十分であった。・感染症ステータスが一覧しにくく、HBV定量の異常値がわかりにくかった。(2.1logcopies/mlを意味する「<2.1+」と表示されていた。)・患者は自身が既にB型肝炎に感染していることを知っていた。医師は、移植の際の免疫抑制により肝炎ウィルスが陽性になったことやウィルスが増えないように抗ウィルス薬を飲む必要があることを患者に説明していた。・退院時処方は院内処方であり、薬剤師よりエンテカビルの効能や飲み方、副作用や注意事項を説明し、エンテカビルは長期間の服用が必要な薬であることのメモを薬袋の中に入れている。
・診療グループ長は医療の進歩に適合する知識と技術をグループ内で共有する教育システムを構築する。診療科グループ内において最新の論文や、ガイドラインを定期的に紹介することや、診療科のマニュアルを定期的にアップデートし、情報共有を図る。・病院長は、重要事項を入院担当医から外来主治医へ情報伝達する方法を確立する。入院担当医は、退院後の初回外来までに退院サマリを完成させる。また、その中でとりわけ強く伝えたい事項は「掲示板」にも記載する。外来主治医は、退院サマリと掲示板に必ず目を通した後に、初回の外来診療を行う。退院サマリの作成期限は、退院2週間後、退院後初回外来予約日前日、転院時(退院サマリを添付する場合)のうち、もっとも早い日時とする。・診療グループの構成員は医療情報部門と協力して感染等のステータスを容易に一覧できる方法を確立する。B型肝炎の感染状況を把握できる血液検査・HBセットを作成した。・検査部は、医療情報部門と協力して血液検査において遅れて判明する結果や異常値を受け手に確実に伝達する病院システムを検討する。・肝臓専門医による職員研修を企画した。また、HBs抗原陽性の場合、肝臓専門医に相談するように全職員に向け周知した。
核酸アナログ投与
患者は昨年手術を受け、術後よりXELFO・アバスチン療法を施行した。今回、中央点滴室で抗がん剤の点滴(オキサリプラチン10日目の投与)を施行していたところ、開始5分後より咳嗽が出現し気分不良を訴えたため、点滴を中止し主治医へ報告した。ソル・メドロール静注用1000mgを点滴静注したが、症状が改善しないため救急コールした。救急スタッフ到着時、意識レベルはクリアであったが、苦悶様表情、大呼吸、頻呼吸、両側前胸部喘鳴、全身発赤を認めた。右肘正中よりラクテック500mL静注されており、気道開通、会話可能、橈骨動脈触知良好で、血圧や酸素飽和度は保たれていた。アナフィラキシーショックの診断で高度救命救急センターに入室となる。その後、症状は軽快した。
オキサリプラチンに対する過敏症はいつ発症するか明確ではないが、昨年度の本院中央点滴室における過敏症発現時期データによれば、プラチナ製剤は7から16回目(中央値10回目)に起きている。本事象も10回目の投与で過敏症が発症したものである。本事象においては、知識の共有と連絡体制が周知徹底されていたため、注意深く観察でき、過敏症出現と同時に決められたルールに従い対応ができた。
・抗がん剤の薬理作用及び急変時の対応方法について再確認した。・中央点滴室内では常に重篤な過敏症が発症することが予測されるので、発症時の体制について再検討を行い、体制を更に強化する。
患者の状態の変化が腫瘍用薬の副作用である可能性がある事例
障害残存の可能性がある(低い)
アービタックス注射液の初回投与を開始した。5分間患者に付き添い観察を行い、変化が無い事を確認し退室した。約3分後に同室他患者のケアのため訪室すると、患者は振戦し、後ろに倒れこむ様子があり、スタッフコールをした。全身冷汗と血圧低下・皮疹出現があり、アービタックス注射液を中止し、ルート内を吸引した。その後酸素を投与し、ステロイド投与、輸液負荷を行い約10分後に改善した。
アービタックス注射液による副作用出現の可能性については、説明書を用いて説明しており、同意書も取得していた。初回投与の時間は主治医も把握していたが、副作用出現時、外来処置を行っており、他の医師が対応した。初回投与で、リスクの高い化学療法であったが医師と看護師の連携がとれていなかった。
・急変に備えて医師と連携し、連絡体制の確認や酸素投与等の事前準備を行う。・アービタックス注射液初回投与時の体制について、医師との取り決めを明文化し、急変時に迅速に対応できるようにした。
患者の状態の変化が腫瘍用薬の副作用である可能性がある事例
障害なし
肝細胞癌多発肺転移に対し全身化学療法が施行されたが、増大するため気管支動脈および肋間動脈から動注化学塞栓療法を施行した。動注化学塞栓療法(気管支動脈)施行中に脊髄梗塞を起こし、左下肢の疼痛、しびれ、麻痺が認められた。
気管支動脈や肋間動脈からの化学塞栓療法は神経障害のリスクが高い手技である。薬剤注入に際し、慎重に手技を行ったが、微小な血管などを見逃していた可能性がある。術前に本合併症を含め患者に十分に手技の説明をし、同意を得ていた。
・化学塞栓療法のようなリスクの高い手技を行うときには、術者のみならず、複数の医師の詳細な確認やキシロカインテストを行う。
患者の状態の変化が治療に伴う合併症の可能性がある事例
不明
初回のアバスチン点滴静注用を90分間で投与する指示であった。しかし輸液ポンプの流量の設定を間違え60分間で投与した。アバスチン点滴静注用投与終了時に当事者が間違いに気がついた。すぐにバイタルサインを測定し、気分不快等がないか確認し、医師へ報告した。医師からは経過観察との指示であった。治療終了時のバイタルサインや体調の変化は見られなかったため、そのまま帰宅となった。
アバスチン点滴静注用の投与時間は初回は90分、2回目は60分、3回目からは30分での投与となるため、すぐに流量の設定間違いに気付かなかった。他の看護師にも確認をしてもらったが、そこでも設定間違いに気付かなかった。
・誰がみてもわかるように点滴ボトルと注射指示箋に何回目の治療であるか、流量を赤字で明記する。
他の投与日の速度との間違い
○事例では医師の指示内容は不明であるが、看護師の記憶に頼るのではなく、指示書に記載された投与速度や投与時間をもとに設定するとよい。○投与回数によって速度の変更が必要であるという内容の情報提供に、病棟薬剤師が関わるとよいだろう。
ヒヤリ・ハット事例
5-FU注は側管から輸液ポンプで3~4mL/hで投与していた。メインルートは、シスプラチン注投与の腎保護のため大量補液を行っており、輸液ポンプを使用して110mL/hで投与していた。患者の入浴後に担当看護師は、別の看護師とダブルチェックをして輸液を再開したが、輸液ラインが交差していることに気づかず、2つの輸液の流量を逆に設定して再開した。そのため、5-FU注は110mL/hで投与され、5日間持続点滴の残量である5-FU注3515mgが1時間45分で投与された。事故発生後、通常よりも早くから口腔粘膜障害が出現し、投与後2週間で好中球が0になり骨髄抑制が強く現れ、遷延した。対症治療でグランの投与や血小板輸血を行い、徐々に軽快し、事故後約1ヶ月の入院加療となった。
輸液を投与する際の基本的な事項が確認出来ていない。ダブルチェックを依頼された看護師は、担当看護師が十分確認を行っているものだという安心感から、5-FU注の輸液ボトルと残量のみ確認していた。投与再開後の確認を行っておらず、発見が遅れた。注意喚起のために輸液ポンプ及び5-FU注の輸液ラインに「5-FU」のシールを貼っていたが、大丈夫だという思い込みから、効果が発揮されなかった。また輸液ポンプの高さを調節するネジが緩んでいることが多く、ドアや体にあたると容易に向きが変わりやすい状況にあった。抗がん剤を取り扱うことが多く、慣れから抗がん剤を扱う緊張感が薄れていた可能性があった。
・抗がん剤の取り扱い、輸液ポンプの準備と管理の看護手順を遵守する(輸液ボトルから針刺入部まで指で辿って、指差し・声だし確認を徹底する)。・ダブルチェックは、依頼された看護師が間違いがないか確認することであることを再認識し、ダブルチェックの基準、手順を遵守する。・抗がん剤は毒性のある薬剤であり、医療者の管理不足により、高度な副作用、場合によっては治療関連死のあることを再教育する。・5-FU注の5日間持続投与方法は、1日分を調剤して、毎日更新することに変更した。
操作する輸液ポンプの取り違え
○薬剤を希釈した場合の安定性、混注時の細菌汚染の可能性も考えて、シリンジポンプで投与できるよう1日投与量で調製することが望ましい。
医療事故情報
R-CHOP療法初回投与の患者に対してリツキサン注の投与を開始していた。50mL/hで医師が開始し、初回投与のため50mL/hずつ流量を変更していく指示であった。100mL/hから150mL/hへ流量を変更する際、誤って200mL/hへ流量を変更した。指示通りに250mL/hへ流量を変更する際、他の看護師が間違いを発見した。血圧は150台、HR58回/分、自覚症状は特になく、医師へ報告し経過観察となった。
リツキサン注は初回と2回目以降では投与開始速度に変化があり、時間ごとの流量の変更も異なっている。R-CHOP療法については病棟で作成したチェックリストがあり、当日も使用していた。流量を変更した際には輸液バッグに時間、流量を記載するようにしており、注射ラベルが貼ってあったが、確認を怠った。
・初回は30分ごとに50mL/hずつと流量を変更する回数が多いため、1人で確認し流量を変更することもあるが、できるだけダブルチェックで行う。・ラベルをもう一度確認し流量の変更を慎重に行う。
速度変更の間違い
○当事者は、50mLのところを100mL上げると思い込んで設定したのか、輸液ポンプ等の設定の際にボタンを押し間違えたのか、両方の可能性がある。このような事例が発生した場合、間違いの背景を分析しておくことが次の医療事故を防止するためには必要である。
ヒヤリ・ハット事例
患者は原疾患に対し化学療法施行目的で入院中であり、看護師Aは化学療法施行前の前投薬終了後、本来ならばドセタキセル点滴静注を投与すべきところ、ハーセプチン注射用を投与した。次の勤務者である看護師Bへの引継ぎの際、投与順序の誤りを指摘された。普段は化学療法のレジメンを確認しながら実施していたが、今回は、他科の入院患者であり化学療法のレジメンもなかった。そのため、看護師Aは電子カルテ画面で抗癌剤の投与時刻を確認後、注射処方箋通りに投与した。電子カルテの画面は、投与時刻の順番に表記されるが、注射処方箋は、電子カルテの画面とは異なり、医師がオーダ入力を行った順番に印刷されるシステムとなっている。看護師Aは、注射処方箋に印刷された抗癌剤の投与時刻を確認せずに上から順番に投与したため、投与順序の誤りに気づかなかった。
今回、普段とは異なる他科の患者が入院し、化学療法の手順が異なっていた。看護師Aは、電子カルテ画面で抗癌剤が投与時刻の順番で並んでいたため、注射処方箋も同様であると思い込み、抗癌剤の投与時刻を十分に確認しなかった。
・抗がん剤をオーダする際は、可能な限り投与時刻の順番に処方を行う。・抗がん剤を投与する前に、注射処方箋の内容を十分確認する。
投与順序の間違い
○事例では、電子カルテと注射処方箋、処方オーダのシステムが連動していない可能性がある。オーダ時に時間を入力すればその時間通りに並んで表示され、情報が共有できるシステムが望まれる。○レジメンのない治療や他の診療科の化学療法の際は、オーダすると薬剤部が介入をする仕組みになっている医療機関もある。
ヒヤリ・ハット事例
精巣癌に対してBEP療法1コース目を開始していた。投与日2日目、12時30分よりシスプラチン注、ベプシド注、ブレオ注射用の順番で抗がん剤投与予定であった。ベプシド注はプロトコールの時間より9分遅れで開始し、指示通りの流量で投与していたが、プロトコールより40分遅れの17時10分に終了した。抗がん剤の投与が遅れていることは、処方箋に記載していなかった。担当看護師Aは、16時45分頃に患者の担当ではない看護師Bより「ベプシド注の終了のアラームが鳴っていたが、薬剤が少し残っていたので続けて投与しています」との申し送りを受けた。担当看護師Aはこの時間であれば次の薬剤に交換ができるだろうと思い、処方箋に実施のサインを行ってからブレオ注射用を患者の元に持って行った。その際にベプシド注が少し残っており、ブレオ注射用に交換できなかった。しかし、この後すぐに自分が交換に来れば良いと思い、16時50分にブレオ注射用の認証を行ったが、交換せずに一旦ブレオ注射用は詰所の処置台へ持ち帰った。看護師Aはこの後すぐに自分が投与しに行くので良いと思い実施のサインは取り消さなかった。詰所に戻り、看護師Aは看護師Cに「ベプシド注の残量があり交換できていないが認証は済んでいる」ことを伝えた。看護師Cは記録をしながら伝達を受けた。その後、17時5分にナースコールがあり看護師Cがプロトコールを確認して時間通りのマンニットール注射液を持ち訪床し、17時10分に認証を行い交換した。その際に、患者へ利尿剤である事を伝えると「ブレオじゃないんですか?」と質問を受けたことから間違いに気付いた。
プロトコール通りの時間で抗がん剤投与が行えず、投与時間が延長し時間がずれていく。看護師の伝達が上手くいかなかった。記録をしながら聞いてしまった。自分が投与するから良いだろうと思い、交換していないのに認証を行った。ブレオ注射用を交換しないのに先に認証をしてしまった為、マンニットール注射液を認証した際に順番間違いであるとのアラームが出なかった。看護師Cは抗がん剤の投与時間が遅れていることを知っており、ブレオ注射用に交換できていないことを聞いていたが、プロトコールで確認した際にはそのことを忘れており、時刻で確認し17時指示のマンニットール注射液と勘違いした。処方箋には投与時間が遅れていることを記載していなかった。
・医師へ協力してもらい開始時刻以外の時間指示をなくし、順番のみの指示にしてもらう。・プロトコールより時間がずれていく場合は、処方箋の時刻を訂正する。・時間が遅れていることを共通認識できるようプロトコールに大きく表示をする。・プロトコール及び処方箋へサインする際は、薬剤交換する直前にし、交換できなかった場合はサインをやり直す。・薬剤を持って訪床したとしても、薬剤を交換できないのであれば認証はしないようにする。・勤務交代時や伝達をする際は、処方箋を見ながら指差し呼称で情報伝達をする。・化学療法の投与手順を作成し、統一した看護が行えるようにする。
投与順序の間違い
○ベプシド注が40分遅れた理由が記載されていないので、分析するとよい。医師は薬剤の効果等の意図があって時間設定の指示を出す場合があるので、時間が遅れる際も医師に報告し、指示を受ける必要があろう。○粘性の高い薬剤は輸液ポンプによっては管理が難しいため、薬剤師や臨床工学技士による薬剤や輸液ポンプの特徴の情報提供も必要であろう。
ヒヤリ・ハット事例
注射用エンドキサン100mg0.46バイアル2本の指示であった。1本目と2本目の間隔を12時間開けるところ、連続して投与した。
当事者は初めて対応する化学療法のレジメンであった。事前学習が不十分であり、投与方法を把握していなかった。周囲の看護師は、当事者が初めて対応するレジメンである事を知らなかった。当事者は、同じ経験年数の看護師と確認しながら行った。投与スケジュール表を見たが、よく分からなかった。
・投与スケジュールを視覚に訴え、スケジュールが分かりやすいものに改善する。
投与開始時間の間違い
○指示や投与スケジュールが誰が見ても誤解のない内容であるように検討することは重要である。○事例の当事者は職種経験1年の看護師であり、腫瘍用薬のダブルチェックは、経験のある看護師と行うのが望ましい。
ヒヤリ・ハット事例
脳室ポートが留置されており、抗がん剤の静脈内投与と髄腔内投与が行われていた。10:30~11:00に27G留置針でリザーバーを確保し、脳脊髄液を70cc排除した。次に医師は看護師が準備した髄腔内投与用の薬剤(注射用メソトレキセート、キロサイド注のところを、誤ってオンコビン注射用を準備)を清潔なシリンジに吸ってオンコビン注射用を髄腔内に注入した。13:00に看護師が静脈内投与用の薬剤を準備しようとした際、髄腔内投与用のメソトレキセートが残っていることから、オンコビン注射用を髄腔内に投与したことに気づいた。
看護師は、髄腔内投与は初めてであった。プロトコールの学習をしておらず、髄腔内投与の学習は手順を見て、必要物品の確認も行った。レジメンオーダであり、薬剤師が調製し病棟に上がってきた2つのトレイのうちの1つだけだと思い込んだ。シリンジの薬剤(オンコビン注射用)は髄腔内投与用だと思い込んで、ベッドサイドに持参した。本プロトコールは本症例が1例目であり、看護師は初めての処置であった。シリンジに薬剤名と投与方法を記載したシールを貼っていたが見づらかった。注射以外の誤注入防止のためにカラーシリンジを採用しているが、髄腔内投与に関しての取り決めはなかった。薬剤師によって治療内容、投与方法、注意点などに関する手順書が作成されていたが、当日の担当看護師は確認していなかった。手順書は作成されていたが、医師と看護師への教育が徹底されていなかった。看護チームを編成したばかりであり、看護師は以前行った学習会にはチームが異なり参加していなかった。チーム内で学習会に参加したスタッフと参加をしていないスタッフが混在していたが、学習会を開催していなかった。
・医師、看護師の薬剤投与時の確認方法(6R)を強化する。・慣れない処置、手技などの教育を徹底する。・髄腔内投与時に使用するシリンジとラベルの貼り方について、薬剤部と改善策を検討する。・脳神経外科医師、腫瘍内科医師、病棟看護師、薬剤部、医療安全管理室、看護部などが合同カンファレンスを行い、背景要因を分析し、さらに改善策を検討していく予定である。・シリンジを緑シリンジ等へ変更するなど院内で検討する。
静脈内投与→髄腔内投与
○髄腔内投与の際にシリンジの色を変えることは一案であるが、調製液を受け取った医師や看護師がシリンジの色の意味を知らなければ間違える可能性があるため、周知が必要である。○髄腔内への誤った投与は、薬剤によっては生命に関わる危険があるため、シリンジの口径を変える等、接続できないようにする取り組みを全国規模で検討していくことも重要ではないか。
医療事故情報
ベルケイド注射用を静脈注射する指示であったが、思い込みから皮下注射した。
注射伝票に「iv」と記載されているのを見落とし、皮下注射すると思い込んでしまった。
・患者の命や治療に直接関与する仕事であることを今一度心に留め、薬剤名、薬剤量、時間、投与経路など伝票に書かれているもの全てについて確認を行うことを周知徹底した。
静脈内投与→皮下投与
○ベルケイド注射用は静脈注射、皮下注射のどちらでも投与可能であることから、日頃は皮下注射の指示に慣れていた可能性や、他の薬剤の投与経験からの思い込みがあった可能性がある。「思い込み」は何から発生したのか分析すると、現場で活用できる具体的対策に繋がることもある。
ヒヤリ・ハット事例
悪性リンパ腫の治療のためアドリアシン注用(ドキソルビシン塩酸塩)を投与後、患者に痛みがないか尋ねた。患者が軽度の痛みを訴えたため確認すると、左前腕部の点滴穿刺部周囲に発赤と腫脹を認めた。血管外漏出と判断して薬剤師に相談し、マニュアル通りクーリングを実施、医師によってステロイドの投与を行った。翌日、皮膚科へ診察依頼し、ステロイドの局所注射、クーリング継続、抗アレルギー剤で対応し経過観察をしていた。一時改善傾向にあったが、その後、皮膚潰瘍が疑われ、漏出部分の一部は黒色壊死となる。今後、整形外科にて伝達麻酔下の皮膚の郭清と、状態により植皮を行う予定となった。
投与前に逆血確認を行った際に、逆血はなかったが、医師の指示通り生理食塩水をフラッシュし疼痛がないため適宜観察をしながらアドリアシン注用を投与した。次のエンドキサン投与前に患者に疼痛の確認を行うと少し痛いと発言があり、留置針刺入部に発赤と腫脹を認めた。なお、点滴時の逆血確認に関するマニュアルはなかった。また、点滴は血管確保されヘパロックしていたものを使用した可能性が高い。患者家族にアントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤のリコール現象について説明していた。皮膚科へ受診するも水疱等が一時改善傾向にあったため経過観察を行っていたが、次第に悪化し黒色壊死を生じ、植皮を行うこととなった。
・毒性の強い薬剤については、特に点滴時の観察に注意を払う。・抗がん剤の血管外漏出による皮下組織への影響が患者の想像よりも場合によっては大きくなることを医療者側と患者側とで共通認識を持ち、悪化する前に定期的に受診をするよう説明を行う。・アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出治療剤を早期にかつ積極的に使用する。・血管外漏出に関するマニュアルを改善する。
nan
○事例では、アドリアシン注用の投与時に逆血が確認できないまま投与したため漏出量が多くなり、症状が悪化し、壊死に至った可能性がある。早期に発見して対応することが重要である。
医療事故情報
12時40分、夫とともに外来化学療法室へ入室した患者をリクライニングチェアに案内した。4回目までと同様に血管を怒張させるため右手前腕にホットパックを使用し、当番医により、24Gのインサイト針で、右前腕橈側静脈(手関節より10cm程中枢側)に血管を確保し、前投薬を開始した。13時20分、逆血確認後、タキソテール注射液(タキソテール95mgを5%ブドウ糖注射液250mLに溶解)を40mL/hで開始した。また開始の際、前回と同様に手足症候群予防のためにフローズングローブとフローズンソックスを着用しており、フローズングローブの重みで手関節が屈曲しルートに圧がかかることなどを避けるため、両腕の下にクッションを敷き、腕の位置を整えた。13時30分、抗がん剤開始による過敏症が無いことを確認後、逆血があること、漏出のないことを確認し、250mL/hに滴下速度を調整した。タキソテールはアルコールを飲んだような状態になるため、患者はその後入眠した。夫も待ち時間を院外で過ごすため退室された。13時45分、14時ともに、逆血があること、漏出のないことを確認した。その時点でタキソテールは残120mL程度であった。その後は、目視下で、滴下速度が減速していないことを確認した。患者は入眠しており特に訴えはなかった。14時20分、覚醒した患者から「点滴は落ちていますか」と質問あり、他看護師が目視で減速のないこと、点滴の残量に問題がないことを確認し、滴下していることを伝えた。その際、痛みなどの訴えなく、再度入眠された。14時30分(タキソテールの残20mL程度)、患者より「ちょっと腕が重だるい感じなんです」と訴えあり、確認すると穿刺部位を中心として15cm大の紅斑と、右前腕肘関節より3cm程度末梢側に浮腫を認めた。血管外漏出マニュアルに従い、すぐに滴下を中止しシリンジで吸引するが、内容液は吸引できず、逆血もなく抜針した。刺入部から薬液を押し出したが、極少量の浸出液の排出があるのみであった。漏出部位のマーキングを施行し、すぐに医師に報告した。その後、壊死性抗がん剤であったため、医師により、穿刺部位を中心に15cmの紅斑部分に、1%キシロカインポリアンプ10mLとソル・コーテフ100mg2mLの混注薬を26G注射針でまんべんなく皮下・皮内に注射した。皮膚科医師の指示により、再度、医師により、1%キシロカインポリアンプ10mLとソル・コーテフ100mg2mLの混注薬を、穿刺部位を中心に15cmの紅斑部分に26G注射針で皮下・皮内注射した。その後、デルモベート軟膏を漏出部分と思われる範囲よりやや広め(手背~前腕全体)に塗布した。皮膚科の診察までは、手背~前腕全体に対し、アイスノンでの冷却と、挙上を行った。15時10分頃、医師の診察をうけ、自宅で患部へのデルモベート軟膏塗布・冷却・挙上、定期的な皮膚科受診が指示された。壊死まで至っていないが、炎症による色素沈着を認めた。
右乳がん術前で、術後の血管確保は左手のみとする必要があったため、術前は毎回右手で血管確保し治療を行っていた。このため、血管が脆弱になり血管外漏出が発生した可能性がある。タキソテール注射液投与の残り約30分間は他の患者対応を行っており、目視での滴下確認は実施していたが、自然滴下が良好で減速がないこと、患者は入眠しており体動がなかったことから、皮膚の観察と逆血確認は実施しなかったため漏出の発見が遅くなった可能性はある。患者が入眠しており自覚症状を早期に発見できなかった。医師による同意書に血管外漏出の説明が入っておらず、口頭での説明に終わっていた。
・血管外漏出は合併症として起こり得るが、血管確保は右腕と左腕を交互に行うことで、未然に防げた可能性はある。・早期発見については、組織間隙が広ければ、自然滴下が良好で減速がなかったとしても血管外に注入されることを再認識し、滴下観察だけでなく皮膚・逆血の確認を行う(特に起壊死性抗がん剤については15分毎には行う)。・タキソテール注射液に関しては患者に協力を依頼し、起きていていただく。あるいは付き添いの家族が居るのならば協力を得る。
nan
○乳がんの治療のため、血管確保が片側の上肢に限られる場合は、下肢での血管確保やポートの挿入も検討するとよいだろう。
医療事故情報
ナベルビン注投与のため左手首にスーパーキャス24Gにて血管確保した。1本目は指示通り投与でき、2本目のナベルビン注の投与を開始した。逆血があり、投与速度も指示通りであった。その後、滴下速度が遅くなってきたため手の位置などを確認し、初回であったためオリエンテーションしながら様子を観察していた。時間がかかりすぎるため他スタッフに声を掛けて確認してもらうが、速度は早くならなかった。右手に血管確保しようとしたができなかったため医師に報告すると、そのままのルートにて実施の指示を受けた。結果、ナベルビン注投与に18分要した。その際、血管炎は確認できなかった。その後、医師が診察しリンデロン軟膏処方となった。7日後の受診の際、皮膚障害が認められた。
ナベルビン注は、血管炎予防のため10分以内で投与しなければならないが、投与に18分要したことにより皮膚障害が出現した。
・点滴投与速度が指示通りでない場合、早めにスタッフに確認してもらう。・壊死性抗がん剤(タキサン系以外)投与患者の血管確保時、可動域の大きい部位で24Gしか挿入できないようなときは穿刺前に医師に確認する。
nan
○患者に影響が大きい壊死性抗がん剤や炎症性抗がん剤を投与する際の末梢静脈ライン確保は、手首のような可動域の広い部位の細い血管の選択や細い留置針の使用は避け、患者の状況に合わせて中心静脈カテーテルやポートの留置を検討するのがよいだろう。事例では血管外漏出は起こしていないが、投与に時間がかかったことで血管炎を起こした可能性がある。○ナベルビン注はインタビューフォームに「静脈炎の発現頻度は、短時間での投与の方が有意な差は認められないものの低くなる傾向がある」との解説があり、参考として「静脈ポートを使用して中心静脈から投与している例もある」と記載がある。
ヒヤリ・ハット事例
患者は腫瘍用薬の投与をしていた。患者は「昨日、ここから点滴をしたんですけど痛くて赤くなっている」と話した。左前腕に発赤があり圧痛を訴えた。腫瘍用薬施行時は逆血もあり問題なく終了していた。カルセド注射用がビシカント製剤であり主治医に報告し診察してもらった。退院であったためステロイドの軟膏の処方があり「なるべく患部をクーリングしてください。家でもお願いします。症状増悪時には皮膚科か当院へ受診してください」と指示があり、患者に説明した。
化学療法施行時は主治医が逆血確認し、カルセド注射用を投与し問題なかった。患者は異常をきちんと報告できていた。
・患者指導の継続と、逆血、漏れの確実な確認を行い記録する。
nan
○患者に腫瘍用薬の血管外漏出の症状について繰り返して教育することは重要である。
ヒヤリ・ハット事例
10:25頃にポンプのアラームが作動し、他看護師が訪室したが、異常はなかった。その後、10:29に担当看護師が訪室した際に、末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテル(PICC)のピンクルートの接続部とシュアプラグが外れており、ベッド上にアクラシノン注射用と血液が漏れていることを発見した。アクラシノン注射用は200mL/hで投与されており、前後の時間を考慮すると漏れている量は15~20mL程度と考えられる。ピンクルートは血液で満たされており、生理食塩水を通して閉塞していないことを確認し一旦ロックした。病棟係長に報告し、化学療法室に指示を仰ぐように指示があり、状況を報告、相談した。抗がん剤と血液で汚染されたシーツは袋へ入れてリネンへ洗濯を依頼した。衣服は自宅に持ち帰って、他の洗濯物とは一緒にせず2回洗うことが望ましいとのことを患者へ伝えた。病棟薬剤師にも報告し、アクラシノン注射用は壊死起因性抗がん剤であり、血管外漏出を起こすと潰瘍や壊死を起こす薬剤であり、皮膚に付着しても同様のことが起こりうる可能性があるとのことであった。主治医にも確認し、PICCをロックしたまま、シャワー浴してもらった。また、写真撮影しておき、継続的に皮膚の状態を観察していくこととなった。
PICC挿入後1日目であった。腕の下に接続部が来てしまうような挿入部位ではあったが、緑ルートはしっかりと接続されていたため、ピンクルートの接続のみが緩くなっていたと考えられる。患者の衣服は生理食塩水やアクラシノン注射用が付着し濡れていたが、ナースコールはなかった。シュアプラグや、PICC自体に破損はなかった。
・シュアプラグとメインルートの接続だけではなく、PICCとシュアプラグの接続も確認する。
中心静脈カテーテルとシュアプラグの接続外れ
○投与前に輸液ラインとシュアプラグの接続の確認はなされるが、カテーテルとシュアプラグは接続が一体化して見える場合もあるので、確認が抜けることがある。
ヒヤリ・ハット事例
看護師Aがエンドキサン注射用を接続したが、調整用薬液注入コネクタ(BDファシール輸液アダプタ)の接続が緩かったため、接続部から漏れ出した。看護師Bが気づき、同席していた主治医が接続を差し込み直そうとしたところ調整用薬液注入コネクタの接続部が完全に外れた。エンドキサン注射用は飛散し、患者、看護師、医師、環境へ曝露した。看護師Aは新人であり、エンドキサン注射用の接続は2回目であった。調整用薬液注入コネクタの接続部は曝露予防のため特殊な構造であり、パートナーの看護師Bは接続の方法と、液漏れの可能性があることを説明していた。しかし、看護師Aが接続しているのは見ていたが、実際に接続部分を触ってまでは確認しなかった。
調整用薬液注入コネクタの接続部は特殊であり、看護師Aの使用回数は2回目で不慣れであった。パートナーの看護師Bは正確に接続されているのかダブルチェックをしなかった。調整用薬液注入コネクタの構造が外れ易い。
・エンドキサンの接続部は特殊なため、接続が根本まで確実にできているか確認を行う。・接続した後は、パートナーの看護師と正確に接続されているのかダブルチェックを行う。・エンドキサン接続の方法について技術演習を行う。・調整用薬液注入コネクタの使用方法について安全管理部よりニュースレターを発行し注意喚起を行った。
輸液バッグと曝露対策の調整用薬液注入コネクタの接続外れ
○調整用薬液注入コネクタ(BDファシール輸液アダプタ)に輸液ラインを看護師が十分に押し込まなかったために液漏れし、医師が押し込んだところ、輸液バッグから調整用薬液注入コネクタのスパイク針が外れた可能性がある。輸液バッグを吊るした状態で挿入するとスパイク針の孔から薬液が漏れるおそれがあるので、注意が必要である。
医療事故情報
心臓マッサージを必要とするような緊迫した状況での処置であった。医師の指示は「ボスミン」であったが、救急カート内にはボスミン注は配置されておらず、アドレナリン注0.1%シリンジが配置されていた。この病棟の救急カートの薬剤の引き出しには、ノルアドリナリン注1mgなどを含め18種類の薬剤を配置しており、ノルアドリナリン注1mgのアンプル製剤は引き出しの手前中央に、アドレナリン注0.1%シリンジのプレフィルド製剤は引き出し左側中ほどにあった。当該病棟では、医師がアドレナリンを指示する際に「ボスミン」と呼称する場合が多く、「アドレナリン注シリンジ」の名称の横に「(ボスミン)」と追記したシールを貼付していたが、看護師はシールに気付かず、救急カート内にあったノルアドリナリン注を取り出した。看護師A(経験年数17年)は、過去にボスミン注を使用したことがあったため「ボスミン」を知っていた。看護師B(経験年数7年)は、「ボスミン」を知らず、ノルアドリナリン注の空アンプルがあったため、ボスミン注=ノルアドリナリン注だと思った。そのため、看護師Bはノルアドリナリン注を準備した際に薬剤の名称を読み上げず「ボスミン投与します」と言った。看護師C(経験年数2年)は、アドレナリンとノルアドレナリンはどちらも血圧を上げる薬剤だと認識し、「ボスミン」は知らなかった。看護師A、B、Cは、救急カート内に「アドレナリン注0.1%シリンジ」があることを知らなかった。この病棟では、救急カートを使用するような状況になることがほとんどなく、看護師による定期点検は1ヶ月に1回であった。
・医師から口頭指示を受けたら、準備した薬剤名を読み上げ、お互いに指示内容を確認のうえ実施する。・救急カート内に配置している薬剤を中心に、急変対応に結び付ける病棟研修会を開催し知識を深めた。・看護師は、カンファレンスの時間を利用し、救急カート内に配置されている薬剤や物品を確認した。・救急カート内の薬剤を見直し、ノルアドリナリン注を除いた。・緊急時には、状況に応じて「院内救急呼び出し(院内放送)」を活用し、他診療科の応援を仰ぐ。・院内全職員に「医療安全ニュース」で周知を図った。1)看護師に対し、「医師によってはアドレナリンのことをボスミンと言って指示することがある」ことを周知した。2)医師に対し、「ボスミンではなく、アドレナリンと指示する」ことを周知した。
<患者X>早朝、看護師Aはスタッフステーション内のモニタで患者のSpOが低下していることに2気付き、訪室した。酸素流量を増量したが改善しないため、医師に連絡した。4時38分、到着した医師Eから心臓マッサージの指示があり、看護師Bが心臓マッサージを実施したがHR20~30回/分、血圧測定はできなかった。医師Eから「アトロピン1アンプル、ボスミン1アンプル」と指示され、看護師Aは救急カート内を確認し、「ボスミンはないです」と返答した。応援に駆け付けた看護師Cは、ノルアドレナリンは血圧を上げる薬剤と認識し「ノルアドしかないです」と言った。医師Eより「ノルアドでもいいから投与して」と口頭で指示があった。看護師Cはノルアドリナリン注を準備し、看護師Aは薬剤名を復唱しないまま投与した。医師Eより再度「アトロピン1アンプル、ボスミン1アンプル」の指示があった。心臓マッサージを看護師Dと交代した看護師Bは過去にボスミンを使用した経験はなく、1回目の指示で使用したノルアドリナリン注の空アンプルを見て「ボスミン注=ノルアドリナリン注」と思い込み、アトロピンとノルアドリナリン注を準備後、「アトロピン1アンプル、ボスミン1アンプル入れます」と復唱して投与した。その後、医師Eは気管挿管を実施した。HR70回/分、血圧90~110台、SpO298%に回復した。
<患者Y>同日3時50分、看護師Dは患者YのSpO2がモニタ上80%台後半から90%台前半を推移しているのを確認し、吸引したが少量の痰しか吸引できなかった。そこで、SpOの2改善がないこと、尿量が少ないことを医師Fに報告し、ラシックス20mg0.5アンプル静注、酸素マスク4L/分の指示を受け、実施した。7時20分、看護師Bはモニタのアラームで、SpOが79%であることに気2付き、患者Yの部屋に向かった。そこで患者Yの呼吸が停止していることを発見し、すぐに緊急コールで応援を要請した。7時22分、医師Fは、その後の患者Yの状態確認のため病棟に来たところ、患者Yが急変している場面に遭遇し、心臓マッサージを開始した。7時25分、到着した医師Gが「ボスミン1アンプル」と指示した際、患者Xの治療の際に対応していた看護師Bは「ボスミン注=ノルアドリナリン注」と思い込んでいたため、ノルアドリナリン注を準備し、投与の際は「ボスミン1アンプル入れます」と復唱した。7時29分、医師Gより再度ボスミンの指示が出たため、看護師Bは同じように復唱し投与した。その後、患者Yに気管挿管を行い、心臓マッサージを継続しながらイノバン10mL/hを開始した。
○救急カート内に薬剤が多く配置されていると、緊急時に薬剤を探すのに手間取る可能性がある。緊急時に第一選択となる薬剤を7種類(アドレナリン、アトロピン硫酸塩、リドカイン、ニトログリセリン、硫酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム)に限定し、次に使用するセカンドラインの薬剤とは分けている医療機関がある。配置する薬剤を減らすことを検討してはどうか。○緊急時には救急カート内のどこに何が入っているのかを瞬時に判別することが重要である。看護師による救急カートの定期点検が月1回は少ないのではないか。専門分析班委員が所属する医療機関では、救急カート内の薬剤の取り違えの事例が発生したことから、救急カートを普段から見慣れておくため毎日確認することに変更した。○緊急時は、様々な指示が飛び交う中で、より迅速な対応が求められる。そのような状況下、リーダーとなる人や誰が何をいつどうするのか役割分担することが大事である。また、いつ何を行ったかを記録しておくことは重要であり、記録者を決めておくとよいだろう。記録者がいれば、医師が「ボスミン」と言った際に看護師が「ノルアドレナリンがある」と答えた場合、ボスミンとノルアドレナリンは違うと指摘できた可能性がある。
朝方であり、ナースコールが多く繁忙な時間帯の急変だった。口頭指示を受ける時の確認がされていない(復唱していない)。薬剤準備後の薬剤を渡す時の確認がされていない(渡す側・受ける側)。看護師に薬剤の知識がなかった。急変時対応の訓練は部署単位で行なわれており、回数・内容などにバラツキがある。
・院内急変対応ワーキンググループでの検討会を実施した。・部署ごとに急変時対応のトレーニングを実施するよう周知した。・救急カート内に配置する薬剤を見直し、アドレナリン注0.1%シリンジがあるので、ボスミン注を除いた。・ノルアドリナリン注についても医療安全対策委員会で救急カートからの除外が承認された。
患者は冷汗著明、血糖値60mg/dLであったため、看護師は指示の50%ブドウ糖を投与した。しかし、意識レベルが低下し、自発呼吸がないため、胸骨圧迫・用手換気を開始した。蘇生時、医師からボスミン注投与とアンプルから薬剤を吸うよう看護師に指示が出された。看護師は、救急カート内の薬剤を取り出す時に、引き出しの「ボスミン=アドレナリン」の表示を見て、ボスミン注はノルアドリナリン注だと勘違いした。ノルアドリナリン注を準備して医師に渡し、医師は患者に投与した。救急カートを片付ける際に、他看護師がノルアドリナリン注の空アンプルが残っているのを発見し間違いが判明した。
nan
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担当看護師は、通常局所麻酔剤を入れる小さいビーカーに綿球を3個入れ、ハイポアルコール液を綿球3個が浸るくらい入れた。また、大きいビーカーにキシロカイン注射液1%エピレナミン含有を20mL入れて準備した。担当看護師はその場にいた術者に大きいビーカーにキシロカイン注射液1%エピレナミン含有を入れたことを伝えたが返答はなかった(術者は伝えられた記憶はない)。術者は、綿球が入っていた小さいビーカーからハイポアルコール液の綿球を使用した。その後、手洗い後の器械出しの医師が入室し、綿球をすべて使用した後の小さいビーカーに残ったハイポアルコール液をキシロカイン注射液1%エピレナミン含有と認識し、キット内に入っている10mLの注射器に吸い術者に渡して局所投与を行った。手術開始時、患者から疼痛の訴えはなく、バイタルサインの著しい変動はなかった。手術中の疼痛に対しても小さいビーカーの薬液を局所麻酔剤として投与した。手術操作上、体位変換と手術器械の追加準備が必要となる。外回り看護師が追加器械を準備しようとした際、器械台にある大きいビーカーにキシロカイン注射液1%エピレナミン含有が残っているのを発見し、ハイポアルコール液を局所投与したことが分かった。薬剤部にハイポアルコール液の成分、薬理作用、対処方法を確認した。pH11程度のアルカリ性と約40%の濃度のエタノールによる組織障害の可能性があり、10mg含まれているチオ硫酸ナトリウムは通常の注射薬として使用されており影響が出る可能性は低いことを確認した。その後、患者および家族に経緯を説明し、今後の処置、対応と見通しを説明した。帰室後、病室でステロイドの局所注射と縫合部内の生食洗浄、ステロイドの外用を行った。6日後、創部は比較的安定していたため退院した。
局所麻酔手術の際、局所麻酔剤を小ビーカーに準備することは当院手術室内において共通のルールであるが、ルールを失念しておりマニュアルから逸脱しているという認識がなかった。医師と看護師間で、薬剤の確認をしなかった。担当看護師は、1年6ヶ月の経験があり当院全科の直接介助の経験がある。清潔野で使用するビーカーにはラベルは貼ってない。
・局所麻酔手術手順マニュアルを遵守し、小ビーカーにキシロカイン注射液1%エピレナミン含有等の局所麻酔剤を入れて使用し、その他の薬剤は入れない。・小ビーカーに薬剤を出す際の術者とのダブルチェックの確認項目は、薬剤容器(ラベル)、薬剤名、指示量、使用容器(小ビーカー)とし、声出し確認する。・ハイポアルコール液の綿球の準備方法を統一する。執刀前にハイポアルコール液の綿球が必要な場合は、カップ入り綿球を準備し、綿球のみをカゴに出す。器械台に出す際は、ハイポアルコール液の綿球であることを術者に伝え、意思伝達の確認を得る。・器械セット内の大ビーカー、小ビーカーにハイポアルコール液の綿球を作成、準備しない。
nan
心臓カテーテル検査施行時、左橈骨動脈に留置したシースをフラッシュするため、清潔野にある容器からフラッシュ用のヘパリン生食を吸い注入した。その直後に患者は前腕に線状の痛みを自覚した。その後、左前腕の発赤、腫脹を呈した。フラッシュ用のヘパリン生食ではなくハイポアルコール液を動脈注射したことにより、急激な血管炎および組織障害が惹起された可能性が極めて高い。
研修目的で来ていた看護師がカテーテルのセットを展開して準備をした際、カテーテル室担当看護師に確認を依頼しなかった。カテーテルのセットを置く処置台に、イソジン液とハイポアルコール液を入れたカップを2つ準備する手順であった。しかし、カップが重なっていることに気づかず、カップが1つしかなかったため、カップ1個にイソジン液を入れ、ビーカー1個にハイポアルコール液を入れ、もう1個のビーカーにヘパリン生食を入れた。医師はビーカーの中身はヘパリン生食と思い込み、注射器で吸い、左橈骨動脈に留置したシースよりフラッシュした。
・体内に入る薬剤と体内に入ってはいけない薬剤は一緒の場所に準備しない。・ハイポアルコール液は綿球に浸した状態で準備する。・容器や注射器に薬剤を準備する際は、容器の形状が違うものとし、注射器には薬剤名を記載し容易に識別できるようにする。
nan
白内障の手術は、0.75%キシロカイン、オビソート、デカドロンを使用する。黄色のテプラで「0.75%キシロカイン」「オビソート」「デカドロン」と薬剤名を中央に表示したトレイに、ピンク色のテプラで「0.75%キシロカイン」「オビソート」と薬剤名を表示したステンレスカップを置き、その中にそれぞれ薬剤を入れる。「デカドロン」は、薬剤名の表示のないプラスチック容器を置き、その中に薬剤を入れる。8時頃、器械出し看護師は「デカドロン」と表示されたトレイに、誤って「オビソート」と表示されたステンレスカップを置いた。次に、「0.75%キシロカイン」と表示されたトレイに、「0.75%キシロカイン」と表示されたステンレスカップを置いた。その横に「オビソート」と表示されたトレイを置いた。外回り看護師は「0.75%キシロカインとオビソートを入れます。」と言い、「0.75%キシロカイン」「オビソート」と表示されたステンレスカップに、それぞれ薬剤を入れた。器械出し看護師には、外回り看護師の声は聞こえていたが、「デカドロン」と表示されたトレイに置かれたステンレスカップの薬剤を「デカドロン」と思い込んだ(オビソートが入っていた)。また、「デカドロン」と表示されたトレイにあるステンレスカップの「オビソート」の表示が、器械出し看護師からは見えなかった。外回り看護師は「デカドロン入れます。」と言い、器械出し看護師はプラスチック容器にデカドロンを入れてもらい、「オビソート」と表示されたトレイに置いた。この時、トレイには注射器が入っており、外回り看護師にはトレイの底に表示された「オビソート」の文字は見えなかった。器械出し看護師は「デカドロン」と表示されたトレイにあるステンレスカップの薬剤(オビソート)を1mLの注射器に0.5mL吸い準備した。さらに「オビソート」と表示されたトレイにあるプラスチック容器の薬剤(デカドロン)を1mL注射器に1mL程吸い準備した。11時頃、医師は患者にオビソートを使用するため、器械出し看護師に依頼した。器械出し看護師は「オビソート」と表示されたトレイから1mL注射器に用意された薬剤(デカドロン)を医師に渡した。眼内に注入すると眼内が白濁した。医師は「本当にオビソートか?」と言い、直ちに洗浄処置を行い、新たに準備したオビソートを投与後に、デカドロンを結膜下に注射し患者の手術は終了した。
「デカドロン」と表示されたトレイに「オビソート」と表示されたステンレスカップを置いた。トレイの薬剤名の表示はトレイの底にされているため、器械出し看護師から見ると見やすいが、ステンレスカップにはカップの横に薬剤名が表示されているため、見えにくい。トレイの配置についての取り決めはなかった。トレイとステンレスカップの双方に薬剤名が表示されており、双方を確認する必要があった。薬剤を器械台に出す際に、外回り看護師と器械出し看護師でダブルチェックを行っていなかった。デカドロンとオビソートは同じ1mL(白色)の注射器に準備しており、27G鈍針と鋭針の違いのみでトレイから出すと間違えやすい状況であった。
・カップとトレイの表示は除去し、薬剤を入れた(もらった)時に入っている容器に表示を行う。・紙製のラベルを滅菌してカップの横に貼付する。・薬剤を容器に入れる場合は、薬剤名を指差し呼称しながら器械出し看護師と外回り看護師がダブルチェックを行う。・デカドロンは、薬剤名を器械出し看護師と外回り看護師で指差し呼称しながらダブルチェックし、アンプルから直接注射器に準備し、デカドロンと表示されたトレイに注射器を置く。・オビソートは緑の1mL注射器(27G鈍針)とし、0.75%キシロカインは青の注射器、デカドロンはテルモシリンジ注射針付き(ツベルクリン用)とし、薬剤ごとに見分けられるように注射器の色を変更した。
nan
下大静脈フィルター留置術施行中、清潔領域の台上に造影剤を入れたカップと術野の消毒に使用したポピヨドン液の入ったカップが置かれていた。肺動脈造影を施行し、余剰の造影剤をカップに戻した際に造影剤に血液が混入した。その後、フィルターの位置合わせの造影画像を得るため、造影剤を注射器に吸引しようとしたところ、誤って隣のカップのポピヨドン液を15mL吸引し、気が付かないまま注入した。造影画像が得られないため異変に気が付き投与を中止した。ポピヨドン液の誤投与に気が付き即座に血管内から回収した(誤投与量は7~8mLと推定)。誤投与後すぐに患者が痛みを訴え、血圧は最大250mmHg、脈拍は140bpmまで上昇した。呼吸状態が悪化し、SpO80%以下となった。マスク換2気によりSpO90%台を維持し、血圧上昇に対し2てニトロール注2.5mgを静脈注射した。ICU入室時には血圧・脈拍は安定していた。
当事者は当直明けであり判断が鈍かった。予定処置の場合は、消毒剤は専用セットのプラスチック平皿に用意されるが、緊急処置であり緊急セットの金属カップに用意されたため通常と意識が異なっていた。余剰の造影剤をカップに戻した際に血液が混入し着色されたため、ポピヨドン液を吸引した際の薬液の色について疑問を持たなかった。術野の消毒終了後もポピヨドン液と造影剤の容器が隣同士で置かれていた。
・消毒を行った処置者は消毒用カップを清潔野に戻さない。・検査や手術の開始時に、看護師は消毒用カップが清潔野にないことを確認する。もし清潔野にある場合には、消毒用カップを離して置き術者に注意喚起する。
nan
器械出し看護師は、手洗い前に外回り看護師とダブルチェックし0.05%ヘキザック水Rを100mL容量の容器へ入れ、手洗い後に消毒剤名を4×8cmのシールに記載し容器に貼付した。手術終了間際に、医師より器械出し看護師に術後疼痛コントロールのための0.3%アナペインを調製するように指示があった(0.75%アナペイン20mL+生食30mLで調製)。器械出し看護師は外回り看護師とダブルチェックし、100mL容量の容器へ0.3%アナペインを入れた。手術終了後、医師は腹直筋鞘ブロックのため、0.3%アナペイン20mLを器械出し看護師より受け取り局所注射した。追加で0.3%アナペイン20mLの局所注射の指示があったため、器械出し看護師は術野から戻ってきた20mL注射器に薬液を吸い、執刀医に渡した。医師が残り10mLを追加投与しようとして、0.3%アナペインの入った容器を確認したところ、残量が多いことに気づいた。さらに、0.3%アナペインの容器の横にはヘキザック水Rの入った容器が置かれていたため、2回目に投与したのはヘキザック水Rではないかと指摘をした。器械出し看護師が0.3%アナペインの残量を確認したところ、0.3%アナペインの入った容器には30mL残っており、ヘキザック水Rの残量が減っていたことから、2回目に局所注射した薬液はヘキザック水Rであると判断した。医師は皮下組織に穿刺し、薬液を約3mL吸引した。
器械出し看護師は、0.3%アナペインを調製後、医師よりすぐに要求されたため、薬剤名を記載し、容器に貼付する時間がなかった。器械出し看護師は、用途の違う薬剤の入った容器が隣同士に置いてあることのリスクが予測できなかった。消毒の直後に0.3%アナペインの局所注射を行うため、すぐに使用できるように消毒剤を器械台端から中央に移動し、並べて配置していた。薬剤を注射器に吸う際に指差し呼称で確認していなかった。0.3%アナペインを注射器に吸う際、器械出し看護師は、1回目は「吸います」と言ったが、外回り看護師には聞こえておらず、医師は「はい」と返事したが術操作をしていたため、シングルチェックになった。2回目は、医師、外回り看護師にも声をかけずシングルチェックであった。オートクレーブ滅菌で容器の色が透明から変色しており、ピンク色のヘキザック水Rと無色透明のアナペインの見分けがつきにくかった。
・消毒剤はキット内に入っている四角の透明プラスチックトレイに入れ、薬剤は円形の容器に入れてそれぞれ薬剤名を記載することで違いを視覚的に分かるようにする。・視覚により容器と用途を分けることについて、器械出し手順に明文化する。・容器から注射器に薬剤を吸う際、薬剤名を指差し声だし呼称で確認する。・容器に薬剤を入れた際、すぐに薬剤名を記載できるようにキット内にテープを入れてもらうことを業者に依頼する。
nan
左踵骨慢性骨髄炎に対し、除脂肪術+踵骨掻爬、人工骨移植術を実施した。準備が遅れていたため、医師は液状フェノールを早めに出すよう指示した。器械出し看護師は手術室の経験が浅かったことから、外回り看護師は液状フェノールを器械出し看護師に渡す際、他の薬剤と間違えないよう、①ラベルにフェノールと書きシャーレに貼ること、②生理食塩液の側に置かないこと、③破棄時の注意、を伝えた。器械出し看護師はラベルをシャーレの側面に貼付し、生理食塩液と離した器械台の右隅に置いた。創の洗浄を行う際に執刀医が生理食塩液と液状フェノールを取り違え、液状フェノールの染みたガーゼで創部を拭いた。においですぐに異常に気がつき、大量の生理食塩液と蒸留水で局所の洗浄を行った。その後、創部を開き変色した辺縁を切り取って再縫合した。数日後、皮膚は黒色化し、剥離した。術後10日程度で、創部はほぼ上皮化した。
医師は、手術申込み時に陥入爪の処置について記載しなかったため、スタッフは処置をすることを知らなかった。また、術前のタイムアウトでも陥入爪の処置については話し合われなかった。器械出し看護師は新人ではないが、手術室の経験は浅かった。液状フェノールを準備したことを、器械出し看護師は医師に伝えなかった。液状フェノールをどの時点で、どのように使用するか知らなかったため、看護師は執刀医に取り違えを指摘することができなかった。手術中に使用する薬剤の準備方法や薬剤名の表示方法が担当スタッフによって異なっており、一目で液状フェノールであることがわからなかった。本事例では、ラベルをシャーレ側面に貼ったことも影響している。
・手術申込みを正しく行う。・注意が必要な薬剤を用いる場合、術前のタイムアウトなどの際に話し合っておく。・経験の浅いスタッフに対する支援を強化する。・執刀医とのコミュニケーションを強化する。・手術中使用する薬剤の準備方法を統一する。・液状フェノール(またはハイリスク薬剤)専用の容器を準備する、あるいは区別できるようにする。
nan
術後、胸部エックス線撮影のため、呼吸回路を患者の気管チューブから外し、フィルムを背部に挿入後、呼吸回路を気管チューブに再装着したものの、人工呼吸器(麻酔器付属)の作動開始を忘れていた。そのため、血圧が下がり、換気、薬剤投与、1分足らずの心臓マッサージで昇圧した。
低酸素状態を知るためのパルスオキシメータは装着していたものの、患者の末梢循環不良で感知できないでいた。人工心肺直後であり生体情報モニタは人工心肺モードであるためアラームが全てオフになっていた。人工呼吸器(麻酔器付属)のアラームの音量がオフになっていた。挿入されていた経鼻胃管の食道下の折れ曲がりを直すことに気をとられていた。担当麻酔医は2人であったが、少し前に1人の麻酔医が他の手術のために退室し、1人の麻酔医で対応していた。
・アラームの音量を大きくする。・複数の人員(外科医、麻酔医、看護師、臨床工学技士等)によるモニタのチェック体制を確立する。・より感度の高いパルスオキシメータの導入を検討する。
nan
再手術自体は問題なく終了し閉創となった。患者は麻酔器に繋がったままの状態で退室の準備を行っていた。退室前の胸部エックス線撮影を行う際に麻酔器のベンチレータを自動換気から手動換気に切り替えた。撮影終了後すぐに自動換気へ切り替えたつもりであったが、切り替わっていなかった可能性が高い。その後退室の準備のため、ベッドの準備やルートの整理を行っていた。麻酔器の生体情報モニタから移動式の生体情報モニタに付け替えたところAラインの波形が出ていないことに気がついた。頸動脈を触れたところ脈が触れず心臓マッサージを開始した。麻酔器のベンチレータをみると動いていなかった。手動で換気を開始しDC施行後、心拍が再開した。
術後のエックス線撮影の際に麻酔器を手動換気に切り替え、撮影後に自動換気に切り替えたつもりであったが切り替わっていなかった。人工心肺を使用した手術であったため、生体情報モニタのアラームは全てオフにしていた。また人工心肺離脱後にはアラームをオンにしなければいけなかったが、していなかった。
・人工心肺離脱時にタイムアウトを必ず実施し、医師、麻酔医、看護師、臨床工学技士で生体情報モニタのアラームオンとベンチレータの作動状況を確認する。・エックス線撮影時は麻酔器のベンチレータを手動モードに切り替えるのではなく、蛇管を外す手順とする。
nan
重症熱傷でデブリードマン・分層植皮術が行われた。3日前、徐脈から心停止となり蘇生に難渋した。このためペーシング用パッドを貼って入室した。末梢循環不全があり、特殊なパルスオキシメータでも波形が取れないことがあった。手術終了後、全身が覆われており、皮膚の色調ははっきりしなかった。患者をICUベッドに移動する際、蛇管と気管チューブの接続を外し、人工呼吸器を手動換気に切り替えた。ベッド移動後、蛇管と気管チューブの接続を行い、酸素は流れていたが、自動換気が再開されなかった。HR40台の徐脈になったので、アトロピンを投与し、ペーシングの接続をした。応援医師を要請し、アドレナリン投与・胸骨圧迫を行った。この際、人工呼吸が行われていないことに気付いて、自動換気を再開した。胸骨圧迫開始2分後に自己心拍は再開し、ICUへ退室した。人工呼吸器の「無呼吸アラーム」は聞こえなかった。
無呼吸が継続した要因として、特殊なパルスオキシメータでも波形が取れないことがあったため正確な酸素飽和度を把握できなかったこと、皮膚の色調がはっきりしなかったため低酸素血症を予見できなかったこと、3日前に徐脈から心停止となり蘇生に難渋したという既往があり、心電図に気を取られてカプノグラムなどの換気に関するモニタに目が届かなかったこと等が考えられる。
・麻酔器の「無呼吸アラーム」音量を最大にする。・ICU入室等の重症患者の場合、ベッド移動前に退室チェックを行って、複数の麻酔科医で移動する。・蛇管を外した後は必ず聴診し、所見を麻酔記録に記載することを義務づける。
nan
看護師が一人で回路を取り付けリークチェックを実施していた。その後、後期研修医も始業点検のリークチェックを実施した。さらに指導医も回路の異常に気がつかなかった。麻酔導入に際してはプロポフォールを使用し、マスク保持による用手換気を実施した。送気は可能で胸部挙上を認めるものの呼気の戻りが悪く、呼気終末二酸化炭素モニタも低値であった。しかし、換気不可能ではないと判断し、筋弛緩薬を投与した。舌根沈下が原因と判断し、経口エアウェイを挿入し、二人法でマスク換気を実施した。やはり送気は可能で胸部挙上は認めるものの、呼気の戻りが悪いのは変化なかった。しかし、SpOは100%を維持2できており、酸素化が十分で喉頭展開も困難ではなかったため、気管挿管を実施した。その後呼吸回路に接続して用手換気を実施したが、換気の状態は変わりなかった。気管支鏡で確認し、食道挿管でないことを確認した。この頃より前胸部~頚部の発赤が認められたため、薬剤によるアナフィラキシー(気管支喘息)が疑われ、人手を集め、複数の麻酔科医により重症気管支喘息と判断された。ネオフィリン、ステロイド、エピネフリン皮下注射、HおよびHブロッカーを投与12した。しかし変化なく、用手換気を継続した。心拍数や血圧、SpOは明らか2な異常を認めず、手術は予定通り実施し、術後は抜管せずにICU入室という方向にした。手術が終了しICU移動のために移動用のジャクソンリース回路に変更したところ、換気がスムーズになった。ICUに患者を送った後、麻酔器の蛇管の一方が呼気側ではなくACGOポートに接続されていた事がわかった。患者はまもなく覚醒し、全身状態に異常なく、約30分後に抜管され、一般病棟に戻った。
昨年購入したもので、現在手術部には同様の麻酔器が6台ある。当該看護師及び当該後期研修医は、この麻酔器の使用経験はあった。看護師のリークチェックは、麻酔器に呼吸バッグと回路を接続し、麻酔器の酸素フラッシュボタンを押し、呼吸バッグを加圧して、接続した回路やバッグからの漏れがないことを確認した。後期研修医のリークチェックは、外観をチェック後、酸素を流して、APLバルブ弁を閉じ、回路内圧が高いまま保たれるのを確認して麻酔器、呼吸回路にリークがないかどうかチェックした。指導医は、後期研修医からの申告で、リークチェックを確認した。麻酔器始業点検ガイドラインが不徹底であった。始業点検簿は電子カルテ上に載せており、点検終了後麻酔チャートの備考欄に「麻酔器始業点検済み」と記載することにしている。始業点検を実施したのが後期研修医1名だけであった。麻酔器の構造上、呼気回路接続口と同じ高さの近くにACGOポートがあるためエラーを招きやすく、回路が接続できてしまう。また、ACGOポートに接続しても、リークチェックで異常が検出されない構造になっている。ACGOポートの接続口であることを注意喚起するシールが、座って操作をするときに見える位置に貼られていた。ACGOポートを閉鎖していなかった。患者は1日80本の喫煙歴があったために、出現している症状が喘息という事に疑問を持たなかった。麻酔器のBAG/VENTスイッチは、挿管前まではBAG側で、APLバルブ弁の操作で換気可能であった。ACGOのスイッチは操作できないように閉鎖されており、OFFになっていた。
・日本麻酔科学会による麻酔器始業点検ガイドラインを徹底する。・基本的にはACGOポートに接続できないように閉鎖しておく。・立って操作する時にも注意喚起のシールが見える位置に貼付する。
nan
全身麻酔に備えて後期研修医が麻酔器の点検を行い、回路のリークがないことを確認した。全身麻酔導入後、マスク換気中と気管支ファイバーによる気管チューブの位置決めの際は、リークが多く気づかなかった。チューブの位置決定の後リークのない状態で換気したところ、呼気が返ってこないことに指導医が気づいた。回路をチェックすると、呼気の回路が本来の呼気口ではなくACGOポートに接続されていることが判明し、患者の胸腔内圧が上昇している状態が考えられた。収縮期血圧は80mmHg台まで低下したが、回路の接続間違いが判明した後すぐに修正したため、大事には至らなかった。
ディスポである回路の接続はSPDが行っている。麻酔前に麻酔科医がチェックをしているが、今回、SPD業者の間違いに、麻酔科医が気づかなかった。
・従来の麻酔科医による点検の他、MEによる麻酔器の点検も必要と考えられる。・ACGOポート専用のキャップを購入してACGOポートに蓋をした。・ACGOポート付近に注意喚起のシールを貼った。
nan
全身麻酔導入時の呼吸回路誤接続による低酸素血症。
患者は精神発達遅滞のため、意思疎通困難であった。手術室入室時、興奮状態が著しく、車椅子に座ったままマスクで吸入麻酔を開始した。麻酔中に、体動で吸気側回路が外れてしまった。研修医が外れた回路を接続し直す際、誤って閉鎖しているACGOポートに接続した。酸素の出ていないマスクを約4分間あてたことにより患者はチアノーゼをきたした。応援に駆け付けた医師が誤接続に気づいた。手術は継続し、患者の状態に問題はなかった。直接的な原因は、外れた回路を誤ったところに接続したことにより低酸素血症が起きたこと、起きた原因は、回路を誤接続した医師が、経験の少ない研修医であったことと、接続口が同じ形状で誤接続可能であったことが考えられる。指導医は一緒にいたが、気が付くのが遅れた。また、吸入麻酔薬が入っていなかった。
・さらなる徹底を目標に麻酔器に麻酔器の始業点検マニュアル(麻酔器の始業点検、Aisysクイック・リファレンス・ガイド)を配置し、新規ローテーターだけでなくベテラン医師も再確認をできるようにした。麻酔開始前に外回り看護師は麻酔担当医に麻酔器の始業点検をしたことを確認し、自ら再確認する。・ACGOポートの接続部に呼吸回路が接続できない、すぐに取り外せる簡易式キャップを取り付ける。麻酔器を使用する手術室医療従事者に緊急時回路切り替えスイッチだけではなく、キャップを取り外してから回路を接続するよう周知していく。また、誤接続を起こした部位のすぐ横に、「接続禁止:ここに接続すると換気ができなくなります」という警告シール(黄色の背景に赤字)を貼った。・症例カンファレンス時、申し送り時にコードブルーのかけ方の再認識をして周知していく。
nan
医師指示のない内服薬を投与した。
患者は内服薬(イーケプラ、エクセグラン、マイスタン、デパケン、トピナ)のDLSTの予定があった。当事者はDLSTの実施経験がなく、DLSTは薬剤投与後の反応の検査だと思い込んでいたため、薬剤を投与した。投与前に看護師Aは、ICUの部門システム上に内服指示がなかったため、他の内服薬のダブルチェック時に看護師Bにダブルチェックの方法を尋ねたところ、電子カルテ上で確認するようにと言われ電子カルテ上の医師指示を見て薬剤を確認した。その際、看護師Aと看護師Bに、DLSTについての認識の違いがあった。看護師Aは薬剤を投与してから検査すると思い込んでいたが、看護師Bは薬剤は投与せずに薬剤と一緒に検査室に送るという正しいDLSTの認識があった。また、看護師Aはリーダー看護師に、DLSTについて方法を確認していなかった。看護師Aは薬剤投与直後にDLSTの採血を実施した。検体を検査室に送ろうとしたところ、リーダー看護師に薬剤の有無を聞かれ、DLSTのための薬剤を投与していたことが判明した。すぐに麻酔科当直医師に報告した。採血は内服直後だったため、薬剤吸収の影響は最小限であると考えられ、検査用の薬剤を再処方し検体を提出した。投与直後のため薬剤による皮疹等の出現はなかったが、今後出現する可能性がある。
・薬剤を投与する前にダブルチェックを行う。・未経験の検査がある際にはリーダー看護師に伝える。・検査についての知識を深める。・DLSTの指示を出す際は、コメント欄に「検体とともに検査室へ提出用」と用途を記載する。・検査薬剤を処方する場合は、「DLST用」だけでなく「、患者に内服させない」と注意喚起指示を入れる。
nan
抗結核薬内服加療中、下肢・陰嚢の浮腫と肝機能の悪化を認め、緊急入院となった。翌日、ALT/AST2081/918、T-Bil1.6と更に悪化し、内服中の抗結核薬による肝障害を疑い全身管理目的でICU入室となった。ステロイドパルス3日間、血漿交換を実施した。入院6日目、ALT/AST177/261となり肝機能が改善してきているため、病棟に帰室した。入院から約2週間後の午前中、受け持ち看護師Aが、現在内服している薬剤(ガスター、ポリミキシン、モニラック)がなくなるため、追加処方を依頼し、担当医が処方した。17:00担当医はDLSTを予定し、DLST用の薬剤(イスコチン、エブトール、アプテシンカプセル、ピラマイド原末)を処方した。19:00看護師Aは前記薬剤が病棟に届いていることに気付き、処方箋控えを確認すると、「○日朝食前、朝食後に内服」と記載してあった。担当医に電話で「今日の夕食後から内服ですか」と確認したところ、担当医は「処方を出しました」と返答した。その後、担当医は看護師Aとの会話が成立していないと感じたため病棟に行き、「さっきのはDLST用です」と伝えた。看護師AはDLSTの意味をとっさに思い出せなかったが、後で確認しようと思い、「わかりました」と答えた。19:302年目看護師Bが看護師Aを見て、忙しそうなため「何か手伝います」と申し出たところ、看護師Aが「これをお願いします」と言って、患者の内服処方箋控えと、DLST用に処方された4剤を渡した。看護師Bは、受け取った処方箋控えと薬袋に「DLST用」と記載してあるのを見て、「DLST用と書いてありますが、本当に内服させてよいのですか?」と確認した。看護師Aは「医師にも確認したので、内服させてよい」と伝えた。20:00内服後、患者より「この薬飲んでよかったの?」と聞かれた看護師Bは、看護師Aに「DLST用は飲ませないのではないですか?」と確認した。そこで、看護師AはDLST用は内服しないことを思い出し、すぐに担当医に報告した。20:30患者に説明を行い、胃チューブを挿入し微温湯1000mLで胃洗浄後、ニフレック500mLを注入した。翌日午前中DLSTを実施し、採血の結果ALT/AST225/145、LDH353であったが、夕方にはALT/AST427/228、LDH384になった。その2日後にはALT/AST817/395、LDH472であり、肝機能悪化を認めステロイドパルス(プレドニン1000mg)、凍結血漿投与を行った。その後、ALT/AST29/80、LDH231となり、肝機能の改善を認めた。DLSTの検査結果は4剤全て陰性であった。
医師はDLSTを行うことを決定したが、看護師には伝えず、カーデックスにも記載はなかった。医師はオーダリングで前回処方データをコピーすることでDLST用の薬剤を処方し、コメント欄に「DLST用」と追記した。そのため、処方箋控えや薬袋には以前の指示のまま「朝食前に内服、朝食後に内服」と記載されていた。看護師Aは、DLSTを行う患者をこれまで受け持ったことはなかった。そのため、看護師AはDLSTに関する知識が曖昧であったが、具体的に知識を確認しないまま看護師Bに依頼した。看護師Bは「DLST用薬剤は内服させないのでは?」という“気づき”を伝えたが、強く主張することができず、最終的に内服させた。薬剤部では、DLST用の処方オーダが届き、前回処方のコメントが残っていても、コメントの消去等の問い合わせは行わず、医師の指示通りコメントをいれたまま調剤した。病棟に届くDLST用の処方薬は、他の内服薬と同じ薬袋・処方箋控えで上がってくる。当該病棟の特徴として、DLSTは1~2回/月行うことがあるが、DLSTを行う際の前準備やルールはなく、上がってきた処方薬の取り扱い方法は一致していない。処方のコメント欄に「DLST用内服禁」と入力している医師もいるが、DLST用の処方ルールが明確ではない。DLSTは、外注検査である。DLSTに関しての薬剤処方から検査までの安全を考慮したルールがなかった。臨時に指示を出す場合には、医師が必ず看護師に連絡するという「指示出し・指示受け」に関する運用上のルールが守られていなかった。看護師は、医師に確認した際DLSTに関する知識が曖昧なまま、質問内容が明確にわかるような具体的な確認をしなかった。
・DLST用の薬剤は、オーダリングでなく手書きの処方指示箋で出す。オーダリングで指示が出た場合には、薬剤部から医師に、手書き処方箋に記載し直すよう直接連絡する。・患者投薬用の薬袋ではなく、チャック式ビニール袋に入れて運用する。・DLSTとしてオーダした薬剤は、病棟を経由せず、薬剤部から検査室に直接届くように変更する(現在、検査会社と調整中)。・臨時に指示を出す場合には、必ず看護師に連絡する。・TeamSTEPPSに示されるような具体的発信と受領を励行し、コミュニケーションエラー防止の取り組みを継続する。・DLSTの手順について院内の連絡報と病棟・外来のセーフティマネージャー会議で周知した。・関連部署のマニュアルに手順として追記した。
nan
乳がん根治目的の手術を行った。術野の止血を確認している際に医師が創部下方に熱傷があることを発見した。その状況から術中に皮膚表面に電気メスペンシルの先端が触れた際にスイッチをONにした可能性があると判断した。
器械出し看護師は、術野に置かれた電気メスペンシルを電気メスホルダーに入れることや、器械台に戻すことを医師へ伝えなかった。
・術野に電気メスペンシルを置かず、電気メスホルダーに入れるか、器械台へ返却してもらう。
収納ケースを設置していたが使用していなかった事例
背部軟部腫瘍手術の際、看護師は電気メスホルダーを頭側のドレープに付けた。医師は電気メスペンシル不使用時に電気メスホルダーを使用しておらず、器械出し看護師にも返していなかった。手術終了後、全身の皮膚の状態を観察すると、背部に電気メスペンシルの先端が触れたことによるものと思われる1cm×0.5cmの熱傷を認めた。
電気メス使用時に器械出し看護師は針糸を使用しており、その取扱いに集中していたため、電気メスペンシルに気を配れなかった。
・電気メスペンシルを使用しない時は電気メスホルダーに入れることを医師へ周知する。・術式によっては器械出し側に電気メスホルダーを設置することが出来ないため、器械出し看護師や外回り看護師は電気メスホルダーに電気メスペンシルを入れることを医師に声掛けをする。
収納ケースを設置していたが使用していなかった事例
乳癌にて左乳房切除を施行中、使用していた電気メスペンシルが左腋窩周辺部の皮膚に接触し熱傷(水疱形成)を生じた。術操作中の医師が気付き看護師に報告があった。医師は直ちにリンデロン軟膏を塗布した。手術はそのまま続行したが、切開創周囲の皮膚を観察すると同様の熱傷(水疱)が合計7ヶ所あった。
電気メスホルダーをセットした位置が患者の右大腿部付近であり、執刀医が電気メスペンシルを使用しない時にホルダーに収納できる位置になかった。医師が電気メスペンシルを使用しない時に通常は看護師が回収し管理するが、術中の操作で電気メスペンシルがドレープの上に置かれていることがあった。
・医師は電気メスペンシルを使用しない時はホルダーに収納することを徹底する。・医師が電気メスペンシルをホルダーに収納できない時は、看護師に声をかけコミュニケーションを図る。
収納ケースを設置していたが使用していなかった事例
人工肛門の再造設術を行った。手術操作中、電気メスペンシルが患者の左大腿部に載っている状態だった(先端が患者の下腹部に位置)。助手が2本の筋鉤で視野を展開している際、助手の左手と患者の左大腿部に挟まれる形で電気メスペンシルの通電スイッチが押され、通電した。確認すると、患者の下腹部正中やや右側の腹壁に約3cmの熱損傷を認めた。皮下組織などの露出はなく表皮に通電された形で、おそらく凝固モードでの通電と思われた。
電気メスペンシルの通電による熱傷は、電気メスペンシルを置く位置の確認不足とチームスタッフの連携不足によるものと考える。電気メスを使用しない時には、術者と器械出し看護師の間のエリアにある収納ケースに収納する、また使用後は器械出し看護師に返却することがルールとなっている。今回は、収納ケースは設置していたが、使用後の確実な返却がされていない状態でそのまま手術が進行した。
・術者と助手は、電気メスペンシル使用後は確実に器械出し看護師へ返す。・器械出し看護師は、医師が電気メスペンシルを使用した後に回収する。
収納ケースを設置していたが使用していなかった事例
全身麻酔下に砕石位とし、高周波メスを用いて、子宮頚部を円錐状に切除した。患者の会陰部を覆うように清潔覆布をかけて手術を施行した。手術終了後に覆布を取った際に、手術室の看護師が、患者の右大腿内側の熱傷様瘢痕に気付いた。覆布を見ると、同部位に5mm程度の黒く焦げた痕を認めた。
短時間の手術であり、電気メスペンシルを覆布の上に直接置いて使用していた。使用した電気メスペンシルの先端が熱くなっており、覆布を通して皮膚が熱せられた。
・電気メスペンシルを覆布の上に置かないよう、患者に接しない部位に電気メスペンシルを収納する袋を吊し、使用する。
収納ケースを設置していなかった事例
子宮全摘出術、両側付属器摘除術の終了後、ドレープを外すと左大腿前面に5mmくらいの熱傷と思われる痕を発見した。4日後、痂皮化や壊死するなどの症状はなく、経過観察となった。その後、浸出液がみられ、軟膏処置を行い、皮膚科を受診した。皮膚科受診の結果、熱傷Ⅲ度と診断され、ゲーベン処方となる。病棟で、軟膏処置を継続した。術後経過良好のため退院し、以後皮膚科外来で経過を見ることとなった。2週間後、皮膚科受診時、経過良好のため処置継続し経過観察となる。
術中にドレープが焼けたような異臭などもなく、術者、助手を含めその事実に気付かなかった。どのような状況で電気メスペンシルの先端が大腿部に触れたのか不明であった。皮膚科の診察では、熱傷の範囲は非常に限局しており深かった。電気メスペンシルはいつも作業台の上に置いており、電気メスホルスターは使用していなかった。電気メス使用時、術野以外はできるだけバスタオルで保護することになっていたが、このときは保護していなかった。
・電気メスペンシル、リガシュア、バイポーラ等を使用する場合は、先端の位置に注意を払う。・使用後の電気メスペンシルは、ドレープの上に置かない。・ホルスターや電気メス袋を使用する。・すべての手術で電気メス使用時の対応を周知する。
収納ケースを設置していなかった事例
患者は、かかりつけのクリニックAでワーファリン錠2.5mg/日が処方されており、PT-INRは2.88であった。その3週間後、他院Bで真菌治療のためフロリードゲル経口用が処方され、院外の保険薬局で受け取って使用した。その後、血尿や鼻出血を認めたため、フロリードゲル使用開始から1週間後に、クリニックAを受診したところ、PT-INRが7.01であった。その時点でフロリードゲル経口用の中止指示が出たが、5日経ってもPT-INRが6.33と下がらなかった。クリニックAより当院に紹介となり、PT-INR過延長のため入院加療を要した。
当院薬剤部から保険薬局に「ワーファリン錠とフロリードゲル経口用」について確認したところ、2016年10月に併用注意から併用禁忌に改訂となったことを知らなかったという回答であった。院内では、医薬品安全管理者指導のもと、薬剤課で「DIニュース」を毎月発行し、院内ホームページおよび院内に掲示を行うことで周知をしている。また、院内では監査を2重に行っており、併用禁忌薬が処方された場合は疑義照会をしている。
・改めて院外の保険薬局に対し、「ワルファリンとミコナゾールゲル剤」が併用禁忌になっていることを注意喚起した。
nan
静脈血栓を認め、循環器内科に相談し、ワーファリン錠3mgの内服を開始した。その2日後、口腔内カンジダ症のため皮膚科日直医がフロリードゲル経口用を処方した。その際、薬剤部からの疑義照会はなく、使用を開始した。フロリードゲル使用2日目、PT-INRが測定不能であったためワーファリンを中止した。さらに3日後も、PT-INRは同様に測定不能であった。午後、患者に意識はあったが倒れたため検査したところ、ヘモグロビン値4.3g/dLであった(前回:7.0g/dL程度)。全身のCTにて胃からの出血が疑われ、消化器内科にて緊急内視鏡検査が行われた。噴門部から拍動性の出血を認め、クリップにて止血した。その後、状態は改善している。
ワーファリン錠とフロリードゲル経口用は、PT-INRの著明な延長の事例があったことから、2016年10月に新たに併用禁忌となった。DIニュース等で院内に知らせていたが、フロリードゲル経口用を処方した皮膚科での周知は十分でなかった。また、併用禁忌薬の場合、薬剤マスタに禁忌の設定をすることにより処方時に禁忌の画面表示がされるが、薬剤マスタの最終更新は禁忌になった月の前月であったため、登録されていなかった。新規の禁忌情報を得た場合、誰がどのように登録するのかなど、マスタの更新手順がなかった。
・診療科内の申し送り体制や、頻用する薬剤について重要な情報を共有する体制を検討する。・病棟薬剤師は、病棟医長に直接伝えたり、診療科カンファレンスなどにも参加したりして、必要部署に直接情報を周知する。・新規の禁忌情報を得た場合、薬剤部においてマスタ更新が確実に行われるような体制をつくる。①緊急の更新についてDI担当者等は、禁忌に関する新たな情報が発出されたことを確認した場合、その情報をマスタ管理責任者に伝え、マスタ管理責任者は内容を確認し、更新する。②定期的な更新についてマスタ管理責任者は、登録されている全ての薬剤の禁忌に関する情報について、月に1回ベンダーから提供されるチェックツールで確認し、登録されていない組み合わせがある場合、データを更新する。③更新情報の確認マスタ管理者は、月に1回、薬剤に関する全てのマスタデータをダウンロードし、前月のマスタデータとの差分の抽出内容と更新内容が適切か確認する。
nan
ワーファリン服用中の患者に併用禁忌であるフロリードゲル経口用が処方されていた。以前は、慎重投与であったが、最近禁忌になったばかりであったため、添付文書で確認し、医師に疑義照会した。その結果、フロリードゲル経口用が処方削除になった。
(記載なし)
フロリードゲル経口用とワーファリンの併用は、慎重投与から禁忌に変わったことを薬局全員で情報共有した。
nan
DLSTを予定し、その際必要な処方を「DLST検査用」というコメントを選択しオーダしたが、内服目的の処方と病棟で勘違いし患者に投与される危険性があった。
普段、当該病棟でDLSTを行わないため「DLST検査用」の意図が伝わらなかった。
指示内容がわからなさそうであれば、医師から看護師に説明する。
救命救急センター
19時頃、薬疹疑いで入院中の患者カルテの指示簿指示に「ブルフェンは後ほど処方します」と記載があった。医師記録に記載がなく、処方オーダもない状態であった。患者は理解度良好であり、内服薬は自己管理しているため、「新しい薬が処方されるようですので、届きましたらお渡しします」と伝えた。翌日、夜勤で勤務時に電子カルテを参照し、ブルフェンが処方されておりオーダ内容に「DLST用」と記載があることを確認した。医師記録にも「翌日ブルフェンをDLST提出」と記載があった。処方薬到着済みカゴ内にブルフェンがあり患者に渡っていないことを確認し、薬袋の「DLST用」にマーカーを引き翌日勤務者にもわかるよう配慮した。
DLST用の処方がある可能性を予測出来ていなかった。
薬疹疑いであるため、DLSTのために処方される可能性を留意しておく必要がある。
病室
胸腔ドレーンバッグの水封部に滅菌蒸留水を入れないでドレーンを接続した。ドレーンから540mLの排液が流出後、クランプした。1時間後にドレーン開放の指示があり、看護師は開放した。排液の流出が終了後、咳嗽が出現し、SpOが低下した。2
胸腔ドレーンバッグの準備の詳細手順がなかった。医師とダブルチェックをしないままドレーンを接続した。
・胸腔ドレーンバッグ準備方法の手順を作成しスタッフ間で周知する。・胸腔ドレーンバッグ接続前の水封部・吸引圧設定部の注水確認を2人で行う。・胸腔ドレーン挿入後、医師とダブルチェックする。
nan
当直医と看護師は、胸腔ドレーンバッグを交換した。その後、看護師が訪室した際、胸腔ドレーンバッグの水封部に滅菌蒸留水が入っていないことに気付いた。患者より、呼吸苦の訴えがあった。患者は頻呼吸で安静時のSpOは87%であった。水封部2に滅菌蒸留水を注入するとエアリークを認めた。
胸腔ドレーンバッグを準備した看護師は、胸腔ドレーンについての知識不足があった。また、胸腔ドレーンバッグ交換の介助の経験が少なく、胸腔ドレーンバッグは排液部のみの構造だと思い込んでいた。胸腔ドレーンバッグの箱をベッドサイドで開封し、そのまま医師に手渡したあと、交換後の胸腔ドレーンバッグを観察できておらず、医師に任せきりにしていた。
・胸腔ドレーンバッグはナースステーションで開封し、水封部に滅菌蒸留水を入れ、セッティングした形でベッドサイドへ持って行く。・交換後の胸腔ドレーンを再度確認し、ドレーン回路を医師とダブルチェックする。
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