具体的内容
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背景・要因
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改善策
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記述情報
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段階
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専門分析班及び総合評価部会の議論
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当事者職種(職種経験年数)1人目
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関連したモノ
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専門分析班・総合評価部会の議論
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吸入酸素濃度
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訪問での専門分析班委員の主な意見
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人工呼吸器※
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詳細
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参照
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画像
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事例の分類
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注釈
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種類
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研修医の情報
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発生要因
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胃管8Fr~14Frまで実施したが、挿入困難とのことで主治医より消化器内科に紹介された。ジェイフィード栄養カテーテル8Frにガイドワイヤを挿入し、喉頭鏡を用いて食道へ挿入し、その後胃方向へ進めた。特別な抵抗を感じることなく挿入できたため、ガイドワイヤを抜去し胃管を留置した。栄養カテーテルからの空気注入にて心窩部での気泡音が確認され、またエックス線写真にて胃管の先端は横隔膜下の胃付近にあることを確認した。その後、胃管を用いた経管栄養、内服薬投与を開始したが、注入後に腹痛が続くため腹部CTを施行したところ、腹腔内にfree-air、腹水を認めたため主治医は消化器内科にコンサルトした。CTで胃管が下部食道から腹腔内へ穿通している所見を認めたため、胃管の食道穿孔による汎発性腹膜炎と判断した。外科的手術治療が必要であるものと判断し、外科に紹介し、手術(食道穿孔部閉鎖術、腹膜炎手術)が行われた。
ジェイフィード栄養カテーテルにガイドワイヤを挿入したことで、先端に力が加わった可能性がある。食道に器質的な原因があった可能性がある。ジェイフィード栄養カテーテル挿入後、胃液は吸引できなかったが、空気注入による心窩部付近での気泡音聴取、エックス線写真で位置確認を行い胃内に留置できたと判断した。挿入したジェイフィード栄養カテーテルおよびガイドワイヤは鋭利なものではないため、強い外力を食道壁に与えない限りは通常は食道壁を貫通するものとは考え難く、そのような強い外力を与えたり異常な抵抗を感じることはなかったため、穿孔しているとは考えられなかった。注入時の腹痛があったが、しばらくすると消失していた。腹満や、圧痛、筋性防御などの腹膜炎症状が見られなかったため、発見までに時間を要した。
・ジェイフィード栄養カテーテル挿入時には、ガイドワイヤを使用しない。・胃管の挿入が困難な場合、挿入の必要性について再検討する。・再検討後、胃管挿入が必要な場合、消化器医師へ依頼する。・消化器医師は、スタイレット付きの胃管の使用、又は携帯内視鏡使用にて挿入する。・胃管挿入後の確認方法として、1)胃液吸引と気泡音を確認する(胃液の吸引を確認し注入を行う)、2)状況により透視、CT検査で確認する。
死亡
医師Aは「ヒューマリンR50単位+生食49.5mLで調製」、医師Bは「ヒューマリンR100単位0.5V+生食49.5mL2mL/hで投与」を指示した。指示を受けた看護師は、ヒューマリンRは0.5Vで5mLであるから合計50mLにならないと医師Bに報告した。医師Bは、「ヒューマリンR5mL+生食45mL」と修正した。本来は1単位/mLであるが、10単位/mLのヒューマリンRを13時間20分投与した。血糖値が33mg/dLまで低下した。ヒューマリンRの投与中止とブドウ糖投与にて患者は回復し低血糖による後遺障害はないと考えられた。
当院ではインスリンに限り、紙ベースのインスリン指示書(注射指示書)を作成し、運用をしている。指示を出した医師と処方を入力した医師が異なるため2つの指示が出てしまった。インスリン指示書(注射指示書)では医師Aより正しく「ヒューマリンR50単位+生食49.5mLで調製」と手書きの記載が行われた。当院では、持続投与の場合には、ヒューマリンR50単位+生食49.5mLで調製することはあらかじめ決められている事項であった。実際の薬剤が必要なため、医師Bはオーダリングシステムにて注射薬の処方を行う必要があり、「ヒューマリンR100単位/mL0.5V+生食49.5mL2mL/hで投与」という誤った入力を行った(ヒューマリンR100単位/mLは処方オーダ時に選択される薬剤名)。ヒューマリンRの処方時には、インスリン量を必要単位・バイアル単位で選択できる形式がとられていた。皮下注射用として使用する場合にも、別にインスリン指示書があるため、1バイアル単位で処方することもできていた。この時にも、注射指示書が発行されるため、事故が起こった。本来ヒューマリンRは処方箋ではなくインスリン指示書に基づいて投与されるため、処方した医師Bは物品の払い出しの感覚でとにかく1Vを病棟に上げる目的で1Vの容量を確認せずに処方した。当院の決まりはインスリンの持続点滴はヒューマリン0.5mL+生食49.5mLで行うこととなっており、印刷された指示書もあるが指示を受けた看護師は投与単位よりも投与容量の合計に気が行き、医師の処方どおりでは合計が50mLとならないのでヒューマリンRを5mLのままにして生食を45mLに減量した結果、10倍量投与となった。また、ヒューマリンRは1V10mLであり、この中に致死量にも相当する1000単位のインスリンが入っていることも大きな問題である。医師Aにより「ヒューマリンR50単位+生食49.5mL」と正しく記載されていたが、医師Bから誤った指示を受けた看護師がヒューマリンRは5mL(0.5V)が正しい量であると思い込み、正しいインスリン指示書を二重線で書き直し、全量50mLとするため、生食を45mLに変更し調製した。
・ヒューマリンRは静脈注射専用とし、インスリン製剤も処方と注射指示の内容が同一となるようにした。・緊急集会を開催し、マニュアルを徹底した(病棟に常備されている皮下注射用のインスリンはペン型のものにし、原則としてヒューマリンRを常備しないようにした)。・今回の事例を受け、インスリン製剤の皮下注射はペン型のインスリンで対応し、ヒューマリンRは静脈注射専用とした。・ヒューマリンR単独(1バイアル)での払い出しを不可とし、ヒューマリンRを処方する際には、必ず輸液と合わせて必要単位数を入力する形式に変更した。
処方
○持続静注するインスリンの組成は院内のルールで決まっていたが、そのルールを知らない医師・看護師がいると事故が起こり得る。ルールの周知を継続的に行うことが重要である。○薬剤師から疑義照会があれば、誤った処方を修正することができたのではないか。○処方を入力した医師は単位の選択を誤って0.5mLを0.5Vと入力した可能性もある。改善策として単位数を入力する形式に変更したのはよい方法である。
医療事故
慢性腎不全で人工透析中の患者の術中高カリウム血症に対応するために、50%ブドウ糖注50mLにヒューマリンRU100を50単位混注してGI療法を行っていた。術後、ICUに移動した後、婦人科上級医師が手術中の組成でGI療法を継続するよう若手医師に指示する際に、ブドウ糖注50%50mLに「ヒューマリンRU100」を50単位と伝えるべきところ、ブドウ糖注50%50mLにヒューマリンR100単位を混注するよう口頭で指示した。若手医師は、ブドウ糖注50%50mLと入力し、ヒューマリンRU100を100単位と入力しようとして、1000単位と入力したため、インスリンが1時間で330単位注入された。1時間後血糖値は20mg/dLまで低下した。直ぐに低血糖に対し50%ブドウ糖注をボーラス注射で投与したが血糖値は正常に復さないため、インスリンを除去する目的で血液透析を施行した。患者に低血糖による障害は発生しなかった。
麻酔科医の指示を継続する意図で指示を伝えようとしたところ、上級医はシリンジのラベル記載「ヒューマリンRU100」をヒューマリンR100単位の意味と解し、若手医師に100単位混注するよう伝えた。上級医は麻酔科医の指示をそのまま伝えるつもりで、GI療法の標準的な使用法(ブドウ糖3-4gにインスリン1単位)に思い至らず、ブドウ糖10gに対しヒューマリンRを100単位混注するというインスリン過量の指示を出した。若手医師はICUの情報システムの入力方法に習熟しておらず、100単位を入力するつもりで1000単位と入力した。指示受けしたICU看護師はインスリン量が多いと思って入力した医師に電話で確認したが、指示された数値を伝えず、「指示通りで良いか」という疑義であったため、医師は間違って入力したと気がつかず、そのまま実施するよう指示した。実施した看護師もインスリン量が多いと思い医師に電話で疑義照会したが、この時も指示されたインスリン量を示さなかったため、医師は間違いに気づかず、そのまま実施するよう指示した。1時間後に重度の低血糖となり、インスリン過量投与に気がついた。上級医の口頭指示ミス、若手医師の入力ミスに加え、担当看護師2人の疑義照会に対する若手医師の対応ミスがあった。婦人科の上級医、若手医師ともにGI療法の標準的インスリン量の知識が不足していた可能性がある。しかし、透析患者という特殊病態であったことは考慮しなければならない。また、担当看護師の疑義照会の方法すなわち、指示されたインスリン量の数値を若手医師に具体的に伝えなかったこと、およびICUにおけるGI療法の通常量を示さなかったことにも問題があった、と考える。
・ICUのシステムに不慣れな医師には最初は出来る限り慣れた医師がペアとなり指示入力する。・ヒューマリンRU100の1000単位指示は異常であり、看護師から指示の確認をされた際にはその指示を十分見直してから返答するよう周知する。・今回の事例を病院内で共有して注意喚起し、更に、医局内でも事例を共有し再発防止のため周知徹底した。・GI療法の標準的ブドウ糖量とインスリン量の比(ブドウ糖3-4gに対してヒューマリンR1単位)を周知し、ICUにGI療法の標準的組成を掲示する。・薬剤について看護師が医師に疑義照会する際は、指示された薬剤名、薬剤量を具体的に伝え、自分の判断を医師に話すようにする。
指示出し
○指示を正しく入力することは基本であるが、適切な確認によって間違いを発見できた可能性がある。疑義を問い合わせる際は、具体的な数値を示し、疑問点が相手に伝わるように質問することが重要である。○GI療法の標準的組成を掲示する改善策は、知識が十分でない医療者が指示や薬剤準備をする際に参照できるので再発防止に有用と思われる。○薬剤師が関与すれば、指示量の誤りが修正され、事故を防ぐことができるのではないか。
医療事故
患者は化学療法目的で外来受診し、採血上脱水所見、嘔気も続くため救急入院した。12:00全身倦怠感強く、ベッドに倒れ込むように横になった。担当看護師Aが担当医(レジデント)に連絡をした。血糖測定で「血糖600<」と表示された。30分後も値は変わらず、ヒューマリンR10単位を皮下注射した。13:30血糖値を再検し、「血糖600<」と効果なく、持続のインスリン投与が必要と判断し、計算後7単位/hで投与できるようにヒューマリンR1000単位+生食40mL3.5mL/hの指示を入力し、伝票を看護師に渡した。看護師2名でミキシングを実施し、看護師Aはインスリン量が多いと思い、ダブルチェックをしていた看護師Bに「(インスリンを1本吸うのは)多くないかな?」と相談したが、看護師Bは「(シリンジで持続投与するのを)見たことがある」と返事をした。医師の指示であること、その都度評価すると思い「1時間後に再検して確認しよう」と相談した。14:30からインスリンを開始した。15:30血糖値358mg/dLであり、主治医に報告した。担当医は再計算し0.7mL/hに減量するよう指示し、主治医は担当医に早急に糖尿病内科にコンサルトするように伝達した。16:10血糖値202mg/dL、糖尿病内科医師と連絡がつき、インスリン量が多い事を指摘され、すぐに0.1mL/hに変更した(ヒューマリンR実際の投与単位14:30~15:30は70単位、15:30~16:10は約10単位であった)。20:10今後、低カリウム血症や低血糖が懸念され、ICU管理となり、大量輸液(ブドウ糖入り)開始となった。
医師より臨時でもらったインスリン伝票をその場で看護師は確認していない。看護師間で量が多い事を共有したが、それぞれの主語は一致しておらず、相談したことで納得し、医師への再確認には至らなかった。指示を出した医師は継続インスリンのオーダは初めてであり、レジデントマニュアルを見ながら、オーダリング入力した。患者の体重が68.5kgなので、7単位/hで投与しようとした(DKA:糖尿病性ケトアシドーシスでの計算)。ヒューマリンR100単位を生食50mLで希釈し3.5mL/hで投与しようと考えた。オーダ画面でヒューマリンR100単位/10mLと読み間違え「ヒューマリンR100単位+生食40mL、投与速度3.5mL/h、投与24時間」と入力すると、投与量が41mLと表示された。血糖値の変動に合わせて、後の単位の調整がしやすいように全体の量を50mLにしようと考えた。本来なら生食49mLとすべきところを、インスリンを1000単位にしたら、オーダ画面の総注入量が50mLとなったため、これでちょうど良いと思ってしまった。上級医師は報告を受けたが、指示の内容までは確認していない。看護師Aは、他の業務を気にしながら準備していたが、病棟が忙しい時間帯で他者へ業務を依頼することができなかった。
・医師に確認する際や看護師と内容を確認する際は、必ずお互いの情報が一致しているか確認する。・病院のオーダリングは、インスリン単位が9999単位まで入力できることがわかったため、システム課・薬剤部・持続インスリンを実施しているICUなどの関連部署と検討し、インスリンの単位は100単位までの入力にした。
指示出し
○特殊な場合を除いてインスリンは100単位以下を使用するため、オーダリングを見直してインスリンは100単位までの入力としたのは有効な改善策と思われる。インスリンの単位数のアラートは設定していない医療機関が多いと思われるが参考になるのではないか。○当事者の医師はマニュアルを見ながら計算してオーダ入力したが、結果的には誤った組成になった。インスリンの持続静注は1単位/mLの組成に統一することを検討してはいかがか。
医療事故
9時頃に高カリウム血症となった患者への輸液指示(手書き)が出たことを他の看護師より伝えられた。その場で10%ブドウ糖液500mLと、ヒューマリンR80単位を他の看護師と共にダブルチェックし準備した。この時、他の看護師とヒューマリンが「多いね」と会話を交わしたが、リーダー看護師や主治医等への確認は行わなかった。9時50分に指示に従い500mL/hで輸液施行、10時20分、血糖値を測定し234mg/dLであった。10時50分に輸液終了した。11時20分に主治医により血液ガスと共に血糖測定のための採血を実施し、低血糖が判明した。11時30分、再検したところ32mg/dLであった。指示により50%ブドウ糖液20mLを2本静注後、さらに50%ブドウ糖液20mL2本を基液のヴィーンF500mL内へ混注するため、11時45分、準備室へ戻り準備した。副看護師長に状況を聞かれ報告を行ったところ、その場にあった注射指示書を見て、「これ8単位じゃないの?」と指摘を受け、リーダー看護師と共に主治医へ確認したところ10倍量を投薬したことに気付いた。
輸液準備の際にヒューマリンRの量が多いと不思議に思いつつ、リーダー看護師をはじめ他の看護師、主治医への確認を行わなかった。高カリウム血症に対するGI療法に対する知識を持たずに指示を実施した。日頃より知識を用いていない指示も業務のため実施しなければならないと思い、実施した後に調べることや学習することが多い実状がある。今回は治療方法だけではなく、常日頃取り扱っているヒューマリンRに対しても、生命を脅かす可能性がある危険な薬剤であるという認識が稀薄していた。指示を受ける時の確認が行えておらず、「8U」の「U」の上に線が引いてあり、「80」と読める紛らわしい表記に気付けなかった。
・知識を持ち合わせていないこと、不明なこと、少しでも疑問に思うことは、自己判断せずに医師や先輩看護師に確認を求め、常に確実な知識に基づく看護を実践する。・日頃からの自己研鑽に努め、新しい知識と情報を得ることで正確・安全な看護を実践する。・指示受け、実施のいかなる場面でも冷静に判断できる環境(協力、チームワーク、他者の関心など)作りが必要である。・医療安全リンクナースをはじめとする病棟内の係による定期的な実技チェックを実施する。・院内外への研修参加と終了後の伝達講習を実施する。・医療安全に対する提言を作成、ナースステーション内へ掲示し毎勤務前に唱和を実施する。・「紛らわしい表記」をしないため、日本語で「単位(又はUの上に線を引かない)」で記載することにした。・判断に困る(読みにくい、分からない内容)指示は医師に確認することとした。
指示受け
○看護師同士で「多いね」と会話を交わしているが、確認には至らなかった。疑問を確認行為につなげることが必要である。○指示票の「8U」が「80」に見えたということだが「、80」と単位がない表記を80単位と解釈せず「、80とは何か?」と医師に確認することで読み間違いがわかった可能性がある。○事例から、「単位(Unit)」を「U」と略すと「0」に見間違える危険性があることがわかる。「U」の記載は避けるべきであろう。○手書きで「単位」と記載するのは手間がかかるかもしれないが、注射箋を改訂して単位と印刷した欄を設けるなどの方法もあるのではないか。
医療事故
高カリウム血症に対してGI療法を施行するため、医師はヒューマリンR注100単位/1mL5単位静注の指示を出した。指示を受けた看護師は、注射指示票の「ヒューマリンR注100単位/1mL」の「1mL」の部分に気をとられ、インスリンを1mL(100単位)シリンジに移し静注した。インスリン専用のシリンジがある事を知っていたが、ヒューマリンRを「1mL」投与しようと考えていたため、専用シリンジを使用せず、通常の1mLのシリンジを準備し使用した。高カリウム血症のため早くインスリンを投与しなければと考え、準備から投与までダブルチェックせず1人で行った。
使用頻度が少ないインスリンについて、投与量や副作用の学習、知識が不足していた。注射指示票の表記が勘違いしやすい表記だった。準備した看護師は、ヒューマリンR注は100単位/1mLであることを知っていたが、投与指示が1mLであると認識した。通常、インスリンは単位数で指示が出るため、投与の際は必ず専用シリンジを使用するが、今回は指示が「1mL」だと思い込んでいるため、インスリン専用シリンジは使用できないと判断し、1mLシリンジを準備して使用した。
・使用頻度が少ない薬剤についての基礎知識を再学習する。・注射指示票の表記による勘違いを防ぐために、表記内容を「旧表示)ヒューマリンR注100単位/1mL」から「新表示)ヒューマリンR注(100U/mL)」に変更し、さらに薬品名と数量/単位の間に線を引き、字体と大きさを変更した。
指示受け
○インスリンの準備は必ず専用シリンジを使うようルールを定めてはいかがか。○適切なダブルチェックを行うことで準備の間違いに気づけた可能性がある。インスリンはハイリスク薬であり、ダブルチェックを実施することが望ましい。
医療事故
肝移植後、耐糖能障害のため持続インスリン投与をしていた。指示内容は「ノボリンR40単位+生理食塩水40mL」であった。早番看護師(1年目)が初めてノボリンRの調製を行った。慎重な確認が必要だという認識のもと先輩看護師に確認(口頭での確認で実物は見てもらわなかった)を依頼し準備を完了した。この時ノボリンRの注射指示書の規格の欄に記載された「ノボリンR注100単位/mL(10mL)」の表示を、100単位10mLと誤認し、投与量40単位の指示に対して4mL(400単位)を吸い生理食塩水と混注し、総量を40mLにした時点で先輩看護師に確認を依頼した。11時40分に担当看護師がシリンジの交換を行った。患者は不穏により夜間不眠状態であり、昼食後傾眠状態であった。家族が付き添っており、15時40分に声をかけても覚醒しないことで家族がナースコールをした。酸素飽和度の低下等があり、頭部CTを行った。採血で低血糖(17mg/dL)、呼吸状態の悪化があり挿管し、PICUへ入室した。その後の処置で意識は回復した。
当該病棟ではインスリン投与が稀であり、当事者はフリー業務で他チームの業務を依頼され手伝っていた。当事者は新人研修のときにインスリンの指導を受けた後インスリン投与業務に携わったことがなかった。病棟で行われているダブルチェックの方法が徹底されていなかった。インスリンについての知識不足(専用シリンジの使用の徹底)や、専用シリンジを使用する環境の不備があった。危険薬を新人が取り扱う際の教育・指導体制の不備があった。業務繁忙が日常化しているところに不意の人的問題が発生(当日病休で1名不足の状態であった)し、対応できていなかった。また、日常的な繁忙状況に業務負担や危険に対する意識や気づきが薄い状態にあった。手術後の患者受け入れが一般病棟で可能な状態なのかの基準がない。指示簿に印字されたノボリンRの表示が誤解されやすい「ノボリンR注100単位/mL(10mL)」という表示で、10mLを100単位と誤認した。
・移植術後患者の薬剤調製は担当看護師が調製し、移植術後患者の担当をしたことのない看護師に薬剤調製の依頼はしないことを徹底する。・ダブルチェックの手順作成と教育を実施する。・インスリンについての個別教育を実施する。・インスリン専用シリンジの使用の周知徹底、ポスターの掲示、定位置の表示を院内全体で行った。・各病棟担当薬剤師による危険薬の勉強会を企画(3回/年、新人のローテーションに合わせて行う)し、初めて危険薬を取り扱う際には、先輩看護師がフォローする体制を整備する。・急な人的問題に対応できるように他部署との連携を深め、応援体制を整備する。・業務内容を検討し、適正人員配置について検討する。・移植術後患者の病棟管理基準の見直しと他部門とのチーム体制を整備(ICU・PICU)する。・毎月小児外科系診療科長会議を開催し、安全な病棟管理体制(入院・手術調整等)の構築をする。・ノボリンRの印字を変更し誤認する情報(ノボリンR注100単位/mL)を外し、「ノボリンR注[瓶]10mL」とした。
薬剤準備
○インスリンは必ず専用シリンジを使用することが重要である。○インスリンを払い出す際にバイアルと専用シリンジをセットにしている医療機関もある。○指示票やオーダ画面に表示されたインスリンの規格や含量を見て、投与量を間違えた事例が他にも報告されている。本事例の改善策のように誤認されやすい情報(100単位/mL)は表示しないのも一案である。
医療事故
当事者は、食道がんの手術の麻酔を上級医とともに担当した。手術開始約30分後にカリウム値が7.0mmoL/Lと高値となり、GI療法を開始することとなった。50%ブドウ糖40mL+ノボリンR5単位を作成し、30分で投与した。投与後カリウム値は、4.2mmoL/Lまで低下した。その時血糖値は、148mg/dLであった。その45分後血糖値が20mg/dLまで低下し、血糖値が回復するまで50%ブドウ糖の投与を行った。50%ブドウ糖+ノボリンR5単位を調製する際に、インスリンの量を間違えて調製していたことがわかった。
当事者及び麻酔科医師は、インスリン専用のシリンジがあることを知らなかった。当事者は、インスリンを調製する際は、いつも1mLのシリンジを用いて、インスリン10単位(0.1mL)を10倍に希釈して必要な単位を使用していた。今回は、正確に測って調製しようと思い、10mLシリンジを用いた。100単位(1mL)を10倍に希釈し、5単位を取り分けたつもりが4mL(40単位)使用して、50%ブドウ糖40mL+ノボリンR40単位の注射調製を行った。他の医師や看護師とダブルチェックを行わなかった。緊急に行う必要があった。手術部内の医材用カート内には、インスリン専用シリンジは常備されているが、各手術室、麻酔カート内には常備されていなかった。
・麻酔カートにインスリン専用シリンジを常備した。・手術中にGI療法を行うときは、ある程度組成を統一するよう検討する。・インスリン専用シリンジの啓蒙を行う(麻酔科内及び院内医療スタッフに対して)。
薬剤準備
○インスリン専用シリンジを使うことを知らない医療者がいるため、周知が必要と思われる。○インスリンのバイアルに「専用シリンジを使用しましょう」などの表示があるとよいのではないか。○専用シリンジの使用を徹底する方法として、インスリンと専用シリンジを冷蔵庫に一緒に保管している医療機関もある。
医療事故
患者は夜間に救急外来を受診し、入院治療を行うことになった。糖尿病が既往にあり、外来で血糖値が190mg/dLであったため、点滴内にヒューマリンR6単位を注入するよう医師から指示があった。指示を受けた看護師Aは、「ヒューマリンR6単位」と思いながら注射器にヒューマリンRを60単位吸って投与準備をした。先輩看護師Bに「ヒューマリン6単位を点滴内に入れます。確認をお願いします。」と依頼したところ先輩看護師Bはヒューマリンの量が違うことに気が付き指摘した。看護師Aは、正しい量のヒューマリンを準備し、先輩看護師Bの確認の元、点滴内にヒューマリンR6単位を注入した。
当日の救急外来は、20:30から24:00までに救急車が7台、一般受診者が3名おり多忙な状況であった。看護師Aは、夜間の救急外来へリリーフで降りていた。ヒューマリンRも普段病棟では取り扱うことがほとんどない状況であった。インスリン専用注射器があること、一般注射と単位数、量が違うので取扱上注意が必要なことは知っていた。医師から「ヒューマリンR6単位を点滴内注入して」と言われたとき、それを頭に置きながら薬液の準備を始めた。しかし、インスリン専用注射器に書かれている“60”の“6”の数字が見えてしまい、ヒューマリンRを60単位の目盛りまで吸ってしまった。先輩看護師Bに確認の際、口頭で「ヒューマリンR6単位、点滴内注入の指示です」と言ったことで、先輩看護師Bも間違えに気が付きやすかった。
・ヒヤリハットの共有(口頭で相手に指示内容を伝え確認してもらう)をする。・“薬投与の6R”(正しい患者、正しい薬、正しい目的、正しい用量、正しい用法、正しい時間)を遵守していく。
薬剤準備
○インスリン専用シリンジを使用していても、目盛りを読み間違えると過剰投与につながるおそれがあるため注意が必要である。○ヒューマリンRを60単位吸った時点で、点滴に混ぜる前に他の看護師が確認したため、間違いを発見することができたのであろう。○ダブルチェックが機能して事故を未然に防ぐことができた事例である。
ヒヤリ・ハット
手術室にて、17:29血糖値262mg/dLと高血糖の状態で、麻酔科チーフレジデントに報告したところ、血糖値を下げるためインスリン3単位投与するように指示があった。17:32指示を受けた麻酔担当医が単独で調製し、インスリン3単位の指示のところ260単位誤投与した。インスリン全量をシリンジに吸い、air抜きを行ったところ気泡となっていたため0.4mL減り、全量9.6mLとなった。自身の判断でインスリン投与量は少ないにこしたことはないと考え、2単位投与を麻酔科チーフレジデントに提案した。また、2.6mL(2.6単位のつもり)を投与して残りがちょうど7mLとなった方が次も使いやすいと判断し、指示の3単位より少し少なめに投与したつもりであった。17:45本人が間違いに気がつき、麻酔科チーフレジデントに報告した。報告直後の血糖値は242mg/dLであった。17:46観血的動脈圧ラインを確保し、そこから20分おきに血液ガス測定とカリウム値を確認、また5分おきに血糖測定を行った。随時、血糖値に応じて10%ブドウ糖の投与速度を調整し、カリウム値を確認しながらカリウム補充の調整を行った。
麻酔中のインスリン調製について、麻酔担当医は単独で行わずスタッフあるいはチーフレジデントと一緒に確認、調製を行うというルールがあるにもかかわらず徹底されていなかった。
・インスリンを鍵付きの冷蔵庫に保管し、鍵を持つものしか取り出せないようにした上で一緒に調製する。・薬剤師の常駐化を上申し、インスリン・カテコラミン・麻薬などの調製を集約化する。・上記2点を改善策とし、事例発生後、再度ルールを確認、インスリンを単独で調製せずに、麻酔科スタッフと一緒に複数名で調製するルールと、インスリン専用シリンジを配備し、調製する際は1単位/mLの濃度に統一するルールの徹底を実行している。
注射の実施
○院内の部署によってはインスリン専用シリンジの使用がルール化されておらず、インスリン専用シリンジを知らない医療者がいるという現状が伺える。○インスリンを鍵付きの冷蔵庫で管理するのは手間がかかり、現実的には難しいことがあるのではないか。○薬剤師を常駐化し、インスリンなどの調製を集約化するという改善策は重要であり、他の医療機関でも参考にするとよいであろう。
医療事故
内分泌内科指示にて血糖コントロールのためヒューマリンR持続静注していた。8時間おきに血糖測定(6時・14時・22時)し、ヒューマリンRを増減するスケール施行し、ヒューマリンRを2.1mL/hにて持続静注していた。6時の血糖値は133mg/dLであり、ヒューマリンRを0.2mL/h減量し1.9mL/hへ変更するはずが変更されていなかった。日勤者が深夜勤務者の記事を見て発見し、14時の血糖測定では186mg/dLと低血糖症状はなかった。
ヒューマリンR持続静注し、血糖値によって流量を調節するという不慣れな指示であった(はじめは2時間ごとの血糖測定)。そのスケールの指示が頻繁に変更されていた(午前と午後とで変わる日もあった)。スケールの指示内容はカルテの付箋から確認し、印刷しシリンジポンプに貼付していた。
・血糖値とスケールの内容をダブルチェックする。・普段使用しているインスリンスケール指示と同じようにコピーしファイルにとじ、目の届きやすいようにする。
指示受け
○付箋で指示を運用していたようだが、指示の内容や変更がわかりにくかった可能性が考えられる。○改善策にダブルチェックが挙げられているが、投与速度変更がされなかった原因を明確にすると、より具体的な改善策が立案できるのではないか。
医療事故
ステロイド投与による高血糖に対して糖尿病・代謝・内分泌内科にコンサルテーションを行い、インスリン持続注入の指示があった。担当看護師は9時45分にリーダー看護師からシリンジポンプで生理食塩液49.5mLにヒューマリンR50単位を混注したものを1.0mL/hで施行するように指示表を渡され指示を受けた。リーダー看護師は担当看護師に指示表は1.5mL/hになっているが1.0mL/hで開始するように2回位伝えた。リーダー看護師と共にインスリンの単位数を確認して、生理食塩液50mLのボトルから0.5mLを抜き、ヒューマリンR50単位(0.5mL)を混注した。10時にリーダー看護師と2人で氏名、薬剤名、量を目視で確認した。リーダー看護師は他の業務に行き、担当看護師は生理食塩液50mL(ヒューマリンR50単位入り)に点滴セットをつけて、ベッドサイドに行き、側管から100mL/hの速度で滴下を開始した。10時45分頃、リーダー看護師が患者の部屋を訪室するとシリンジポンプがセットされていなかったのでおかしいと思って見ると空になった生理食塩液50mLのボトルが繋がっていた。担当看護師に確認して、ヒューマリンR50単位入り生理食塩液50mLが45分で点滴されたことがわかった。10時50分血糖値80mg/dLで神経内科医師へ報告した。糖尿病・代謝・内分泌内科医長に報告し、ブドウ糖液IVと点滴を開始した。15分毎に血糖値の測定を行った。
注射内容の確認は指示表を用いてリーダー看護師と共に行った。指示表にはシリンジポンプで実施するように印字されていた。シリンジポンプで実施することもリーダー看護師と共に確認した。シリンジポンプで実施することは確認していたが担当看護師が1人でできるかどうかの確認は行っていなかった。リーダー看護師は注射速度が指示表では1.5mL/hになっているが、1.0mL/hで実施するように担当看護師に繰り返し伝えた。担当看護師は、インスリン注射液を作成する時、生理食塩液50mLのボトルを使用した。シリンジポンプはスタッフステーション内に使用できる状態で置かれていた。シリンジポンプなどは通常各自が用意して使用するようにしているので、リーダー看護師は用意していない。担当看護師はシリンジポンプを使用して持続インスリン注入をすることは初めてであった。担当看護師は輸液ポンプやシリンジポンプの研修を受けていた。薬液の混注まではリーダー看護師と一緒に行い、輸液セットを付けてから実施までは担当看護師が1人で施行した。生理食塩液のボトルにはインスリン用の黄色の色別シールを使用していなかった。生理食塩液のボトルには部屋番号、患者氏名、ヒューマリンR50単位と記入されていた。注射実施時に指示表を持参していなかったので名前や内容確認時にシリンジポンプで実施することに気づけなかった。点滴セットをつけて実施する時には100mL/hにあわせたので1.0mL/hで実施することは頭になかった。50mLのボトルで用意したので抗生剤を実施するときのように輸液セットを接続したのではないかと推測する。ヒューマリンR入り生理食塩液50mLのボトルに輸液セットをつけた状態を抗生剤を1時間で滴下するように錯覚をしていたのではないかと推測する。
・注射実施時には指示表を必ず持参し、患者氏名や投与方法等を再度確認する。・シリンジポンプ使用の指示では注射器で用意をする。・色別シールや、注射器を用意してシリンジポンプで実施するような環境を作る。・インスリンに関する勉強会を開催して知識を深める(医師により開催予定)。・経験の浅い看護師が注射・処置等を実施する時には1人でできるかどうかの確認を行う。・経験の浅い看護師が質問などのできる環境を保つ。
注射の実施
○シリンジで薬液を混注すれば輸液セットによる誤投与につながりにくいのではないか。○生食50mLのボトルから0.5mLを抜きヒューマリンR50単位を混注しているが、ボトル内の薬液は通常やや多めに入っているのでこの方法ではインスリンの濃度が不正確になる可能性がある。○誤って点滴することがないように、生食のボトルではなくプラスチックアンプル等の製剤を用いるのも一つの方法である。
医療事故
心臓血管外科を受診し、手術日が約2ヵ月後に決定した。その際、心臓血管外科医から、手術の5日前に入院し、手術に向けて、ワーファリンを中止し、ヘパリンに切り替えるよう小児科医に依頼があった。手術6週間前、患者は、小児科外来を受診し、アスピリンを含む内服薬を処方したが、この時、医師はアスピリンの休薬を考慮せず処方した。入院日、患者は予定通り小児科病棟に入院した。翌日よりワーファリンの中止およびヘパリンの投与が開始された。手術前日、医師はアスピリンが休薬されていないことに気付いた。アスピリンを中止し、手術が1週間延期された。
抗凝固剤、抗血小板剤に関する知識が不足していた。抗凝固剤、抗血小板剤のチェック機構がない。ワーファリンの中止に気をとられ、アスピリンを休薬することを見逃した。
・小児循環器カンファレンス(週1回開催)の際に、2週間先までの手術予定者に関してワーファリン、アスピリンなど抗凝固剤、抗血小板剤の服薬状況を供覧し確認する。・「抗凝固剤・抗血小板剤の術前・検査前休薬期間」一覧を小児科病棟、外来に掲示し、看護師、医師、および家族に知識を啓発する。・今後、小児科病棟担当薬剤師が配置される。患者が入院する際、病棟担当薬剤師は術前患者の内服状況を把握し休薬対象薬の有無を確認する。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付いた事例
手術前の外来診察時、ワーファリンを服用している患者が1人で来院した。医師は手術4日前にワーファリン休薬可能かどうか、かかり付けの医師に確認するよう患者に説明した。入院時(手術当日の朝)、ワーファリンの服用を継続していたことが分かった。PT-INR2.49、PT24%であったが主治医の判断のもと、予定通り硝子体顕微鏡下離断手術を施行した。手術後、嘔気、嘔吐と190mmHg代の血圧上昇あり、球後出血を疑う所見があった。CT検査の結果、眼球後部の出血を認めた。止血処置、降圧処置行うが症状軽減せず、耳鼻科医により、緊急的に鼻腔より減圧処置を施行した。出血による視神経圧迫により視力障害が持続しており、出血の原因としては術前の球後麻酔による内側壁の損傷によるものと考えられた。通常ならば出血は術後吸収される可能性が高いが、今回は、ワーファリン内服中であったため止血に影響した可能性が高かった。
手術前の外来受診の際に、患者一人で説明を受けたので、ワーファリン継続投与に関する確認ができていなかった。ワーファリン継続のまま手術を実施した。
・手術前の説明は、高齢者の場合は、家族の同席のもと説明する。・抗凝固剤を内服している患者に関しては、内服継続し手術が可能かどうか、診療科全体で検討する。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付いた事例
患者は、心臓の手術のため、手術予定日の1週間前に入院した。しかし、入院日に患者の手術は、当初の予定日より3日後に行われることが決まった。患者は、朝食後にワーファリン錠4mgを服用しており、循環器外科では、ワーファリンを服用している心臓手術患者は、通常手術予定の1週間程前に入院し、入院日に薬の中止が指示され、ヘパリンが投与されていた。しかし、入院時に手術が延期になったため、患者の担当医は、ワーファリン内服は指示があるまで継続すると指示した。看護師は、中止の際は指示が改めて出ると思い、他の薬と一緒に一包化されたワーファリンを与薬していた。手術3日前、麻酔科医師は患者を訪問し、患者のカルテ上でワーファリンが中止されていないことを認識した。しかし、麻酔科医師は、心臓手術の際は抗凝固剤を中止するのは常識であり、カルテに記載がないだけで実際には中止してあると思い、担当医に確認しなかった。手術当日の朝、麻酔科医師はカルテを再確認し、薬が中止された様子がなかったため、手術室看護師に病棟への確認を依頼した。手術室看護師は、患者を手術室へ案内した病棟看護師と担当医に、ワーファリンが中止してあるか確認した。担当医は、病棟リーダー看護師に確認したところ、入院3日目に薬剤中止指示が出ておらず、ワーファリンは手術前日の朝まで服用していた事が判明した。担当医、執刀医と麻酔科医師が協議を行い、凝固機能検査の結果(APTT:143、PT:23、INR:2.31)、ケイツー40mgとFFPの投与を行い、予定通り手術が行われることになった。手術は止血状態を確認しながら行われ、手術中の出血量は、ガーゼ420g、吸引50mL、セルセーバー850mL(うち返血250mL)、輸血量はRCC1400mL(うち人工心肺充填8単位)、FFP1440mL、血小板400mLだった。手術終了後、患者はICUに入室した。術後2時間で、ドレーンからの出血が1000mLあり、血圧低下、CVPの上昇を認めた。経食道エコー検査で心タンポナーデが判明し、緊急止血手術を行うことになった。右側胸壁の出血を止血し、患者は再度ICUに入室したが、帰室後もドレーンからの出血が続き、1時間で1000mL認めたため、再々止血術が行われた。その後、ICUに入室し、バイタルサインは安定して経過した。
手術延期により、通常入院日に中止する薬剤を継続使用したため、中止指示のきっかけがなくなり、担当医はうっかり中止指示を出し忘れた。看護師は、通常、術前中止薬剤は担当医から指示があり、看護師から薬剤中止について確認することが少なかったため、担当医から薬の中止の指示が出ると思いこんだ。看護師の与薬行為が機械的になっていたため、ワーファリン中止の必要性が認識されず、担当医師への確認が行われなかった。麻酔科医師は、通常ワーファリンは中止されているため、今回も中止されているであろうと思いこみ、担当医に確認しなかった。ワーファリンは、単剤のヒートで薬袋に入っていることが多いが、患者の場合は、他の朝食後薬と一緒に一包化されていたため、看護師のワーファリンに対する認識が低くなった。担当医と執刀医、麻酔科医師が話し合い、ケイツーとFFPの投与を行い手術が行われたが、判断した状態を上回った。
・担当医は患者の手術日が再決定した日に、中止する薬剤を確認する。・担当医は、術前中止薬剤があることを患者に説明し、患者からの注意喚起も利用する。・麻酔科医師は、術前訪問時に術前中止薬剤の中止を確認する。・看護師は、患者の処方薬の薬理作用を理解して配薬する。・看護師は術前に中止が必要な内服薬を把握し、医師に確認する。・当該部署は、術前に抗凝固剤や抗血小板剤の中止がチェック出来るようにチェックリストを改定する。・術前中止薬剤(抗凝固剤・抗血小板剤など)は常用薬とは別の薬袋を作成し、薬袋に手術日を示すようにする。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付いた事例
患者は2日後に手術を予定していた。プラザキサは術前中止薬剤であり、カルテの医師指示にも手術前日の朝より、プラザキサ内服薬は中止と記載されていた。手術2日前の夜勤帯勤務であった看護師は指示を確認しておらず、朝夕内服のプラザキサが夕でなくなったため、当直医に連絡し、続きの処方を処方してもらった。手術前日の朝、内服薬を配る際にも医師指示を確認せずに配薬したため、患者はプラザキサを内服した。その後、日勤帯のリーダー看護師により中止薬剤が内服されていることに気付き、主治医に報告した。プラザキサは術前24時間の休薬が必要であるため、手術は延期となった。
医師指示の確認が不十分であった。届いた内服薬をセットする際にも医師指示を確認していなかった。薬についての知識が不十分であった。朝の配薬が遅くなり、申し送りが迫っていたため慌てていた。慌てやすく、緊張しやすい性格であった。
・医師指示を受けた看護師が患者に説明する。・薬袋に中止の旨を記載する。・薬が無くなった場合、次の処方を医師に依頼する前に一度カルテで確認する。・術前の担当者は、一般指示の中止薬剤を確認する。・いつから中止するか医師指示のみでなく、術前中止薬剤一覧で確認する。・術前中止薬剤一覧を目に入るところに掲示する。・患者のベッドサイドに、術前中止薬剤があることを知らせる札などを下げるなど、他チームの看護師、医師も一目でわかるような方法を検討していく。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付いた事例
生検のため入院後、病棟で患者の持参薬確認を薬剤師が行った。その日は通常の病棟担当薬剤師ではなかったが、リーダー看護師はその薬剤師に患者の入院目的を伝えなかった。腎移植チームの医師から依頼された一般泌尿器科医師は、病棟でサドルブロックを実施した。ブロック後、担当看護師が持参薬確認用紙を見て、患者のバイアスピリンが休薬されていないことに気付いた。担当医師に連絡し、生検は延期となり、患者は退院となった。
主治医は外来で免疫抑制剤の指示に気を取られ、また前立腺生検と腎生検を同時に行うため多くの書類作成が必要で、多忙だったため、バイアスピリンの休薬を忘れた。外来看護師は主治医から指示がなかったことと、患者から「抗凝固剤は飲んでいない」という返答を信じ、処方画面を確認しなかった。持参薬を確認した薬剤師は、入院目的を自分で確認しなければならないとは思っていなかった。病棟でサドルブロックを実施した医師は、依頼された医師から注意事項を何も言われなかったため、そのまま実施した。
・生検で入院する患者は、入院前の外来で医師・看護師が必ず処方画面を確認する。・抗凝固剤について、患者に分かりやすい案内用紙を作成する。・病棟では、医師・看護師・薬剤師が相互に患者の入院目的を確認し合い、持参薬確認表を確認する。・電子カルテシステムで抗凝固剤については色に変化を付ける、またはアラート機能がつけられないか検討する。・手術チェックリストに「抗凝固剤・休薬の有無」チェック欄を設ける。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付いた事例
外来受診し、約1ヵ月後に手術が決定した。その際、患者は経口避妊薬(トリキュラー錠)を内服していることを医師に伝えた。しかし、医師は、トリキュラー錠が手術前4週間は内服禁忌であることに気付かなかったため、中止しなかった。入院6日前、看護師が入院オリエンテーションを行った際、経口避妊薬を内服していることを知ったが、手術前禁忌の知識がなく気付けなかった。入院後、薬剤師がトリキュラー錠の内服と、それが手術前禁忌薬であることに気付き、手術が中止となった。
医師、看護師に知識がなかった。当院では入院予約時に薬剤の鑑別を行うことにしていたが、患者は入院6日前に入院予約をしており、この時に薬剤もしくはお薬手帳を持参していなかったために薬剤師の薬剤鑑別は行えなかった。その後、入院当日まで来院せず、入院後の発見となった。
・経口避妊薬が手術前4週間は内服禁忌であることを看護師は師長・主任、医師はセーフティマネジャーを通じて周知した。・薬剤師の入院前鑑別のみでなく、看護師の外来で行う入院アナムネ聴取時や外来手術オリエンテーション時にも確認することにした。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付いた事例
末梢血管インターベンション(EVT)のため入院した。入院時にPT-INRが測定不能であり、医師から受け持ち看護師に口頭およびカルテ記載でワーファリン中止の指示があった。受け持ち看護師は持参した3日分の内服薬からワーファリンを抜き、患者に渡した。その時、入院期間が延長する場合は病院から処方するので、家から処方薬を持参しないように説明した。EVT後に足趾壊疽が進行し、緊急で足趾切断、デブリドマンを行うこととなった。緊急手術後に出血多量となり、輸血を行った。このときPT-INRは測定不能であった。内服自己管理が難しい状態であったため本人と相談し看護師管理とすることにし、患者が持っていた内服薬を引き上げた。内服薬を確認したところ、夕食後の一包化内にワーファリンが含まれていることに気付いた。入院延長となった4日目以降、家族が自宅から持参した内服薬(ワーファリンを抜いていないもの)を継続していたことを、看護師は把握していなかった。
入院期間が延長する場合は病院から処方するので、家からは処方薬を持参しないように説明したが、家族が自宅から処方薬を持参し内服を継続していることを看護師が把握できなかった。
・中身の分からない一包化の薬は、入院中は使用しない。・処方が変更された場合、一包化内から薬を抜くことはせず、新たに処方することを医師・看護師・薬剤師間で確認した。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付かなかった事例
患者は狭心症でPCI治療後、バイアスピリンとニチステート(パナルジン後発医薬品)を内服し、他院に通院していた。検診でPSA高値を指摘され、精査のために当院腎泌尿器外科で前立腺生検を行うこととなった。医師は、患者が2種類の抗凝固剤を内服していることを認識していた。医師はメディカルクラークに、患者が通院している他院宛に、抗凝固剤の休薬が可能か否かを問う情報提供書の作成を指示した。メディカルクラークは診療情報提供書に「抗凝固剤は1週間前から休薬可能か」と記載した。また患者に手渡す前立腺生検術前説明用紙には、医師の記録を見ながら「抗凝固剤中止」の欄に「バイアスピリン」だけ記入して患者に説明した。患者は他院を受診し、医師から「抗凝固剤中止可能」と聞いたが、薬剤名は確認しなかった。当院で手渡した前立腺生検術前説明用紙には「バイアスピリン」としか記入していなかったため、患者は心臓のためにニチステートは継続内服するほうがよいのだろうと理解した。検査当日、患者は他院からの返書を持参した。外来看護師は「血をさらさらにする薬は止めているか」と問い、2種類の薬剤名まで確認しなかった。患者から「1週間前から中止している」ことを聞き、予定通り前立腺生検術が行われた。10ヶ所の生検を施行後、止血不良となり、サージセルを挿入して様子観察のために入院することとなった。止血状態が悪いため、主治医が再度薬剤を確認すると、ニチステートを中止していなかったことが判明した。患者は翌日まで安静のために入院し、止血状態確認後、退院となった。
情報のやり取りにおいて、いつの間にか「抗凝固剤」という言葉で一括りになり、その情報だけが動いた。取り扱う情報が同じであるかが分かるよう、具体的に表現すべきであった。メディカルクラークは主に書類作成などに関わるが、患者に対して一定の説明をすることもある。今回メディカルクラークは診療情報提供書の作成、患者説明用紙の作成および説明までを行った。診療情報提供書は医師の確認のもと発行されたが、「抗凝固剤」という表現であった。患者説明用紙はその診療情報提供書を基にして、誰の目も通らずに作成され、患者に説明された。メディカルクラークの業務内容が各部署で違い、曖昧な部分があった。
・患者情報の伝達エラーは他の場面でも生じ得ることであり、事例は院内にフィードバックして各部署で再確認するようにした。・メディカルクラークの業務内容を再確認し、各部署に徹底させた。またメディカルクラークに検査説明などをしてもらうこともあるが、その際には「同意書とリンクするものは取り扱わない」こととした。・侵襲的な検査・処置、手術の際の抗凝固剤などの休薬に関して、院内・院外で使用する「服薬中止薬剤確認指示書」の検討を進めている。特に院外で薬剤を受け取っている患者の場合、患者が内服している薬剤を示しながら当院の薬剤師が介入することができない。そこで患者への説明事項を具体的に指示した「服薬中止薬剤確認指示書」によって、院外の薬剤師に介入を求める。・「服薬中止薬剤確認指示書」として統一した様式にすることによって、指示漏れや確認漏れもなくなると考えている。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付かなかった事例
狭心症、CABG後で、抗凝固剤(バイアスピリン、プラビックス)を服用していた。膀胱生検のため、バイアスピリンは1ヶ月前より服用を中止していた。その後、プラビックスも中止を指示していた。生検前に、お薬手帳で抗凝固剤が中止になっていることを確認した。膀胱鏡による膀胱生検を実施し、生検後に少し出血が多いと感じたが、抗凝固剤は中止になっていることもあり、自然に止血すると判断した。生検後、帰宅した患者から尿が出ず、粘りのある出血があると電話があり、受診を指示した。診察を行い、膀胱タンポナーデと診断し、バルンカテーテルを留置後、膀胱洗浄を行ったところコアグラを大量に排出した。持続膀胱洗浄で、血尿は一旦改善した。再度、薬剤手帳を確認したところ、一包化の記載がありプラビックスが含まれていたことに気付いた。しかし、患者に確認したところ、薬局でプラビックスを除いてもらったと返答があった。その後、血尿が増悪したため、手術室で経尿道的電気焼灼術を施行し、3wayバルンカテールを留置し、持続膀胱洗浄を継続した。翌日、薬剤科に持参薬を確認してもらったところ、一包化にプラビックスが入っており、抗凝固剤を内服していたことが分かった。
易出血性の血管を摘んでしまい、通常は止血しうるが、抗凝固剤が継続されており、出血が止まりにくかったために、膀胱タンポナーデになったと思われた。
・細心の注意をはらいつつ施行するが、完全に防止はできないと思われるので、十分なICと迅速に対応していくことが重要である。・今回の生検は、抗凝固剤の内服中でも行う検査ではある。抗凝固剤の内服の確認は、お薬手帳で2度行ったが、患者の年齢等を考えるとその場での現物での確認が望ましい(外来薬剤師の配置を望む)。・抗凝固剤内服下の患者に生検を施行した場合は、生検後の出血が強ければ経過観察入院も考慮する。
観血的医療行為前に休薬していないことに気付かなかった事例
下部消化管内視鏡を行ったところ上行結腸に10mm大のポリープを認めたため当科に依頼となった。バイアスピリン錠を内服していたため治療の7日前より中止するよう指示し、内視鏡的ポリープ切除目的で入院となった。入院後、薬剤師による薬剤情報の聴取時に、抗血栓効果のある健康食品DHA/EPAを入院日の朝まで内服していたことが判明したため、ポリープ切除は延期となった。
患者及びその家族に健康食品の中には処置、手術に影響を及ぼすものが存在するという認識がなかった。外来にて、バイアスピリン錠は中止するよう伝えたが、健康食品の摂取の有無について確認したかは不明である。入院時、病棟薬剤師が患者に薬剤情報を聴取する際、「副作用歴」「薬剤アレルギー歴」「OTC/サプリメント」についても聴取することになっており、患者から健康食品を1週間前から摂取し始めたことを聞いた。手術前であれば、術前の麻酔科外来において薬剤師は上記を聴取しているが、今回は、内視鏡的ポリープ切除術であったため、入院後の面談となってしまった。
・内服薬に加えて健康食品の摂取の有無について確認する必要があるが、本人が申告しなければ対応は難しい。
nan
右膿胸のため有瘻性開窓術を施行後、全身麻酔下で右広背筋有茎皮弁移植術を施行した。ダブルルーメンチューブを使用した分離肺換気を予定していたが、気管に蛇行があり気管支への通過困難を認め、気管支ブロッカーを使用し右肺ブロックし分離肺換気を行ったが、右瘻孔よりエアリークを認めていた。左側臥位にて対極板は大腿部に貼用した。右瘻孔部にガーゼを挿入し、電気メスを出力:切開20、凝固40に設定し使用した。瘻孔部周囲で電気メスを使用した際に、右瘻孔部に挿入したガーゼが引火し燃えた。
手術開始時より右瘻孔よりエアリークを認めていた。執刀医、麻酔科医、看護師は情報共有していた。開窓術の手術時に、ガーゼによる引火の経験がなく今回の手術で引火すると思っておらず、乾燥したガーゼを術野に使用した。電気メス操作時の酸素濃度は100%であった。
・酸素のリークがある手術時は、術前に電気メス使用に際して火災の危険性を確認し、可燃物、高酸素濃度の環境下では使用しない。・手術中は、ガーゼを濡らした状態で使用する。・患者の状態等、100%の酸素濃度が必要かどうか検討し、電気メス使用前は酸素の濃度を下げる。
nan
扁桃摘出及びアデノイド切除術の際、全身麻酔を導入し、5.5mmカフなしレイチューブで挿管後、換気に問題ないことを麻酔科医師が確認した。その後、体位変換、頚部後屈となり、耳鼻科医師(執刀医)が開口器をかけたところ、エアリークが多く、換気量が不十分となったため、下咽頭にガーゼを詰めた。換気は十分となったが、酸素濃度を下げる間もなく手術開始となった。開始直後に電気メスにて下極より扁桃床を切除しようとしたところ、下咽頭ガーゼに引火した。すぐに生食にて消火したが、咽頭広範囲に熱傷を負った。
純酸素であり、カフなしレイチューブを使用したため口腔内にたまった酸素が高濃度であった。麻酔科医は低酸素のリスクの方が大きいと認識しており、発火の危険についての認識が低かった。挿入したガーゼが十分濡れていなかった。執刀医は、過去に発火の経験がなく、発火のリスクについての認識がなかった。タイムアウトから手術開始までの時間が短く、酸素濃度を確認していなかった。直接介助のつかない手術であり、持続的口腔内吸引ができていなかった。
・挿管後は速やかに酸素濃度を30%前後とする。・下咽頭ガーゼは十分に湿らせる。・執刀前タイムアウト時に、執刀医、麻酔科医、手術室看護師により上記を確認する(ブリーフィングの導入)。・電気メス使用時の事故防止対策マニュアルおよび電気メス使用手順を見直す。・電気メスの正しい使用および再発防止を院内に周知徹底する。
nan
慢性腎不全に対して腎移植を行われた患者が当院の移植外科に通院しており、ネフローゼ症候群を発症し腎臓内科の併診を開始した。定期診察で腎臓内科医師が高尿酸血症(9.0mg/dL)に気づき、移植外科に対してフェブキソスタットの投与開始をカルテ上で依頼した。移植外科の担当医師は、患者がアザチオプリンを免疫抑制薬として内服しているためフェブキソスタットは併用禁忌であることに気づき、代わりにアロプリノールの処方を行った。アロプリノールはアザチオプリンと併用注意であること、腎機能障害があることを鑑み、ザイロリック錠500.5錠(25mg)の処方としたが、アザチオプリン(イムラン錠50mg1日2錠)の減量は行わなかった。本処方に関して保険薬局の薬剤師より疑義照会はなかった。1ヶ月後の定期受診時の採血において、汎血球減少を認め、移植外科の担当医師に検査室より連絡があった(WBC7300→1000、Hgb8.8→5.8、PLT11.3万→5.4万)。腎臓内科の医師も検査結果に気づいた。
腎移植後の慢性腎不全の管理に関しては、腎臓内科の医師が関わる方針となっている。外来患者が多い中、他科の処方を十分に吟味する時間に乏しかったことに加え、腎臓内科医が普段免疫抑制剤を扱うことが少ないため、併用禁忌薬などの知識が不十分であった。移植外科医も禁忌薬は避け、併用注意薬であることは認識した上でアロプリノールの用量を減量し投与した。しかし本来減量すべきアザチオプリンの減量を行わなかったため、両薬併用の副作用として汎血球減少症を生じた。今回の事例はお互いの知識不足を補完し合うための併診であるにもかかわらず、両科での意思疎通、治療方針の共有が不十分であった。腎移植後の患者については通常の一般病院で研修を積むことは難しく、大きな病院で初めて症例を経験することが多い。移植後の内科管理を担当するに当たり、その準備として当該科において系統だった知識の習得を行う機会も乏しかった。
・移植外科、腎臓内科において、カルテ上のやりとりだけでなく直接的かつ緊密な連携をとる。・腎移植後という特殊病態に関して、両科合同の勉強会など、知識の共有を図る機会を設ける。・保険薬局に情報提供を行い、当薬剤での併用注意について、職員に注意喚起を行ってもらった。また今後同様の事例には、疑義照会を行ってもらうよう依頼した。
nan
1日1回昼にランタスソロスター10単位を看護師が実施していた。毎食前血糖測定の指示あり。血糖値によっては追加で速効性インスリンを実施していた。昼の血糖値の結果、追加で実施しなければいけなかったが、ランタスだけでよいと思い、実施しなかった。
昼は持続型のインスリンを施注しており、1種類だけでいいと思っていた(思い込み)。血糖値によっては2種類実施することに対する知識不足。チーム内での確認作業が行われておらず、慣れない処置に対する支援体制の不備(婦人科・小児科が主の病棟)。
・確認を徹底する。
nan
指示受け
○インスリン療法はバリエーションが多く、医療機関や医師によって方法が異なる現状がある。○患者の状態等によっては2種類のインスリンを使用する場合があることを理解しておくとよいであろう。○システムによってはスケールによる追加のインスリンはワークシートに表示されるとは限らないため、忘れないようにする工夫が必要である。
医療事故
昼の血糖値が高かったため、看護師がインスリンを投与しようと血糖指示ファイルを開いたところ、朝に投与するはずであったインスリン入りの注射器が挟まっていた。患者に確認すると朝にはインスリンは投与していないとの事であった。看護記録・温度板にはインスリン投与を実施した記録があった。
実施前に実施済みの記録にサインしてしまった。実施済みのサインがあったためにダブルチェックが機能しなかった。多忙時に発生した。
・必要な検査や処置が実施されないことは、重篤な有害事象を招く危険があることを再確認する。・実施記録は適切な処置や検査等が確実に実施されているかを確認する重要な手段である事を再確認して、実施記録のサインは必ず実施後に記載することを徹底する。・多忙時でも手順を遵守して、それぞれの処置を確実に実施していくことを心がける。
nan
注射の実施
○インスリンの注射はリアルタイムで実施記録をすることが困難であるという問題点がある。背景要因として、投与後のサイン忘れが多いため、先に実施済みのサインを行ったことも考えられる。○患者のベッドサイドに実施済みのサインをする表などがあるとよいのではないか。○改善策の一つとして、準備した注射器の置き場所を検討してはいかがか。
医療事故
PET-CT当日の朝、血糖値が207mg/dLと高値のため、内分泌内科の医師の指示でヒューマログ4単位を投与した。1時間後、血糖値が162mg/dLのため2単位投与し、検査前に血糖値が117mg/dLになったと申し送ったところ、PET-CT前にはインスリンを投与してはいけないことを放射線科看護師が気づき、予定していた検査は延期になった。
インスリン投与により診断能が低下するという知識が不足していた。
・PET-CT検査、FDG投与6時間以内の血糖降下剤の使用は、画像診断能力を低下することを理解し、血糖コントロールを実施する。医療安全セミナーで周知する。
nan
指示出し
○本事例はインスリンによって血糖値が低下するという効果が出ており、もし検査を行っていれば画像に影響を与えた可能性が高いと考えられる。○PET-CTの患者用説明用紙にはインスリン中止について記載されていることが多い。患者に説明する際に看護師も一緒に説明用紙を読めば、注意事項の知識が得られるのではないか。○背景として、PET-CT予定があるという放射線部門システムの情報が共有されていない可能性も考えられる。
医療事故
毎食前血糖測定を行っている患者。毎食直前の内服と定時(朝)でインスリン投与開始となりスケールは中止となっていた。しかし、指示を見落とし夕食前にスケール処置でインスリン8単位を投与したことに、翌朝4時過ぎに指示見直しを行っている際に気がついた。
思い込み、確認不足があった。業務開始の指示確認の時も見落としたが、内服があるため、スケールはないと思っていた。しかし、血糖値をダブルチェックしている際にスケール指示の項目に気が付いたのと、血糖板のスケールにチェックがついていたため、スケール併用と思い込んだ。また、慌てており指示を見落としたのも原因と思われる。
・病棟で使用している血糖測定表の表示の確認をする。他のスタッフにも確認する。・指示簿を見ながら、スケール打ちの指示を確認した時に指示はどうなっていたのか、変更した時の決まりを守る。
nan
指示受け
○指示の経路が複数あり、中止指示が血糖板に反映されていなかったことが要因と思われる。○背景として、電子カルテ化によって指示出し/指示受けが直接行われず、指示受けが適切にできていないことが当該医療機関に限らず増えてきているのではないか。○指示受けの際、なぜそうするのかという根拠も含めて確認することが重要である。
ヒヤリ・ハット
指示内容は各食前(経管栄養)と眠前に血糖測定し、食前はヒューマログ注(超速効型)をスライディングスケール、寝る前(21時前)にはランタス(持効型)14単位実施であった。21時の血糖値が222mg/dLであった。指示を見て、ランタス14単位、ヒューマログ4単位を実施した。4時に深夜の看護師が血糖測定したところ28mg/dLであった。
以前担当した患者は眠前に同様の指示内容だったので、思い込みで実施した。
・指示に戻って確認する。
nan
指示受け
○食事を摂取せずに超速効型インスリンを投与すると血糖値が大きく低下するというインスリンに関する知識が必要である。○経管栄養は吸収が早いため、本事例はさらに血糖値が下がりやすかったと思われる。○指示を確認するという改善策であるが、指示を見なかった原因がわからないと真の改善にはつながらないのではないか。より深い原因分析ができるとよいであろう。
医療事故
糖尿病の既往があり、インスリンを朝・夕食前に自己注射していた。昼の配膳前に血糖値自己測定の値を確認するために病室に訪室すると、アピドラ12単位を腹部に皮下注射しているのを発見した。患者は配膳車の音を聞いて、焦って注射したと話していた。糖代謝内科外来に報告し、低血糖症状が予測される16時30分に血糖測定し低血糖時のマニュアルに沿った対応をするように指示を受けた。
入院による生活環境の変化によって焦りが生じた。患者は以前からインスリンを自己管理していたため、看護師が患者の能力を過信した。
・血糖値は患者が自己測定し、インスリン注射は看護師管理とした。・血糖測定とインスリンの時間を患者の見やすい場所に設置する。・各食前に患者へ声かけをし注意喚起を促す。・インスリンは看護師預かりとし、食前に渡し自己注射してもらう。
nan
患者への説明・指導
○なぜ焦ったのかという理由を患者と一緒に考えることで、患者教育や改善策につながるのではないか。○配膳前に注射する必要はなく、配膳されてから落ち着いて注射するよう患者に伝えている医療機関もある。○自宅では自己注射ができていた患者であり、一時的に看護師管理としても入院生活に慣れてきたら自己管理に戻すとよいであろう。
ヒヤリ・ハット
患者は経管栄養投与中(7時、11時、16時投与)で1日4回の血糖測定を行っており、16時の経管栄養前の血糖値が68mg/dLであった。医師指示では血糖値51~70mg/dLの場合、インスリンは食後投与であった。日勤リーダーからは、低血糖(68mg/dL)であり「夕分のインスリンは食後打ちとなるためお願いします」との申し送りを受けたため、インスリンは夜勤者(Aチーム看護師、フリー看護師)で確認し投与するものと解釈した。経管栄養の投与が終了していたため、17時45分~17時55分の間に血糖測定実施状況を開き、実施入力がされていないことを確認し、インスリンの準備(アピドラ12単位、ランタス24単位)を行い、夜勤看護師2名(Aチーム看護師、フリー看護師)でダブルチェックを行った。確認後すぐにインスリンの投与を行った。18時30分~19時の間に日勤看護師より夕分のインスリンを日勤者で18時前に投与したとの報告を受け、重複投与がわかった。その後、糖尿病・代謝内科医師、主治医へ報告し、指示を受けた。
日勤看護師と夜勤看護師の業務の引き継ぎが不十分であり、お互いに自分で投与しなければならないと思い込みがあった。日勤業務を夜勤看護師に引き継がなければならない場合のルールが確定していない(日勤看護師が行うか夜勤看護師が行うか)。インスリンが投与済みであるか日勤看護師に確認できていなかった。血糖測定実施状況の実施入力が未実施のままであった。
・どちらが実施するのか日勤担当看護師にも確認し明確にしておく。・投与直前に再度日勤者に確認する。・業務が延長する場合はどちらが責任をもつかを確定しておく。・インスリンを準備し、確認した時点で確実に実施入力を行う。検討の結果、以下を行うこととした。・ケア・処置の重複防止のため、17:00~8:59を夜勤業務、9:00~16:59を日勤業務として明確にした。・注射を実施した時点ですぐに、電子カルテ上「実施確認」を行う。
重複投与
注射の実施
○勤務時間を遵守することは重要であり、勤務時間終了後に次の勤務帯の業務を行うと重複が起きるおそれがあることを認識する必要がある。○改善策に挙げられているように、実施入力を速やかに行うことで重複を防ぐことができる。
医療事故
経管栄養中の患者で糖尿病ありインスリン注射していた。夕食前血糖値76mg/dL、看護師2人で胃管の気泡音を確認し経管栄養の準備を行った。1人の看護師が経管栄養を接続し、もう1人は、ヒューマログ4単位皮下注射し退室した。その後19:15分頃、ベッド柵をたたく音があり、訪室した。患者から足が痛いとの訴えあり。顔面発汗あり、発熱あり、HR130台、ややぼーっとしている表情だが、コミュニケーションはとれた。胃管を確認すると経管栄養がクランプされたままであり、血糖測定すると46mg/dLであった。急いで経管栄養開始、当直医へ報告し15分後再検し血糖値60mg/dLであったため、ブドウ糖50%20mL1Aを静注した。15分後血糖値155mg/dLとなり経過観察となった。
院内で経管栄養の扱いは少ない。経管栄養接続・開始の際の確認が不十分であった。2名の看護師で関わっていたが、別々の動作を行い、ダブルチェックできていなかった。夜勤看護師は3名、1名は特定の疾患患者を受け持っており、残りの2名はパートナーシップで業務をしている。パートナーシップを取り入れているのは当該病棟のみであった(パートナーシップは2名がペアになって看護業務を行う方法)。看護師2名はインスリンを注射する人、経管栄養を準備する人、とそれぞれを作業しており、お互いに「確認しているだろう」と思っていた。院内では経管栄養患者のチェックリストがあるが、100%の利用はできておらず、当該病棟でも活用していなかった。チェックリストがあるのは知っているが、忙しいなどの理由で使用できていない現状がある。
・経管栄養開始時は、クレンメ開放や接続部など一連の動作を2人で確認を行う。・栄養ポンプを使用する。
食事等との調整
実施に伴う確認・観察
○経管栄養を開始する際は、クレンメ開放の確認だけではなく、誤嚥していないか等の一連の観察が重要である。○胃管が胃内に入っていなくても気泡音が聴取されることがある。インスリンを注射した後で、もし胃管が胃内に入っていないと、誤嚥だけでなく低血糖を起こし得る。リスクを低減させるため、先に経管栄養のクレンメを開放して開始時の観察をしてからインスリンを注射するとよいのではないか。
医療事故
病室にて患者にインスリン投与後、キャップをすくい上げリキャップした。このとき針が曲がりキャップを針が突き破った。それに気づかずキャップをはめようと注射器を持った際に、指に針が刺さった。
患者の家族が面会中であったため、シャープスコンテナを患者のそばに置きにくかった。針をむき出しのままにしておくと、患者や家族に刺さる可能性があると考え、リキャップした。
・リキャップをしない。・シャープスコンテナを患者のそばに置きにくい状態であっても、患者や家族に説明し同意を得て、シャープスコンテナを患者のそばに置き、すぐに使用済の注射器や針を捨てられるようにする。
針刺し
注射の実施
○常に針捨て容器を使用するよう習慣づけることは重要である。○ペン型インスリン注入器専用のリムーバーを使用している医療機関もある。
ヒヤリ・ハット
呼吸器内科から消化器内科に転科したばかりであった。毎食前に血糖チェックして、血糖値の値でインスリンを打つことは理解していた。血糖チェックし、カルテ指示を確認し、インスリンを皮下注射した。記録の際、カルテを確認すると、呼吸器内科のスケールの指示であった。179の値は消化器内科では、注射せずに経過を見ることになっていた。見る指示欄が違っていた。
医師の指示欄では、呼吸器内科の指示はすぐ確認できた。消化器内科の指示は定期指示欄に記入されているが、指示欄でははっきりと確認できなかった。血糖値のスケールが科によって違っている事がわからなかった。消化器内科は250からインスリンを使用。呼吸器内科は150以上から指示がある。ダブルチェックをしていない。
・科が変わって指示が変わる場合は、情報の整理を行う。消化器内科の指示と認識できるようにする。・スケールを院内で統一できるように話し合う。・ダブルチェックして確認しあう。
その他
指示受け
○インスリン療法は患者の状態によって調節が必要であり、スケールの統一は困難なことが多い。スケールを統一すれば投与間違いは防げるかもしれないが、患者の血糖コントロールが不良になるおそれがある。○むしろインスリンの指示の場所を統一し、現在アクティブな指示がどれかをわかりやすくするとよいのではないか。
医療事故
持参薬のインスリン注射(ノボラピッドフレックスペン)の使用期限が切れていたが気づかず使用した。入院後は持参薬を看護師が預かり、投与していた。
使用期限を確認しなかった。
・持参薬剤の使用期限を確認する。
nan
その他
○持参薬のインスリンは自宅での管理であるため、必ずしも使用期限の近いものから使用されず期限切れになっている可能性があることを認識しておく必要がある。○薬剤師が持参薬の確認を行っている医療機関においても、本事例を情報共有して使用期限まで確認することを周知するとよいであろう。
医療事故
外科医師4名で電気メスを使用して気管切開術を始めた。しかし、100%酸素を投与していたために、電気メスで気管を切開した際、気管チューブが発火した。
気管切開施行時に、100%酸素を投与していたにも関わらず電気メスを使用していた。
・気管切開時には電気メスを使用せず、バイポーラを使用し、かつ、高濃度酸素を使用しない。
【気管チューブに引火】
障害残存の可能性がある(低い)
100%
酸素濃度が100%であり、術者は高濃度酸素下での手技であるので尖刃メスを用い通常と同じように頸部を約5cmに渡って切開を行った。気管へメスを入れる際に酸素濃度を85%へ下げ、電気メスを用い気管を逆U字状に切開を行った。気管切開後はいつも行っているので大丈夫と思い、チューブの先端を切開位置まで抜去し、電気メスを用い気管の止血に取り掛かった。その後酸素濃度を100%に上げ、電気メスにて凝固を行ったところ、気管チューブに引火し、約10秒間の間火柱が立ち炎上した。その後直ちに気管チューブを抜管し、酸素濃度を20%に下げた。ガーゼにも引火したが、水と思って手にした1%キシロカインを散布し、消火した。その後気管切開チューブを挿入し、人工呼吸器へ接続した。
他院で発生している事例について、医療安全部門および外科部門での共有が不十分であった。また気管切開の際の現場でのブリーフィングが不十分であった。電気メス使用時、気管チューブのカフは既に潰れていた。電気メスにて凝固を行っていた最中には、気管チューブには触れていないと認識しているが、かなり近い位置にあった。
・日本外科学会より出されている「気管切開時の電気メス使用に関する注意喚起のお知らせ」をもとにし検討したが、むしろ切開位置に燃焼体である気管チューブが存在しない方が安全であると考え、気管切開時には気管チューブを更に浅く引抜き、酸素濃度についても明確な基準を設けたマニュアルを作成することとした。・低酸素化にリスクのある患者についても手順を明確化する。
【気管チューブに引火】
障害残存の可能性がある(高い)
100%
呼吸管理が長期に及ぶため、気管切開術を施行した。消化器外科の医師が、電気メスを用いて気管を切開している際、すでに挿入していた気管チューブの一部に引火し気道熱傷を起こした。
患者の血小板数が約2万と非常に少なかったため、前日に血小板輸血を行った。それでも、約6万であり、出血の危険性が高かったため、電気メスを使用した。患者は手術後の重症肺炎のため人工呼吸器管理を行っていた。気管切開術は、患者に負担を与えるため、酸素濃度は100%で行っていた。
・事例の内容について、院内全体に早急に周知を行った。・事故調査委員会を含めて、具体的な再発防止策について検討を行う。
【気管チューブに引火】
死亡
100%
患者は人工呼吸器管理中で、酸素濃度40%で設定していたが処置中の侵襲を考慮し酸素濃度を50%へ変更した。第2、第3気管軟骨輪の間で気管切開を行い、半周性の切開を行った時点で右側気管周囲に発火した。ただちに生理食塩水を噴霧し1~2秒で鎮火したが用手換気を行ったところ換気困難であったため気管チューブを抜去し、気管切開部より気管切開チューブを挿入した。換気状態、循環状態は問題なかったが気管支鏡を実施したところ、気管から主気管支にかけて強固な煤の付着と熱傷を認めた。胸部X-P上は肺野に異常はなかった。
日本外科学会では電気メスを用いて気管切開術を実施する場合、酸素濃度を40%以下とすることを推奨しているが、本症例は重度の低左心機能(EF15%)であり、酸素濃度を40%以下にすると低酸素血症を来したため、FiO50%の設定で気管2切開術を実施した。抗凝固療法中であり確実な止血を行うために電気メスを使用した。
・ICUにおいて気管切開のシミュレーションによる勉強会を行い、サージカルファイアの発生機序、対処方法、必要物品の整備など手順について確認した。・サージカルファイアの発生機序、対処方法、ブリーフィングの重要性についてリスクマネジメントニュースを発行し、病院運営会議、リスクマネジャー会議を通して全職員へ周知した。・ICU部門において手順(「気管切開時の覚書」)を多職種協働で作成し、部内へ周知した。・ICU部門において作成した手順(「気管切開時の覚書」)をリスクマネジメントニュースへ掲載し上記に記載した周知と併せて全職員へ周知した。・気管切開などICUで実施する処置について包括的同意書を作成し、リスクなどについて説明し同意を得ることとした。
【気管周囲に引火】
障害残存の可能性がある(低い)
50%
心不全により呼吸状態が悪化し、ネーザルハイフローで呼吸管理を行い、SpOは98~99%2で経過していた。翌日21:00不眠の訴えがあり、医師指示にてプレセデックスを4.5mL/h→7mL/hへ増量したが、入眠できておらずルート類を気にせず体位を変えたりと落ち着かない様子であった。本人の希望もあり22:00にゾルピデムを内服した。その後も患者は入眠できず、ネーザルハイフローを外すことも頻回となり、呼吸困難感の訴えも現れた。安静が保てなくなったため、22:45に不穏時の指示通りにアタラックスP1AをCVCより投与した。投与後も患者はRASS:+2であり、SpOは80%台に低下し、チアノーゼが出2現したため、ICU当直医に経緯を報告した。23:15患者を診察したICU当直医よりセレネース投与の口頭指示を受け、金庫からサイレースを取り出した。受け持ち看護師はICU当直医の口頭指示を「セレネース」と聞いたが、セレネースだと思い込んでサイレースを手に取り、取り出した薬剤のラベルをきちんと見ていなかった。ミキシング前にICU当直医より薬剤の濃度の質問があり、リーダー看護師がサイレースのアンプルをICU当直医に直接見せて、2mg/1mLであることを確認した。その後、ICU当直医が指示書に記載しながら、生食9mLで希釈するように指示を出した。指示書には「セレネース1A+生食9mLのうち5mL投与」と記載されていたが、リーダー看護師も受け持ち看護師も、指示書の記載は確認していなかった。受け持ち看護師はミキシングの時にも薬剤名を確認せず準備し、「サイレース2mg/1mLを生食9mL」と記載し、23:15CVCより患者に投与した。投与後、患者はRASS:-5となり、肩枕を入れたがSpOが74%まで低下したため、マスク2をリザーバーマスクに変更した。しかし、SpO2は改善せず、BiPAPマスクを装着し、SpO2は99~100%へ上昇した。準夜から深夜へ勤務交代し、深夜のリーダー看護師がストック薬剤の確認を行ったところ、セレネースではなくサイレースの残数が減っていることに気づき、投与した薬剤を誤ったことが分かった。
満床であり、他の受け持ち患者のケアも十分に行えていなかったため、気持ちが焦っていた。受け持ち看護師はセレネース、サイレースともに茶褐色のアンプルであり、セレネースだと思い込んでしまった。受け持ち看護師は患者の呼吸状態が悪化しており、指示を急いで実行しなくてはと焦っており、薬剤名の確認が不十分であった。口頭指示受け時のルールが遵守できていなかった。
・年間を通してサイレースは使用していなかったため、ストックから除去する。・投与する薬剤は必ず5つのRightを確認する。・アンプルやバイアルの外見が似ている薬剤は特に注意して確認を行う。・口頭指示受け時のルールを遵守する。
注射薬
帝王切開術をルンバールにて施行。術中血圧の低下あり(70~90台)エフェドリン(4mg)を使用していた。その後患者が吐き気、気分不快感を訴えたため術者より「プリンペラン投与」と口頭指示が出た。その時点で看護師は他の処置を行っていたため、医師が薬剤の準備から実施まで行った。看護師が術中使用した薬剤のアンプルを確認したところ、プリンペランの空アンプルがなく、使用していないはずのペルジピンの空アンプルがあった。すぐに医師に確認し、プリンペランと取り違えてペルジピンを使用したことが分かった。ペルジピンを投与後、患者の血圧は60~80台になり、エフェドリン(4mg)を2回使用している(但しこの時点では間違えたことは気づいていない)が、手術終了時には血圧は100~110台まで回復し、全身状態も安定した。
帝王切開時は短時間でいろいろな事が発生するため、常に慌ただしさがある。本事例においても看護師は臍帯血のガス分析や他の薬剤の点滴内投与を行っていた。当事者である医師はプリンペランやペルジピンを実際に使用したことがあり、プリンペランは茶色のアンプルという認識で薬剤を手に取っていた(薬剤名の確認を行ったかは覚えていない)。実施をする際、ダブルチェックしていなかった。手術室で薬剤は全身麻酔用と脊椎麻酔用にカートが分かれているが、帝王切開の際は両方のカートが持ち込まれている。脊椎麻酔用カートにはペルジピンはセットされていない。
・全ての薬剤は、手に取った際、溶解する際、投与する際など、全ての場面で声に出しダブルチェックする。・ダブルチェックできない場合は、指差し呼称が必要である。また看護師がいない場合は、指示を出した医師に確認を求めるのが望ましい。・アンプル自体を他者に見せ、チェックする習慣をつける。そのためには、ロールプレイ等の研修を実施するなどのトレーニングが必要である。・ダブルチェックの徹底、薬剤確認のタイミング等をルール化し、院内に周知するべきである。
注射薬
病棟で患者の点滴準備を実施していた。薬局で準備された点滴カートから薬品を取り出し確認し、患者氏名の貼り付け作業をしていたところ、「セレネース1A」のところ「ジゴシン1A」が用意されていたことに気付いた。薬剤部に確認してセレネースに交換してもらい患者に影響は出なかった。
セレネースとジゴシンは包装が類似している。薬剤の混注前に確認作業で誤りに気付けたため、患者への影響はなかった。
・包装や形状、色など見た目が類似している薬剤は多くあることを再認識する。・ダブルチェックによる確認作業の重要性を再認識し、各部署できちんと確認作業を行う。
注射薬
下肢静脈血栓症のためワーファリン錠が処方されていた。当院消化器内科受診し、内服薬を処方され、保険薬局で内服薬を受け取り帰宅した。受診後より食欲不振、倦怠感が強く、歩行困難となる。顔、膝、ひじ、掌、足裏のしびれもあり、改善しないため再度消化器内科を受診した。脱水がみられ補液加療目的に入院必要となる。持参薬確認時、「ワーファリン錠1mg夕食後3錠」の薬袋に、ラシックス錠40mgが15錠入っているのを発見し、2日間、夕食後にワーファリン錠ではなくラシックス錠40mg、3錠を内服していたことが判明した。主治医は、ラシックス錠を中止し、再度ワーファリン錠を処方した。その後、病棟より保険薬局へ報告した。
医師が処方した薬剤と、調剤された薬剤が異なっていた。患者が気付かず内服してしまった。(保険薬局からの報告内容)1)物的要因ワーファリン錠とラシックス錠は外観が類似しているにも関わらず同一棚に陳列していた。調剤時には各医薬品ごとに割り付けている棚の番号(棚番)を確認するよう全職員に口頭伝達していたが、業務手順書に反映されていなかったため遵守できていなかった。2)人的要因調製時、混雑している時間帯で、気持ちにゆとりがなかった。患者を待たせないようにという思いから、棚番確認を省略してしまった。鑑査交付時、混雑している時間帯であるため、赤いシートを見てラシックスをワーファリンと思い込み、十分に確認することなく鑑査終了した。交付時、患者に対して錠数が変更されワーファリンが1mg4錠から3錠になったことを確認したが、薬剤は確認せず交付した。
(保険薬局からの報告内容)・ラシックスの棚の移動と簡単に取り出せないように作成する。・医薬品の陳列の点検、外観類似の薬品を移動する。・外観類似の印をつける。・交付時に薬剤名を提示し、患者に説明する。・口頭伝達事項を業務手順書に反映させ周知する。・連絡体制を再構築する。
内服薬
ガスコンの処方に対し、薬剤師が誤ってガスロンNを調剤した。看護師Aは指示簿を見て「ガスコン」と声を出して読み、看護師Bは薬剤(ガスロンN)を見て「ガスコンですね」と言って準備した。
薬剤師は、名称が似ていたため、薬剤部の棚に記載された薬剤名を見誤って取り出した。指示と薬袋に「ガスコン」と記載されており、薬剤がガスロンNであったことに看護師が気付かずに配薬した。ガスロンとガスコンNの名称、外観が似ていたためPTPシートに記載された文字を「ガスコン」と見間違えた。多忙な業務であせり、確認が不充分であった。
・ダブルチェックのシミュレーションを行い、意識付けを図る。・忙しい業務の時こそ、正しい6Rのダブルチェックを実施する意識を持つよう注意喚起を図る。
内服薬
抑うつ状態に伴う食思低下、低栄養状態がみられていた。無機リン1.9mg/dLと低下していたため、ホスリボン配合顆粒10包分2(朝、夕)の内服が開始された。3日後、次の3日分の処方箋が出た。実際に薬剤部より調剤されてきたものは、ホスレノール顆粒分包250mgであった。看護師は調剤の間違いに気付かず、ホスレノールを与薬トレイに3日分セットした。その間の深夜帯看護師、準夜帯看護師は、内服薬確認のダブルチェック時十分な確認を怠り、薬剤名と与薬トレイ内の薬剤が相違している事に気付かなかった。準夜看護師は18時30分に患者の夕食後薬の内服介助を行った。19時、夕食後薬の実施入力をするためカルテを開いた時にホスリボンではなく、ホスレノールを誤って内服させていた事に気付いた。当直医に、当日の朝夕、翌日の朝夕に、誤ってホスレノールを内服させていた事を報告した。19時10分当直医は患者を診察した。ホスリボンは眠前薬と同時に内服し、翌日の朝食前血液検査で経過観察するよう指示が出た。無機リンは、2.1mg/dLであった。
処方箋には、医薬品の配置場所が分かるよう棚番号が記載されている。ホスリボンは調剤棚Aの上部から11段目の左から2番目、ホスレノールは調剤棚Aの上部から11段目の左から4番目に収納されていた。調剤者は、ホスリボンをどちらかというと処方されることの多いホスレノールと読み違えた。本来であれば処方箋に記載されている情報(医薬品名、総量、薬品コード、棚番号)を確認することになっているが、できていなかった。鑑査者は、ホスリボンとホスレノールの名称が類似していること、同じアルミ包装で外観が似ていることから、見誤った。処方箋上の薬剤名と実物の照合や識別コードの確認が不十分であった。病棟では、薬剤部から届いた薬剤は正しいという認識が働いた。金曜日は、病棟に土曜日・日曜日の薬剤が薬剤部から届いており、十分な確認ができていなかった。
・薬剤部の払い出し時の鑑査について、作業過程を周知する。・セットする場合は「鑑査」の視点で作業を徹底する。・看護師は、ルールの徹底とルールを守らないとどんな危険があるのか、チームで再度認識する。・看護師は、薬剤に関して部署で知識の強化を行う。・看護師は、患者の情報共有を行うため、カンファレンスを強化する。・薬剤部では継続処方との監査ができるよう専門性を強化する。・ジェネリック薬品の利用により、短期間で薬剤名の変更があり、また形状が似ているため、今後、採用する薬剤を検討する。・「一文字」ごとの確認の強化、調剤者は棚番号の確認、鑑査時は処方箋との照合を徹底周知した。・処方箋上の識別コード欄にホスリボンには[リン補充]、ホスレノールには[リン抑制]と表示されるようにした。
内服薬
術後12日目の患者が疼痛を訴えたため、カルテに記載されている「ジクロフェナク50ミリグラム1個」投与の準備を始めた。看護師は、電子カルテの指示に従い、「ジクロフェナク50ミリグラム」保管場所の病棟冷所から坐剤を取り出し、電子カルテを参照しながら、別の看護師と坐剤のダブルチェックを行い、その後患者に投与した。翌日、病棟薬剤師から、レシカルボン坐剤を使用した患者名を確認された際に、「ジクロフェナク50ミリグラム」ではなく、誤ってレシカルボン坐剤を投与したことが判明した。病棟冷所にある「ジクロフェナク50ミリグラム」の保管場所に、誤ってレシカルボン坐剤が保管されており、誤った坐剤を取り出したが、ダブルチェックの際にも薬剤名が違っていることに気付かずに患者に投与した。
ジクロフェナク50ミリグラムとレシカルボン坐剤の外観・形状が類似していた。薬剤投与時の薬剤確認の基本ルールを遵守しなかった。
・薬剤投与時の薬剤確認の基本ルールを遵守する。・確認作業の際に、指さし呼称を取り入れ、確認の精度を上げる。
外用薬
調剤者(薬剤師)はビソルボン吸入液を調剤するところ、誤ってベネトリン吸入液を調剤し、ビソルボン吸入液のラベルを貼った。鑑査者(薬剤師)は間違いに気が付かず払い出した。病棟看護師は間違いに気が付かず、ビソルボン2mLの指示どおりにベネトリンを2mL使用した。その後別の看護師が瓶のラベルの下にベネトリンと書いてあることに気付いた。すぐに医師に報告し、副作用としての頻脈や血圧低下、電解質異常の出現がないか注意深く観察したが、幸い異常は認められなかった。すぐに両親に医師・看護師・薬剤師から状況を説明し謝罪、再発防止に努めることを伝えた。
ビソルボン吸入液とベネトリン吸入液は形状が似ている。一緒の棚に置かれている。調剤者と鑑査者の確認不足である。看護師は、処方箋とラベルの薬剤名は確認するが、薬剤本体とラベルが合っているかを確認することは困難であった。ベネトリンは使用量が微量であるにもかかわらず、ビソルボンと同じような量の瓶に入って、通常は分割して調剤することが多い。その場合、間違いに気付けなかった可能性がある。
・薬剤の保管場所を別々にする。・調剤時に機械による水剤鑑査システムを用いて、薬剤のバーコードの照合を行い、調剤者が正しい薬剤であるか確認できるようにする。・患者氏名、服薬方法が書かれた薬剤ラベルは貼付時に確実に薬剤名が確認できるようにサイズを工夫する。・製薬会社に薬剤瓶の形状を検討してもらったり、必要量が適切に払い出される量の薬剤になるよう協力を依頼する。
外用薬
外陰部腟消毒用に0.05%ステリクロン液ではなく、10%ハイジール液を間違えて用意した。婦人科内診ユニット中段にそのユニットで使用する消毒液のボトルに開封日を記載して置いている。朝の診察準備時に看護師が、いつも使用する消毒ボトルと違っているため確認すると、ステリクロン液でなくハイジール液であった。開封日から使用した可能性がある患者を確認すると、外陰部の消毒、卵管造影の消毒、癌検診時の消毒に使用したことが分かった。
内診室へ0.05%ステリクロン液を補充するところ、消毒剤保管場所から隣にあった10%ハイジール液を取り出し、内診室へ置いた。内診室で使用する消毒は、0.05%ステリクロン液とわかっていたが、消毒綿作成時に、ボトルの確認をせずステリクロン液と思い込み、ハイジール液で消毒綿球を作成した。0.05%ステリクロン液と10%ハイジール液の保管を隣同士で並べていた。外観が類似している。薬液ボトルの名前の確認が出来ていない。
・生体消毒剤と器械器具消毒剤を別々の場所に保管する。・消毒剤作成時は、消毒剤名(ボトル)の確認をする。・消毒液交換時は、ボトルを使用済みボトルと新しく出したボトルで比べて確認をする。
外用薬
14時30分に看護師は、体位変換と気管吸引を行った。その後、人工呼吸器のチェックを行い異常がないことを確認し結核ユニットから出た。15時頃、臨床工学技士は人工呼吸器の作動チェックを行ったが異常はなかった。その時に患者は体位変換を希望したので、結核ユニットから出た所で看護師に伝えた。看護師は、薬剤の受領等があり直ぐに対応出来ず、その後記録室で指示受けを行った。記録室には複数の看護師がいた。15時31分にセントラルモニタのSpO低下アラー2ム、15時32分に無呼吸アラーム、15時36分に徐脈アラーム、15時41分に心停止アラームが鳴っていたが気付かなかった。15時47分に体位変換のため結核ユニット内に入ると人工呼吸器のアラームが鳴っていることに気付き患者の病室へ訪室すると、患者は心肺停止状態で呼吸回路が人工呼吸器本体部分より外れていた。
結核ユニット内の人工呼吸器のアラーム音が記録室内に聞こえない構造となっていた。セントラルモニタのアラーム音に気付かなかった。結核ユニット内に看護師が不在となっていた。セントラルモニタのマニュアルがなかった。結核ユニット内での医療機器使用基準がなかった。
・結核ユニット内で使用する人工呼吸器のアラームはナースコール連動にする。・結核ユニット内で看護師が不在とならない看護体制に変更する。・セントラルモニタのマニュアル及び看護手順を作成する。・結核ユニット内での医療機器使用基準を作成する。・結核ユニット内でセントラルモニタが確認できるようにする。
1)人工呼吸器本体と呼吸回路の接続部が外れた事例
臨床工学技士と担当看護師の2名で点検表を用いて点検を行った。臨床工学技士は、通常人工呼吸器の接続外れやリークを確認するために、呼吸回路の接続部位を押し込みながら点検し、設定値と実測値を点検表に記録している。患者が病棟へ転室した翌日、11時50分にシーツを汚染するほどの多量の排便があり、看護師2名で患者の体位を左右交互に側臥位にして、汚染した寝衣やおむつを交換していた。12時20分、患者のSpOは100%を維持していたが、何度目かの側2臥位の後、便汚染のために心電図モニタを外した12時21分以降からSpOが低下しはじめ、212時25分にはSpOが70~40%と急激2に低下した。看護師は、患者を側臥位から仰臥位にして様子を見たがSpOは改善しなかった。2間もなくして人工呼吸器のアラームが鳴動したため、看護師は気管チューブ辺りの接続が外れていないかを目視確認したが異常は認めなかった。その後もSpOの改善はなく、12時26分に看2護師は患者に心電図モニタを装着した。12時31分に主治医が到着した時には、患者はPEAの状態であり、その後心停止となった。主治医は、人工呼吸器が装着されているにも関わらず患者の胸郭が挙上していないことに気付き、人工呼吸器の設定を強制換気モードに変更した。しかし、患者の胸郭は挙上せず、異常を感じて更に注意深く確認した際に、人工呼吸器の加温加湿器と回路の接続部が外れていることを発見した。
人工呼吸器のアラームが鳴動した時、看護師は人工呼吸器を確認したが異常に気がつかなかった。看護師は、人工呼吸器の回路が外れやすい部分(気管チューブと人工呼吸器の回路の接続部分辺り)を目視確認しただけであった。外れた回路が人工呼吸器の加温加湿器の上に載っているような状態であり、一目では分からなかった。また、回路が外れていた加温加湿器は、人工呼吸器の足元にあり、見えにくい位置にあった。看護師は、人工呼吸器のアラームが鳴動した際に、人工呼吸器のトラブルだとは思わず患者の死期が迫っていると判断して医師を呼んだため、用手換気を行わなかった。人工呼吸器のそばにはバッグバルブマスクを設置していなかったため、人工呼吸器のトラブルだと認識したとしても、直ぐに対応できるような環境にはなかった。eラーニング教材「人工呼吸器装着中の患者の看護」内に、救急用常時設置物品として、バッグバルブマスク、二股アウトレット、酸素流量計等が記載されているが、吸引時や体位変換時のバッグバルブマスク使用方法について説明していない。
・事例を院内に紹介して周知するとともに、人工呼吸器のアラームの初期対応に関する教育を行う。・人工呼吸器のアラームに関するマニュアルを作成する。・人工呼吸器のそばには、バッグバルブマスクを設置するよう徹底する。・現在、安全対策ポケットマニュアル内に人工呼吸器のアラームに関する事項を記載しているが、看護師用のeラーニング教材では、アラーム対応等緊急時の対応に関する事項が不足しているため、当該事例において検証した内容をeラーニング内に入れ込むように、看護部との調整を行う。
2)呼吸回路内の一部の接続が外れた事例
20時40分頃、看護師Aが他の個室患者の処置を終えドアを開けた際、モニタのアラーム音に気付いた。ナースステーションに戻ってSpOモニタを見るとSpOは15%に22なっていた。患者は、顔面蒼白、四肢紫色、呼名に反応なく、フレックスチューブと呼吸回路が外れていた。呼吸回路を接続し、他のスタッフを呼ぶためスタッフコールを押した。手元のSpOモニタには値が出ていなかった。2看護師Bは、アンビュバッグで換気を開始した。看護師Cは、SpOが50%台であり、気管内2の貯留音が著明であったため吸引を施行し、白色の粘稠痰が多量に引けた。アンビュバッグに酸素を接続し3Lで開始し、SpOは97%まで上昇2した。看護師Dは、血圧測定し、心電図モニタを装着した。患者のSpOは回復し、顔色が戻り、2開眼、口を動かす動作が見られた。
人工呼吸器の回路外れを発見した約30分前に患者の体位変換のため、フレックスチューブと呼吸回路を外し再装着していた。直後にアラームは鳴らなかったため、接続が甘く何らかの力が加わることで外れた可能性がある。接続が甘かったところに、人工呼吸器の送気か、呼吸回路がアームごと下がることで引っ張られ外れたことが考えられる。呼吸回路はアームで支えているが、アームの固定部分が緩んで下がってくることがあり呼吸回路が同じ位置で固定されていなかった事が考えられる。看護師Aは他の個室患者の処置中で、部屋のドアを開いた時、アラームに気がついたが、他の看護師は休憩室や離れた病室で処置をしていたため、アラームに気がつかなかった。モニタの時間修正を定期的に行うように決まっていたが実施されていなかったため、モニタの時間と実際の時間にずれがあった。
・アラームが出来るだけ鳴らないよう予防的、計画的に関わる対策と、アラームが鳴った場合の対策を立てる。・病棟看護カンファレンスを施行し、以下の点を病室に貼り出し、指さし呼称を行い確認する。(1)人工呼吸器が確実に患者に接続されているか(2)呼吸回路がアームに適切に固定されているか(3)人工呼吸器の内圧は通常の圧に戻っているか(4)消音ボタンを解除したか(5)SpOの値2・アラーム音が聞こえる場所に看護師を配置する。・処置時、患者の了解を得て部屋のドアを開けておく。・レンタル業者に連絡、人工呼吸器の回路を固定するアームの点検と緩んでいる物を交換した。・人工呼吸器のアラーム音の設定を確認し、全て最大になっていたが、機器の個体差があったため対応を依頼した。・モニタ類の時間修正の徹底を行う。
2)呼吸回路内の一部の接続が外れた事例
11時15分に、発見者がナースステーションの心電図モニタのアラームに気付き、患者の部屋に訪室したところ、ボーカレードとエコキャスの接続が外れていることに気付いた。モニタの履歴を振り返ると、11時10分HR:145SpO:92%211時11分HR:109SpO:65%211時12分HR:108SpO:50%211時13分HR:99SpO:38%211時14分HR:86SpO:31%211時15分HR:42SpO:31%211時16分HR:32SpO:31%211時17分HR:61SpO:69%211時18分HR:96SpO:69%211時19分HR:115SpO:77%211時20分HR:116SpO:90%211時15分に発見者がアラームに気付くまでナースステーションには、看護師、医師は不在であり、廊下にも医療者はおらず、家族も不在であったため、異常アラーム音をキャッチする人はいなかった。
アラーム音は扉を開けていてもナースステーションから3つめの大部屋に入ってしまうと聞こえない状況であった。直前までバイタルサインを測定しており、アラーム音、モニタ設定等問題はなかった。重症個室の扉が閉まっていたことや、ナースステーションに誰もいなかった点が改善できると考える。
・アラーム音がしっかり聞こえるように重症個室の入り口を開ける(プライバシーを守れるよう、衝立を使用する)。・患者は首を動かしており、気管切開チューブが抜けてしまう可能性をチームで共有する。・患者は首を動かしているため、頻回に見回り呼吸回路にテンションがかからないように、回路を調節する。・ナースステーションにスタッフがいる体制を作る。
3)呼吸回路と気管チューブ・気管切開チューブ・マスクの接続部が外れた事例
15時45分ナースコールあり訪室すると患者は吸引を希望した。15時47分吸引施行し、実施前後のSpOは100%であり、むせ2込みはなく気管カニューレにフレックスチューブを接続した。接続時入りづらく、押し込んで右に回して片手で接続確認を行った。15時51分経管栄養の濃厚流動食を配るために訪室したところ、ベッドサイドモニタ上SpOは30%ま2で低下し、気管カニューレとフレックスチューブが外れていた。患者は、チアノーゼ、眼球上転、顔面蒼白、呼名に反応なく、意識レベルJCS300であった。発見と同時にアンビュバッグにて酸素15Lで用手換気しながら看護師の応援依頼、医師に報告し、FiOを25%から50%2に上げて人工呼吸器に接続した。15時55分SpOは84%、チアノーゼ消失、意識レベル2クリア、呼名に口パクで反応あり。15時57分SpOは100%に回復したため、FiOを2225%に下げた。患者は、15時45分に看護師が吸引を行い接続確認したが、その直後に外れたと訴えた。
モニタ履歴と状況確認から、15時47分に吸引施行し、SpOは2100%、気管カニューレとフレックスチューブを接続した。15時50分にSpOは95%に低下2し、接続外れが発生したと考えられる。15時53分にSpOは229%、訪室した看護師が発見しアンビュバッグにて酸素15Lで用手換気、応援要請した。吸引後、気管カニューレとフレックスチューブの接続確認がマニュアル通り両手で行われていなかった為、接続が甘く、外れたと考えられる。
・ケア後の人工呼吸器接続について病棟全体でマニュアルを再確認した。・気管カニューレの取り扱い、接続方法の学習会を実施する。・病棟医療安全推進担当者が中心となり、全員の手技を確認する。・ケア後、気管カニューレの刺激により咳き込み、怒責が出現した場合は、咳き込みの症状が消失し、SpO2値が安定するまでその場を離れない。・咳き込み、怒責があった場合は、再度フレックスチューブと気管カニューレの接続部を確認する。・LTV1200の検証結果、機器の異常は発見されなかった。
3)呼吸回路と気管チューブ・気管切開チューブ・マスクの接続部が外れた事例
14時15分患児の検温後(SpO100%)2気管吸引と体位変換を施行し、電気毛布を気管カニューレの所まで掛け保温を行った。14時30分他の患児の散歩へ付き添うため看護師Aに当該患児の観察を依頼した。14時40分頃時間注射終了のアラームが鳴ったため、看護師Aは患児のもとへ行ったところ、人工呼吸器が外れていることを発見した。患児は、SpO28%、脈2拍触知不能、チアノーゼあり。近くにいた看護師Bを呼び、直ちにバギングを開始し、病棟内にいた医師を呼びCPRを実施した。14時42分SpO:96%HR:100回/分血圧:2158/94mmHg、チアノーゼ改善する。主治医に状態を報告した。
気管カニューレと人工呼吸器が外れていることに気付かなかった。SpOのアラームの下限値設定が288%で、アラームの音量設定が最低音量になっていたため聞こえなかった。前日に当該患児に使用中のモニタを他の患児に使用したため、アラームの設定を変えていたが、当該患児に使用する時にアラームの設定条件の確認ができていなかった。小児用ETCOセン2サーが人工呼吸器に着いた状態で気管カニューレと外れていたため、人工呼吸器のアラームは鳴らなかった(小児用ETCOセンサー2は、死腔削減のため、ラインが細く吸気圧のリークがない。気管カニューレ挿入部より常にエアー漏れがありリーク補正がかかっており人工呼吸器の漏れに対する感知が鈍くなっていた)。気管吸引後に患児から離れた時、人工呼吸器との接続を確認できていなかった。
・人工呼吸器のアラームだけに依存しないで生体モニタのアラームへの対応を確実にする。・各患児のベッドサイドにアラームの上限下限を表示する。・始業前に経皮酸素飽和度や心拍のアラームの上・下限値及び音量のチェックをする。・気管チューブと人工呼吸器を外した後は確認を確実に行う。
3)呼吸回路と気管チューブ・気管切開チューブ・マスクの接続部が外れた事例
9時47分頃訪室した際、HR50台、SpO230%台に低下、声掛けに反応しない患者を発見し、医師に報告した。医師はすぐに駆けつけるが、モニタ上PEA波形に移行した。この時人工呼吸器の回路が気切口より外れている事を発見する。用手換気、胸骨圧迫を開始し、アドレナリン1mgをIVし約3分後には自己心拍再開した。その後自発呼吸を認めたが、対光反射は無く、痛覚に反応しなかったため、脳への影響を考慮し低体温療法を開始した。2時間後に対光反射は回復し、BISも90まで上昇を認めた。その後、監視モニタの画像を確認したところ、9時29分に患者が右手を拳上した際に、人工呼吸器の回路が引っ掛かり外れていたことが分かった。
患者は、呼吸管理のためICUに入室し、ICU入室後も軽快、増悪を繰り返していた。意識レベルはクリアであり、身体拘束は行わずナースコールも押せている状況であったため、担当看護師は9時頃訪室した際に声掛けのみ行い、他の患者のケアに入った。患者はベッドサイドリハビリを行っていたが、看護師は患者の右手が頭元まで上がるとは思っていなかった。また、前日も人工呼吸器の接続外れがあったが、すぐに対応し事なきを得ていたため情報の共有がされていなかった(自発呼吸はあるが、人工呼吸器の補助がないと数分でSpOは低下する)。朝のケ2アや他の患者の入室時間と重なり、ナースステーション内で生体監視モニタを誰も見ていなかった。前室のある角部屋で人工呼吸器のアラーム音が聞こえなかった。また、使い慣れていない機種でアラームの音量が変えられることを知らなかった。人工呼吸器はリハビリの関係から右側に置かれていた。
・報告、連携を強化する。・お互いのコミュニケーションを良好に保ち、声を掛け合う習慣を持つ。・日々変化する病態観察において、患者に視点を当て五感を育てる教育を行う。・医療機器のアラーム音の設定の見直し及び人工呼吸器チェックリストの検討(アラーム音の点検項目)を行う。・ベッド周囲の環境整備を行う。・人工呼吸器を患者の状況に応じた設置場所に置く。・身体拘束の時期や時間の検討を他職種を交えて行う。
3)呼吸回路と気管チューブ・気管切開チューブ・マスクの接続部が外れた事例
22時30分頃、BiPAPのアラームについて同室者から「さっきから何回も鳴ってうるさい、眠れない」と訴えがあり、看護師はアラーム音を6から3に下げて頻回に訪室していた。深夜勤務看護師に口答で伝えたが、記録には残さなかった。深夜勤務看護師は頻回に巡視した。患者はBiPAPのマスクを外しているため、必要性を説明して装着した。時々起きあがりマスクの接続が外れていることもあり、その都度患者へ説明し装着した。翌日、朝食摂取時にカヌラにするとSpOが45%まで低下したため、BiPAP2を装着しSpOが98%に上がったのを確認し2退室したのが8時頃であった。9時40分に看護師がバイタル測定のため訪室すると、左下肢がベッド柵の隙間から出た状態で、BiPAPのマスクとホースの接続部が外れているのを発見した。
BiPAPのアラーム音量が下げられていたため、アラーム音がナースステーションに聞こえず、患者の異変に気づくのが遅れた。BiPAPはリース機器だったため、当院のものと違ってナースコールと連動していなかった。BiPAPのマスクとホースは、以前から接続外れがあったが、臨床工学科への報告はなく、外れをなくす工夫もされていなかった。BiPAP使用中に外れることが多かった患者であるが、観察時間が1時間30分程度空いた。事故発生時の連絡が遅く、共通報告ルートで実施されなかった。
・巡回を含めて他種類の機器に関してもアラームを確認する。・ナースコールと連動していない機器に関しては、臨床工学科でアラーム設定が変更出来ないように機器に注意を表示する。・出来るだけ当院で使用している機器と同じものをリースし、アラーム対応できるようにする。・BiPAPの接続が外れる事に関しては、臨床工学科と連携を取って対策を行う。接続時に深く力を入れることにより外れにくくなるが、使用中の湿潤した状態での確認を行う。・患者がBiPAPを外すことにより、SpOが下が2ることがあるため、BiPAP使用の有効性と危険性について医師と認識を共有する必要がある。・BiPAPを使用している患者への医療チームによる対応が重要であり、カンファレンスでの情報共有を活発に行う。・申し送り前後の患者観察は重要であり、特にBiPAPが外れやすいなどの状況が伝わっていない状態では見落としとなるため、伝達内容が漏れないような対策が必要である。・ICU病棟は入室基準を持って患者を管理している。人工呼吸器使用患者に関する管理基準を作成し、原則、人工呼吸器使用患者はICU病棟管理とする。・診療部としてはBiPAPの適応を十分に検討、使用する時は患者に十分な説明を行い適応を判断する。
3)呼吸回路と気管チューブ・気管切開チューブ・マスクの接続部が外れた事例
患者は、小細胞肺がんの再発に対し、化学療法目的にて入院した。医師は、CBDCA(パラプラチン)+CPT-11(カンプト)の併用療法をPCからオーダし、Day8のCPT-11(カンプト)を投与した。その後、約10日間、患者には、化学療法による副作用(嘔気、下痢、骨髄抑制)が認められ、輸血、制吐剤、G-CSF製剤の投与がなされた。骨髄機能が回復傾向となったため、次のコースについて検討するにあたって再度投与量を確認したところ、通常、CPT-11(カンプト)投与量は、単独投与の場合は体表面積あたり100mg、併用療法の場合は体表面積あたり50mgだが、レジメン登録時に投与量設定が併用療法の場合も体表面積あたり100mgで登録されており、CPT-11(カンプト)が過剰に投与されたことに気づいた。
レジメン登録の際、薬剤師が誤って入力をした。必ず時間を置いてダブルチェックをしていたが、間違いに気付かなかった。患者の副作用症状が強く、次の治療の実施について科長に相談した際に、経験豊富な科長が気付いた。7ヶ月前に実施された電子カルテ移行に伴う新システム導入の際に、2年前までに実施されていた肺がん抗がん剤全レジメンにについて、薬剤部で入力し、診療科で正しく入力されたか確認する作業を行った。この際、小細胞肺がんにおけるCBDCA(パラプラチン)+CPT-11(カンプト)併用療法のCPT-11(カンプト)の量が体表面積あたり100mgになっていたが気づかないまま登録した。
・現在登録されているレジメンのチェックについて、提出レジメンの確認作業を各診療科で行う。・レジメン集および申請書類と、登録レジメンのリストの資料作成は薬剤部の対応とし、準備が整い次第、化学療法管理指導委員会委員長名で各診療科に依頼を行う。・新規登録されるレジメンは、電子カルテシステムへの仮登録(使用不可な状態で)後、申請医師とレジメン管理担当薬剤師で内容確認を行い、申請医師の押印または署名を取得した後にレジメン登録し運用を開始することとする。・新たな医療情報システム導入などで、データ移行を行う際は、レジメン内容が元のレジメン内容と同一であることを診療科と薬剤部との間で確認した後、運用を開始する。
レジメン登録/薬剤量間違い(過剰)
○事例はシステム変更時のデータ移行の際の問題である。特にベンダーが変わる時は要注意である。○システムは老朽化していくので、いずれデータ移行が必要になることを見据えて、レジメンの数を整理することを考えておくことが重要である。しかし、レジメンの登録ルールはあっても削除のルールはないことが多く、使用しないレジメンがそのままになっている場合がある。○本事例は薬剤師の疑義照会の対象にはなりにくい事例であろう。○間違いに気がついたきっかけが「経験豊富な科長に相談し・・」ということは着目すべき点である。本事例をもとに、間違いに気がつく仕組みを検討することも重要である。
患者は他院にて関節リウマチ、高血圧の加療をされ、高血圧に対して降圧剤であるノルバスクを内服していた。入院時に当院で処方する際に、本来ならノルバスクを処方するところをノルバデックスと間違えてオーダした。その後も、継続して入院中誤った処方をした。転院の際、紹介状にそのまま誤って記載されたため、転院先でも誤ってノルバデックスが内服された。2回目の転院先の施設で病名と内服薬が合わない事に気付き、家族より「母は乳がんなのか。施設の医師から聞かれた。」と当該医療機関に問い合わせがあり、間違いが分かった。
降圧剤のアムロジンとノルバスクの採用を検討した当時は、ノルバスクとノルバデックスが似ている薬剤名という認識はなく、院内処方はアムロジンを採用することに決まった。その後、ノルバスクとノルバデックスの取り違えについて当院では認識していたが、ノルバスクを院内処方に採用していないため薬剤マスタの見直し等は行わなかった。よって、当院でコンピューターでのオーダの際に「ノルバ」の3文字で検索するとノルバデックスのみが検索される。初回入力した医師は、ノルバスクは高血圧の薬だと認識していたが、ノルバデックスについての知識はなかった。3文字入力して画面に表示されたノルバデックスをノルバスクと勘違いしてそのまま処方した。医師は、表示された「ノルバデックス」の文字が青色になっていたが、医師は、システム上、青色が「抗がん剤」を示していることを知らなかった。また、医師は入院時に家族のメモをもとに処方の指示を出したが、初期の処方入力と照らし合わせるためのメモなどは残していなかった。夜間の緊急入院であったため、薬剤師による持参薬の鑑別等の介入はしていなかった。その後、病名と薬剤が合わない事に気付きかけた看護師はいた。しかし、『今日の治療薬2010』でノルバデックスを検索したところ「抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬」のページに載っており、ノルバデックスは「ホルモン(抗エストロゲン薬)」に分類されていたため、患者の既往にある関節リウマチに対し「免疫抑制剤」「ホルモン剤」としてノルバデックスが処方されていると判断し、そのまま配薬した。
・事例発生後、ニュースレターで院内採用の頭3文字が同一の医薬品例やオーダリング時の薬剤の種別について周知を行った。・初めて患者の内服薬を処方する際はより慎重に行う。・処方薬に疑問を抱いた場合は、速やかに周りに相談する。・全病棟に病棟薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を開始した。夜間に緊急入院した患者は翌日の薬剤師、休日に緊急入院した患者は日直の薬剤師が対応し、基本的には全病棟の持参薬の鑑別を行っている。・初めて処方する際は、仮にメモ書きなどであったとしても、処方した内容と比較できる情報は保存し、薬剤師と情報を共有し、処方内容の確認ができるようにしておくことを周知した。・知識の薄い薬剤の処方をする際は、薬効などを調べてから処方することを研修医から教育する。・適応となる病名が無い場合は、処方が行えないようにオーダ画面の改善を検討する。・名称が類似する薬剤に対する注意をオーダ画面上で処方の際に提示する事等、改善を検討する。
処方/薬剤間違い
○事例が発生した医療機関では、オーダ画面の医薬品をハイリスク薬と色分けして表示する、という工夫を行っているが、医師は様々な施設で勤務することがあるので注意が必要である。色や見え方を変えるルールは全国規模で取り組まないと新たな危険を生む可能性があるため、「抗がん剤」などと文字で読めるほうが効果的かもしれない。○医療機関によっては、腫瘍用薬は他の薬剤とは別の画面から処方する、というシステムを用いているところもある。
子宮頸癌の術後リンパ節転移を認めたため補助化学療法として、CPT-1160mg/m2、NDP80mg/m2の投与を開始した。当初は入院中のDAY8に投与予定であったが、退院の希望が強く退院した。外来化学療法の入力は入院中に行った。外来の処方画面にはCPT-11/NDPセット登録がなく、CPT-11単剤(100mg/m2)の項目を選択し、投与量を減量しないまま処方、投与した。2日後、薬剤師より指摘を受け過剰投与に気付いた。副作用が強く出現する可能性があるために外来受診し、採血検査で異常所見がないことを確認した。下痢症状があるとのことで止痢剤を処方した。
CPT-11/NDPの外来投与用のセット登録が完了していなかった。投与量の確認をせずに処方した。診療録の投与量を確認せずに調剤確定した。外来化学療法はオーダリングシステムで入力すると薬剤部から部署に届けられ、担当者が確認の上、投与する。入力時には一度入力された内容を改めて担当医または上級医が確認しOKボタンをクリックする。投与量は従来単独で使用する投与量であったため、薬剤部は過剰投与量とは認識していなかった。本事例はオーダ時のダブルチェックが機能しなかったことが要因と考える。
・腫瘍用薬を処方する時は自動計算だけでなく、電卓などを使用し、手計算を行い、入力画面と照合し投与量を確認することを徹底する。・症例毎に実施計画書に記載されている量を確認し、調剤決定することを徹底する。
処方/薬剤量間違い(過剰)
○入院、外来でレジメンは一括にすることが望ましいが、分けることもあり得るので、治療中に患者が入院から外来に移行する時は注意が必要である。○事例が発生した医療機関では登録した単剤のレジメンを更にアレンジできるようなシステムのようである。この様な運用方法は改善を検討したほうがよい。○レジメンの登録方法や追加機能の問題を見直すことを検討してもよいのではないか。
患者は急性白血病に対して、初回の抗がん剤投与を目的に入院した。入院の際に関わった看護師は、患者の身長・体重を測定し、身長55cm、体重162.2kgと値を逆に電子カルテに入力した。薬剤部ではがん専門薬剤師が抗がん剤レジメンチェックを行う。薬剤量算出のために参考にするのは、身長・体重をもとに自動計算された体表面積である。がん専門薬剤師が見た用紙には身長55cm、体重162.2kg、体表面積1.141m2と印字されていたが、間違いに気が付かなかった。監査者も調剤者も、体表面積と算出された薬剤量を見て問題ないと判断した。医師は投与する薬剤量がやや少ないように感じたが、患者はやせ型の男性であり、標準投与量の下限に含まれる量であったため、あり得る量だと判断した。初回の抗がん剤治療であったため、薬剤に関する詳細な説明が患者に必要だと考えた病棟薬剤師は、がん専門薬剤師に説明内容について相談した。相談を受けたがん専門薬剤師はレジメンを確認したところ、薬剤投与量が少ないと感じた。処方医に減量しているのかを確認したところ「通常用量でオーダしているはずだ」と回答があり、原因を確かめると体表面積が小さく、身長と体重の値が逆に入力されたことによって過少投与になっている事を発見した。
看護師は患者が入院する際、多くの情報と書類を取り扱う。特に身長・体重は治療にも関わる重要な値であるため、その値はダブルチェックを行うこととなっていた。しかし、入力したか否かの確認のみで、その値は確認されなかった。電子カルテには前回入力した身長・体重の値よりも5%以上差がある場合、ワーニングメッセージを表示する仕組みがある。しかし当該患者は初回入院であったため、メッセージが表示されなかった。薬剤部ではがん専門薬剤師がレジメンチェックを行う。用紙には身長・体重と、身長・体重から自動計算された体表面積が印字されていた。体表面積は確認したが、まさか身長・体重の値が間違っているはずはないと思った。医師は薬剤投与量が少ないように感じたが、全くあり得ない量ではなかったため、再確認しなかった。
・身長・体重は治療に関わる重要なデータであるため、入力した値のダブルチェックを徹底する。・レジメンチェックの際には、薬剤投与量を算出するための体表面積と、そのもとになる身長・体重も確認する。・20歳以上の患者の場合、身長の値が100cm以下で入力されるとエラーメッセージが表示されるシステムに変更した。・電子カルテバージョンアップの際には、レジメン機能に身長の値よりも体重の値が大きくなる場合には、ワーニングメッセージを表示する、あるいはエラーを表示する仕組みの導入を検討する。
処方/薬剤量間違い(過少)
○報告された改善策はシステムでの対応が検討されており、他の医療機関にも参考になる。○身長・体重は患者の治療に係る重要なデータという意識が看護師の中で薄いのかもしれない。○患者の身長・体重の入力は、複数人をリストごと入力できる、一括入力ができる等、システムによって様々な機能がある。入力の方法を決めておくのがよいであろう。○処方時に体重測定を行うのがよいであろう。
AMLに対して、10時にキロサイド2000mg/200mLを3時間(67mL/h)で投与し、3時間空けて16時にベプシドを投与する予定であった。しかし、キロサイドをメインルートから12時間持続投与(17mL/h)してしまい、ベプシドを18時まで2時間同時投与した。
レジメン個人注射指示票の表記が見にくかった。レジメン個人注射指示票を担当看護師と確認したが、指示票に「1日2回12時間毎」と記載があり、12時間持続投与と勘違いした。下の段に「注入時間3時間」とあったが、12時間と思い込んでしまった。全量が200mLのため、医師は17mL/hと手書きで記載し、「12時間投与だから17mL/hで」と言い、その指示に対して担当看護師も計算をすることなく従った。
・準備時、レジメン注射指示票の用量、用法にマーカーを入れて強調し、薬剤名、投与量、投与順、投与時間を確認する。・実施時、指示票を用いて、2名で薬剤名、投与量、投与順、投与時間のダブルチェックを行いPDAで認証し実施する。・レジメン個人指示票の印刷レイアウトを変更する(表示順の統一、用量、用法の強調などにより見誤りを防ぐレイアウトを検討する)。
指示出し/投与速度間違い
○注射指示票は、文字数が限られており、長い名前の薬剤等は一行に入らない場合もある。改行するとどこに繋がるのか分かりにくかったり、見落としてしまいそうな見え方もある。レイアウトの変更の検討を含め、分かりやすい指示票にすることは重要である。○腫瘍用薬の投与速度はレジメンによって違いがある。薬剤ごとに一定の投与速度があるわけではないため、知識や経験を生かしにくい現状がある。
有害事象があり当日の抗癌剤投与は中止した。外来医師Aは患者に中止を説明しなかったため、患者は抗癌剤投与のために腫瘍センターに行った。外来医師Aは中止の記録をしていなかった。腫瘍センターの看護師は抗癌剤の処方が「実施可」の状態になっていないため、外来医師Bに問い合わせ「実施可」の入力をしてもらい、抗癌剤の投与を開始した。中止したことを知っていた外来看護師が電子カルテで投与されているのをみて、誤投与したことがわかった。抗癌剤投与は外来で診察し、医師が予め入力している処方に「実施可」の入力後、薬剤部で調剤し腫瘍センターで投与することになっている。
外来医師Aが患者に中止の説明、中止の記録をしなかった。外来医師Bが医師Aに確認することなく「実施可」の入力をした。
・判断した医師が「実施可」の入力をする。・看護師は判断した医師に確認する。
指示出し/中止時の投与
○処方が「実施可」の状態になっていない場合、看護師が医師に確認する際のルールを明確にしておく必要がある。○事例の医療機関のシステムの詳細は不明だが、中止指示をする場合の、あるべき流れが不明である。情報伝達の過程でどこに問題があったのかが分かるよう、業務の工程や背景・要因が分かると分析に役立つだろう。
化学療法目的にて入院中、白血球減少のため、白血球減少治療薬のノイトロジン注を投与していた。白血球の増加がみられ、医師は中止の指示を出したが、指示を出した時点で処方箋の中止処理を行わなかった。翌日、看護師は処方箋と薬剤を確認した。注射ワークシートには患者の名前がなかったが、オーダを確認しなかった。前日の白血球は10000あることは確認していたが、本日注射があるものと思い込みそのまま実施した。実施後、実施サインを入力する際、中止になっていることが判明した。
薬の作用に関する知識不足があった。前日中止になっているにもかかわらず、伝達がなされていない情報伝達不足があった。中止時、マニュアルに沿った処方箋処理・薬品処理が出来ていなかった。
・情報伝達を徹底する。・マニュアルを徹底する。・薬品に関する知識を習得する。
指示受け/支持療法の間違い
○薬剤は前日に病棟に届いており、当日に中止するような状況は混乱を起こしやすい。中止の指示の場合、処方は中止しても指示とリンクしない場合がある。看護師が何を基に患者に投与する薬剤を確認するかは、医療機関によって様々であるが、リアルタイムの情報が反映されるもので確認するのがよいだろう。○薬剤師がデータをチェックするなど、看護師と連携ができるとよいだろう。
不妊症治療のために産科・婦人科医師がホルモン剤のデュファストン錠5mgを処方するところ、薬剤部が間違えて乳癌治療剤のフェアストン錠40を調剤した。患者が1回1錠朝・昼と2回の計2錠を服用した。交付2日後に、患者本人が違う薬剤であることに気付き薬剤部に連絡が入った。
処方は、デュファストン錠(5mg)3錠分3朝・昼・夕14日分であったが、フェアストン錠(40mg)を全42錠取り揃え調剤した。ハイリスク薬であっても通常は前回処方を毎回確認はしていない。処方されたデュファストン錠は普通薬であったため、薬剤名は黒文字であった。一方、フェアストン錠は劇薬であったため、薬剤名は赤文字で書かれ、ハイリスク薬であることを示す「H」の文字が付いていたが、抗がん剤であることを示す表示はなかった。薬剤は使用頻度別に並んでおり、当該事例のデュファストン錠やフェアストン錠は使用頻度の少ない棚に他薬剤(ルナベル配合錠LD、ジュリナ錠0.5mg)を挟んで配置されていた。「デュファストン」「フェアストン」と名前が類似した薬剤が同一棚の同一列に配置されていた。薬剤棚と調剤の作業棚が離れているため、薬剤師は処方箋を見ながらピッキングを行っていなかった。また、調剤スペースが狭くなってから、ピッキングしたその場で薬袋に入れることがあった。本来であれば、処方箋監査、調剤、調剤鑑査はそれぞれ別の薬剤師が行うことになっているが、急いでいたため、処方箋監査と調剤を同一人物が行い、最終鑑査のみ別の薬剤師が行ったので2名で担当していた。調剤鑑査を行った薬剤師は、処方箋の薬剤名を確認したが、薬袋に入っていた薬剤の錠数(42錠)のみ確認しただけで薬剤名を確認しないまま、鑑査を終了した。交付する際、薬剤師は患者とともに薬剤を確認せず(患者に薬剤を見せず)、そのまま渡し、説明や指導はしなかった。
・調剤の手順を遵守する。また、調剤時の指差し声出し確認を周知徹底させ調剤室のリーダーが1日2回10時・14時に見廻り確認する。実行できていない場合は、その場で注意する。・名前が類似した薬剤の同一列を禁止し、同じ棚におく場合は棚段を2つ以上離すことで取り間違いをしないように薬品配置の見直す。・使用頻度に関わらず、類似した名称の薬剤は離れた場所に配置することにした。・抗がん剤については棚の薬剤名に紫色のラインを引き、他の薬剤と区別がつくよう、フェアストン錠は抗がん剤の入っている引き出しに移動した。・抗がん剤の薬剤のラベルは、薬剤名に紫色のラインを入れ、他の薬剤と区別できるようにした。・他のハイアラート薬についても同様の対応をするために準備をしている。・交付窓口での患者との薬剤確認は、ハイアラート薬のうち特に誤薬が重大な事故に繋がる薬が処方されている患者を対象に行なう。現時点では人員・施設の問題もあり全処方の確認をすることが出来ないため、まずは当事象が発生した産科婦人科より開始する。・患者のプライバシーを考慮したカウンターレイアウトの変更及び患者動線の変更を行い、段階的に拡大させ全科全処方に対応出来るように進めてゆく。
調剤/薬剤間違い
○薬剤の名称類似は、頭文字が同じ場合が多いが、ホルモン剤の「デュファストン」と乳癌治療剤の「フェアストン」は末尾の3つの文字が同じであるため類似しているというパターンである。○「デュファストン」と「フェアストン」の取り違えについては、製薬企業から注意喚起が出されている3)。○薬剤棚については、薬剤名を入れずに番号で管理するほうが間違いを起こしにくいという考え方もある。○改善策で「棚の薬剤名に紫のラインをひく」とあるが、色では意味が伝わりにくいので、「腫瘍用薬」と記載するのも一案である。
開始5日目の抗がん剤調製リーダーは、11時過ぎに、当該患者が小児であり薬剤部内で抗がん剤の溶解方法が統一されていなかったため、前日の調製方法を参考にしようと思い、前日(4日目)の調製記録を確認した。その際、4日目のフルダラ静注用(50mg/V)が、2倍量の30mgで調製されていたことに気付いた。それ以前の調製記録や前日の調製担当者に確認を行い、主治医に4日目のフルダラ静注用が(15mgの)2倍量の30mgで調製されていたことを報告し、指導医、主治医、抗がん剤責任薬剤師、担当看護師より患者の両親に謝罪するとともに、経緯や調製手順、今後予測される副作用(骨髄抑制、肝・腎機能障害の可能性)、副作用確認のために採血を行う旨の説明をした。なお、フルダラの投与期間は、6日間を予定していたが、4日目に2倍量で投与されたため、総投与量を合わせ5日間で投与終了する方針となった。
フルダラの小児用のレジメンはなく、成人用のレジメンを使用していた。フルダラ静注用の添付文書に「通常2.5mLの注射用水にて溶解し(フルダラビンリン酸エステル20mg/mL)、体表面積により計算した必要量を取り、日局生理食塩液100mL以上に希釈する」とあるため、成人用レジメンは大塚蒸留水2.5mL、生理食塩液100mLが初期設定になっていたが、医師はフルダラを10mLの蒸留水で溶解し、3mL取れば計算しやすいと思い、蒸留水の量を2.5mLから3mLに変更した。1日目から5日目までの調製記録を確認した結果、薬剤師によって調製方法が3通りあった。(1)1日目の調製方法:フルダラ静注用1Vを蒸留水3mLで溶解し、そのうち0.9mL取り、生理食塩液と足して10mLにした。(2)2日目、3日目の調製方法:フルダラ静注用1Vを蒸留水2.5mLで溶解し、そのうち0.7mL取り、生理食塩液と足して10mLにした(添付文書に準じた調製方法)。(3)4日目の調製方法:フルダラ静注用1Vを蒸留水5mLで溶解し、そのうち1.5mL取るところ3mLを取り、生理食塩液と足して10mLにした(フルダラ静注用を2倍量投与した際の調製方法)。調製方法(溶解液量や量り取る量)については、個々の薬剤師の裁量に委ねていたが、多忙時に様々な計算を行っていたことがミスの原因の一つと考えられた。調製を行った薬剤師は、抗がん剤溶解後の濃度の計算につき、暗算で行ったため計算ミスをした。混合指示書の記載内容をチェックした鑑査者も同じく電卓を使わなかったため、記載された調製方法でよいと判断した。本来であれば、1)調製方法の計算と指示書への記載2)1)の記載した内容のチェック3)記載内容をチェックしながら抗がん剤を調製4)出来上がった注射薬に異常がないか、調製方法に間違いはないか等の最終チェックを3名ないし4名で行っている。4日目は休日で調製件数が少なかったことから2名で対応した。その結果、薬剤師1名が1)、4)、もう1人の薬剤師が2)、3)の手順を行うこととなり、チェック機能が十分に機能しなかった。また、計算方法が同じで、かつ両者ともに暗算で行ったこともあり、思い込みにより間違いに気づくことができなかった。
・「抗がん剤溶解液一覧」を改訂し、凍結乾燥製剤の各製剤の添付文書に記載された溶解液と溶解液量を併記した。・計算間違いによる調製間違いを防止するためにすべての抗がん剤で溶解後の濃度も併記した。・溶解液の計算・確認を行う際は、必ず電卓を使用する。・調製方法の計算者は濃度計算による計算方法で計算を行い、その鑑査者は調製記録に印字される比例係数を使用した「溶解液量×比例係数=採取液量」の計算を行う。・調製方法の計算、記載内容の鑑査、調製、最終鑑査の一連の手順については常に3名以上で行う。・ヒューマンエラーを回避するために、溶解液量や採取液量の計算をコンピュータ上で自動的に行うシステム導入の検討を始めた。・電子カルテ上の薬剤師連絡事項を有効に活用し、薬剤師同士で調製方法や注意事項などの情報が共有できるよう検討を行っている。
調製/薬剤量間違い(過剰)
○薬剤師は、自分のやりやすい溶解方法を選択する傾向がある。薬剤師が実際に調製しているところをチェックするのは難しい。溶解の計算式は調剤鑑査によりチェックされるが、本事例は機能しなかった。○薬剤師により溶解方法が違うことについては、薬剤部で検討すべきことであろう。○間違いに気がついたきっかけは、過去の計算式を参考にしようと見直したことであり、このように記録を確認したことは改善策の参考になるだろう。
10:30B-LBLBFM95寛解維持療法中、TITのため入院し、担当医より外泊退院可との指示あり。15:17担当医の退院時処方オーダあり。日勤担当看護師は患者の退院療養計画書を出力し、退院準備を始めた。17:40日勤担当看護師は外泊・退院チェックリストをもとに退院の準備を行ったが、退院処方はまだ病棟に届いていなかった。日勤担当看護師は病棟会へ出席のため、退院療養計画書と退院時処方渡しを遅出看護師に依頼した。18:30依頼を受けた遅出看護師は、退院時処方が病棟に届いたので父親と本人の元へ行き、退院時処方を薬袋に記載の通りに説明し渡した。母親は家の事情で先に帰宅していた。その後、患者は父親とともに外泊退院した。<退院時処方>1)バクタ配合錠3錠1回1.5錠(1日3錠)1日2回(朝・夕)食後15日分週3回内服2)ロイケリン酸100mg45mg1回45mg(1日45mg)1日1回眠前35日分3)メソトレキセート錠2.5mg1回25mg(1日25mg)1日1回(朝)食後5日分4)カイトリル錠1mg2錠1回2錠(1日2錠)1日1回(朝)食後5日分5日後の午前、担当医より、看護師長へ「患者の母親より口内炎ができて痛いと言っていると電話があった。確認すると、遅出看護師からメソトレキセートを毎日飲むよう言われて飲んだようだ。母親は週1回飲む薬だと知っているはずであり、今までそのように飲んでいた。疼痛が改善しないようであれば来院するように伝えた」とのこと。退院時、退院処方の薬袋に記載の通り説明して渡したことがわかり、メソトレキセート錠の過剰投与がわかった。カルテには退院療養計画書の記載の中に「メソトレキセートは週1回内服してください」とあった。しかし、指示、処方にはコメントの記載はなかった。病棟担当薬剤師に持参薬確認時の状況を尋ねると、母親は週1回の内服は理解できていたとのこと。薬剤師の持参薬確認時のコメントにも記載はなかった。夕方担当医が母親に電話したところ、発熱があるとのこと。FNの可能性あり、血球確認のために翌日来院するよう伝えた。翌日、患者は、口内炎悪化、食事がとれないことから母親とともに外来を受診した。
週1回投与する薬剤などの処方は、医師が処方する際にコメント欄に入力することになっており、コメントは処方箋や薬袋で確認が出来る。しかし、今回はオーダした際に、内服方法についてコメント入力されていなかった。看護師は、退院処方が抗がん剤や麻薬の場合は、ダブルチェックで確認することになっているが、していなかった。退院処方を渡す看護師が、退院療養計画書の内容を確認し患者へ説明していなかった。退院療養計画書の内服についての記載内容と、処方箋に相違があったが、医師に確認しなかった。看護師は、患者のプロトコールを把握し何の治療をしているかを理解していなかった。今回は、継続処方であったため、薬剤師による疑義照会はなかった。しかし、初回処方の際に疑義照会しており、その時の医師の回答が「母親に説明して理解しているから大丈夫です」であったため、その後も、同じ処方オーダのまま本事例に至った。
・患者は薬袋を見て内服するため、医師は、処方をオーダする際に、内服方法に指示がある場合は必ずコメントを入れる。・看護師は、退院処方が抗がん剤や麻薬の場合は、ダブルチェックで確認することを徹底する。・看護師は、外泊退院の場合は、外泊時に余裕を持って退院処方を患者に渡せるよう、退院処方はできる限り早めに出してもらうよう医師に依頼する。・医師は、外泊退院の場合は、薬剤の最終搬送が16:00であるため、15:30までには処方を入力する。・退院処方を渡す看護師は、退院療養計画書の内容を確認し患者へ説明する。退院療養計画書に内服についての記載がある場合は、退院処方と照らし合わせて内容を確認する。内容に相違がある場合は必ず医師に確認する。・業務を依頼された看護師は、自分が最終実施者であると同時に責任も依頼されたということを認識して行動する。・看護師は、患者のプロトコールを把握し何の治療をしているかを理解する。疾患の知識、プロトコールについての知識を深めるために勉強会を行う。・病棟では多種の抗がん剤を取り扱っているため、病棟でよく使う抗がん剤の取り扱いや基礎知識を深めるために担当薬剤師を交え勉強会を行う。
患者への説明・指導/投与日・日数間違い
○改善策に「看護師は、退院処方が抗がん剤や麻薬の場合は、ダブルチェックで確認することを徹底する。」とあるが、本事例では薬袋をダブルチェックしても、誤りに気がつかなかった可能性がある。どの場面で何を確認するのか、明確にしておくとよいだろう。退院処方薬の薬袋と退院時の指示として出されている内容を照合するのがいいのではないか。○薬剤師の疑義照会の際、医師より「母親に説明して理解しているから大丈夫です」という回答をもらうだけではなく、処方オーダのコメントをいれることを依頼する等、具体的な疑義照会の方法を検討するとよいだろう。○メソトレキセートのように休薬が必要な薬剤に関して、処方箋に投与日の記載がない時は、薬剤師が医師に疑義照会し、週○回であることを薬袋に記載するように取り組んでいる保険薬局もある。
患者Aはアービタックスを使用したレジメンで外来化学療法中であった。チェアを使用する患者はベッドサイドテーブルがないため、中央テーブルに指示書と薬剤を置いて、投与管理を行っていた。11時頃患者Aは1人で来室し、6番チェアでCVポートから前投薬開始となった。11時24分頃、患者Aが前投薬が終了したことを看護師に伝えた。看護師は中央テーブルにあった患者B(8番チェア)に使用するアリムタを患者Aに使用すると思い込み、中央テーブルの患者Bの指示書のバーコードでPDAの注射実施確認をした。また、患者Aの足元に置いてある点滴台の位置からラベルを見せて「患者Bさんですね、アリムタを始めます。ポートなので逆血の確認がいりませんね。全開で点滴します」と説明した。患者Aも「はい」と返答したため、看護師は患者Bのアリムタを患者Aに接続し投与を開始した。11時30分頃、患者Aが他の看護師に点滴ボトルの名前が違う事を指摘、誤って接続されていることに気付いた。
入室時の患者による名乗り確認は行っていたが、実施前の名乗りによる確認を行っていなかった。PDAは導入されているが、患者認証用のバーコードには患者基本カード(紙)を用いている。2名で管理を行っているが、チェアサイドは、患者の状態が見えないため、薬剤更新などの投与中の管理に集中するために、中央テーブルに薬剤や指示箋を並べ、患者と離れた場所で認証を行い、PDAが有効に機能しなかった。発生時、ベッドが満床(8床)であり、看護師2人で投与管理を行っていた。末梢確保の介助や点滴の更新、リーダー業務が重なり多重業務となっていた。
・患者の確認は、患者自身の名乗りで確認し、基本カード、指示箋のネームホルダー上の氏名を確認後、化学療法中は首からかけ、薬剤投与はネームホルダーのバーコードによる3点認証を行い、実施する。・治療中は、オーバーテーブルもしくは床頭台上に、基本カード、注射指示箋、薬剤、問診票を置く。
実施/対象者間違い
○バーコード認証システムがあるにも関らず、患者と離してバーコードを中央のテーブルで一括管理することは、輸血や他の薬剤でも起こりうることである。○外来患者についても、化学療法や内視鏡検査などの際は、入院患者と同様にネームバンドを発行し、患者認証に使用している医療機関もある。
メソトレキセート12.5mgを髄腔内に、キロサイド73.65mgを静脈内に注射予定であった。メソトレキセートとキロサイドは薬剤部で調製され、各々10mLのシリンジに入った状態で、「抗癌剤無菌調製明細書」が印刷されたそれぞれ別の薬袋に入れて払い出された。「抗癌剤無菌調製明細書」の上段には薬袋に入っている薬剤の処方内容が、下段にはそれ以外の当日行われる処方が印字されており、髄腔内注射の際に、下段に記載された薬剤(メソトレキセート)を薬袋内の薬剤(キロサイド)と誤認した。投与時には取り違えに気づかず、後にキロサイドを静脈内に投与しようとした際、髄腔内に投与すべきメソトレキセートが薬品棚に残っており、髄腔内にキロサイドが入ったことがわかった。
抗がん剤の髄腔内投与を含め、化学療法を行う際には量の確認、投与経路の確認を複数のスタッフで行い、取り違えがないように注意徹底する。コンピューター、PDAでの照合を確実に行う。開始前に、医師、看護師、関係スタッフがタイムアウトを行う。薬袋の表示を見間違いしないような表示に変更してもらうように薬剤部・医療情報部に依頼する。
・抗がん剤の髄腔内投与を含め、化学療法を行う際には投与量の確認、投与経路の確認を複数のスタッフで行い、取り違えがないように注意徹底する。・コンピューター、PDAでの照合を確実に行う。・開始前に、医師、看護師、関係スタッフがタイムアウトを行う。・薬袋の表示を見間違いしないような表示に変更してもらうように、薬剤部・医療情報部に依頼し改善した。
実施/投与経路間違い
○改善策に挙げられている薬袋の表示を分かりやすくすることも重要だが、薬剤部で調剤の際、投与経路の違う薬剤に関して、シリンジの色を変える等、血管から注入する薬剤と区別したシリンジを準備をすること等を検討するのもよいだろう。例えば、シリンジの色の区別は医療機関内での取り組みであり万全ではないが、「血管に注入しない薬剤に透明なシリンジを使用しない」という取り決めを院内で行っている医療機関もある。○英国では、化学療法で髄腔内注入に使用するシリンジの接続部を変える取り組みをしている。このような取り組みは全国規模で検討されることが必要であろう。
外来で24G留置針を挿入し、治療開始時逆血・痛み・腫れがないことを確認し治療を開始した。14時53分エピルビシンに交換した。14時56分血管に沿って痒みと硬結を伴った膨隆疹があったが、逆血があったことから、主治医は血管内投与が出来ていると判断し、点滴漏れはなく静脈炎と認識し、治療続行となった。エピルビシンの副作用で投与時の静脈炎や疼痛は多くみられており、患者も今までの治療で同様の症状があったため、点滴終了時の発赤については経過観察とした。16時20分左手背が所々褐色になっているため再度主治医が診察した。患者は患側に留置針を入れるのは嫌とのことだったが、医師より説明があり納得し、右手に留置針を入れ替え治療再開し終了した。トラブルのあった左手は様子観察とした。以降3週間は患者からの連絡はなく、治療日に左手の患部の痛み・発赤・腫脹が強く、皮膚潰瘍の形成がみられ皮膚科受診となった。皮膚潰瘍の範囲が明確になってきており、拘縮が残る可能性もあり得るとの見解で治療が開始となった。
患者には、医師、看護師からも後日連絡し皮膚科の受診を説明していたが、コンタクトはなかった。抗癌剤の副作用について理解はあり、家庭の事情で忙しいことや、過去にも静脈炎の疼痛を経験していることから、受診まで我慢していたのではないかと推測される。外科や外来点滴治療室では静脈炎と判断し血管外漏出の予防として対応しており、その観点からすれば、院内の抗がん剤の血管外漏出の対応マニュアルどおりに実施されており、対応に問題はないものと考える。血管外漏出があったか否かについては、院内報告がなされた時点での皮膚科の見解は、現状からみて静脈炎だけでここまで重症化するとは考えにくく、抗がん剤が何らかの理由で血管外に漏れていた可能性は否定できないとのことである。
・看護師に確認したところ、16時20分に確認された左手背が所々褐色(オレンジレンジ色)だった状態はしばらくして消失したとのことであったが、この時点で漏れを疑うべきであったかどうかを検証する必要があり、検討している。
実施に伴う確認・観察/薬剤の血管外漏出・血管炎
○腫瘍用薬の血管外漏出は、予防の視点と、早期発見・対応の視点が重要である。すべてを防ぐことは難しいので、早期発見し重症化させないことが重要である。○手背の静脈からの投与は皮膚が薄く薬剤の漏出が起こりやすいので、腫瘍用薬の投与は可能な限り避けたほうがよいだろう。○エピルビシンは起壊死性抗癌薬であり、炎症性抗癌薬と区別して、血管痛が出ただけですぐ抜去する、と取り決めをしている医療機関もある。○事例は、24Gの留置針で手背から起壊死性抗癌薬を投与しており、血管外漏出や血管炎に対する観察が重要である。
入院時に持参薬を確認した際、ミグシス錠が他の薬剤と一包化されていたため、看護師はミグシス錠の確認ができなかった。担当医は、持参薬は使用せず院内で処方することを入院時担当看護師Aに伝え、テラナス錠を1日2回7回分処方した。翌日、看護師Bは持参薬があることに気付いたが、持参薬内服の指示が出されていないため、担当医に持参薬内服の指示を依頼した。担当医は、前日にテラナス錠を処方したことを忘れて、持参薬(ミグシス錠)内服の指示を出した。
入院時担当看護師Aは、使用しないことになった持参薬に何のコメントもつけず、他の看護師の目につくところに保管した。担当医は、テラナス錠を処方したことを忘れて、持参薬(ミグシス錠)内服の指示を出した。
・院内で処方した場合には、持参薬を使用しないことを処方箋コメントに入力し注意喚起する。
同じ成分の薬剤の重複投与
患者は脳梗塞の既往があり、入院時、持参薬のプレタール錠を内服していた。化学療法前に水腎を認めたため、左腎瘻を造設することになり、術前にプレタール錠が中止となった。腎瘻造設後、医師は「プレタール内服再開」という指示を入力したが、処方はしなかったため、看護師は持参薬の残薬のプレタール錠をセットした。プレタール錠再開2日後、プレタール錠を処方するつもりで院内採用薬のシロスタゾール錠を処方し、シロスタゾール錠に変更して内服を継続した。シロスタゾール錠に変更後6日目、看護師が定期処方をセットする際に、シロスタゾール錠と持参薬の残薬のプレタール錠を一緒にセットしたため、患者は2剤を内服した。その後、血尿が増強して膀胱タンポナーデをきたし、膀胱洗浄を開始した。翌日(変更後7日目)、「プレタール内服中止」の指示が出たため、プレタール錠のみ壁掛け配薬から取り除いた。変更後9日目、プライマリーナースがカルテを見ていた時に、プレタール錠とシロスタゾール錠が同じ成分の薬剤であり抗血小板剤が重複していたこと、シロスタゾール錠を継続して内服していることを発見した。
病棟薬剤師は、入院時に紹介状、お薬手帳、持参薬等から持参薬鑑定を行い、看護師とともに内容確認を行った(持参薬報告)。その報告をもとに、医師は持参薬内服の指示を出した。指示は、オーダ情報として電子カルテ上に記録される。病棟薬剤師が初回面談をした際、患者の持参薬の服用状況は、用法や用量などが説明でき理解度は良好であった。プレタール錠の残数が多かったため確認したところ、服用方法が誤っており薬剤師は患者に用法の説明をした。持参薬報告書には院内採用薬シロスタゾールと表示されていた。2ヶ月前に院内採用薬がプレタール錠からシロスタゾール錠に切り替えになっており、プレタール錠の後発医薬品の認識が希薄であった。院内の処方オーダは「プレタール」と入力すると院内採用薬の「シロスタゾール」が画面に表示され処方ができる。主治医はシロスタゾール錠に変更したという認識がないままプレタール錠のつもりで処方した。そのため、主治医はプレタール錠からシロスタゾール錠に変更したあとも、一般指示に「プレタール内服再開(中止)」と記載し、診療録も再開、休止の記載はすべて「プレタール」で記載していた。医師から出された持参薬内服の指示は、電子カルテ上オーダ情報として反映されるため、看護師は内服指示ワークシートを用いて確認を行っている。途中で薬剤の中止や減量などの変更をする場合、医師が一般指示を出しそれに基づいて薬剤をセットしている。看護師は、プレタール錠とシロスタゾール錠が同じ成分の薬剤であることを知らなかったため、一般指示に従ってプレタール錠を患者の壁掛け配薬にセットした。その際、中止になった持参薬は患者本人に返却していたが、患者に確認し、患者持ちの持参薬からセットした。
・後発医薬品への切り替え薬剤について、わかりやすく見直し、周知する。・医師は後発医薬品に変更した際、必ず看護師に伝える。・看護師は後発医薬品の表記を確認したら、医師にどの薬剤からの切り替えか確認する(後発医薬品の表記:成分名+規格(数字)+「メーカー名」)。・病棟薬剤師と協働し、病棟の専門性に応じた後発医薬品に関する理解を深めるための研修を行う。
同じ成分の薬剤の重複投与
持参薬のフェルムカプセル100mg、ラベプラゾールNa錠10mg、ドンペリドン錠10mg、レバミピド錠100mgと、処方した薬剤のフェロミア錠50mg、パリエット錠10mg、ナウゼリンOD錠10mg、ムコスタ錠100mgが2日間重複しており、処方量の2倍内服していた。
処方した医師は、患者が内服中の持参薬を把握せず処方した。指導医、看護師は、持参薬と処方内容について確認不足であった。持参薬の確認は薬剤師が行っており、必ず患者と面談を行い電子カルテ上の薬剤師記録に記載している。薬剤師記録は、薬剤部の部門システム等への記載ではなく、医師や看護師と同様に電子カルテへの記録である。記録内容は、処方病院名、診療科、処方内容、当院採用薬への切り替え時の留意点(同一規格薬、同効薬などの情報)などと、持参薬に関する情報(お薬手帳など)の有無、自己管理状況(管理者、自己調整や飲み忘れの有無など)についても面談時に聞き取り、記載する。さらにアレルギー歴の有無、市販薬やサプリメントの服用状況なども確認し、入院後の薬物療法全体のリスク評価を行っている。
・持参薬の内服状況について確認する。
同じ成分の薬剤の重複投与
持参薬のアロチーム錠100mg注)を配薬していた。持参薬の終了後、院内で処方したザイロリック錠100mgに移行する予定であった。院内で処方したザイロリック錠100mgに変更予定の当日、深夜勤看護師Aは、配薬ボックスにアロチーム錠とザイロリック錠を重複して準備した。8:30に日勤看護師Bは、配薬ボックスから2剤を取り出し患者に与薬した。
持参薬のアロチーム錠100mgは主として泌尿器科で多く使用されており、院内には在庫がなかった。院内ではザイロリック錠を採用していた。通常であれば、すぐに薬剤師が納品の手続きをとっているが、正確に伝達が行われていなかった。
・基本的に持参薬は全て中止とし、院内で処方した薬剤に変更する。
同じ成分の薬剤の重複投与
患者は、眠前に持参薬のニトラゼパム錠を内服していた。持参薬がなくなるため、同効薬のサイレース錠が処方され病棟に届いていた。看護師は、配薬カートにセット済みの持参薬(ニトラゼパム錠)を1人で確認後、鍵付管理のサイレース錠をダブルチェックして、2剤を患者に与薬した。翌日の夕方、日勤看護師よりサイレース錠が1錠少なく、ニトラゼパム錠とサイレース錠の重複投与の指摘を受けた。
与薬開始日の確認をせず、処方内容のダブルチェックしかしていなかった。与薬開始日の記載は、普段通り薬袋の右上に日付が書かれていた。手書きで「持参薬のニトラゼパム錠の代わりです」と書かれていたが、与薬開始日が目立つようには記載されていなかった。ニトラゼパム錠とサイレース錠が同効薬との認識がなかった。
・マニュアル通りに指差し呼称を行う。・処方を切り替える場合は、与薬開始日を分かりやすく記載する。・内服予定日を薬袋の裏に記入する。
同じ薬効の薬剤の重複投与
14:50薬剤師は持参薬報告をカルテに記載した。その際、「持参薬のイルベタン錠50mg1錠は採用なし。代替薬はミカルディス錠、限定採用にアバプロ錠100mg」と書いた。15:09医師Aより、ミカルディス錠40mg1錠の処方があった。患者は、持参薬のイルベタン錠50mgを内服中であり、薬剤師は重複処方になることを医師Aへ疑義照会しようとしたが、医師Aと連絡が取れず医師Bに連絡した。15:17医師Bは薬剤師からの疑義照会の意図を、アバプロ錠の方が良いと判断し、手書き処方箋でアバプロ錠100mg0.5錠分1朝食後6日分を処方した。その際、電子カルテからオーダされているミカルディス錠は、薬剤師が削除すると医師Bと話し合った。しかし、薬剤師はミカルディス錠を削除し忘れ、2剤が払い出された。4日後、次の処方時に2剤を内服していることが分かった。
薬剤師は他施設から移動したばかりであり、通常は「代替薬ミカルディス錠」を記載するが、「限定採用アバプロ錠」も記載した。院内採用薬の代替薬は、同効薬の場合もあれば、同一成分薬の場合もある。医師への報告内容が曖昧であった。通常の薬剤は電子カルテからオーダするが、限定採用の薬剤は「手書き処方箋」でオーダするというルールであった。最終確認とその後の処理ができていなかった。削除しなければならない薬剤を削除していなかった。
・持参薬報告の記載内容を医師が処方しやすいように簡潔に分かりやすく書く。・不必要な情報や複数の情報は書き込まない。・代替薬については、文字の色を変えて分かりやすくする。・代替薬については用量(規格・錠数)まで記載する。・院内で処方する薬剤への代替については、特に注意して処方された後の最終確認を行う。
nan
9:50頃患者の入浴準備を行った。看護師Bは患者の頚部に大きな瘻孔があるため、どのように対応したらよいか同じ入浴係担当の看護師Aや患者の受け持ち看護師Dに相談をした。看護師Dは、患者の状況から移乗が難しいためストレッチャーによるシャワー浴を提案したが、この時、看護師Dは永久気管孔の情報収集をしていなかった。入浴担当者同士で検討し、シャワー浴では4cm大の頚部の瘻孔よりお湯が入ってしまうため、ガーゼとフィルムドレッシング材での保護がよいのではないかと判断し、看護師Bが実施した。その際、ガーゼで頚部の瘻孔を保護し、フィルムドレッシング材でガーゼを覆った。患者に呼吸が苦しくないか確認すると「苦しくない」と口の動きで確認した。この時、フィルムドレッシング材で覆ったが、たまたま気管孔の上部が完全に塞がれていなかった。看護師Bは他の患者の対応へ向かい、看護師Cがシャワー浴を担当した。看護師Cは頚部の瘻孔に貼ったフィルムドレッシング材が少しはがれていることを確認し、上部が空いていると湯が入ると思いフィルムドレッシング材で更に上部を塞いだ。そのまま、看護師Cはシャワー浴を開始した。1分もしないうちに患者の全身色が不良となり、患者は意識消失した。看護師Cは異変に気づき、患者に何度も呼びかけた。他患者の入浴介助中であった看護師Aは、その様子から異変に気づき患者に近づいた。患者は呼名に反応なく、脈は触れたが呼吸はなかった。フィルムドレッシング材をはがすと呼吸開始し、徐々に全身色が良好に戻り、意識が回復した。
患者は当院の外来に通院しており、主治医は永久気管孔について把握していた。入院時の入浴に関する指示は「介助入浴可」であり、具体的な内容ではなかった。入院担当看護師は、キーパーソンの妻から、患者の情報収集を行ったが、十分ではなかった。その後、医師から患者の永久気管孔について説明を受け、看護プロファイルの「活動/休息」欄に、「永久気管孔のため、口・鼻呼吸ができない」と記載した。受け持ち看護師Dは、患者の頚部に白いエプロン様のガーゼがかかっていることは知っていたが、永久気管孔であることは認識していなかった。受け持ち看護師Dは看護計画において、患者の状況から「移乗能力の障害」を立案したが、永久気管孔に関する看護計画は立案しなかったため、看護師間で、永久気管孔が造設されていることについて事前に情報共有が行えていなかった。看護師A~Dは、初めて患者の永久気管孔を見た。患者の病態生理についての理解が不足していた。初めて見ることや聞くことについての不安や心配についての確認行動が不足していた。
・入院時の情報収集を行う際に、カンファレンスを用いて情報を周知する。更に入院時カンファレンスや掲示板等を使い、情報共有を図りリスクに対する対応策については、周知徹底していく。・自宅からの入院時は、キーパーソンや主な介護者から、患者の病態やリスク的観点からの意図的な情報収集を行う。また、日常生活動作の介助方法の具体的な内容を確認し、看護計画に活かせるように情報を活用する。・患者の電子カルテを開いた時に、最初に表示される掲示板へ「永久気管孔を造設」と記載した。・病棟では経験のない疾患の患者が入院・転棟してきた場合は、病棟内で疾患への注意点を周知できるようなカンファレンスの運営をリーダーが行えるようにする。また、意識的に情報共有や情報発信ができるようなリーダーの育成を行えるように日々の業務内で指導する。スタッフ間でも日頃から発問できる風土作りが必要である。・助言する際には、どのような意図での発言か内容を理解できたか確認を行う。助言を受けた場合は曖昧にせず、自分の考えが正しいのか確認を行う。・入院後の追加情報は、共有できるように記録へ記載する。必要な看護ケアについては看護計画へ具体的な計画の立案を行う。・入浴介助で初めて対応する患者もいるため注意事項について、当日の受け持ち看護師は入浴係へ情報を伝えることや、入浴表の活用を行い、情報共有を行う。入浴表には、当日の受け持ち看護師が患者状態を記載し、入浴担当者と情報交換し、特に伝えたい情報については、入浴表の注意点の欄に情報を記載する。・入浴表の定位置は浴室とし、患者毎に確認してから入浴を実施する。・「入浴」のマニュアルに永久気管孔がある患者の注意点として、「永久気管孔を塞がないようにタオルで土手を作り、永久気管孔が見える状態にして実施する」、「永久気管孔へのお湯の流入を避けるため浴槽には入れない」を追記した。
nan
入院後1回目の入浴を行った担当者は、患者は口では呼吸ができないと判断し、瘻孔に水が入らないよう、また瘻孔部を塞がず見えるように、気管孔の周囲にタオルを置いて実施した。入院後2回目の入浴担当の介護福祉士は、浴槽へ患者を移送するため、ベッドからストレッチャーに移すのを手伝って欲しいと看護師(2年目)に病室で声をかけた。さらに頚部にある瘻孔の処置についても看護師に依頼した。看護師は電子カルテから情報を得ずワークシートのみ確認し、永久気管孔を気管切開チューブ抜去後の瘻孔だと思いフィルムドレッシング材を貼り保護した。その際、患者の表情と胸の動きを確認し、異常がなかったため、そのまま浴室を出た。介護福祉士はストレッチャーを廊下に出し、1人で患者の寝衣を脱がせた(この時、瘻孔にフィルムドレッシング材が貼られているのを確認)。介護福祉士は患者の頭髪・身体を洗い、その後、患者を浴槽に入れるため、ベルトを装着し頭側と足側をギャッジアップし、患者を浴槽に入れた。フィルムドレッシング材を貼付してから13分後、介護福祉士は患者の顔色不良に気が付き、足元のボタン操作を行い浴槽から上げた。介護福祉士はジェット浴槽から入浴用ストレッチャーへ患者を移し、ベッドを水平にした。看護助手に患者を見ているように伝え、看護師を呼ぶため浴室を出た。フロアに看護師がいたので、患者の急変を知らせ、看護師と浴室に戻った。患者は全身チアノーゼ状態で、介護福祉士はさらに応援を呼びに浴室を出たところ、病棟師長が通りかかり、すぐに永久気管孔に貼付されていたフィルムドレッシング材を剥がした。心肺蘇生を開始し、医師に連絡した。
1)医師・看護師の入院時の指示事項に対する意識の薄れ:主治医は、患者の病態や永久気管孔について問題視していなかったため、看護師への指示をしなかった。患者は1ヶ月前に脳出血を発症したばかりで、転院前、入浴は行っていなかったが、バイタルサインの確認のみで看護師が入浴可と判断した。2)教育の不足による永久気管孔と気管切開チューブ抜去後の瘻孔の違いに対する知識の欠如:当該病棟はリハビリテーションを目的とする病棟であり、人工呼吸器を装着した患者は多く入院しているものの、永久気管孔を造設した患者はあまりいなかった。そのため、院内の看護手順書に、永久気管孔について説明はなく、「入浴時、気管切開孔はフィルムドレッシング材を貼る」と記載されており、他の看護師でも同様の事故を起こす可能性があった。3)危険予測と情報共有の不足:患者の入院を担当した看護師は1年目の新人であったため、その際、病棟師長は患者の永久気管孔について説明した。基本情報の既往歴の欄に「喉頭癌術後(永久気管孔造設)」と記載した。看護師は必要な情報を電子カルテではなく、ワークシート(受け持ち患者の情報と業務内容が簡略化され記載)で情報を確認することが習慣になっていた。しかし、情報の内容や入力の基準は明確になっておらず、ワークシートに全ての情報が記載されていなかった。4)処置中心の看護:ワークシートを確認すると、患者の疾患や症状などの情報よりも、処置を行うことに意識が向いていることが読み取れた。5)新人や経験の浅い看護師への業務に対する配慮と看護実践の確認の不足:当時入院していた患者は38名であり、勤務していた看護師は4名であった。看護師(2年目)は、新人看護師の指導役を担いながら業務を行っていた。
・医師の指示の明確化:入院時、主治医が基本指示項目(安静度、食事、入浴、症状出現時の対応、持参薬の継続)を決め、指示する。・医師による患者理解のための入院時カンファレンスの確立:患者の医学的な疾病を理解したうえで看護ケアが行えるように、医師主導のカンファレンスを行う。・看護上の情報共有の仕方・ルールの確立(マニュアルの整備):入院から退院までの受け持ち看護師制を導入し、入院前から診療情報提供書や地域連携室から情報を得て、入院準備を行い、入院当日は担当する。また、当日受け持った看護師はワークシートに記載されている情報を把握し、追加情報を入手した場合は更新することに責任を持つ。・新人および経験の浅い看護師に対する業務配分のルールの確立:入院受け入れ担当は病棟師長が選定する。リーダー業務の看護師は、新人および経験の浅い看護師の相談役となり、業務実践に気を配る。・院長による今回の事故についてのカンファレンス:今回の事故の内容、呼吸に関連した治療方法と管理方法について、全職員対象にカンファレンスを行う。・定期的な研修会:医学的に深く理解した方が良いものや、より広く他の病棟の看護師・介護士・リハビリスタッフが理解した方が良いケースを医師や看護師が選出し、1ヶ月に1回程度講義を行う。
nan
症候性てんかん、代謝性脳症の患者は、「乳製品、納豆、豚肉、魚、海老、かに」と禁止項目が複数あった。調理従事者が行う食材チェックの際、「海老、かに」の情報を見落とし献立表への転記を行わなかった。病院栄養士は、味噌汁ときのこあんの鰹だしの変更に気をとられ、きのこあんに海老が使用されていることに気付かなかった。調理師の検品では、食札と食事の照合を行ったが、食札の「海老、かに」アレルギーの表記を見落とした。結果、患者に海老入りの食事が提供され、2~3口摂取した時点で、皮膚の違和感・全身の発疹が出現した。
禁止項目のチェックや読み上げ方法が統一されていなかった。食札の確認が不十分であった。複数の禁止項目を一度で読み上げたため、細かい確認が行えなかった。
・アレルギーと嗜好の献立は別に分け、献立を立てやすくする。・帳票を拡大する、食材が分かる献立名にする等、アレルギーの多い食材は明確にする。・献立の確認はアレルギー食から開始し優先順位をつけてチェックする。・各々が所有する帳票にチェック済みの印をつけ、途中で業務が中断してもチェック漏れがわかるようにする。・栄養士は献立表で、調理師は食札で見るよう、提供前のチェックを分業する。・統一したダブルチェック方法を毎朝、朝礼で二人ずつ実践し身に付ける(朝食の早出職員は調理前、夕食のパート職員には夕食の盛り付け前)。・異なる勤務体制の職員全員に対して、正しい方法を周知し、継続させる教育体制を整える。
献立作成
患者は治療による食思不振と多項目の食物アレルギー保有のため特別献立にて対応していた。保有する食物アレルギーは「卵、そば、ピーナッツ、マグロ」であった。事故前日に、主治医より担当栄養士に、「経口摂取が不良となっており炭水化物に偏っているので、たんぱく質を強化出来る栄養剤の使用を検討している」と相談があり、翌日より栄養剤を付帯することになった。複数の栄養剤を試し、どの栄養剤が飲めるか確認してみることになった。当日の昼食にテルミールコーンとサンケンラクト(粉末、ストロベリー味)を配膳した。配膳後、母にサンケンラクトはおやつの牛乳に混ぜて飲むことを提案した。4時半頃にサンケンラクトを溶かした牛乳を喫食後、腹痛の訴えがあり喫食を中止した。その後、全身に蕁麻疹が出現し、下痢、嘔吐を認めたため、医師は抗アレルギー薬の点滴を開始した。担当栄養士は、発症直後に栄養剤の相談のため訪床した際、アレルギー様症状がでていると看護師より報告受け、すぐに栄養剤の原材料の確認を行った。提供したサンケンラクトに卵白粉末が入っていたことが分かり、主治医に報告した。
担当栄養士は患者が卵アレルギーであることを認識していた。栄養剤を選択する際、食事箋規約内の各栄養剤のアレルギー表記の部分を見て、全ての栄養剤に卵が含まれていないことを確認したうえで、サンケンラクトを提供した。しかし、実際には食事箋規約の栄養剤のリストの中に「サンケンラクト」は入っておらず、アレルギー表記の確認の際に、アレルギー項目と各栄養剤の名前を付き合わせて見ることが出来ていなかった。担当栄養士はサンケンラクトも食事箋規約に入っていると思い込んでいたため、サンケンラクトを患者の特別献立内に入力した。配膳点検の際にも栄養士によるアレルギーのチェックがあったが、見落とした。院内には栄養管理委員会があり、1回/月開催している。栄養剤については、栄養管理委員会で承認を得たうえで採用している。
・栄養剤のアレルギーを確認する際には、必ず栄養剤の名前とアレルギー項目、原材料名を照合して確認する。・アレルギー対応が必要な特別献立を作成した際、必ずダブルチェックを行う。・新たに栄養剤の使用を始めるときには、事前に医師や看護師に原材料情報を含む栄養剤の情報を提供し、医師に確認をしてもらう。・サンケンラクトの個包装には原材料やアレルギー情報の表記がないため、製造業者にはそれらの表記の依頼をする。・食事箋規約の栄養剤やその他特殊食品栄養組成表に、院内採用品すべてを記載する。
献立作成
患者には「卵、乳製品、魚、キウイ、ごま」のアレルギーがあった。付添いの母親より、朝食のおかずを食べたところ患者の口唇に膨疹があると聞いた。確認すると、ポテト煮の中に禁止食材の魚(鮭)が入っており、一口食べて吐き出していた。看護師から電話連絡を受け、すぐに小児科医師が診察した。その後、栄養士が来棟し、アレルギー食の対応、献立作成から食事提供までの流れについて家族に説明した。今回の原因は、献立の見落としで、禁止食材を除外していなかったためであることを説明した。
アレルギー患者の入院時から個別献立を作成(5日分)、別の栄養士が個別献立を確認(5日分をダブルチェック)、献立の不備があれば差し戻して献立を作成している。今回は、差し戻し後の確認(トリプルチェック)を実施したにもかかわらず朝食の鮭を見落としていた。前日の16:00に翌日の朝食分の「調理指示書」を出力し、当日の5:00に調理師は、この「調理指示書」に基づいて調理を開始する。その際、魚の出汁を除くことになっていたため献立に鮭が入っていることに少し疑問を持ったが、献立通りに調理した。朝食だったので、栄養士が不在で聞くことができなかった。調理後、食事提供までに最終確認を行う体制にはなっていなかった。電子カルテの「患者プロファイル」画面の食物アレルギーが入力されていたが、栄養部では、「食物選択画面」をクリックしないと、食物アレルギーの情報を見ることができない。
・栄養士が献立を作成した後、調理師に献立を渡す前に再度調理指示書を栄養士が確認する。・調理師がアレルギー患者と禁止食材を一目で把握できるように、調理室の所定場所に名簿を掲示する。・調理師が調理した後、温冷配膳車に入れ込む前に再度チェックを行う。・患者家族に献立表を事前に渡し、家族もアレルギー食材が入っていないか確認に参加してもらう。・長期的な対策として、電子カルテの患者プロファイルと食事コメントの連動や、部門システムの機能を改善(アレルギーのコメントと使用食材のチェック機能)することを検討する(チェック機能のためには、すべての食材マスタにアレルギー情報を入力する必要がある)。
献立作成
以前、スイカ、胡瓜、瓜にてアナフィラキシーショックがあり、「瓜類禁止」の禁止コメントが入力されていた。今回、胡瓜が入ったサラダを提供しアナフィラキシーを起こした。
提供予定のエネルギーコントロール食に「胡瓜の和え物」のメニューがあり、「瓜類禁止」のコメントに該当するため、献立変更の必要があり、夕食の調理時に委託職員(食札担当)から病院管理栄養士へメニュー変更の相談があった。病院管理栄養士は「盛りサラダ」の胡瓜抜きレタス倍量とトマトのメニューへ変更するように口頭で指示を出した。委託職員(食札担当)は委託職員(調理担当)にその旨を口頭で伝えた。委託職員(調理担当)はボールに入ったレタスと胡瓜が混ざったものをレタスのみと思い込み、トマトと一緒に盛り付けた。食事セット完了後、委託職員(食事チェック担当)2名、委託職員(禁止コメントチェック担当)1名、病院管理栄養士1名で、禁止食材が入っていないか目視で確認したが、見過ごしてしまった。その後、患者に配膳された。
・食物アレルギーについて、原因食物の摂取後、身体にとって不利益な症状や命にかかわることもあるため、病院食の重要性と調理工程や盛りつけにも細心の注意を払う必要があることを周知徹底する。・禁止コメントチェック方法について、形骸化している現状を認識し、1件ずつ確実に確認することの徹底、盛り付け方法も、使用している食材が分かるように盛り付けることも徹底する。・使用できる食材がない場合、在庫食材から新たに調理を行えるように指示を出す。
調理
「瓜、なす、西瓜、南瓜、パイナップル」禁止食の患者の昼食副菜に、胡瓜が混入したもずく酢が準備され配膳された。配膳前に管理栄養士と病棟看護師が禁止食材の混入がないか目視で確認しているが、胡瓜は確認できなかった。患者は、もずく酢の汁を摂取すると違和感があり、食器内をさがすと胡瓜の破片(3mm×10mm大)が出てきた。車椅子でナースステーションに来て、「味が変で息が苦しい」と訴える。咳嗽・呼吸困難(SpO:288~98%)と胸部発赤疹が出現した。
調理師は、別のアレルギーのある食材の調理・盛り付け作業をしたあと、手袋着用のまま流水で手袋を洗い、その後、患者のもずくを錦糸卵と和えた。その際、手袋に少量の胡瓜が付着したままとなり、酢の物に混入したと考えられる。アレルギーのある食材の調理・盛り付け作業の時に、手袋を交換しなかった。手袋交換を行うのは、油による汚れなどを重視していた。
・調理担当者がアレルギーのある食材を取り扱う際に、食材ごとで手袋を廃棄し新しい手袋に替えて次の作業にかかる。・管理栄養士は、トレイに配膳された料理を目視すると共に、調理担当者に献立の内容確認及び食材ごとに手袋を交換したか確認する。また、手袋を替えた形跡がない場合は調理済食材を廃棄し作り直す。・献立の内容確認は、指差し声出し確認をする。・アレルギーのある食材を誤配膳し、患者が食べた場合、呼吸困難となり生命の危険も十分あることを、栄養管理室職員全員に説明する。・毎月初旬に医療安全推進担当者が、対策の実行を確認し、評価カンファレンスを開催する。・アレルギーによる禁止食材か嗜好による禁止食材か食事オーダーだけではわからない場合があるため、病棟と情報交換を行ったり、患者からの聞き取りを行い、正しい情報を得るようにする。
調理
患者は、入院時に「牛肉、豚肉」にてアレルギーがあることを自己申告し、食事は、「牛肉・豚肉禁止、糖尿食1600カロリー」と指示されていた。当日は夕食の献立がミートローフであり、肉禁止の代替食として「魚の味噌焼き」が提供されることになった。食札に患者氏名と共に、「牛肉、豚肉禁止」の文字と、代替食メニューの「魚の味噌焼き」が朱書で表示されていた。しかし、給食部で糖尿食を担当する調理師が、お膳に食事を準備する際、メニュー表示を意識せず、通常メニューのミートローフを載せた。他病棟で同じ糖尿食1600カロリーを摂取している患者が、「食札のメニューはミートローフになっているのに魚がきている」と申し出があり、肉アレルギー患者にミートローフを誤配膳したことがわかった。当該患者は、ミートローフを魚肉製品と思い込み、全量摂取していた。その約4時間後に下痢症状と蕁麻疹が出現した。その後、血圧低下、意識レベル低下となり、ボスミン筋注、ポララミン、ソルコーテフ点滴により症状は改善した。
特別食コーナー(糖尿・腎臓・潰瘍・流動)で調理・配膳を行う調理師は、それぞれ1人で調理・配膳を担当している。食札は管理栄養士が準備し、「牛肉、豚肉禁止」表示は朱書で印字される。メニューがアレルギー対応食の場合、変更したメニュー内容がさらに朱書表示される。栄養士は、準備する調理師や、摂取する患者に意識してもらうために、朱書のメニュー表示をさらに赤鉛筆で丸をつけている。配膳車への搬入の際には、調理師複数人で再度確認を行うようにと声かけしていたが、確認方法についての指導はできておらず、ダブルチェックは徹底されていなかった。調理師は、食札の赤丸表示を目視して準備したつもりであったが、食札と食事内容を照らし合わせながらの確認はしておらず、また、他者と確認し合うという意識、習慣がなかった。病棟で看護師が配膳した際、食札の患者氏名と共に禁忌表示を見たが、食器には半透明の蓋が被さっており、食事内容は目視できなかった。患者は、以前より何度かアレルギー反応を繰り返し、牛・豚肉アレルギーの自覚はあり、入院時にも申し入れ、食札に「牛肉、豚肉禁止」と表示がされていたため、メニューの「魚の味噌焼き」表示には注意は向かず、配膳されたミートローフを魚肉製品と思い込み、全量摂取した。アレルギー対応食を誤って配膳された他病棟の患者からの問い合わせがあったため、当該患者への禁忌食材の誤配膳・誤摂取が早い段階で発覚し、食事摂取直後より経過観察できていたため、症状出現時に速やかに対応することができた。
・調理師は、ダブルチェックの担当者を明確にし、配膳終了段階でダブルチェックを行った後、配膳車への搬入を開始し、配膳車搬入の際にも食事と食札内容に相違がないか確認することを手順として取り決め、確認を徹底する(医療安全管理部が給食部で勉強会を開催し、指差し呼称、ダブルチェックの効果と重要性について調理師へ説明・指導を実施した)。・アレルギー対応食であることが一目でわかるよう、蓋の色を区別しやすいものに改善し、患者にも食事内容に間違いないことを確認してもらう。
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9時45分頃、10時実施の骨シンチ検査目的で患者Aが受付をした。9時50分頃、撮影補助の職員が10時10分実施予定のFDG-PET検査のため、患者Bの名前を呼んだところ、患者Aが返事をしたため、PET検査の説明を行った。10時5分頃、医師はPET検査室で患者AにFDG-PET検査の注射を行い、陽電子待機室で待機するよう説明した。10時15分、受付の事務員は骨シンチの待合室に患者Aがいないことに気付き、陽電子待機室にいた患者の名前を確認したところ、FDG-PET検査の注射をしたのは患者Bでなく患者Aであることが分かった。
実施前に患者から氏名と生年月日を言ってもらうことになっていたが、遵守できていなかった。
・患者に氏名と生年月日を名乗ってもらう運用を遵守する。・検査ごとに検査カードを配布して、検査前の確認に用いる。
患者Bを呼び出した際に患者Aから返答があった
医師は11時30分診察予約の患者Bに投与するタイロゲン筋注用を準備し、患者Bの名前を呼んだところ、廊下を歩いていた患者Aが返事をしたので診察室に入ってもらった。患者Aは、10時30分より核医学検査室でPET検査を受けた別の患者であった。診察時に、患者名を呼びながらヨード制限などの質問をしたが、その都度「はい」と返事をしたのでタイロゲン筋注用を筋注した。その後、「明日も来てください」と説明した際、患者は次は金曜日のはずだと言ったため、診察券を確認したところ間違って患者Aに注射したことがわかった。患者Aには健康被害がほとんどないことを説明して一旦帰宅してもらったが、翌日、検査等のため入院となった。
患者が診察室に入った後、患者の再確認を行わなかった。患者は軽度の難聴があるようで、患者名を呼びながら本来の患者に対する説明をしたが、その都度「はい」と返事をしていた。
・診察室に入った後、診察券で患者名を確認する。
患者Bを呼び出した際に患者Aから返答があった
CT検査の際、診療放射線技師が患者Bの名前を呼んだところ名前の類似(姓は同じで名前の一文字が違う)した患者Aが来て、そのまま違う部位のCT撮影を実施した。その後、患者Aの名前が呼ばれた際に、患者Bの母親が診療放射線技師に報告し、取り違えが判明した。
類似する氏名の患者が同時刻に存在する可能性があるという意識が薄かった。氏名を名乗ってもらい本人を確認することができていなかった。待合室は雑音も多く、患者自身の思い込みも考えられた。
・患者の本人確認を徹底する(患者に名乗ってもらう、生年月日など)。
患者Bを呼び出した際に患者Aから返答があった
患者Aは頭部MRI実施予定で、患者Bは造影CTを予定していた。放射線科受付で、患者Bの受付を行い、受付担当者はCT室の前で待つように伝えた。診療放射線技師Xは受付で患者Bを見ていたが、CT室に呼び込む際、同時間帯に受付後、CT室に向かっていた患者Aに対して「患者Bさんですか?」と声をかけると、患者Aは「はい」と答えた。診療放射線技師Xは患者Aを患者Bと誤認し、点滴ルート確保の場所へ案内した。その後、診療放射線技師Xが患者Aを案内をしてきたため、看護師も患者確認を行わずに点滴ルートの確保を行った。点滴ルートの確保後、診療放射線技師Yは患者Aを案内した。診療放射線技師XとZが検査のセッティングを行った。その際も、患者Aを患者Bと思い込んでおり患者確認を行わなかった。患者Aが「この検査は初めてだ」と言ったため、患者Bの検査履歴を確認したところ、初めて行う検査であり、疑問に思わなかった。検査のセッティングを行う際に患者Bの名前で何回か声掛けをしたが、そのときに患者Aから指摘はなかった。CT検査実施後、消化器内科に行くように案内したときに患者Aが「脳外科である」と言ったため、間違いに気が付いた。
待合所からの呼び出しの際と点滴ルート確保の際、CT室に入室し検査実施前の3回名前を名乗ってもらい確認するタイミングがあったが、確認を怠った。複数の職員が関わる検査においては、他の者に依存し、決められた手順より逸脱する甘さがあった。
・患者確認の徹底、特に検査直前の検査内容の説明と患者自身が名乗ることを必須とする。その際、複数の技師が検査準備に対応したとしても主にセッティングを行う技師が患者確認を行うこととし、責任者を明確にする。・部門システムより放射線検査票を出力できることとなり、患者名と詳細検査内容を患者の目の前で確認することが可能となるため、これを用いて患者確認を行う。
医療スタッフは患者Aを患者Bと思い込んだ
朝、主治医は、次週予定していた患者Bの胸部CT検査を、本日中に実施して欲しいと放射線科へ依頼した。その後、CT検査日を変更した事をリーダー看護師に伝えた。9時30分頃、放射線撮影室から患者BのX線検査とCT検査の呼び出しがあった。リーダー看護師は、看護補助員に患者Bを検査室へ移送するよう依頼した。看護補助員は、リーダー看護師から胸部CT検査の予約票を受け取り、患者Bと思い込んで患者Aのもとを訪床した。そして「Bさん、検査の呼び出しがありました」と伝えると、患者Aから「はい」と返答があり、看護補助員が持参した車椅子に座った。看護補助員は患者Aの病室で事前に渡しているはずのX線予約票を探したが、見当たらなかったため、リーダー看護師にX線予約票の再印刷を依頼した。リーダー看護師は、X線予約票を渡し忘れているのだと考え、再印刷した。看護補助員に渡す準備をしていたが、ナースコールが鳴ったため、X線予約票をテーブルの上に置き、ナースコールに対応した。ナースステーションには誰もいない状態だったが、看護補助員はテーブルのX線予約票を見つけ、それを持って患者Aを検査室へ移送した。X線検査室では診療放射線技師Xが患者Bの到着を待っていた。診療放射線技師Xが「Bさんですか」と確認すると、看護補助員から「はい」と返答があったため、患者Aを患者Bだと思い込んだ。次に患者Aのリストバンドを用いてバーコード認証した。その時エラーが生じたが、診療放射線技師Xはその原因をバーコードの不調だと思い込み、持参した患者BのX線予約票を用いて認証を行い、X線検査を実施した。次に胸部CT検査予定であったため、患者Aと看護補助員はCT室へ移動した。CT室でも診療放射線技師Yは看護補助員と共にきた患者Aを患者Bだと思い込み、磁性体の除去物の確認のみ行って検査を実施した。検査終了後、患者Aのリストバンドを見て氏名が異なる事に気づいた。
今まで看護補助員は、患者に氏名を呼びかけ、患者からの返事により患者確認をしていた。当院の「患者誤認防止マニュアル」に明記している「患者自身に氏名を名乗ってもらう、患者のリストバンドやベッドネームを確認する」という患者確認を行っていなかった。放射線科ではデータ処理に際し、CT検査の方がX線検査よりも上位データとして取り扱われる事となっていた。X線検査室では、CT検査室で患者データが展開されている事を確認していた。上位であるCT検査室で患者データを展開しているため、X線検査室では患者データを展開できず、バーコード認証もできないのだと判断した。更に看護補助員と共にやってきた患者が間違っているはずが無いという思い込みも重なり、バーコード認証ができないのは機械の不調だと思い、患者自身に氏名を確認することなく検査を実施した。CT検査は、検査自体が予約制で検査室や時間が決まっていることから、バーコード認証は元々患者確認のためのものではなく、多くの検査予約の中から患者画面を展開させるために用いられていた。X線検査室の診療放射線技師Xと同じように、看護補助員が同伴している患者が間違っているはずはないという認識で、患者確認をすることなく検査を行った。皆が「まさか違うはずが無い」という前提で対応し、全てをすり抜けてしまった。
・「患者誤認防止マニュアル」には「患者自身に氏名を名乗ってもらう、患者のリストバンドやベッドネームを確認する」という事を明記しており、マニュアルの再確認とともに事例の周知を行った。・医療安全管理委員会で事例紹介を行い、周知した。
医療スタッフは患者Aを患者Bと思い込んだ
診療放射線技師は患者BのPET検査の際に、誤って患者Aへ氏名を名乗ってもらったが、患者Bと聞き間違えた。名前をはっきりと聞き取れなかったため、再度「PETを受けられる方ですね」と問い直したところ、患者Aより「はい」と返答を受け、本来副甲状腺シンチ予定の患者AをPET-CT予定の患者Bと取り違えた。診療放射線技師は患者AへPET-CT検査の説明を行い、PET処置室へ案内した。医師と看護師は処置室入室時に患者の氏名を再確認するルールであったが、案内された患者Aが患者Bであると思い込み、氏名の確認を行なわなかった。患者Aへの問診の後、PET-CT用の検査薬18F-FDGを投与した。その後、副甲状腺シンチ待合室に患者Aがいないため、患者の取り違えに気付いた。
検査開始時に「患者に姓名を名乗ってもらう」という当院の基本ルールが実施されていなかった。患者に氏名を名乗ってもらった際、診療放射線技師は確信が持てなかったが、再度氏名の確認を行わなかった。患者が持参している指示書等の名前表記との照合が一度も行われなかった。診療放射線技師は不安に思い検査名を患者に確認し再確認を行っているが、検査の個別名称で確認が行われたため、患者には正誤の判断はつかなかったと推察される。医師と看護師はすでに患者確認が診療放射線技師によって行われていると思い込んだため、氏名確認を行わなかった。処置、問診時にも患者氏名の確認が行われなかった。
・放射線検査における患者確認手順を改訂し、運用を徹底する。<患者確認項目>1.待合い・診療放射線技師は受付番号にて患者を呼び、患者より検査予約票を受け取る。・患者に姓名を名乗ってもらい、表記を確認し検査予約票にチェックする。・患者と共に指示書を用いて予定検査の確認を行い、検査予約票にチェックする。・診療放射線技師は処置室内の医師や看護師へ患者名・検査名・検査時間を申し送る。2.処置室・看護師は患者から検査予約票を受け取り、氏名を名乗ってもらい指示書ならびに部門システムにて確認し、検査予約票にチェックする。・患者と共に検査予約票を用いて予定検査を確認しチェックする。3.検査薬投与時(必要時)・医師、看護師は投与前に準備された薬剤のラベルに記載されている患者名、検査名を確認する。
医療スタッフは患者Aを患者Bと思い込んだ
患者は病理組織診断にて胞状奇胎が確認され、CTにて肺転移を認めた為、侵入胞状奇胎と診断された。その後メソトレキセート単剤を開始した。その際、事前に登録されていた「絨毛性疾患に対するMTX」のレジメンを使用したが、体表面積当たりで計算し、予定量の1.5倍の45mg/日で5日間投与した。レジメン登録時に「/body」とするところ、誤って「/m2」と入力していた。投与後、口内炎(grade3)、骨髄抑制(grade4)、発熱性好中球減少症、脱毛(grade2)などの副作用が強く、原因等を調べていたところ、登録されたレジメンに間違いがあったことが判明した。副作用は順調に改善し退院となった。
「がん化学療法レジメン新規採用申請書」の基準値の欄が「薬剤量」「/body」に分かれておらず、MTX療法を申請した医師は「/body」を記入しなかった。化学療法委員会で新規レジメンを検討する際に、薬剤量の検討が主になり、「/body」の未記入を確認せず承認した。薬剤師がホームページに新規レジメンを登録する手順が決まっておらず、レジメンに「/body」の記載がなかったが添付文書の確認、申請した医師への問い合わせをせず、既登録レジメンを修正して「/m2」と誤登録した。その後、他の薬剤師のダブルチェックでも誤りに気付かなかった。
・「がん化学療法レジメン新規採用申請書」の基準値の欄に「/m2」「/kg」「/body」を記入する枠を追加した。・薬剤師は、新規レジメンの申請書を受け取った後、添付されたエビデンスと比較する。・新規レジメンマスター登録後は、テスト患者を使用して2名の薬剤師が内容の確認を行い、更に申請医師が内容を確認してから使用できるようにする。・化学療法委員会では、新規レジメン申請書に記載漏れがないか確認する。
薬剤量間違い/過剰
○レジメンの新規登録申請書の自由度は必要だが、書く人によってばらつきが生じないよう、誰が書いても同じになるように記載ができる申請書であることが重要である。○レジメンをどう管理するかは一つの課題である。新規登録は増えても使用していないレジメンを削除することは難しい。増えていくレジメンの整理がされていない現状がある。○レジメンの審査が目的の委員会、化学療法の適正性の審査が目的の委員会など、委員会の目的を分けている医療機関もある。
医療事故情報
患者は子宮体がんに対し、3年4ヶ月前に子宮全摘、両側付属器切除、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清、大網切除術を施行した。その後TC(Paclitaxel+Carboplatin)療法6コースを行った。2年前に腹膜播種再発あり、AP療法を6コース施行した(この時点でアドリアシン(Doxorubicin)総投与量310mg/m2(体表面積))。1年前に膣断端再発あり、腫瘍摘出を施行した。その後、AP(Doxorubicin+Cisplatin)療法を3コース施行した(この時点でアドリアシン総投与量470mg/m2(体表面積))。アドリアシンはドキソルビシン塩酸塩として総投与量が500mg/m2(体表面積)をこえると重篤な心筋障害が発生するおそれがあることは知っていたが、今回の症例は再発症例の術後であり、化学療法施行により予後の延長が期待できるため、前回有効であったAP療法を追加することとした。化学療法は通常6コース行うことが多い。6コースの途中で総投与量を超えることに配慮がおよばず、通常の6コースを実施した。投与中は自覚症状なく、予定コース数を6ヶ月前に完遂した(総投与量620mg/m2(体表面積))。その後、上気道炎を契機として心不全を発症し、精査を行ったところ薬剤性心筋障害とわかった。
医師はアドリアシンの過量投与にともなう心筋障害の危険性は知っていた。アドリアシンの総投与量は意識していたが、患者へ投与した量は記憶に頼っており、正確な記録はなく、6コースは大丈夫だろうと思っていた。事例に記載している総投与量は、事例発生後に遡って計算したものである。レジメン入力画面に総投与量の画面表示はあるが、オーダしたバイアル数が出る仕組みであることから、実際の投与量が分からず活用されていなかった。患者への総投与量についての情報の共有がなされておらず、医師のみで管理されていた。過量投与が問題となる薬剤に対して医師以外がチェックする仕組みがなかった。
・総投与量に制限がある薬剤の投与に関して、医師は開始前に、患者に対して治療の内容、リスクについて十分説明する。・医師がレジメンを入力する際は、薬剤師に電話などにより連絡する。・薬剤師がレジメン開始時に患者への説明で使用する説明用紙に投与量の上限を明記する。・薬剤師のレジメンチェック用紙に総投与量の欄をつくり、毎回記載したうえで、患者に説明する。・電子カルテのレジメンシステムで指示する際に、総投与量に注意が必要な旨のアラートが出るように改修した。・電子カルテのレジメンシステムで自動的に総投与量が計算され、上限を超える場合にはアラートが出るように改修した。
その他
○医療機関で使用している腫瘍用薬で総投与量の上限のあるものについてチェック体制を構築しておくことは重要である。○総投与量は体表面積から計算されるので、患者の体重により変化することもあり、単純に投与量を足していけばいいものではない。どの医療機関でもシステムで管理できるとは限らず、良い方法があればシステム業者が協働出来るような情報の共有がなされるとよい。
医療事故情報
子宮体がんIc期の診断で子宮体がん根治術を施行した。術後の補助化学療法として標準治療であるAP療法(アドリアシン+シスプラチン)で、アドリアシンを総量299mg/m2を6回に渡り投与した。6回投与後の外来受診時に胸水貯留を認め、入院となった。循環器内科の精査で心不全の診断となり調査を行ったところ、10年前にろ胞性リンパ腫でCHOP療法を受けていたことが判明した。当事者は、患者が既往で化学療法を受けていることは認識していたが、内容をよく確認せず、CHOP療法の「H」をヒドロキシカルバミドと思い込み、アドリアシンは使用していないと判断した。実際には、10年前の治療にアドリアシンが使用されており、今回の投与量299mg/m2と併せると、総投与量が600mg/m2となり、アドリアシンの投与量限度(500mg/m2以下)を超過していた。しかし報告時点では、アドリアシンの投与と心不全の因果関係については、はっきりしていない。
病歴聴取と既往使用薬剤の調査が不十分であった。
・他科治療歴には細心の注意を払う。・病歴のチェックを徹底する。・抗悪性腫瘍剤投与時にチェックを徹底する。
nan
○複数の医療機関を経緯して治療を行っている患者の場合、診療情報提供書の記載は重要である。しかし、過去に行われた薬剤の投与情報まで把握することは難しい現状がある。○患者への薬剤や総投与量の情報提供や教育は、事故防止対策のひとつにはなるが、患者が「抗癌剤治療をした」と覚えていても「アドリアシンを○○mg/m2(体表面積)まで」と記憶することは難しいため、全国規模の医療機関情報共有体制の検討が望まれる。○内服薬はお薬手帳に記録されるので、注射薬のお薬手帳のようなものがあればいいのではないか。
医療事故情報
外来を臨時で担当した医師Aは、前医の紹介状に基づき降圧剤ノルバスク錠(5mg)1錠を処方しようとしたが、誤ってノルバデックス錠(20mg)1錠を1週間分処方した。以後、医師B(主治医)はノルバデックス錠が前医で追加処方されたものと思い込み、11ヵ月にわたり誤処方を継続した。
本来処方されるべきノルバスク錠の処方量は通常2.5-5mgであるが、実際に処方されたノルバデックス錠は20mgであり、薬剤名、薬剤量から考えると、本来は起こり得ない誤処方である。しかしながら、医師Aが最初に誤処方した日は外来および病棟業務が多忙で、ノルバデックス錠がノルバスク錠の後発医薬品と思い込み、薬効および用量の確認を怠った。また、医師B(主治医)もノルバデックス錠が前医で追加処方されたものと勘違いし、前医の紹介状を改めて確認することなく、誤処方を継続した。また、適用外の薬剤処方は、通常、診療報酬審査時に査定されるが、本件では一切の査定および指摘がなされなかった。さらに、医事システムにおける処方薬剤の検索は3文字検索となっており、「ノルバ」と入力するとノルバデックス錠しか表示されず、抗腫瘍薬であることの警告もなかった。
・医師は、処方入力した後、画面及び処方箋を目で見て、指差し、声だし確認する。・薬剤検索をかな文字3文字で検索のシステムに変更した。
薬剤間違い
○「ノルバスク錠」「ノルバデックス錠」の取り違えについては製薬企業から、処方時のみではなく処方監査時、交付時、配薬時も含めた注意喚起がなされている。○当該事例は脳神経外科からの処方であり、診療科の情報から保険薬局でノルバデックス錠の処方に違和感を感じて、疑義照会をしていれば防止できた可能性がある。保険薬局とも共有したい医療事故情報である。
医療事故情報
喉頭がん再発に対し、セツキシマブ・CDDP・5FUを用いた全身化学療法を計5クール行った。1クールに3回セツキシマブを投与するが、1クール目初回のみ400mg/m2であとは全て250mg/m2で投与するところ、各クール初回に400mg/m2でセツキシマブを投与していた。その後、セツキシマブの副作用である間質性肺炎を発症した。
添付文書に記載されたアービタックス注射液の投与方法の詳細を確認せずに投与した。初回投与時のレジメンを作成したが、2回目以降のアービタックス注射液を減量したレジメンを作成せずに治療を継続した。
添付文書に記載されたアービタックス錠の投与方法の詳細を確認せずに投与した。初回投与時のレジメンを作成したが、2回目以降のアービタックスを減量したレジメンを作成せずに治療を継続した。
薬剤量間違い/過剰
○事例の化学療法は5クールまで行われており、最初に正しいと判断すると途中で気付くことは難しい。このような事例を次に活かすために発見の経緯を分析しておくことが重要である。○アービタックス注射液の添付文書の用法及び用量では、「初回は400mg/m2を2時間かけて、2回目以降は250mg/m2を1時間かけて点滴静注する」とあるが、各クールの1回目、と解釈する可能性があり注意が必要である。
医療事故情報
肺がんに対する治療のため入院している患者(45Kg)で、看護師が患者の体重入力時に同姓患者の体重(78.5Kg)と間違えて入力した。すぐに間違いに気づきデータを削除したが削除は一部のデータにしか反映されず、1クール目の抗がん剤オーダ時、体重78.5Kgで投与量が計算され、2回(1週間毎)患者へシスプチラン114.4mg投与のところ、シスプチラン148.56mgを投与した。抗がん剤治療2クール目のレジメンオーダ確認時に1クール目の投与量より3~4割程度過量であるため、1クール目に抗がん剤が過剰投与されていたことに気づいた。その後白血球減少と発熱があり、3クール目の治療開始に影響した可能性がある。
看護師が経過表に体重を誤入力しすぐに削除したが、患者プロファイルの体重情報には削除が反映されず、誤入力した体重のまま体表面積が算出された(経過表に入力したデータは患者プロファイルへ反映されるシステムになっているが、反映されるデータは新規データ及び修正データのみで、経過表で削除されたデータは患者プロファイルに反映されないシステム)。主治医がレジメン入力時に体重が明らかに異なることに気づかず、誤入力された体重から算出された体表面積のまま抗がん剤の量が設定された。また、前回投与時のシスプチランの量と比較しなかった。薬剤部でシスプチランの量が前回投与時と乖離がある点を指摘されなかった。
・電子カルテ上経過表に記入された体重が、患者プロファイルの体重情報と連動し反映されるようシステム改善を医療情報部に依頼した。・各コースごとに実際に患者の体重を主治医が実測し手計算で体表面積を算出、主治医自身で抗がん剤の用量設定を行い、コンピュータ上の抗がん剤の用量設定と乖離がないことを確認した上で抗がん剤を投与する。
nan
○体重を誤入力することは起こりうる。電子カルテで修正したデータが反映される画面と反映されない画面が混在するシステムは見直しの検討が必要である。○メインの基本情報システムデータを変更すれば、他の下位システムに反映されるが、下位システムである看護システムを変更しても他の画面に反映されないことがある。看護師はそのことを知らないことが多いのではないか。○看護師は自身が入力したデータがどこに影響するのかを知っておくことは重要である。○本事例はシステムの問題であるが、薬剤師の処方監査で過去の投与量との比較した際に、疑義照会の対象とならなかったことの分析も重要である。○システム上、前回投与量と20~30%違うとアラートが出される仕組みを取り入れている医療機関もある。
医療事故情報
原疾患に対し化学療法2クール目を開始予定であり、医師からアバスチン点滴静注用、エルプラット点滴静注用のオーダがあった。薬剤師が抗がん剤の投与量の確認を行ったところ、前回と同量で処方されていた。しかし、患者の体重は前回よりも28kg減少しており、体重が多い値であったため投与量が過量となっていた。そのため、疑義照会を行い最新の体重に基づいた投与量へ減量になった。
医師は、患者の最新の体重を確認せずに前回と同量の抗がん剤を処方した。
・抗がん剤を処方する時は、最新の体重に基づいた投与量で処方オーダを行う。・処方オーダを確定する前に、投与量に間違いないか確認する。
nan
○本事例は薬剤師の本来の役割が機能し、適切な疑義照会がなされた事例である。○腫瘍用薬の投与にあたって薬剤師の役割は重要である。
ヒヤリ・ハット事例
潰瘍性大腸炎にロイケリン散10%の内服治療を行った。1日15mgの用量で投与するはずであったが、1日150mgで10日間投与されていた。1ヶ月後に好中球減少の遷延によると思われる発熱が生じたため、抗生剤及びG-CSFを投与した。
上級医からの口頭による150mgとの指示に基づき処方を行った。上級医は、以前に所属していた施設では、投与1回あたりの総量でオーダしていたことから、これを念頭に総量を示したつもりであった。本院では成分量でオーダすることになっているため、指示を受けた医師は成分量150mgと入力した。オーダを受けた薬剤師は、「通常、潰瘍性大腸炎には、体重1kgあたり1日1.0~1.2mgの投与が推奨されているところ、処方オーダでは、1日分が体重1kgあたり3mgに相当することになるが、間違いではないか」と、入力した医師に疑義照会したところ、医師は、適正な全体量・成分量を理解していないにもかかわらず、「150mgで間違いない」旨の返答があったと記憶している。しかし、入力した医師は、疑義照会があったこと自体の記憶がなかった。施設によりオーダの仕方が異なっていたことが原因の一つである。
・全職員に本事例に関する注意喚起を行った。・特に中途採用者向けの研修で本事例を取り上げ、定期的に注意を促す。・薬剤師による処方医への問合せでも疑義が解消しない場合は、より上級の医師に疑義照会を行うこととした。
nan
○本事例の背景・要因に記載されているように、医療機関によりオーダの仕方やシステムのデフォルトが総量となっていたり、有効成分の量となっていたりと異なっている。そのため、一つの医療機関だけではなく、少なくとも地域でシステムを標準化することの検討がなされると良い。○「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書」3)では内服薬は製剤量(総量)で処方することが基本とされているが、添付文書上の用法・用量は有効成分の量で記載されていることがあることも、医療現場で両者が混在することの一因となっているのかもしれない。
医療事故情報
病状悪化に伴いフルダラ錠の投与を行うこととした。当初フルダラ錠投与1週間後に来院予定で、以前より内服している薬剤を7日分、フルダラ錠を5日分入力した。その後患者が1週間後に来院できないとのことで2週間分に変更した。その時は誤りに気が付かず、処方箋を患者に手渡した。2週間後、患者が来院した際、前回の処方でフルダラ錠が5日分×2(週間)になり10日分処方されていたことに気が付いた。
フルダラ錠は5日間連続投与後23日間休薬を行う薬剤である。当処方箋の投与日数変更に関連した単純な入力ミスである。薬剤師からの疑義照会はなかった。
・ワーニングがでるような工夫等を検討する必要がある。
投与日・投与日数間違い
○薬剤師の疑義照会の適応となる事例である。2クール分を処方する可能性もあるが、薬剤師は自分で解釈せずに必ず疑義照会をしたうえで調剤することが重要である。
医療事故情報
R-CHOP療法の2コース目の患者であり、内服はカレンダーにセットしてあった。リツキサン注を施行し、翌日からR-CHOP療法開始であった。朝よりプレドニン錠を内服する予定であったが処方されておらず、内服していないことに気付かなかった。翌々日午後退院予定であり午前中に薬剤師が服薬指導に行くと「あの苦いお薬はいつから飲むんですか?」という質問を受け、すぐに確認したところプレドニン錠が処方されていないことに気づく。すぐに主治医に報告し退院処方として5日分処方され、3日後から内服で可の指示をもらい薬剤師に伝え服薬指導してもらった。
R-CHOP療法であったが、内服が処方され内服できているかの確認をすっかり忘れてしまっていた。他患者の慣れない処置に気をとられてしまい、プレドニン錠の確認へ意識が向かなかった。
・普段医師が当たり前に正しく処方していることに慣れてしまっている部分があったと思われる。・治療の内容を把握し、初心にもどって確認をしっかりとする。
無投与
○腫瘍用薬の治療過程において、レジメン、処方、指示、ワークシートなどいろいろな帳票が存在する。その中で治療の全体像がわかるものがあると良い。○本事例は患者からの問いかけで処方忘れに気がついており、患者に治療の全体像を説明しておくことも重要である。
ヒヤリ・ハット事例