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・日清食品 売上収益 2,107億83百万円 (前期比 2.5%増) 2020年度 2,056億円 2021年度 2,108億円 今期の状況 日清食品の販売状況は、カップめん類が売上を伸ばし、前期比で増収となりました。カップめん類では、2022年3月にチリトマトフレーバーが加わったおいしさそのままで高たんぱく&低糖質の「カップヌードルPRO」シリーズ、濃厚な味わいの旨辛スープとぶっかけ焙煎唐辛子がクセになる「カップヌードル辛麺」の売上が好調に推移したほか、カップヌードルは混ぜるとウマイをコンセプトに既存のフレーバー同士を合体させたカップヌードル発売50周年記念商品「カップヌードルスーパー合体」シリーズも大きく売上に貢献しました。また、2022年3月に発売した""すべてが主役""のこだわり抜いた「最強どん兵衛」も売上に大きく貢献し、前期比で増収となりました。袋めん類は「日清ラ王」シリーズが売上を伸ばしましたが、前期比では減収となりました。カップライス類は、「日清カレーメシ」シリーズが引き続き好調で売上に貢献し増収となりました。利益面は、売上の増加による利益の増加がありましたが、設備更新に伴う減価償却費の増加、原材料価格の上昇等により減益となりました。この結果、報告セグメントにおける日清食品の売上収益は、前期比2.5%増の2,107億83百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の305億76百万円、営業利益は、前期比4.2%減の308億39百万円となりました。 ・明星食品 売上収益 379億20百万円 (前期比 1.0%増) 2020年度 376億円 2021年度 379億円 今期の状況 明星食品の販売状況は、袋めん類は主要ブランドの「明星 チャルメラ」が「宮崎辛麺」や「もやしが超絶うまいまぜそば」の好調もあり伸長したほか、「明星 麺神」も売上に貢献し、前期比で増収となりました。カップめん類においても「酸辣湯麺」が好調の「明星 中華三昧」や、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」が堅調に推移したほか、2022年2月に発売した「明星 濃いぜ!一平ちゃんBIG」も貢献し、前期比で増収となりました。利益面では、売上の増加、広告宣伝費の減少等による利益の増加がありましたが、原材料価格の上昇、減価償却費の増加等により、前期比で減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける明星食品の売上収益は、前期比1.0%増の379億20百万円、コア営業利益は、前期比22.8%減の24億7百万円、営業利益は、前期比23.2%減の24億45百万円となりました。 ・低温・飲料事業 売上収益 808億67百万円 (前期比 4.1%増) 2020年度 777億円 2021年度 809億円 今期の状況 チルド事業は、日清食品チルドの主力ブランド「行列のできる店のラーメン」を中心に、「まぜ麺の達人」や「有名店シリーズ」などのラーメン群の売上が堅調に推移したため、前期比で増収増益となりました。 冷凍事業は、日清食品冷凍の主力商品である「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」をはじめとして、「冷凍 日清本麺」、「冷凍 日清まぜ麺亭」、「冷凍 日清もちっと生パスタ」の各シリーズが順調に売上を伸ばし、前期比で増収となりました。利益面では、原価率の上昇により前期比で減益となりました。 飲料事業は、日清ヨークの主力ブランド「ピルクル」が乳酸菌数を150億個から400億個に増やし「ピルクル400」として発売し好調に推移したものの、前年度コロナ禍での需要アップの反動やコロナ禍におけるCVS(コンビニエンスストア)での売上低迷により、ほぼ前年並みながらわずかに前期比で減収となりました。また、利益面では前年度コロナ禍での需要アップの反動、広告宣伝費等の増加によりほぼ前年並みながら前期比でわずかに減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける低温・飲料事業の売上収益は、前期比4.1%増の808億67百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の32億70百万円、営業利益は、前期比5.0%減の34億44百万円となりました。 ・菓子事業 売上収益 690億31百万円 (前期比 68.0%増) 2020年度 411億円 2021年度 690億円 今期の状況 菓子事業は、2020年4月の緊急事態宣言後に起きた需要の増加の反動があったものの、日清シスコの「ごろグラ」シリーズが好調に推移、新カテゴリーの「日清シスコのホットシリアル」も順調に拡大したほか、ぼんちも「海鮮揚煎」シリーズをはじめとした主力商品が好調に推移しました。また、60周年記念商品「KOIKEYAThe」シリーズなどを展開し高付加価値経営を推進する湖池屋は、2020年12月の連結子会社化により当期12カ月分の経営成績が反映されたこともあり(前期は4カ月分)、前期比で増収増益となりました。 この結果、報告セグメントにおける菓子事業の売上収益は、前期比68.0%増の690億31百万円、コア営業利益は、前期比23.3%増の31億58百万円、営業利益は、前期比25.3%増の32億57百万円となりました。 ・米州地域 売上収益 873億28百万円 (前期比 23.2%増) 2020年度 709億円 2021年度 873億円 今期の状況 米州地域においては、既存商品の収益力向上に加え、新たな需要の創造に向けた付加価値商品の提案強化や導入推進に取り組んでおります。 売上については、ブラジルでは新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要増に加えて積極的な営業・マーケティング施策を実施し、更なる間口・奥行きを獲得しました。主力商品「Nissin Lamen」や「CUP NOODLES」の販売も引き続き好調に推移し、売上増に貢献しました。米国においても、引き続き高い即席めん需要が続く中、差別優位性を明確にした高価格帯商品の販売好調により、セグメント全体で増収となりました。利 益については、主力商品や高価格帯商品の販売食数増、価格改定による販売単価増の増収効果もありましたが、継続する主要原材料、物流費及び人件費高騰が主要因となり減益となりました。この結果、報告セグメントにおける米州地域の売上収益は、前期比23.2%増の873億28百万円、コア営業利益は、前期比27.2%減の29億46百万円、営業利益は、前期比26.0%減の29億95百万円となりました。なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は、前期比15.0%増の815億40百万円となり、コア営業利益は、前期比32.8%減の27億17百万円となりました。
日清食品の袋めん類の販売状況を教えてください。
袋めん類は「日清ラ王」シリーズが売上を伸ばしましたが、前期比では減収となりました。
JCRRAG_010002
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・日清食品 売上収益 2,107億83百万円 (前期比 2.5%増) 2020年度 2,056億円 2021年度 2,108億円 今期の状況 日清食品の販売状況は、カップめん類が売上を伸ばし、前期比で増収となりました。カップめん類では、2022年3月にチリトマトフレーバーが加わったおいしさそのままで高たんぱく&低糖質の「カップヌードルPRO」シリーズ、濃厚な味わいの旨辛スープとぶっかけ焙煎唐辛子がクセになる「カップヌードル辛麺」の売上が好調に推移したほか、カップヌードルは混ぜるとウマイをコンセプトに既存のフレーバー同士を合体させたカップヌードル発売50周年記念商品「カップヌードルスーパー合体」シリーズも大きく売上に貢献しました。また、2022年3月に発売した""すべてが主役""のこだわり抜いた「最強どん兵衛」も売上に大きく貢献し、前期比で増収となりました。袋めん類は「日清ラ王」シリーズが売上を伸ばしましたが、前期比では減収となりました。カップライス類は、「日清カレーメシ」シリーズが引き続き好調で売上に貢献し増収となりました。利益面は、売上の増加による利益の増加がありましたが、設備更新に伴う減価償却費の増加、原材料価格の上昇等により減益となりました。この結果、報告セグメントにおける日清食品の売上収益は、前期比2.5%増の2,107億83百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の305億76百万円、営業利益は、前期比4.2%減の308億39百万円となりました。 ・明星食品 売上収益 379億20百万円 (前期比 1.0%増) 2020年度 376億円 2021年度 379億円 今期の状況 明星食品の販売状況は、袋めん類は主要ブランドの「明星 チャルメラ」が「宮崎辛麺」や「もやしが超絶うまいまぜそば」の好調もあり伸長したほか、「明星 麺神」も売上に貢献し、前期比で増収となりました。カップめん類においても「酸辣湯麺」が好調の「明星 中華三昧」や、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」が堅調に推移したほか、2022年2月に発売した「明星 濃いぜ!一平ちゃんBIG」も貢献し、前期比で増収となりました。利益面では、売上の増加、広告宣伝費の減少等による利益の増加がありましたが、原材料価格の上昇、減価償却費の増加等により、前期比で減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける明星食品の売上収益は、前期比1.0%増の379億20百万円、コア営業利益は、前期比22.8%減の24億7百万円、営業利益は、前期比23.2%減の24億45百万円となりました。 ・低温・飲料事業 売上収益 808億67百万円 (前期比 4.1%増) 2020年度 777億円 2021年度 809億円 今期の状況 チルド事業は、日清食品チルドの主力ブランド「行列のできる店のラーメン」を中心に、「まぜ麺の達人」や「有名店シリーズ」などのラーメン群の売上が堅調に推移したため、前期比で増収増益となりました。 冷凍事業は、日清食品冷凍の主力商品である「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」をはじめとして、「冷凍 日清本麺」、「冷凍 日清まぜ麺亭」、「冷凍 日清もちっと生パスタ」の各シリーズが順調に売上を伸ばし、前期比で増収となりました。利益面では、原価率の上昇により前期比で減益となりました。 飲料事業は、日清ヨークの主力ブランド「ピルクル」が乳酸菌数を150億個から400億個に増やし「ピルクル400」として発売し好調に推移したものの、前年度コロナ禍での需要アップの反動やコロナ禍におけるCVS(コンビニエンスストア)での売上低迷により、ほぼ前年並みながらわずかに前期比で減収となりました。また、利益面では前年度コロナ禍での需要アップの反動、広告宣伝費等の増加によりほぼ前年並みながら前期比でわずかに減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける低温・飲料事業の売上収益は、前期比4.1%増の808億67百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の32億70百万円、営業利益は、前期比5.0%減の34億44百万円となりました。 ・菓子事業 売上収益 690億31百万円 (前期比 68.0%増) 2020年度 411億円 2021年度 690億円 今期の状況 菓子事業は、2020年4月の緊急事態宣言後に起きた需要の増加の反動があったものの、日清シスコの「ごろグラ」シリーズが好調に推移、新カテゴリーの「日清シスコのホットシリアル」も順調に拡大したほか、ぼんちも「海鮮揚煎」シリーズをはじめとした主力商品が好調に推移しました。また、60周年記念商品「KOIKEYAThe」シリーズなどを展開し高付加価値経営を推進する湖池屋は、2020年12月の連結子会社化により当期12カ月分の経営成績が反映されたこともあり(前期は4カ月分)、前期比で増収増益となりました。 この結果、報告セグメントにおける菓子事業の売上収益は、前期比68.0%増の690億31百万円、コア営業利益は、前期比23.3%増の31億58百万円、営業利益は、前期比25.3%増の32億57百万円となりました。 ・米州地域 売上収益 873億28百万円 (前期比 23.2%増) 2020年度 709億円 2021年度 873億円 今期の状況 米州地域においては、既存商品の収益力向上に加え、新たな需要の創造に向けた付加価値商品の提案強化や導入推進に取り組んでおります。 売上については、ブラジルでは新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要増に加えて積極的な営業・マーケティング施策を実施し、更なる間口・奥行きを獲得しました。主力商品「Nissin Lamen」や「CUP NOODLES」の販売も引き続き好調に推移し、売上増に貢献しました。米国においても、引き続き高い即席めん需要が続く中、差別優位性を明確にした高価格帯商品の販売好調により、セグメント全体で増収となりました。利 益については、主力商品や高価格帯商品の販売食数増、価格改定による販売単価増の増収効果もありましたが、継続する主要原材料、物流費及び人件費高騰が主要因となり減益となりました。この結果、報告セグメントにおける米州地域の売上収益は、前期比23.2%増の873億28百万円、コア営業利益は、前期比27.2%減の29億46百万円、営業利益は、前期比26.0%減の29億95百万円となりました。なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は、前期比15.0%増の815億40百万円となり、コア営業利益は、前期比32.8%減の27億17百万円となりました。
日清食品の利益面の状況を教えてください。
利益面は、売上の増加による利益の増加がありましたが、設備更新に伴う減価償却費の増加、原材料価格の上昇等により減益となりました。
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・日清食品 売上収益 2,107億83百万円 (前期比 2.5%増) 2020年度 2,056億円 2021年度 2,108億円 今期の状況 日清食品の販売状況は、カップめん類が売上を伸ばし、前期比で増収となりました。カップめん類では、2022年3月にチリトマトフレーバーが加わったおいしさそのままで高たんぱく&低糖質の「カップヌードルPRO」シリーズ、濃厚な味わいの旨辛スープとぶっかけ焙煎唐辛子がクセになる「カップヌードル辛麺」の売上が好調に推移したほか、カップヌードルは混ぜるとウマイをコンセプトに既存のフレーバー同士を合体させたカップヌードル発売50周年記念商品「カップヌードルスーパー合体」シリーズも大きく売上に貢献しました。また、2022年3月に発売した""すべてが主役""のこだわり抜いた「最強どん兵衛」も売上に大きく貢献し、前期比で増収となりました。袋めん類は「日清ラ王」シリーズが売上を伸ばしましたが、前期比では減収となりました。カップライス類は、「日清カレーメシ」シリーズが引き続き好調で売上に貢献し増収となりました。利益面は、売上の増加による利益の増加がありましたが、設備更新に伴う減価償却費の増加、原材料価格の上昇等により減益となりました。この結果、報告セグメントにおける日清食品の売上収益は、前期比2.5%増の2,107億83百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の305億76百万円、営業利益は、前期比4.2%減の308億39百万円となりました。 ・明星食品 売上収益 379億20百万円 (前期比 1.0%増) 2020年度 376億円 2021年度 379億円 今期の状況 明星食品の販売状況は、袋めん類は主要ブランドの「明星 チャルメラ」が「宮崎辛麺」や「もやしが超絶うまいまぜそば」の好調もあり伸長したほか、「明星 麺神」も売上に貢献し、前期比で増収となりました。カップめん類においても「酸辣湯麺」が好調の「明星 中華三昧」や、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」が堅調に推移したほか、2022年2月に発売した「明星 濃いぜ!一平ちゃんBIG」も貢献し、前期比で増収となりました。利益面では、売上の増加、広告宣伝費の減少等による利益の増加がありましたが、原材料価格の上昇、減価償却費の増加等により、前期比で減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける明星食品の売上収益は、前期比1.0%増の379億20百万円、コア営業利益は、前期比22.8%減の24億7百万円、営業利益は、前期比23.2%減の24億45百万円となりました。 ・低温・飲料事業 売上収益 808億67百万円 (前期比 4.1%増) 2020年度 777億円 2021年度 809億円 今期の状況 チルド事業は、日清食品チルドの主力ブランド「行列のできる店のラーメン」を中心に、「まぜ麺の達人」や「有名店シリーズ」などのラーメン群の売上が堅調に推移したため、前期比で増収増益となりました。 冷凍事業は、日清食品冷凍の主力商品である「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」をはじめとして、「冷凍 日清本麺」、「冷凍 日清まぜ麺亭」、「冷凍 日清もちっと生パスタ」の各シリーズが順調に売上を伸ばし、前期比で増収となりました。利益面では、原価率の上昇により前期比で減益となりました。 飲料事業は、日清ヨークの主力ブランド「ピルクル」が乳酸菌数を150億個から400億個に増やし「ピルクル400」として発売し好調に推移したものの、前年度コロナ禍での需要アップの反動やコロナ禍におけるCVS(コンビニエンスストア)での売上低迷により、ほぼ前年並みながらわずかに前期比で減収となりました。また、利益面では前年度コロナ禍での需要アップの反動、広告宣伝費等の増加によりほぼ前年並みながら前期比でわずかに減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける低温・飲料事業の売上収益は、前期比4.1%増の808億67百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の32億70百万円、営業利益は、前期比5.0%減の34億44百万円となりました。 ・菓子事業 売上収益 690億31百万円 (前期比 68.0%増) 2020年度 411億円 2021年度 690億円 今期の状況 菓子事業は、2020年4月の緊急事態宣言後に起きた需要の増加の反動があったものの、日清シスコの「ごろグラ」シリーズが好調に推移、新カテゴリーの「日清シスコのホットシリアル」も順調に拡大したほか、ぼんちも「海鮮揚煎」シリーズをはじめとした主力商品が好調に推移しました。また、60周年記念商品「KOIKEYAThe」シリーズなどを展開し高付加価値経営を推進する湖池屋は、2020年12月の連結子会社化により当期12カ月分の経営成績が反映されたこともあり(前期は4カ月分)、前期比で増収増益となりました。 この結果、報告セグメントにおける菓子事業の売上収益は、前期比68.0%増の690億31百万円、コア営業利益は、前期比23.3%増の31億58百万円、営業利益は、前期比25.3%増の32億57百万円となりました。 ・米州地域 売上収益 873億28百万円 (前期比 23.2%増) 2020年度 709億円 2021年度 873億円 今期の状況 米州地域においては、既存商品の収益力向上に加え、新たな需要の創造に向けた付加価値商品の提案強化や導入推進に取り組んでおります。 売上については、ブラジルでは新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要増に加えて積極的な営業・マーケティング施策を実施し、更なる間口・奥行きを獲得しました。主力商品「Nissin Lamen」や「CUP NOODLES」の販売も引き続き好調に推移し、売上増に貢献しました。米国においても、引き続き高い即席めん需要が続く中、差別優位性を明確にした高価格帯商品の販売好調により、セグメント全体で増収となりました。利 益については、主力商品や高価格帯商品の販売食数増、価格改定による販売単価増の増収効果もありましたが、継続する主要原材料、物流費及び人件費高騰が主要因となり減益となりました。この結果、報告セグメントにおける米州地域の売上収益は、前期比23.2%増の873億28百万円、コア営業利益は、前期比27.2%減の29億46百万円、営業利益は、前期比26.0%減の29億95百万円となりました。なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は、前期比15.0%増の815億40百万円となり、コア営業利益は、前期比32.8%減の27億17百万円となりました。
明星食品の利益面の状況を教えてください。
利益面では、売上の増加、広告宣伝費の減少等による利益の増加がありましたが、原材料価格の上昇、減価償却費の増加等により、前期比で減益となりました。
JCRRAG_010004
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既存事業コア営業利益は前期比減益も、社内計画を超過。通期では期初ガイダンス達成を見込む Point 1:2024年度Q3累計実績 ➢ 売上収益は前期比+6%で全事業増収、既存事業コア営業利益は△7%と減益での着地 ➢ 国内即席めん事業:増収(+52億円、+2.5%)・微減益(△1億円、△0.3%) ・2ブランドとも数量増、定番・価格コンシャス商品とも増収モメンタム継続 ・コア商品への戦略的な販促に注力したことで、コア営業利益は微減益 ➢ 国内非即席めん事業:増収(+118億円、+8.7%)・増益(+8億円、+6.4%) ・足許では、冷凍・シスコ・湖池屋が大幅増収、事業全体で一桁半ば%の増益 ➢ 海外事業:増収(+153億円、+7.6%)・減益(△42億円、△11.5%) ・トップラインはブラジル事業が牽引し、全ての地域で大幅増収となり、一桁後半%の成長 ・米国事業の一部チャネルでの数量減や米州事業の資材コスト増、持分法マルベンの利益減により減益 Point 2:対公表計画の達成を目指す ➢ 売上収益と既存事業コア営業利益とも、Q3累計ベースで計画インライン ➢ 米国事業の販売数量増トレンドへの回帰及び日清食品のコストコントロール強化により、通期計画の達成を目指す 最初に第3四半期までの決算を総括しますと、既存事業コア営業利益は前期⽐で減益となり、 第3四半期単体では計画を下回りましたが、累計ベースでは社内計画を上回って推移しており、 通期では期初ガイダンスの達成を⾒込んでおります。 ・ では、ポイントの⼀つ⽬、第3四半期までの累計実績ですが、売上収益は前期⽐プラス6%と全事業で増収、既存事業コア営業利益は前期⽐マイナス7%と減益で着地しました。 ・ 事業部⾨の動向についてそれぞれご説明します。 ・ 最初に国内即席めん事業です。 ・ ⽇清⾷品・明星⾷品ともに数量増となり、価格コンシャス商品での需要を着実に取り込みながら、コアブランドへの回帰を促す戦略が引き続き奏功しています。利益⾯では、⾜元で戦略的に拡販費を使⽤したこともあり、前年並みながら若⼲の減益となりました。 ・ 次に国内⾮即席めん事業です。 ・ 湖池屋が増収トレンドを維持した⼀⽅、⾜元の第3四半期単体では⽇清冷凍・⽇清シスコが⼤幅増収・増益となり、全体の増収・増益基調に寄与しています。特に利益⾯では、昨年来各社で実施してきた価格改定効果もあり、⾮即席めん事業全体で6.4%の増益となりました。 ・ 最後に海外事業です。 ・ まず、売上収益は世界的なダウントレーディングの環境下、各地域とも底堅い需要を確実に捉え、全ての地域で増加しました。数量については、18 ページに記載の通り、海外事業全体で⾒ると、⽶国やメキシコにおける数量減はありましたが、ブラジル、中国地域、欧州などの⾷数の伸びが貢献し、全体で1桁%の増加となりました。これは、当社がグローバルに展開しているポートフォリオ効果が寄与していると捉えています。 ・ 利益⾯では、中国・アジア地域は増益、⽶州・EMEA地域は減益となり、全体で減益となりました。主な減益要因は、⽶州地域での資材や物流費の増加、⽶国の販売数量の減少、⼀部の欧州持分法適⽤会社の減益になります。 ・ ⽶国事業については、後ほど、詳細に説明いたします ・ ⼆つ⽬のポイントは今期の着地⾒通しです。売上収益・コア営業利益ともに第3四半期単体では社内計画対⽐でビハインドだったものの、累計では計画インラインで進捗しております。 ・ 第4四半期は、⽶国における販路拡⼤や新製品投⼊等による販売数量回復や、費⽤配分を平準化した⽇清⾷品を中⼼にコストコントロールを⾏い、通期計画の達成を⽬指します。
国内即席めん事業の動向を教えてください。
⽇清⾷品・明星⾷品ともに数量増となり、価格コンシャス商品での需要を着実に取り込みながら、コアブランドへの回帰を促す戦略が引き続き奏功しています。利益⾯では、⾜元で戦略的に拡販費を使⽤したこともあり、前年並みながら若⼲の減益となりました。
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・日清食品 売上収益 2,107億83百万円 (前期比 2.5%増) 2020年度 2,056億円 2021年度 2,108億円 今期の状況 日清食品の販売状況は、カップめん類が売上を伸ばし、前期比で増収となりました。カップめん類では、2022年3月にチリトマトフレーバーが加わったおいしさそのままで高たんぱく&低糖質の「カップヌードルPRO」シリーズ、濃厚な味わいの旨辛スープとぶっかけ焙煎唐辛子がクセになる「カップヌードル辛麺」の売上が好調に推移したほか、カップヌードルは混ぜるとウマイをコンセプトに既存のフレーバー同士を合体させたカップヌードル発売50周年記念商品「カップヌードルスーパー合体」シリーズも大きく売上に貢献しました。また、2022年3月に発売した""すべてが主役""のこだわり抜いた「最強どん兵衛」も売上に大きく貢献し、前期比で増収となりました。袋めん類は「日清ラ王」シリーズが売上を伸ばしましたが、前期比では減収となりました。カップライス類は、「日清カレーメシ」シリーズが引き続き好調で売上に貢献し増収となりました。利益面は、売上の増加による利益の増加がありましたが、設備更新に伴う減価償却費の増加、原材料価格の上昇等により減益となりました。この結果、報告セグメントにおける日清食品の売上収益は、前期比2.5%増の2,107億83百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の305億76百万円、営業利益は、前期比4.2%減の308億39百万円となりました。 ・明星食品 売上収益 379億20百万円 (前期比 1.0%増) 2020年度 376億円 2021年度 379億円 今期の状況 明星食品の販売状況は、袋めん類は主要ブランドの「明星 チャルメラ」が「宮崎辛麺」や「もやしが超絶うまいまぜそば」の好調もあり伸長したほか、「明星 麺神」も売上に貢献し、前期比で増収となりました。カップめん類においても「酸辣湯麺」が好調の「明星 中華三昧」や、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」が堅調に推移したほか、2022年2月に発売した「明星 濃いぜ!一平ちゃんBIG」も貢献し、前期比で増収となりました。利益面では、売上の増加、広告宣伝費の減少等による利益の増加がありましたが、原材料価格の上昇、減価償却費の増加等により、前期比で減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける明星食品の売上収益は、前期比1.0%増の379億20百万円、コア営業利益は、前期比22.8%減の24億7百万円、営業利益は、前期比23.2%減の24億45百万円となりました。 ・低温・飲料事業 売上収益 808億67百万円 (前期比 4.1%増) 2020年度 777億円 2021年度 809億円 今期の状況 チルド事業は、日清食品チルドの主力ブランド「行列のできる店のラーメン」を中心に、「まぜ麺の達人」や「有名店シリーズ」などのラーメン群の売上が堅調に推移したため、前期比で増収増益となりました。 冷凍事業は、日清食品冷凍の主力商品である「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」をはじめとして、「冷凍 日清本麺」、「冷凍 日清まぜ麺亭」、「冷凍 日清もちっと生パスタ」の各シリーズが順調に売上を伸ばし、前期比で増収となりました。利益面では、原価率の上昇により前期比で減益となりました。 飲料事業は、日清ヨークの主力ブランド「ピルクル」が乳酸菌数を150億個から400億個に増やし「ピルクル400」として発売し好調に推移したものの、前年度コロナ禍での需要アップの反動やコロナ禍におけるCVS(コンビニエンスストア)での売上低迷により、ほぼ前年並みながらわずかに前期比で減収となりました。また、利益面では前年度コロナ禍での需要アップの反動、広告宣伝費等の増加によりほぼ前年並みながら前期比でわずかに減益となりました。 この結果、報告セグメントにおける低温・飲料事業の売上収益は、前期比4.1%増の808億67百万円、コア営業利益は、前期比4.4%減の32億70百万円、営業利益は、前期比5.0%減の34億44百万円となりました。 ・菓子事業 売上収益 690億31百万円 (前期比 68.0%増) 2020年度 411億円 2021年度 690億円 今期の状況 菓子事業は、2020年4月の緊急事態宣言後に起きた需要の増加の反動があったものの、日清シスコの「ごろグラ」シリーズが好調に推移、新カテゴリーの「日清シスコのホットシリアル」も順調に拡大したほか、ぼんちも「海鮮揚煎」シリーズをはじめとした主力商品が好調に推移しました。また、60周年記念商品「KOIKEYAThe」シリーズなどを展開し高付加価値経営を推進する湖池屋は、2020年12月の連結子会社化により当期12カ月分の経営成績が反映されたこともあり(前期は4カ月分)、前期比で増収増益となりました。 この結果、報告セグメントにおける菓子事業の売上収益は、前期比68.0%増の690億31百万円、コア営業利益は、前期比23.3%増の31億58百万円、営業利益は、前期比25.3%増の32億57百万円となりました。 ・米州地域 売上収益 873億28百万円 (前期比 23.2%増) 2020年度 709億円 2021年度 873億円 今期の状況 米州地域においては、既存商品の収益力向上に加え、新たな需要の創造に向けた付加価値商品の提案強化や導入推進に取り組んでおります。 売上については、ブラジルでは新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要増に加えて積極的な営業・マーケティング施策を実施し、更なる間口・奥行きを獲得しました。主力商品「Nissin Lamen」や「CUP NOODLES」の販売も引き続き好調に推移し、売上増に貢献しました。米国においても、引き続き高い即席めん需要が続く中、差別優位性を明確にした高価格帯商品の販売好調により、セグメント全体で増収となりました。利 益については、主力商品や高価格帯商品の販売食数増、価格改定による販売単価増の増収効果もありましたが、継続する主要原材料、物流費及び人件費高騰が主要因となり減益となりました。この結果、報告セグメントにおける米州地域の売上収益は、前期比23.2%増の873億28百万円、コア営業利益は、前期比27.2%減の29億46百万円、営業利益は、前期比26.0%減の29億95百万円となりました。なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は、前期比15.0%増の815億40百万円となり、コア営業利益は、前期比32.8%減の27億17百万円となりました。
チルド事業の今期の状況を教えてください。
チルド事業は、日清食品チルドの主力ブランド「行列のできる店のラーメン」を中心に、「まぜ麺の達人」や「有名店シリーズ」などのラーメン群の売上が堅調に推移したため、前期比で増収増益となりました。
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「トミカ」が幅広い年齢層に人気となるなど好調に推移するとともに、中国での販売拡大を背景として、9月には「トミカ」初となる海外ブランドストアを上海に開店しました。昨年7月より玩具販売を開始している「BEYBLADE X」では、各地でアニメ放映が開始となるなど展開が本格化しました。また、4月から関連玩具の販売をスタートさせた「シンカリオン チェンジ ザ ワールド」は7月から香港、9月から台湾でテレビアニメ放送が開始されたこともあり、販売が伸長しました。さらに、「名探偵コナンカードゲーム」シリーズを日本と同時期の5月に香港、韓国、台湾をはじめとした9つの国と地域で販売を開始し人気を集めました。 加えて、生産子会社であるTOMY (Hong Kong) Ltd.では「BEYBLADE X」をはじめとした海外向け輸出が増加したこと等もあり、売上高は36,517百万円(前年同期比24.3%増)、営業利益は1,702百万円(同88.3%増)となりました。
9月には「トミカ」初となる海外ブランドストアをどこに開店しましたか。
9月には「トミカ」初となる海外ブランドストアを上海に開店しました。
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#NTTグループは2023年5月に新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」を発表しました。お客さまと社会のために新たな価値を提供し、事業そのものをサステナブルな社会の実現へとシフトすることで、地球のサステナビリティを支える存在になっていきたいと考えています。そのために、成長分野への投資を拡大し、5年間で成長分野に約8兆円の投資を行うほか、さらに未来のためにキャッシュ創出力を拡大し、2027年度に向けて成長のためのキャッシュを増大することで、EBITDA約4兆円をめざしていきます。 新中期経営戦略の発表にあわせ、新たに財務目標を設定しました。持続的なさらなる成長に向けて、キャッシュ創出力を軸とした取組みを強化することとし、主要指標としてEBITDAを設定のうえ、2027年度に向けて20%増加となる4兆円をめざします。ドライバーとなる成長分野ではEBITDAは40%増加を目標とし、海外営業利益率も2025年度で10%をめざします。既存分野ではEBITDA10%増加に加え、ROIC(投下資本利益率)9%の目標を掲げて取り組んでいきます。 当連結会計年度のEBITDAは、前期比3.9%増加し、3兆4,181億円となりました。これは営業利益の増加等によるものです。海外営業利益率は、前期比1.3ポイント向上し、8.6%となりました。これはNTTデータグループ海外事業の営業利益の増加等によるものです。既存分野ROICは、前期比0.1ポイント低下し、8.1%となりました。
2025年度の海外営業利益率の目標はどれくらいですか。
海外営業利益率は2025年度で10%をめざします。
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キャッシュ・フローの状況 当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローにより649億23百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローにより561億67百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローにより199億48百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ90億34百万円減少し、1,082億79百万円となりました。 当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 当中間連結会計期間における営業活動の結果獲得した資金は、649億23百万円(前年同期は867億29百万円の獲得)となりました。これは主として、税金等調整前中間純利益591億85百万円によるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 当中間連結会計期間における投資活動の結果支出した資金は、561億67百万円(前年同期は648億61百万円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出504億34百万円によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 当中間連結会計期間における財務活動の結果支出した資金は、199億48百万円(前年同期は309億円の支出)となりました。これは主として、長期借入金の返済による支出223億30百万円によるものであります。
投資活動の結果支出した資金は、どれくらいでしたか。
投資活動の結果支出した資金は、561億67百万円(前年同期は648億61百万円の支出)となりました。
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キャッシュ・フローの状況 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前中間純利益が前中間連結会計期間と比較し5,020百万円増加の47,206百万円となったことに加え、国内において売上債権および棚卸資産が減少したこと等により、前中間連結会計期間と比較し19,885百万円の増加となりました。その結果、営業活動によるキャッシュ・フローは41,188百万円となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、前中間連結会計期間と比較し定期預金(期間3か月超)の預入および固定資産の取得による支出が増加したこと等により、支出額が52,740百万円増加しました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは△51,710百万円となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、前中間連結期間と比較し借入金の返済による支出および配当金の支払額が増加したこと等により、支出額が5,010百万円増加しました。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは△16,942百万円となりました。 これらの結果および換算差額により、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物の残高は181,985百万円(前連結会計年度末比15,663百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローはどのように変化しましたか。
財務活動によるキャッシュ・フローは△16,942百万円となりました。
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キャッシュ・フローの状況の分析 当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は82,208百万円となり、前連結会計年度末と比較し52,143百万円増加しました。 当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動の結果得られた資金は71,435百万円(前年同期26,179百万円の収入)となりました。 これは主に、税金等調整前中間純利益20,644百万円に対して、収入の主な内訳は非資金費用である減価償却費10,412百万円及び仕入債務の増加額54,035百万円であり、支出の主な内訳は賞与引当金の減少額2,278百万円、売上債権及び契約資産の増加額16,157百万円、棚卸資産の増加額1,625百万円、法人税等の支払額6,014百万円があったこと等によるものです。
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較しどうなりましたか。
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は82,208百万円となり、前連結会計年度末と比較し52,143百万円増加しました。
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コア営業利益は、前年同期比713億円(74.8%)増益の1,666億円となりました。売上原価は、売上収益が増加したものの、製品構成の変化に伴う原価率改善等により、46億円(2.5%)増加の1,930億円に留まりました。販売費及び一般管理費は、エンハーツに係るアストラゼネカ社とのプロフィット・シェアの増加による費用増等により、532億円(19.2%)増加の3,299億円となりました。研究開発費は、5DXd-ADCsへの研究開発投資の増加等により、前年同期比273億円(16.4%)増加の1,933億円となりました。コア営業利益に係る為替の減益影響は14億円でありました。
研究開発費の増加の一因はどこへの投資によるものでしたか。
研究開発費の増加は、5DXd-ADCsへの研究開発投資の増加等によるものでした。
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ニッケル事業 ニッケル事業についての経営成績は、「(1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。 その結果、当部門の売上高は7,498百万円、前中間連結会計期間比2.6%の減収、営業損失は4,395百万円(前中間連結会計期間営業損失6,147百万円)となりました。 ②ガス事業 ガス事業についての経営成績は、計画どおり安定した操業ではあったものの原燃料価格上昇の影響等もあり、損失計上となりました。 その結果、当部門の売上高は367百万円、前中間連結会計期間比14.7%の減収、営業損失は71百万円(前中間連結会計期間営業損失43百万円)となりました。
ガス事業についての経営成績はどうなりましたか。
ガス事業についての経営成績は、計画どおり安定した操業ではあったものの原燃料価格上昇の影響等もあり、損失計上となりました。
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メディア事業では自社商材を介した送客支援が好調に推移しました。 (3)インターネット金融事業における店頭FX取引では、好調だった前期比で減収となりましたが、取引活性化に向けたスプレッド縮小施策が奏功した影響もあり、高水準を維持しております。CFD取引では、世界情勢を受けたコモディティ価格の動きや、世界的株高をうけ株価指数が好調に推移し取引高は拡大しました。一方、当連結会計年度においてはタイ証券事業での貸倒引当金繰入額約95億円の計上がありました。 (4)暗号資産事業は、暗号資産取引高が堅調に推移したことで黒字となりました。 これらの結果、当連結会計年度における売上高は277,407百万円(前年同期比7.3%増)、営業利益は46,653百万円(同9.8%増)、経常利益は46,565百万円(同1.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は13,373百万円(同5.8%減)となりました。
暗号資産事業は、どのような結果となりましたか。
暗号資産事業は、暗号資産取引高が堅調に推移したことで黒字となりました。
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リーフ・ドリンク関連事業におきましては、記録的猛暑の影響もあり、主力の「お~いお茶」ブランド製品を中心に堅調に推移しました。 当社は現在、40以上の国と地域で「お~いお茶」を販売しています。欧州でのプラスチック製容器入り飲料の規制強化を機に、世界の品質基準に合う「お~いお茶」飲料用原料の開発を進め、欧州のプラスチック製品規制に対応した「お~いお茶 緑茶」(330mlテザードキャップ付き紙パック)を5月に販売開始しました。9月には、世界の品質基準に合わせた「お~いお茶」製品の新たなラインアップとして、同様の品質設計に基づいた新製品「お~いお茶 抹茶入り緑茶」(330mlテザードキャップ付き紙パック)を開発し、欧州エリアを対象に販売を開始しました。世界の品質基準に合わせて開発した原料を用いて、厳しい環境規制がある欧州での現地生産を拡充するとともに、海外事業におけるサプライチェーンの最適化と「お~いお茶」のグローバルブランド化を一層進めてまいります。 また、「お~いお茶 濃い茶」と比較して、ガレート型カテキンを1.27倍含有し「もっと濃い」味わいに仕上げた「お~いお茶 濃い茶 PREMIUM STRONG(プレミアムストロング)」を9月に発売しました。本製品は、コク深い渋みを引き立てるために専用の一番茶ブレンド茶葉を贅沢に使用しており、金色透明の水色と、ただ渋いだけではないコク深いキレのある渋みが特長です。また、機能性関与成分としてBMIが高めの方の体脂肪を減らす「ガレート型カテキン」が340mg(940ml当たり)含まれている機能性表示食品です。 2024年2月に発売35周年を迎えた「お~いお茶」ブランドは、今後も時代と共に変化するお茶の楽しみ方を提案し続け、ブランドが持つ価値を世界に発信してまいります。そして、お茶のスペシャリストとして世界の茶文化とつながり、おいしさと価値を広く伝える「世界のティーカンパニー」を目指し、各国・地域に根差したマーケティングの連携を一層強化してまいります。 この結果、リーフ・ドリンク関連事業の売上高は2,262億47百万円(前年同期比3.3%増)となり、営業利益は122億8百万円(前年同期比20.8%減)となりました。
お~いお茶 濃い茶 PREMIUM STRONG(プレミアムストロング)の特徴は何ですか。
お~いお茶 濃い茶 PREMIUM STRONG(プレミアムストロング)は、コク深い渋みを引き立てるために専用の一番茶ブレンド茶葉を贅沢に使用しており、金色透明の水色と、ただ渋いだけではないコク深いキレのある渋みが特長です。
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営業収益は4,217億48百万円(前年同期比5.4%増)、売上高は4,061億99百万円(前年同期比5.3%増)、セグメント利益は125億25百万円(前年同期比0.9%減)となりました。 なお、部門別売上高は、生鮮食品部門が1,767億86百万円(前年同期比5.9%増)、一般食品部門1,832億96百万円(前年同期比5.6%増)、生活関連用品部門346億52百万円(前年同期比3.3%増)、衣料品部門114億63百万円(前年同期比2.3%減)となりました。
生鮮食品部門の売上高はいくらでしたか。
生鮮食品部門の売上高は、1,767億86百万円でした。
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営業利益は、インダストリー・モビリティ部門での減益はありましたが、インフラ部門、ライフ部門、セミコンダクター・デバイス部門、ビジネス・プラットフォーム部門での増益により、前中間連結会計期間比408億円増加の1,766億円となりました。営業利益率は、売上原価率の改善などにより、前中間連結会計期間比1.3ポイント改善の6.7%となりました。 売上原価率は、為替円安や価格改善の効果などにより、前中間連結会計期間比1.7ポイント改善しました。販売費及び一般管理費は、前中間連結会計期間比353億円増加し、売上高比率は前中間連結会計期間比0.4ポイント悪化しました。その他の損益は、前中間連結会計期間比24億円増加しましたが、売上高比率は前中間連結会計期間並みとなりました。
営業利益率はどのように変化しましたか。
営業利益率は、売上原価率の改善などにより、前中間連結会計期間比1.3ポイント改善の6.7%となりました。
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営業利益は、インダストリー・モビリティ部門での減益はありましたが、インフラ部門、ライフ部門、セミコンダクター・デバイス部門、ビジネス・プラットフォーム部門での増益により、前中間連結会計期間比408億円増加の1,766億円となりました。営業利益率は、売上原価率の改善などにより、前中間連結会計期間比1.3ポイント改善の6.7%となりました。 売上原価率は、為替円安や価格改善の効果などにより、前中間連結会計期間比1.7ポイント改善しました。販売費及び一般管理費は、前中間連結会計期間比353億円増加し、売上高比率は前中間連結会計期間比0.4ポイント悪化しました。その他の損益は、前中間連結会計期間比24億円増加しましたが、売上高比率は前中間連結会計期間並みとなりました。
売上原価率は、どのように変化しましたか。
売上原価率は、為替円安や価格改善の効果などにより、前中間連結会計期間比1.7ポイント改善しました。
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医療
1.事例の概要 ◆本事例では、仙台歯科医師会における障害児(者)への歯科医療提供体制の構築における取組みを報告する。 テーマ 障害児者への歯科医療提供体制の構築 区分 障害児者への歯科医療提供体制の構築 事業名・取組み名等 仙台歯科福祉プラザ・障害者歯科相談医制度の運用 主な取組みの概要は以下の通りである。 【「仙台歯科福祉プラザ」における歯科診療の提供】 ◆仙台歯科医師会では、「仙台歯科福祉プラザ」にて障害児(者)の歯科診療を行っている。障害児(者)は、月曜日から土曜日、歯科治療を受けることができる。同施設は施設設置の費用は行政が負担し、仙台歯科医師会が運営を担っている。この他、仙台歯科医師会は、同施設で、障害児(者)診療の他、在宅訪問診療および休日・夜間救急歯科診療を提供している。 【障害者歯科相談医制度】 ◆仙台歯科医師会では、「仙台歯科福祉プラザ」にて障害児(者)の歯科診療を行うほか、治療に携わる歯科医師を増やすべく、平成14年度に「障害者歯科相談医制度」を創設し、相談医により障害児(者)が自宅近くで歯科診療の相談を受けられる体制を整備した。令和4年2月現在、仙台歯科医師会会員659名中、107名の歯科医師が「相談医」として登録している。 ◆相談医制度は、以下の1つを柱としている。 1.治療の難しい患者の治療は、仙台歯科福祉プラザで行い、相談医がその後のケアを担う。 2.相談医に相談のあった障害児(者)は、必要に応じ、速やかに仙台歯科福祉プラザを紹介してもらう。 3.歯科医師会は、「障害者歯科相談医講習会(基礎編および応用編)」を開催し、相談医の育成、スキルアップを図っている。 ◆新規に相談医になるには、仙台歯科医師会が年1回開催する、「障害者歯科相談医講習会」の基礎編を受講する必要がある。受講した翌年度の4月より相談医として登録し、認定期間は3年の更新制としている。更新には基礎編、応用編、または歯科医師会の開催する講習会で相談医講習会に相当すると周知のあったものの何れかの受講が求められ、受講により再登録される。 ◆相談医として登録されると仙台歯科医師会ホームページに「障害者歯科診療相談窓口設置医療機関」として区域別に掲載される。 ◆2つの講習会はそれぞれ約1時間半程度で、常に最新の情報を身に付けてもらえるように、決まったテキストではなく、スライドを用いて行っている。また講師は毎年、歯科医師会の障害者歯科委員会にて選定される。 ・A講習(基礎編):仙台歯科福祉プラザの歯科治療の概念と、日常的なルーティンとして把握していただきたい基礎的なことを伝えている。仙台歯科福祉プラザの歯科医師が講師を務める。 ・B講習(応用編):外部から医科の先生や、障害者施設の先生等を招いて専門知識を身に付け、障害児(者)歯科治療につなげる。 ◆障害児(者)の中には、治療について相談しにくい方もいるため、気軽に相談できるよう、仙台歯科福祉プラザも、相談医自体も、その相談窓口となるべく、スムーズな連携を心掛けている。 ◆相談医の周知は、市政だよりも通じて行われている。仙台歯科福祉プラザ自体が設立当初より「仙台市障害者歯科診療所」の後継施設という位置づけから、施設情報や受付時間等が市政だよりに常時掲載されている。 ◆他機関との連携については、主に、発達相談支援センター(アーチル)との連携、東北大学からの麻酔科医を派遣してもらう、摂食嚥下の取組を進めている機関に食育支援等の講師を派遣する、支援学校からの保護者向けの講習会に講師を派遣する等があげられる。大学から障害者歯科医を派遣してもらうことはないが、日帰りでの全身麻酔が難しい方の診療を、大学でお願いするなど患者の紹介等での連携を行っている。 【協力医制度】 ◆相談医の中から希望者を募り、仙台歯科福祉プラザでの診療に協力してもらう「協力医」という制度を設けている。障害児(者)の治療は、どうしても人も時間もかかりがちであるが、予算の都合上、歯科福祉プラザで雇用できる常勤の歯科医師の人数には限りがあるため、専門知識を持った歯科医師に手伝っていただく体制としている。協力内容は、常勤医のサポートであるが、歯科衛生士が行うことよりも踏み込んだもので、そこで障害児(者)への接し方を学んでいただくなど、歯科医師自身の研鑽にも繋がっている。 ◆協力医になるには、相談医の中から希望者を募りお願いしている。なお、協力医として診療を行った場合は、半日または1日単位で協力金が支払われる。 ◆近年は新型コロナウイルスの影響で協力医による診療を控えているが、以前は15~16名が交代で活動していた。協力医について、制度としてはローテーションでプラザに来ていただける体制を構築しているが、実際には、自身の歯科診療所での診療もあるため、曜日・時間で固定となるケースが多い。
「協力医」という制度を設けているのはなぜか。
障害児(者)の治療は、どうしても人も時間もかかりがちであるが、予算の都合上、歯科福祉プラザで雇用できる常勤の歯科医師の人数には限りがあるため、専門知識を持った歯科医師に手伝っていただく体制としている。協力内容は、常勤医のサポートであるが、歯科衛生士が行うことよりも踏み込んだもので、そこで障害児(者)への接し方を学んでいただくなど、歯科医師自身の研鑽にも繋がっている。
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医療
1.事例の概要 ◆本事例では、仙台歯科医師会における障害児(者)への歯科医療提供体制の構築における取組みを報告する。 テーマ 障害児者への歯科医療提供体制の構築 区分 障害児者への歯科医療提供体制の構築 事業名・取組み名等 仙台歯科福祉プラザ・障害者歯科相談医制度の運用 主な取組みの概要は以下の通りである。 【「仙台歯科福祉プラザ」における歯科診療の提供】 ◆仙台歯科医師会では、「仙台歯科福祉プラザ」にて障害児(者)の歯科診療を行っている。障害児(者)は、月曜日から土曜日、歯科治療を受けることができる。同施設は施設設置の費用は行政が負担し、仙台歯科医師会が運営を担っている。この他、仙台歯科医師会は、同施設で、障害児(者)診療の他、在宅訪問診療および休日・夜間救急歯科診療を提供している。 【障害者歯科相談医制度】 ◆仙台歯科医師会では、「仙台歯科福祉プラザ」にて障害児(者)の歯科診療を行うほか、治療に携わる歯科医師を増やすべく、平成14年度に「障害者歯科相談医制度」を創設し、相談医により障害児(者)が自宅近くで歯科診療の相談を受けられる体制を整備した。令和4年2月現在、仙台歯科医師会会員659名中、107名の歯科医師が「相談医」として登録している。 ◆相談医制度は、以下の1つを柱としている。 1.治療の難しい患者の治療は、仙台歯科福祉プラザで行い、相談医がその後のケアを担う。 2.相談医に相談のあった障害児(者)は、必要に応じ、速やかに仙台歯科福祉プラザを紹介してもらう。 3.歯科医師会は、「障害者歯科相談医講習会(基礎編および応用編)」を開催し、相談医の育成、スキルアップを図っている。 ◆新規に相談医になるには、仙台歯科医師会が年1回開催する、「障害者歯科相談医講習会」の基礎編を受講する必要がある。受講した翌年度の4月より相談医として登録し、認定期間は3年の更新制としている。更新には基礎編、応用編、または歯科医師会の開催する講習会で相談医講習会に相当すると周知のあったものの何れかの受講が求められ、受講により再登録される。 ◆相談医として登録されると仙台歯科医師会ホームページに「障害者歯科診療相談窓口設置医療機関」として区域別に掲載される。 ◆2つの講習会はそれぞれ約1時間半程度で、常に最新の情報を身に付けてもらえるように、決まったテキストではなく、スライドを用いて行っている。また講師は毎年、歯科医師会の障害者歯科委員会にて選定される。 ・A講習(基礎編):仙台歯科福祉プラザの歯科治療の概念と、日常的なルーティンとして把握していただきたい基礎的なことを伝えている。仙台歯科福祉プラザの歯科医師が講師を務める。 ・B講習(応用編):外部から医科の先生や、障害者施設の先生等を招いて専門知識を身に付け、障害児(者)歯科治療につなげる。 ◆障害児(者)の中には、治療について相談しにくい方もいるため、気軽に相談できるよう、仙台歯科福祉プラザも、相談医自体も、その相談窓口となるべく、スムーズな連携を心掛けている。 ◆相談医の周知は、市政だよりも通じて行われている。仙台歯科福祉プラザ自体が設立当初より「仙台市障害者歯科診療所」の後継施設という位置づけから、施設情報や受付時間等が市政だよりに常時掲載されている。 ◆他機関との連携については、主に、発達相談支援センター(アーチル)との連携、東北大学からの麻酔科医を派遣してもらう、摂食嚥下の取組を進めている機関に食育支援等の講師を派遣する、支援学校からの保護者向けの講習会に講師を派遣する等があげられる。大学から障害者歯科医を派遣してもらうことはないが、日帰りでの全身麻酔が難しい方の診療を、大学でお願いするなど患者の紹介等での連携を行っている。 【協力医制度】 ◆相談医の中から希望者を募り、仙台歯科福祉プラザでの診療に協力してもらう「協力医」という制度を設けている。障害児(者)の治療は、どうしても人も時間もかかりがちであるが、予算の都合上、歯科福祉プラザで雇用できる常勤の歯科医師の人数には限りがあるため、専門知識を持った歯科医師に手伝っていただく体制としている。協力内容は、常勤医のサポートであるが、歯科衛生士が行うことよりも踏み込んだもので、そこで障害児(者)への接し方を学んでいただくなど、歯科医師自身の研鑽にも繋がっている。 ◆協力医になるには、相談医の中から希望者を募りお願いしている。なお、協力医として診療を行った場合は、半日または1日単位で協力金が支払われる。 ◆近年は新型コロナウイルスの影響で協力医による診療を控えているが、以前は15~16名が交代で活動していた。協力医について、制度としてはローテーションでプラザに来ていただける体制を構築しているが、実際には、自身の歯科診療所での診療もあるため、曜日・時間で固定となるケースが多い。
協力医はどうやって募集しているのか。
協力医になるには、相談医の中から希望者を募りお願いしている。なお、協力医として診療を行った場合は、半日または1日単位で協力金が支払われる。
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医療
2.体制づくりのプロセス 【歯科福祉プラザについて】 ◆歯科福祉プラザの設立に当たっては、仙台歯科医師会の要請に仙台市が応える形で、施設設立が実現、平成6年に運営を開始した。設立時には、障害児(者)が使いやすい診療台を導入した。 【行政との連携について】 ◆障害者歯科診療の取組については、仙台市と医師会、歯科医師会、薬剤師会、関連医療関係者が集う地域医療対策協議会で、障害児(者)に対する医療提供について、歯科医療に関する内容も含め常に話し合いを行っている。 ◆現状、市の歯科保健計画においては、歯と口の健康づくりについて、障害者を含めた内容まではまだ踏み込めていない。現在、仙台市長、副市長、関連局の局長等との対話の機会をもつが、その中で障害者の健診についても確実に行っていけるよう行政への協力を求めている。 【相談医制度の創設について】 ◆相談医制度導入当初に掲げた趣旨には、 「障害者歯科医療の本来の姿を鑑みるとき、地域の歯科医院がかかりつけ歯科医の役割を担い、障害者歯科専門医や高次医療機関との連携を取りながら、可能な範囲の中でケアやキュアを行うことが望ましい」 「会員が障害児(者)歯科診療に理解を示し、適切な導入から審査、診断、さらには口腔機能の確保となる情報を提供しあえる人材を育成すべく障害者歯科相談医制度に取り組むことにした」 と謳われている。 ◆相談医制度自体は、仙台歯科医師会独自の企画である。仙台歯科福祉プラザ設立当初、公設民営の立場として、医療弱者の方々に、きちんと医療の手を伸ばしていこうという考えのもと、開始された。 3.取組みの成果と推進ポイント ◆障害者歯科診療のニーズの程度は把握していないが、現在仙台歯科福祉プラザでの診療回数が年間延べ約6000回であることを踏まえると、ニーズは確実にあると思われる。ただし潜在的なニーズが掘り起こせていない可能性はあると感じている。 ◆平成14年に相談医の制度を創設し、20年間事業が継続、相談医数も発足当初の80名から現在は約107名に増えている。 ◆「歯科医師会の全会員による相談医の研修受講が望ましい」ということが当初の理念としてあった。市内全域に相談医がいるものの、地域により偏りがあり、自院の事情もあるであろうが障害児(者)の歯科治療に繁華街での開業の先生は特に少ないという印象がある。 ◆コロナ前は障害児(者)の歯科診療に関する障害児(者)懇談会を開催しており、仙台歯科医師会の先生約30名が参加していた。そこで情報共有を行うことで、自院の障害児(者)診療の疑問の解消につなげたり、認定医からアドバイスを受ける先生もいた。 4.PDCAの推進方法 (診療実績の把握) ◆仙台歯科福祉プラザでは、常勤歯科医師3名と、歯科衛生士5名が、1日平均20名強、年間約6,000回の延べ診療回数をこなしている。設定している診療回数の目標値には達成していないが、現状はコロナ対策で協力医の協力を控えていることもあり、診療を回すだけで手一杯の状態である。できればケアの部分は相談医に任せたいが、コロナ禍や、仙台歯科福祉プラザで治療を受けた患者からの仙台歯科福祉プラザで診療を継続したいという要望もあり、相談医への連携がうまくできていない状況である。 ◆コロナ禍においては、ここ2年ほど、1日平均延べ 3名ほど受診が減っている。今は、最初の緊急事態宣言時よりは持ち直しており、感染者増加の影響は見えていない。ただ、健診となると、親御さんが心配し、時期を延ばせないかという声が出ていると聞く。また施設など、集団生活している方々の健診も難しいのが現状である。 (相談件数や患者数統計) ◆相談医による相談件数の統計は取ってはいない。相談医のところに障害児(者)の患者が来たとしても、相談医だから相談目的で来たのか、地域の歯科医院だという理由で来院したのか把握が難しい。また、患者について、障害の種類や、障害のレベルなどでの分類・統計は行っていない。障害の区分についても、どういった区分が一番正しいのかが分からない。 (新規相談医数) ◆仙台歯科医師会への新規入会の歯科医師に対し、役員が入会面接を行う際、歯科医師会の話と共に仙台歯科福祉プラザや相談医制度の説明も行っている。在宅訪問歯科診療、休日・夜間救急歯科診療、障害児(者)診療への理解、及び協力の意思確認もだいたいできている。その結果、毎年10名ほどの新規入会が実現している。 (統計等数値を用いた施策推進) ◆歯科医師会は臨床歯科医師を中心に構成されており、マンパワーの面からも、統計的な視点からの施策推進や評価をしにくい状況にある。 ◆高齢者医療では東北大との連携でそうした統計的な面が進んでいると聞いているので、歯科医療でも、同様に大学との連携が進めば、統計的な施策の分析・推進が進むだろうと考えられる。歯科医師会から東北大学へデータ提供等を行った実績はある。
相談医による相談件数の統計は取ってない理由はなぜか。
相談医のところに障害児(者)の患者が来たとしても、相談医だから相談目的で来たのか、地域の歯科医院だという理由で来院したのか把握が難しい。また、患者について、障害の種類や、障害のレベルなどでの分類・統計は行っていない。障害の区分についても、どういった区分が一番正しいのかが分からない。
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医療
2.体制づくりのプロセス 【歯科福祉プラザについて】 ◆歯科福祉プラザの設立に当たっては、仙台歯科医師会の要請に仙台市が応える形で、施設設立が実現、平成6年に運営を開始した。設立時には、障害児(者)が使いやすい診療台を導入した。 【行政との連携について】 ◆障害者歯科診療の取組については、仙台市と医師会、歯科医師会、薬剤師会、関連医療関係者が集う地域医療対策協議会で、障害児(者)に対する医療提供について、歯科医療に関する内容も含め常に話し合いを行っている。 ◆現状、市の歯科保健計画においては、歯と口の健康づくりについて、障害者を含めた内容まではまだ踏み込めていない。現在、仙台市長、副市長、関連局の局長等との対話の機会をもつが、その中で障害者の健診についても確実に行っていけるよう行政への協力を求めている。 【相談医制度の創設について】 ◆相談医制度導入当初に掲げた趣旨には、 「障害者歯科医療の本来の姿を鑑みるとき、地域の歯科医院がかかりつけ歯科医の役割を担い、障害者歯科専門医や高次医療機関との連携を取りながら、可能な範囲の中でケアやキュアを行うことが望ましい」 「会員が障害児(者)歯科診療に理解を示し、適切な導入から審査、診断、さらには口腔機能の確保となる情報を提供しあえる人材を育成すべく障害者歯科相談医制度に取り組むことにした」 と謳われている。 ◆相談医制度自体は、仙台歯科医師会独自の企画である。仙台歯科福祉プラザ設立当初、公設民営の立場として、医療弱者の方々に、きちんと医療の手を伸ばしていこうという考えのもと、開始された。 3.取組みの成果と推進ポイント ◆障害者歯科診療のニーズの程度は把握していないが、現在仙台歯科福祉プラザでの診療回数が年間延べ約6000回であることを踏まえると、ニーズは確実にあると思われる。ただし潜在的なニーズが掘り起こせていない可能性はあると感じている。 ◆平成14年に相談医の制度を創設し、20年間事業が継続、相談医数も発足当初の80名から現在は約107名に増えている。 ◆「歯科医師会の全会員による相談医の研修受講が望ましい」ということが当初の理念としてあった。市内全域に相談医がいるものの、地域により偏りがあり、自院の事情もあるであろうが障害児(者)の歯科治療に繁華街での開業の先生は特に少ないという印象がある。 ◆コロナ前は障害児(者)の歯科診療に関する障害児(者)懇談会を開催しており、仙台歯科医師会の先生約30名が参加していた。そこで情報共有を行うことで、自院の障害児(者)診療の疑問の解消につなげたり、認定医からアドバイスを受ける先生もいた。 4.PDCAの推進方法 (診療実績の把握) ◆仙台歯科福祉プラザでは、常勤歯科医師3名と、歯科衛生士5名が、1日平均20名強、年間約6,000回の延べ診療回数をこなしている。設定している診療回数の目標値には達成していないが、現状はコロナ対策で協力医の協力を控えていることもあり、診療を回すだけで手一杯の状態である。できればケアの部分は相談医に任せたいが、コロナ禍や、仙台歯科福祉プラザで治療を受けた患者からの仙台歯科福祉プラザで診療を継続したいという要望もあり、相談医への連携がうまくできていない状況である。 ◆コロナ禍においては、ここ2年ほど、1日平均延べ 3名ほど受診が減っている。今は、最初の緊急事態宣言時よりは持ち直しており、感染者増加の影響は見えていない。ただ、健診となると、親御さんが心配し、時期を延ばせないかという声が出ていると聞く。また施設など、集団生活している方々の健診も難しいのが現状である。 (相談件数や患者数統計) ◆相談医による相談件数の統計は取ってはいない。相談医のところに障害児(者)の患者が来たとしても、相談医だから相談目的で来たのか、地域の歯科医院だという理由で来院したのか把握が難しい。また、患者について、障害の種類や、障害のレベルなどでの分類・統計は行っていない。障害の区分についても、どういった区分が一番正しいのかが分からない。 (新規相談医数) ◆仙台歯科医師会への新規入会の歯科医師に対し、役員が入会面接を行う際、歯科医師会の話と共に仙台歯科福祉プラザや相談医制度の説明も行っている。在宅訪問歯科診療、休日・夜間救急歯科診療、障害児(者)診療への理解、及び協力の意思確認もだいたいできている。その結果、毎年10名ほどの新規入会が実現している。 (統計等数値を用いた施策推進) ◆歯科医師会は臨床歯科医師を中心に構成されており、マンパワーの面からも、統計的な視点からの施策推進や評価をしにくい状況にある。 ◆高齢者医療では東北大との連携でそうした統計的な面が進んでいると聞いているので、歯科医療でも、同様に大学との連携が進めば、統計的な施策の分析・推進が進むだろうと考えられる。歯科医師会から東北大学へデータ提供等を行った実績はある。
仙台歯科福祉プラザはコロナ禍の影響を受けて受診数は減っているのか。
コロナ禍においては、ここ2年ほど、1日平均延べ 3名ほど受診が減っている。
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医療
スティーヴンス・ジョンソン症候群 皮膚粘膜眼症候群 ここでご紹介している副作用は、まれなもので、必ず起こるものではありません。ただ、副作用は気づかずに放置していると重くなり健康に影響を及ぼすことがあるので、早めに「気づいて」対処することが大切です。そこで、より安全な治療を行う上でも、本マニュアルを参考に、患者さんご自身、またはご家族に副作用の黄色信号として「副作用の初期症状」があることを知っていただき、気づいたら医師あるいは薬剤師に連絡してください。 重篤な皮ふ症状などをともなう「スティーヴンス・ジョンソン症候群」は、その多くが医薬品によるものと考えられています。 抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬、抗けいれん薬などでみられ、また総合感冒薬のような市販の医薬品でもみられることがあるので、何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに、ただちに医師・薬剤師に連絡してください。 「高熱(38℃以上)」、「目の充血」、「めやに」、「まぶたの腫れ」、「目が開けづらい」、「くちびるや陰部のただれ」、「 排尿・排便時の痛み」、「のどの痛み」、「皮ふの広い範囲が赤くなる」がみられ、その症状が持続したり、急激に悪くなったりする 1.スティーヴンス・ジョンソン症候群とは? スティーヴンス・ジョンソン症候群とは、高熱(38℃以上)を伴って、発疹・発赤、やけどのような水ぶくれなどの激しい症状が、比較的短期間に全身の皮ふ、口、目の粘膜にあらわれる病態です。 その多くは医薬品が原因と考えられていますが、マイコプラズマや一部のウイルスの感染にともない発症することも知られています。 スティーヴンス・ジョンソン症候群の発生頻度は、人口 100 万人当たり年間 1 人、多いときで人口 100 万人当たり年間 6 人と報告されており、原因と考えられる医薬品は、主に抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬、抗けいれん薬など広範囲にわたります。 発症メカニズムについては、医薬品などにより生じた免疫・アレルギー反応によるものと考えられていますが、さまざまな説が唱えられており、いまだ統一された見解は得られていません。 2.早期発見と早期対応のポイント 「高熱(38℃以上)」、「目の充血」、「めやに」、「まぶたの腫れ」、「目が開けづらい」、「くちびるや陰部のただれ」、「排尿・排便時の痛み」、「のどの痛み」、「皮ふの広い範囲が赤くなる」がみられ、その症状が持続したり、急激に悪くなったりするような場合で、医薬品を服用している場合には、放置せずに、ただちに医師・薬剤師に連絡してください。 原因と考えられる医薬品の服用後2週間以内に発症することが多く、数日以内あるいは1ヶ月以上経ってから起こることもあります。 また、目の変化は、皮ふなどの粘膜の変化とほぼ同時に、あるいは皮ふの変化より半日もしくは1日程度、先にあらわれ、両目に急性結膜炎(結膜が炎症を起こし、充血・目やに・涙・かゆみ・はれなどが起こる病態)を生じることが知られています。 なお、医師・薬剤師に連絡する際には、服用した医薬品の種類、服用からどのくらいたっているのかなどを伝えてください。
スティーヴンス・ジョンソン症候群の原因はなんですか。
原因と考えられる医薬品は、主に抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬、抗けいれん薬など広範囲にわたります。発症メカニズムについては、医薬品などにより生じた免疫・アレルギー反応によるものと考えられていますが、さまざまな説が唱えられており、いまだ統一された見解は得られていません。
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医療
医療施設に従事する人口10万対医師数は262.1人で、前回(256.6人)に比べ5.5人増加している。これを都道府県(従業地)別にみると、徳島県が335.7人と最も多く、次いで高知県335.2人、京都府334.3人となっており、埼玉県が180.2人と最も少なく、次いで、茨城県202.0人、千葉県209.0人となっている 主たる診療科が「13小児科」の医師数(15歳未満人口10万対)を都道府県(従業地)別にみると、鳥取県が184.8人と最も多く、山口県が91.2人と最も少ない。また、専門性資格の「2小児科専門医」は、鳥取県が148.5人と最も多く、千葉県が66.1人と最も少ない。
2小児科専門医が最も多い地域はどこですか。
2小児科専門医が最も多い地域は鳥取県です。
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医療
前立腺がん 前立腺の細胞が何らかの原因で異常に増殖することにより起こる病気で、悪性腫瘍の1つです。 多くの場合比較的ゆっくり進行し、早期に発見して適切な治療を行えば、治癒が望めます。 前立腺がんは、進行すると精のうや膀胱、直腸など周囲の組織に 浸潤 しんじゅん することがあります。 また、リンパ節や骨に転移することがあり、肺、肝臓、脳などに遠隔転移することもあります。 精巣腫瘍 精巣にできる腫瘍の総称で、そのほとんどが悪性腫瘍です。 20−30歳代に発病のピークがあり、約10万に1-2人程度が発病するとされる比較的まれな病気です。 無痛性陰嚢腫大(痛みがない精巣の腫大)が最も多く見られる症状で、進行が速いので、かなり進んだ状態で発見されることもあります。 精巣腫瘍の診断には超音波検査やCT検査、MRI検査、血液検査 (腫瘍マーカー)などで行われ、手術で精巣を摘出します。 子宮がん 女性の子宮に発生する悪性腫瘍のことです。主に「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2種類に分かれます。子宮頸がんは、特に20〜30歳代の若い女性に多く見られ、年間約8000〜9000人が発症します。子宮体がんは、年間約7000人が発症し、不正出血などの症状が現れます。いずれも早期発見が重要で、早期に見つかれば治療が可能です。 卵巣がん 子宮の左右にある卵巣から発生するがんであり、50歳代後半が発症年齢の中央値です。初期の段階では自覚症状がないこともありますが、頻尿や腰痛、貧血等の原因になることもあります。卵巣がんの原因は明確には分かっていません。 悪性黒色腫 メラノーマ(悪性黒色腫)は皮膚がんの一種です。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する、メラノサイトという皮膚の細胞が悪性化してできる腫瘍しゅようです。 急性骨髄性白血病 血液の中にある赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血ぞうけつ幹かん細胞さいぼうからつくられます。 急性骨髄性白血病は、骨髄芽球(白血球になる前の未熟な細胞)に異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が主に骨髄で無制限に増える病気です。
子宮がんにはどのような種類がありますか。
子宮がんは、主に「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2種類に分かれます。
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医療
急性リンパ性白血病 急性リンパ性白血病とは、リンパ球系の細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失い、骨髄や末梢血管に腫瘍細胞認められる疾患で、白血病の一種である。 慢性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病とは、造血幹細胞の遺伝子が後天的に変異して、造血細胞が分化・成熟能を保ったまま自律的な増殖をし、血液において白血球や時に血小板が増加する血液腫瘍である。 慢性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL)は、血液がんの一種で、骨髄やリンパ節の中で異常なB細胞がゆっくりと増殖する病気です。 約半数の人は健康診断などの際、症状のない初期の段階で発見されます。 慢性リンパ性白血病は、成熟した B細胞 ががん化(悪性化)し、無秩序に増えてしまう病気です(成熟 T細胞 や NK細胞 によるものもあります)。 慢性リンパ性白血病は、白血病細胞が主に 骨髄 で増殖するものを指します。 悪性リンパ腫 悪性リンパ腫は、血液のがんで、リンパ系組織から発生する悪性腫瘍である。 リンパ系組織は全身を巡っているため、肉腫及び癌腫の癌とは異なり、外科手術による切除は行わず、主に放射線療法および化学療法を適応する。リンパ腫には「良性」はないため、必ず「悪性」ということになる。 多発性骨髄腫 形質細胞ががん化して骨髄内で異常増殖する血液のがんです。主な症状には、貧血、骨痛、高カルシウム血症、腎不全などがあり、診断は血液検査や骨髄検査によって行われます。治療法には、抗がん剤や造血幹細胞移植が含まれます。 骨肉腫 骨に発生する悪性腫瘍の一つで、非常に稀な希少がんです。 主に10〜20代の若者に多く見られ、特に肩や膝の周囲に発生することが多いです。初期症状としては、痛みが現れることがありますが、成長痛と間違えられることもあります。
良性のリンパ腫はありますか。
リンパ腫には「良性」はないため、必ず「悪性」ということになります。
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医療
急性リンパ性白血病 急性リンパ性白血病とは、リンパ球系の細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失い、骨髄や末梢血管に腫瘍細胞認められる疾患で、白血病の一種である。 慢性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病とは、造血幹細胞の遺伝子が後天的に変異して、造血細胞が分化・成熟能を保ったまま自律的な増殖をし、血液において白血球や時に血小板が増加する血液腫瘍である。 慢性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL)は、血液がんの一種で、骨髄やリンパ節の中で異常なB細胞がゆっくりと増殖する病気です。 約半数の人は健康診断などの際、症状のない初期の段階で発見されます。 慢性リンパ性白血病は、成熟した B細胞 ががん化(悪性化)し、無秩序に増えてしまう病気です(成熟 T細胞 や NK細胞 によるものもあります)。 慢性リンパ性白血病は、白血病細胞が主に 骨髄 で増殖するものを指します。 悪性リンパ腫 悪性リンパ腫は、血液のがんで、リンパ系組織から発生する悪性腫瘍である。 リンパ系組織は全身を巡っているため、肉腫及び癌腫の癌とは異なり、外科手術による切除は行わず、主に放射線療法および化学療法を適応する。リンパ腫には「良性」はないため、必ず「悪性」ということになる。 多発性骨髄腫 形質細胞ががん化して骨髄内で異常増殖する血液のがんです。主な症状には、貧血、骨痛、高カルシウム血症、腎不全などがあり、診断は血液検査や骨髄検査によって行われます。治療法には、抗がん剤や造血幹細胞移植が含まれます。 骨肉腫 骨に発生する悪性腫瘍の一つで、非常に稀な希少がんです。 主に10〜20代の若者に多く見られ、特に肩や膝の周囲に発生することが多いです。初期症状としては、痛みが現れることがありますが、成長痛と間違えられることもあります。
骨肉腫の初期症状はどのようなものがありますか。
骨肉腫の初期症状としては、痛みが現れることがありますが、成長痛と間違えられることもあります。
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医療
再生医療については、平成26年9月に、世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われるなど、着実に成果を上げていますが、再生医療は、これまで有効な治療法のなかった疾患の治療ができるようになるなど、国民の期待が高い一方、新しい医療であることから、安全性を確保しつつ迅速に提供する必要があります。 このため、平成26年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と併せて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」を施行し、再生医療等の安全性の確保に関する手続きや細胞培養加工の外部委託のルール等を定めました。 また、関係省庁と連携し、基礎研究から臨床段階まで切れ目なく一貫した研究開発助成を行い、臨床研究やiPS細胞を用いた創薬研究に対する支援など、再生医療の実用化を推進する取組みを実施しています。
平成26年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と併せて施行された法律は何ですか。
平成26年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と併せて施行された法律は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」です。
JCRRAG_010028
医療
在宅医療の状況 調査日に在宅医療を受けた推計外来患者数は239.0千人であり、これを施設の種類別にみると、「病院」21.8千人、「一般診療所」121.5千人、「歯科診療所」95.7千人となっている。 在宅医療の種類別にみると、総数では「往診」40.4千人、「訪問診療」166.3千人、「医師・歯科医師以外の訪問」32.4千人となっている。 年次推移をみると、在宅医療を受けた推計外来患者数は、「往診」「訪問診療」「医師・歯科医師以外の訪問」のいずれでも平成8年以降増加傾向となっている。
在宅医療を受けた推計外来患者数は、何年以降増加傾向となっていますか。
在宅医療を受けた推計外来患者数は、平成8年以降増加傾向となっています。
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医療
退院患者の平均在院日数等 (1) 施設の種類・年齢階級別 令和5年9月中の全国の退院患者について、在院日数の平均である平均在院日数を施設の種類別にみると、「病院」29.3日、「一般診療所」14.2日となっている。 年齢階級別にみると、「65歳以上」が最も長くなっている
平均在院日数が、年齢階級別にみて最も長くなっている年齢層はいくつですか。
平均在院日数が、年齢階級別にみて最も長くなっている年齢層は「65歳以上」です。
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医療
風邪が点滴では絶対に治らない理由  私がこれまで、外来に風邪でやってきた患者さんからお願いされたことで最も多いのが、「点滴していただけませんか?」というものです。それに対して、「点滴しても意味がないので、やめておきましょう」とお答えしたことは、数え切れないほどあります。  私以外にも大多数の医師が同じ経験をしていると思います。それでもいまだに、「風邪をひいたときは点滴をしてもらうと楽になる。早く風邪が治る」と誤解している人は多くいます。点滴をしても風邪は治りません。今回は、その理由を簡単に説明しましょう。  ◇点滴の中身は何なのか?  点滴する液のことを、正確には「輸液製剤」と呼びます。輸液製剤にはたくさんの種類がありますが、仮に風邪で点滴をしてほしいという方に投与するなら、選ぶのは「細胞外液補充液」と呼ばれるタイプです。  血液と浸透圧がほぼ等しい製剤で、血管内に注入することで効果的に水分を補うのが目的です。中でもよく用いる「乳酸リンゲル液」を一例として挙げてみます。この輸液製剤の中身は、水に以下の電解質が溶けたものです。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  よってこれを、「電解質輸液」と総称することもあります。要するに、「水に電解質イオンが溶けているだけの液体」です。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  ちなみに、ポカリスエットの成分も見てみましょう。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  酢酸イオン  マグネシウムイオン  ここに味を調整する甘味料などが含まれているだけです。内容はほとんど同じですね(含まれている電解質の種類はポカリスエットの方が多いです)。つまり、ポカリスエットで風邪が治らないのと同じように、点滴で風邪は治りません。入っているものに大差がないからです。  ◇点滴の目的とは?  では、風邪をひいた時に点滴は全く必要ないのでしょうか?  もちろん、そんなことはありません。「風邪の時に点滴をしてもらって実際に楽になった経験がある」という方もいるでしょう。この時の点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。  もう一度、輸液製剤とポカリスエットの違いを考えてみます。これらは、成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。例えば、乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lですが、ポカリスエットは21mEq/L しかありません。なぜだと思いますか?  ナトリウムイオンが131 mEq/Lもあると、しょっぱくて飲むのが大変だからです。つまり、「口から飲む製剤は『味が許容できる』という条件を満たす必要があるが、点滴ではその必要がない」ということがポイントです。  風邪をひいた時に、水分が十分に取れずに体が脱水状態になり、水分が足りなくなっていることがあります。この時に、点滴で血液と同じ浸透圧の水分を血管から注入すれば、水分を体内に素早く補うことができます。逆に言えば、脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。  もしこの時に点滴をしても、水分が過剰になるだけで、何のメリットもありません。むしろ、血管に針を刺して無理やり水分を注入するという行為のリスクの方が大きくなります。  ◇風邪をひいた時の水分補給  ここまで述べてきたように、風邪は点滴では治りません。水分補給ができていれば、点滴は全く不要です。ただし、喉が痛くて水分も摂れない、水分を飲んでも嘔吐(おうと)してしまう、という時は点滴が必要になります。  この時こそ、「口から水分が摂れない時」だからです。もちろんこういうケースでは、「点滴をしてほしい」と頼まなくても医師が必要性に応じて点滴をしてくれますので、心配は要りません。  一方、水を飲める時は、なるべくスポーツドリンクや、OS-1のような経口補水液を利用し、脱水にならないよう注意しながら療養するようにしましょう。そもそも風邪を治す特効薬は存在しません。風邪薬は、風邪の症状を抑えるだけの効果しかありません。大切なのは、十分に療養すること。それだけです。まして点滴だけを目的に病院に行くのは、体力を奪われるだけで全くもってナンセンスですよ。
点滴する液のことを、正確には何と呼びますか。
点滴する液のことを、正確には「輸液製剤」と呼びます。
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医療
風邪が点滴では絶対に治らない理由  私がこれまで、外来に風邪でやってきた患者さんからお願いされたことで最も多いのが、「点滴していただけませんか?」というものです。それに対して、「点滴しても意味がないので、やめておきましょう」とお答えしたことは、数え切れないほどあります。  私以外にも大多数の医師が同じ経験をしていると思います。それでもいまだに、「風邪をひいたときは点滴をしてもらうと楽になる。早く風邪が治る」と誤解している人は多くいます。点滴をしても風邪は治りません。今回は、その理由を簡単に説明しましょう。  ◇点滴の中身は何なのか?  点滴する液のことを、正確には「輸液製剤」と呼びます。輸液製剤にはたくさんの種類がありますが、仮に風邪で点滴をしてほしいという方に投与するなら、選ぶのは「細胞外液補充液」と呼ばれるタイプです。  血液と浸透圧がほぼ等しい製剤で、血管内に注入することで効果的に水分を補うのが目的です。中でもよく用いる「乳酸リンゲル液」を一例として挙げてみます。この輸液製剤の中身は、水に以下の電解質が溶けたものです。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  よってこれを、「電解質輸液」と総称することもあります。要するに、「水に電解質イオンが溶けているだけの液体」です。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  ちなみに、ポカリスエットの成分も見てみましょう。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  酢酸イオン  マグネシウムイオン  ここに味を調整する甘味料などが含まれているだけです。内容はほとんど同じですね(含まれている電解質の種類はポカリスエットの方が多いです)。つまり、ポカリスエットで風邪が治らないのと同じように、点滴で風邪は治りません。入っているものに大差がないからです。  ◇点滴の目的とは?  では、風邪をひいた時に点滴は全く必要ないのでしょうか?  もちろん、そんなことはありません。「風邪の時に点滴をしてもらって実際に楽になった経験がある」という方もいるでしょう。この時の点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。  もう一度、輸液製剤とポカリスエットの違いを考えてみます。これらは、成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。例えば、乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lですが、ポカリスエットは21mEq/L しかありません。なぜだと思いますか?  ナトリウムイオンが131 mEq/Lもあると、しょっぱくて飲むのが大変だからです。つまり、「口から飲む製剤は『味が許容できる』という条件を満たす必要があるが、点滴ではその必要がない」ということがポイントです。  風邪をひいた時に、水分が十分に取れずに体が脱水状態になり、水分が足りなくなっていることがあります。この時に、点滴で血液と同じ浸透圧の水分を血管から注入すれば、水分を体内に素早く補うことができます。逆に言えば、脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。  もしこの時に点滴をしても、水分が過剰になるだけで、何のメリットもありません。むしろ、血管に針を刺して無理やり水分を注入するという行為のリスクの方が大きくなります。  ◇風邪をひいた時の水分補給  ここまで述べてきたように、風邪は点滴では治りません。水分補給ができていれば、点滴は全く不要です。ただし、喉が痛くて水分も摂れない、水分を飲んでも嘔吐(おうと)してしまう、という時は点滴が必要になります。  この時こそ、「口から水分が摂れない時」だからです。もちろんこういうケースでは、「点滴をしてほしい」と頼まなくても医師が必要性に応じて点滴をしてくれますので、心配は要りません。  一方、水を飲める時は、なるべくスポーツドリンクや、OS-1のような経口補水液を利用し、脱水にならないよう注意しながら療養するようにしましょう。そもそも風邪を治す特効薬は存在しません。風邪薬は、風邪の症状を抑えるだけの効果しかありません。大切なのは、十分に療養すること。それだけです。まして点滴だけを目的に病院に行くのは、体力を奪われるだけで全くもってナンセンスですよ。
乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度はどのくらいか。
乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lです。
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医療
風邪が点滴では絶対に治らない理由  私がこれまで、外来に風邪でやってきた患者さんからお願いされたことで最も多いのが、「点滴していただけませんか?」というものです。それに対して、「点滴しても意味がないので、やめておきましょう」とお答えしたことは、数え切れないほどあります。  私以外にも大多数の医師が同じ経験をしていると思います。それでもいまだに、「風邪をひいたときは点滴をしてもらうと楽になる。早く風邪が治る」と誤解している人は多くいます。点滴をしても風邪は治りません。今回は、その理由を簡単に説明しましょう。  ◇点滴の中身は何なのか?  点滴する液のことを、正確には「輸液製剤」と呼びます。輸液製剤にはたくさんの種類がありますが、仮に風邪で点滴をしてほしいという方に投与するなら、選ぶのは「細胞外液補充液」と呼ばれるタイプです。  血液と浸透圧がほぼ等しい製剤で、血管内に注入することで効果的に水分を補うのが目的です。中でもよく用いる「乳酸リンゲル液」を一例として挙げてみます。この輸液製剤の中身は、水に以下の電解質が溶けたものです。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  よってこれを、「電解質輸液」と総称することもあります。要するに、「水に電解質イオンが溶けているだけの液体」です。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  ちなみに、ポカリスエットの成分も見てみましょう。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  酢酸イオン  マグネシウムイオン  ここに味を調整する甘味料などが含まれているだけです。内容はほとんど同じですね(含まれている電解質の種類はポカリスエットの方が多いです)。つまり、ポカリスエットで風邪が治らないのと同じように、点滴で風邪は治りません。入っているものに大差がないからです。  ◇点滴の目的とは?  では、風邪をひいた時に点滴は全く必要ないのでしょうか?  もちろん、そんなことはありません。「風邪の時に点滴をしてもらって実際に楽になった経験がある」という方もいるでしょう。この時の点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。  もう一度、輸液製剤とポカリスエットの違いを考えてみます。これらは、成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。例えば、乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lですが、ポカリスエットは21mEq/L しかありません。なぜだと思いますか?  ナトリウムイオンが131 mEq/Lもあると、しょっぱくて飲むのが大変だからです。つまり、「口から飲む製剤は『味が許容できる』という条件を満たす必要があるが、点滴ではその必要がない」ということがポイントです。  風邪をひいた時に、水分が十分に取れずに体が脱水状態になり、水分が足りなくなっていることがあります。この時に、点滴で血液と同じ浸透圧の水分を血管から注入すれば、水分を体内に素早く補うことができます。逆に言えば、脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。  もしこの時に点滴をしても、水分が過剰になるだけで、何のメリットもありません。むしろ、血管に針を刺して無理やり水分を注入するという行為のリスクの方が大きくなります。  ◇風邪をひいた時の水分補給  ここまで述べてきたように、風邪は点滴では治りません。水分補給ができていれば、点滴は全く不要です。ただし、喉が痛くて水分も摂れない、水分を飲んでも嘔吐(おうと)してしまう、という時は点滴が必要になります。  この時こそ、「口から水分が摂れない時」だからです。もちろんこういうケースでは、「点滴をしてほしい」と頼まなくても医師が必要性に応じて点滴をしてくれますので、心配は要りません。  一方、水を飲める時は、なるべくスポーツドリンクや、OS-1のような経口補水液を利用し、脱水にならないよう注意しながら療養するようにしましょう。そもそも風邪を治す特効薬は存在しません。風邪薬は、風邪の症状を抑えるだけの効果しかありません。大切なのは、十分に療養すること。それだけです。まして点滴だけを目的に病院に行くのは、体力を奪われるだけで全くもってナンセンスですよ。
脱水でない時、つまりどのような時に点滴は全く不要ですか。
脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。
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医療
風邪が点滴では絶対に治らない理由  私がこれまで、外来に風邪でやってきた患者さんからお願いされたことで最も多いのが、「点滴していただけませんか?」というものです。それに対して、「点滴しても意味がないので、やめておきましょう」とお答えしたことは、数え切れないほどあります。  私以外にも大多数の医師が同じ経験をしていると思います。それでもいまだに、「風邪をひいたときは点滴をしてもらうと楽になる。早く風邪が治る」と誤解している人は多くいます。点滴をしても風邪は治りません。今回は、その理由を簡単に説明しましょう。  ◇点滴の中身は何なのか?  点滴する液のことを、正確には「輸液製剤」と呼びます。輸液製剤にはたくさんの種類がありますが、仮に風邪で点滴をしてほしいという方に投与するなら、選ぶのは「細胞外液補充液」と呼ばれるタイプです。  血液と浸透圧がほぼ等しい製剤で、血管内に注入することで効果的に水分を補うのが目的です。中でもよく用いる「乳酸リンゲル液」を一例として挙げてみます。この輸液製剤の中身は、水に以下の電解質が溶けたものです。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  よってこれを、「電解質輸液」と総称することもあります。要するに、「水に電解質イオンが溶けているだけの液体」です。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  ちなみに、ポカリスエットの成分も見てみましょう。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  酢酸イオン  マグネシウムイオン  ここに味を調整する甘味料などが含まれているだけです。内容はほとんど同じですね(含まれている電解質の種類はポカリスエットの方が多いです)。つまり、ポカリスエットで風邪が治らないのと同じように、点滴で風邪は治りません。入っているものに大差がないからです。  ◇点滴の目的とは?  では、風邪をひいた時に点滴は全く必要ないのでしょうか?  もちろん、そんなことはありません。「風邪の時に点滴をしてもらって実際に楽になった経験がある」という方もいるでしょう。この時の点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。  もう一度、輸液製剤とポカリスエットの違いを考えてみます。これらは、成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。例えば、乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lですが、ポカリスエットは21mEq/L しかありません。なぜだと思いますか?  ナトリウムイオンが131 mEq/Lもあると、しょっぱくて飲むのが大変だからです。つまり、「口から飲む製剤は『味が許容できる』という条件を満たす必要があるが、点滴ではその必要がない」ということがポイントです。  風邪をひいた時に、水分が十分に取れずに体が脱水状態になり、水分が足りなくなっていることがあります。この時に、点滴で血液と同じ浸透圧の水分を血管から注入すれば、水分を体内に素早く補うことができます。逆に言えば、脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。  もしこの時に点滴をしても、水分が過剰になるだけで、何のメリットもありません。むしろ、血管に針を刺して無理やり水分を注入するという行為のリスクの方が大きくなります。  ◇風邪をひいた時の水分補給  ここまで述べてきたように、風邪は点滴では治りません。水分補給ができていれば、点滴は全く不要です。ただし、喉が痛くて水分も摂れない、水分を飲んでも嘔吐(おうと)してしまう、という時は点滴が必要になります。  この時こそ、「口から水分が摂れない時」だからです。もちろんこういうケースでは、「点滴をしてほしい」と頼まなくても医師が必要性に応じて点滴をしてくれますので、心配は要りません。  一方、水を飲める時は、なるべくスポーツドリンクや、OS-1のような経口補水液を利用し、脱水にならないよう注意しながら療養するようにしましょう。そもそも風邪を治す特効薬は存在しません。風邪薬は、風邪の症状を抑えるだけの効果しかありません。大切なのは、十分に療養すること。それだけです。まして点滴だけを目的に病院に行くのは、体力を奪われるだけで全くもってナンセンスですよ。
点滴の目的は何を効率的に改善することか。
点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。
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風邪が点滴では絶対に治らない理由  私がこれまで、外来に風邪でやってきた患者さんからお願いされたことで最も多いのが、「点滴していただけませんか?」というものです。それに対して、「点滴しても意味がないので、やめておきましょう」とお答えしたことは、数え切れないほどあります。  私以外にも大多数の医師が同じ経験をしていると思います。それでもいまだに、「風邪をひいたときは点滴をしてもらうと楽になる。早く風邪が治る」と誤解している人は多くいます。点滴をしても風邪は治りません。今回は、その理由を簡単に説明しましょう。  ◇点滴の中身は何なのか?  点滴する液のことを、正確には「輸液製剤」と呼びます。輸液製剤にはたくさんの種類がありますが、仮に風邪で点滴をしてほしいという方に投与するなら、選ぶのは「細胞外液補充液」と呼ばれるタイプです。  血液と浸透圧がほぼ等しい製剤で、血管内に注入することで効果的に水分を補うのが目的です。中でもよく用いる「乳酸リンゲル液」を一例として挙げてみます。この輸液製剤の中身は、水に以下の電解質が溶けたものです。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  よってこれを、「電解質輸液」と総称することもあります。要するに、「水に電解質イオンが溶けているだけの液体」です。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  ちなみに、ポカリスエットの成分も見てみましょう。  ナトリウムイオン  カリウムイオン  カルシウムイオン  塩化物イオン  乳酸イオン  酢酸イオン  マグネシウムイオン  ここに味を調整する甘味料などが含まれているだけです。内容はほとんど同じですね(含まれている電解質の種類はポカリスエットの方が多いです)。つまり、ポカリスエットで風邪が治らないのと同じように、点滴で風邪は治りません。入っているものに大差がないからです。  ◇点滴の目的とは?  では、風邪をひいた時に点滴は全く必要ないのでしょうか?  もちろん、そんなことはありません。「風邪の時に点滴をしてもらって実際に楽になった経験がある」という方もいるでしょう。この時の点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。  もう一度、輸液製剤とポカリスエットの違いを考えてみます。これらは、成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。例えば、乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lですが、ポカリスエットは21mEq/L しかありません。なぜだと思いますか?  ナトリウムイオンが131 mEq/Lもあると、しょっぱくて飲むのが大変だからです。つまり、「口から飲む製剤は『味が許容できる』という条件を満たす必要があるが、点滴ではその必要がない」ということがポイントです。  風邪をひいた時に、水分が十分に取れずに体が脱水状態になり、水分が足りなくなっていることがあります。この時に、点滴で血液と同じ浸透圧の水分を血管から注入すれば、水分を体内に素早く補うことができます。逆に言えば、脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。  もしこの時に点滴をしても、水分が過剰になるだけで、何のメリットもありません。むしろ、血管に針を刺して無理やり水分を注入するという行為のリスクの方が大きくなります。  ◇風邪をひいた時の水分補給  ここまで述べてきたように、風邪は点滴では治りません。水分補給ができていれば、点滴は全く不要です。ただし、喉が痛くて水分も摂れない、水分を飲んでも嘔吐(おうと)してしまう、という時は点滴が必要になります。  この時こそ、「口から水分が摂れない時」だからです。もちろんこういうケースでは、「点滴をしてほしい」と頼まなくても医師が必要性に応じて点滴をしてくれますので、心配は要りません。  一方、水を飲める時は、なるべくスポーツドリンクや、OS-1のような経口補水液を利用し、脱水にならないよう注意しながら療養するようにしましょう。そもそも風邪を治す特効薬は存在しません。風邪薬は、風邪の症状を抑えるだけの効果しかありません。大切なのは、十分に療養すること。それだけです。まして点滴だけを目的に病院に行くのは、体力を奪われるだけで全くもってナンセンスですよ。
輸液製剤とポカリスエットは成分は非常に似ていますが、何が異なりますか。
輸液製剤とポカリスエットは成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。
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医療
外来でよく見る三つの間違い 熱中症と脱水症対策  外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。  熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。  一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。高齢の方が重症になる理由は二つあります。  一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。  例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。  一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。  ◇若い人の対策  確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代~50歳代くらいの比較的若い方です。  典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。  周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。  また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。  よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。  ◇脱水時の水分補給  高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。スポーツドリンクや、0.1%~0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。暑い時期には常備しておくのがお勧めです。  ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。  血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。  ◇体の冷やし方  顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。  体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。  体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。  万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。
熱中症が重症化しやすいのはどのような人たちですか。
熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。
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医療
外来でよく見る三つの間違い 熱中症と脱水症対策  外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。  熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。  一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。高齢の方が重症になる理由は二つあります。  一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。  例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。  一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。  ◇若い人の対策  確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代~50歳代くらいの比較的若い方です。  典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。  周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。  また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。  よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。  ◇脱水時の水分補給  高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。スポーツドリンクや、0.1%~0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。暑い時期には常備しておくのがお勧めです。  ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。  血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。  ◇体の冷やし方  顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。  体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。  体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。  万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。
糖尿病の方が脱水になりやすい理由は何ですか。
糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。
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医療
外来でよく見る三つの間違い 熱中症と脱水症対策  外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。  熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。  一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。高齢の方が重症になる理由は二つあります。  一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。  例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。  一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。  ◇若い人の対策  確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代~50歳代くらいの比較的若い方です。  典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。  周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。  また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。  よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。  ◇脱水時の水分補給  高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。スポーツドリンクや、0.1%~0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。暑い時期には常備しておくのがお勧めです。  ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。  血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。  ◇体の冷やし方  顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。  体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。  体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。  万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。
若い人が室内で熱中症になるのはなぜですか。
若い方が室内で熱中症になるのは、炎天下でないから、と油断して対策を怠るためです。
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医療
外来でよく見る三つの間違い 熱中症と脱水症対策  外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。  熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。  一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。高齢の方が重症になる理由は二つあります。  一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。  例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。  一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。  ◇若い人の対策  確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代~50歳代くらいの比較的若い方です。  典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。  周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。  また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。  よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。  ◇脱水時の水分補給  高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。スポーツドリンクや、0.1%~0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。暑い時期には常備しておくのがお勧めです。  ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。  血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。  ◇体の冷やし方  顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。  体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。  体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。  万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。
体の中で太い血管が通っている場所は、どこですか。
体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。
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外来でよく見る三つの間違い 熱中症と脱水症対策  外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。  熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。  一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。高齢の方が重症になる理由は二つあります。  一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。  例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。  一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。  ◇若い人の対策  確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代~50歳代くらいの比較的若い方です。  典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。  周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。  また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。  よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。  ◇脱水時の水分補給  高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。スポーツドリンクや、0.1%~0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。暑い時期には常備しておくのがお勧めです。  ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。  血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。  ◇体の冷やし方  顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。  体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。  体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。  万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。
熱中症は、どのような障害のことですか。
熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。
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医療
医師が考える最も確実ながん治療 標準治療を選ぶべき理由  突然ですが、最初にたとえ話をします。あなたが、病院で受けた検査で大腸がんと診断されたとします。しかも、かなり進行していて、肝臓や肺にも転移している。病院の医師にはこう告げられます。  「ステージ4の大腸がんです。治療法は化学療法(抗がん剤治療)です。標準治療であるAという抗がん剤をお薦めします。あなたと同じ状況なら皆さんがAを選ばれます」  しかしあなたは、突然のことで即答できません。そこで帰宅して、慌ててインターネットで検索してみます。何か、もっと良い治療はないのか? がんが消えてしまうような、そんな方法はないのか? するとあなたは、がんを専門に取り扱っているクリニックのホームページを見つけます。  大腸がんのモニター10人、全員がんが消えたという、Bという名前のサプリメントが紹介されています。10人全員、大腸がんが治ってしまったというのです。これは効果があるかもしれない。しかしいろいろ調べると、他にも同じような治療がたくさんあるのに気づきます。「100人やって全員がんが小さくなった、最先端の免疫療法C」というのも見つけ、魅力的に感じます。どれを信用すればいいのでしょうか?  そこで、昔からかかりつけだった近くの医院のベテランの先生に相談しに行きます。すると彼はこう言います。  「私は、標準治療Aは副作用が強いので大反対だ。昔私が使っていたDという抗がん剤がいい。これまでこの町で1000人以上の大腸がん患者を見てきた私が言うのだから間違いない」  この大先生が言うのなら、確かに正しいかもしれない。病院に行って、Dという抗がん剤が使えるか聞きに行こうか? 翌日あなたは職場の先輩に相談してみます。すると先輩は表情を曇らせ、あなたにこう言います。  「僕の母親も大腸がんで標準治療のAという薬を使っていたけど、効き目があまりなくて、去年亡くなったよ。Aはやめといた方がいいと思うよ」  あなたは思います。やっぱりAは効かないんだ。病院にだまされなくて良かった。そんな時、何気なく見ていた新聞にこんな本の広告を見つけます。  「がんは放置せよ。抗がん剤治療を受けてはいけない」  あなたはようやく安心します。放置してもいいのだと。あなたはもう病院に行くのもやめます。特に症状もないのですから、何もつらいことはない。普段通りの生活を送ることに決めます。さて、あなたはどうなるでしょうか。  過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースでは約8カ月とされています。もちろん個人差はありますが、大腸がんが肺と肝臓に多発転移を起こしていて、全く何も治療しない場合、1年、2年と長く生きられる可能性は低いでしょう。放置すれば、非常に高い確率で、近いうちに大腸がんで亡くなるということです。では、長く生きられる確率が最も高い治療法は何だったのでしょうか? ◇勝率の一番高い治療法  誰しも、がんに勝てる一番確率の高い方法を選びたいはずです。タイムマシンでもあれば、一つ一つ試しては過去に戻って、一番効果の高かった未来を選べばよいのですが、そうはいかないわけです。となると、勝負する前に一番勝率の高い方法を知りたい、ということになります。では、やる前から一番勝率が高いと予想できる治療は何なのか?  答えは標準治療Aです。これは確率論です。誰もが確実に100%勝てる方法はないので、Aを選んで負ける(効き目が乏しい)こともあります。たとえ話に出てきた職場の先輩のお母さんのケースですね。しかし勝率の高さで言えば、上述の例で挙げたB、C、Dという治療、そしてがんを放置すること、のいずれと比較しても標準治療Aは有利です。  なぜなら、「勝率が一番高い治療」が「標準治療」という言葉の定義だからです。この「勝率」=「がんに勝てる確率」を決める根拠を、われわれ専門家はがん治療における「エビデンスレベル」と呼びます。このエビデンスレベルの考え方は世界中で確立していて、各治療法の効果を証明する根拠を以下のように分けることができます。勝率が高いものから順に並んでいると考えてください(統計学の難しい言葉が並びますが、覚える必要は全くありませんので、サラッと流し読みしてください)。  1. ランダム化比較試験(のメタアナリシス)  2. ランダム割付を伴わないコホート研究  3. ケース・コントロール研究  4. 対照群を伴わない研究  5. 症例報告、ケースシリーズ  6. 専門家個人の意見  まず、一番分かりやすいのは最も根拠として弱い「6」に位置する「専門家個人の意見」でしょう。これに相当するのは、上述の例で挙げた、かかりつけのベテランの先生が紹介したDという抗がん剤治療と、一部の専門家が薦める「がん放置療法」です。  ベテランの先生は「1000人見てきたから間違いない」と言いましたが、何人見ようと個人の意見にすぎないので、その根拠は弱いものです。ちなみに職場の先輩の「Aはやめといた方がいい」という意見は、「専門家ですらない人の個人的な感想」ですので、その根拠の確かさは「6」より下です。  次に10人や100人といった少人数のモニターを対象にして効果を証明したサプリメントBや免疫治療Cはどうでしょうか。これは、標準的な薬と比較して臨床試験を行ったわけではないので、「4」または「5」に入ります。  むろん、これらは効き目がない、間違った治療だという意味ではありません。単に、「予想勝率が高い順に並べたら下の方に来るだけ」です。  では標準治療Aはどうでしょうか。  このAの効果を証明するために、どれだけ大規模で信頼に足る臨床試験が行われたかによります。大腸がんのように疾患数の多い病気の場合、数え切れないほど多くのランダム化比較試験(最も統計学的に信頼に足る臨床試験)が世界中で行われていますから、その中のよりすぐりであるAは「1」に当てはまります。  ◇選択は自由、でも後悔させたくない  がんにはそれぞれガイドラインが用意されており、多くの医師はこのガイドラインを参照して治療法を選びます。ガイドラインに記載されている治療を、「標準治療」と呼びます。  どの治療を標準治療に選ぶかは、その分野の専門家集団が世界中のあらゆる論文を調査して決めます。そして日々新しい臨床試験の結果が論文発表され、何を標準治療にすべきかが変わるので、その都度更新されていきます。ガイドラインは書籍として販売され、何年かごとに新しい版が出ます。  しかしこの何年かの間にも新しい試験が行われるため、学会のホームページ上のウェブ版のガイドラインが定期的に更新されていきます。われわれ臨床医は、更新のたびにこれを確認することで、「現時点で最も勝率の高い方法が何か」をリアルタイムに知ることができます。  当然、効果だけでなく安全性も考慮されます。つまり、副作用がきっちりコントロールできるかどうか、ということです。同じ効果が証明された薬でも、副作用が強いなら標準治療として採用はされません。一方、副作用が多少強くても、それが薬で予防でき、コントロールが可能で、かつ効果が高いのなら、標準治療として選ばれます。これが標準治療の定義です。  テレビや雑誌などのメディアではさまざまながん治療が絶えず紹介されています。芸能人など、有名な方が行ったがん治療の報道は、多くの人に非常に大きな影響を与えます。実際がんの治療中の方を動揺させてしまうこともあります。  また私が外来で患者さんを見ていて強く感じるのは、「どれほど信頼できる臨床試験に効果が裏付けられた治療より、身近なたった一人の知人の経験が治療選択に影響を与えることがある」という皮肉な現実です。  もちろん、どんな治療を選ぶかは個人の自由です。ただ、われわれ医師は患者さんに、後悔だけはしてほしくないと思っています。もし治療がうまくいかなかったとしても、「あの時点では、世界中で一番勝てる確率が高い治療を私は選んだのだ」と思えるようにしておくことが、後悔しない一つの方法ではないでしょうか?
何という言葉の定義が「勝率が一番高い治療」であるか。
「標準治療」という言葉の定義が「勝率が一番高い治療」である。
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医療
医師が考える最も確実ながん治療 標準治療を選ぶべき理由  突然ですが、最初にたとえ話をします。あなたが、病院で受けた検査で大腸がんと診断されたとします。しかも、かなり進行していて、肝臓や肺にも転移している。病院の医師にはこう告げられます。  「ステージ4の大腸がんです。治療法は化学療法(抗がん剤治療)です。標準治療であるAという抗がん剤をお薦めします。あなたと同じ状況なら皆さんがAを選ばれます」  しかしあなたは、突然のことで即答できません。そこで帰宅して、慌ててインターネットで検索してみます。何か、もっと良い治療はないのか? がんが消えてしまうような、そんな方法はないのか? するとあなたは、がんを専門に取り扱っているクリニックのホームページを見つけます。  大腸がんのモニター10人、全員がんが消えたという、Bという名前のサプリメントが紹介されています。10人全員、大腸がんが治ってしまったというのです。これは効果があるかもしれない。しかしいろいろ調べると、他にも同じような治療がたくさんあるのに気づきます。「100人やって全員がんが小さくなった、最先端の免疫療法C」というのも見つけ、魅力的に感じます。どれを信用すればいいのでしょうか?  そこで、昔からかかりつけだった近くの医院のベテランの先生に相談しに行きます。すると彼はこう言います。  「私は、標準治療Aは副作用が強いので大反対だ。昔私が使っていたDという抗がん剤がいい。これまでこの町で1000人以上の大腸がん患者を見てきた私が言うのだから間違いない」  この大先生が言うのなら、確かに正しいかもしれない。病院に行って、Dという抗がん剤が使えるか聞きに行こうか? 翌日あなたは職場の先輩に相談してみます。すると先輩は表情を曇らせ、あなたにこう言います。  「僕の母親も大腸がんで標準治療のAという薬を使っていたけど、効き目があまりなくて、去年亡くなったよ。Aはやめといた方がいいと思うよ」  あなたは思います。やっぱりAは効かないんだ。病院にだまされなくて良かった。そんな時、何気なく見ていた新聞にこんな本の広告を見つけます。  「がんは放置せよ。抗がん剤治療を受けてはいけない」  あなたはようやく安心します。放置してもいいのだと。あなたはもう病院に行くのもやめます。特に症状もないのですから、何もつらいことはない。普段通りの生活を送ることに決めます。さて、あなたはどうなるでしょうか。  過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースでは約8カ月とされています。もちろん個人差はありますが、大腸がんが肺と肝臓に多発転移を起こしていて、全く何も治療しない場合、1年、2年と長く生きられる可能性は低いでしょう。放置すれば、非常に高い確率で、近いうちに大腸がんで亡くなるということです。では、長く生きられる確率が最も高い治療法は何だったのでしょうか? ◇勝率の一番高い治療法  誰しも、がんに勝てる一番確率の高い方法を選びたいはずです。タイムマシンでもあれば、一つ一つ試しては過去に戻って、一番効果の高かった未来を選べばよいのですが、そうはいかないわけです。となると、勝負する前に一番勝率の高い方法を知りたい、ということになります。では、やる前から一番勝率が高いと予想できる治療は何なのか?  答えは標準治療Aです。これは確率論です。誰もが確実に100%勝てる方法はないので、Aを選んで負ける(効き目が乏しい)こともあります。たとえ話に出てきた職場の先輩のお母さんのケースですね。しかし勝率の高さで言えば、上述の例で挙げたB、C、Dという治療、そしてがんを放置すること、のいずれと比較しても標準治療Aは有利です。  なぜなら、「勝率が一番高い治療」が「標準治療」という言葉の定義だからです。この「勝率」=「がんに勝てる確率」を決める根拠を、われわれ専門家はがん治療における「エビデンスレベル」と呼びます。このエビデンスレベルの考え方は世界中で確立していて、各治療法の効果を証明する根拠を以下のように分けることができます。勝率が高いものから順に並んでいると考えてください(統計学の難しい言葉が並びますが、覚える必要は全くありませんので、サラッと流し読みしてください)。  1. ランダム化比較試験(のメタアナリシス)  2. ランダム割付を伴わないコホート研究  3. ケース・コントロール研究  4. 対照群を伴わない研究  5. 症例報告、ケースシリーズ  6. 専門家個人の意見  まず、一番分かりやすいのは最も根拠として弱い「6」に位置する「専門家個人の意見」でしょう。これに相当するのは、上述の例で挙げた、かかりつけのベテランの先生が紹介したDという抗がん剤治療と、一部の専門家が薦める「がん放置療法」です。  ベテランの先生は「1000人見てきたから間違いない」と言いましたが、何人見ようと個人の意見にすぎないので、その根拠は弱いものです。ちなみに職場の先輩の「Aはやめといた方がいい」という意見は、「専門家ですらない人の個人的な感想」ですので、その根拠の確かさは「6」より下です。  次に10人や100人といった少人数のモニターを対象にして効果を証明したサプリメントBや免疫治療Cはどうでしょうか。これは、標準的な薬と比較して臨床試験を行ったわけではないので、「4」または「5」に入ります。  むろん、これらは効き目がない、間違った治療だという意味ではありません。単に、「予想勝率が高い順に並べたら下の方に来るだけ」です。  では標準治療Aはどうでしょうか。  このAの効果を証明するために、どれだけ大規模で信頼に足る臨床試験が行われたかによります。大腸がんのように疾患数の多い病気の場合、数え切れないほど多くのランダム化比較試験(最も統計学的に信頼に足る臨床試験)が世界中で行われていますから、その中のよりすぐりであるAは「1」に当てはまります。  ◇選択は自由、でも後悔させたくない  がんにはそれぞれガイドラインが用意されており、多くの医師はこのガイドラインを参照して治療法を選びます。ガイドラインに記載されている治療を、「標準治療」と呼びます。  どの治療を標準治療に選ぶかは、その分野の専門家集団が世界中のあらゆる論文を調査して決めます。そして日々新しい臨床試験の結果が論文発表され、何を標準治療にすべきかが変わるので、その都度更新されていきます。ガイドラインは書籍として販売され、何年かごとに新しい版が出ます。  しかしこの何年かの間にも新しい試験が行われるため、学会のホームページ上のウェブ版のガイドラインが定期的に更新されていきます。われわれ臨床医は、更新のたびにこれを確認することで、「現時点で最も勝率の高い方法が何か」をリアルタイムに知ることができます。  当然、効果だけでなく安全性も考慮されます。つまり、副作用がきっちりコントロールできるかどうか、ということです。同じ効果が証明された薬でも、副作用が強いなら標準治療として採用はされません。一方、副作用が多少強くても、それが薬で予防でき、コントロールが可能で、かつ効果が高いのなら、標準治療として選ばれます。これが標準治療の定義です。  テレビや雑誌などのメディアではさまざまながん治療が絶えず紹介されています。芸能人など、有名な方が行ったがん治療の報道は、多くの人に非常に大きな影響を与えます。実際がんの治療中の方を動揺させてしまうこともあります。  また私が外来で患者さんを見ていて強く感じるのは、「どれほど信頼できる臨床試験に効果が裏付けられた治療より、身近なたった一人の知人の経験が治療選択に影響を与えることがある」という皮肉な現実です。  もちろん、どんな治療を選ぶかは個人の自由です。ただ、われわれ医師は患者さんに、後悔だけはしてほしくないと思っています。もし治療がうまくいかなかったとしても、「あの時点では、世界中で一番勝てる確率が高い治療を私は選んだのだ」と思えるようにしておくことが、後悔しない一つの方法ではないでしょうか?
「何の考え方」が世界中で確立しているか。
「エビデンスレベルの考え方」が世界中で確立している。
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医療
医師が考える最も確実ながん治療 標準治療を選ぶべき理由  突然ですが、最初にたとえ話をします。あなたが、病院で受けた検査で大腸がんと診断されたとします。しかも、かなり進行していて、肝臓や肺にも転移している。病院の医師にはこう告げられます。  「ステージ4の大腸がんです。治療法は化学療法(抗がん剤治療)です。標準治療であるAという抗がん剤をお薦めします。あなたと同じ状況なら皆さんがAを選ばれます」  しかしあなたは、突然のことで即答できません。そこで帰宅して、慌ててインターネットで検索してみます。何か、もっと良い治療はないのか? がんが消えてしまうような、そんな方法はないのか? するとあなたは、がんを専門に取り扱っているクリニックのホームページを見つけます。  大腸がんのモニター10人、全員がんが消えたという、Bという名前のサプリメントが紹介されています。10人全員、大腸がんが治ってしまったというのです。これは効果があるかもしれない。しかしいろいろ調べると、他にも同じような治療がたくさんあるのに気づきます。「100人やって全員がんが小さくなった、最先端の免疫療法C」というのも見つけ、魅力的に感じます。どれを信用すればいいのでしょうか?  そこで、昔からかかりつけだった近くの医院のベテランの先生に相談しに行きます。すると彼はこう言います。  「私は、標準治療Aは副作用が強いので大反対だ。昔私が使っていたDという抗がん剤がいい。これまでこの町で1000人以上の大腸がん患者を見てきた私が言うのだから間違いない」  この大先生が言うのなら、確かに正しいかもしれない。病院に行って、Dという抗がん剤が使えるか聞きに行こうか? 翌日あなたは職場の先輩に相談してみます。すると先輩は表情を曇らせ、あなたにこう言います。  「僕の母親も大腸がんで標準治療のAという薬を使っていたけど、効き目があまりなくて、去年亡くなったよ。Aはやめといた方がいいと思うよ」  あなたは思います。やっぱりAは効かないんだ。病院にだまされなくて良かった。そんな時、何気なく見ていた新聞にこんな本の広告を見つけます。  「がんは放置せよ。抗がん剤治療を受けてはいけない」  あなたはようやく安心します。放置してもいいのだと。あなたはもう病院に行くのもやめます。特に症状もないのですから、何もつらいことはない。普段通りの生活を送ることに決めます。さて、あなたはどうなるでしょうか。  過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースでは約8カ月とされています。もちろん個人差はありますが、大腸がんが肺と肝臓に多発転移を起こしていて、全く何も治療しない場合、1年、2年と長く生きられる可能性は低いでしょう。放置すれば、非常に高い確率で、近いうちに大腸がんで亡くなるということです。では、長く生きられる確率が最も高い治療法は何だったのでしょうか? ◇勝率の一番高い治療法  誰しも、がんに勝てる一番確率の高い方法を選びたいはずです。タイムマシンでもあれば、一つ一つ試しては過去に戻って、一番効果の高かった未来を選べばよいのですが、そうはいかないわけです。となると、勝負する前に一番勝率の高い方法を知りたい、ということになります。では、やる前から一番勝率が高いと予想できる治療は何なのか?  答えは標準治療Aです。これは確率論です。誰もが確実に100%勝てる方法はないので、Aを選んで負ける(効き目が乏しい)こともあります。たとえ話に出てきた職場の先輩のお母さんのケースですね。しかし勝率の高さで言えば、上述の例で挙げたB、C、Dという治療、そしてがんを放置すること、のいずれと比較しても標準治療Aは有利です。  なぜなら、「勝率が一番高い治療」が「標準治療」という言葉の定義だからです。この「勝率」=「がんに勝てる確率」を決める根拠を、われわれ専門家はがん治療における「エビデンスレベル」と呼びます。このエビデンスレベルの考え方は世界中で確立していて、各治療法の効果を証明する根拠を以下のように分けることができます。勝率が高いものから順に並んでいると考えてください(統計学の難しい言葉が並びますが、覚える必要は全くありませんので、サラッと流し読みしてください)。  1. ランダム化比較試験(のメタアナリシス)  2. ランダム割付を伴わないコホート研究  3. ケース・コントロール研究  4. 対照群を伴わない研究  5. 症例報告、ケースシリーズ  6. 専門家個人の意見  まず、一番分かりやすいのは最も根拠として弱い「6」に位置する「専門家個人の意見」でしょう。これに相当するのは、上述の例で挙げた、かかりつけのベテランの先生が紹介したDという抗がん剤治療と、一部の専門家が薦める「がん放置療法」です。  ベテランの先生は「1000人見てきたから間違いない」と言いましたが、何人見ようと個人の意見にすぎないので、その根拠は弱いものです。ちなみに職場の先輩の「Aはやめといた方がいい」という意見は、「専門家ですらない人の個人的な感想」ですので、その根拠の確かさは「6」より下です。  次に10人や100人といった少人数のモニターを対象にして効果を証明したサプリメントBや免疫治療Cはどうでしょうか。これは、標準的な薬と比較して臨床試験を行ったわけではないので、「4」または「5」に入ります。  むろん、これらは効き目がない、間違った治療だという意味ではありません。単に、「予想勝率が高い順に並べたら下の方に来るだけ」です。  では標準治療Aはどうでしょうか。  このAの効果を証明するために、どれだけ大規模で信頼に足る臨床試験が行われたかによります。大腸がんのように疾患数の多い病気の場合、数え切れないほど多くのランダム化比較試験(最も統計学的に信頼に足る臨床試験)が世界中で行われていますから、その中のよりすぐりであるAは「1」に当てはまります。  ◇選択は自由、でも後悔させたくない  がんにはそれぞれガイドラインが用意されており、多くの医師はこのガイドラインを参照して治療法を選びます。ガイドラインに記載されている治療を、「標準治療」と呼びます。  どの治療を標準治療に選ぶかは、その分野の専門家集団が世界中のあらゆる論文を調査して決めます。そして日々新しい臨床試験の結果が論文発表され、何を標準治療にすべきかが変わるので、その都度更新されていきます。ガイドラインは書籍として販売され、何年かごとに新しい版が出ます。  しかしこの何年かの間にも新しい試験が行われるため、学会のホームページ上のウェブ版のガイドラインが定期的に更新されていきます。われわれ臨床医は、更新のたびにこれを確認することで、「現時点で最も勝率の高い方法が何か」をリアルタイムに知ることができます。  当然、効果だけでなく安全性も考慮されます。つまり、副作用がきっちりコントロールできるかどうか、ということです。同じ効果が証明された薬でも、副作用が強いなら標準治療として採用はされません。一方、副作用が多少強くても、それが薬で予防でき、コントロールが可能で、かつ効果が高いのなら、標準治療として選ばれます。これが標準治療の定義です。  テレビや雑誌などのメディアではさまざまながん治療が絶えず紹介されています。芸能人など、有名な方が行ったがん治療の報道は、多くの人に非常に大きな影響を与えます。実際がんの治療中の方を動揺させてしまうこともあります。  また私が外来で患者さんを見ていて強く感じるのは、「どれほど信頼できる臨床試験に効果が裏付けられた治療より、身近なたった一人の知人の経験が治療選択に影響を与えることがある」という皮肉な現実です。  もちろん、どんな治療を選ぶかは個人の自由です。ただ、われわれ医師は患者さんに、後悔だけはしてほしくないと思っています。もし治療がうまくいかなかったとしても、「あの時点では、世界中で一番勝てる確率が高い治療を私は選んだのだ」と思えるようにしておくことが、後悔しない一つの方法ではないでしょうか?
ガイドラインに記載されている治療を何と呼ぶか。
ガイドラインに記載されている治療を、「標準治療」と呼びます。
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医療
医師が考える最も確実ながん治療 標準治療を選ぶべき理由  突然ですが、最初にたとえ話をします。あなたが、病院で受けた検査で大腸がんと診断されたとします。しかも、かなり進行していて、肝臓や肺にも転移している。病院の医師にはこう告げられます。  「ステージ4の大腸がんです。治療法は化学療法(抗がん剤治療)です。標準治療であるAという抗がん剤をお薦めします。あなたと同じ状況なら皆さんがAを選ばれます」  しかしあなたは、突然のことで即答できません。そこで帰宅して、慌ててインターネットで検索してみます。何か、もっと良い治療はないのか? がんが消えてしまうような、そんな方法はないのか? するとあなたは、がんを専門に取り扱っているクリニックのホームページを見つけます。  大腸がんのモニター10人、全員がんが消えたという、Bという名前のサプリメントが紹介されています。10人全員、大腸がんが治ってしまったというのです。これは効果があるかもしれない。しかしいろいろ調べると、他にも同じような治療がたくさんあるのに気づきます。「100人やって全員がんが小さくなった、最先端の免疫療法C」というのも見つけ、魅力的に感じます。どれを信用すればいいのでしょうか?  そこで、昔からかかりつけだった近くの医院のベテランの先生に相談しに行きます。すると彼はこう言います。  「私は、標準治療Aは副作用が強いので大反対だ。昔私が使っていたDという抗がん剤がいい。これまでこの町で1000人以上の大腸がん患者を見てきた私が言うのだから間違いない」  この大先生が言うのなら、確かに正しいかもしれない。病院に行って、Dという抗がん剤が使えるか聞きに行こうか? 翌日あなたは職場の先輩に相談してみます。すると先輩は表情を曇らせ、あなたにこう言います。  「僕の母親も大腸がんで標準治療のAという薬を使っていたけど、効き目があまりなくて、去年亡くなったよ。Aはやめといた方がいいと思うよ」  あなたは思います。やっぱりAは効かないんだ。病院にだまされなくて良かった。そんな時、何気なく見ていた新聞にこんな本の広告を見つけます。  「がんは放置せよ。抗がん剤治療を受けてはいけない」  あなたはようやく安心します。放置してもいいのだと。あなたはもう病院に行くのもやめます。特に症状もないのですから、何もつらいことはない。普段通りの生活を送ることに決めます。さて、あなたはどうなるでしょうか。  過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースでは約8カ月とされています。もちろん個人差はありますが、大腸がんが肺と肝臓に多発転移を起こしていて、全く何も治療しない場合、1年、2年と長く生きられる可能性は低いでしょう。放置すれば、非常に高い確率で、近いうちに大腸がんで亡くなるということです。では、長く生きられる確率が最も高い治療法は何だったのでしょうか? ◇勝率の一番高い治療法  誰しも、がんに勝てる一番確率の高い方法を選びたいはずです。タイムマシンでもあれば、一つ一つ試しては過去に戻って、一番効果の高かった未来を選べばよいのですが、そうはいかないわけです。となると、勝負する前に一番勝率の高い方法を知りたい、ということになります。では、やる前から一番勝率が高いと予想できる治療は何なのか?  答えは標準治療Aです。これは確率論です。誰もが確実に100%勝てる方法はないので、Aを選んで負ける(効き目が乏しい)こともあります。たとえ話に出てきた職場の先輩のお母さんのケースですね。しかし勝率の高さで言えば、上述の例で挙げたB、C、Dという治療、そしてがんを放置すること、のいずれと比較しても標準治療Aは有利です。  なぜなら、「勝率が一番高い治療」が「標準治療」という言葉の定義だからです。この「勝率」=「がんに勝てる確率」を決める根拠を、われわれ専門家はがん治療における「エビデンスレベル」と呼びます。このエビデンスレベルの考え方は世界中で確立していて、各治療法の効果を証明する根拠を以下のように分けることができます。勝率が高いものから順に並んでいると考えてください(統計学の難しい言葉が並びますが、覚える必要は全くありませんので、サラッと流し読みしてください)。  1. ランダム化比較試験(のメタアナリシス)  2. ランダム割付を伴わないコホート研究  3. ケース・コントロール研究  4. 対照群を伴わない研究  5. 症例報告、ケースシリーズ  6. 専門家個人の意見  まず、一番分かりやすいのは最も根拠として弱い「6」に位置する「専門家個人の意見」でしょう。これに相当するのは、上述の例で挙げた、かかりつけのベテランの先生が紹介したDという抗がん剤治療と、一部の専門家が薦める「がん放置療法」です。  ベテランの先生は「1000人見てきたから間違いない」と言いましたが、何人見ようと個人の意見にすぎないので、その根拠は弱いものです。ちなみに職場の先輩の「Aはやめといた方がいい」という意見は、「専門家ですらない人の個人的な感想」ですので、その根拠の確かさは「6」より下です。  次に10人や100人といった少人数のモニターを対象にして効果を証明したサプリメントBや免疫治療Cはどうでしょうか。これは、標準的な薬と比較して臨床試験を行ったわけではないので、「4」または「5」に入ります。  むろん、これらは効き目がない、間違った治療だという意味ではありません。単に、「予想勝率が高い順に並べたら下の方に来るだけ」です。  では標準治療Aはどうでしょうか。  このAの効果を証明するために、どれだけ大規模で信頼に足る臨床試験が行われたかによります。大腸がんのように疾患数の多い病気の場合、数え切れないほど多くのランダム化比較試験(最も統計学的に信頼に足る臨床試験)が世界中で行われていますから、その中のよりすぐりであるAは「1」に当てはまります。  ◇選択は自由、でも後悔させたくない  がんにはそれぞれガイドラインが用意されており、多くの医師はこのガイドラインを参照して治療法を選びます。ガイドラインに記載されている治療を、「標準治療」と呼びます。  どの治療を標準治療に選ぶかは、その分野の専門家集団が世界中のあらゆる論文を調査して決めます。そして日々新しい臨床試験の結果が論文発表され、何を標準治療にすべきかが変わるので、その都度更新されていきます。ガイドラインは書籍として販売され、何年かごとに新しい版が出ます。  しかしこの何年かの間にも新しい試験が行われるため、学会のホームページ上のウェブ版のガイドラインが定期的に更新されていきます。われわれ臨床医は、更新のたびにこれを確認することで、「現時点で最も勝率の高い方法が何か」をリアルタイムに知ることができます。  当然、効果だけでなく安全性も考慮されます。つまり、副作用がきっちりコントロールできるかどうか、ということです。同じ効果が証明された薬でも、副作用が強いなら標準治療として採用はされません。一方、副作用が多少強くても、それが薬で予防でき、コントロールが可能で、かつ効果が高いのなら、標準治療として選ばれます。これが標準治療の定義です。  テレビや雑誌などのメディアではさまざまながん治療が絶えず紹介されています。芸能人など、有名な方が行ったがん治療の報道は、多くの人に非常に大きな影響を与えます。実際がんの治療中の方を動揺させてしまうこともあります。  また私が外来で患者さんを見ていて強く感じるのは、「どれほど信頼できる臨床試験に効果が裏付けられた治療より、身近なたった一人の知人の経験が治療選択に影響を与えることがある」という皮肉な現実です。  もちろん、どんな治療を選ぶかは個人の自由です。ただ、われわれ医師は患者さんに、後悔だけはしてほしくないと思っています。もし治療がうまくいかなかったとしても、「あの時点では、世界中で一番勝てる確率が高い治療を私は選んだのだ」と思えるようにしておくことが、後悔しない一つの方法ではないでしょうか?
過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースではどのくらいとされていますか。
過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースでは約8カ月とされています。
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医療
医師の「様子を見ましょう」の真意 経過観察は大切な医療行為  「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかりで何もしてくれないので、心配で来ました」  私がよく外来で患者さんから言われる言葉です。逆に私の患者さんも、別の病院でこういう不満を言っているかもしれません。  確かに、私たち医師は患者さんに対して「様子を見ましょう」というセリフをよく使います。果たしてこれは「何もしない」と同義なのでしょうか?  ◇「何もしない」とは異なる  私たちは、「様子を見る」という対応のことを「経過観察」と呼んでいます。「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。例えば医師国家試験では、ある症状で外来にやって来た患者さんの検査値やレントゲン画像が示され、「適切な対応はどれか?」として選択肢から答えを選ばせる問題が定番です。   ここには、  a.経過観察  b.抗菌薬治療  c.放射線治療  d.化学療法  e.手術 といった項目が並びます(話をシンプルにしていますが)。  これらの選択肢が同列に並んでいることに注目してください。もちろん「経過観察」が正答である問題もあります。「どういう患者さんに無治療で『経過観察』をすべきか」という判断は非常に大切だということです。  「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。病気の中には、初期の段階では症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない飲み薬や点滴などで中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます適切な診断から遠ざかってしまいます。  「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。  大切なことは、この経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医だということです。「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。  一方、「様子を見ましょう」と患者さんに伝え、「経過観察」という医療行為の最中のつもりでいた初診医は、その行為をやむなく中断することになります。これは患者さんにとっては大きなリスクと言ってよいでしょう。もちろん私たち医師にとっても悔しいことです。  ◇メールや電話を嫌がる理由  逆に、本人を診察することなく「経過観察」という医療行為を選択することは決してできない、というのも、みなさんに分かっておいていただきたいことです。  私のブログにはよく、「1週間くらい前から食後に下腹が痛いんです。病院に行った方がよいでしょうか?」といった相談が送られてきます。勤務中に、かかりつけの患者さんから電話で、「今朝から少ししんどいのですが、外来に行った方がよいでしょうか?」と聞かれることもよくあります。  こういう質問をされて、「病院に行かなくても大丈夫ですよ」と答えることはまずありません。私には、本人を診察せず、本人の語る主観的な情報だけを頼りに「経過観察」という医療行為を行うことが可能とは到底思えないからです。  よって私の答えは、「不安なら病院に行って相談してください」「外来に来て一度診察させてください」しかありえません。「私は診察もせずに医療行為を提供するだけの責任を負うことはできません」という意味です。「経過観察」とは、そのくらい重要な一つの医療行為である、ということを分かっておいてほしいと思います。
「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な何の選択肢の一つですか。
「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。
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医療
医師の「様子を見ましょう」の真意 経過観察は大切な医療行為  「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかりで何もしてくれないので、心配で来ました」  私がよく外来で患者さんから言われる言葉です。逆に私の患者さんも、別の病院でこういう不満を言っているかもしれません。  確かに、私たち医師は患者さんに対して「様子を見ましょう」というセリフをよく使います。果たしてこれは「何もしない」と同義なのでしょうか?  ◇「何もしない」とは異なる  私たちは、「様子を見る」という対応のことを「経過観察」と呼んでいます。「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。例えば医師国家試験では、ある症状で外来にやって来た患者さんの検査値やレントゲン画像が示され、「適切な対応はどれか?」として選択肢から答えを選ばせる問題が定番です。   ここには、  a.経過観察  b.抗菌薬治療  c.放射線治療  d.化学療法  e.手術 といった項目が並びます(話をシンプルにしていますが)。  これらの選択肢が同列に並んでいることに注目してください。もちろん「経過観察」が正答である問題もあります。「どういう患者さんに無治療で『経過観察』をすべきか」という判断は非常に大切だということです。  「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。病気の中には、初期の段階では症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない飲み薬や点滴などで中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます適切な診断から遠ざかってしまいます。  「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。  大切なことは、この経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医だということです。「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。  一方、「様子を見ましょう」と患者さんに伝え、「経過観察」という医療行為の最中のつもりでいた初診医は、その行為をやむなく中断することになります。これは患者さんにとっては大きなリスクと言ってよいでしょう。もちろん私たち医師にとっても悔しいことです。  ◇メールや電話を嫌がる理由  逆に、本人を診察することなく「経過観察」という医療行為を選択することは決してできない、というのも、みなさんに分かっておいていただきたいことです。  私のブログにはよく、「1週間くらい前から食後に下腹が痛いんです。病院に行った方がよいでしょうか?」といった相談が送られてきます。勤務中に、かかりつけの患者さんから電話で、「今朝から少ししんどいのですが、外来に行った方がよいでしょうか?」と聞かれることもよくあります。  こういう質問をされて、「病院に行かなくても大丈夫ですよ」と答えることはまずありません。私には、本人を診察せず、本人の語る主観的な情報だけを頼りに「経過観察」という医療行為を行うことが可能とは到底思えないからです。  よって私の答えは、「不安なら病院に行って相談してください」「外来に来て一度診察させてください」しかありえません。「私は診察もせずに医療行為を提供するだけの責任を負うことはできません」という意味です。「経過観察」とは、そのくらい重要な一つの医療行為である、ということを分かっておいてほしいと思います。
何と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになりますか。
「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。
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医療
医師の「様子を見ましょう」の真意 経過観察は大切な医療行為  「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかりで何もしてくれないので、心配で来ました」  私がよく外来で患者さんから言われる言葉です。逆に私の患者さんも、別の病院でこういう不満を言っているかもしれません。  確かに、私たち医師は患者さんに対して「様子を見ましょう」というセリフをよく使います。果たしてこれは「何もしない」と同義なのでしょうか?  ◇「何もしない」とは異なる  私たちは、「様子を見る」という対応のことを「経過観察」と呼んでいます。「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。例えば医師国家試験では、ある症状で外来にやって来た患者さんの検査値やレントゲン画像が示され、「適切な対応はどれか?」として選択肢から答えを選ばせる問題が定番です。   ここには、  a.経過観察  b.抗菌薬治療  c.放射線治療  d.化学療法  e.手術 といった項目が並びます(話をシンプルにしていますが)。  これらの選択肢が同列に並んでいることに注目してください。もちろん「経過観察」が正答である問題もあります。「どういう患者さんに無治療で『経過観察』をすべきか」という判断は非常に大切だということです。  「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。病気の中には、初期の段階では症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない飲み薬や点滴などで中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます適切な診断から遠ざかってしまいます。  「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。  大切なことは、この経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医だということです。「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。  一方、「様子を見ましょう」と患者さんに伝え、「経過観察」という医療行為の最中のつもりでいた初診医は、その行為をやむなく中断することになります。これは患者さんにとっては大きなリスクと言ってよいでしょう。もちろん私たち医師にとっても悔しいことです。  ◇メールや電話を嫌がる理由  逆に、本人を診察することなく「経過観察」という医療行為を選択することは決してできない、というのも、みなさんに分かっておいていただきたいことです。  私のブログにはよく、「1週間くらい前から食後に下腹が痛いんです。病院に行った方がよいでしょうか?」といった相談が送られてきます。勤務中に、かかりつけの患者さんから電話で、「今朝から少ししんどいのですが、外来に行った方がよいでしょうか?」と聞かれることもよくあります。  こういう質問をされて、「病院に行かなくても大丈夫ですよ」と答えることはまずありません。私には、本人を診察せず、本人の語る主観的な情報だけを頼りに「経過観察」という医療行為を行うことが可能とは到底思えないからです。  よって私の答えは、「不安なら病院に行って相談してください」「外来に来て一度診察させてください」しかありえません。「私は診察もせずに医療行為を提供するだけの責任を負うことはできません」という意味です。「経過観察」とは、そのくらい重要な一つの医療行為である、ということを分かっておいてほしいと思います。
「経過観察」とは、何という意味ですか。
「経過観察」とは、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。
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医療
医師の「様子を見ましょう」の真意 経過観察は大切な医療行為  「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかりで何もしてくれないので、心配で来ました」  私がよく外来で患者さんから言われる言葉です。逆に私の患者さんも、別の病院でこういう不満を言っているかもしれません。  確かに、私たち医師は患者さんに対して「様子を見ましょう」というセリフをよく使います。果たしてこれは「何もしない」と同義なのでしょうか?  ◇「何もしない」とは異なる  私たちは、「様子を見る」という対応のことを「経過観察」と呼んでいます。「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。例えば医師国家試験では、ある症状で外来にやって来た患者さんの検査値やレントゲン画像が示され、「適切な対応はどれか?」として選択肢から答えを選ばせる問題が定番です。   ここには、  a.経過観察  b.抗菌薬治療  c.放射線治療  d.化学療法  e.手術 といった項目が並びます(話をシンプルにしていますが)。  これらの選択肢が同列に並んでいることに注目してください。もちろん「経過観察」が正答である問題もあります。「どういう患者さんに無治療で『経過観察』をすべきか」という判断は非常に大切だということです。  「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。病気の中には、初期の段階では症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない飲み薬や点滴などで中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます適切な診断から遠ざかってしまいます。  「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。  大切なことは、この経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医だということです。「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。  一方、「様子を見ましょう」と患者さんに伝え、「経過観察」という医療行為の最中のつもりでいた初診医は、その行為をやむなく中断することになります。これは患者さんにとっては大きなリスクと言ってよいでしょう。もちろん私たち医師にとっても悔しいことです。  ◇メールや電話を嫌がる理由  逆に、本人を診察することなく「経過観察」という医療行為を選択することは決してできない、というのも、みなさんに分かっておいていただきたいことです。  私のブログにはよく、「1週間くらい前から食後に下腹が痛いんです。病院に行った方がよいでしょうか?」といった相談が送られてきます。勤務中に、かかりつけの患者さんから電話で、「今朝から少ししんどいのですが、外来に行った方がよいでしょうか?」と聞かれることもよくあります。  こういう質問をされて、「病院に行かなくても大丈夫ですよ」と答えることはまずありません。私には、本人を診察せず、本人の語る主観的な情報だけを頼りに「経過観察」という医療行為を行うことが可能とは到底思えないからです。  よって私の答えは、「不安なら病院に行って相談してください」「外来に来て一度診察させてください」しかありえません。「私は診察もせずに医療行為を提供するだけの責任を負うことはできません」という意味です。「経過観察」とは、そのくらい重要な一つの医療行為である、ということを分かっておいてほしいと思います。
経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、誰ですか。
経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医です。
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医療
医師の「様子を見ましょう」の真意 経過観察は大切な医療行為  「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかりで何もしてくれないので、心配で来ました」  私がよく外来で患者さんから言われる言葉です。逆に私の患者さんも、別の病院でこういう不満を言っているかもしれません。  確かに、私たち医師は患者さんに対して「様子を見ましょう」というセリフをよく使います。果たしてこれは「何もしない」と同義なのでしょうか?  ◇「何もしない」とは異なる  私たちは、「様子を見る」という対応のことを「経過観察」と呼んでいます。「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。例えば医師国家試験では、ある症状で外来にやって来た患者さんの検査値やレントゲン画像が示され、「適切な対応はどれか?」として選択肢から答えを選ばせる問題が定番です。   ここには、  a.経過観察  b.抗菌薬治療  c.放射線治療  d.化学療法  e.手術 といった項目が並びます(話をシンプルにしていますが)。  これらの選択肢が同列に並んでいることに注目してください。もちろん「経過観察」が正答である問題もあります。「どういう患者さんに無治療で『経過観察』をすべきか」という判断は非常に大切だということです。  「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。病気の中には、初期の段階では症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない飲み薬や点滴などで中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます適切な診断から遠ざかってしまいます。  「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。  大切なことは、この経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医だということです。「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。  一方、「様子を見ましょう」と患者さんに伝え、「経過観察」という医療行為の最中のつもりでいた初診医は、その行為をやむなく中断することになります。これは患者さんにとっては大きなリスクと言ってよいでしょう。もちろん私たち医師にとっても悔しいことです。  ◇メールや電話を嫌がる理由  逆に、本人を診察することなく「経過観察」という医療行為を選択することは決してできない、というのも、みなさんに分かっておいていただきたいことです。  私のブログにはよく、「1週間くらい前から食後に下腹が痛いんです。病院に行った方がよいでしょうか?」といった相談が送られてきます。勤務中に、かかりつけの患者さんから電話で、「今朝から少ししんどいのですが、外来に行った方がよいでしょうか?」と聞かれることもよくあります。  こういう質問をされて、「病院に行かなくても大丈夫ですよ」と答えることはまずありません。私には、本人を診察せず、本人の語る主観的な情報だけを頼りに「経過観察」という医療行為を行うことが可能とは到底思えないからです。  よって私の答えは、「不安なら病院に行って相談してください」「外来に来て一度診察させてください」しかありえません。「私は診察もせずに医療行為を提供するだけの責任を負うことはできません」という意味です。「経過観察」とは、そのくらい重要な一つの医療行為である、ということを分かっておいてほしいと思います。
「様子を見ましょう」と医師が言うのは、どのように判断した時ですか。
「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。
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医療
病院で痛みを説明する六つのコツ 医師は何を知りたいのか  病院で自分の痛みを医師にうまく説明できず、もどかしい思いをした経験はありませんか?外来で医師から質問攻めにされ、しどろもどろで答えたはいいが、家に帰ってから「しまった、あのこと言い忘れた!言えば医師の判断は変わったかもしれない」と不安になったことがある、という方も多いでしょう。  今回は、医師にうまく痛みを説明するコツを紹介したいと思います。  ◇私たちが学ぶ問診方法  私たちは、医学生あるいは研修医の時に患者さんに対する問診の方法を学びます。  どこかの痛みで外来を受診された患者さんに、「どういう順序で何を尋ねるか」についても、細かく学ぶことになります。ということは、私たちがどんな方法で患者さんに問診するかを知っていれば、「何を聞かれるか」はおのずと明らかだということになります。  何を聞かれるかを知っていれば事前に準備ができ、必要な事項を落ち着いて医師に伝えることができます。  では、私たちは「痛み」を訴える患者さんに何を尋ねるでしょうか?その答えは以下の六つのポイントに集約されます。 (1)どんなふうに発症したか (2)どうすると痛みが軽くなる、あるいは強くなるか (3)どんな種類の痛みか (4)痛みの場所 (5)痛みの強さ (6)時間経過  これだけでは分かりにくいでしょう。順に分かりやすく解説していきます。  ◇どんなふうに発症したか  私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、「突然痛くなったか」それとも「徐々に痛くなったか」を知りたい時です。「突然」というのは「何をしている時に発症したか」をかなり細かく言える、というケースです。  例えば、クモ膜下出血はある瞬間に「突然」頭痛が起こることが多い疾患です。典型的なケースでは「何をしている時に痛くなりましたか?」と尋ねると、「テレビドラマのこのセリフの時」というくらい痛みのタイミングを細かく言えたり、「何時何分に」と「分」まで正確に言えたりします。  医師から「突然痛くなりましたか?」と聞かれた場合は、こういう始まり方であったかどうかを聞いている、と思っておきましょう。  一方、ある瞬間痛くなったのではなく、「徐々に痛くなってきた」というケースもあるでしょう。その場合は、「何時ごろから何時間くらいかけて痛くなってきたか」を説明できるとよいでしょう。  ◇どうすれば痛みが強くなる、あるいは軽くなるか  例えば、腹痛で受診された方には、痛みが食事と関係があるかを尋ねることが多いです。空腹時にひどい、食後にひどい、食事とは関係なくひどい、といった傾向がないかどうかを知りたいからです。  他にも、時間帯と関係があるか(夜にひどい、朝起きた時がひどいなど)、体の動きと関係があるか(体をひねると痛い、歩くと痛い)といった傾向があるかどうかも大切です。  一方、じっとしていても痛い、何をしても痛みが変わらない、というタイプの痛みを「安静時痛」と呼びますが、これも大切な情報です。安静にしていても痛いケースでは、そのように伝えましょう。  こうしたポイントは突然聞かれても答えにくいと思いますが、事前に意識していれば答えやすいはずです。  ◇どんな種類の痛みか  重い痛み、キリキリする痛み、ジンジンする痛みなど、痛みの性質を説明しましょう。例えば心筋梗塞の患者さんは「重苦しい」「しめつけられる」「圧迫されるような」胸の不快感を訴えるのが特徴とされます。  クモ膜下出血は、時に「バットで殴られたような」と表現されることもある、突発的な激しい痛みが特徴的です。このような痛みの表現は難しいと思いますが、可能であれば説明できるとよいでしょう。  ◇痛みの場所と放散  痛む部位を正確に伝えること、またそれがどのくらいの範囲に広がっているかを説明することが重要です。  おなかが痛い時、指先でピンポイントに指せるくらい狭い範囲なら、内臓よりも体表面に原因のある痛みを想定します(もちろん帯状疱疹=ほうしん=のように、範囲は広いが体表面の痛みという例外もあります)。  虫垂炎(いわゆる「盲腸」)の痛みは、最初はみぞおちが痛くなり、その後右下腹部に移動する、というケースが典型的とされます(そうでないケースも多いですが)。  心筋梗塞の胸の痛みは、ときに肩や喉に放散する(痛みの範囲が広がる)ことがあり、肩こりや歯の痛みと表現されることもあります。  痛みの部位や広がりについては、正確に説明できるようにしておきましょう。  ◇痛みの強さ  外来で、おそらく患者さんが最も伝えたいと思っているのが、「どのくらい痛いか」です。痛みの強さを説明する時にもコツがあります。「これまで経験したことがないような痛みかどうか」を伝えることです。  例えば、クモ膜下出血や脳出血、髄膜炎など危険な頭痛を疑う場合、私たちは「人生最大の痛みですか?」と聞くことがあります。一方、片頭痛など、同じ種類の頭痛発作を繰り返す病気もあります。  「すごく痛い!」と強く訴えるより、「こんな痛みは初めてか」「以前にも同じような痛みを経験したか」を伝えることが大切です。また経験したことがあるなら、それはいつごろか、どのくらいの頻度で起こるのか、医師に何と診断されたかも合わせて説明できるとよいでしょう。  ◇時間経過  痛みの時間経過を説明する上で大切なポイントが二つあります。「いつから痛いか」「悪くなったり良くなったり、という痛みの波があるか」ということです。例えば「1年前から同じくらいずっと痛い」という場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなります。 おなかの激痛で腹膜炎を疑っていても、「1時間前は激痛だったけれど、痛みに波があって今は全く痛くない」という場合は、その可能性は低くなります(もちろん自覚症状がそうであっても、おなかの診察をすると腹膜炎が疑われる、というケースもあります)。発症したタイミングと、発症してから受診時までの痛みの変化を説明するとよいでしょう。  以上6点が、痛みについて医師が知りたいポイントです。  むろん、痛みでつらい時に多くのことを冷静に伝えるのは難しいでしょう。しかし、症状がつらい時ほど、その症状を医師にうまく伝えきれなかった経験は多いはずです。「一般的に何を聞かれるか」がわかっていれば、少し落ち着いて医師に説明できるのではないでしょうか。
私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、何を知りたい時ですか。
私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、「突然痛くなったか」それとも「徐々に痛くなったか」を知りたい時です
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医療
病院で痛みを説明する六つのコツ 医師は何を知りたいのか  病院で自分の痛みを医師にうまく説明できず、もどかしい思いをした経験はありませんか?外来で医師から質問攻めにされ、しどろもどろで答えたはいいが、家に帰ってから「しまった、あのこと言い忘れた!言えば医師の判断は変わったかもしれない」と不安になったことがある、という方も多いでしょう。  今回は、医師にうまく痛みを説明するコツを紹介したいと思います。  ◇私たちが学ぶ問診方法  私たちは、医学生あるいは研修医の時に患者さんに対する問診の方法を学びます。  どこかの痛みで外来を受診された患者さんに、「どういう順序で何を尋ねるか」についても、細かく学ぶことになります。ということは、私たちがどんな方法で患者さんに問診するかを知っていれば、「何を聞かれるか」はおのずと明らかだということになります。  何を聞かれるかを知っていれば事前に準備ができ、必要な事項を落ち着いて医師に伝えることができます。  では、私たちは「痛み」を訴える患者さんに何を尋ねるでしょうか?その答えは以下の六つのポイントに集約されます。 (1)どんなふうに発症したか (2)どうすると痛みが軽くなる、あるいは強くなるか (3)どんな種類の痛みか (4)痛みの場所 (5)痛みの強さ (6)時間経過  これだけでは分かりにくいでしょう。順に分かりやすく解説していきます。  ◇どんなふうに発症したか  私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、「突然痛くなったか」それとも「徐々に痛くなったか」を知りたい時です。「突然」というのは「何をしている時に発症したか」をかなり細かく言える、というケースです。  例えば、クモ膜下出血はある瞬間に「突然」頭痛が起こることが多い疾患です。典型的なケースでは「何をしている時に痛くなりましたか?」と尋ねると、「テレビドラマのこのセリフの時」というくらい痛みのタイミングを細かく言えたり、「何時何分に」と「分」まで正確に言えたりします。  医師から「突然痛くなりましたか?」と聞かれた場合は、こういう始まり方であったかどうかを聞いている、と思っておきましょう。  一方、ある瞬間痛くなったのではなく、「徐々に痛くなってきた」というケースもあるでしょう。その場合は、「何時ごろから何時間くらいかけて痛くなってきたか」を説明できるとよいでしょう。  ◇どうすれば痛みが強くなる、あるいは軽くなるか  例えば、腹痛で受診された方には、痛みが食事と関係があるかを尋ねることが多いです。空腹時にひどい、食後にひどい、食事とは関係なくひどい、といった傾向がないかどうかを知りたいからです。  他にも、時間帯と関係があるか(夜にひどい、朝起きた時がひどいなど)、体の動きと関係があるか(体をひねると痛い、歩くと痛い)といった傾向があるかどうかも大切です。  一方、じっとしていても痛い、何をしても痛みが変わらない、というタイプの痛みを「安静時痛」と呼びますが、これも大切な情報です。安静にしていても痛いケースでは、そのように伝えましょう。  こうしたポイントは突然聞かれても答えにくいと思いますが、事前に意識していれば答えやすいはずです。  ◇どんな種類の痛みか  重い痛み、キリキリする痛み、ジンジンする痛みなど、痛みの性質を説明しましょう。例えば心筋梗塞の患者さんは「重苦しい」「しめつけられる」「圧迫されるような」胸の不快感を訴えるのが特徴とされます。  クモ膜下出血は、時に「バットで殴られたような」と表現されることもある、突発的な激しい痛みが特徴的です。このような痛みの表現は難しいと思いますが、可能であれば説明できるとよいでしょう。  ◇痛みの場所と放散  痛む部位を正確に伝えること、またそれがどのくらいの範囲に広がっているかを説明することが重要です。  おなかが痛い時、指先でピンポイントに指せるくらい狭い範囲なら、内臓よりも体表面に原因のある痛みを想定します(もちろん帯状疱疹=ほうしん=のように、範囲は広いが体表面の痛みという例外もあります)。  虫垂炎(いわゆる「盲腸」)の痛みは、最初はみぞおちが痛くなり、その後右下腹部に移動する、というケースが典型的とされます(そうでないケースも多いですが)。  心筋梗塞の胸の痛みは、ときに肩や喉に放散する(痛みの範囲が広がる)ことがあり、肩こりや歯の痛みと表現されることもあります。  痛みの部位や広がりについては、正確に説明できるようにしておきましょう。  ◇痛みの強さ  外来で、おそらく患者さんが最も伝えたいと思っているのが、「どのくらい痛いか」です。痛みの強さを説明する時にもコツがあります。「これまで経験したことがないような痛みかどうか」を伝えることです。  例えば、クモ膜下出血や脳出血、髄膜炎など危険な頭痛を疑う場合、私たちは「人生最大の痛みですか?」と聞くことがあります。一方、片頭痛など、同じ種類の頭痛発作を繰り返す病気もあります。  「すごく痛い!」と強く訴えるより、「こんな痛みは初めてか」「以前にも同じような痛みを経験したか」を伝えることが大切です。また経験したことがあるなら、それはいつごろか、どのくらいの頻度で起こるのか、医師に何と診断されたかも合わせて説明できるとよいでしょう。  ◇時間経過  痛みの時間経過を説明する上で大切なポイントが二つあります。「いつから痛いか」「悪くなったり良くなったり、という痛みの波があるか」ということです。例えば「1年前から同じくらいずっと痛い」という場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなります。 おなかの激痛で腹膜炎を疑っていても、「1時間前は激痛だったけれど、痛みに波があって今は全く痛くない」という場合は、その可能性は低くなります(もちろん自覚症状がそうであっても、おなかの診察をすると腹膜炎が疑われる、というケースもあります)。発症したタイミングと、発症してから受診時までの痛みの変化を説明するとよいでしょう。  以上6点が、痛みについて医師が知りたいポイントです。  むろん、痛みでつらい時に多くのことを冷静に伝えるのは難しいでしょう。しかし、症状がつらい時ほど、その症状を医師にうまく伝えきれなかった経験は多いはずです。「一般的に何を聞かれるか」がわかっていれば、少し落ち着いて医師に説明できるのではないでしょうか。
腹痛で受診された方には、痛みが何と関係があるかを尋ねることが多いですか。
腹痛で受診された方には、痛みが食事と関係があるかを尋ねることが多いです。
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医療
病院で痛みを説明する六つのコツ 医師は何を知りたいのか  病院で自分の痛みを医師にうまく説明できず、もどかしい思いをした経験はありませんか?外来で医師から質問攻めにされ、しどろもどろで答えたはいいが、家に帰ってから「しまった、あのこと言い忘れた!言えば医師の判断は変わったかもしれない」と不安になったことがある、という方も多いでしょう。  今回は、医師にうまく痛みを説明するコツを紹介したいと思います。  ◇私たちが学ぶ問診方法  私たちは、医学生あるいは研修医の時に患者さんに対する問診の方法を学びます。  どこかの痛みで外来を受診された患者さんに、「どういう順序で何を尋ねるか」についても、細かく学ぶことになります。ということは、私たちがどんな方法で患者さんに問診するかを知っていれば、「何を聞かれるか」はおのずと明らかだということになります。  何を聞かれるかを知っていれば事前に準備ができ、必要な事項を落ち着いて医師に伝えることができます。  では、私たちは「痛み」を訴える患者さんに何を尋ねるでしょうか?その答えは以下の六つのポイントに集約されます。 (1)どんなふうに発症したか (2)どうすると痛みが軽くなる、あるいは強くなるか (3)どんな種類の痛みか (4)痛みの場所 (5)痛みの強さ (6)時間経過  これだけでは分かりにくいでしょう。順に分かりやすく解説していきます。  ◇どんなふうに発症したか  私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、「突然痛くなったか」それとも「徐々に痛くなったか」を知りたい時です。「突然」というのは「何をしている時に発症したか」をかなり細かく言える、というケースです。  例えば、クモ膜下出血はある瞬間に「突然」頭痛が起こることが多い疾患です。典型的なケースでは「何をしている時に痛くなりましたか?」と尋ねると、「テレビドラマのこのセリフの時」というくらい痛みのタイミングを細かく言えたり、「何時何分に」と「分」まで正確に言えたりします。  医師から「突然痛くなりましたか?」と聞かれた場合は、こういう始まり方であったかどうかを聞いている、と思っておきましょう。  一方、ある瞬間痛くなったのではなく、「徐々に痛くなってきた」というケースもあるでしょう。その場合は、「何時ごろから何時間くらいかけて痛くなってきたか」を説明できるとよいでしょう。  ◇どうすれば痛みが強くなる、あるいは軽くなるか  例えば、腹痛で受診された方には、痛みが食事と関係があるかを尋ねることが多いです。空腹時にひどい、食後にひどい、食事とは関係なくひどい、といった傾向がないかどうかを知りたいからです。  他にも、時間帯と関係があるか(夜にひどい、朝起きた時がひどいなど)、体の動きと関係があるか(体をひねると痛い、歩くと痛い)といった傾向があるかどうかも大切です。  一方、じっとしていても痛い、何をしても痛みが変わらない、というタイプの痛みを「安静時痛」と呼びますが、これも大切な情報です。安静にしていても痛いケースでは、そのように伝えましょう。  こうしたポイントは突然聞かれても答えにくいと思いますが、事前に意識していれば答えやすいはずです。  ◇どんな種類の痛みか  重い痛み、キリキリする痛み、ジンジンする痛みなど、痛みの性質を説明しましょう。例えば心筋梗塞の患者さんは「重苦しい」「しめつけられる」「圧迫されるような」胸の不快感を訴えるのが特徴とされます。  クモ膜下出血は、時に「バットで殴られたような」と表現されることもある、突発的な激しい痛みが特徴的です。このような痛みの表現は難しいと思いますが、可能であれば説明できるとよいでしょう。  ◇痛みの場所と放散  痛む部位を正確に伝えること、またそれがどのくらいの範囲に広がっているかを説明することが重要です。  おなかが痛い時、指先でピンポイントに指せるくらい狭い範囲なら、内臓よりも体表面に原因のある痛みを想定します(もちろん帯状疱疹=ほうしん=のように、範囲は広いが体表面の痛みという例外もあります)。  虫垂炎(いわゆる「盲腸」)の痛みは、最初はみぞおちが痛くなり、その後右下腹部に移動する、というケースが典型的とされます(そうでないケースも多いですが)。  心筋梗塞の胸の痛みは、ときに肩や喉に放散する(痛みの範囲が広がる)ことがあり、肩こりや歯の痛みと表現されることもあります。  痛みの部位や広がりについては、正確に説明できるようにしておきましょう。  ◇痛みの強さ  外来で、おそらく患者さんが最も伝えたいと思っているのが、「どのくらい痛いか」です。痛みの強さを説明する時にもコツがあります。「これまで経験したことがないような痛みかどうか」を伝えることです。  例えば、クモ膜下出血や脳出血、髄膜炎など危険な頭痛を疑う場合、私たちは「人生最大の痛みですか?」と聞くことがあります。一方、片頭痛など、同じ種類の頭痛発作を繰り返す病気もあります。  「すごく痛い!」と強く訴えるより、「こんな痛みは初めてか」「以前にも同じような痛みを経験したか」を伝えることが大切です。また経験したことがあるなら、それはいつごろか、どのくらいの頻度で起こるのか、医師に何と診断されたかも合わせて説明できるとよいでしょう。  ◇時間経過  痛みの時間経過を説明する上で大切なポイントが二つあります。「いつから痛いか」「悪くなったり良くなったり、という痛みの波があるか」ということです。例えば「1年前から同じくらいずっと痛い」という場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなります。 おなかの激痛で腹膜炎を疑っていても、「1時間前は激痛だったけれど、痛みに波があって今は全く痛くない」という場合は、その可能性は低くなります(もちろん自覚症状がそうであっても、おなかの診察をすると腹膜炎が疑われる、というケースもあります)。発症したタイミングと、発症してから受診時までの痛みの変化を説明するとよいでしょう。  以上6点が、痛みについて医師が知りたいポイントです。  むろん、痛みでつらい時に多くのことを冷静に伝えるのは難しいでしょう。しかし、症状がつらい時ほど、その症状を医師にうまく伝えきれなかった経験は多いはずです。「一般的に何を聞かれるか」がわかっていれば、少し落ち着いて医師に説明できるのではないでしょうか。
心筋梗塞の患者さんはどのような胸の不快感を訴えるのが特徴ですか。
心筋梗塞の患者さんは「重苦しい」「しめつけられる」「圧迫されるような」胸の不快感を訴えるのが特徴です。
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医療
病院で痛みを説明する六つのコツ 医師は何を知りたいのか  病院で自分の痛みを医師にうまく説明できず、もどかしい思いをした経験はありませんか?外来で医師から質問攻めにされ、しどろもどろで答えたはいいが、家に帰ってから「しまった、あのこと言い忘れた!言えば医師の判断は変わったかもしれない」と不安になったことがある、という方も多いでしょう。  今回は、医師にうまく痛みを説明するコツを紹介したいと思います。  ◇私たちが学ぶ問診方法  私たちは、医学生あるいは研修医の時に患者さんに対する問診の方法を学びます。  どこかの痛みで外来を受診された患者さんに、「どういう順序で何を尋ねるか」についても、細かく学ぶことになります。ということは、私たちがどんな方法で患者さんに問診するかを知っていれば、「何を聞かれるか」はおのずと明らかだということになります。  何を聞かれるかを知っていれば事前に準備ができ、必要な事項を落ち着いて医師に伝えることができます。  では、私たちは「痛み」を訴える患者さんに何を尋ねるでしょうか?その答えは以下の六つのポイントに集約されます。 (1)どんなふうに発症したか (2)どうすると痛みが軽くなる、あるいは強くなるか (3)どんな種類の痛みか (4)痛みの場所 (5)痛みの強さ (6)時間経過  これだけでは分かりにくいでしょう。順に分かりやすく解説していきます。  ◇どんなふうに発症したか  私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、「突然痛くなったか」それとも「徐々に痛くなったか」を知りたい時です。「突然」というのは「何をしている時に発症したか」をかなり細かく言える、というケースです。  例えば、クモ膜下出血はある瞬間に「突然」頭痛が起こることが多い疾患です。典型的なケースでは「何をしている時に痛くなりましたか?」と尋ねると、「テレビドラマのこのセリフの時」というくらい痛みのタイミングを細かく言えたり、「何時何分に」と「分」まで正確に言えたりします。  医師から「突然痛くなりましたか?」と聞かれた場合は、こういう始まり方であったかどうかを聞いている、と思っておきましょう。  一方、ある瞬間痛くなったのではなく、「徐々に痛くなってきた」というケースもあるでしょう。その場合は、「何時ごろから何時間くらいかけて痛くなってきたか」を説明できるとよいでしょう。  ◇どうすれば痛みが強くなる、あるいは軽くなるか  例えば、腹痛で受診された方には、痛みが食事と関係があるかを尋ねることが多いです。空腹時にひどい、食後にひどい、食事とは関係なくひどい、といった傾向がないかどうかを知りたいからです。  他にも、時間帯と関係があるか(夜にひどい、朝起きた時がひどいなど)、体の動きと関係があるか(体をひねると痛い、歩くと痛い)といった傾向があるかどうかも大切です。  一方、じっとしていても痛い、何をしても痛みが変わらない、というタイプの痛みを「安静時痛」と呼びますが、これも大切な情報です。安静にしていても痛いケースでは、そのように伝えましょう。  こうしたポイントは突然聞かれても答えにくいと思いますが、事前に意識していれば答えやすいはずです。  ◇どんな種類の痛みか  重い痛み、キリキリする痛み、ジンジンする痛みなど、痛みの性質を説明しましょう。例えば心筋梗塞の患者さんは「重苦しい」「しめつけられる」「圧迫されるような」胸の不快感を訴えるのが特徴とされます。  クモ膜下出血は、時に「バットで殴られたような」と表現されることもある、突発的な激しい痛みが特徴的です。このような痛みの表現は難しいと思いますが、可能であれば説明できるとよいでしょう。  ◇痛みの場所と放散  痛む部位を正確に伝えること、またそれがどのくらいの範囲に広がっているかを説明することが重要です。  おなかが痛い時、指先でピンポイントに指せるくらい狭い範囲なら、内臓よりも体表面に原因のある痛みを想定します(もちろん帯状疱疹=ほうしん=のように、範囲は広いが体表面の痛みという例外もあります)。  虫垂炎(いわゆる「盲腸」)の痛みは、最初はみぞおちが痛くなり、その後右下腹部に移動する、というケースが典型的とされます(そうでないケースも多いですが)。  心筋梗塞の胸の痛みは、ときに肩や喉に放散する(痛みの範囲が広がる)ことがあり、肩こりや歯の痛みと表現されることもあります。  痛みの部位や広がりについては、正確に説明できるようにしておきましょう。  ◇痛みの強さ  外来で、おそらく患者さんが最も伝えたいと思っているのが、「どのくらい痛いか」です。痛みの強さを説明する時にもコツがあります。「これまで経験したことがないような痛みかどうか」を伝えることです。  例えば、クモ膜下出血や脳出血、髄膜炎など危険な頭痛を疑う場合、私たちは「人生最大の痛みですか?」と聞くことがあります。一方、片頭痛など、同じ種類の頭痛発作を繰り返す病気もあります。  「すごく痛い!」と強く訴えるより、「こんな痛みは初めてか」「以前にも同じような痛みを経験したか」を伝えることが大切です。また経験したことがあるなら、それはいつごろか、どのくらいの頻度で起こるのか、医師に何と診断されたかも合わせて説明できるとよいでしょう。  ◇時間経過  痛みの時間経過を説明する上で大切なポイントが二つあります。「いつから痛いか」「悪くなったり良くなったり、という痛みの波があるか」ということです。例えば「1年前から同じくらいずっと痛い」という場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなります。 おなかの激痛で腹膜炎を疑っていても、「1時間前は激痛だったけれど、痛みに波があって今は全く痛くない」という場合は、その可能性は低くなります(もちろん自覚症状がそうであっても、おなかの診察をすると腹膜炎が疑われる、というケースもあります)。発症したタイミングと、発症してから受診時までの痛みの変化を説明するとよいでしょう。  以上6点が、痛みについて医師が知りたいポイントです。  むろん、痛みでつらい時に多くのことを冷静に伝えるのは難しいでしょう。しかし、症状がつらい時ほど、その症状を医師にうまく伝えきれなかった経験は多いはずです。「一般的に何を聞かれるか」がわかっていれば、少し落ち着いて医師に説明できるのではないでしょうか。
「すごく痛い!」と強く訴えるより、何を伝えることが大切ですか。
「すごく痛い!」と強く訴えるより、「こんな痛みは初めてか」「以前にも同じような痛みを経験したか」を伝えることが大切です。
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医療
病院で痛みを説明する六つのコツ 医師は何を知りたいのか  病院で自分の痛みを医師にうまく説明できず、もどかしい思いをした経験はありませんか?外来で医師から質問攻めにされ、しどろもどろで答えたはいいが、家に帰ってから「しまった、あのこと言い忘れた!言えば医師の判断は変わったかもしれない」と不安になったことがある、という方も多いでしょう。  今回は、医師にうまく痛みを説明するコツを紹介したいと思います。  ◇私たちが学ぶ問診方法  私たちは、医学生あるいは研修医の時に患者さんに対する問診の方法を学びます。  どこかの痛みで外来を受診された患者さんに、「どういう順序で何を尋ねるか」についても、細かく学ぶことになります。ということは、私たちがどんな方法で患者さんに問診するかを知っていれば、「何を聞かれるか」はおのずと明らかだということになります。  何を聞かれるかを知っていれば事前に準備ができ、必要な事項を落ち着いて医師に伝えることができます。  では、私たちは「痛み」を訴える患者さんに何を尋ねるでしょうか?その答えは以下の六つのポイントに集約されます。 (1)どんなふうに発症したか (2)どうすると痛みが軽くなる、あるいは強くなるか (3)どんな種類の痛みか (4)痛みの場所 (5)痛みの強さ (6)時間経過  これだけでは分かりにくいでしょう。順に分かりやすく解説していきます。  ◇どんなふうに発症したか  私たちが「どんなふうに発症したか」を尋ねる時は、「突然痛くなったか」それとも「徐々に痛くなったか」を知りたい時です。「突然」というのは「何をしている時に発症したか」をかなり細かく言える、というケースです。  例えば、クモ膜下出血はある瞬間に「突然」頭痛が起こることが多い疾患です。典型的なケースでは「何をしている時に痛くなりましたか?」と尋ねると、「テレビドラマのこのセリフの時」というくらい痛みのタイミングを細かく言えたり、「何時何分に」と「分」まで正確に言えたりします。  医師から「突然痛くなりましたか?」と聞かれた場合は、こういう始まり方であったかどうかを聞いている、と思っておきましょう。  一方、ある瞬間痛くなったのではなく、「徐々に痛くなってきた」というケースもあるでしょう。その場合は、「何時ごろから何時間くらいかけて痛くなってきたか」を説明できるとよいでしょう。  ◇どうすれば痛みが強くなる、あるいは軽くなるか  例えば、腹痛で受診された方には、痛みが食事と関係があるかを尋ねることが多いです。空腹時にひどい、食後にひどい、食事とは関係なくひどい、といった傾向がないかどうかを知りたいからです。  他にも、時間帯と関係があるか(夜にひどい、朝起きた時がひどいなど)、体の動きと関係があるか(体をひねると痛い、歩くと痛い)といった傾向があるかどうかも大切です。  一方、じっとしていても痛い、何をしても痛みが変わらない、というタイプの痛みを「安静時痛」と呼びますが、これも大切な情報です。安静にしていても痛いケースでは、そのように伝えましょう。  こうしたポイントは突然聞かれても答えにくいと思いますが、事前に意識していれば答えやすいはずです。  ◇どんな種類の痛みか  重い痛み、キリキリする痛み、ジンジンする痛みなど、痛みの性質を説明しましょう。例えば心筋梗塞の患者さんは「重苦しい」「しめつけられる」「圧迫されるような」胸の不快感を訴えるのが特徴とされます。  クモ膜下出血は、時に「バットで殴られたような」と表現されることもある、突発的な激しい痛みが特徴的です。このような痛みの表現は難しいと思いますが、可能であれば説明できるとよいでしょう。  ◇痛みの場所と放散  痛む部位を正確に伝えること、またそれがどのくらいの範囲に広がっているかを説明することが重要です。  おなかが痛い時、指先でピンポイントに指せるくらい狭い範囲なら、内臓よりも体表面に原因のある痛みを想定します(もちろん帯状疱疹=ほうしん=のように、範囲は広いが体表面の痛みという例外もあります)。  虫垂炎(いわゆる「盲腸」)の痛みは、最初はみぞおちが痛くなり、その後右下腹部に移動する、というケースが典型的とされます(そうでないケースも多いですが)。  心筋梗塞の胸の痛みは、ときに肩や喉に放散する(痛みの範囲が広がる)ことがあり、肩こりや歯の痛みと表現されることもあります。  痛みの部位や広がりについては、正確に説明できるようにしておきましょう。  ◇痛みの強さ  外来で、おそらく患者さんが最も伝えたいと思っているのが、「どのくらい痛いか」です。痛みの強さを説明する時にもコツがあります。「これまで経験したことがないような痛みかどうか」を伝えることです。  例えば、クモ膜下出血や脳出血、髄膜炎など危険な頭痛を疑う場合、私たちは「人生最大の痛みですか?」と聞くことがあります。一方、片頭痛など、同じ種類の頭痛発作を繰り返す病気もあります。  「すごく痛い!」と強く訴えるより、「こんな痛みは初めてか」「以前にも同じような痛みを経験したか」を伝えることが大切です。また経験したことがあるなら、それはいつごろか、どのくらいの頻度で起こるのか、医師に何と診断されたかも合わせて説明できるとよいでしょう。  ◇時間経過  痛みの時間経過を説明する上で大切なポイントが二つあります。「いつから痛いか」「悪くなったり良くなったり、という痛みの波があるか」ということです。例えば「1年前から同じくらいずっと痛い」という場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなります。 おなかの激痛で腹膜炎を疑っていても、「1時間前は激痛だったけれど、痛みに波があって今は全く痛くない」という場合は、その可能性は低くなります(もちろん自覚症状がそうであっても、おなかの診察をすると腹膜炎が疑われる、というケースもあります)。発症したタイミングと、発症してから受診時までの痛みの変化を説明するとよいでしょう。  以上6点が、痛みについて医師が知りたいポイントです。  むろん、痛みでつらい時に多くのことを冷静に伝えるのは難しいでしょう。しかし、症状がつらい時ほど、その症状を医師にうまく伝えきれなかった経験は多いはずです。「一般的に何を聞かれるか」がわかっていれば、少し落ち着いて医師に説明できるのではないでしょうか。
どのような場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなりますか。
「1年前から同じくらいずっと痛い」という場合は、「慢性的な痛み」なので、急性発症の危険な病気である可能性は低くなります。
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医療
あなたの薬、本当に効果ありますか? 治療の効果を示す難しさ  私が子どもの頃、風邪をひいてのどが痛くなり、母親に近くのクリニックに連れて行ってもらったことがあります。その時クリニックの医師は、ヨード液をたっぷり付けた綿をピンセットでつかんで、私ののどに塗りつけました。ひどく苦くて痛かったのですが、その翌日、のどの痛みがすっかり治っているのに気づきました。 治療の効果を示すのは難しい  私は子どもながら「あの人は名医だ!」と感動したのを覚えています。それ以後、私はヨード液をのどに塗れば風邪が治るのだと信じ、風邪をひいたら必ずそのクリニックに行くようにしました。ところが不思議なことに、すっきり治る時と治らない時があるのです。果たしてヨード液は効果があったのでしょうか?  それから何年もたって私は医師になり、今では、のどにヨード液を塗っても風邪は治らないと断言できます。ヨード液のうがい薬も現在、風邪の予防には推奨されておらず、水うがいで十分だと考えられています。では、なぜあの時風邪がすっきり治ったのでしょうか?  ◇自然に治る病気への介入  ヨード液をたっぷりのどに塗られた翌日、私の風邪がすっきり治ったのはなぜか。  その答えは簡単です。  風邪は自然に治るからです。私の場合、のどにヨード液を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪だったのです。  「AをしたらBという病気が治った」というのは、「Aの治療効果によってBが治った」のか、それとも「他の理由でBが治ったが、その前に偶然Aをしていた」のか、どちらなのかは分からない、ということに注意が必要です。病気が治る前にした行為と、病気が治ったことには必ずしも因果関係があるとは限らないからです。  風邪に対する点滴や抗菌薬(抗生物質)も同じです。風邪は点滴では治らない、というのは以前の記事で解説した通りですが、その記事を読んできっと、「私は点滴をしてもらったら風邪が治ったことがある!」と反論したくなった人がいるはずです。  残念ながら、点滴で風邪を治すことは医学的に不可能であり、風邪が治ったのは、自然に治る直前に偶然点滴を受けていただけです。  また、原則、風邪は抗菌薬では治りません。風邪はほとんどがウイルスによる感染症であり、抗菌薬は細菌による感染症にしか効果はないからです。ウイルスと細菌は全く別の微生物です。  「この抗菌薬だと風邪が治ったことがある!」と主張したくなる人がいるかもしれませんが、同じように、風邪が治る前に偶然その抗菌薬を内服していただけです。  世の中には「自然に治る病気」がたくさんあります。その病気が治る前にみなさんは、熱いサウナに入ったかもしれないし、おかゆを食べたかもしれないし、市販のサプリメントを飲んだかもしれません。そして偶然に行ったその行為が、病気の治療効果に結びついたのではないか、と誤解するのです。  一方、私たち医療者がこういう誤解をすることはありません。「ある治療が病気に対して効果がある」ということを証明するのがいかに大変かを知っているからです。 ◇治療の効果を証明する大変さ  病気に対する治療の効果を証明することは、実は非常に大変です。膨大なお金と時間をかけて、同じ病気の、条件がそろった患者さんたちのデータを集め、大掛かりな研究を行う必要があるからです。  例えば、ある病気に対してAという薬の効果を証明したいとします。患者さんを数百人集め、Aという薬を投与してその効果を調べる臨床試験を行うのですが、この時必ず比較対象として「Aを投与しない患者さん」を同じだけ集める必要があります。「Aを投与しなくても自然に良くなったかもしれない」という可能性を除外するためです。  これは前述した通りですね。ただし、Aを投与しない患者さんに「何も投与しない」というのが間違いとなるケースもあります。例えば自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、症状が良くなったような気分になる可能性があるからです。  そこでAを投与しない患者さんにも、「プラセボ(偽薬)」、つまり「見た目は薬のようだが効果は全くない偽の薬」を投与し、患者さん本人にはどちらが投与されたか分からないようにする必要があるのです。  一方、試験のタイプによってはプラセボが使えないケースもあります。例えばがんを治療したい患者さんを集める試験では、プラセボだけが投与されるグループをつくることができません。  がんを積極的に治療したいと思っている方は、治療薬が投与されないグループに入るかもしれない試験には参加しません。そこでこういう場合は、従来使用されているBという薬と、新しい薬Aを比較する、という試験を行うことになります。  一つの施設で行うと患者層が偏る可能性があるため、多くの施設から患者さんを集めることもよくあります。さらには、医師にも担当する患者さんがどちらのグループなのかを知らせないようにすることもあります。  「新しい薬の方が効くかもしれない」という先入観が、診察した時の所見を良い解釈に導いてしまう可能性があるからです。患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない、このような方法を「二重盲検法(にじゅうもうけんほう)」と呼びます。もちろん患者さんは試験期間中、結果に影響を与えるような他の治療は行わないのが条件です。  そして治療の結果、患者さんにどんな変化があり、どんな副作用があるかを細かくデータを取りながらまとめていきます。これらの作業には、膨大な医療者たちの苦労と、膨大なお金が必要です。  こうして行われた臨床試験の結果、薬の効果が示されて初めて、「その病気にAは効果がある」と言えることになります。治療の効果を示す、というのは、このくらい大変なことなのです。  例外的に希少な病気を除き、多くの病気はこのようにして治療の効果が示されてきた歴史があります。これらの数々の研究によって積み重ねられた信頼性の高いデータを、私たちは信用することにしています。  一方、そうではない信頼性の低い情報は、参考程度にすることはあっても、日常診療の意思決定の根拠にすることはありません。「10人の患者さんにAという薬を投与したら、全員病気が良くなったそうです」と言われても、私たち医師の心は動きません。ある治療が病気に対して効果があるかどうかを証明することがいかに大変かを、身を持って知っているからです。  医師は、このような考え方に基づいて日々治療を行っている、ということを分かっていただけると幸いです。
私の場合、のどに何を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪でしたか。
私の場合、のどにヨード液を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪でした。
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医療
あなたの薬、本当に効果ありますか? 治療の効果を示す難しさ  私が子どもの頃、風邪をひいてのどが痛くなり、母親に近くのクリニックに連れて行ってもらったことがあります。その時クリニックの医師は、ヨード液をたっぷり付けた綿をピンセットでつかんで、私ののどに塗りつけました。ひどく苦くて痛かったのですが、その翌日、のどの痛みがすっかり治っているのに気づきました。 治療の効果を示すのは難しい  私は子どもながら「あの人は名医だ!」と感動したのを覚えています。それ以後、私はヨード液をのどに塗れば風邪が治るのだと信じ、風邪をひいたら必ずそのクリニックに行くようにしました。ところが不思議なことに、すっきり治る時と治らない時があるのです。果たしてヨード液は効果があったのでしょうか?  それから何年もたって私は医師になり、今では、のどにヨード液を塗っても風邪は治らないと断言できます。ヨード液のうがい薬も現在、風邪の予防には推奨されておらず、水うがいで十分だと考えられています。では、なぜあの時風邪がすっきり治ったのでしょうか?  ◇自然に治る病気への介入  ヨード液をたっぷりのどに塗られた翌日、私の風邪がすっきり治ったのはなぜか。  その答えは簡単です。  風邪は自然に治るからです。私の場合、のどにヨード液を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪だったのです。  「AをしたらBという病気が治った」というのは、「Aの治療効果によってBが治った」のか、それとも「他の理由でBが治ったが、その前に偶然Aをしていた」のか、どちらなのかは分からない、ということに注意が必要です。病気が治る前にした行為と、病気が治ったことには必ずしも因果関係があるとは限らないからです。  風邪に対する点滴や抗菌薬(抗生物質)も同じです。風邪は点滴では治らない、というのは以前の記事で解説した通りですが、その記事を読んできっと、「私は点滴をしてもらったら風邪が治ったことがある!」と反論したくなった人がいるはずです。  残念ながら、点滴で風邪を治すことは医学的に不可能であり、風邪が治ったのは、自然に治る直前に偶然点滴を受けていただけです。  また、原則、風邪は抗菌薬では治りません。風邪はほとんどがウイルスによる感染症であり、抗菌薬は細菌による感染症にしか効果はないからです。ウイルスと細菌は全く別の微生物です。  「この抗菌薬だと風邪が治ったことがある!」と主張したくなる人がいるかもしれませんが、同じように、風邪が治る前に偶然その抗菌薬を内服していただけです。  世の中には「自然に治る病気」がたくさんあります。その病気が治る前にみなさんは、熱いサウナに入ったかもしれないし、おかゆを食べたかもしれないし、市販のサプリメントを飲んだかもしれません。そして偶然に行ったその行為が、病気の治療効果に結びついたのではないか、と誤解するのです。  一方、私たち医療者がこういう誤解をすることはありません。「ある治療が病気に対して効果がある」ということを証明するのがいかに大変かを知っているからです。 ◇治療の効果を証明する大変さ  病気に対する治療の効果を証明することは、実は非常に大変です。膨大なお金と時間をかけて、同じ病気の、条件がそろった患者さんたちのデータを集め、大掛かりな研究を行う必要があるからです。  例えば、ある病気に対してAという薬の効果を証明したいとします。患者さんを数百人集め、Aという薬を投与してその効果を調べる臨床試験を行うのですが、この時必ず比較対象として「Aを投与しない患者さん」を同じだけ集める必要があります。「Aを投与しなくても自然に良くなったかもしれない」という可能性を除外するためです。  これは前述した通りですね。ただし、Aを投与しない患者さんに「何も投与しない」というのが間違いとなるケースもあります。例えば自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、症状が良くなったような気分になる可能性があるからです。  そこでAを投与しない患者さんにも、「プラセボ(偽薬)」、つまり「見た目は薬のようだが効果は全くない偽の薬」を投与し、患者さん本人にはどちらが投与されたか分からないようにする必要があるのです。  一方、試験のタイプによってはプラセボが使えないケースもあります。例えばがんを治療したい患者さんを集める試験では、プラセボだけが投与されるグループをつくることができません。  がんを積極的に治療したいと思っている方は、治療薬が投与されないグループに入るかもしれない試験には参加しません。そこでこういう場合は、従来使用されているBという薬と、新しい薬Aを比較する、という試験を行うことになります。  一つの施設で行うと患者層が偏る可能性があるため、多くの施設から患者さんを集めることもよくあります。さらには、医師にも担当する患者さんがどちらのグループなのかを知らせないようにすることもあります。  「新しい薬の方が効くかもしれない」という先入観が、診察した時の所見を良い解釈に導いてしまう可能性があるからです。患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない、このような方法を「二重盲検法(にじゅうもうけんほう)」と呼びます。もちろん患者さんは試験期間中、結果に影響を与えるような他の治療は行わないのが条件です。  そして治療の結果、患者さんにどんな変化があり、どんな副作用があるかを細かくデータを取りながらまとめていきます。これらの作業には、膨大な医療者たちの苦労と、膨大なお金が必要です。  こうして行われた臨床試験の結果、薬の効果が示されて初めて、「その病気にAは効果がある」と言えることになります。治療の効果を示す、というのは、このくらい大変なことなのです。  例外的に希少な病気を除き、多くの病気はこのようにして治療の効果が示されてきた歴史があります。これらの数々の研究によって積み重ねられた信頼性の高いデータを、私たちは信用することにしています。  一方、そうではない信頼性の低い情報は、参考程度にすることはあっても、日常診療の意思決定の根拠にすることはありません。「10人の患者さんにAという薬を投与したら、全員病気が良くなったそうです」と言われても、私たち医師の心は動きません。ある治療が病気に対して効果があるかどうかを証明することがいかに大変かを、身を持って知っているからです。  医師は、このような考え方に基づいて日々治療を行っている、ということを分かっていただけると幸いです。
ウイルスと細菌は全く別の何ですか。
ウイルスと細菌は全く別の微生物です。
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あなたの薬、本当に効果ありますか? 治療の効果を示す難しさ  私が子どもの頃、風邪をひいてのどが痛くなり、母親に近くのクリニックに連れて行ってもらったことがあります。その時クリニックの医師は、ヨード液をたっぷり付けた綿をピンセットでつかんで、私ののどに塗りつけました。ひどく苦くて痛かったのですが、その翌日、のどの痛みがすっかり治っているのに気づきました。 治療の効果を示すのは難しい  私は子どもながら「あの人は名医だ!」と感動したのを覚えています。それ以後、私はヨード液をのどに塗れば風邪が治るのだと信じ、風邪をひいたら必ずそのクリニックに行くようにしました。ところが不思議なことに、すっきり治る時と治らない時があるのです。果たしてヨード液は効果があったのでしょうか?  それから何年もたって私は医師になり、今では、のどにヨード液を塗っても風邪は治らないと断言できます。ヨード液のうがい薬も現在、風邪の予防には推奨されておらず、水うがいで十分だと考えられています。では、なぜあの時風邪がすっきり治ったのでしょうか?  ◇自然に治る病気への介入  ヨード液をたっぷりのどに塗られた翌日、私の風邪がすっきり治ったのはなぜか。  その答えは簡単です。  風邪は自然に治るからです。私の場合、のどにヨード液を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪だったのです。  「AをしたらBという病気が治った」というのは、「Aの治療効果によってBが治った」のか、それとも「他の理由でBが治ったが、その前に偶然Aをしていた」のか、どちらなのかは分からない、ということに注意が必要です。病気が治る前にした行為と、病気が治ったことには必ずしも因果関係があるとは限らないからです。  風邪に対する点滴や抗菌薬(抗生物質)も同じです。風邪は点滴では治らない、というのは以前の記事で解説した通りですが、その記事を読んできっと、「私は点滴をしてもらったら風邪が治ったことがある!」と反論したくなった人がいるはずです。  残念ながら、点滴で風邪を治すことは医学的に不可能であり、風邪が治ったのは、自然に治る直前に偶然点滴を受けていただけです。  また、原則、風邪は抗菌薬では治りません。風邪はほとんどがウイルスによる感染症であり、抗菌薬は細菌による感染症にしか効果はないからです。ウイルスと細菌は全く別の微生物です。  「この抗菌薬だと風邪が治ったことがある!」と主張したくなる人がいるかもしれませんが、同じように、風邪が治る前に偶然その抗菌薬を内服していただけです。  世の中には「自然に治る病気」がたくさんあります。その病気が治る前にみなさんは、熱いサウナに入ったかもしれないし、おかゆを食べたかもしれないし、市販のサプリメントを飲んだかもしれません。そして偶然に行ったその行為が、病気の治療効果に結びついたのではないか、と誤解するのです。  一方、私たち医療者がこういう誤解をすることはありません。「ある治療が病気に対して効果がある」ということを証明するのがいかに大変かを知っているからです。 ◇治療の効果を証明する大変さ  病気に対する治療の効果を証明することは、実は非常に大変です。膨大なお金と時間をかけて、同じ病気の、条件がそろった患者さんたちのデータを集め、大掛かりな研究を行う必要があるからです。  例えば、ある病気に対してAという薬の効果を証明したいとします。患者さんを数百人集め、Aという薬を投与してその効果を調べる臨床試験を行うのですが、この時必ず比較対象として「Aを投与しない患者さん」を同じだけ集める必要があります。「Aを投与しなくても自然に良くなったかもしれない」という可能性を除外するためです。  これは前述した通りですね。ただし、Aを投与しない患者さんに「何も投与しない」というのが間違いとなるケースもあります。例えば自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、症状が良くなったような気分になる可能性があるからです。  そこでAを投与しない患者さんにも、「プラセボ(偽薬)」、つまり「見た目は薬のようだが効果は全くない偽の薬」を投与し、患者さん本人にはどちらが投与されたか分からないようにする必要があるのです。  一方、試験のタイプによってはプラセボが使えないケースもあります。例えばがんを治療したい患者さんを集める試験では、プラセボだけが投与されるグループをつくることができません。  がんを積極的に治療したいと思っている方は、治療薬が投与されないグループに入るかもしれない試験には参加しません。そこでこういう場合は、従来使用されているBという薬と、新しい薬Aを比較する、という試験を行うことになります。  一つの施設で行うと患者層が偏る可能性があるため、多くの施設から患者さんを集めることもよくあります。さらには、医師にも担当する患者さんがどちらのグループなのかを知らせないようにすることもあります。  「新しい薬の方が効くかもしれない」という先入観が、診察した時の所見を良い解釈に導いてしまう可能性があるからです。患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない、このような方法を「二重盲検法(にじゅうもうけんほう)」と呼びます。もちろん患者さんは試験期間中、結果に影響を与えるような他の治療は行わないのが条件です。  そして治療の結果、患者さんにどんな変化があり、どんな副作用があるかを細かくデータを取りながらまとめていきます。これらの作業には、膨大な医療者たちの苦労と、膨大なお金が必要です。  こうして行われた臨床試験の結果、薬の効果が示されて初めて、「その病気にAは効果がある」と言えることになります。治療の効果を示す、というのは、このくらい大変なことなのです。  例外的に希少な病気を除き、多くの病気はこのようにして治療の効果が示されてきた歴史があります。これらの数々の研究によって積み重ねられた信頼性の高いデータを、私たちは信用することにしています。  一方、そうではない信頼性の低い情報は、参考程度にすることはあっても、日常診療の意思決定の根拠にすることはありません。「10人の患者さんにAという薬を投与したら、全員病気が良くなったそうです」と言われても、私たち医師の心は動きません。ある治療が病気に対して効果があるかどうかを証明することがいかに大変かを、身を持って知っているからです。  医師は、このような考え方に基づいて日々治療を行っている、ということを分かっていただけると幸いです。
Aという薬を投与してその効果を調べる臨床試験を行うのですが、この時必ず比較対象として何を同じだけ集める必要がありますか。
「Aを投与しない患者さん」を同じだけ集める必要があります。
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医療
あなたの薬、本当に効果ありますか? 治療の効果を示す難しさ  私が子どもの頃、風邪をひいてのどが痛くなり、母親に近くのクリニックに連れて行ってもらったことがあります。その時クリニックの医師は、ヨード液をたっぷり付けた綿をピンセットでつかんで、私ののどに塗りつけました。ひどく苦くて痛かったのですが、その翌日、のどの痛みがすっかり治っているのに気づきました。 治療の効果を示すのは難しい  私は子どもながら「あの人は名医だ!」と感動したのを覚えています。それ以後、私はヨード液をのどに塗れば風邪が治るのだと信じ、風邪をひいたら必ずそのクリニックに行くようにしました。ところが不思議なことに、すっきり治る時と治らない時があるのです。果たしてヨード液は効果があったのでしょうか?  それから何年もたって私は医師になり、今では、のどにヨード液を塗っても風邪は治らないと断言できます。ヨード液のうがい薬も現在、風邪の予防には推奨されておらず、水うがいで十分だと考えられています。では、なぜあの時風邪がすっきり治ったのでしょうか?  ◇自然に治る病気への介入  ヨード液をたっぷりのどに塗られた翌日、私の風邪がすっきり治ったのはなぜか。  その答えは簡単です。  風邪は自然に治るからです。私の場合、のどにヨード液を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪だったのです。  「AをしたらBという病気が治った」というのは、「Aの治療効果によってBが治った」のか、それとも「他の理由でBが治ったが、その前に偶然Aをしていた」のか、どちらなのかは分からない、ということに注意が必要です。病気が治る前にした行為と、病気が治ったことには必ずしも因果関係があるとは限らないからです。  風邪に対する点滴や抗菌薬(抗生物質)も同じです。風邪は点滴では治らない、というのは以前の記事で解説した通りですが、その記事を読んできっと、「私は点滴をしてもらったら風邪が治ったことがある!」と反論したくなった人がいるはずです。  残念ながら、点滴で風邪を治すことは医学的に不可能であり、風邪が治ったのは、自然に治る直前に偶然点滴を受けていただけです。  また、原則、風邪は抗菌薬では治りません。風邪はほとんどがウイルスによる感染症であり、抗菌薬は細菌による感染症にしか効果はないからです。ウイルスと細菌は全く別の微生物です。  「この抗菌薬だと風邪が治ったことがある!」と主張したくなる人がいるかもしれませんが、同じように、風邪が治る前に偶然その抗菌薬を内服していただけです。  世の中には「自然に治る病気」がたくさんあります。その病気が治る前にみなさんは、熱いサウナに入ったかもしれないし、おかゆを食べたかもしれないし、市販のサプリメントを飲んだかもしれません。そして偶然に行ったその行為が、病気の治療効果に結びついたのではないか、と誤解するのです。  一方、私たち医療者がこういう誤解をすることはありません。「ある治療が病気に対して効果がある」ということを証明するのがいかに大変かを知っているからです。 ◇治療の効果を証明する大変さ  病気に対する治療の効果を証明することは、実は非常に大変です。膨大なお金と時間をかけて、同じ病気の、条件がそろった患者さんたちのデータを集め、大掛かりな研究を行う必要があるからです。  例えば、ある病気に対してAという薬の効果を証明したいとします。患者さんを数百人集め、Aという薬を投与してその効果を調べる臨床試験を行うのですが、この時必ず比較対象として「Aを投与しない患者さん」を同じだけ集める必要があります。「Aを投与しなくても自然に良くなったかもしれない」という可能性を除外するためです。  これは前述した通りですね。ただし、Aを投与しない患者さんに「何も投与しない」というのが間違いとなるケースもあります。例えば自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、症状が良くなったような気分になる可能性があるからです。  そこでAを投与しない患者さんにも、「プラセボ(偽薬)」、つまり「見た目は薬のようだが効果は全くない偽の薬」を投与し、患者さん本人にはどちらが投与されたか分からないようにする必要があるのです。  一方、試験のタイプによってはプラセボが使えないケースもあります。例えばがんを治療したい患者さんを集める試験では、プラセボだけが投与されるグループをつくることができません。  がんを積極的に治療したいと思っている方は、治療薬が投与されないグループに入るかもしれない試験には参加しません。そこでこういう場合は、従来使用されているBという薬と、新しい薬Aを比較する、という試験を行うことになります。  一つの施設で行うと患者層が偏る可能性があるため、多くの施設から患者さんを集めることもよくあります。さらには、医師にも担当する患者さんがどちらのグループなのかを知らせないようにすることもあります。  「新しい薬の方が効くかもしれない」という先入観が、診察した時の所見を良い解釈に導いてしまう可能性があるからです。患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない、このような方法を「二重盲検法(にじゅうもうけんほう)」と呼びます。もちろん患者さんは試験期間中、結果に影響を与えるような他の治療は行わないのが条件です。  そして治療の結果、患者さんにどんな変化があり、どんな副作用があるかを細かくデータを取りながらまとめていきます。これらの作業には、膨大な医療者たちの苦労と、膨大なお金が必要です。  こうして行われた臨床試験の結果、薬の効果が示されて初めて、「その病気にAは効果がある」と言えることになります。治療の効果を示す、というのは、このくらい大変なことなのです。  例外的に希少な病気を除き、多くの病気はこのようにして治療の効果が示されてきた歴史があります。これらの数々の研究によって積み重ねられた信頼性の高いデータを、私たちは信用することにしています。  一方、そうではない信頼性の低い情報は、参考程度にすることはあっても、日常診療の意思決定の根拠にすることはありません。「10人の患者さんにAという薬を投与したら、全員病気が良くなったそうです」と言われても、私たち医師の心は動きません。ある治療が病気に対して効果があるかどうかを証明することがいかに大変かを、身を持って知っているからです。  医師は、このような考え方に基づいて日々治療を行っている、ということを分かっていただけると幸いです。
自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、どのような気分になる可能性がありますか。
自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、症状が良くなったような気分になる可能性があります。
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医療
あなたの薬、本当に効果ありますか? 治療の効果を示す難しさ  私が子どもの頃、風邪をひいてのどが痛くなり、母親に近くのクリニックに連れて行ってもらったことがあります。その時クリニックの医師は、ヨード液をたっぷり付けた綿をピンセットでつかんで、私ののどに塗りつけました。ひどく苦くて痛かったのですが、その翌日、のどの痛みがすっかり治っているのに気づきました。 治療の効果を示すのは難しい  私は子どもながら「あの人は名医だ!」と感動したのを覚えています。それ以後、私はヨード液をのどに塗れば風邪が治るのだと信じ、風邪をひいたら必ずそのクリニックに行くようにしました。ところが不思議なことに、すっきり治る時と治らない時があるのです。果たしてヨード液は効果があったのでしょうか?  それから何年もたって私は医師になり、今では、のどにヨード液を塗っても風邪は治らないと断言できます。ヨード液のうがい薬も現在、風邪の予防には推奨されておらず、水うがいで十分だと考えられています。では、なぜあの時風邪がすっきり治ったのでしょうか?  ◇自然に治る病気への介入  ヨード液をたっぷりのどに塗られた翌日、私の風邪がすっきり治ったのはなぜか。  その答えは簡単です。  風邪は自然に治るからです。私の場合、のどにヨード液を塗っても塗らなくても、翌日には自然に治る程度の軽い風邪だったのです。  「AをしたらBという病気が治った」というのは、「Aの治療効果によってBが治った」のか、それとも「他の理由でBが治ったが、その前に偶然Aをしていた」のか、どちらなのかは分からない、ということに注意が必要です。病気が治る前にした行為と、病気が治ったことには必ずしも因果関係があるとは限らないからです。  風邪に対する点滴や抗菌薬(抗生物質)も同じです。風邪は点滴では治らない、というのは以前の記事で解説した通りですが、その記事を読んできっと、「私は点滴をしてもらったら風邪が治ったことがある!」と反論したくなった人がいるはずです。  残念ながら、点滴で風邪を治すことは医学的に不可能であり、風邪が治ったのは、自然に治る直前に偶然点滴を受けていただけです。  また、原則、風邪は抗菌薬では治りません。風邪はほとんどがウイルスによる感染症であり、抗菌薬は細菌による感染症にしか効果はないからです。ウイルスと細菌は全く別の微生物です。  「この抗菌薬だと風邪が治ったことがある!」と主張したくなる人がいるかもしれませんが、同じように、風邪が治る前に偶然その抗菌薬を内服していただけです。  世の中には「自然に治る病気」がたくさんあります。その病気が治る前にみなさんは、熱いサウナに入ったかもしれないし、おかゆを食べたかもしれないし、市販のサプリメントを飲んだかもしれません。そして偶然に行ったその行為が、病気の治療効果に結びついたのではないか、と誤解するのです。  一方、私たち医療者がこういう誤解をすることはありません。「ある治療が病気に対して効果がある」ということを証明するのがいかに大変かを知っているからです。 ◇治療の効果を証明する大変さ  病気に対する治療の効果を証明することは、実は非常に大変です。膨大なお金と時間をかけて、同じ病気の、条件がそろった患者さんたちのデータを集め、大掛かりな研究を行う必要があるからです。  例えば、ある病気に対してAという薬の効果を証明したいとします。患者さんを数百人集め、Aという薬を投与してその効果を調べる臨床試験を行うのですが、この時必ず比較対象として「Aを投与しない患者さん」を同じだけ集める必要があります。「Aを投与しなくても自然に良くなったかもしれない」という可能性を除外するためです。  これは前述した通りですね。ただし、Aを投与しない患者さんに「何も投与しない」というのが間違いとなるケースもあります。例えば自覚症状の改善を見る場合には、「薬が自分に使われている」というだけで、症状が良くなったような気分になる可能性があるからです。  そこでAを投与しない患者さんにも、「プラセボ(偽薬)」、つまり「見た目は薬のようだが効果は全くない偽の薬」を投与し、患者さん本人にはどちらが投与されたか分からないようにする必要があるのです。  一方、試験のタイプによってはプラセボが使えないケースもあります。例えばがんを治療したい患者さんを集める試験では、プラセボだけが投与されるグループをつくることができません。  がんを積極的に治療したいと思っている方は、治療薬が投与されないグループに入るかもしれない試験には参加しません。そこでこういう場合は、従来使用されているBという薬と、新しい薬Aを比較する、という試験を行うことになります。  一つの施設で行うと患者層が偏る可能性があるため、多くの施設から患者さんを集めることもよくあります。さらには、医師にも担当する患者さんがどちらのグループなのかを知らせないようにすることもあります。  「新しい薬の方が効くかもしれない」という先入観が、診察した時の所見を良い解釈に導いてしまう可能性があるからです。患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない、このような方法を「二重盲検法(にじゅうもうけんほう)」と呼びます。もちろん患者さんは試験期間中、結果に影響を与えるような他の治療は行わないのが条件です。  そして治療の結果、患者さんにどんな変化があり、どんな副作用があるかを細かくデータを取りながらまとめていきます。これらの作業には、膨大な医療者たちの苦労と、膨大なお金が必要です。  こうして行われた臨床試験の結果、薬の効果が示されて初めて、「その病気にAは効果がある」と言えることになります。治療の効果を示す、というのは、このくらい大変なことなのです。  例外的に希少な病気を除き、多くの病気はこのようにして治療の効果が示されてきた歴史があります。これらの数々の研究によって積み重ねられた信頼性の高いデータを、私たちは信用することにしています。  一方、そうではない信頼性の低い情報は、参考程度にすることはあっても、日常診療の意思決定の根拠にすることはありません。「10人の患者さんにAという薬を投与したら、全員病気が良くなったそうです」と言われても、私たち医師の心は動きません。ある治療が病気に対して効果があるかどうかを証明することがいかに大変かを、身を持って知っているからです。  医師は、このような考え方に基づいて日々治療を行っている、ということを分かっていただけると幸いです。
患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない方法は何と呼ばれますか。
患者さんにも医師にもどちらのグループに属するかを知らせない方法は、二重盲検法(にじゅうもうけんほう)と呼ばれます。
JCRRAG_010059
医療
足の付け根に腫れ!「脱腸」かも 本当は怖い「鼠径ヘルニア」  足の付け根がぽっこり腫れ、痛みがないので放置していたらどんどん大きくなってきた。そう言って外来に来られる方がよくいます。足の付け根の腫れは「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれる病気かもしれません。きっちり治療しないと、時に重症化して危険なこともあります。今回は、この「鼠径ヘルニア」について、分かりやすく解説します。  なお、今回は成人の鼠径ヘルニアについて述べます。小児と成人では生じる原因やその対応は異なりますので、ご注意ください。  ◇「脱腸」と呼ばれる病気 足の付け根が腫れはじめたら…  鼠径ヘルニアは、昔から「脱腸(だっちょう)」と呼ばれています。非常に多くの人がかかる病気なのですが、その実態はあまり知られていません。  「足の付け根が腫れてきた、がんかもしれない」と言って慌てて病院に来る方がいれば、「痛みも何もないので放置していた」と言って握りこぶしくらいの大きさになるまで放置する人もいますが、鼠径ヘルニアは、足の付け根の腹壁(おなかの壁)の隙間から腸がはみ出る病気です。  はみ出る(脱出する)腸管は、小腸のこともあれば、大腸のこともあります。また、足の付け根のことを「鼠径部(そけいぶ)」と呼び、臓器が本来納まっているべき場所から脱出することを「ヘルニア」と呼ぶため、「鼠径ヘルニア」という病名が付いています。鼠径部がぽっこり腫れ、軽症の場合は触るとやわらかいのが特徴です。  人によっては、陰嚢内に腸管が脱出し、陰嚢の片側が大きく膨れ上がる人もいます。  ◇どんな症状?  鼠径部や陰嚢が、小さい時はピンポン球くらいの大きさに、大きくなると握りこぶしくらいの大きさまで腫れます。また、歩行時などに違和感や痛み、不快感を生じます。立つと重力によって腸管が降りてきて膨らみが大きくなり、寝ると小さくなる、あるいは膨らみがなくなる、というケースもあります。  腹壁の隙間を腸管が容易に行ったり来たりできるケースでは、膨らむたびに自分で押し戻している、という人もいます。ヘルニアの膨らみを元に戻すことを「還納(かんのう)」と呼びます。 ◇必要な検査は?  患者さんが立った状態で、まず目で見て手で触って診察します。日によって大きさが違う場合は、せきをしてもらったり、いきんでもらったりすると、膨らみが大きくなって診断しやすくなることもあります。  次に横になってもらい、膨らみが元に戻せるかを確認します。あおむけに寝るだけで自然に還納して膨らみがなくなる人もいれば、手で押さえると戻る人もいます。その他、場合によってはCT検査や超音波検査を追加することもあります。  ◇なぜ怖いの?  鼠径ヘルニアは、痛みや不快感などの症状がないケースもあるため、病院に行かずに放置する人が多いのですが、時に悪化して命に関わることもある病気です。  その理由の一つは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる現象です。隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。血流障害によって腸が壊死(えし)し、腸管を切除しなくてはならなくなる危険性もあります。  重度の場合は腸管に穴があき(穿孔=せんこう)、腹膜炎を起こすこともあります。腫れた部分が硬くなったり、触れただけで強い痛みを生じたりすることで気づかれますが、こうしたケースでは、しばしば緊急手術が必要になります。  鼠径ヘルニアは、腸閉塞の原因となることもあります。腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。消化管は口から肛門まで一本道です。どこかでこのような「事故」が起こると、そこで腸管が詰まってしまうわけです。  ◇どんな治療をする?  腸管が血流障害を起こしているケースでは、緊急手術が必要になります。また、そうでなくても、痛みなど生活に困るような自覚症状があれば、原則として手術を検討します。  一方、嵌頓や、症状が悪化する危険性が高くないと判断されるケースでは、 患者さんと十分相談の上、経過観察とすることもあります。自己判断は難しいため、上述したような症状があれば、なるべく早く受診することが大切です。  なお、受診すべき診療科は外科(消化器外科)です。  鼠径ヘルニアは、薬や体操などによって治すことはできず、原則手術以外では完治しない病気です。治療のためには、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。  手術の方法には、一般的には、腰椎麻酔(下半身の麻酔)あるいは局所麻酔で体表面から行う手術(鼠径部切開法)と、全身麻酔で行う腹腔(ふくくう)鏡手術があります。病院によって行っている手術の方法はさまざまですので、受診した上で医師と十分にご相談ください。  なお、特別な例外を除き、手術翌日から日常生活への復帰は可能です。ただし、激しいスポーツなどに完全復帰できる時期については、状況によって異なります。担当の医師と十分ご相談ください。
鼠径ヘルニアとは体のどの部分から腸がはみ出る病気ですか。
鼠径ヘルニアとは、足の付け根の腹壁(おなかの壁)の隙間から腸がはみ出る病気です。
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医療
足の付け根に腫れ!「脱腸」かも 本当は怖い「鼠径ヘルニア」  足の付け根がぽっこり腫れ、痛みがないので放置していたらどんどん大きくなってきた。そう言って外来に来られる方がよくいます。足の付け根の腫れは「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれる病気かもしれません。きっちり治療しないと、時に重症化して危険なこともあります。今回は、この「鼠径ヘルニア」について、分かりやすく解説します。  なお、今回は成人の鼠径ヘルニアについて述べます。小児と成人では生じる原因やその対応は異なりますので、ご注意ください。  ◇「脱腸」と呼ばれる病気 足の付け根が腫れはじめたら…  鼠径ヘルニアは、昔から「脱腸(だっちょう)」と呼ばれています。非常に多くの人がかかる病気なのですが、その実態はあまり知られていません。  「足の付け根が腫れてきた、がんかもしれない」と言って慌てて病院に来る方がいれば、「痛みも何もないので放置していた」と言って握りこぶしくらいの大きさになるまで放置する人もいますが、鼠径ヘルニアは、足の付け根の腹壁(おなかの壁)の隙間から腸がはみ出る病気です。  はみ出る(脱出する)腸管は、小腸のこともあれば、大腸のこともあります。また、足の付け根のことを「鼠径部(そけいぶ)」と呼び、臓器が本来納まっているべき場所から脱出することを「ヘルニア」と呼ぶため、「鼠径ヘルニア」という病名が付いています。鼠径部がぽっこり腫れ、軽症の場合は触るとやわらかいのが特徴です。  人によっては、陰嚢内に腸管が脱出し、陰嚢の片側が大きく膨れ上がる人もいます。  ◇どんな症状?  鼠径部や陰嚢が、小さい時はピンポン球くらいの大きさに、大きくなると握りこぶしくらいの大きさまで腫れます。また、歩行時などに違和感や痛み、不快感を生じます。立つと重力によって腸管が降りてきて膨らみが大きくなり、寝ると小さくなる、あるいは膨らみがなくなる、というケースもあります。  腹壁の隙間を腸管が容易に行ったり来たりできるケースでは、膨らむたびに自分で押し戻している、という人もいます。ヘルニアの膨らみを元に戻すことを「還納(かんのう)」と呼びます。 ◇必要な検査は?  患者さんが立った状態で、まず目で見て手で触って診察します。日によって大きさが違う場合は、せきをしてもらったり、いきんでもらったりすると、膨らみが大きくなって診断しやすくなることもあります。  次に横になってもらい、膨らみが元に戻せるかを確認します。あおむけに寝るだけで自然に還納して膨らみがなくなる人もいれば、手で押さえると戻る人もいます。その他、場合によってはCT検査や超音波検査を追加することもあります。  ◇なぜ怖いの?  鼠径ヘルニアは、痛みや不快感などの症状がないケースもあるため、病院に行かずに放置する人が多いのですが、時に悪化して命に関わることもある病気です。  その理由の一つは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる現象です。隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。血流障害によって腸が壊死(えし)し、腸管を切除しなくてはならなくなる危険性もあります。  重度の場合は腸管に穴があき(穿孔=せんこう)、腹膜炎を起こすこともあります。腫れた部分が硬くなったり、触れただけで強い痛みを生じたりすることで気づかれますが、こうしたケースでは、しばしば緊急手術が必要になります。  鼠径ヘルニアは、腸閉塞の原因となることもあります。腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。消化管は口から肛門まで一本道です。どこかでこのような「事故」が起こると、そこで腸管が詰まってしまうわけです。  ◇どんな治療をする?  腸管が血流障害を起こしているケースでは、緊急手術が必要になります。また、そうでなくても、痛みなど生活に困るような自覚症状があれば、原則として手術を検討します。  一方、嵌頓や、症状が悪化する危険性が高くないと判断されるケースでは、 患者さんと十分相談の上、経過観察とすることもあります。自己判断は難しいため、上述したような症状があれば、なるべく早く受診することが大切です。  なお、受診すべき診療科は外科(消化器外科)です。  鼠径ヘルニアは、薬や体操などによって治すことはできず、原則手術以外では完治しない病気です。治療のためには、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。  手術の方法には、一般的には、腰椎麻酔(下半身の麻酔)あるいは局所麻酔で体表面から行う手術(鼠径部切開法)と、全身麻酔で行う腹腔(ふくくう)鏡手術があります。病院によって行っている手術の方法はさまざまですので、受診した上で医師と十分にご相談ください。  なお、特別な例外を除き、手術翌日から日常生活への復帰は可能です。ただし、激しいスポーツなどに完全復帰できる時期については、状況によって異なります。担当の医師と十分ご相談ください。
隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の何が障害されますか。
隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。
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医療
足の付け根に腫れ!「脱腸」かも 本当は怖い「鼠径ヘルニア」  足の付け根がぽっこり腫れ、痛みがないので放置していたらどんどん大きくなってきた。そう言って外来に来られる方がよくいます。足の付け根の腫れは「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれる病気かもしれません。きっちり治療しないと、時に重症化して危険なこともあります。今回は、この「鼠径ヘルニア」について、分かりやすく解説します。  なお、今回は成人の鼠径ヘルニアについて述べます。小児と成人では生じる原因やその対応は異なりますので、ご注意ください。  ◇「脱腸」と呼ばれる病気 足の付け根が腫れはじめたら…  鼠径ヘルニアは、昔から「脱腸(だっちょう)」と呼ばれています。非常に多くの人がかかる病気なのですが、その実態はあまり知られていません。  「足の付け根が腫れてきた、がんかもしれない」と言って慌てて病院に来る方がいれば、「痛みも何もないので放置していた」と言って握りこぶしくらいの大きさになるまで放置する人もいますが、鼠径ヘルニアは、足の付け根の腹壁(おなかの壁)の隙間から腸がはみ出る病気です。  はみ出る(脱出する)腸管は、小腸のこともあれば、大腸のこともあります。また、足の付け根のことを「鼠径部(そけいぶ)」と呼び、臓器が本来納まっているべき場所から脱出することを「ヘルニア」と呼ぶため、「鼠径ヘルニア」という病名が付いています。鼠径部がぽっこり腫れ、軽症の場合は触るとやわらかいのが特徴です。  人によっては、陰嚢内に腸管が脱出し、陰嚢の片側が大きく膨れ上がる人もいます。  ◇どんな症状?  鼠径部や陰嚢が、小さい時はピンポン球くらいの大きさに、大きくなると握りこぶしくらいの大きさまで腫れます。また、歩行時などに違和感や痛み、不快感を生じます。立つと重力によって腸管が降りてきて膨らみが大きくなり、寝ると小さくなる、あるいは膨らみがなくなる、というケースもあります。  腹壁の隙間を腸管が容易に行ったり来たりできるケースでは、膨らむたびに自分で押し戻している、という人もいます。ヘルニアの膨らみを元に戻すことを「還納(かんのう)」と呼びます。 ◇必要な検査は?  患者さんが立った状態で、まず目で見て手で触って診察します。日によって大きさが違う場合は、せきをしてもらったり、いきんでもらったりすると、膨らみが大きくなって診断しやすくなることもあります。  次に横になってもらい、膨らみが元に戻せるかを確認します。あおむけに寝るだけで自然に還納して膨らみがなくなる人もいれば、手で押さえると戻る人もいます。その他、場合によってはCT検査や超音波検査を追加することもあります。  ◇なぜ怖いの?  鼠径ヘルニアは、痛みや不快感などの症状がないケースもあるため、病院に行かずに放置する人が多いのですが、時に悪化して命に関わることもある病気です。  その理由の一つは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる現象です。隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。血流障害によって腸が壊死(えし)し、腸管を切除しなくてはならなくなる危険性もあります。  重度の場合は腸管に穴があき(穿孔=せんこう)、腹膜炎を起こすこともあります。腫れた部分が硬くなったり、触れただけで強い痛みを生じたりすることで気づかれますが、こうしたケースでは、しばしば緊急手術が必要になります。  鼠径ヘルニアは、腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。消化管は口から肛門まで一本道です。どこかでこのような「事故」が起こると、そこで腸管が詰まってしまうわけです。  ◇どんな治療をする?  腸管が血流障害を起こしているケースでは、緊急手術が必要になります。また、そうでなくても、痛みなど生活に困るような自覚症状があれば、原則として手術を検討します。  一方、嵌頓や、症状が悪化する危険性が高くないと判断されるケースでは、 患者さんと十分相談の上、経過観察とすることもあります。自己判断は難しいため、上述したような症状があれば、なるべく早く受診することが大切です。  なお、受診すべき診療科は外科(消化器外科)です。  鼠径ヘルニアは、薬や体操などによって治すことはできず、原則手術以外では完治しない病気です。治療のためには、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。  手術の方法には、一般的には、腰椎麻酔(下半身の麻酔)あるいは局所麻酔で体表面から行う手術(鼠径部切開法)と、全身麻酔で行う腹腔(ふくくう)鏡手術があります。病院によって行っている手術の方法はさまざまですので、受診した上で医師と十分にご相談ください。  なお、特別な例外を除き、手術翌日から日常生活への復帰は可能です。ただし、激しいスポーツなどに完全復帰できる時期については、状況によって異なります。担当の医師と十分ご相談ください。
鼠径ヘルニアはどのような現象ですか。
鼠径ヘルニアは腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。
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医療
足の付け根に腫れ!「脱腸」かも 本当は怖い「鼠径ヘルニア」  足の付け根がぽっこり腫れ、痛みがないので放置していたらどんどん大きくなってきた。そう言って外来に来られる方がよくいます。足の付け根の腫れは「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれる病気かもしれません。きっちり治療しないと、時に重症化して危険なこともあります。今回は、この「鼠径ヘルニア」について、分かりやすく解説します。  なお、今回は成人の鼠径ヘルニアについて述べます。小児と成人では生じる原因やその対応は異なりますので、ご注意ください。  ◇「脱腸」と呼ばれる病気 足の付け根が腫れはじめたら…  鼠径ヘルニアは、昔から「脱腸(だっちょう)」と呼ばれています。非常に多くの人がかかる病気なのですが、その実態はあまり知られていません。  「足の付け根が腫れてきた、がんかもしれない」と言って慌てて病院に来る方がいれば、「痛みも何もないので放置していた」と言って握りこぶしくらいの大きさになるまで放置する人もいますが、鼠径ヘルニアは、足の付け根の腹壁(おなかの壁)の隙間から腸がはみ出る病気です。  はみ出る(脱出する)腸管は、小腸のこともあれば、大腸のこともあります。また、足の付け根のことを「鼠径部(そけいぶ)」と呼び、臓器が本来納まっているべき場所から脱出することを「ヘルニア」と呼ぶため、「鼠径ヘルニア」という病名が付いています。鼠径部がぽっこり腫れ、軽症の場合は触るとやわらかいのが特徴です。  人によっては、陰嚢内に腸管が脱出し、陰嚢の片側が大きく膨れ上がる人もいます。  ◇どんな症状?  鼠径部や陰嚢が、小さい時はピンポン球くらいの大きさに、大きくなると握りこぶしくらいの大きさまで腫れます。また、歩行時などに違和感や痛み、不快感を生じます。立つと重力によって腸管が降りてきて膨らみが大きくなり、寝ると小さくなる、あるいは膨らみがなくなる、というケースもあります。  腹壁の隙間を腸管が容易に行ったり来たりできるケースでは、膨らむたびに自分で押し戻している、という人もいます。ヘルニアの膨らみを元に戻すことを「還納(かんのう)」と呼びます。 ◇必要な検査は?  患者さんが立った状態で、まず目で見て手で触って診察します。日によって大きさが違う場合は、せきをしてもらったり、いきんでもらったりすると、膨らみが大きくなって診断しやすくなることもあります。  次に横になってもらい、膨らみが元に戻せるかを確認します。あおむけに寝るだけで自然に還納して膨らみがなくなる人もいれば、手で押さえると戻る人もいます。その他、場合によってはCT検査や超音波検査を追加することもあります。  ◇なぜ怖いの?  鼠径ヘルニアは、痛みや不快感などの症状がないケースもあるため、病院に行かずに放置する人が多いのですが、時に悪化して命に関わることもある病気です。  その理由の一つは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる現象です。隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。血流障害によって腸が壊死(えし)し、腸管を切除しなくてはならなくなる危険性もあります。  重度の場合は腸管に穴があき(穿孔=せんこう)、腹膜炎を起こすこともあります。腫れた部分が硬くなったり、触れただけで強い痛みを生じたりすることで気づかれますが、こうしたケースでは、しばしば緊急手術が必要になります。  鼠径ヘルニアは、腸閉塞の原因となることもあります。腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。消化管は口から肛門まで一本道です。どこかでこのような「事故」が起こると、そこで腸管が詰まってしまうわけです。  ◇どんな治療をする?  腸管が血流障害を起こしているケースでは、緊急手術が必要になります。また、そうでなくても、痛みなど生活に困るような自覚症状があれば、原則として手術を検討します。  一方、嵌頓や、症状が悪化する危険性が高くないと判断されるケースでは、 患者さんと十分相談の上、経過観察とすることもあります。自己判断は難しいため、上述したような症状があれば、なるべく早く受診することが大切です。  なお、受診すべき診療科は外科(消化器外科)です。  鼠径ヘルニアは、薬や体操などによって治すことはできず、原則手術以外では完治しない病気であり、治療のためには、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。  手術の方法には、一般的には、腰椎麻酔(下半身の麻酔)あるいは局所麻酔で体表面から行う手術(鼠径部切開法)と、全身麻酔で行う腹腔(ふくくう)鏡手術があります。病院によって行っている手術の方法はさまざまですので、受診した上で医師と十分にご相談ください。  なお、特別な例外を除き、手術翌日から日常生活への復帰は可能です。ただし、激しいスポーツなどに完全復帰できる時期については、状況によって異なります。担当の医師と十分ご相談ください。
鼠径ヘルニアはどのような方法で治療する必要がありますか。
鼠径ヘルニアは、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。
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医療
足の付け根に腫れ!「脱腸」かも 本当は怖い「鼠径ヘルニア」  足の付け根がぽっこり腫れ、痛みがないので放置していたらどんどん大きくなってきた。そう言って外来に来られる方がよくいます。足の付け根の腫れは「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれる病気かもしれません。きっちり治療しないと、時に重症化して危険なこともあります。今回は、この「鼠径ヘルニア」について、分かりやすく解説します。  なお、今回は成人の鼠径ヘルニアについて述べます。小児と成人では生じる原因やその対応は異なりますので、ご注意ください。  ◇「脱腸」と呼ばれる病気 足の付け根が腫れはじめたら…  鼠径ヘルニアは、昔から「脱腸(だっちょう)」と呼ばれています。非常に多くの人がかかる病気なのですが、その実態はあまり知られていません。  「足の付け根が腫れてきた、がんかもしれない」と言って慌てて病院に来る方がいれば、「痛みも何もないので放置していた」と言って握りこぶしくらいの大きさになるまで放置する人もいますが、鼠径ヘルニアは、足の付け根の腹壁(おなかの壁)の隙間から腸がはみ出る病気です。  はみ出る(脱出する)腸管は、小腸のこともあれば、大腸のこともあります。また、足の付け根のことを「鼠径部(そけいぶ)」と呼び、臓器が本来納まっているべき場所から脱出することを「ヘルニア」と呼ぶため、「鼠径ヘルニア」という病名が付いています。鼠径部がぽっこり腫れ、軽症の場合は触るとやわらかいのが特徴です。  人によっては、陰嚢内に腸管が脱出し、陰嚢の片側が大きく膨れ上がる人もいます。  ◇どんな症状?  鼠径部や陰嚢が、小さい時はピンポン球くらいの大きさに、大きくなると握りこぶしくらいの大きさまで腫れます。また、歩行時などに違和感や痛み、不快感を生じます。立つと重力によって腸管が降りてきて膨らみが大きくなり、寝ると小さくなる、あるいは膨らみがなくなる、というケースもあります。  腹壁の隙間を腸管が容易に行ったり来たりできるケースでは、膨らむたびに自分で押し戻している、という人もいます。ヘルニアの膨らみを元に戻すことを「還納(かんのう)」と呼びます。 ◇必要な検査は?  患者さんが立った状態で、まず目で見て手で触って診察します。日によって大きさが違う場合は、せきをしてもらったり、いきんでもらったりすると、膨らみが大きくなって診断しやすくなることもあります。  次に横になってもらい、膨らみが元に戻せるかを確認します。あおむけに寝るだけで自然に還納して膨らみがなくなる人もいれば、手で押さえると戻る人もいます。その他、場合によってはCT検査や超音波検査を追加することもあります。  ◇なぜ怖いの?  鼠径ヘルニアは、痛みや不快感などの症状がないケースもあるため、病院に行かずに放置する人が多いのですが、時に悪化して命に関わることもある病気です。  その理由の一つは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる現象です。隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。血流障害によって腸が壊死(えし)し、腸管を切除しなくてはならなくなる危険性もあります。  重度の場合は腸管に穴があき(穿孔=せんこう)、腹膜炎を起こすこともあります。腫れた部分が硬くなったり、触れただけで強い痛みを生じたりすることで気づかれますが、こうしたケースでは、しばしば緊急手術が必要になります。  鼠径ヘルニアは、腸閉塞の原因となることもあります。腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。消化管は口から肛門まで一本道です。どこかでこのような「事故」が起こると、そこで腸管が詰まってしまうわけです。  ◇どんな治療をする?  腸管が血流障害を起こしているケースでは、緊急手術が必要になります。また、そうでなくても、痛みなど生活に困るような自覚症状があれば、原則として手術を検討します。  一方、嵌頓や、症状が悪化する危険性が高くないと判断されるケースでは、 患者さんと十分相談の上、経過観察とすることもあります。自己判断は難しいため、上述したような症状があれば、なるべく早く受診することが大切です。  なお、鼠径ヘルニアで受診すべき診療科は外科(消化器外科)です。  鼠径ヘルニアは、薬や体操などによって治すことはできず、原則手術以外では完治しない病気です。治療のためには、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。  手術の方法には、一般的には、腰椎麻酔(下半身の麻酔)あるいは局所麻酔で体表面から行う手術(鼠径部切開法)と、全身麻酔で行う腹腔(ふくくう)鏡手術があります。病院によって行っている手術の方法はさまざまですので、受診した上で医師と十分にご相談ください。  なお、特別な例外を除き、手術翌日から日常生活への復帰は可能です。ただし、激しいスポーツなどに完全復帰できる時期については、状況によって異なります。担当の医師と十分ご相談ください。
鼠径ヘルニアで受診すべき診療科はどこですか。
鼠径ヘルニアで受診すべき診療科は、外科(消化器外科)です。
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医療
よくあるがんの誤解とは? 医師がしばしば経験する三つのこと  がんだという診断を受けると、多くの方は大きなショックを受けます。わが国で最も多くの人の命を奪っている、広く知られた疾患であるだけに、「怖い病気だ」というイメージが強いのだと思います。しかし、どんな病気でもそうですが、「怖い」「治らない」といった漠然とした言葉で恐れるのは得策ではありません。がんに関して誤解しがちなポイントを、私の経験とともに説明してみます。 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは? 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは?  ◇がんは多くの病気の総称  テレビやインターネットでは、「がんの予防法」や「がんを治す方法」といった言葉をよく見ます。普段がんを扱う私たち医師にとっては、こうした「がん」という言葉の使い方には強い違和感を覚えます。「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称だからです。同じ消化器領域であっても、たとえば胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がんなどは、原因も治療も予後も、何もかもが違います。  膀胱がん、子宮がんなど、領域が異なればさらに性質は違いますし、同じ「がん」として総称されることの多い、血液の悪性腫瘍や脳腫瘍、骨、筋肉の悪性腫瘍などは、同じジャンルに含めるには違和感があるほど異なる病気です。よって「がんを予防する」「がんを治す」というと、「どのがんの予防や治療のことを述べようとしているのか」という疑問が浮かびます。全く異なる病気の予防法や治療法が同じであるはずがないからです。  「けがの予防法」「けがを治す方法」と言われたら、「どの部位のどんなけがのことなのか」という疑問がわくでしょう。それと似た感覚です。  ◇「がん」だけを恐れる  何かの症状で病院に来られた患者さんからよく聞かれる言葉に、「がんではないでしょうか」があります。がんにかかった著名人に関する報道や、がんに関するテレビ番組の影響も大きいのでしょう。がんが最も恐れるべき、忌み嫌われるべき存在として印象付けられていると感じます。確かに、がん(悪性新生物)は、わが国で毎年最も多くの人の命を奪っている病気です。  しかし、がんと同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなくてはならない病気はたくさんあります。たとえば、わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。これらの大きなリスクになるのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)のような生活習慣病や、喫煙、肥満などの因子です。こうした病気を恐れ、予防、早期治療することも、当然ながら大切です。  「がんではないか」と恐れて来院した方に、「がんの心配はありませんよ。でも血圧が高く、コレステロール値も高いです。こちらの治療をまず始めましょう」とお伝えすることはよくあります。がんと同じくらい、あるいはそれ以上に怖い病気の存在を忘れてはなりません。 ◇がんは「治る」病気?  がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。「治る」「治らない」という言葉を定義することは、特にがんを扱う時は難しいと感じます。前述の通り、がんという病気をひとくくりにできないことも要因の一つですが、それ以上に、どういう状態になれば「治る」と呼ぶべきか、という問題もあるからです。  たとえば、大腸がんにかかって手術を受けたとしても、それで治療は終わりではありません。がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。長期間、定期的に病院に通う必要がありますし、進行度によっては、再発予防のための抗がん剤治療が必要になることもあります。  ◇がんは長い間付き合う病気  もし手術してから3年後に肝臓に転移が見つかったらどうでしょう。条件を満たせば、手術を受け、この転移を切除することが可能かもしれません。しかしそこから先、やはり通院、検査は続くでしょう。そう考えると、どの段階で「治る」と呼ぶべきかが分からなくなってしまいます。そこで私は、「治る」「治らない」という言葉を使って説明するのは避けています。  「〇〇という進行度であれば、△カ月に1回、□年間通院が必要です。もし再発が見つかれば、再発の種類によって治療法を考えます。たとえば…」  というように、一つ一つ、数字を使って具体的な情報をお伝えします。特に進行したがんの方であれば、「長いお付き合いが必要な病気です。まずは手術が治療の第1段階です」というような説明をすることもあります。基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要だと思っています。
「がん」とは一つの病気ではなく、何の総称ですか。
「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称です。
JCRRAG_010065
医療
よくあるがんの誤解とは? 医師がしばしば経験する三つのこと  がんだという診断を受けると、多くの方は大きなショックを受けます。わが国で最も多くの人の命を奪っている、広く知られた疾患であるだけに、「怖い病気だ」というイメージが強いのだと思います。しかし、どんな病気でもそうですが、「怖い」「治らない」といった漠然とした言葉で恐れるのは得策ではありません。がんに関して誤解しがちなポイントを、私の経験とともに説明してみます。 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは? 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは?  ◇がんは多くの病気の総称  テレビやインターネットでは、「がんの予防法」や「がんを治す方法」といった言葉をよく見ます。普段がんを扱う私たち医師にとっては、こうした「がん」という言葉の使い方には強い違和感を覚えます。「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称だからです。同じ消化器領域であっても、たとえば胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がんなどは、原因も治療も予後も、何もかもが違います。  膀胱がん、子宮がんなど、領域が異なればさらに性質は違いますし、同じ「がん」として総称されることの多い、血液の悪性腫瘍や脳腫瘍、骨、筋肉の悪性腫瘍などは、同じジャンルに含めるには違和感があるほど異なる病気です。よって「がんを予防する」「がんを治す」というと、「どのがんの予防や治療のことを述べようとしているのか」という疑問が浮かびます。全く異なる病気の予防法や治療法が同じであるはずがないからです。  「けがの予防法」「けがを治す方法」と言われたら、「どの部位のどんなけがのことなのか」という疑問がわくでしょう。それと似た感覚です。  ◇「がん」だけを恐れる  何かの症状で病院に来られた患者さんからよく聞かれる言葉に、「がんではないでしょうか」があります。がんにかかった著名人に関する報道や、がんに関するテレビ番組の影響も大きいのでしょう。がんが最も恐れるべき、忌み嫌われるべき存在として印象付けられていると感じます。確かに、がん(悪性新生物)は、わが国で毎年最も多くの人の命を奪っている病気です。  しかし、がんと同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなくてはならない病気はたくさんあります。たとえば、わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。これらの大きなリスクになるのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)のような生活習慣病や、喫煙、肥満などの因子です。こうした病気を恐れ、予防、早期治療することも、当然ながら大切です。  「がんではないか」と恐れて来院した方に、「がんの心配はありませんよ。でも血圧が高く、コレステロール値も高いです。こちらの治療をまず始めましょう」とお伝えすることはよくあります。がんと同じくらい、あるいはそれ以上に怖い病気の存在を忘れてはなりません。 ◇がんは「治る」病気?  がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。「治る」「治らない」という言葉を定義することは、特にがんを扱う時は難しいと感じます。前述の通り、がんという病気をひとくくりにできないことも要因の一つですが、それ以上に、どういう状態になれば「治る」と呼ぶべきか、という問題もあるからです。  たとえば、大腸がんにかかって手術を受けたとしても、それで治療は終わりではありません。がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。長期間、定期的に病院に通う必要がありますし、進行度によっては、再発予防のための抗がん剤治療が必要になることもあります。  ◇がんは長い間付き合う病気  もし手術してから3年後に肝臓に転移が見つかったらどうでしょう。条件を満たせば、手術を受け、この転移を切除することが可能かもしれません。しかしそこから先、やはり通院、検査は続くでしょう。そう考えると、どの段階で「治る」と呼ぶべきかが分からなくなってしまいます。そこで私は、「治る」「治らない」という言葉を使って説明するのは避けています。  「〇〇という進行度であれば、△カ月に1回、□年間通院が必要です。もし再発が見つかれば、再発の種類によって治療法を考えます。たとえば…」  というように、一つ一つ、数字を使って具体的な情報をお伝えします。特に進行したがんの方であれば、「長いお付き合いが必要な病気です。まずは手術が治療の第1段階です」というような説明をすることもあります。基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要だと思っています。
わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは何ですか。
わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。
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医療
よくあるがんの誤解とは? 医師がしばしば経験する三つのこと  がんだという診断を受けると、多くの方は大きなショックを受けます。わが国で最も多くの人の命を奪っている、広く知られた疾患であるだけに、「怖い病気だ」というイメージが強いのだと思います。しかし、どんな病気でもそうですが、「怖い」「治らない」といった漠然とした言葉で恐れるのは得策ではありません。がんに関して誤解しがちなポイントを、私の経験とともに説明してみます。 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは? 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは?  ◇がんは多くの病気の総称  テレビやインターネットでは、「がんの予防法」や「がんを治す方法」といった言葉をよく見ます。普段がんを扱う私たち医師にとっては、こうした「がん」という言葉の使い方には強い違和感を覚えます。「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称だからです。同じ消化器領域であっても、たとえば胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がんなどは、原因も治療も予後も、何もかもが違います。  膀胱がん、子宮がんなど、領域が異なればさらに性質は違いますし、同じ「がん」として総称されることの多い、血液の悪性腫瘍や脳腫瘍、骨、筋肉の悪性腫瘍などは、同じジャンルに含めるには違和感があるほど異なる病気です。よって「がんを予防する」「がんを治す」というと、「どのがんの予防や治療のことを述べようとしているのか」という疑問が浮かびます。全く異なる病気の予防法や治療法が同じであるはずがないからです。  「けがの予防法」「けがを治す方法」と言われたら、「どの部位のどんなけがのことなのか」という疑問がわくでしょう。それと似た感覚です。  ◇「がん」だけを恐れる  何かの症状で病院に来られた患者さんからよく聞かれる言葉に、「がんではないでしょうか」があります。がんにかかった著名人に関する報道や、がんに関するテレビ番組の影響も大きいのでしょう。がんが最も恐れるべき、忌み嫌われるべき存在として印象付けられていると感じます。確かに、がん(悪性新生物)は、わが国で毎年最も多くの人の命を奪っている病気です。  しかし、がんと同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなくてはならない病気はたくさんあります。たとえば、わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。これらの大きなリスクになるのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)のような生活習慣病や、喫煙、肥満などの因子です。こうした病気を恐れ、予防、早期治療することも、当然ながら大切です。  「がんではないか」と恐れて来院した方に、「がんの心配はありませんよ。でも血圧が高く、コレステロール値も高いです。こちらの治療をまず始めましょう」とお伝えすることはよくあります。がんと同じくらい、あるいはそれ以上に怖い病気の存在を忘れてはなりません。 ◇がんは「治る」病気?  がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。「治る」「治らない」という言葉を定義することは、特にがんを扱う時は難しいと感じます。前述の通り、がんという病気をひとくくりにできないことも要因の一つですが、それ以上に、どういう状態になれば「治る」と呼ぶべきか、という問題もあるからです。  たとえば、大腸がんにかかって手術を受けたとしても、それで治療は終わりではありません。がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。長期間、定期的に病院に通う必要がありますし、進行度によっては、再発予防のための抗がん剤治療が必要になることもあります。  ◇がんは長い間付き合う病気  もし手術してから3年後に肝臓に転移が見つかったらどうでしょう。条件を満たせば、手術を受け、この転移を切除することが可能かもしれません。しかしそこから先、やはり通院、検査は続くでしょう。そう考えると、どの段階で「治る」と呼ぶべきかが分からなくなってしまいます。そこで私は、「治る」「治らない」という言葉を使って説明するのは避けています。  「〇〇という進行度であれば、△カ月に1回、□年間通院が必要です。もし再発が見つかれば、再発の種類によって治療法を考えます。たとえば…」  というように、一つ一つ、数字を使って具体的な情報をお伝えします。特に進行したがんの方であれば、「長いお付き合いが必要な病気です。まずは手術が治療の第1段階です」というような説明をすることもあります。基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要だと思っています。
がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても何が必要ですか。
がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。
JCRRAG_010067
医療
よくあるがんの誤解とは? 医師がしばしば経験する三つのこと  がんだという診断を受けると、多くの方は大きなショックを受けます。わが国で最も多くの人の命を奪っている、広く知られた疾患であるだけに、「怖い病気だ」というイメージが強いのだと思います。しかし、どんな病気でもそうですが、「怖い」「治らない」といった漠然とした言葉で恐れるのは得策ではありません。がんに関して誤解しがちなポイントを、私の経験とともに説明してみます。 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは? 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは?  ◇がんは多くの病気の総称  テレビやインターネットでは、「がんの予防法」や「がんを治す方法」といった言葉をよく見ます。普段がんを扱う私たち医師にとっては、こうした「がん」という言葉の使い方には強い違和感を覚えます。「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称だからです。同じ消化器領域であっても、たとえば胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がんなどは、原因も治療も予後も、何もかもが違います。  膀胱がん、子宮がんなど、領域が異なればさらに性質は違いますし、同じ「がん」として総称されることの多い、血液の悪性腫瘍や脳腫瘍、骨、筋肉の悪性腫瘍などは、同じジャンルに含めるには違和感があるほど異なる病気です。よって「がんを予防する」「がんを治す」というと、「どのがんの予防や治療のことを述べようとしているのか」という疑問が浮かびます。全く異なる病気の予防法や治療法が同じであるはずがないからです。  「けがの予防法」「けがを治す方法」と言われたら、「どの部位のどんなけがのことなのか」という疑問がわくでしょう。それと似た感覚です。  ◇「がん」だけを恐れる  何かの症状で病院に来られた患者さんからよく聞かれる言葉に、「がんではないでしょうか」があります。がんにかかった著名人に関する報道や、がんに関するテレビ番組の影響も大きいのでしょう。がんが最も恐れるべき、忌み嫌われるべき存在として印象付けられていると感じます。確かに、がん(悪性新生物)は、わが国で毎年最も多くの人の命を奪っている病気です。  しかし、がんと同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなくてはならない病気はたくさんあります。たとえば、わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。これらの大きなリスクになるのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)のような生活習慣病や、喫煙、肥満などの因子です。こうした病気を恐れ、予防、早期治療することも、当然ながら大切です。  「がんではないか」と恐れて来院した方に、「がんの心配はありませんよ。でも血圧が高く、コレステロール値も高いです。こちらの治療をまず始めましょう」とお伝えすることはよくあります。がんと同じくらい、あるいはそれ以上に怖い病気の存在を忘れてはなりません。 ◇がんは「治る」病気?  がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。「治る」「治らない」という言葉を定義することは、特にがんを扱う時は難しいと感じます。前述の通り、がんという病気をひとくくりにできないことも要因の一つですが、それ以上に、どういう状態になれば「治る」と呼ぶべきか、という問題もあるからです。  たとえば、大腸がんにかかって手術を受けたとしても、それで治療は終わりではありません。がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。長期間、定期的に病院に通う必要がありますし、進行度によっては、再発予防のための抗がん剤治療が必要になることもあります。  ◇がんは長い間付き合う病気  もし手術してから3年後に肝臓に転移が見つかったらどうでしょう。条件を満たせば、手術を受け、この転移を切除することが可能かもしれません。しかしそこから先、やはり通院、検査は続くでしょう。そう考えると、どの段階で「治る」と呼ぶべきかが分からなくなってしまいます。そこで私は、「治る」「治らない」という言葉を使って説明するのは避けています。  「〇〇という進行度であれば、△カ月に1回、□年間通院が必要です。もし再発が見つかれば、再発の種類によって治療法を考えます。たとえば…」  というように、一つ一つ、数字を使って具体的な情報をお伝えします。特に進行したがんの方であれば、「長いお付き合いが必要な病気です。まずは手術が治療の第1段階です」というような説明をすることもあります。基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要だと思っています。
がんの診断を受けた方からは必ずどのような言葉を聞きますか。
がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。
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医療
よくあるがんの誤解とは? 医師がしばしば経験する三つのこと  がんだという診断を受けると、多くの方は大きなショックを受けます。わが国で最も多くの人の命を奪っている、広く知られた疾患であるだけに、「怖い病気だ」というイメージが強いのだと思います。しかし、どんな病気でもそうですが、「怖い」「治らない」といった漠然とした言葉で恐れるのは得策ではありません。がんに関して誤解しがちなポイントを、私の経験とともに説明してみます。 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは? 怖れていながらよく知らない「がん」への誤解とは?  ◇がんは多くの病気の総称  テレビやインターネットでは、「がんの予防法」や「がんを治す方法」といった言葉をよく見ます。普段がんを扱う私たち医師にとっては、こうした「がん」という言葉の使い方には強い違和感を覚えます。「がん」とは一つの病気ではなく、全く異なる多くの病気の総称だからです。同じ消化器領域であっても、たとえば胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がんなどは、原因も治療も予後も、何もかもが違います。  膀胱がん、子宮がんなど、領域が異なればさらに性質は違いますし、同じ「がん」として総称されることの多い、血液の悪性腫瘍や脳腫瘍、骨、筋肉の悪性腫瘍などは、同じジャンルに含めるには違和感があるほど異なる病気です。よって「がんを予防する」「がんを治す」というと、「どのがんの予防や治療のことを述べようとしているのか」という疑問が浮かびます。全く異なる病気の予防法や治療法が同じであるはずがないからです。  「けがの予防法」「けがを治す方法」と言われたら、「どの部位のどんなけがのことなのか」という疑問がわくでしょう。それと似た感覚です。  ◇「がん」だけを恐れる  何かの症状で病院に来られた患者さんからよく聞かれる言葉に、「がんではないでしょうか」があります。がんにかかった著名人に関する報道や、がんに関するテレビ番組の影響も大きいのでしょう。がんが最も恐れるべき、忌み嫌われるべき存在として印象付けられていると感じます。確かに、がん(悪性新生物)は、わが国で毎年最も多くの人の命を奪っている病気です。  しかし、がんと同じくらい、あるいはそれ以上に注意しなくてはならない病気はたくさんあります。たとえば、わが国で多い死因として悪性新生物の次に続くのは心疾患、その次は脳血管疾患です。これらの大きなリスクになるのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)のような生活習慣病や、喫煙、肥満などの因子です。こうした病気を恐れ、予防、早期治療することも、当然ながら大切です。  「がんではないか」と恐れて来院した方に、「がんの心配はありませんよ。でも血圧が高く、コレステロール値も高いです。こちらの治療をまず始めましょう」とお伝えすることはよくあります。がんと同じくらい、あるいはそれ以上に怖い病気の存在を忘れてはなりません。 ◇がんは「治る」病気?  がんの診断を受けた方からは必ず「治りますか」「がんは治らないんですよね」といった言葉を聞きます。「治る」「治らない」という言葉を定義することは、特にがんを扱う時は難しいと感じます。前述の通り、がんという病気をひとくくりにできないことも要因の一つですが、それ以上に、どういう状態になれば「治る」と呼ぶべきか、という問題もあるからです。  たとえば、大腸がんにかかって手術を受けたとしても、それで治療は終わりではありません。がんが切除され、肉眼で確認できる病気は体からなくなっていたとしても、再発しないかどうか、慎重に経過観察が必要です。長期間、定期的に病院に通う必要がありますし、進行度によっては、再発予防のための抗がん剤治療が必要になることもあります。  ◇がんは長い間付き合う病気  もし手術してから3年後に肝臓に転移が見つかったらどうでしょう。条件を満たせば、手術を受け、この転移を切除することが可能かもしれません。しかしそこから先、やはり通院、検査は続くでしょう。そう考えると、どの段階で「治る」と呼ぶべきかが分からなくなってしまいます。そこで私は、「治る」「治らない」という言葉を使って説明するのは避けています。  「〇〇という進行度であれば、△カ月に1回、□年間通院が必要です。もし再発が見つかれば、再発の種類によって治療法を考えます。たとえば…」  というように、一つ一つ、数字を使って具体的な情報をお伝えします。特に進行したがんの方であれば、「長いお付き合いが必要な病気です。まずは手術が治療の第1段階です」というような説明をすることもあります。基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要だと思っています。
基本的にはどんながんであっても、どのような認識が必要ですか。
基本的にはどんながんであっても、比較的長い期間付き合っていくべき病気だ、という認識が必要です。
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医療
「せん妄」とは何なのか 入院時、身体拘束が必要な場合も  以前、ある医療ドラマでこんなシーンがありました。  ある日病院に、医師である主人公の祖母が足の骨折で救急搬送されてくる。普段は自立した元気な人だったのに、入院後は主人公のことが誰だか分からなくなってしまう。病室で暴れ、治療を拒否したり、医療スタッフに暴言を吐いたりするため、主人公は医師として、自らの祖母に身体の拘束を指示する、という苦渋の決断をする-。  このシーンを見た方は「ドラマの世界だから大げさに描いているのだろう」と思ったはずです。しかし医療従事者はこの場面を、特に誇張でもない、医療現場で日常的によく起こる現実的な光景だ、と考えます。入院したり手術を受けたりしたことで、こういう状態に陥ってしまう患者さんは少なくないからです。  ◇意識障害の一種  上述のワンシーンのような、意識の障害を「せん妄」と呼び、病院では入院や手術などを契機に起こることが多く、自分がいる場所がどこだか分からなくなったり、家族が誰だか分からなくなったり、つじつまの合わないことを話したり、といった障害が現れます。幻覚が見えたり、周囲の人に対して攻撃的になったりすることもあります。  生活環境の変化や手術、検査などによる心理的、身体的なストレスの影響で起こることが多く、臨床現場でよく経験する病態です。症状が時間とともに変動するのが特徴で、夜間にこうした症状が強く現れ、病棟看護師がそのケアに疲弊してしまう、といったこともよくあります。  認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、発症時期が特定できること、数時間から数週間といった単位で起こったのち回復する、という特徴があります。もとの病気を治療しつつ、せん妄に対して興奮や不安を抑える薬を時に使いながら、徐々に改善していくのを待つ必要があります。  ◇社会的に認知度が低い  医療者にとっては日常的に経験するほど頻度の高いせん妄ですが、社会的にはあまり認知されていません。お見舞いにやってきたご家族や知人が、変わり果てた患者さんを見て大きなショックを受けてしまうこともあります。「入院中なのにきちんと治療されていないのではないか」と医療スタッフに不信感を抱く人もいますし、「こんなことになるなら手術を受けなければよかった」と叱られることもあります。  せん妄の患者さんは、突然暴れて点滴の管を抜いたり、ベッドから転落したりと、ご本人にとって危険なことが多いため、やむを得ず身体拘束を行うこともあります。専用のベルトを使ってベッドに体を固定したり、鍵がないと外せない大きな手袋を両手につけたりすることもあります。また、医療スタッフだけではケアが難しいことも多いため、ご家族に付き添いを依頼することもよくあります。ご本人の安全確保が目的です。  ◇過度な心配は不要  こうした行動の抑制を行う場合には、事前にご本人とご家族にその必要性を説明し、同意書にサインをいただくことが一般的です。しかしせん妄の実態は十分に知られておらず、医療スタッフからの事前の説明を聞き流してしまう人もよくいます。何より、入院の主目的となっている治療や検査の説明の方を重点的に聞きたい、という思いもあるからでしょう。そして心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見て驚愕(きょうがく)してしまうのです。  誰しも手術を受けたり入院したりした際には、一時的にせん妄という状態に陥るリスクがある、ということは、事前に知っておくとよいと思います。  むろん、適切な治療で自然に軽快することが多いため、過度に心配する必要はありません。ご家族の方も、ここに書いた知識を頭に入れておき、慌てることなく患者さんのサポートをしていただけたらと思います。
「せん妄」は、病院では何を契機に起こることが多いですか。
「せん妄」は、病院では入院や手術などを契機に起こることが多いです。
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医療
「せん妄」とは何なのか 入院時、身体拘束が必要な場合も  以前、ある医療ドラマでこんなシーンがありました。  ある日病院に、医師である主人公の祖母が足の骨折で救急搬送されてくる。普段は自立した元気な人だったのに、入院後は主人公のことが誰だか分からなくなってしまう。病室で暴れ、治療を拒否したり、医療スタッフに暴言を吐いたりするため、主人公は医師として、自らの祖母に身体の拘束を指示する、という苦渋の決断をする-。  このシーンを見た方は「ドラマの世界だから大げさに描いているのだろう」と思ったはずです。しかし医療従事者はこの場面を、特に誇張でもない、医療現場で日常的によく起こる現実的な光景だ、と考えます。入院したり手術を受けたりしたことで、こういう状態に陥ってしまう患者さんは少なくないからです。  ◇意識障害の一種  上述のワンシーンのような、意識の障害を「せん妄」と呼びます。病院では入院や手術などを契機に起こることが多く、自分がいる場所がどこだか分からなくなったり、家族が誰だか分からなくなったり、つじつまの合わないことを話したり、といった障害が現れます。幻覚が見えたり、周囲の人に対して攻撃的になったりすることもあります。  生活環境の変化や手術、検査などによる心理的、身体的なストレスの影響で起こることが多く、臨床現場でよく経験する病態です。症状が時間とともに変動するのが特徴で、夜間にこうした症状が強く現れ、病棟看護師がそのケアに疲弊してしまう、といったこともよくあります。  認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、発症時期が特定できること、数時間から数週間といった単位で起こったのち回復する、という特徴があります。もとの病気を治療しつつ、せん妄に対して興奮や不安を抑える薬を時に使いながら、徐々に改善していくのを待つ必要があります。  ◇社会的に認知度が低い  医療者にとっては日常的に経験するほど頻度の高いせん妄ですが、社会的にはあまり認知されていません。お見舞いにやってきたご家族や知人が、変わり果てた患者さんを見て大きなショックを受けてしまうこともあります。「入院中なのにきちんと治療されていないのではないか」と医療スタッフに不信感を抱く人もいますし、「こんなことになるなら手術を受けなければよかった」と叱られることもあります。  せん妄の患者さんは、突然暴れて点滴の管を抜いたり、ベッドから転落したりと、ご本人にとって危険なことが多いため、やむを得ず身体拘束を行うこともあります。専用のベルトを使ってベッドに体を固定したり、鍵がないと外せない大きな手袋を両手につけたりすることもあります。また、医療スタッフだけではケアが難しいことも多いため、ご家族に付き添いを依頼することもよくあります。ご本人の安全確保が目的です。  ◇過度な心配は不要  こうした行動の抑制を行う場合には、事前にご本人とご家族にその必要性を説明し、同意書にサインをいただくことが一般的です。しかしせん妄の実態は十分に知られておらず、医療スタッフからの事前の説明を聞き流してしまう人もよくいます。何より、入院の主目的となっている治療や検査の説明の方を重点的に聞きたい、という思いもあるからでしょう。そして心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見て驚愕(きょうがく)してしまうのです。  誰しも手術を受けたり入院したりした際には、一時的にせん妄という状態に陥るリスクがある、ということは、事前に知っておくとよいと思います。  むろん、適切な治療で自然に軽快することが多いため、過度に心配する必要はありません。ご家族の方も、ここに書いた知識を頭に入れておき、慌てることなく患者さんのサポートをしていただけたらと思います。
認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、どのような特徴がありますか。
認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、発症時期が特定できること、数時間から数週間といった単位で起こったのち回復する、という特徴があります。
JCRRAG_010071
医療
「せん妄」とは何なのか 入院時、身体拘束が必要な場合も  以前、ある医療ドラマでこんなシーンがありました。  ある日病院に、医師である主人公の祖母が足の骨折で救急搬送されてくる。普段は自立した元気な人だったのに、入院後は主人公のことが誰だか分からなくなってしまう。病室で暴れ、治療を拒否したり、医療スタッフに暴言を吐いたりするため、主人公は医師として、自らの祖母に身体の拘束を指示する、という苦渋の決断をする-。  このシーンを見た方は「ドラマの世界だから大げさに描いているのだろう」と思ったはずです。しかし医療従事者はこの場面を、特に誇張でもない、医療現場で日常的によく起こる現実的な光景だ、と考えます。入院したり手術を受けたりしたことで、こういう状態に陥ってしまう患者さんは少なくないからです。  ◇意識障害の一種  上述のワンシーンのような、意識の障害を「せん妄」と呼びます。病院では入院や手術などを契機に起こることが多く、自分がいる場所がどこだか分からなくなったり、家族が誰だか分からなくなったり、つじつまの合わないことを話したり、といった障害が現れます。幻覚が見えたり、周囲の人に対して攻撃的になったりすることもあります。  生活環境の変化や手術、検査などによる心理的、身体的なストレスの影響で起こることが多く、臨床現場でよく経験する病態です。症状が時間とともに変動するのが特徴で、夜間にこうした症状が強く現れ、病棟看護師がそのケアに疲弊してしまう、といったこともよくあります。  認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、発症時期が特定できること、数時間から数週間といった単位で起こったのち回復する、という特徴があります。もとの病気を治療しつつ、せん妄に対して興奮や不安を抑える薬を時に使いながら、徐々に改善していくのを待つ必要があります。  ◇社会的に認知度が低い  医療者にとっては日常的に経験するほど頻度の高いせん妄ですが、社会的にはあまり認知されていません。お見舞いにやってきたご家族や知人が、変わり果てた患者さんを見て大きなショックを受けてしまうこともあります。「入院中なのにきちんと治療されていないのではないか」と医療スタッフに不信感を抱く人もいますし、「こんなことになるなら手術を受けなければよかった」と叱られることもあります。  せん妄の患者さんは、突然暴れて点滴の管を抜いたり、ベッドから転落したりと、ご本人にとって危険なことが多いため、やむを得ず身体拘束を行うこともあります。専用のベルトを使ってベッドに体を固定したり、鍵がないと外せない大きな手袋を両手につけたりすることもあります。また、医療スタッフだけではケアが難しいことも多いため、ご家族に付き添いを依頼することもよくあります。ご本人の安全確保が目的です。  ◇過度な心配は不要  こうした行動の抑制を行う場合には、事前にご本人とご家族にその必要性を説明し、同意書にサインをいただくことが一般的です。しかしせん妄の実態は十分に知られておらず、医療スタッフからの事前の説明を聞き流してしまう人もよくいます。何より、入院の主目的となっている治療や検査の説明の方を重点的に聞きたい、という思いもあるからでしょう。そして心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見て驚愕(きょうがく)してしまうのです。  誰しも手術を受けたり入院したりした際には、一時的にせん妄という状態に陥るリスクがある、ということは、事前に知っておくとよいと思います。  むろん、適切な治療で自然に軽快することが多いため、過度に心配する必要はありません。ご家族の方も、ここに書いた知識を頭に入れておき、慌てることなく患者さんのサポートをしていただけたらと思います。
せん妄の患者に身体拘束が必要になる理由は何ですか。
せん妄の患者さんは、突然暴れて点滴の管を抜いたり、ベッドから転落したりと、ご本人にとって危険なことが多いからです。
JCRRAG_010072
医療
「せん妄」とは何なのか 入院時、身体拘束が必要な場合も  以前、ある医療ドラマでこんなシーンがありました。  ある日病院に、医師である主人公の祖母が足の骨折で救急搬送されてくる。普段は自立した元気な人だったのに、入院後は主人公のことが誰だか分からなくなってしまう。病室で暴れ、治療を拒否したり、医療スタッフに暴言を吐いたりするため、主人公は医師として、自らの祖母に身体の拘束を指示する、という苦渋の決断をする-。  このシーンを見た方は「ドラマの世界だから大げさに描いているのだろう」と思ったはずです。しかし医療従事者はこの場面を、特に誇張でもない、医療現場で日常的によく起こる現実的な光景だ、と考えます。入院したり手術を受けたりしたことで、こういう状態に陥ってしまう患者さんは少なくないからです。  ◇意識障害の一種  上述のワンシーンのような、意識の障害を「せん妄」と呼びます。病院では入院や手術などを契機に起こることが多く、自分がいる場所がどこだか分からなくなったり、家族が誰だか分からなくなったり、つじつまの合わないことを話したり、といった障害が現れます。幻覚が見えたり、周囲の人に対して攻撃的になったりすることもあります。  生活環境の変化や手術、検査などによる心理的、身体的なストレスの影響で起こることが多く、臨床現場でよく経験する病態です。症状が時間とともに変動するのが特徴で、夜間にこうした症状が強く現れ、病棟看護師がそのケアに疲弊してしまう、といったこともよくあります。  認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、発症時期が特定できること、数時間から数週間といった単位で起こったのち回復する、という特徴があります。もとの病気を治療しつつ、せん妄に対して興奮や不安を抑える薬を時に使いながら、徐々に改善していくのを待つ必要があります。  ◇社会的に認知度が低い  医療者にとっては日常的に経験するほど頻度の高いせん妄ですが、社会的にはあまり認知されていません。お見舞いにやってきたご家族や知人が、変わり果てた患者さんを見て大きなショックを受けてしまうこともあります。「入院中なのにきちんと治療されていないのではないか」と医療スタッフに不信感を抱く人もいますし、「こんなことになるなら手術を受けなければよかった」と叱られることもあります。  せん妄の患者さんは、突然暴れて点滴の管を抜いたり、ベッドから転落したりと、ご本人にとって危険なことが多いため、やむを得ず身体拘束を行うこともあります。専用のベルトを使ってベッドに体を固定したり、鍵がないと外せない大きな手袋を両手につけたりすることもあります。また、医療スタッフだけではケアが難しいことも多いため、ご家族に付き添いを依頼することもよくあります。ご本人の安全確保が目的です。  ◇過度な心配は不要  こうした行動の抑制を行う場合には、事前にご本人とご家族にその必要性を説明し、同意書にサインをいただくことが一般的です。しかしせん妄の実態は十分に知られておらず、医療スタッフからの事前の説明を聞き流してしまう人もよくいます。何より、入院の主目的となっている治療や検査の説明の方を重点的に聞きたい、という思いもあるからでしょう。そして心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見て驚愕(きょうがく)してしまうのです。  誰しも手術を受けたり入院したりした際には、一時的にせん妄という状態に陥るリスクがある、ということは、事前に知っておくとよいと思います。  むろん、適切な治療で自然に軽快することが多いため、過度に心配する必要はありません。ご家族の方も、ここに書いた知識を頭に入れておき、慌てることなく患者さんのサポートをしていただけたらと思います。
心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見てどうなってしまいますか。
心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見て驚愕(きょうがく)してしまうのです。
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医療
「せん妄」とは何なのか 入院時、身体拘束が必要な場合も  以前、ある医療ドラマでこんなシーンがありました。  ある日病院に、医師である主人公の祖母が足の骨折で救急搬送されてくる。普段は自立した元気な人だったのに、入院後は主人公のことが誰だか分からなくなってしまう。病室で暴れ、治療を拒否したり、医療スタッフに暴言を吐いたりするため、主人公は医師として、自らの祖母に身体の拘束を指示する、という苦渋の決断をする-。  このシーンを見た方は「ドラマの世界だから大げさに描いているのだろう」と思ったはずです。しかし医療従事者はこの場面を、特に誇張でもない、医療現場で日常的によく起こる現実的な光景だ、と考えます。入院したり手術を受けたりしたことで、こういう状態に陥ってしまう患者さんは少なくないからです。  ◇意識障害の一種  上述のワンシーンのような、意識の障害を「せん妄」と呼びます。病院では入院や手術などを契機に起こることが多く、自分がいる場所がどこだか分からなくなったり、家族が誰だか分からなくなったり、つじつまの合わないことを話したり、といった障害が現れます。幻覚が見えたり、周囲の人に対して攻撃的になったりすることもあります。  生活環境の変化や手術、検査などによる心理的、身体的なストレスの影響で起こることが多く、臨床現場でよく経験する病態です。症状が時間とともに変動するのが特徴で、夜間にこうした症状が強く現れ、病棟看護師がそのケアに疲弊してしまう、といったこともよくあります。  認知症と似ていますが、せん妄は意識障害の一種であり、発症時期が特定できること、数時間から数週間といった単位で起こったのち回復する、という特徴があります。もとの病気を治療しつつ、せん妄に対して興奮や不安を抑える薬を時に使いながら、徐々に改善していくのを待つ必要があります。  ◇社会的に認知度が低い  医療者にとっては日常的に経験するほど頻度の高いせん妄ですが、社会的にはあまり認知されていません。お見舞いにやってきたご家族や知人が、変わり果てた患者さんを見て大きなショックを受けてしまうこともあります。「入院中なのにきちんと治療されていないのではないか」と医療スタッフに不信感を抱く人もいますし、「こんなことになるなら手術を受けなければよかった」と叱られることもあります。  せん妄の患者さんは、突然暴れて点滴の管を抜いたり、ベッドから転落したりと、ご本人にとって危険なことが多いため、やむを得ず身体拘束を行うこともあります。専用のベルトを使ってベッドに体を固定したり、鍵がないと外せない大きな手袋を両手につけたりすることもあります。また、医療スタッフだけではケアが難しいことも多いため、ご家族に付き添いを依頼することもよくあります。ご本人の安全確保が目的です。  ◇過度な心配は不要  こうした行動の抑制を行う場合には、事前にご本人とご家族にその必要性を説明し、同意書にサインをいただくことが一般的です。しかしせん妄の実態は十分に知られておらず、医療スタッフからの事前の説明を聞き流してしまう人もよくいます。何より、入院の主目的となっている治療や検査の説明の方を重点的に聞きたい、という思いもあるからでしょう。そして心の準備ができていないご家族の方は、せん妄状態になった患者さんを見て驚愕(きょうがく)してしまうのです。  誰しも手術を受けたり入院したりした際には、一時的にせん妄という状態に陥るリスクがある、ということは、事前に知っておくとよいと思います。  むろん、適切な治療で自然に軽快することが多いため、過度に心配する必要はありません。ご家族の方も、ここに書いた知識を頭に入れておき、慌てることなく患者さんのサポートをしていただけたらと思います。
誰しも手術を受けたり入院したりした際には、事前に何を知っておくとよいですか。
誰しも手術を受けたり入院したりした際には、一時的にせん妄という状態に陥るリスクがある、ということは、事前に知っておくとよいです。
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医療
 がん(悪性新生物)は今や、わが国で最も多くの命を奪っている病気です。それだけに治療の進歩も著しく、数年前の常識が今では当てはまらない、ということがよくあります。今回は、がん治療においてよくある誤ったイメージを三つまとめます。  ◇抗がん剤治療は多様化  化学療法(抗がん剤治療)は、がん治療の根幹をなす一つの重要な手段です。がんの治療を受ける方の多くが、抗がん剤治療を経験します。この抗がん剤治療に対しては、「入院して点滴をするものだ」と考えている方が多いのではないでしょうか。  確かに、今でも入院が必要な抗がん剤治療はありますが、近年は外来通院で行うのが一般的になりつつあります。病院によっては外来化学療法センターのような部署が設けられており、ここに定期的に通って点滴を受けることも可能です。  午前中に抗がん剤の点滴を受け、午後から出勤する、という方もいます。  また、抗がん剤の中には、点滴ではなく飲み薬もたくさんあります。自宅で薬を定期的に飲み、病院で点滴を受けない方も多くいるということです。医学の進歩により、抗がん剤治療は多様化しています。  以前のドラマなどで見る抗がん剤治療のイメージとは随分違っている、ということに注意が必要です。  ◇副作用に対する対処法の進歩  抗がん剤といえば「副作用がつらいもの」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。確かに、がん細胞をやっつける効果を持つ抗がん剤は、体の正常の細胞も攻撃してしまうため、特有の副作用に注意する必要があります。  しかし、現在は副作用を予防したり、上手にコントロールしたりする手段がかなり増えています。例えば、抗がん剤の副作用として頻度の高いものに「吐き気」がありますが、吐き気のリスクが高い抗がん剤を投与する際は、投与前に、あるいは同時に、吐き気を強力に予防できる薬(制吐剤)を使うのが一般的です。  制吐剤の種類も多種多様で、点滴の製剤もありますし、飲み薬もあります。これらを患者さんの状況に応じて使い分けたり、複数を併用したりすることができます。  むろん、こうした方法を使っても吐き気を感じてしまう方がいるのは事実ですが、副作用を制御する手段が増えたことは、前述の外来通院による抗がん剤治療を可能にした一つの要因にもなっているのです。  ◇緩和ケアという言葉  近年、「緩和ケア」という言葉が広く知られるようになりました。ところが、緩和ケアのことを、がんの末期の患者さんに行われる治療だと思っている人が多くいます。  実はこれは大きな誤りです。  緩和ケアの定義は、日本緩和医療学会が運営する「緩和ケア.net」に、「『緩和ケア』は、がんと診断されたときから行う、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケア」と書かれています。  「がんと診断されたときから行う」というのが重要です。がん治療を行う上で必要となる、自分らしい生活を送るためのあらゆるサポートを含む概念、と考えると分かりやすいと思います。  抗がん剤治療を受けながら、同時に緩和ケアも受ける、というのは至極自然な姿です。がん治療を続け、効果がなくなったら「緩和ケアに移行する」というのは、現実に即した表現ではないことに注意が必要なのです。
病院によってはどのような部署が設けられていますか。
病院によっては外来化学療法センターのような部署が設けられています。
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医療
 がん(悪性新生物)は今や、わが国で最も多くの命を奪っている病気です。それだけに治療の進歩も著しく、数年前の常識が今では当てはまらない、ということがよくあります。今回は、がん治療においてよくある誤ったイメージを三つまとめます。  ◇抗がん剤治療は多様化  化学療法(抗がん剤治療)は、がん治療の根幹をなす一つの重要な手段です。がんの治療を受ける方の多くが、抗がん剤治療を経験します。この抗がん剤治療に対しては、「入院して点滴をするものだ」と考えている方が多いのではないでしょうか。  確かに、今でも入院が必要な抗がん剤治療はありますが、近年は外来通院で行うのが一般的になりつつあります。病院によっては外来化学療法センターのような部署が設けられており、ここに定期的に通って点滴を受けることも可能です。  午前中に抗がん剤の点滴を受け、午後から出勤する、という方もいます。  また、抗がん剤の中には、点滴ではなく飲み薬もたくさんあります。自宅で薬を定期的に飲み、病院で点滴を受けない方も多くいるということです。医学の進歩により、抗がん剤治療は多様化しています。  以前のドラマなどで見る抗がん剤治療のイメージとは随分違っている、ということに注意が必要です。  ◇副作用に対する対処法の進歩  抗がん剤といえば「副作用がつらいもの」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。確かに、がん細胞をやっつける効果を持つ抗がん剤は、体の正常の細胞も攻撃してしまうため、特有の副作用に注意する必要があります。  しかし、現在は副作用を予防したり、上手にコントロールしたりする手段がかなり増えています。例えば、抗がん剤の副作用として頻度の高いものに「吐き気」がありますが、吐き気のリスクが高い抗がん剤を投与する際は、投与前に、あるいは同時に、吐き気を強力に予防できる薬(制吐剤)を使うのが一般的です。  制吐剤の種類も多種多様で、点滴の製剤もありますし、飲み薬もあります。これらを患者さんの状況に応じて使い分けたり、複数を併用したりすることができます。  むろん、こうした方法を使っても吐き気を感じてしまう方がいるのは事実ですが、副作用を制御する手段が増えたことは、前述の外来通院による抗がん剤治療を可能にした一つの要因にもなっているのです。  ◇緩和ケアという言葉  近年、「緩和ケア」という言葉が広く知られるようになりました。ところが、緩和ケアのことを、がんの末期の患者さんに行われる治療だと思っている人が多くいます。  実はこれは大きな誤りです。  緩和ケアの定義は、日本緩和医療学会が運営する「緩和ケア.net」に、「『緩和ケア』は、がんと診断されたときから行う、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケア」と書かれています。  「がんと診断されたときから行う」というのが重要です。がん治療を行う上で必要となる、自分らしい生活を送るためのあらゆるサポートを含む概念、と考えると分かりやすいと思います。  抗がん剤治療を受けながら、同時に緩和ケアも受ける、というのは至極自然な姿です。がん治療を続け、効果がなくなったら「緩和ケアに移行する」というのは、現実に即した表現ではないことに注意が必要なのです。
抗がん剤の中には、点滴ではなく何もたくさんありますか。
抗がん剤の中には、点滴ではなく飲み薬もたくさんあります。
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医療
 がん(悪性新生物)は今や、わが国で最も多くの命を奪っている病気です。それだけに治療の進歩も著しく、数年前の常識が今では当てはまらない、ということがよくあります。今回は、がん治療においてよくある誤ったイメージを三つまとめます。  ◇抗がん剤治療は多様化  化学療法(抗がん剤治療)は、がん治療の根幹をなす一つの重要な手段です。がんの治療を受ける方の多くが、抗がん剤治療を経験します。この抗がん剤治療に対しては、「入院して点滴をするものだ」と考えている方が多いのではないでしょうか。  確かに、今でも入院が必要な抗がん剤治療はありますが、近年は外来通院で行うのが一般的になりつつあります。病院によっては外来化学療法センターのような部署が設けられており、ここに定期的に通って点滴を受けることも可能です。  午前中に抗がん剤の点滴を受け、午後から出勤する、という方もいます。  また、抗がん剤の中には、点滴ではなく飲み薬もたくさんあります。自宅で薬を定期的に飲み、病院で点滴を受けない方も多くいるということです。医学の進歩により、抗がん剤治療は多様化しています。  以前のドラマなどで見る抗がん剤治療のイメージとは随分違っている、ということに注意が必要です。  ◇副作用に対する対処法の進歩  抗がん剤といえば「副作用がつらいもの」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。確かに、がん細胞をやっつける効果を持つ抗がん剤は、体の正常の細胞も攻撃してしまうため、特有の副作用に注意する必要があります。  しかし、現在は副作用を予防したり、上手にコントロールしたりする手段がかなり増えています。例えば、抗がん剤の副作用として頻度の高いものに「吐き気」がありますが、吐き気のリスクが高い抗がん剤を投与する際は、投与前に、あるいは同時に、吐き気を強力に予防できる薬(制吐剤)を使うのが一般的です。  制吐剤の種類も多種多様で、点滴の製剤もありますし、飲み薬もあります。これらを患者さんの状況に応じて使い分けたり、複数を併用したりすることができます。  むろん、こうした方法を使っても吐き気を感じてしまう方がいるのは事実ですが、副作用を制御する手段が増えたことは、前述の外来通院による抗がん剤治療を可能にした一つの要因にもなっているのです。  ◇緩和ケアという言葉  近年、「緩和ケア」という言葉が広く知られるようになりました。ところが、緩和ケアのことを、がんの末期の患者さんに行われる治療だと思っている人が多くいます。  実はこれは大きな誤りです。  緩和ケアの定義は、日本緩和医療学会が運営する「緩和ケア.net」に、「『緩和ケア』は、がんと診断されたときから行う、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケア」と書かれています。  「がんと診断されたときから行う」というのが重要です。がん治療を行う上で必要となる、自分らしい生活を送るためのあらゆるサポートを含む概念、と考えると分かりやすいと思います。  抗がん剤治療を受けながら、同時に緩和ケアも受ける、というのは至極自然な姿です。がん治療を続け、効果がなくなったら「緩和ケアに移行する」というのは、現実に即した表現ではないことに注意が必要なのです。
抗がん剤の副作用として頻度の高いものには何がありますか。
抗がん剤の副作用として頻度の高いものに「吐き気」があります。
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医療
 がん(悪性新生物)は今や、わが国で最も多くの命を奪っている病気です。それだけに治療の進歩も著しく、数年前の常識が今では当てはまらない、ということがよくあります。今回は、がん治療においてよくある誤ったイメージを三つまとめます。  ◇抗がん剤治療は多様化  化学療法(抗がん剤治療)は、がん治療の根幹をなす一つの重要な手段です。がんの治療を受ける方の多くが、抗がん剤治療を経験します。この抗がん剤治療に対しては、「入院して点滴をするものだ」と考えている方が多いのではないでしょうか。  確かに、今でも入院が必要な抗がん剤治療はありますが、近年は外来通院で行うのが一般的になりつつあります。病院によっては外来化学療法センターのような部署が設けられており、ここに定期的に通って点滴を受けることも可能です。  午前中に抗がん剤の点滴を受け、午後から出勤する、という方もいます。  また、抗がん剤の中には、点滴ではなく飲み薬もたくさんあります。自宅で薬を定期的に飲み、病院で点滴を受けない方も多くいるということです。医学の進歩により、抗がん剤治療は多様化しています。  以前のドラマなどで見る抗がん剤治療のイメージとは随分違っている、ということに注意が必要です。  ◇副作用に対する対処法の進歩  抗がん剤といえば「副作用がつらいもの」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。確かに、がん細胞をやっつける効果を持つ抗がん剤は、体の正常の細胞も攻撃してしまうため、特有の副作用に注意する必要があります。  しかし、現在は副作用を予防したり、上手にコントロールしたりする手段がかなり増えています。例えば、抗がん剤の副作用として頻度の高いものに「吐き気」がありますが、吐き気のリスクが高い抗がん剤を投与する際は、投与前に、あるいは同時に、吐き気を強力に予防できる薬(制吐剤)を使うのが一般的です。  制吐剤の種類も多種多様で、点滴の製剤もありますし、飲み薬もあります。これらを患者さんの状況に応じて使い分けたり、複数を併用したりすることができます。  むろん、こうした方法を使っても吐き気を感じてしまう方がいるのは事実ですが、副作用を制御する手段が増えたことは、前述の外来通院による抗がん剤治療を可能にした一つの要因にもなっているのです。  ◇緩和ケアという言葉  近年、「緩和ケア」という言葉が広く知られるようになりました。ところが、緩和ケアのことを、がんの末期の患者さんに行われる治療だと思っている人が多くいます。  実はこれは大きな誤りです。  緩和ケアの定義は、日本緩和医療学会が運営する「緩和ケア.net」に、「『緩和ケア』は、がんと診断されたときから行う、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケア」と書かれています。  「がんと診断されたときから行う」というのが重要です。がん治療を行う上で必要となる、自分らしい生活を送るためのあらゆるサポートを含む概念、と考えると分かりやすいと思います。  抗がん剤治療を受けながら、同時に緩和ケアも受ける、というのは至極自然な姿です。がん治療を続け、効果がなくなったら「緩和ケアに移行する」というのは、現実に即した表現ではないことに注意が必要なのです。
制吐剤の種類も多種多様で、何がありますか。
制吐剤の種類も多種多様で、点滴の製剤もありますし、飲み薬もあります。
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医療
風邪は病院に行くべき? 早めの受診にメリットがない理由  病院には大勢の患者さんが「風邪を早く治したいから」という理由で風邪の「ひき始め」を狙って来られます。実は私たち医師の立場から見れば、風邪での早めの受診は、患者さんにとってデメリットが大きいと感じます。なぜでしょうか。その理由を説明します。  ◇風邪薬のメリットは少ない  風邪をひいたら「早めの段階で病院にかかって手を打っておきたい」という方は多いと思います。仕事が忙しいのでなるべく休みたくない。学校で大事なイベントがあるので早めに受診して治したい。そんな方も多いでしょう。ところが、風邪の症状がまだ軽い早めの段階で、病院でできることはあまりありません。  「病院で風邪薬を処方してもらえばいい!」と思った方がいるかもしれませんね。しかし、風邪薬は風邪を治す薬ではありません。風邪によって起こる、頭痛や鼻水、せき、たん、発熱などを抑える成分が含まれているだけです。風邪はほとんどがウイルス感染とされていますが、風邪薬にウイルスをやっつける成分は入っていませんし、そもそも風邪のウイルスをやっつけて風邪を治療する薬は存在しません。  そして、病院で処方される風邪薬と、市販の風邪薬は成分に大差がありません。もちろん病院で処方してもらえば健康保険によって薬の値段は多少安くはなるものの、つらい症状がある中で病院に出かけて行って、ようやく手に入れることを考えると割にあいません。  ◇抗生物質は効果が期待できない  「抗生物質をもらえばいい。抗生物質は市販されていないから病院に行く意味はある!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、前述の通り風邪はほとんどがウイルス感染です。抗生物質(抗菌薬)は細菌感染症に用いる薬ですので、風邪に対しては効果が期待できません。  逆に、下痢やアレルギーなどの副作用リスクがあり、デメリットの方が圧倒的に大きくなります。風邪をひいた時に「早めに抗生物質をもらいに行く」というのも、お勧めできない行為です。  2017年に厚生労働省が出した「抗微生物薬適正使用の手引き」において、「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されたことで、風邪に対して抗菌薬が処方されること自体が減っています。  ◇点滴で風邪は治らない  「点滴してもらえばいい。点滴をしてもらったら風邪はきっと早く治る!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、外来で行う一般的な点滴の成分は、ほぼ水です。水にナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、成分としてはスポーツ飲料と似ています。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。口から自力で水分がとれる方には、点滴を行う意味はあまりありません。  ◇うがい薬をもらいたい  「病院でもらえるうがい薬を使ったらのどの痛みがなくなったことがある。うがい薬を処方してほしい!」と思った方がいるかもしれません。消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています(*)。風邪の治療法として考えても、あえて水道水の代わりにうがい薬の使用を勧める理由はありません。  したがって私たちは、特別な理由がある場合を除き安易にうがい薬を処方しなくなっています。  ◇病院に行く意味はない?  以上のことを考えると、風邪で早めに受診しても、実は「病院でしかできないこと」がほとんどない、ということが分かります。風邪は自然に治る病気ですので、受診にかかる時間と労力を考えると、その時間を使って自宅でゆっくり療養する方が有効です。  ただし注意したいのは、ここに書いた内容は、「早めに治したい」という動機で病院によくやってくる、比較的若くて元気な人の「いつもの風邪」という場合だということです。  感染症に対して抵抗力の低い3カ月未満の赤ちゃんや、持病などによりさまざまなリスクを持つ方は、風邪を契機に他の重篤な感染症を合併することもありますし、「風邪に症状が似ているがただの風邪ではない」というケースもあります。  ここに書いた内容が全ての人に適用できるわけではない、という点はご注意いただきたいと思います。
病院でできることがあまりないのは、風邪のどの段階ですか。
病院でできることがあまりないのは、風邪の症状がまだ軽い早めの段階です。
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医療
風邪は病院に行くべき? 早めの受診にメリットがない理由  病院には大勢の患者さんが「風邪を早く治したいから」という理由で風邪の「ひき始め」を狙って来られます。実は私たち医師の立場から見れば、風邪での早めの受診は、患者さんにとってデメリットが大きいと感じます。なぜでしょうか。その理由を説明します。  ◇風邪薬のメリットは少ない  風邪をひいたら「早めの段階で病院にかかって手を打っておきたい」という方は多いと思います。仕事が忙しいのでなるべく休みたくない。学校で大事なイベントがあるので早めに受診して治したい。そんな方も多いでしょう。ところが、風邪の症状がまだ軽い早めの段階で、病院でできることはあまりありません。  「病院で風邪薬を処方してもらえばいい!」と思った方がいるかもしれませんね。しかし、風邪薬は風邪を治す薬ではありません。風邪によって起こる、頭痛や鼻水、せき、たん、発熱などを抑える成分が含まれているだけです。風邪はほとんどがウイルス感染とされていますが、風邪薬にウイルスをやっつける成分は入っていませんし、そもそも風邪のウイルスをやっつけて風邪を治療する薬は存在しません。  そして、病院で処方される風邪薬と、市販の風邪薬は成分に大差がありません。もちろん病院で処方してもらえば健康保険によって薬の値段は多少安くはなるものの、つらい症状がある中で病院に出かけて行って、ようやく手に入れることを考えると割にあいません。  ◇抗生物質は効果が期待できない  「抗生物質をもらえばいい。抗生物質は市販されていないから病院に行く意味はある!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、前述の通り風邪はほとんどがウイルス感染です。抗生物質(抗菌薬)は細菌感染症に用いる薬ですので、風邪に対しては効果が期待できません。  逆に、下痢やアレルギーなどの副作用リスクがあり、デメリットの方が圧倒的に大きくなります。風邪をひいた時に「早めに抗生物質をもらいに行く」というのも、お勧めできない行為です。  2017年に厚生労働省が出した「抗微生物薬適正使用の手引き」において、「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されたことで、風邪に対して抗菌薬が処方されること自体が減っています。  ◇点滴で風邪は治らない  「点滴してもらえばいい。点滴をしてもらったら風邪はきっと早く治る!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、外来で行う一般的な点滴の成分は、ほぼ水です。水にナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、成分としてはスポーツ飲料と似ています。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。口から自力で水分がとれる方には、点滴を行う意味はあまりありません。  ◇うがい薬をもらいたい  「病院でもらえるうがい薬を使ったらのどの痛みがなくなったことがある。うがい薬を処方してほしい!」と思った方がいるかもしれません。消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています(*)。風邪の治療法として考えても、あえて水道水の代わりにうがい薬の使用を勧める理由はありません。  したがって私たちは、特別な理由がある場合を除き安易にうがい薬を処方しなくなっています。  ◇病院に行く意味はない?  以上のことを考えると、風邪で早めに受診しても、実は「病院でしかできないこと」がほとんどない、ということが分かります。風邪は自然に治る病気ですので、受診にかかる時間と労力を考えると、その時間を使って自宅でゆっくり療養する方が有効です。  ただし注意したいのは、ここに書いた内容は、「早めに治したい」という動機で病院によくやってくる、比較的若くて元気な人の「いつもの風邪」という場合だということです。  感染症に対して抵抗力の低い3カ月未満の赤ちゃんや、持病などによりさまざまなリスクを持つ方は、風邪を契機に他の重篤な感染症を合併することもありますし、「風邪に症状が似ているがただの風邪ではない」というケースもあります。  ここに書いた内容が全ての人に適用できるわけではない、という点はご注意いただきたいと思います。
病院で処方される風邪薬と成分に大差がないのは何ですか。
病院で処方される風邪薬と成分に大差がないのは市販の風邪薬です。
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医療
風邪は病院に行くべき? 早めの受診にメリットがない理由  病院には大勢の患者さんが「風邪を早く治したいから」という理由で風邪の「ひき始め」を狙って来られます。実は私たち医師の立場から見れば、風邪での早めの受診は、患者さんにとってデメリットが大きいと感じます。なぜでしょうか。その理由を説明します。  ◇風邪薬のメリットは少ない  風邪をひいたら「早めの段階で病院にかかって手を打っておきたい」という方は多いと思います。仕事が忙しいのでなるべく休みたくない。学校で大事なイベントがあるので早めに受診して治したい。そんな方も多いでしょう。ところが、風邪の症状がまだ軽い早めの段階で、病院でできることはあまりありません。  「病院で風邪薬を処方してもらえばいい!」と思った方がいるかもしれませんね。しかし、風邪薬は風邪を治す薬ではありません。風邪によって起こる、頭痛や鼻水、せき、たん、発熱などを抑える成分が含まれているだけです。風邪はほとんどがウイルス感染とされていますが、風邪薬にウイルスをやっつける成分は入っていませんし、そもそも風邪のウイルスをやっつけて風邪を治療する薬は存在しません。  そして、病院で処方される風邪薬と、市販の風邪薬は成分に大差がありません。もちろん病院で処方してもらえば健康保険によって薬の値段は多少安くはなるものの、つらい症状がある中で病院に出かけて行って、ようやく手に入れることを考えると割にあいません。  ◇抗生物質は効果が期待できない  「抗生物質をもらえばいい。抗生物質は市販されていないから病院に行く意味はある!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、前述の通り風邪はほとんどがウイルス感染です。抗生物質(抗菌薬)は細菌感染症に用いる薬ですので、風邪に対しては効果が期待できません。  逆に、下痢やアレルギーなどの副作用リスクがあり、デメリットの方が圧倒的に大きくなります。風邪をひいた時に「早めに抗生物質をもらいに行く」というのも、お勧めできない行為です。  2017年に厚生労働省が出した「抗微生物薬適正使用の手引き」において、「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されたことで、風邪に対して抗菌薬が処方されること自体が減っています。  ◇点滴で風邪は治らない  「点滴してもらえばいい。点滴をしてもらったら風邪はきっと早く治る!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、外来で行う一般的な点滴の成分は、ほぼ水です。水にナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、成分としてはスポーツ飲料と似ています。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。口から自力で水分がとれる方には、点滴を行う意味はあまりありません。  ◇うがい薬をもらいたい  「病院でもらえるうがい薬を使ったらのどの痛みがなくなったことがある。うがい薬を処方してほしい!」と思った方がいるかもしれません。消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています(*)。風邪の治療法として考えても、あえて水道水の代わりにうがい薬の使用を勧める理由はありません。  したがって私たちは、特別な理由がある場合を除き安易にうがい薬を処方しなくなっています。  ◇病院に行く意味はない?  以上のことを考えると、風邪で早めに受診しても、実は「病院でしかできないこと」がほとんどない、ということが分かります。風邪は自然に治る病気ですので、受診にかかる時間と労力を考えると、その時間を使って自宅でゆっくり療養する方が有効です。  ただし注意したいのは、ここに書いた内容は、「早めに治したい」という動機で病院によくやってくる、比較的若くて元気な人の「いつもの風邪」という場合だということです。  感染症に対して抵抗力の低い3カ月未満の赤ちゃんや、持病などによりさまざまなリスクを持つ方は、風邪を契機に他の重篤な感染症を合併することもありますし、「風邪に症状が似ているがただの風邪ではない」というケースもあります。  ここに書いた内容が全ての人に適用できるわけではない、という点はご注意いただきたいと思います。
抗生物質(抗菌薬)は、風邪に対して効果を期待できますか。
抗生物質(抗菌薬)は細菌感染症に用いる薬ですので、風邪に対しては効果が期待できません。
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医療
風邪は病院に行くべき? 早めの受診にメリットがない理由  病院には大勢の患者さんが「風邪を早く治したいから」という理由で風邪の「ひき始め」を狙って来られます。実は私たち医師の立場から見れば、風邪での早めの受診は、患者さんにとってデメリットが大きいと感じます。なぜでしょうか。その理由を説明します。  ◇風邪薬のメリットは少ない  風邪をひいたら「早めの段階で病院にかかって手を打っておきたい」という方は多いと思います。仕事が忙しいのでなるべく休みたくない。学校で大事なイベントがあるので早めに受診して治したい。そんな方も多いでしょう。ところが、風邪の症状がまだ軽い早めの段階で、病院でできることはあまりありません。  「病院で風邪薬を処方してもらえばいい!」と思った方がいるかもしれませんね。しかし、風邪薬は風邪を治す薬ではありません。風邪によって起こる、頭痛や鼻水、せき、たん、発熱などを抑える成分が含まれているだけです。風邪はほとんどがウイルス感染とされていますが、風邪薬にウイルスをやっつける成分は入っていませんし、そもそも風邪のウイルスをやっつけて風邪を治療する薬は存在しません。  そして、病院で処方される風邪薬と、市販の風邪薬は成分に大差がありません。もちろん病院で処方してもらえば健康保険によって薬の値段は多少安くはなるものの、つらい症状がある中で病院に出かけて行って、ようやく手に入れることを考えると割にあいません。  ◇抗生物質は効果が期待できない  「抗生物質をもらえばいい。抗生物質は市販されていないから病院に行く意味はある!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、前述の通り風邪はほとんどがウイルス感染です。抗生物質(抗菌薬)は細菌感染症に用いる薬ですので、風邪に対しては効果が期待できません。  逆に、下痢やアレルギーなどの副作用リスクがあり、デメリットの方が圧倒的に大きくなります。風邪をひいた時に「早めに抗生物質をもらいに行く」というのも、お勧めできない行為です。  2017年に厚生労働省が出した「抗微生物薬適正使用の手引き」において、「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されたことで、風邪に対して抗菌薬が処方されること自体が減っています。  ◇点滴で風邪は治らない  「点滴してもらえばいい。点滴をしてもらったら風邪はきっと早く治る!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、外来で行う一般的な点滴の成分は、ほぼ水です。水にナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、成分としてはスポーツ飲料と似ています。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。口から自力で水分がとれる方には、点滴を行う意味はあまりありません。  ◇うがい薬をもらいたい  「病院でもらえるうがい薬を使ったらのどの痛みがなくなったことがある。うがい薬を処方してほしい!」と思った方がいるかもしれません。消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています(*)。風邪の治療法として考えても、あえて水道水の代わりにうがい薬の使用を勧める理由はありません。  したがって私たちは、特別な理由がある場合を除き安易にうがい薬を処方しなくなっています。  ◇病院に行く意味はない?  以上のことを考えると、風邪で早めに受診しても、実は「病院でしかできないこと」がほとんどない、ということが分かります。風邪は自然に治る病気ですので、受診にかかる時間と労力を考えると、その時間を使って自宅でゆっくり療養する方が有効です。  ただし注意したいのは、ここに書いた内容は、「早めに治したい」という動機で病院によくやってくる、比較的若くて元気な人の「いつもの風邪」という場合だということです。  感染症に対して抵抗力の低い3カ月未満の赤ちゃんや、持病などによりさまざまなリスクを持つ方は、風邪を契機に他の重篤な感染症を合併することもありますし、「風邪に症状が似ているがただの風邪ではない」というケースもあります。  ここに書いた内容が全ての人に適用できるわけではない、という点はご注意いただきたいと思います。
点滴の目的は、どのような時の水分補給ですか。
点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。
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医療
風邪は病院に行くべき? 早めの受診にメリットがない理由  病院には大勢の患者さんが「風邪を早く治したいから」という理由で風邪の「ひき始め」を狙って来られます。実は私たち医師の立場から見れば、風邪での早めの受診は、患者さんにとってデメリットが大きいと感じます。なぜでしょうか。その理由を説明します。  ◇風邪薬のメリットは少ない  風邪をひいたら「早めの段階で病院にかかって手を打っておきたい」という方は多いと思います。仕事が忙しいのでなるべく休みたくない。学校で大事なイベントがあるので早めに受診して治したい。そんな方も多いでしょう。ところが、風邪の症状がまだ軽い早めの段階で、病院でできることはあまりありません。  「病院で風邪薬を処方してもらえばいい!」と思った方がいるかもしれませんね。しかし、風邪薬は風邪を治す薬ではありません。風邪によって起こる、頭痛や鼻水、せき、たん、発熱などを抑える成分が含まれているだけです。風邪はほとんどがウイルス感染とされていますが、風邪薬にウイルスをやっつける成分は入っていませんし、そもそも風邪のウイルスをやっつけて風邪を治療する薬は存在しません。  そして、病院で処方される風邪薬と、市販の風邪薬は成分に大差がありません。もちろん病院で処方してもらえば健康保険によって薬の値段は多少安くはなるものの、つらい症状がある中で病院に出かけて行って、ようやく手に入れることを考えると割にあいません。  ◇抗生物質は効果が期待できない  「抗生物質をもらえばいい。抗生物質は市販されていないから病院に行く意味はある!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、前述の通り風邪はほとんどがウイルス感染です。抗生物質(抗菌薬)は細菌感染症に用いる薬ですので、風邪に対しては効果が期待できません。  逆に、下痢やアレルギーなどの副作用リスクがあり、デメリットの方が圧倒的に大きくなります。風邪をひいた時に「早めに抗生物質をもらいに行く」というのも、お勧めできない行為です。  2017年に厚生労働省が出した「抗微生物薬適正使用の手引き」において、「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されたことで、風邪に対して抗菌薬が処方されること自体が減っています。  ◇点滴で風邪は治らない  「点滴してもらえばいい。点滴をしてもらったら風邪はきっと早く治る!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、外来で行う一般的な点滴の成分は、ほぼ水です。水にナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、成分としてはスポーツ飲料と似ています。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。  点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。口から自力で水分がとれる方には、点滴を行う意味はあまりありません。  ◇うがい薬をもらいたい  「病院でもらえるうがい薬を使ったらのどの痛みがなくなったことがある。うがい薬を処方してほしい!」と思った方がいるかもしれません。消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています(*)。風邪の治療法として考えても、あえて水道水の代わりにうがい薬の使用を勧める理由はありません。  したがって私たちは、特別な理由がある場合を除き安易にうがい薬を処方しなくなっています。  ◇病院に行く意味はない?  以上のことを考えると、風邪で早めに受診しても、実は「病院でしかできないこと」がほとんどない、ということが分かります。風邪は自然に治る病気ですので、受診にかかる時間と労力を考えると、その時間を使って自宅でゆっくり療養する方が有効です。  ただし注意したいのは、ここに書いた内容は、「早めに治したい」という動機で病院によくやってくる、比較的若くて元気な人の「いつもの風邪」という場合だということです。  感染症に対して抵抗力の低い3カ月未満の赤ちゃんや、持病などによりさまざまなリスクを持つ方は、風邪を契機に他の重篤な感染症を合併することもありますし、「風邪に症状が似ているがただの風邪ではない」というケースもあります。  ここに書いた内容が全ての人に適用できるわけではない、という点はご注意いただきたいと思います。
消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて何が乏しいことが過去の研究で明らかになっていますか。
消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています。
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医療
痛み止めの麻薬は怖くない? 医療現場では日常的に処方  以前外来で患者さんから、こんな悩みを打ち明けられたことがあります。「先生からもらった痛み止め、怖くて飲めませんでした。だって『麻薬』なんですよね…?」その方は、大腸がんの腹膜播種(はしゅ)=おなかの中にがんが広がった状態=で、抗がん剤治療を受けていました。おなかの痛みをコントロールするため、私は麻薬性の鎮痛薬を処方していたのですが、患者さんはこれが「怖くて飲めなかった」と言うのです。  私は大いに反省しました。  医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。  ◇「麻薬は怖い」という誤解  「麻薬」というと、何となく怖いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。「麻薬」という言葉は、「夢中になりすぎて他のことに手がつかなくなる」といった状況を指して「麻薬のように」と比喩的に使われることもあります。  こうした「麻薬」のネガティブなイメージが、医療用麻薬に対する誤解を生んでいるのです。  医療現場では、医療用麻薬を、がん性疼痛(がんによる痛み)に対する有効な鎮痛手段として非常によく用います。医療用麻薬とは、「麻薬及び向精神薬取締法」によって医療用に使用が許可された麻薬で、コカインやヘロインのように使用や所持が禁止された不正麻薬とは異なります。医師の指示に従って痛みのある時に使用すれば、中毒(依存症)にはならないことも分かっています。  また、飲み薬(内服薬)、注射薬(血管内への点滴や皮下注射)、パッチ製剤(貼り薬)、座薬など、剤型にも豊富なラインアップがあります。  飲み薬が口から飲めない方や、血管が細くて点滴できない方であっても、パッチ製剤や座薬といった手段を用いることで、うまく痛みをコントロールすることができます。患者さんの状態に合わせて剤型を使い分けることができるため、利便性が高いというメリットがあります。  ◇「麻薬は末期に使うもの」という誤解  麻薬に対しては、末期がんの患者さんに使う薬だと誤解している人もいます。実際、「麻薬を使うということは、いよいよ死期が迫った最終段階だ」という誤解から、麻薬の処方に抵抗感を示される方も多くいます。特に、臨床現場でよく使う麻薬の一つである「モルヒネ」に対しては、こうしたイメージをお持ちの方が多いようです。また、麻薬を使うと寿命が縮まる、と誤解している方もいます。  実際には、モルヒネを含む医療用麻薬を服用しながら日常生活を営み、仕事をしている人はたくさんいます。むしろ、いつも通り生活しながらでも使用できる、ということが、医療用麻薬のメリットでもあります。また、麻薬の量を多くしても寿命が短くなったり、死期が早まったりすることはありません。鎮痛手段として使える便利な薬の一つであるにもかかわらず、ネガティブなイメージは根強くあるのです。  ◇「麻薬」という言葉の使い方に注意  医療用麻薬を患者さんに使用してもらう際、医療スタッフはこうした一般的なイメージに配慮する必要があると感じます。麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんは麻薬に対する誤解が解けないまま痛みを我慢することになってしまいます。  また、状況によっては「麻薬」という言葉だけを伝えるのではなく、「医療用麻薬」「麻薬性鎮痛薬」「オピオイド(麻薬性鎮痛薬の総称の英語)」といった言葉を使うことも大切だと思います。  安全性や利便性の高い痛み止めであるのに、誤解によって上手に使えないのは非常にもったいないことです。ご本人やご家族が麻薬を使用する際、過度に不安を抱くことのないよう、ここに書いた麻薬の性質を知っておいていただければ幸いです。(守秘義務の観点から紹介事例の内容を一部改変しております)
おなかの痛みをコントロールするため、私が処方したのは何ですか。
おなかの痛みをコントロールするため、私が処方したのは麻薬性の鎮痛薬です。
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医療
痛み止めの麻薬は怖くない? 医療現場では日常的に処方  以前外来で患者さんから、こんな悩みを打ち明けられたことがあります。「先生からもらった痛み止め、怖くて飲めませんでした。だって『麻薬』なんですよね…?」その方は、大腸がんの腹膜播種(はしゅ)=おなかの中にがんが広がった状態=で、抗がん剤治療を受けていました。おなかの痛みをコントロールするため、私は麻薬性の鎮痛薬を処方していたのですが、患者さんはこれが「怖くて飲めなかった」と言うのです。  私は大いに反省しました。  私は医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。  ◇「麻薬は怖い」という誤解  「麻薬」というと、何となく怖いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。「麻薬」という言葉は、「夢中になりすぎて他のことに手がつかなくなる」といった状況を指して「麻薬のように」と比喩的に使われることもあります。  こうした「麻薬」のネガティブなイメージが、医療用麻薬に対する誤解を生んでいるのです。  医療現場では、医療用麻薬を、がん性疼痛(がんによる痛み)に対する有効な鎮痛手段として非常によく用います。医療用麻薬とは、「麻薬及び向精神薬取締法」によって医療用に使用が許可された麻薬で、コカインやヘロインのように使用や所持が禁止された不正麻薬とは異なります。医師の指示に従って痛みのある時に使用すれば、中毒(依存症)にはならないことも分かっています。  また、飲み薬(内服薬)、注射薬(血管内への点滴や皮下注射)、パッチ製剤(貼り薬)、座薬など、剤型にも豊富なラインアップがあります。  飲み薬が口から飲めない方や、血管が細くて点滴できない方であっても、パッチ製剤や座薬といった手段を用いることで、うまく痛みをコントロールすることができます。患者さんの状態に合わせて剤型を使い分けることができるため、利便性が高いというメリットがあります。  ◇「麻薬は末期に使うもの」という誤解  麻薬に対しては、末期がんの患者さんに使う薬だと誤解している人もいます。実際、「麻薬を使うということは、いよいよ死期が迫った最終段階だ」という誤解から、麻薬の処方に抵抗感を示される方も多くいます。特に、臨床現場でよく使う麻薬の一つである「モルヒネ」に対しては、こうしたイメージをお持ちの方が多いようです。また、麻薬を使うと寿命が縮まる、と誤解している方もいます。  実際には、モルヒネを含む医療用麻薬を服用しながら日常生活を営み、仕事をしている人はたくさんいます。むしろ、いつも通り生活しながらでも使用できる、ということが、医療用麻薬のメリットでもあります。また、麻薬の量を多くしても寿命が短くなったり、死期が早まったりすることはありません。鎮痛手段として使える便利な薬の一つであるにもかかわらず、ネガティブなイメージは根強くあるのです。  ◇「麻薬」という言葉の使い方に注意  医療用麻薬を患者さんに使用してもらう際、医療スタッフはこうした一般的なイメージに配慮する必要があると感じます。麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんは麻薬に対する誤解が解けないまま痛みを我慢することになってしまいます。  また、状況によっては「麻薬」という言葉だけを伝えるのではなく、「医療用麻薬」「麻薬性鎮痛薬」「オピオイド(麻薬性鎮痛薬の総称の英語)」といった言葉を使うことも大切だと思います。  安全性や利便性の高い痛み止めであるのに、誤解によって上手に使えないのは非常にもったいないことです。ご本人やご家族が麻薬を使用する際、過度に不安を抱くことのないよう、ここに書いた麻薬の性質を知っておいていただければ幸いです。(守秘義務の観点から紹介事例の内容を一部改変しております)
私は医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つどのようなイメージに思いが至らなかったのですか。
私は医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。
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医療
痛み止めの麻薬は怖くない? 医療現場では日常的に処方  以前外来で患者さんから、こんな悩みを打ち明けられたことがあります。「先生からもらった痛み止め、怖くて飲めませんでした。だって『麻薬』なんですよね…?」その方は、大腸がんの腹膜播種(はしゅ)=おなかの中にがんが広がった状態=で、抗がん剤治療を受けていました。おなかの痛みをコントロールするため、私は麻薬性の鎮痛薬を処方していたのですが、患者さんはこれが「怖くて飲めなかった」と言うのです。  私は大いに反省しました。  医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。  ◇「麻薬は怖い」という誤解  「麻薬」というと、何となく怖いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。「麻薬」という言葉は、「夢中になりすぎて他のことに手がつかなくなる」といった状況を指して「麻薬のように」と比喩的に使われることもあります。  こうした「麻薬」のネガティブなイメージが、医療用麻薬に対する誤解を生んでいるのです。  医療現場では、医療用麻薬を、がん性疼痛(がんによる痛み)に対する有効な鎮痛手段として非常によく用います。医療用麻薬とは、「麻薬及び向精神薬取締法」によって医療用に使用が許可された麻薬で、コカインやヘロインのように使用や所持が禁止された不正麻薬とは異なります。医師の指示に従って痛みのある時に使用すれば、中毒(依存症)にはならないことも分かっています。  また、飲み薬(内服薬)、注射薬(血管内への点滴や皮下注射)、パッチ製剤(貼り薬)、座薬など、剤型にも豊富なラインアップがあります。  飲み薬が口から飲めない方や、血管が細くて点滴できない方であっても、パッチ製剤や座薬といった手段を用いることで、うまく痛みをコントロールすることができます。患者さんの状態に合わせて剤型を使い分けることができるため、利便性が高いというメリットがあります。  ◇「麻薬は末期に使うもの」という誤解  麻薬に対しては、末期がんの患者さんに使う薬だと誤解している人もいます。実際、「麻薬を使うということは、いよいよ死期が迫った最終段階だ」という誤解から、麻薬の処方に抵抗感を示される方も多くいます。特に、臨床現場でよく使う麻薬の一つである「モルヒネ」に対しては、こうしたイメージをお持ちの方が多いようです。また、麻薬を使うと寿命が縮まる、と誤解している方もいます。  実際には、モルヒネを含む医療用麻薬を服用しながら日常生活を営み、仕事をしている人はたくさんいます。むしろ、いつも通り生活しながらでも使用できる、ということが、医療用麻薬のメリットでもあります。また、麻薬の量を多くしても寿命が短くなったり、死期が早まったりすることはありません。鎮痛手段として使える便利な薬の一つであるにもかかわらず、ネガティブなイメージは根強くあるのです。  ◇「麻薬」という言葉の使い方に注意  医療用麻薬を患者さんに使用してもらう際、医療スタッフはこうした一般的なイメージに配慮する必要があると感じます。麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんは麻薬に対する誤解が解けないまま痛みを我慢することになってしまいます。  また、状況によっては「麻薬」という言葉だけを伝えるのではなく、「医療用麻薬」「麻薬性鎮痛薬」「オピオイド(麻薬性鎮痛薬の総称の英語)」といった言葉を使うことも大切だと思います。  安全性や利便性の高い痛み止めであるのに、誤解によって上手に使えないのは非常にもったいないことです。ご本人やご家族が麻薬を使用する際、過度に不安を抱くことのないよう、ここに書いた麻薬の性質を知っておいていただければ幸いです。(守秘義務の観点から紹介事例の内容を一部改変しております)
麻薬に対しては、どのような不安を口にされる方もいますか。
麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。
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医療
痛み止めの麻薬は怖くない? 医療現場では日常的に処方  以前外来で患者さんから、こんな悩みを打ち明けられたことがあります。「先生からもらった痛み止め、怖くて飲めませんでした。だって『麻薬』なんですよね…?」その方は、大腸がんの腹膜播種(はしゅ)=おなかの中にがんが広がった状態=で、抗がん剤治療を受けていました。おなかの痛みをコントロールするため、私は麻薬性の鎮痛薬を処方していたのですが、患者さんはこれが「怖くて飲めなかった」と言うのです。  私は大いに反省しました。  医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。  ◇「麻薬は怖い」という誤解  「麻薬」というと、何となく怖いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。「麻薬」という言葉は、「夢中になりすぎて他のことに手がつかなくなる」といった状況を指して「麻薬のように」と比喩的に使われることもあります。  こうした「麻薬」のネガティブなイメージが、医療用麻薬に対する誤解を生んでいるのです。  医療現場では、医療用麻薬を、がん性疼痛(がんによる痛み)に対する有効な鎮痛手段として非常によく用います。医療用麻薬とは、「麻薬及び向精神薬取締法」によって医療用に使用が許可された麻薬で、コカインやヘロインのように使用や所持が禁止された不正麻薬とは異なります。医師の指示に従って痛みのある時に使用すれば、中毒(依存症)にはならないことも分かっています。  また、飲み薬(内服薬)、注射薬(血管内への点滴や皮下注射)、パッチ製剤(貼り薬)、座薬など、剤型にも豊富なラインアップがあります。  飲み薬が口から飲めない方や、血管が細くて点滴できない方であっても、パッチ製剤や座薬といった手段を用いることで、うまく痛みをコントロールすることができます。患者さんの状態に合わせて剤型を使い分けることができるため、利便性が高いというメリットがあります。  ◇「麻薬は末期に使うもの」という誤解  麻薬に対しては、末期がんの患者さんに使う薬だと誤解している人もいます。実際、「麻薬を使うということは、いよいよ死期が迫った最終段階だ」という誤解から、麻薬の処方に抵抗感を示される方も多くいます。特に、臨床現場でよく使う麻薬の一つである「モルヒネ」に対しては、こうしたイメージをお持ちの方が多いようです。また、麻薬を使うと寿命が縮まる、と誤解している方もいます。  実際には、モルヒネを含む医療用麻薬を服用しながら日常生活を営み、仕事をしている人はたくさんいます。むしろ、いつも通り生活しながらでも使用できる、ということが、医療用麻薬のメリットでもあります。また、麻薬の量を多くしても寿命が短くなったり、死期が早まったりすることはありません。鎮痛手段として使える便利な薬の一つであるにもかかわらず、ネガティブなイメージは根強くあるのです。  ◇「麻薬」という言葉の使い方に注意  医療用麻薬を患者さんに使用してもらう際、医療スタッフはこうした一般的なイメージに配慮する必要があると感じます。麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんは麻薬に対する誤解が解けないまま痛みを我慢することになってしまいます。  また、状況によっては「麻薬」という言葉だけを伝えるのではなく、「医療用麻薬」「麻薬性鎮痛薬」「オピオイド(麻薬性鎮痛薬の総称の英語)」といった言葉を使うことも大切だと思います。  安全性や利便性の高い痛み止めであるのに、誤解によって上手に使えないのは非常にもったいないことです。ご本人やご家族が麻薬を使用する際、過度に不安を抱くことのないよう、ここに書いた麻薬の性質を知っておいていただければ幸いです。(守秘義務の観点から紹介事例の内容を一部改変しております)
医療用麻薬とはなんですか。
医療用麻薬とは、「麻薬及び向精神薬取締法」によって医療用に使用が許可された麻薬です。
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医療
痛み止めの麻薬は怖くない? 医療現場では日常的に処方  以前外来で患者さんから、こんな悩みを打ち明けられたことがあります。「先生からもらった痛み止め、怖くて飲めませんでした。だって『麻薬』なんですよね…?」その方は、大腸がんの腹膜播種(はしゅ)=おなかの中にがんが広がった状態=で、抗がん剤治療を受けていました。おなかの痛みをコントロールするため、私は麻薬性の鎮痛薬を処方していたのですが、患者さんはこれが「怖くて飲めなかった」と言うのです。  私は大いに反省しました。  医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。  ◇「麻薬は怖い」という誤解  「麻薬」というと、何となく怖いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。「麻薬」という言葉は、「夢中になりすぎて他のことに手がつかなくなる」といった状況を指して「麻薬のように」と比喩的に使われることもあります。  こうした「麻薬」のネガティブなイメージが、医療用麻薬に対する誤解を生んでいるのです。  医療現場では、医療用麻薬を、がん性疼痛(がんによる痛み)に対する有効な鎮痛手段として非常によく用います。医療用麻薬とは、「麻薬及び向精神薬取締法」によって医療用に使用が許可された麻薬で、コカインやヘロインのように使用や所持が禁止された不正麻薬とは異なります。医師の指示に従って痛みのある時に使用すれば、中毒(依存症)にはならないことも分かっています。  また、飲み薬(内服薬)、注射薬(血管内への点滴や皮下注射)、パッチ製剤(貼り薬)、座薬など、剤型にも豊富なラインアップがあります。  飲み薬が口から飲めない方や、血管が細くて点滴できない方であっても、パッチ製剤や座薬といった手段を用いることで、うまく痛みをコントロールすることができます。患者さんの状態に合わせて剤型を使い分けることができるため、利便性が高いというメリットがあります。  ◇「麻薬は末期に使うもの」という誤解  麻薬に対しては、末期がんの患者さんに使う薬だと誤解している人もいます。実際、「麻薬を使うということは、いよいよ死期が迫った最終段階だ」という誤解から、麻薬の処方に抵抗感を示される方も多くいます。特に、臨床現場でよく使う麻薬の一つである「モルヒネ」に対しては、こうしたイメージをお持ちの方が多いようです。また、麻薬を使うと寿命が縮まる、と誤解している方もいます。  実際には、モルヒネを含む医療用麻薬を服用しながら日常生活を営み、仕事をしている人はたくさんいます。むしろ、いつも通り生活しながらでも使用できる、ということが、医療用麻薬のメリットでもあります。また、麻薬の量を多くしても寿命が短くなったり、死期が早まったりすることはありません。鎮痛手段として使える便利な薬の一つであるにもかかわらず、ネガティブなイメージは根強くあるのです。  ◇「麻薬」という言葉の使い方に注意  医療用麻薬を患者さんに使用してもらう際、医療スタッフはこうした一般的なイメージに配慮する必要があると感じます。麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんは麻薬に対する誤解が解けないまま痛みを我慢することになってしまいます。  また、状況によっては「麻薬」という言葉だけを伝えるのではなく、「医療用麻薬」「麻薬性鎮痛薬」「オピオイド(麻薬性鎮痛薬の総称の英語)」といった言葉を使うことも大切だと思います。  安全性や利便性の高い痛み止めであるのに、誤解によって上手に使えないのは非常にもったいないことです。ご本人やご家族が麻薬を使用する際、過度に不安を抱くことのないよう、ここに書いた麻薬の性質を知っておいていただければ幸いです。(守秘義務の観点から紹介事例の内容を一部改変しております)
麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんはどうなってしまいますか。
麻薬の使い方を丁寧に説明し、その安全性や目的をきっちり伝えなければ、患者さんは麻薬に対する誤解が解けないまま痛みを我慢することになってしまいます。
JCRRAG_010088
医療
手術の難しさは何で決まる? 同じ病気でも大きな個人差  外科医としてたくさんの手術に関わると、相反する二つの感情を抱きます。一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。矛盾しているようですが、実はこれが正直な感覚です。  まず前者は、見た目も背丈も性格も生い立ちも、何もかもが違う人たちであるのに、おなかを開くと誰もがほぼ同じ構造や機能を持っている、という意味です。  ◇類似性と多様性  右上に肝臓があり、真ん中に胃と十二指腸と膵臓(すいぞう)があり、左上に脾臓(ひぞう)があり、下に長い大腸と小腸が横たわる。当たり前のようですが、何百、何千という全く異なる人たちのおなかを開けると同じ景色が広がっている、というのは、ある意味で神秘的です。  では、後者の「多様」とはどういう意味でしょうか。  確かに構造や機能は誰しも同じなのですが、血管の走行、太さやもろさ、脂肪組織の色調や量、腸管の走行や長さなど、細かな部分は微妙に異なり、一人として同じ人はいません。  実際私たちは、記録された手術中の画像を見るだけで、それがどの患者さんの体内であるかを思い出せることもよくあります。そのくらい、細かな部分に差異があるからです。  人が生きていくためには、大まかな構造や機能は同じでなければならない一方、生体機能に大きな影響を及ぼさない細かな部分には「遊び」がある。これもまた神秘的です。  むろん今回は「人体の神秘」について語りたいわけではありません。重要なのは、この「多様性」が手術の難度やリスクを決める因子になる、という点が、手術を受ける上で重要だということです。 ◇やせた人より長い時間  手術の難度やリスクに影響を与える因子は非常にたくさんあります。それらを全て挙げることはできませんが、今回は私が専門とする消化器外科領域で代表的な因子を二つ書いてみます。  一つ目は「肥満」です。  肥満の方のおなかの中には、やせた方よりはるかに大量の内臓脂肪があります。おなかを開くと、臓器が黄色い脂肪で覆われ、病変を確認することすら一苦労、ということもよくあります。やせた人より手術にはるかに長い時間を要することもあります。  また、脂肪の中には細かな血管が張り巡らされています。大量の内臓脂肪を切ったりかき分けたりする中で、もろい血管からたびたび細かな出血が起き、出血量が多くなるリスクがあります。  実際、肥満は数々の術後合併症(手術後に起こるさまざまな問題)のリスクとなることが分かっており、入院が長引く要因の一つでもあります。肥満の解消が手術リスクを下げる上で重要であることは、言うまでもないでしょう。  ◇「手術の既往」  もう一つの代表的な因子に、「手術の既往」があります。「手術の既往」とは、「以前に手術を受けたことがある」という意味です。  一度手術を受けたことがある方のおなかを開くと、前回の手術で触った部分を中心に、広く「癒着」を起こしています。「癒着」とは、腸管同士がべったり張り付いたり、内臓脂肪とおなかの壁がくっついたりした状態のことです。  これが原因で、おなかを開けるだけでも一苦労、ということもあります。場合によっては、癒着を剥がすだけで1~2時間かかることもあります。  また、癒着を剥がす過程で腸管に細かな傷が付いて壁が弱くなり、術後しばらくしてから穴が開いたりするリスク(せん孔)もあります。  ある意味、皮膚の表面のけがにガーゼを貼ったままにしていると傷にガーゼがべったりくっついてしまい、剥がすと表面のかさぶたまで剥がれて痛い思いをする、という状況に似ています。手術後は、おなかの中が元どおりに治る過程で、こうした癒着はどうしても起こるのです。  癒着の程度は個人差が大きいのですが、おおむね「初めての手術」より時間がかかり、また術後合併症のリスクも高くなるのが一般的です。  もちろん、私たちはこうしたリスクを最小限にするための手だてを講じます。しかし、手術の難度やリスクについては、全く同じ病気、全く同じ手術であっても大きな個人差があるという点については、十分に理解しておいていただければ幸いです。
外科医が人体について抱く二つの感情とは何か。
一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。
JCRRAG_010089
医療
手術の難しさは何で決まる? 同じ病気でも大きな個人差  外科医としてたくさんの手術に関わると、相反する二つの感情を抱きます。一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。矛盾しているようですが、実はこれが正直な感覚です。  まず前者は、見た目も背丈も性格も生い立ちも、何もかもが違う人たちであるのに、おなかを開くと誰もがほぼ同じ構造や機能を持っている、という意味です。  ◇類似性と多様性  右上に肝臓があり、真ん中に胃と十二指腸と膵臓(すいぞう)があり、左上に脾臓(ひぞう)があり、下に長い大腸と小腸が横たわる。当たり前のようですが、何百、何千という全く異なる人たちのおなかを開けると同じ景色が広がっている、というのは、ある意味で神秘的です。  では、後者の「多様」とはどういう意味でしょうか。  確かに構造や機能は誰しも同じなのですが、血管の走行、太さやもろさ、脂肪組織の色調や量、腸管の走行や長さなど、細かな部分は微妙に異なり、一人として同じ人はいません。  実際私たちは、記録された手術中の画像を見るだけで、それがどの患者さんの体内であるかを思い出せることもよくあります。そのくらい、細かな部分に差異があるからです。  人が生きていくためには、大まかな構造や機能は同じでなければならない一方、生体機能に大きな影響を及ぼさない細かな部分には「遊び」がある。これもまた神秘的です。  むろん今回は「人体の神秘」について語りたいわけではありません。重要なのは、この「多様性」が手術の難度やリスクを決める因子になる、という点が、手術を受ける上で重要だということです。 ◇やせた人より長い時間  手術の難度やリスクに影響を与える因子は非常にたくさんあります。それらを全て挙げることはできませんが、今回は私が専門とする消化器外科領域で代表的な因子を二つ書いてみます。  一つ目は「肥満」です。  肥満の方のおなかの中には、やせた方よりはるかに大量の内臓脂肪があります。おなかを開くと、臓器が黄色い脂肪で覆われ、病変を確認することすら一苦労、ということもよくあります。やせた人より手術にはるかに長い時間を要することもあります。  また、脂肪の中には細かな血管が張り巡らされています。大量の内臓脂肪を切ったりかき分けたりする中で、もろい血管からたびたび細かな出血が起き、出血量が多くなるリスクがあります。  実際、肥満は数々の術後合併症(手術後に起こるさまざまな問題)のリスクとなることが分かっており、入院が長引く要因の一つでもあります。肥満の解消が手術リスクを下げる上で重要であることは、言うまでもないでしょう。  ◇「手術の既往」  もう一つの代表的な因子に、「手術の既往」があります。「手術の既往」とは、「以前に手術を受けたことがある」という意味です。  一度手術を受けたことがある方のおなかを開くと、前回の手術で触った部分を中心に、広く「癒着」を起こしています。「癒着」とは、腸管同士がべったり張り付いたり、内臓脂肪とおなかの壁がくっついたりした状態のことです。  これが原因で、おなかを開けるだけでも一苦労、ということもあります。場合によっては、癒着を剥がすだけで1~2時間かかることもあります。  また、癒着を剥がす過程で腸管に細かな傷が付いて壁が弱くなり、術後しばらくしてから穴が開いたりするリスク(せん孔)もあります。  ある意味、皮膚の表面のけがにガーゼを貼ったままにしていると傷にガーゼがべったりくっついてしまい、剥がすと表面のかさぶたまで剥がれて痛い思いをする、という状況に似ています。手術後は、おなかの中が元どおりに治る過程で、こうした癒着はどうしても起こるのです。  癒着の程度は個人差が大きいのですが、おおむね「初めての手術」より時間がかかり、また術後合併症のリスクも高くなるのが一般的です。  もちろん、私たちはこうしたリスクを最小限にするための手だてを講じます。しかし、手術の難度やリスクについては、全く同じ病気、全く同じ手術であっても大きな個人差があるという点については、十分に理解しておいていただければ幸いです。
消化器外科領域で手術の難度に影響を与える代表的な因子の一つは何か。
一つ目は「肥満」です。
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医療
手術の難しさは何で決まる? 同じ病気でも大きな個人差  外科医としてたくさんの手術に関わると、相反する二つの感情を抱きます。一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。矛盾しているようですが、実はこれが正直な感覚です。  まず前者は、見た目も背丈も性格も生い立ちも、何もかもが違う人たちであるのに、おなかを開くと誰もがほぼ同じ構造や機能を持っている、という意味です。  ◇類似性と多様性  右上に肝臓があり、真ん中に胃と十二指腸と膵臓(すいぞう)があり、左上に脾臓(ひぞう)があり、下に長い大腸と小腸が横たわる。当たり前のようですが、何百、何千という全く異なる人たちのおなかを開けると同じ景色が広がっている、というのは、ある意味で神秘的です。  では、後者の「多様」とはどういう意味でしょうか。  確かに構造や機能は誰しも同じなのですが、血管の走行、太さやもろさ、脂肪組織の色調や量、腸管の走行や長さなど、細かな部分は微妙に異なり、一人として同じ人はいません。  実際私たちは、記録された手術中の画像を見るだけで、それがどの患者さんの体内であるかを思い出せることもよくあります。そのくらい、細かな部分に差異があるからです。  人が生きていくためには、大まかな構造や機能は同じでなければならない一方、生体機能に大きな影響を及ぼさない細かな部分には「遊び」がある。これもまた神秘的です。  むろん今回は「人体の神秘」について語りたいわけではありません。重要なのは、この「多様性」が手術の難度やリスクを決める因子になる、という点が、手術を受ける上で重要だということです。 ◇やせた人より長い時間  手術の難度やリスクに影響を与える因子は非常にたくさんあります。それらを全て挙げることはできませんが、今回は私が専門とする消化器外科領域で代表的な因子を二つ書いてみます。  一つ目は「肥満」です。  肥満の方のおなかの中には、やせた方よりはるかに大量の内臓脂肪があります。おなかを開くと、臓器が黄色い脂肪で覆われ、病変を確認することすら一苦労、ということもよくあります。やせた人より手術にはるかに長い時間を要することもあります。  また、脂肪の中には細かな血管が張り巡らされています。大量の内臓脂肪を切ったりかき分けたりする中で、もろい血管からたびたび細かな出血が起き、出血量が多くなるリスクがあります。  実際、肥満は数々の術後合併症(手術後に起こるさまざまな問題)のリスクとなることが分かっており、入院が長引く要因の一つでもあります。肥満の解消が手術リスクを下げる上で重要であることは、言うまでもないでしょう。  ◇「手術の既往」  もう一つの代表的な因子に、「手術の既往」があります。「手術の既往」とは、「以前に手術を受けたことがある」という意味です。  一度手術を受けたことがある方のおなかを開くと、前回の手術で触った部分を中心に、広く「癒着」を起こしています。「癒着」とは、腸管同士がべったり張り付いたり、内臓脂肪とおなかの壁がくっついたりした状態のことです。  これが原因で、おなかを開けるだけでも一苦労、ということもあります。場合によっては、癒着を剥がすだけで1~2時間かかることもあります。  また、癒着を剥がす過程で腸管に細かな傷が付いて壁が弱くなり、術後しばらくしてから穴が開いたりするリスク(せん孔)もあります。  ある意味、皮膚の表面のけがにガーゼを貼ったままにしていると傷にガーゼがべったりくっついてしまい、剥がすと表面のかさぶたまで剥がれて痛い思いをする、という状況に似ています。手術後は、おなかの中が元どおりに治る過程で、こうした癒着はどうしても起こるのです。  癒着の程度は個人差が大きいのですが、おおむね「初めての手術」より時間がかかり、また術後合併症のリスクも高くなるのが一般的です。  もちろん、私たちはこうしたリスクを最小限にするための手だてを講じます。しかし、手術の難度やリスクについては、全く同じ病気、全く同じ手術であっても大きな個人差があるという点については、十分に理解しておいていただければ幸いです。
肥満の人の手術で出血が多くなる理由は何か。
脂肪の中には細かな血管が張り巡らされています。大量の内臓脂肪を切ったりかき分けたりする中で、もろい血管からたびたび細かな出血が起き、出血量が多くなるリスクがあります。
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医療
手術の難しさは何で決まる? 同じ病気でも大きな個人差  外科医としてたくさんの手術に関わると、相反する二つの感情を抱きます。一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。矛盾しているようですが、実はこれが正直な感覚です。  まず前者は、見た目も背丈も性格も生い立ちも、何もかもが違う人たちであるのに、おなかを開くと誰もがほぼ同じ構造や機能を持っている、という意味です。  ◇類似性と多様性  右上に肝臓があり、真ん中に胃と十二指腸と膵臓(すいぞう)があり、左上に脾臓(ひぞう)があり、下に長い大腸と小腸が横たわる。当たり前のようですが、何百、何千という全く異なる人たちのおなかを開けると同じ景色が広がっている、というのは、ある意味で神秘的です。  では、後者の「多様」とはどういう意味でしょうか。  確かに構造や機能は誰しも同じなのですが、血管の走行、太さやもろさ、脂肪組織の色調や量、腸管の走行や長さなど、細かな部分は微妙に異なり、一人として同じ人はいません。  実際私たちは、記録された手術中の画像を見るだけで、それがどの患者さんの体内であるかを思い出せることもよくあります。そのくらい、細かな部分に差異があるからです。  人が生きていくためには、大まかな構造や機能は同じでなければならない一方、生体機能に大きな影響を及ぼさない細かな部分には「遊び」がある。これもまた神秘的です。  むろん今回は「人体の神秘」について語りたいわけではありません。重要なのは、この「多様性」が手術の難度やリスクを決める因子になる、という点が、手術を受ける上で重要だということです。 ◇やせた人より長い時間  手術の難度やリスクに影響を与える因子は非常にたくさんあります。それらを全て挙げることはできませんが、今回は私が専門とする消化器外科領域で代表的な因子を二つ書いてみます。  一つ目は「肥満」です。  肥満の方のおなかの中には、やせた方よりはるかに大量の内臓脂肪があります。おなかを開くと、臓器が黄色い脂肪で覆われ、病変を確認することすら一苦労、ということもよくあります。やせた人より手術にはるかに長い時間を要することもあります。  また、脂肪の中には細かな血管が張り巡らされています。大量の内臓脂肪を切ったりかき分けたりする中で、もろい血管からたびたび細かな出血が起き、出血量が多くなるリスクがあります。  実際、肥満は数々の術後合併症(手術後に起こるさまざまな問題)のリスクとなることが分かっており、入院が長引く要因の一つでもあります。肥満の解消が手術リスクを下げる上で重要であることは、言うまでもないでしょう。  ◇「手術の既往」  もう一つの代表的な因子に、「手術の既往」があります。「手術の既往」とは、「以前に手術を受けたことがある」という意味です。  一度手術を受けたことがある方のおなかを開くと、前回の手術で触った部分を中心に、広く「癒着」を起こしています。「癒着」とは、腸管同士がべったり張り付いたり、内臓脂肪とおなかの壁がくっついたりした状態のことです。  これが原因で、おなかを開けるだけでも一苦労、ということもあります。場合によっては、癒着を剥がすだけで1~2時間かかることもあります。  また、癒着を剥がす過程で腸管に細かな傷が付いて壁が弱くなり、術後しばらくしてから穴が開いたりするリスク(せん孔)もあります。  ある意味、皮膚の表面のけがにガーゼを貼ったままにしていると傷にガーゼがべったりくっついてしまい、剥がすと表面のかさぶたまで剥がれて痛い思いをする、という状況に似ています。手術後は、おなかの中が元どおりに治る過程で、こうした癒着はどうしても起こるのです。  癒着の程度は個人差が大きいのですが、おおむね「初めての手術」より時間がかかり、また術後合併症のリスクも高くなるのが一般的です。  もちろん、私たちはこうしたリスクを最小限にするための手だてを講じます。しかし、手術の難度やリスクについては、全く同じ病気、全く同じ手術であっても大きな個人差があるという点については、十分に理解しておいていただければ幸いです。
手術の既往がある人の腹部でよく見られる状態は何か。
前回の手術で触った部分を中心に、広く「癒着」を起こしています。
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医療
手術の難しさは何で決まる? 同じ病気でも大きな個人差  外科医としてたくさんの手術に関わると、相反する二つの感情を抱きます。一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。矛盾しているようですが、実はこれが正直な感覚です。  まず前者は、見た目も背丈も性格も生い立ちも、何もかもが違う人たちであるのに、おなかを開くと誰もがほぼ同じ構造や機能を持っている、という意味です。  ◇類似性と多様性  右上に肝臓があり、真ん中に胃と十二指腸と膵臓(すいぞう)があり、左上に脾臓(ひぞう)があり、下に長い大腸と小腸が横たわる。当たり前のようですが、何百、何千という全く異なる人たちのおなかを開けると同じ景色が広がっている、というのは、ある意味で神秘的です。  では、後者の「多様」とはどういう意味でしょうか。  確かに構造や機能は誰しも同じなのですが、血管の走行、太さやもろさ、脂肪組織の色調や量、腸管の走行や長さなど、細かな部分は微妙に異なり、一人として同じ人はいません。  実際私たちは、記録された手術中の画像を見るだけで、それがどの患者さんの体内であるかを思い出せることもよくあります。そのくらい、細かな部分に差異があるからです。  人が生きていくためには、大まかな構造や機能は同じでなければならない一方、生体機能に大きな影響を及ぼさない細かな部分には「遊び」がある。これもまた神秘的です。  むろん今回は「人体の神秘」について語りたいわけではありません。重要なのは、この「多様性」が手術の難度やリスクを決める因子になる、という点が、手術を受ける上で重要だということです。 ◇やせた人より長い時間  手術の難度やリスクに影響を与える因子は非常にたくさんあります。それらを全て挙げることはできませんが、今回は私が専門とする消化器外科領域で代表的な因子を二つ書いてみます。  一つ目は「肥満」です。  肥満の方のおなかの中には、やせた方よりはるかに大量の内臓脂肪があります。おなかを開くと、臓器が黄色い脂肪で覆われ、病変を確認することすら一苦労、ということもよくあります。やせた人より手術にはるかに長い時間を要することもあります。  また、脂肪の中には細かな血管が張り巡らされています。大量の内臓脂肪を切ったりかき分けたりする中で、もろい血管からたびたび細かな出血が起き、出血量が多くなるリスクがあります。  実際、肥満は数々の術後合併症(手術後に起こるさまざまな問題)のリスクとなることが分かっており、入院が長引く要因の一つでもあります。肥満の解消が手術リスクを下げる上で重要であることは、言うまでもないでしょう。  ◇「手術の既往」  もう一つの代表的な因子に、「手術の既往」があります。「手術の既往」とは、「以前に手術を受けたことがある」という意味です。  一度手術を受けたことがある方のおなかを開くと、前回の手術で触った部分を中心に、広く「癒着」を起こしています。「癒着」とは、腸管同士がべったり張り付いたり、内臓脂肪とおなかの壁がくっついたりした状態のことです。  これが原因で、おなかを開けるだけでも一苦労、ということもあります。場合によっては、癒着を剥がすだけで1~2時間かかることもあります。  また、癒着を剥がす過程で腸管に細かな傷が付いて壁が弱くなり、術後しばらくしてから穴が開いたりするリスク(せん孔)もあります。  ある意味、皮膚の表面のけがにガーゼを貼ったままにしていると傷にガーゼがべったりくっついてしまい、剥がすと表面のかさぶたまで剥がれて痛い思いをする、という状況に似ています。手術後は、おなかの中が元どおりに治る過程で、こうした癒着はどうしても起こるのです。  癒着の程度は個人差が大きいのですが、おおむね「初めての手術」より時間がかかり、また術後合併症のリスクも高くなるのが一般的です。  もちろん、私たちはこうしたリスクを最小限にするための手だてを講じます。しかし、手術の難度やリスクについては、全く同じ病気、全く同じ手術であっても大きな個人差があるという点については、十分に理解しておいていただければ幸いです。
「手術の既往」とは、どのような意味ですか。
「手術の既往」とは、「以前に手術を受けたことがある」という意味です。
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医療
病気がちだった幼い頃の不安 医師が埋めるべき情報格差  私は幼い頃、気管支ぜんそくで病院によく通っていました。発作的にのどがヒューヒューと音を立て、せきが止まらなくなり、呼吸がしにくくなる。こうしたぜんそく発作を頻繁に起こしていたのです。両親に車で病院に連れて行ってもらい、吸入の治療をよく受けていたことを覚えています。  子供の頃の記憶はたいていあいまいです。しかし不思議なことに、ぜんそく発作を起こして病院に運ばれた時のことは一つ一つ鮮明に覚えています。修学旅行で友人たちとふざけて枕投げをした時。自宅のガレージで妹とキャッチボールをした時。たくさん猫を飼っている知人の家に遊びに行った時。  ほこりっぽい環境や、動物の毛が多い環境が発作の誘引になっていたようでした。  ◇アレルギーマーチ  また、私は幼い頃アトピー性皮膚炎を持っていました。首や肘、膝の裏側にひどいかゆみが出て止まらず、かきこわして皮膚がボロボロになり、血まみれになっていました。  特に夏の暑い時が大変でした。  汗が出るとかゆくなり、かいてはいけないと分かっていても我慢できずにかきむしってしまうのです。かゆくて仕方がなくなり、我慢の限界に達して膝の裏に爪を立ててかきむしり、かゆみを解消する。あの時の何とも言えない罪悪感は、今でも鮮明に覚えています。  さらに私は幼い頃、アレルギー性鼻炎を持っていました。いつも鼻水と鼻づまりに悩まされ、頻繁に耳鼻科に通っていました。今なら人前ではなをかむことに抵抗はありませんが、小学生の頃は、授業中に大きな音を立ててはなをかむのは非常に恥ずかしく、何とかギリギリまではなをすすって我慢していたのを覚えています。  成長するにつれてこれらの病気は改善していったのですが、当時は、なぜこんなにたくさんの病気に一度にかかるのかと不安でした。そして私は医学部に入り、大学1年生の免疫学の講義で「アレルギーマーチ」という言葉を初めて知り、膝を打つことになるのです。  ◇知っているという安心感  乳児期にアトピー性皮膚炎があると、成長するにつれて、食物アレルギーや気管支ぜんそく、 鼻炎など、他のアレルギー疾患に次々にかかる確率が高くなることが知られています。こうした様子は、「行進」にたとえて「アレルギーマーチ」と呼ばれています。  私の体はまさにこの「典型例」であり、多くの異なる病気に同時にかかることが特異だ、というわけではありませんでした。大学の講義でこの現象を学んだ時、私は思いました。「もしあの頃、これが『典型的な経過である』と知っていたら、不安は軽くすんだのではないだろうか」と。  何より私の両親はそうでしょう。苦しむ私を毎回どんな思いで病院に連れて行っていたかと思えば、両親の不安の大きさは私の比ではなかっただろうと思います。  ◇埋めるべき知識の格差  医師と患者の間には情報の非対称性がある、とよく言われます。しかし、この情報量の格差は、患者さんが理解するのが難しい専門的知識だけで形成されているのではありません。簡単な言葉で伝えれば、比較的容易に理解できる知識も多いのです。  そして、「概要を知っている」というだけで不安は大きく軽減されます。えたいの知れないものであるほど、恐怖は増幅するからです。  医療者側もまた、こうした状況を十分に理解し、上手な発信の方法を模索する必要がある、と常に感じています。むろん診察室の中での限られた時間でそれを実現するのは難しいでしょう。そこで私は、日頃からウェブメディアやSNSなどを通して情報発信を続けています。  いつかどこかで、あの頃の私や私の両親のように不安にさいなまれている人たちに、この声が届けば、と願っています。
私は幼い頃、気管支ぜんそくでどこによく通っていましたか。
私は幼い頃、気管支ぜんそくで病院によく通っていました。
JCRRAG_010094
医療
病気がちだった幼い頃の不安 医師が埋めるべき情報格差  私は幼い頃、気管支ぜんそくで病院によく通っていました。発作的にのどがヒューヒューと音を立て、せきが止まらなくなり、呼吸がしにくくなる。こうしたぜんそく発作を頻繁に起こしていたのです。両親に車で病院に連れて行ってもらい、吸入の治療をよく受けていたことを覚えています。  子供の頃の記憶はたいていあいまいです。しかし不思議なことに、ぜんそく発作を起こして病院に運ばれた時のことは一つ一つ鮮明に覚えています。修学旅行で友人たちとふざけて枕投げをした時。自宅のガレージで妹とキャッチボールをした時。たくさん猫を飼っている知人の家に遊びに行った時。  ほこりっぽい環境や、動物の毛が多い環境が発作の誘引になっていたようでした。  ◇アレルギーマーチ  また、私は幼い頃アトピー性皮膚炎を持っていました。首や肘、膝の裏側にひどいかゆみが出て止まらず、かきこわして皮膚がボロボロになり、血まみれになっていました。  特に夏の暑い時が大変でした。  汗が出るとかゆくなり、かいてはいけないと分かっていても我慢できずにかきむしってしまうのです。かゆくて仕方がなくなり、我慢の限界に達して膝の裏に爪を立ててかきむしり、かゆみを解消する。あの時の何とも言えない罪悪感は、今でも鮮明に覚えています。  さらに私は幼い頃、アレルギー性鼻炎を持っていました。いつも鼻水と鼻づまりに悩まされ、頻繁に耳鼻科に通っていました。今なら人前ではなをかむことに抵抗はありませんが、小学生の頃は、授業中に大きな音を立ててはなをかむのは非常に恥ずかしく、何とかギリギリまではなをすすって我慢していたのを覚えています。  成長するにつれてこれらの病気は改善していったのですが、当時は、なぜこんなにたくさんの病気に一度にかかるのかと不安でした。そして私は医学部に入り、大学1年生の免疫学の講義で「アレルギーマーチ」という言葉を初めて知り、膝を打つことになるのです。  ◇知っているという安心感  乳児期にアトピー性皮膚炎があると、成長するにつれて、食物アレルギーや気管支ぜんそく、 鼻炎など、他のアレルギー疾患に次々にかかる確率が高くなることが知られています。こうした様子は、「行進」にたとえて「アレルギーマーチ」と呼ばれています。  私の体はまさにこの「典型例」であり、多くの異なる病気に同時にかかることが特異だ、というわけではありませんでした。大学の講義でこの現象を学んだ時、私は思いました。「もしあの頃、これが『典型的な経過である』と知っていたら、不安は軽くすんだのではないだろうか」と。  何より私の両親はそうでしょう。苦しむ私を毎回どんな思いで病院に連れて行っていたかと思えば、両親の不安の大きさは私の比ではなかっただろうと思います。  ◇埋めるべき知識の格差  医師と患者の間には情報の非対称性がある、とよく言われます。しかし、この情報量の格差は、患者さんが理解するのが難しい専門的知識だけで形成されているのではありません。簡単な言葉で伝えれば、比較的容易に理解できる知識も多いのです。  そして、「概要を知っている」というだけで不安は大きく軽減されます。えたいの知れないものであるほど、恐怖は増幅するからです。  医療者側もまた、こうした状況を十分に理解し、上手な発信の方法を模索する必要がある、と常に感じています。むろん診察室の中での限られた時間でそれを実現するのは難しいでしょう。そこで私は、日頃からウェブメディアやSNSなどを通して情報発信を続けています。  いつかどこかで、あの頃の私や私の両親のように不安にさいなまれている人たちに、この声が届けば、と願っています。
筆者が不安を軽減する手段として実践している情報発信の方法は何か。
日頃からウェブメディアやSNSなどを通して情報発信を続けています。
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医療
病気がちだった幼い頃の不安 医師が埋めるべき情報格差  私は幼い頃、気管支ぜんそくで病院によく通っていました。発作的にのどがヒューヒューと音を立て、せきが止まらなくなり、呼吸がしにくくなる。こうしたぜんそく発作を頻繁に起こしていたのです。両親に車で病院に連れて行ってもらい、吸入の治療をよく受けていたことを覚えています。  子供の頃の記憶はたいていあいまいです。しかし不思議なことに、ぜんそく発作を起こして病院に運ばれた時のことは一つ一つ鮮明に覚えています。修学旅行で友人たちとふざけて枕投げをした時。自宅のガレージで妹とキャッチボールをした時。たくさん猫を飼っている知人の家に遊びに行った時。  ほこりっぽい環境や、動物の毛が多い環境が発作の誘引になっていたようでした。  ◇アレルギーマーチ  また、私は幼い頃アトピー性皮膚炎を持っていました。首や肘、膝の裏側にひどいかゆみが出て止まらず、かきこわして皮膚がボロボロになり、血まみれになっていました。  特に夏の暑い時が大変でした。  汗が出るとかゆくなり、かいてはいけないと分かっていても我慢できずにかきむしってしまうのです。かゆくて仕方がなくなり、我慢の限界に達して膝の裏に爪を立ててかきむしり、かゆみを解消する。あの時の何とも言えない罪悪感は、今でも鮮明に覚えています。  さらに私は幼い頃、アレルギー性鼻炎を持っていました。いつも鼻水と鼻づまりに悩まされ、頻繁に耳鼻科に通っていました。今なら人前ではなをかむことに抵抗はありませんが、小学生の頃は、授業中に大きな音を立ててはなをかむのは非常に恥ずかしく、何とかギリギリまではなをすすって我慢していたのを覚えています。  成長するにつれてこれらの病気は改善していったのですが、当時は、なぜこんなにたくさんの病気に一度にかかるのかと不安でした。そして私は医学部に入り、大学1年生の免疫学の講義で「アレルギーマーチ」という言葉を初めて知り、膝を打つことになるのです。  ◇知っているという安心感  乳児期にアトピー性皮膚炎があると、成長するにつれて、食物アレルギーや気管支ぜんそく、 鼻炎など、他のアレルギー疾患に次々にかかる確率が高くなることが知られています。こうした様子は、「行進」にたとえて「アレルギーマーチ」と呼ばれています。  私の体はまさにこの「典型例」であり、多くの異なる病気に同時にかかることが特異だ、というわけではありませんでした。大学の講義でこの現象を学んだ時、私は思いました。「もしあの頃、これが『典型的な経過である』と知っていたら、不安は軽くすんだのではないだろうか」と。  何より私の両親はそうでしょう。苦しむ私を毎回どんな思いで病院に連れて行っていたかと思えば、両親の不安の大きさは私の比ではなかっただろうと思います。  ◇埋めるべき知識の格差  医師と患者の間には情報の非対称性がある、とよく言われます。しかし、この情報量の格差は、患者さんが理解するのが難しい専門的知識だけで形成されているのではありません。簡単な言葉で伝えれば、比較的容易に理解できる知識も多いのです。  そして、「概要を知っている」というだけで不安は大きく軽減されます。えたいの知れないものであるほど、恐怖は増幅するからです。  医療者側もまた、こうした状況を十分に理解し、上手な発信の方法を模索する必要がある、と常に感じています。むろん診察室の中での限られた時間でそれを実現するのは難しいでしょう。そこで私は、日頃からウェブメディアやSNSなどを通して情報発信を続けています。  いつかどこかで、あの頃の私や私の両親のように不安にさいなまれている人たちに、この声が届けば、と願っています。
「アレルギーマーチ」とはどのような現象のことを指すか。
乳児期にアトピー性皮膚炎があると、成長するにつれて、食物アレルギーや気管支ぜんそく、 鼻炎など、他のアレルギー疾患に次々にかかる確率が高くなることが知られています。
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医療
病気がちだった幼い頃の不安 医師が埋めるべき情報格差  私は幼い頃、気管支ぜんそくで病院によく通っていました。発作的にのどがヒューヒューと音を立て、せきが止まらなくなり、呼吸がしにくくなる。こうしたぜんそく発作を頻繁に起こしていたのです。両親に車で病院に連れて行ってもらい、吸入の治療をよく受けていたことを覚えています。  子供の頃の記憶はたいていあいまいです。しかし不思議なことに、ぜんそく発作を起こして病院に運ばれた時のことは一つ一つ鮮明に覚えています。修学旅行で友人たちとふざけて枕投げをした時。自宅のガレージで妹とキャッチボールをした時。たくさん猫を飼っている知人の家に遊びに行った時。  ほこりっぽい環境や、動物の毛が多い環境が発作の誘引になっていたようでした。  ◇アレルギーマーチ  また、私は幼い頃アトピー性皮膚炎を持っていました。首や肘、膝の裏側にひどいかゆみが出て止まらず、かきこわして皮膚がボロボロになり、血まみれになっていました。  特に夏の暑い時が大変でした。  汗が出るとかゆくなり、かいてはいけないと分かっていても我慢できずにかきむしってしまうのです。かゆくて仕方がなくなり、我慢の限界に達して膝の裏に爪を立ててかきむしり、かゆみを解消する。あの時の何とも言えない罪悪感は、今でも鮮明に覚えています。  さらに私は幼い頃、アレルギー性鼻炎を持っていました。いつも鼻水と鼻づまりに悩まされ、頻繁に耳鼻科に通っていました。今なら人前ではなをかむことに抵抗はありませんが、小学生の頃は、授業中に大きな音を立ててはなをかむのは非常に恥ずかしく、何とかギリギリまではなをすすって我慢していたのを覚えています。  成長するにつれてこれらの病気は改善していったのですが、当時は、なぜこんなにたくさんの病気に一度にかかるのかと不安でした。そして私は医学部に入り、大学1年生の免疫学の講義で「アレルギーマーチ」という言葉を初めて知り、膝を打つことになるのです。  ◇知っているという安心感  乳児期にアトピー性皮膚炎があると、成長するにつれて、食物アレルギーや気管支ぜんそく、 鼻炎など、他のアレルギー疾患に次々にかかる確率が高くなることが知られています。こうした様子は、「行進」にたとえて「アレルギーマーチ」と呼ばれています。  私の体はまさにこの「典型例」であり、多くの異なる病気に同時にかかることが特異だ、というわけではありませんでした。大学の講義でこの現象を学んだ時、私は思いました。「もしあの頃、これが『典型的な経過である』と知っていたら、不安は軽くすんだのではないだろうか」と。  何より私の両親はそうでしょう。苦しむ私を毎回どんな思いで病院に連れて行っていたかと思えば、両親の不安の大きさは私の比ではなかっただろうと思います。  ◇埋めるべき知識の格差  医師と患者の間には情報の非対称性がある、とよく言われます。しかし、この情報量の格差は、患者さんが理解するのが難しい専門的知識だけで形成されているのではありません。簡単な言葉で伝えれば、比較的容易に理解できる知識も多いのです。  そして、「概要を知っている」というだけで不安は大きく軽減されます。えたいの知れないものであるほど、恐怖は増幅するからです。  医療者側もまた、こうした状況を十分に理解し、上手な発信の方法を模索する必要がある、と常に感じています。むろん診察室の中での限られた時間でそれを実現するのは難しいでしょう。そこで私は、日頃からウェブメディアやSNSなどを通して情報発信を続けています。  いつかどこかで、あの頃の私や私の両親のように不安にさいなまれている人たちに、この声が届けば、と願っています。
筆者が大学の講義でアレルギーマーチについて学んだ時、筆者はどう感じたか。
「もしあの頃、これが『典型的な経過である』と知っていたら、不安は軽くすんだのではないだろうか」と。
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医療
医師は病気をどう診断するか 意外に知らない検査結果の解釈  医師が検査結果を示して「あなたは〇〇という病気です」と病名を告げ、患者さんが落胆する―。こんなシーンを医療ドラマでよく見ます。「医師が検査結果を見れば明確に病気を診断できるのが普通だ」と信じている方は多いでしょう。しかし、実は病気の診断はそうシンプルでないことの方が多いのです。  ◇病気の診断はどうなされるか  病気の診断は、さまざまな情報を組み合わせなければ行えません。経過について問診し、体を診察し、血液検査やさまざまな画像検査などを行い、その結果を総合的に見て診断します。  例えば、糖尿病は誰もがご存じの病気でしょう。この診断は、血糖値(測定方法に3種類あり)、HbA1cと呼ばれる検査値、糖尿病に典型的な症状などの条件を組み合わせ、かつ必要に応じて再検査を行う、という複雑なフローチャートによってなされます。  また、全身性エリテマトーデスと呼ばれる自己免疫疾患には、症状や検査結果など診断に必要な項目が11種類もあり、そのうち4項目以上を満たすもの、という基準があります。  ◇単純ではない人間の体  病気の診断には、多くのステップが必要となるのが一般的なのです。当然ながら、「何らかの病気の兆候がある可能性はあるが、その所見はまだあいまいで、病名をつけることができない」というような患者さんも現れます。  「明確な診断はつかないものの、時間をおいて再検査したり、生活改善を行ったりするなど、取り組むべきことはある」というケースもあります。「病気か病気でないか」は、白黒はっきりした概念ではありません。  「病気」と「病気でない状態」の間には、なだらかに変化するグラデーションがあるということです。1回の診察で病気をズバッと診断できる医師や、単一の検査で病名をはっきりさせてくれる医師が名医である、と思う方は多いかもしれませんが、人間の体はそう単純なものではないのです。  ◇カットオフ値という言葉  病気の診断がシンプルではない、という点で、もう一つ重要な特質を解説します。  健康診断などで血液検査を受け、その数値が異常であったために医療機関の受診を指示された、という経験のある方は多いと思います。しかし、「検査結果が異常か正常か」というのもまた、白黒はっきりした概念ではありません。  お酒の好きな方がよく気にされる「γ―GTP」を例に挙げてみましょう。  γ―GTPは、血液検査で測定が可能な数値で、アルコール性肝障害など肝臓の障害がある方で高くなる傾向があります。γ―GTPの基準範囲の上限は男性で50、女性は32程度に設定されていることが一般的です。  この数値を「カットオフ値」と呼び、この値を超えていると健康診断で「高い」と言われる可能性があります。では、このカットオフ値は「正常か異常か」を二分するラインなのでしょうか。γ―GTPが50の男性は正常、51なら異常としていいのでしょうか。  ◇「正常」と「異常」の間  もちろんそうではありません。  単一の検査結果を「正常か異常か」という観点で単純に解釈することはできません。前述の「健康か病気か」の議論と同じように、「正常」と「異常」の間にはグラデーションがあるからです。  よって、検査結果の数値が、そのグラデーションのどの値に位置しているかによって、医師が患者さんに伝えるべきことは異なりますし、患者さんがすべきことも異なってきます。「正常なら何もしなくていい、異常なら治療しなくてはならない」というシンプルな二元論は成立しないのです。  また、単一のタイミングでの検査値より、「検査値の推移」を見ることも大切です。  検査値が基準範囲を超えていても、「数回の検査結果の推移を見ると徐々に下がっている」というケースでは、「何も治療せずに様子を見る」という選択が可能かもしれません。逆に、基準範囲には入っているものの、徐々に増加傾向にあるなら、何らかの注意喚起が必要なこともあるでしょう。  こうした検査結果の変化は、臨床現場ではしばしば単一の検査結果よりも重要な判断基準と捉えられます。  病気の診断や検査結果の解釈については、医師―患者間でコミュニケーションエラーの原因となることがあります。ここに書いた特質を知っておくと、こうした誤解は防げるのではないかと思います。
医師が病気を診断する際に必要な情報はどのようなものか。
経過について問診し、体を診察し、血液検査やさまざまな画像検査などを行い、その結果を総合的に見て診断します。
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医療
医師は病気をどう診断するか 意外に知らない検査結果の解釈  医師が検査結果を示して「あなたは〇〇という病気です」と病名を告げ、患者さんが落胆する―。こんなシーンを医療ドラマでよく見ます。「医師が検査結果を見れば明確に病気を診断できるのが普通だ」と信じている方は多いでしょう。しかし、実は病気の診断はそうシンプルでないことの方が多いのです。  ◇病気の診断はどうなされるか  病気の診断は、さまざまな情報を組み合わせなければ行えません。経過について問診し、体を診察し、血液検査やさまざまな画像検査などを行い、その結果を総合的に見て診断します。  例えば、糖尿病は誰もがご存じの病気でしょう。この診断は、血糖値(測定方法に3種類あり)、HbA1cと呼ばれる検査値、糖尿病に典型的な症状などの条件を組み合わせ、かつ必要に応じて再検査を行う、という複雑なフローチャートによってなされます。  また、全身性エリテマトーデスと呼ばれる自己免疫疾患には、症状や検査結果など診断に必要な項目が11種類もあり、そのうち4項目以上を満たすもの、という基準があります。  ◇単純ではない人間の体  病気の診断には、多くのステップが必要となるのが一般的なのです。当然ながら、「何らかの病気の兆候がある可能性はあるが、その所見はまだあいまいで、病名をつけることができない」というような患者さんも現れます。  「明確な診断はつかないものの、時間をおいて再検査したり、生活改善を行ったりするなど、取り組むべきことはある」というケースもあります。「病気か病気でないか」は、白黒はっきりした概念ではありません。  「病気」と「病気でない状態」の間には、なだらかに変化するグラデーションがあるということです。1回の診察で病気をズバッと診断できる医師や、単一の検査で病名をはっきりさせてくれる医師が名医である、と思う方は多いかもしれませんが、人間の体はそう単純なものではないのです。  ◇カットオフ値という言葉  病気の診断がシンプルではない、という点で、もう一つ重要な特質を解説します。  健康診断などで血液検査を受け、その数値が異常であったために医療機関の受診を指示された、という経験のある方は多いと思います。しかし、「検査結果が異常か正常か」というのもまた、白黒はっきりした概念ではありません。  お酒の好きな方がよく気にされる「γ―GTP」を例に挙げてみましょう。  γ―GTPは、血液検査で測定が可能な数値で、アルコール性肝障害など肝臓の障害がある方で高くなる傾向があります。γ―GTPの基準範囲の上限は男性で50、女性は32程度に設定されていることが一般的です。  この数値を「カットオフ値」と呼び、この値を超えていると健康診断で「高い」と言われる可能性があります。では、このカットオフ値は「正常か異常か」を二分するラインなのでしょうか。γ―GTPが50の男性は正常、51なら異常としていいのでしょうか。  ◇「正常」と「異常」の間  もちろんそうではありません。  単一の検査結果を「正常か異常か」という観点で単純に解釈することはできません。前述の「健康か病気か」の議論と同じように、「正常」と「異常」の間にはグラデーションがあるからです。  よって、検査結果の数値が、そのグラデーションのどの値に位置しているかによって、医師が患者さんに伝えるべきことは異なりますし、患者さんがすべきことも異なってきます。「正常なら何もしなくていい、異常なら治療しなくてはならない」というシンプルな二元論は成立しないのです。  また、単一のタイミングでの検査値より、「検査値の推移」を見ることも大切です。  検査値が基準範囲を超えていても、「数回の検査結果の推移を見ると徐々に下がっている」というケースでは、「何も治療せずに様子を見る」という選択が可能かもしれません。逆に、基準範囲には入っているものの、徐々に増加傾向にあるなら、何らかの注意喚起が必要なこともあるでしょう。  こうした検査結果の変化は、臨床現場ではしばしば単一の検査結果よりも重要な判断基準と捉えられます。  病気の診断や検査結果の解釈については、医師―患者間でコミュニケーションエラーの原因となることがあります。ここに書いた特質を知っておくと、こうした誤解は防げるのではないかと思います。
全身性エリテマトーデスの診断に用いられる基準はどのようなものか。
症状や検査結果など診断に必要な項目が11種類もあり、そのうち4項目以上を満たすもの、という基準があります。
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医療
医師は病気をどう診断するか 意外に知らない検査結果の解釈  医師が検査結果を示して「あなたは〇〇という病気です」と病名を告げ、患者さんが落胆する―。こんなシーンを医療ドラマでよく見ます。「医師が検査結果を見れば明確に病気を診断できるのが普通だ」と信じている方は多いでしょう。しかし、実は病気の診断はそうシンプルでないことの方が多いのです。  ◇病気の診断はどうなされるか  病気の診断は、さまざまな情報を組み合わせなければ行えません。経過について問診し、体を診察し、血液検査やさまざまな画像検査などを行い、その結果を総合的に見て診断します。  例えば、糖尿病は誰もがご存じの病気でしょう。この診断は、血糖値(測定方法に3種類あり)、HbA1cと呼ばれる検査値、糖尿病に典型的な症状などの条件を組み合わせ、かつ必要に応じて再検査を行う、という複雑なフローチャートによってなされます。  また、全身性エリテマトーデスと呼ばれる自己免疫疾患には、症状や検査結果など診断に必要な項目が11種類もあり、そのうち4項目以上を満たすもの、という基準があります。  ◇単純ではない人間の体  病気の診断には、多くのステップが必要となるのが一般的なのです。当然ながら、「何らかの病気の兆候がある可能性はあるが、その所見はまだあいまいで、病名をつけることができない」というような患者さんも現れます。  「明確な診断はつかないものの、時間をおいて再検査したり、生活改善を行ったりするなど、取り組むべきことはある」というケースもあります。「病気か病気でないか」は、白黒はっきりした概念ではありません。  「病気」と「病気でない状態」の間には、なだらかに変化するグラデーションがあるということです。1回の診察で病気をズバッと診断できる医師や、単一の検査で病名をはっきりさせてくれる医師が名医である、と思う方は多いかもしれませんが、人間の体はそう単純なものではないのです。  ◇カットオフ値という言葉  病気の診断がシンプルではない、という点で、もう一つ重要な特質を解説します。  健康診断などで血液検査を受け、その数値が異常であったために医療機関の受診を指示された、という経験のある方は多いと思います。しかし、「検査結果が異常か正常か」というのもまた、白黒はっきりした概念ではありません。  お酒の好きな方がよく気にされる「γ―GTP」を例に挙げてみましょう。  γ―GTPは、血液検査で測定が可能な数値で、アルコール性肝障害など肝臓の障害がある方で高くなる傾向があります。γ―GTPの基準範囲の上限は男性で50、女性は32程度に設定されていることが一般的です。  この数値を「カットオフ値」と呼び、この値を超えていると健康診断で「高い」と言われる可能性があります。では、このカットオフ値は「正常か異常か」を二分するラインなのでしょうか。γ―GTPが50の男性は正常、51なら異常としていいのでしょうか。  ◇「正常」と「異常」の間  もちろんそうではありません。  単一の検査結果を「正常か異常か」という観点で単純に解釈することはできません。前述の「健康か病気か」の議論と同じように、「正常」と「異常」の間にはグラデーションがあるからです。  よって、検査結果の数値が、そのグラデーションのどの値に位置しているかによって、医師が患者さんに伝えるべきことは異なりますし、患者さんがすべきことも異なってきます。「正常なら何もしなくていい、異常なら治療しなくてはならない」というシンプルな二元論は成立しないのです。  また、単一のタイミングでの検査値より、「検査値の推移」を見ることも大切です。  検査値が基準範囲を超えていても、「数回の検査結果の推移を見ると徐々に下がっている」というケースでは、「何も治療せずに様子を見る」という選択が可能かもしれません。逆に、基準範囲には入っているものの、徐々に増加傾向にあるなら、何らかの注意喚起が必要なこともあるでしょう。  こうした検査結果の変化は、臨床現場ではしばしば単一の検査結果よりも重要な判断基準と捉えられます。  病気の診断や検査結果の解釈については、医師―患者間でコミュニケーションエラーの原因となることがあります。ここに書いた特質を知っておくと、こうした誤解は防げるのではないかと思います。
検査結果を白黒ではっきりと判断できない理由は何か。
「病気」と「病気でない状態」の間には、なだらかに変化するグラデーションがあるということです。
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医師は病気をどう診断するか 意外に知らない検査結果の解釈  医師が検査結果を示して「あなたは〇〇という病気です」と病名を告げ、患者さんが落胆する―。こんなシーンを医療ドラマでよく見ます。「医師が検査結果を見れば明確に病気を診断できるのが普通だ」と信じている方は多いでしょう。しかし、実は病気の診断はそうシンプルでないことの方が多いのです。  ◇病気の診断はどうなされるか  病気の診断は、さまざまな情報を組み合わせなければ行えません。経過について問診し、体を診察し、血液検査やさまざまな画像検査などを行い、その結果を総合的に見て診断します。  例えば、糖尿病は誰もがご存じの病気でしょう。この診断は、血糖値(測定方法に3種類あり)、HbA1cと呼ばれる検査値、糖尿病に典型的な症状などの条件を組み合わせ、かつ必要に応じて再検査を行う、という複雑なフローチャートによってなされます。  また、全身性エリテマトーデスと呼ばれる自己免疫疾患には、症状や検査結果など診断に必要な項目が11種類もあり、そのうち4項目以上を満たすもの、という基準があります。  ◇単純ではない人間の体  病気の診断には、多くのステップが必要となるのが一般的なのです。当然ながら、「何らかの病気の兆候がある可能性はあるが、その所見はまだあいまいで、病名をつけることができない」というような患者さんも現れます。  「明確な診断はつかないものの、時間をおいて再検査したり、生活改善を行ったりするなど、取り組むべきことはある」というケースもあります。「病気か病気でないか」は、白黒はっきりした概念ではありません。  「病気」と「病気でない状態」の間には、なだらかに変化するグラデーションがあるということです。1回の診察で病気をズバッと診断できる医師や、単一の検査で病名をはっきりさせてくれる医師が名医である、と思う方は多いかもしれませんが、人間の体はそう単純なものではないのです。  ◇カットオフ値という言葉  病気の診断がシンプルではない、という点で、もう一つ重要な特質を解説します。  健康診断などで血液検査を受け、その数値が異常であったために医療機関の受診を指示された、という経験のある方は多いと思います。しかし、「検査結果が異常か正常か」というのもまた、白黒はっきりした概念ではありません。  お酒の好きな方がよく気にされる「γ―GTP」を例に挙げてみましょう。  γ―GTPは、血液検査で測定が可能な数値で、アルコール性肝障害など肝臓の障害がある方で高くなる傾向があります。γ―GTPの基準範囲の上限は男性で50、女性は32程度に設定されていることが一般的です。  この数値を「カットオフ値」と呼び、この値を超えていると健康診断で「高い」と言われる可能性があります。では、このカットオフ値は「正常か異常か」を二分するラインなのでしょうか。γ―GTPが50の男性は正常、51なら異常としていいのでしょうか。  ◇「正常」と「異常」の間  もちろんそうではありません。  単一の検査結果を「正常か異常か」という観点で単純に解釈することはできません。前述の「健康か病気か」の議論と同じように、「正常」と「異常」の間にはグラデーションがあるからです。  よって、検査結果の数値が、そのグラデーションのどの値に位置しているかによって、医師が患者さんに伝えるべきことは異なりますし、患者さんがすべきことも異なってきます。「正常なら何もしなくていい、異常なら治療しなくてはならない」というシンプルな二元論は成立しないのです。  また、単一のタイミングでの検査値より、「検査値の推移」を見ることも大切です。  検査値が基準範囲を超えていても、「数回の検査結果の推移を見ると徐々に下がっている」というケースでは、「何も治療せずに様子を見る」という選択が可能かもしれません。逆に、基準範囲には入っているものの、徐々に増加傾向にあるなら、何らかの注意喚起が必要なこともあるでしょう。  こうした検査結果の変化は、臨床現場ではしばしば単一の検査結果よりも重要な判断基準と捉えられます。  病気の診断や検査結果の解釈については、医師―患者間でコミュニケーションエラーの原因となることがあります。ここに書いた特質を知っておくと、こうした誤解は防げるのではないかと思います。
単一の検査値だけでなく、医師が重要視する検査値の見方は何か。
単一のタイミングでの検査値より、「検査値の推移」を見ることも大切です。