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JCRRAG_010301
金融
ESG投資の主な3つのメリット ここからはESG投資のメリットについて解説していこう。ESG投資のメリットとしては、例えば以下のようなことが挙げられる。 1.長期の資産形成に向いている 前述のように、資本市場は長期で見ると環境問題や社会問題の影響から逃れられない。従って、このような問題が資本市場に与える負の影響を減らすことが、安定した収益を獲得するために重要となる。 ESG投資は、このような問題の解決に取り組んでいる企業に投資することで、長期的に見たときに、リターンを改善する効果が期待できる。巨額の資金を運用する年金基金をはじめ、多くの投資家がPRIに署名していることがその証左だろう。 2.安定した運用が期待できる ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素も考慮した投資のことだ。この3要素に気を遣っている企業は、気を遣っていない企業に比べて不祥事やバッシングが起こりにくい。起こったとしても傷口が小さく済みやすく、安定した運用が期待できる。 例えば、普段から環境保全に取り組んでいれば、環境破壊への批判を受ける確率は下がる。普段から児童労働問題の改善に取り組んでいれば、児童の違法労働の実情がスクープされても、消費者から敬遠される可能性は下がるだろう。 普段から通報制度の確立および通報者の保護に取り組んでいれば、万が一社内で不正が発生しても、いち早く状況を察知することができ、傷が浅いうちに対応ができる。 このようにESGに力を入れている企業は、企業価値が急落する事態に直面しにくいというわけだ。 3.社会貢献につながる ESGに力を入れている企業に資金を投じるということは、その企業を支援(支持)するということであり、ひいてはその企業が行っているESG活動を支援するということだ。つまり、ESG投資を行うことは社会貢献につながる。 「投資を通じて社会に貢献したい」と考えている投資家もいる。投資である以上は運用パフォーマンスが重要であることは言うまでもないが、「社会貢献につながる」「自分は社会に貢献できているという精神的なリターンを得られる」こともESG投資のメリットだと言えるだろう。 ESG投資の主な2つのデメリット ここからはESG投資のデメリットについて解説していこう。ESG投資のデメリットとしては、例えば以下のようなことが挙げられる。 1.短期的なリターンは小さくなりやすい ESGに力を入れるということは、限られた社内リソースを本業ではないことに投下するということだ。ESGに力を入れることで、同様のリソースを本業に投下した場合以上のリターンをすぐに回収できれば良いが、ESGの特性上、即金性(すぐに業績に反映されること)は低い場合が多いだろう。 短期的には、リターンが小さくなりやすい可能性がある。 2.投資先の選定が難しい 日本取引所グループは「ESG情報開示実践ハンドブック」を公表している。公表理由は前述のように、「ESG 情報の開示を検討する際に、様々な枠組みが存在するがゆえに、それらがどのように違うのか、どう使い分けたら良いのか悩む」という上場会社の声に応えるためだ。 このことからわかるように、ESGの概念は広く、枠組みは多数存在するので、「どの企業がESGに力を入れているのか」「その力の入れ具合は他社と比較してどうなのか」を判断するのはなかなか難しい。業績であれば定量的な比較が可能だが、ESGは定性的な判断になりがちだ。 また、ESG投資に振り向けられる金額は年々増えているため、ESG投資家に良い評価をしてもらおうと、本来は力を入れていないのに入れているかのように見せかける「グリーン・ウォッシュ」企業が存在する可能性も否めない。 ESG活動の裏付けが取りにくいことも、投資先の選定が難しい要因の一つだろう。 ESG投資の始め方 ここからはESG投資の始め方について解説していこう。ESG投資を行う方法には大きく分けて、「パッケージ化されている商品を購入する」と「自ら投資先を選ぶ」の2種類がある。 前者の手段としては、投資信託やETFの活用が挙げられる。今日では、ESG指数に連動したETFを、通常の株式のように手軽に売買することができる。また、ESGを重視した投資信託もいくつか組成されている。これらの金融商品であれば、すでに運用会社がESG関連の銘柄を選定してくれており、随時銘柄を入れ替えてくれるため、イチから自分で選定する必要はない。その代わり、自分が保有したい銘柄だけをピンポイントで保有することは難しい。 後者の手段としては、個別株の活用が挙げられる。個別株であれば、独自のスクリーニング方法を満たした銘柄だけをピンポイントで保有できる。ただし上記のように、選定するのが難しいというデメリットもある。 ESG投資の動向に注意しておこう 環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素も考慮したESG投資は、長期の資産形成に向いていたり、社会貢献につながったりとメリットが多い投資方法だが、投資先の選定が難しいなどのデメリットもある。 現在は、世界中の投資家がESG投資に資金を振り向けており、ESG投資自体を行う予定がない投資家であっても、ESG投資の動向は気にしておいた方がいいだろう。
ESG投資における「投資先の選定が難しい」とされる理由はなんですか。
ESG投資における「投資先の選定が難しい」とされる理由は、ESGの概念は広く、枠組みは多数存在するので、「どの企業がESGに力を入れているのか」「その力の入れ具合は他社と比較してどうなのか」を判断するのがなかなか難しいからです。
JCRRAG_010302
金融
ESG投資の主な3つのメリット ここからはESG投資のメリットについて解説していこう。ESG投資のメリットとしては、例えば以下のようなことが挙げられる。 1.長期の資産形成に向いている 前述のように、資本市場は長期で見ると環境問題や社会問題の影響から逃れられない。従って、このような問題が資本市場に与える負の影響を減らすことが、安定した収益を獲得するために重要となる。 ESG投資は、このような問題の解決に取り組んでいる企業に投資することで、長期的に見たときに、リターンを改善する効果が期待できる。巨額の資金を運用する年金基金をはじめ、多くの投資家がPRIに署名していることがその証左だろう。 2.安定した運用が期待できる ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素も考慮した投資のことだ。この3要素に気を遣っている企業は、気を遣っていない企業に比べて不祥事やバッシングが起こりにくい。起こったとしても傷口が小さく済みやすく、安定した運用が期待できる。 例えば、普段から環境保全に取り組んでいれば、環境破壊への批判を受ける確率は下がる。普段から児童労働問題の改善に取り組んでいれば、児童の違法労働の実情がスクープされても、消費者から敬遠される可能性は下がるだろう。 普段から通報制度の確立および通報者の保護に取り組んでいれば、万が一社内で不正が発生しても、いち早く状況を察知することができ、傷が浅いうちに対応ができる。 このようにESGに力を入れている企業は、企業価値が急落する事態に直面しにくいというわけだ。 3.社会貢献につながる ESGに力を入れている企業に資金を投じるということは、その企業を支援(支持)するということであり、ひいてはその企業が行っているESG活動を支援するということだ。つまり、ESG投資を行うことは社会貢献につながる。 「投資を通じて社会に貢献したい」と考えている投資家もいる。投資である以上は運用パフォーマンスが重要であることは言うまでもないが、「社会貢献につながる」「自分は社会に貢献できているという精神的なリターンを得られる」こともESG投資のメリットだと言えるだろう。 ESG投資の主な2つのデメリット ここからはESG投資のデメリットについて解説していこう。ESG投資のデメリットとしては、例えば以下のようなことが挙げられる。 1.短期的なリターンは小さくなりやすい ESGに力を入れるということは、限られた社内リソースを本業ではないことに投下するということだ。ESGに力を入れることで、同様のリソースを本業に投下した場合以上のリターンをすぐに回収できれば良いが、ESGの特性上、即金性(すぐに業績に反映されること)は低い場合が多いだろう。 短期的には、リターンが小さくなりやすい可能性がある。 2.投資先の選定が難しい 日本取引所グループは「ESG情報開示実践ハンドブック」を公表している。公表理由は前述のように、「ESG 情報の開示を検討する際に、様々な枠組みが存在するがゆえに、それらがどのように違うのか、どう使い分けたら良いのか悩む」という上場会社の声に応えるためだ。 このことからわかるように、ESGの概念は広く、枠組みは多数存在するので、「どの企業がESGに力を入れているのか」「その力の入れ具合は他社と比較してどうなのか」を判断するのはなかなか難しい。業績であれば定量的な比較が可能だが、ESGは定性的な判断になりがちだ。 また、ESG投資に振り向けられる金額は年々増えているため、ESG投資家に良い評価をしてもらおうと、本来は力を入れていないのに入れているかのように見せかける「グリーン・ウォッシュ」企業が存在する可能性も否めない。 ESG活動の裏付けが取りにくいことも、投資先の選定が難しい要因の一つだろう。 ESG投資の始め方 ここからはESG投資の始め方について解説していこう。ESG投資を行う方法には大きく分けて、「パッケージ化されている商品を購入する」と「自ら投資先を選ぶ」の2種類がある。 前者の手段としては、投資信託やETFの活用が挙げられる。今日では、ESG指数に連動したETFを、通常の株式のように手軽に売買することができる。また、ESGを重視した投資信託もいくつか組成されている。これらの金融商品であれば、すでに運用会社がESG関連の銘柄を選定してくれており、随時銘柄を入れ替えてくれるため、イチから自分で選定する必要はない。その代わり、自分が保有したい銘柄だけをピンポイントで保有することは難しい。 後者の手段としては、個別株の活用が挙げられる。個別株であれば、独自のスクリーニング方法を満たした銘柄だけをピンポイントで保有できる。ただし上記のように、選定するのが難しいというデメリットもある。 ESG投資の動向に注意しておこう 環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素も考慮したESG投資は、長期の資産形成に向いていたり、社会貢献につながったりとメリットが多い投資方法だが、投資先の選定が難しいなどのデメリットもある。 現在は、世界中の投資家がESG投資に資金を振り向けており、ESG投資自体を行う予定がない投資家であっても、ESG投資の動向は気にしておいた方がいいだろう。
ESG投資においてパッケージ化された商品を購入する方法の具体例はなんですか。
ESG投資においてパッケージ化された商品を購入する方法の具体例は、投資信託やETFの活用が挙げられます。
JCRRAG_010303
金融
リスクフリーレート(RFR)とは 「リスクフリーレート」(Risk Free Rate)は、リスクが皆無(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことを指す。 リスクフリーとは、厳密に言えば「リスクがゼロであること」を示すため、RFRは「無リスク資産の利子率」などと呼ばれることもある。しかし、実際にはリスクが全くない金融商品は存在せず、「リスクがほぼゼロ」「リスクが最小」といったニュアンスで説明されることが多い。 このリスクフリーレートは、資産運用を行う上では非常に重要な指標だ。それはなぜなのか、次の項で説明していこう。 なぜリスクフリーレートが重要なのか? リスクフリーレートは、リスクがゼロに近い金融商品から得られる利回りであることを説明した。そのため、もしリスクが大きめの金融商品なのに期待できる利回り(リターン)がリスクフリーレートと同等だった場合、そのリスクが高い金融商品に投資する人はほとんどいないだろう。 そうした比較対象として、リスクフリーレートはどの金融商品に投資するかを判断する際の物差しとなる。 また同時に、「リスクプレミアム」という考え方も知っておきたい。リスクプレミアムとは、期待できる利回りからリスクフリーレートを引いた差のことだ。例えば、期待できる利回りが5%で、リスクフリーレートが2%の場合、リスクプレミアムは3%になる。 5%(期待できる利回り) - 2%(リスクフリーレート) = 3%(リスクプレミアム) リスクとリターンは比例関係にあるため、一般的に、このリスクプレミアムが大きければ大きいほどハイリスク・ハイリターンの投資となり、小さければ小さいほどローリスク・ローリターンの投資となる。 リスクフリーレートの基準となる金融商品は? では、リスクフリーレートの基準となる利回りとして、どの金融商品の利回りが採用されることが多いのだろうか。一般的に日本においては日本国債の10年債の利回り、世界共通のリスクフリーレートとしては、米国10年債の利回りが採用されることが多い。 国債のリスクが小さいとされるのは、元本の保証や利子の支払いの責任を国が負っているからである。もちろん、その国自体が破綻する可能性もゼロではないが、他の債券への投資や株式への投資に比べるとリスクはかなり小さいというのが通説だ。 なお国債の場合、一般的に新興国の国債よりも先進国の国債の方がリスクは低い。世界的な格付け機関である「ムーディーズ」におけるアメリカ国債の格付けは、2021年7月時点では最高評価の「Aaa」となっている。日本国債は上から4番目の「A1」だ。 米国10年債利回りの直近1年間の推移は? ここまでの説明で、リスクフリーレートについての知識が深まったのではないだろうか。 なお、リスクフリーレートを把握するためには、米国10年債利回りの推移を気にかけておくことも重要だ。では、米国10年債利回りがどのように推移しているのか、最近の動きをお伝えしておこう。 米国10年債利回りは直近5年間で次のような動きがあった。2018年10~11月に一時3.2%台となるなどピークに達したが、2020年3月のいわゆる「コロナショック」によって0.3%台まで下がり、2021年7月は1.1~1.5%で推移した。 定期的に日本国債や米国債の利回りのチェックを 資産運用をする際には、誰もがどの金融商品に投資するか迷う。代表的な投資の手法としては、株式投資や不動産投資などがあるが、どれを選ぶ場合でもリスクフリーレートを知っておいて損はない。 そしてこの記事で説明したように、日本では日本国債の10年債が、世界的には米国国債の10年債がリスクフリーレートに多く採用されているため、定期的にそれぞれの利回りをチェックしておくとよいだろう。
リスクフリーレートとは、金融商品から得られるどのような利回りのことですか?
リスクフリーレートとは、リスクが皆無(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことを指します。
JCRRAG_010304
金融
リスクフリーレート(RFR)とは 「リスクフリーレート」(Risk Free Rate)は、リスクが皆無(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことを指す。 リスクフリーとは、厳密に言えば「リスクがゼロであること」を示すため、RFRは「無リスク資産の利子率」などと呼ばれることもある。しかし、実際にはリスクが全くない金融商品は存在せず、「リスクがほぼゼロ」「リスクが最小」といったニュアンスで説明されることが多い。 このリスクフリーレートは、資産運用を行う上では非常に重要な指標だ。それはなぜなのか、次の項で説明していこう。 なぜリスクフリーレートが重要なのか? リスクフリーレートは、リスクがゼロに近い金融商品から得られる利回りであることを説明した。そのため、もしリスクが大きめの金融商品なのに期待できる利回り(リターン)がリスクフリーレートと同等だった場合、そのリスクが高い金融商品に投資する人はほとんどいないだろう。 そうした比較対象として、リスクフリーレートはどの金融商品に投資するかを判断する際の物差しとなる。 また同時に、「リスクプレミアム」という考え方も知っておきたい。リスクプレミアムとは、期待できる利回りからリスクフリーレートを引いた差のことだ。例えば、期待できる利回りが5%で、リスクフリーレートが2%の場合、リスクプレミアムは3%になる。 5%(期待できる利回り) - 2%(リスクフリーレート) = 3%(リスクプレミアム) リスクとリターンは比例関係にあるため、一般的に、このリスクプレミアムが大きければ大きいほどハイリスク・ハイリターンの投資となり、小さければ小さいほどローリスク・ローリターンの投資となる。 リスクフリーレートの基準となる金融商品は? では、リスクフリーレートの基準となる利回りとして、どの金融商品の利回りが採用されることが多いのだろうか。一般的に日本においては日本国債の10年債の利回り、世界共通のリスクフリーレートとしては、米国10年債の利回りが採用されることが多い。 国債のリスクが小さいとされるのは、元本の保証や利子の支払いの責任を国が負っているからである。もちろん、その国自体が破綻する可能性もゼロではないが、他の債券への投資や株式への投資に比べるとリスクはかなり小さいというのが通説だ。 なお国債の場合、一般的に新興国の国債よりも先進国の国債の方がリスクは低い。世界的な格付け機関である「ムーディーズ」におけるアメリカ国債の格付けは、2021年7月時点では最高評価の「Aaa」となっている。日本国債は上から4番目の「A1」だ。 米国10年債利回りの直近1年間の推移は? ここまでの説明で、リスクフリーレートについての知識が深まったのではないだろうか。 なお、リスクフリーレートを把握するためには、米国10年債利回りの推移を気にかけておくことも重要だ。では、米国10年債利回りがどのように推移しているのか、最近の動きをお伝えしておこう。 米国10年債利回りは直近5年間で次のような動きがあった。2018年10~11月に一時3.2%台となるなどピークに達したが、2020年3月のいわゆる「コロナショック」によって0.3%台まで下がり、2021年7月は1.1~1.5%で推移した。 定期的に日本国債や米国債の利回りのチェックを 資産運用をする際には、誰もがどの金融商品に投資するか迷う。代表的な投資の手法としては、株式投資や不動産投資などがあるが、どれを選ぶ場合でもリスクフリーレートを知っておいて損はない。 そしてこの記事で説明したように、日本では日本国債の10年債が、世界的には米国国債の10年債がリスクフリーレートに多く採用されているため、定期的にそれぞれの利回りをチェックしておくとよいだろう。
リスクフリーレートは投資判断においてどのような役割を果たしますか。
リスクフリーレートは投資判断において、どの金融商品に投資するかを判断する際の物差しとなります。
JCRRAG_010305
金融
リスクフリーレート(RFR)とは 「リスクフリーレート」(Risk Free Rate)は、リスクが皆無(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことを指す。 リスクフリーとは、厳密に言えば「リスクがゼロであること」を示すため、RFRは「無リスク資産の利子率」などと呼ばれることもある。しかし、実際にはリスクが全くない金融商品は存在せず、「リスクがほぼゼロ」「リスクが最小」といったニュアンスで説明されることが多い。 このリスクフリーレートは、資産運用を行う上では非常に重要な指標だ。それはなぜなのか、次の項で説明していこう。 なぜリスクフリーレートが重要なのか? リスクフリーレートは、リスクがゼロに近い金融商品から得られる利回りであることを説明した。そのため、もしリスクが大きめの金融商品なのに期待できる利回り(リターン)がリスクフリーレートと同等だった場合、そのリスクが高い金融商品に投資する人はほとんどいないだろう。 そうした比較対象として、リスクフリーレートはどの金融商品に投資するかを判断する際の物差しとなる。 また同時に、「リスクプレミアム」という考え方も知っておきたい。リスクプレミアムとは、期待できる利回りからリスクフリーレートを引いた差のことだ。例えば、期待できる利回りが5%で、リスクフリーレートが2%の場合、リスクプレミアムは3%になる。 5%(期待できる利回り) - 2%(リスクフリーレート) = 3%(リスクプレミアム) リスクとリターンは比例関係にあるため、一般的に、このリスクプレミアムが大きければ大きいほどハイリスク・ハイリターンの投資となり、小さければ小さいほどローリスク・ローリターンの投資となる。 リスクフリーレートの基準となる金融商品は? では、リスクフリーレートの基準となる利回りとして、どの金融商品の利回りが採用されることが多いのだろうか。一般的に日本においては日本国債の10年債の利回り、世界共通のリスクフリーレートとしては、米国10年債の利回りが採用されることが多い。 国債のリスクが小さいとされるのは、元本の保証や利子の支払いの責任を国が負っているからである。もちろん、その国自体が破綻する可能性もゼロではないが、他の債券への投資や株式への投資に比べるとリスクはかなり小さいというのが通説だ。 なお国債の場合、一般的に新興国の国債よりも先進国の国債の方がリスクは低い。世界的な格付け機関である「ムーディーズ」におけるアメリカ国債の格付けは、2021年7月時点では最高評価の「Aaa」となっている。日本国債は上から4番目の「A1」だ。 米国10年債利回りの直近1年間の推移は? ここまでの説明で、リスクフリーレートについての知識が深まったのではないだろうか。 なお、リスクフリーレートを把握するためには、米国10年債利回りの推移を気にかけておくことも重要だ。では、米国10年債利回りがどのように推移しているのか、最近の動きをお伝えしておこう。 米国10年債利回りは直近5年間で次のような動きがあった。2018年10~11月に一時3.2%台となるなどピークに達したが、2020年3月のいわゆる「コロナショック」によって0.3%台まで下がり、2021年7月は1.1~1.5%で推移した。 定期的に日本国債や米国債の利回りのチェックを 資産運用をする際には、誰もがどの金融商品に投資するか迷う。代表的な投資の手法としては、株式投資や不動産投資などがあるが、どれを選ぶ場合でもリスクフリーレートを知っておいて損はない。 そしてこの記事で説明したように、日本では日本国債の10年債が、世界的には米国国債の10年債がリスクフリーレートに多く採用されているため、定期的にそれぞれの利回りをチェックしておくとよいだろう。
リスクプレミアムとはどのように定義されていますか。
リスクプレミアムとは、期待できる利回りからリスクフリーレートを引いた差と定義されています。
JCRRAG_010306
金融
リスクフリーレート(RFR)とは 「リスクフリーレート」(Risk Free Rate)は、リスクが皆無(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことを指す。 リスクフリーとは、厳密に言えば「リスクがゼロであること」を示すため、RFRは「無リスク資産の利子率」などと呼ばれることもある。しかし、実際にはリスクが全くない金融商品は存在せず、「リスクがほぼゼロ」「リスクが最小」といったニュアンスで説明されることが多い。 このリスクフリーレートは、資産運用を行う上では非常に重要な指標だ。それはなぜなのか、次の項で説明していこう。 なぜリスクフリーレートが重要なのか? リスクフリーレートは、リスクがゼロに近い金融商品から得られる利回りであることを説明した。そのため、もしリスクが大きめの金融商品なのに期待できる利回り(リターン)がリスクフリーレートと同等だった場合、そのリスクが高い金融商品に投資する人はほとんどいないだろう。 そうした比較対象として、リスクフリーレートはどの金融商品に投資するかを判断する際の物差しとなる。 また同時に、「リスクプレミアム」という考え方も知っておきたい。リスクプレミアムとは、期待できる利回りからリスクフリーレートを引いた差のことだ。例えば、期待できる利回りが5%で、リスクフリーレートが2%の場合、リスクプレミアムは3%になる。 5%(期待できる利回り) - 2%(リスクフリーレート) = 3%(リスクプレミアム) リスクとリターンは比例関係にあるため、一般的に、このリスクプレミアムが大きければ大きいほどハイリスク・ハイリターンの投資となり、小さければ小さいほどローリスク・ローリターンの投資となる。 リスクフリーレートの基準となる金融商品は? では、リスクフリーレートの基準となる利回りとして、どの金融商品の利回りが採用されることが多いのだろうか。一般的に日本においては日本国債の10年債の利回り、世界共通のリスクフリーレートとしては、米国10年債の利回りが採用されることが多い。 国債のリスクが小さいとされるのは、元本の保証や利子の支払いの責任を国が負っているからである。もちろん、その国自体が破綻する可能性もゼロではないが、他の債券への投資や株式への投資に比べるとリスクはかなり小さいというのが通説だ。 なお国債の場合、一般的に新興国の国債よりも先進国の国債の方がリスクは低い。世界的な格付け機関である「ムーディーズ」におけるアメリカ国債の格付けは、2021年7月時点では最高評価の「Aaa」となっている。日本国債は上から4番目の「A1」だ。 米国10年債利回りの直近1年間の推移は? ここまでの説明で、リスクフリーレートについての知識が深まったのではないだろうか。 なお、リスクフリーレートを把握するためには、米国10年債利回りの推移を気にかけておくことも重要だ。では、米国10年債利回りがどのように推移しているのか、最近の動きをお伝えしておこう。 米国10年債利回りは直近5年間で次のような動きがあった。2018年10~11月に一時3.2%台となるなどピークに達したが、2020年3月のいわゆる「コロナショック」によって0.3%台まで下がり、2021年7月は1.1~1.5%で推移した。 定期的に日本国債や米国債の利回りのチェックを 資産運用をする際には、誰もがどの金融商品に投資するか迷う。代表的な投資の手法としては、株式投資や不動産投資などがあるが、どれを選ぶ場合でもリスクフリーレートを知っておいて損はない。 そしてこの記事で説明したように、日本では日本国債の10年債が、世界的には米国国債の10年債がリスクフリーレートに多く採用されているため、定期的にそれぞれの利回りをチェックしておくとよいだろう。
国債のリスクが小さいとされる理由はなんですか。
国債のリスクが小さいとされる理由は、元本の保証や利子の支払いの責任を国が負っているからです。
JCRRAG_010307
金融
投資信託の分配金とは? まずそもそも「分配金」とはどのようなものなのか、基本から確認していこう。 投資信託では、多数の投資家から集めたお金を、投資のプロがさまざまな銘柄に分散させて運用を行っている。投資信託が決算の時期を迎えると、投資家に対し、その出資割合に応じて運用の収益を分配する。これが分配金だ。 銀行預金の利息や株式の配当金との違い 分配金が銀行預金の利息や株式の配当金とどのように異なるのか、よくわからないという方もいるだろう。その2つとの違いについても理解しておこう。 ・銀行の利息との違い 分配金は、投資信託を保有していることで受け取れるお金だ。銀行預金の利息や株式の配当金などと似ているように思えるが、実はそれらとは異なる特徴を持っている。 銀行の利息は、基本的に預けるときに金利が決まっていて、それに基づいて確実に決められた期間で決められた金額の利息が受け取れる。一方で、分配金の場合は一定の金額が約束されているわけではなく、投資信託の運用成果によってその都度受け取れる金額が変わる。 選んだ投資信託の運用方針によっては、そもそも分配金がないということもあり得る。 ・株式の配当金との違い 株の配当金は、「投資家への利益の還元」として株式を保有していると受け取れるお金だ。企業の業績などに応じて受け取れる金額が変わり、そもそもない場合もあるという点は投資信託の分配金と共通している。 では「分配金」と「配当金」が同じかというと、そうではない。株式ではたくさん配当金を出したからといって、その企業の株の値段(株価)が下がることはあまりない(むしろ上がる可能性がある)。 しかし投資信託の場合、分配金を出すことはその投資信託の資産を削っているのと同じことであるため、出せば出すほど投資信託の値段(基準価額)が下がってしまう。 分配金の仕組み 「分配金を出すほど基準価格が下がる」とは、一体どういうことなのか。分配金の仕組みについて、もう少し深掘りしていこう。 ・基準価額と純資産総額 「基準価額」は投資信託(ファンド)の値段を指し、多くの場合1口または1万口あたりの値段のことだ。基準価額が安いときに投資信託を購入し、高いときに売却すれば、その価格差の分だけ「値上がり益」が得られる。 基準価額に、その投資信託を購入した人が保有する口数(くちすう:投資信託を取引するときの単位)をかけたものを「純資産総額」という。分配金は、この純資産総額の一部から支払われている。 純資産総額には、多くの投資家が出資したお金やその運用で得た利益などが含まれる。分配金を出すということは、投資の原資や今まで出た利益を「投資信託のもの」から「投資家のもの」にするということだ。 いわば身を削って出している状態なので、分配金を出せば出すほど投資信託の純資産総額が下がり、それと連動して基準価額も下がる仕組みになっている。 ・普通分配金と特別分配金 投資信託の分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類がある。この2つの違いもおさえておきたい。 普通分配金は「投資信託の運用で得られた利益の還元」にあたる。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したとき(投資を始めたとき)の基準価額よりも高い場合の分配金を「普通分配金」と呼んでいる。 少々ややこしいのが「特別分配金」だ。名前からすると「特別に追加で分配してもらえるお金」のようにポジティブなイメージを抱くかもしれないが、実はこれは別名「元本払戻金」とも呼ばれている。 つまり投資の利益ではなく、自分が出資したお金(投資信託の元本)が戻ってきているだけということだ。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したときの基準価額を下回る部分を「特別分配金」と呼んでいる。 ・分配金が多い投資信託=運用成績がいい投資信託とは限らない 分配金がたくさんもらえたらうれしいと思うかもしれない。しかし「5万円もらえた!」と喜んでいても、場合によっては分配金を出したことで、投資信託の値段が10万円下がっている可能性もあるのだ。 手元に入ってくるお金だけに目を取られがちだが、もともと投資をしている元本の変動も気にかけておく必要がある。 分配金を出すと純資産総額や基準価額が下がってしまうため、投資信託の中には「運用成績は好調でも、あえて分配金は出さない」という信念で運用されているものもある。 分配金の有無や金額、頻度は投資信託ごとに異なる。投資する前に目論見書(もくろみしょ:投資信託の取扱説明書)などを見て、その投資信託がどのような方針なのかチェックしておこう。 分配金は受取型か再投資型かを自分で選ぶ 分配金が「ある」投資信託と「ない」投資信託、自分でどちらかを選ぶことができる。また、分配金がある投資信託では、分配金を手元に受け取るのか(分配金受取型)、受け取らずに投資の元本とあわせて再度投資に回すのか(分配金再投資型)も基本的に選べる。 分配金をどうするか、いずれの方法を選ぶにせよメリット・デメリットがある。自分の投資目的や投資方針と照らして、合う方を選びたいところだ。
投資信託の分配金はどのようにして投資家に支払われますか。
投資信託の分配金は、投資信託が決算の時期を迎えると、投資家に対し、その出資割合に応じて運用の収益が分配されます。
JCRRAG_010308
金融
投資信託の分配金とは? まずそもそも「分配金」とはどのようなものなのか、基本から確認していこう。 投資信託では、多数の投資家から集めたお金を、投資のプロがさまざまな銘柄に分散させて運用を行っている。投資信託が決算の時期を迎えると、投資家に対し、その出資割合に応じて運用の収益を分配する。これが分配金だ。 銀行預金の利息や株式の配当金との違い 分配金が銀行預金の利息や株式の配当金とどのように異なるのか、よくわからないという方もいるだろう。その2つとの違いについても理解しておこう。 ・銀行の利息との違い 分配金は、投資信託を保有していることで受け取れるお金だ。銀行預金の利息や株式の配当金などと似ているように思えるが、実はそれらとは異なる特徴を持っている。 銀行の利息は、基本的に預けるときに金利が決まっていて、それに基づいて確実に決められた期間で決められた金額の利息が受け取れる。一方で、分配金の場合は一定の金額が約束されているわけではなく、投資信託の運用成果によってその都度受け取れる金額が変わる。 選んだ投資信託の運用方針によっては、そもそも分配金がないということもあり得る。 ・株式の配当金との違い 株の配当金は、「投資家への利益の還元」として株式を保有していると受け取れるお金だ。企業の業績などに応じて受け取れる金額が変わり、そもそもない場合もあるという点は投資信託の分配金と共通している。 では「分配金」と「配当金」が同じかというと、そうではない。株式ではたくさん配当金を出したからといって、その企業の株の値段(株価)が下がることはあまりない(むしろ上がる可能性がある)。 しかし投資信託の場合、分配金を出すことはその投資信託の資産を削っているのと同じことであるため、出せば出すほど投資信託の値段(基準価額)が下がってしまう。 分配金の仕組み 「分配金を出すほど基準価格が下がる」とは、一体どういうことなのか。分配金の仕組みについて、もう少し深掘りしていこう。 ・基準価額と純資産総額 「基準価額」は投資信託(ファンド)の値段を指し、多くの場合1口または1万口あたりの値段のことだ。基準価額が安いときに投資信託を購入し、高いときに売却すれば、その価格差の分だけ「値上がり益」が得られる。 基準価額に、その投資信託を購入した人が保有する口数(くちすう:投資信託を取引するときの単位)をかけたものを「純資産総額」という。分配金は、この純資産総額の一部から支払われている。 純資産総額には、多くの投資家が出資したお金やその運用で得た利益などが含まれる。分配金を出すということは、投資の原資や今まで出た利益を「投資信託のもの」から「投資家のもの」にするということだ。 いわば身を削って出している状態なので、分配金を出せば出すほど投資信託の純資産総額が下がり、それと連動して基準価額も下がる仕組みになっている。 ・普通分配金と特別分配金 投資信託の分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類がある。この2つの違いもおさえておきたい。 普通分配金は「投資信託の運用で得られた利益の還元」にあたる。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したとき(投資を始めたとき)の基準価額よりも高い場合の分配金を「普通分配金」と呼んでいる。 少々ややこしいのが「特別分配金」だ。名前からすると「特別に追加で分配してもらえるお金」のようにポジティブなイメージを抱くかもしれないが、実はこれは別名「元本払戻金」とも呼ばれている。 つまり投資の利益ではなく、自分が出資したお金(投資信託の元本)が戻ってきているだけということだ。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したときの基準価額を下回る部分を「特別分配金」と呼んでいる。 ・分配金が多い投資信託=運用成績がいい投資信託とは限らない 分配金がたくさんもらえたらうれしいと思うかもしれない。しかし「5万円もらえた!」と喜んでいても、場合によっては分配金を出したことで、投資信託の値段が10万円下がっている可能性もあるのだ。 手元に入ってくるお金だけに目を取られがちだが、もともと投資をしている元本の変動も気にかけておく必要がある。 分配金を出すと純資産総額や基準価額が下がってしまうため、投資信託の中には「運用成績は好調でも、あえて分配金は出さない」という信念で運用されているものもある。 分配金の有無や金額、頻度は投資信託ごとに異なる。投資する前に目論見書(もくろみしょ:投資信託の取扱説明書)などを見て、その投資信託がどのような方針なのかチェックしておこう。 分配金は受取型か再投資型かを自分で選ぶ 分配金が「ある」投資信託と「ない」投資信託、自分でどちらかを選ぶことができる。また、分配金がある投資信託では、分配金を手元に受け取るのか(分配金受取型)、受け取らずに投資の元本とあわせて再度投資に回すのか(分配金再投資型)も基本的に選べる。 分配金をどうするか、いずれの方法を選ぶにせよメリット・デメリットがある。自分の投資目的や投資方針と照らして、合う方を選びたいところだ。
銀行預金の利息と投資信託の分配金の違いはなんですか。
銀行預金の利息と投資信託の分配金の違いは、銀行の利息は、基本的に預けるときに金利が決まっていて、それに基づいて確実に決められた期間で決められた金額の利息が受け取れます。一方で、分配金の場合は一定の金額が約束されているわけではなく、投資信託の運用成果によってその都度受け取れる金額が変わります。
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金融
投資信託の分配金とは? まずそもそも「分配金」とはどのようなものなのか、基本から確認していこう。 投資信託では、多数の投資家から集めたお金を、投資のプロがさまざまな銘柄に分散させて運用を行っている。投資信託が決算の時期を迎えると、投資家に対し、その出資割合に応じて運用の収益を分配する。これが分配金だ。 銀行預金の利息や株式の配当金との違い 分配金が銀行預金の利息や株式の配当金とどのように異なるのか、よくわからないという方もいるだろう。その2つとの違いについても理解しておこう。 ・銀行の利息との違い 分配金は、投資信託を保有していることで受け取れるお金だ。銀行預金の利息や株式の配当金などと似ているように思えるが、実はそれらとは異なる特徴を持っている。 銀行の利息は、基本的に預けるときに金利が決まっていて、それに基づいて確実に決められた期間で決められた金額の利息が受け取れる。一方で、分配金の場合は一定の金額が約束されているわけではなく、投資信託の運用成果によってその都度受け取れる金額が変わる。 選んだ投資信託の運用方針によっては、そもそも分配金がないということもあり得る。 ・株式の配当金との違い 株の配当金は、「投資家への利益の還元」として株式を保有していると受け取れるお金だ。企業の業績などに応じて受け取れる金額が変わり、そもそもない場合もあるという点は投資信託の分配金と共通している。 では「分配金」と「配当金」が同じかというと、そうではない。株式ではたくさん配当金を出したからといって、その企業の株の値段(株価)が下がることはあまりない(むしろ上がる可能性がある)。 しかし投資信託の場合、分配金を出すことはその投資信託の資産を削っているのと同じことであるため、出せば出すほど投資信託の値段(基準価額)が下がってしまう。 分配金の仕組み 「分配金を出すほど基準価格が下がる」とは、一体どういうことなのか。分配金の仕組みについて、もう少し深掘りしていこう。 ・基準価額と純資産総額 「基準価額」は投資信託(ファンド)の値段を指し、多くの場合1口または1万口あたりの値段のことだ。基準価額が安いときに投資信託を購入し、高いときに売却すれば、その価格差の分だけ「値上がり益」が得られる。 基準価額に、その投資信託を購入した人が保有する口数(くちすう:投資信託を取引するときの単位)をかけたものを「純資産総額」という。分配金は、この純資産総額の一部から支払われている。 純資産総額には、多くの投資家が出資したお金やその運用で得た利益などが含まれる。分配金を出すということは、投資の原資や今まで出た利益を「投資信託のもの」から「投資家のもの」にするということだ。 いわば身を削って出している状態なので、分配金を出せば出すほど投資信託の純資産総額が下がり、それと連動して基準価額も下がる仕組みになっている。 ・普通分配金と特別分配金 投資信託の分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類がある。この2つの違いもおさえておきたい。 普通分配金は「投資信託の運用で得られた利益の還元」にあたる。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したとき(投資を始めたとき)の基準価額よりも高い場合の分配金を「普通分配金」と呼んでいる。 少々ややこしいのが「特別分配金」だ。名前からすると「特別に追加で分配してもらえるお金」のようにポジティブなイメージを抱くかもしれないが、実はこれは別名「元本払戻金」とも呼ばれている。 つまり投資の利益ではなく、自分が出資したお金(投資信託の元本)が戻ってきているだけということだ。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したときの基準価額を下回る部分を「特別分配金」と呼んでいる。 ・分配金が多い投資信託=運用成績がいい投資信託とは限らない 分配金がたくさんもらえたらうれしいと思うかもしれない。しかし「5万円もらえた!」と喜んでいても、場合によっては分配金を出したことで、投資信託の値段が10万円下がっている可能性もあるのだ。 手元に入ってくるお金だけに目を取られがちだが、もともと投資をしている元本の変動も気にかけておく必要がある。 分配金を出すと純資産総額や基準価額が下がってしまうため、投資信託の中には「運用成績は好調でも、あえて分配金は出さない」という信念で運用されているものもある。 分配金の有無や金額、頻度は投資信託ごとに異なる。投資する前に目論見書(もくろみしょ:投資信託の取扱説明書)などを見て、その投資信託がどのような方針なのかチェックしておこう。 分配金は受取型か再投資型かを自分で選ぶ 分配金が「ある」投資信託と「ない」投資信託、自分でどちらかを選ぶことができる。また、分配金がある投資信託では、分配金を手元に受け取るのか(分配金受取型)、受け取らずに投資の元本とあわせて再度投資に回すのか(分配金再投資型)も基本的に選べる。 分配金をどうするか、いずれの方法を選ぶにせよメリット・デメリットがある。自分の投資目的や投資方針と照らして、合う方を選びたいところだ。
投資信託において分配金を出せば出すほど起こる仕組みとはなんですか。
投資信託において分配金を出せば出すほど投資信託の純資産総額が下がり、それと連動して基準価額も下がる仕組みになっていることです。
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金融
投資信託の分配金とは? まずそもそも「分配金」とはどのようなものなのか、基本から確認していこう。 投資信託では、多数の投資家から集めたお金を、投資のプロがさまざまな銘柄に分散させて運用を行っている。投資信託が決算の時期を迎えると、投資家に対し、その出資割合に応じて運用の収益を分配する。これが分配金だ。 銀行預金の利息や株式の配当金との違い 分配金が銀行預金の利息や株式の配当金とどのように異なるのか、よくわからないという方もいるだろう。その2つとの違いについても理解しておこう。 ・銀行の利息との違い 分配金は、投資信託を保有していることで受け取れるお金だ。銀行預金の利息や株式の配当金などと似ているように思えるが、実はそれらとは異なる特徴を持っている。 銀行の利息は、基本的に預けるときに金利が決まっていて、それに基づいて確実に決められた期間で決められた金額の利息が受け取れる。一方で、分配金の場合は一定の金額が約束されているわけではなく、投資信託の運用成果によってその都度受け取れる金額が変わる。 選んだ投資信託の運用方針によっては、そもそも分配金がないということもあり得る。 ・株式の配当金との違い 株の配当金は、「投資家への利益の還元」として株式を保有していると受け取れるお金だ。企業の業績などに応じて受け取れる金額が変わり、そもそもない場合もあるという点は投資信託の分配金と共通している。 では「分配金」と「配当金」が同じかというと、そうではない。株式ではたくさん配当金を出したからといって、その企業の株の値段(株価)が下がることはあまりない(むしろ上がる可能性がある)。 しかし投資信託の場合、分配金を出すことはその投資信託の資産を削っているのと同じことであるため、出せば出すほど投資信託の値段(基準価額)が下がってしまう。 分配金の仕組み 「分配金を出すほど基準価格が下がる」とは、一体どういうことなのか。分配金の仕組みについて、もう少し深掘りしていこう。 ・基準価額と純資産総額 「基準価額」は投資信託(ファンド)の値段を指し、多くの場合1口または1万口あたりの値段のことだ。基準価額が安いときに投資信託を購入し、高いときに売却すれば、その価格差の分だけ「値上がり益」が得られる。 基準価額に、その投資信託を購入した人が保有する口数(くちすう:投資信託を取引するときの単位)をかけたものを「純資産総額」という。分配金は、この純資産総額の一部から支払われている。 純資産総額には、多くの投資家が出資したお金やその運用で得た利益などが含まれる。分配金を出すということは、投資の原資や今まで出た利益を「投資信託のもの」から「投資家のもの」にするということだ。 いわば身を削って出している状態なので、分配金を出せば出すほど投資信託の純資産総額が下がり、それと連動して基準価額も下がる仕組みになっている。 ・普通分配金と特別分配金 投資信託の分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類がある。この2つの違いもおさえておきたい。 普通分配金は「投資信託の運用で得られた利益の還元」にあたる。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したとき(投資を始めたとき)の基準価額よりも高い場合の分配金を「普通分配金」と呼んでいる。 少々ややこしいのが「特別分配金」だ。名前からすると「特別に追加で分配してもらえるお金」のようにポジティブなイメージを抱くかもしれないが、実はこれは別名「元本払戻金」とも呼ばれている。 つまり投資の利益ではなく、自分が出資したお金(投資信託の元本)が戻ってきているだけということだ。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したときの基準価額を下回る部分を「特別分配金」と呼んでいる。 ・分配金が多い投資信託=運用成績がいい投資信託とは限らない 分配金がたくさんもらえたらうれしいと思うかもしれない。しかし「5万円もらえた!」と喜んでいても、場合によっては分配金を出したことで、投資信託の値段が10万円下がっている可能性もあるのだ。 手元に入ってくるお金だけに目を取られがちだが、もともと投資をしている元本の変動も気にかけておく必要がある。 分配金を出すと純資産総額や基準価額が下がってしまうため、投資信託の中には「運用成績は好調でも、あえて分配金は出さない」という信念で運用されているものもある。 分配金の有無や金額、頻度は投資信託ごとに異なる。投資する前に目論見書(もくろみしょ:投資信託の取扱説明書)などを見て、その投資信託がどのような方針なのかチェックしておこう。 分配金は受取型か再投資型かを自分で選ぶ 分配金が「ある」投資信託と「ない」投資信託、自分でどちらかを選ぶことができる。また、分配金がある投資信託では、分配金を手元に受け取るのか(分配金受取型)、受け取らずに投資の元本とあわせて再度投資に回すのか(分配金再投資型)も基本的に選べる。 分配金をどうするか、いずれの方法を選ぶにせよメリット・デメリットがある。自分の投資目的や投資方針と照らして、合う方を選びたいところだ。
特別分配金とはどのような性質を持ちますか。
特別分配金とは名前からすると「特別に追加で分配してもらえるお金」のようにポジティブなイメージを抱くかもしれませんが、実はこれは別名「元本払戻金」とも呼ばれています。 つまり投資の利益ではなく、自分が出資したお金(投資信託の元本)が戻ってきているだけということです。分配金の支払いが終わった後の基準価額が、購入したときの基準価額を下回る部分を「特別分配金」と呼んでいます。
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金融
分配金受取型とは? 分配金受取型は、分配金が出たら手元に受け取るのが特徴だ。投資信託の購入時に「分配金受取型」を選ぶと、投資信託が決算ごとに支払う分配金を自分が指定した口座に入金してもらうことができる。 決算の時期は投資信託ごとに異なり、毎月分配金が出るものもあれば、半年に1回や1年に1回といったものもある。 分配金受取型のメリット 分配金受取型のメリットは、定期的に口座に入金されるので、年金や毎月の給料の足しにしやすいことだ。 受け取った後は現金として引き出して利用するなり、貯めておくなり、別の投資に回すなり、自分のお金なので当然自由に使える。少しずつでも何回も継続してお金を受け取り続けることができれば、運用している実感や得しているような感覚を覚えやすいだろう。 分配金受取型のデメリット お金が受け取れてうれしい反面、前述のとおり投資信託の分配金が出るということは、つまり投資信託の値段が下がっているということである。そのため、実は諸手を挙げて喜べる状況ではない点には注意したい。 特に、受け取っている分配金が特別分配金だった場合、お金が増えているわけではなく利益の還元でもなく、自分が手数料を払って投資したお金がただ返ってきただけである。 また、分配金を受け取ると運用に回せる資産が減ることから、運用効率も下がる。分配金の分も投資に回していれば得られたはずの利益やチャンスを、自ら逃しているという捉え方もできる。 分配金受取型が向いている人 分配金受取型が向いているのは、例えば以下のような人だ。 定期的に少しずつお金を受け取っていきたい 分配金をおこづかい代わりにしたい 投資をしているという実感が欲しい 値上がり益よりインカムゲイン(その資産を保有していることで得られる利益)を重視する 分配金再投資型とは? 分配金再投資型は、分配金が出ても自分の手元に支給されることはない。受け取らなかった分の分配金は、その投資信託の中で「投資用の資金」となって再度投資されていくのだ。 分配金再投資型のメリット 分配金再投資型の大きなメリットとして、資産価格が上昇する局面において 「複利の効果」が得られることが挙げられる。「複利(ふくり)」とは、元本だけでなく、増えた利子の分にも利子がつくことを指す。元本にしか利子がつかない「単利(たんり)」に比べ、お金が増えやすくなるのが特徴だ。 例えば同じ年3%の運用成果でも、単利の場合は300万円を元手に30年間投資すると最終的に570万円になるが、複利(1年複利)の場合はおよそ730万円と160万円近い差が出る。(※手数料等は考慮していない) 投資信託では、運用がうまくいって投資の元本が増えた分をさらに再投資することで、元本だけのまま運用するよりお金が増えやすくなる。 投資期間が長くなるほど複利の効果は大きくなり、単利と複利の差が開いていく。特に長期的に投資をしたいと考えている方にとっては、複利は大きな味方になってくれるだろう。 分配金再投資型のデメリット 分配金再投資型の場合、定期的な利益分配がないため、「利益が出た」と確定するのはその投資信託を手放して当初より高値で売れたときになる。成果を感じられるのが投資してから何年も(場合によっては何十年も)経った後になることもあるし、複利が活かせるといっても確実にお金が増えるとは限らないうえ、資産価値が下落する局面では資産が小さくなるスピードも速まり、結果的に損をしてしまうリスクがある。こうした点がデメリットだと言えるだろう。 分配金受取型のように、少しずつ利益を享受して投資のメリットを感じていけるわけではないため、人によっては先が長すぎてあまり取り組む意欲が湧かないかもしれない。 分配金再投資型が向いている人 分配金再投資型を選ぶのが向いているのは、以下のような人だ。 ・数年先、数十年先を見据えて長期的な投資をしたい ・インカムゲインより値上がり益を狙いたい ・少しずつ分配金を受け取るより将来大きな利益を得るための原資を確保したい ・運用期間が長く取れる 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。
分配金受取型を選ぶと、分配金はどのように受け取れますか。
分配金受取型を選ぶと、投資信託が決算ごとに支払う分配金を自分が指定した口座に入金してもらうことができます。
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金融
分配金受取型とは? 分配金受取型は、分配金が出たら手元に受け取るのが特徴だ。投資信託の購入時に「分配金受取型」を選ぶと、投資信託が決算ごとに支払う分配金を自分が指定した口座に入金してもらうことができる。 決算の時期は投資信託ごとに異なり、毎月分配金が出るものもあれば、半年に1回や1年に1回といったものもある。 分配金受取型のメリット 分配金受取型のメリットは、定期的に口座に入金されるので、年金や毎月の給料の足しにしやすいことだ。 受け取った後は現金として引き出して利用するなり、貯めておくなり、別の投資に回すなり、自分のお金なので当然自由に使える。少しずつでも何回も継続してお金を受け取り続けることができれば、運用している実感や得しているような感覚を覚えやすいだろう。 分配金受取型のデメリット お金が受け取れてうれしい反面、前述のとおり投資信託の分配金が出るということは、つまり投資信託の値段が下がっているということである。そのため、実は諸手を挙げて喜べる状況ではない点には注意したい。 特に、受け取っている分配金が特別分配金だった場合、お金が増えているわけではなく利益の還元でもなく、自分が手数料を払って投資したお金がただ返ってきただけである。 また、分配金を受け取ると運用に回せる資産が減ることから、運用効率も下がる。分配金の分も投資に回していれば得られたはずの利益やチャンスを、自ら逃しているという捉え方もできる。 分配金受取型が向いている人 分配金受取型が向いているのは、例えば以下のような人だ。 定期的に少しずつお金を受け取っていきたい 分配金をおこづかい代わりにしたい 投資をしているという実感が欲しい 値上がり益よりインカムゲイン(その資産を保有していることで得られる利益)を重視する 分配金再投資型とは? 分配金再投資型は、分配金が出ても自分の手元に支給されることはない。受け取らなかった分の分配金は、その投資信託の中で「投資用の資金」となって再度投資されていくのだ。 分配金再投資型のメリット 分配金再投資型の大きなメリットとして、資産価格が上昇する局面において 「複利の効果」が得られることが挙げられる。「複利(ふくり)」とは、元本だけでなく、増えた利子の分にも利子がつくことを指す。元本にしか利子がつかない「単利(たんり)」に比べ、お金が増えやすくなるのが特徴だ。 例えば同じ年3%の運用成果でも、単利の場合は300万円を元手に30年間投資すると最終的に570万円になるが、複利(1年複利)の場合はおよそ730万円と160万円近い差が出る。(※手数料等は考慮していない) 投資信託では、運用がうまくいって投資の元本が増えた分をさらに再投資することで、元本だけのまま運用するよりお金が増えやすくなる。 投資期間が長くなるほど複利の効果は大きくなり、単利と複利の差が開いていく。特に長期的に投資をしたいと考えている方にとっては、複利は大きな味方になってくれるだろう。 分配金再投資型のデメリット 分配金再投資型の場合、定期的な利益分配がないため、「利益が出た」と確定するのはその投資信託を手放して当初より高値で売れたときになる。成果を感じられるのが投資してから何年も(場合によっては何十年も)経った後になることもあるし、複利が活かせるといっても確実にお金が増えるとは限らないうえ、資産価値が下落する局面では資産が小さくなるスピードも速まり、結果的に損をしてしまうリスクがある。こうした点がデメリットだと言えるだろう。 分配金受取型のように、少しずつ利益を享受して投資のメリットを感じていけるわけではないため、人によっては先が長すぎてあまり取り組む意欲が湧かないかもしれない。 分配金再投資型が向いている人 分配金再投資型を選ぶのが向いているのは、以下のような人だ。 ・数年先、数十年先を見据えて長期的な投資をしたい ・インカムゲインより値上がり益を狙いたい ・少しずつ分配金を受け取るより将来大きな利益を得るための原資を確保したい ・運用期間が長く取れる 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。
分配金受取型のメリットはなんですか。
分配金受取型のメリットは定期的に口座に入金されるので、年金や毎月の給料の足しにしやすいことです。
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分配金受取型とは? 分配金受取型は、分配金が出たら手元に受け取るのが特徴だ。投資信託の購入時に「分配金受取型」を選ぶと、投資信託が決算ごとに支払う分配金を自分が指定した口座に入金してもらうことができる。 決算の時期は投資信託ごとに異なり、毎月分配金が出るものもあれば、半年に1回や1年に1回といったものもある。 分配金受取型のメリット 分配金受取型のメリットは、定期的に口座に入金されるので、年金や毎月の給料の足しにしやすいことだ。 受け取った後は現金として引き出して利用するなり、貯めておくなり、別の投資に回すなり、自分のお金なので当然自由に使える。少しずつでも何回も継続してお金を受け取り続けることができれば、運用している実感や得しているような感覚を覚えやすいだろう。 分配金受取型のデメリット お金が受け取れてうれしい反面、前述のとおり投資信託の分配金が出るということは、つまり投資信託の値段が下がっているということである。そのため、実は諸手を挙げて喜べる状況ではない点には注意したい。 特に、受け取っている分配金が特別分配金だった場合、お金が増えているわけではなく利益の還元でもなく、自分が手数料を払って投資したお金がただ返ってきただけである。 また、分配金を受け取ると運用に回せる資産が減ることから、運用効率も下がる。分配金の分も投資に回していれば得られたはずの利益やチャンスを、自ら逃しているという捉え方もできる。 分配金受取型が向いている人 分配金受取型が向いているのは、例えば以下のような人だ。 定期的に少しずつお金を受け取っていきたい 分配金をおこづかい代わりにしたい 投資をしているという実感が欲しい 値上がり益よりインカムゲイン(その資産を保有していることで得られる利益)を重視する 分配金再投資型とは? 分配金再投資型は、分配金が出ても自分の手元に支給されることはない。受け取らなかった分の分配金は、その投資信託の中で「投資用の資金」となって再度投資されていくのだ。 分配金再投資型のメリット 分配金再投資型の大きなメリットとして、資産価格が上昇する局面において 「複利の効果」が得られることが挙げられる。「複利(ふくり)」とは、元本だけでなく、増えた利子の分にも利子がつくことを指す。元本にしか利子がつかない「単利(たんり)」に比べ、お金が増えやすくなるのが特徴だ。 例えば同じ年3%の運用成果でも、単利の場合は300万円を元手に30年間投資すると最終的に570万円になるが、複利(1年複利)の場合はおよそ730万円と160万円近い差が出る。(※手数料等は考慮していない) 投資信託では、運用がうまくいって投資の元本が増えた分をさらに再投資することで、元本だけのまま運用するよりお金が増えやすくなる。 投資期間が長くなるほど複利の効果は大きくなり、単利と複利の差が開いていく。特に長期的に投資をしたいと考えている方にとっては、複利は大きな味方になってくれるだろう。 分配金再投資型のデメリット 分配金再投資型の場合、定期的な利益分配がないため、「利益が出た」と確定するのはその投資信託を手放して当初より高値で売れたときになる。成果を感じられるのが投資してから何年も(場合によっては何十年も)経った後になることもあるし、複利が活かせるといっても確実にお金が増えるとは限らないうえ、資産価値が下落する局面では資産が小さくなるスピードも速まり、結果的に損をしてしまうリスクがある。こうした点がデメリットだと言えるだろう。 分配金受取型のように、少しずつ利益を享受して投資のメリットを感じていけるわけではないため、人によっては先が長すぎてあまり取り組む意欲が湧かないかもしれない。 分配金再投資型が向いている人 分配金再投資型を選ぶのが向いているのは、以下のような人だ。 ・数年先、数十年先を見据えて長期的な投資をしたい ・インカムゲインより値上がり益を狙いたい ・少しずつ分配金を受け取るより将来大きな利益を得るための原資を確保したい ・運用期間が長く取れる 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。
分配金再投資型の大きなメリットはなんですか。
分配金再投資型の大きなメリットは、資産価格が上昇する局面において 「複利の効果」が得られることが挙げられます。
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金融
分配金受取型とは? 分配金受取型は、分配金が出たら手元に受け取るのが特徴だ。投資信託の購入時に「分配金受取型」を選ぶと、投資信託が決算ごとに支払う分配金を自分が指定した口座に入金してもらうことができる。 決算の時期は投資信託ごとに異なり、毎月分配金が出るものもあれば、半年に1回や1年に1回といったものもある。 分配金受取型のメリット 分配金受取型のメリットは、定期的に口座に入金されるので、年金や毎月の給料の足しにしやすいことだ。 受け取った後は現金として引き出して利用するなり、貯めておくなり、別の投資に回すなり、自分のお金なので当然自由に使える。少しずつでも何回も継続してお金を受け取り続けることができれば、運用している実感や得しているような感覚を覚えやすいだろう。 分配金受取型のデメリット お金が受け取れてうれしい反面、前述のとおり投資信託の分配金が出るということは、つまり投資信託の値段が下がっているということである。そのため、実は諸手を挙げて喜べる状況ではない点には注意したい。 特に、受け取っている分配金が特別分配金だった場合、お金が増えているわけではなく利益の還元でもなく、自分が手数料を払って投資したお金がただ返ってきただけである。 また、分配金を受け取ると運用に回せる資産が減ることから、運用効率も下がる。分配金の分も投資に回していれば得られたはずの利益やチャンスを、自ら逃しているという捉え方もできる。 分配金受取型が向いている人 分配金受取型が向いているのは、例えば以下のような人だ。 定期的に少しずつお金を受け取っていきたい 分配金をおこづかい代わりにしたい 投資をしているという実感が欲しい 値上がり益よりインカムゲイン(その資産を保有していることで得られる利益)を重視する 分配金再投資型とは? 分配金再投資型は、分配金が出ても自分の手元に支給されることはない。受け取らなかった分の分配金は、その投資信託の中で「投資用の資金」となって再度投資されていくのだ。 分配金再投資型のメリット 分配金再投資型の大きなメリットとして、資産価格が上昇する局面において 「複利の効果」が得られることが挙げられる。「複利(ふくり)」とは、元本だけでなく、増えた利子の分にも利子がつくことを指す。元本にしか利子がつかない「単利(たんり)」に比べ、お金が増えやすくなるのが特徴だ。 例えば同じ年3%の運用成果でも、単利の場合は300万円を元手に30年間投資すると最終的に570万円になるが、複利(1年複利)の場合はおよそ730万円と160万円近い差が出る。(※手数料等は考慮していない) 投資信託では、運用がうまくいって投資の元本が増えた分をさらに再投資することで、元本だけのまま運用するよりお金が増えやすくなる。 投資期間が長くなるほど複利の効果は大きくなり、単利と複利の差が開いていく。特に長期的に投資をしたいと考えている方にとっては、複利は大きな味方になってくれるだろう。 分配金再投資型のデメリット 分配金再投資型の場合、定期的な利益分配がないため、「利益が出た」と確定するのはその投資信託を手放して当初より高値で売れたときになる。成果を感じられるのが投資してから何年も(場合によっては何十年も)経った後になることもあるし、複利が活かせるといっても確実にお金が増えるとは限らないうえ、資産価値が下落する局面では資産が小さくなるスピードも速まり、結果的に損をしてしまうリスクがある。こうした点がデメリットだと言えるだろう。 分配金受取型のように、少しずつ利益を享受して投資のメリットを感じていけるわけではないため、人によっては先が長すぎてあまり取り組む意欲が湧かないかもしれない。 分配金再投資型が向いている人 分配金再投資型を選ぶのが向いているのは、以下のような人だ。 ・数年先、数十年先を見据えて長期的な投資をしたい ・インカムゲインより値上がり益を狙いたい ・少しずつ分配金を受け取るより将来大きな利益を得るための原資を確保したい ・運用期間が長く取れる 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。 迷ったら「分配金再投資型」がおすすめ ここまで投資信託の分配金の仕組みや特徴について解説してきたが、「分配金受取型」と「分配金再投資型」どちらがいいか迷ってしまう方もいるかもしれない。もしどうしても決められないなら、「分配金再投資型」をおすすめする。 先述のとおり、分配金再投資型なら複利の効果が活かせるため、分配金受取型よりもお金を増やしやすい。初心者でもリスクを抑えて取り組める長期運用に向いているし、まだ今後の投資方針などを決めきれない場合でも、ひとまず分配金再投資型を選んでおいて、慣れてきたころにじっくり考える……といったことも可能だ。
分配金再投資型のデメリットはどのようなものがありますか。
分配金再投資型のデメリットは、成果を感じられるのが投資してから何年も(場合によっては何十年も)経った後になることもあるし、複利が活かせるといっても確実にお金が増えるとは限らないうえ、資産価値が下落する局面では資産が小さくなるスピードも速まり、結果的に損をしてしまうリスクがあることです。
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金融
金融資産とは何か? 金融資産とは、現金や有価証券などの形で所有される経済的価値があるもの(財産)のことです。一般的な金融資産の代表例としては、通貨、株式、債券などが挙げられます。 金融資産は流動性が比較的高く売買もしやすい点が特徴です。また、需要と供給に応じた価値変動を利用して、資産を増やすための手段として活用されることもあります。有価証券など金融資産の種類によっては価値変動の幅が大きくなる点も特徴です。 金融資産の主な種類 ① 預貯金(現金) 銀行や信用金庫などの金融機関に預けているお金が預貯金です。また、広義では、自宅のタンスや金庫などに紙幣や硬貨の形で保管しているものも預貯金に含まれます。 金融機関にお金を預ける場合、預貯金額や利用するサービスに応じて金利が得られます。一定期間、預けたお金を引き出さないことが前提の定期預金では、入出金の制限がない普通預金に比べて高めの金利が設定されています。 ただし、現在の日本では一般的な普通預金では年利で0.001%程度と超低金利で推移しており、100万円を1年間預けても利息が10円程度ということになります。したがって、一般には、預貯金だけで効果的に資産形成するのは非常に難しいと考えられます。 ② 株式(外国株を含む) 株式会社が資金を調達するために発行する有価証券が株式です。株式は売買が可能で、購入すれば、株主としてその企業のオーナーの1人になることができます。株主には企業の収益に応じて配当金が分配されたり、株主優待の商品・サービスが贈られたりします。 株式は金融資産の中でも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることもあります。しかし、同時に大きな損失を発生させる可能性もあるハイリスク資産です。 ③ 債券 国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券で、国が発行する国債、企業が発行する社債などがあります。購入者は取り決められた利息を定期的に受け取れます。 債券には満期が定められており、デフォルト(債務不履行)が発生しない限りは満期になれば所有者に額面金額が払い戻されます。額面で購入して満期まで所有した場合、定期的に利子を受け取りつつ元本も全額返済されるので、株式に比べて値下がりのリスクは小さめです。大幅な値上がりによる売却益は期待しづらい代わりに、比較的安定した収益が期待できる場合が多いです。 ④ 投資信託 投資信託は、複数の投資家から集めた資金をまとめて、専門家が株式や債券などに投資して運用する仕組みの金融商品です。投資信託にはそれぞれ運用方針があり、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家がその方針に基づき運用を行います。 投資信託は日々「基準価額」が算出されています。基準価額は投資信託の総資産額を口数で割って算出する1口あたりの値段ですが、一般的には1万口あたりの価格で表示されるのが慣例となっています。投資信託は売買が可能で、値上がりすれば売却益が得られます。 投資信託の運用益をもとにした分配金が得られることもあります。分配金には普通分配金と、元本が購入時価格を割り込んだ場合に支払われる元本払戻金(特別分配金)があります。 投資信託は少額から購入しやすいこと、株式や債券など複数の資産に分散投資しやすいこと、運用を専門家に任せられることなどが利点です。一方で、元本割れのリスクや手数料がかかるというデメリットもある点には注意しましょう。 ⑤ 生命保険 貯蓄型の生命保険も金融資産のひとつです。生命保険は、万一のけが・病気などの場合や、死亡した場合に積み立て分に応じて給付を受け取る仕組みですが、貯蓄型生命保険では満期を迎えたときに満期保険金などを受け取れます。なお、掛け捨て型の生命保険は金融資産には含まれません。 ⑥ 商品券・小切手 商品券は券面に記載された一定金額の商品やサービスを受ける権利を約束する有価証券です。また、小切手は記載された金額の支払いを約束する有価証券です。専用の用紙に金額などの必要事項を記入し、相手に渡して使います。 金融資産と実物資産の違い 資産を「金融資産」ではなく「実物資産」で所有する方法もあります。実物資産とは、形があり、それ自体に価値がある資産のことで、土地や建物などの不動産、金銀などの貴金属や宝石、芸術品などがあります。実物資産の価値にも一定の変動があるため、金融資産と同様に投資対象として扱われることもあります。 金融資産と実物資産の決定的な違いは、実物資産は「現物」として存在するということです。金融資産の場合、かさばる現物の移動や保管、保全作業など実体の管理や受け渡しが発生しないという点では取引や管理がしやすく、現金化も比較的容易と言えます。 これに対して、実物資産は不動産や貴金属などの現物であるため、保守管理に手間がかかります。不動産などは立地や建物の状況など資産ごとに独自性があり、相場価格や適正価格がやや分かりにくいという不便さがありますし、居住中の自宅など現金化が難しいことも少なくありません。 ただし、実物資産はインフレなどの局面で強いとされており、根強い人気があります。両者の違いをふまえて投資先を決めたり、分散投資をしたりすることが重要です。 金融資産のメリット・デメリット 金融資産のメリットとして現金化のしやすさ、売買の容易さなど、流動性が高いことが挙げられます。上場株式などは売買する市場が確立されており価格も公表されているので、希望するタイミングでの現金化が比較的しやすく、売買の手続きも実物資産と比較すると非常に簡単で、少額投資もしやすいので、各種の金融資産を組み合わせることでリスクを分散させやすいことも利点です。 しかし、金融資産は、株式なら企業の倒産などで価格が急落するリスクがあります。安定性が高く一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、為替安やインフレなどで価値が損なわれることもあります。 実物資産のメリット・デメリット 実物資産のメリットは、インフレなどの金融危機の際に有利な面があることです。通貨の価値が下落しても実物資産の価値は減りにくいので、資産の目減りを防ぐ役割を期待できます。ただし、金融危機に伴い、実物資産に対する需要が減少した場合などは、市場において価格が下落することも起こり得るため、常に資産の価値を保てるわけではないという点には注意が必要です。 また、投資対象としての需要もあり、短期的には相場の変動があっても長期的に利益を得られる可能性が高いとされています。 一方、最大のデメリットは流動性が低いことです。金融資産と比べて1回あたりの取引額や取引できる最小単位が大きく、換金するまでにある程度の時間がかかることを考慮する必要があります。そのため、実物資産に投資をする際は、預貯金などの現金を手元に残しておくことが推奨されます。 また、実物資産は流動性が低いために、遺産相続の際にトラブルを招くケースもあります。たとえば、「遺産相続において、相続財産が実家の不動産だけ」という状況では、複数の相続人での分割や処分が難しいためトラブルに発展する事例があります。 実物資産は現物として存在しているために、管理や保管に手間や費用がかかるというのもデメリットのひとつです。
金融資産の代表的な特徴はなんですか。
金融資産の代表的な特徴は、流動性が比較的高く売買もしやすい点です。
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金融
金融資産とは何か? 金融資産とは、現金や有価証券などの形で所有される経済的価値があるもの(財産)のことです。一般的な金融資産の代表例としては、通貨、株式、債券などが挙げられます。 金融資産は流動性が比較的高く売買もしやすい点が特徴です。また、需要と供給に応じた価値変動を利用して、資産を増やすための手段として活用されることもあります。有価証券など金融資産の種類によっては価値変動の幅が大きくなる点も特徴です。 金融資産の主な種類 ① 預貯金(現金) 銀行や信用金庫などの金融機関に預けているお金が預貯金です。また、広義では、自宅のタンスや金庫などに紙幣や硬貨の形で保管しているものも預貯金に含まれます。 金融機関にお金を預ける場合、預貯金額や利用するサービスに応じて金利が得られます。一定期間、預けたお金を引き出さないことが前提の定期預金では、入出金の制限がない普通預金に比べて高めの金利が設定されています。 ただし、現在の日本では一般的な普通預金では年利で0.001%程度と超低金利で推移しており、100万円を1年間預けても利息が10円程度ということになります。したがって、一般には、預貯金だけで効果的に資産形成するのは非常に難しいと考えられます。 ② 株式(外国株を含む) 株式会社が資金を調達するために発行する有価証券が株式です。株式は売買が可能で、購入すれば、株主としてその企業のオーナーの1人になることができます。株主には企業の収益に応じて配当金が分配されたり、株主優待の商品・サービスが贈られたりします。 株式は金融資産の中でも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることもあります。しかし、同時に大きな損失を発生させる可能性もあるハイリスク資産です。 ③ 債券 国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券で、国が発行する国債、企業が発行する社債などがあります。購入者は取り決められた利息を定期的に受け取れます。 債券には満期が定められており、デフォルト(債務不履行)が発生しない限りは満期になれば所有者に額面金額が払い戻されます。額面で購入して満期まで所有した場合、定期的に利子を受け取りつつ元本も全額返済されるので、株式に比べて値下がりのリスクは小さめです。大幅な値上がりによる売却益は期待しづらい代わりに、比較的安定した収益が期待できる場合が多いです。 ④ 投資信託 投資信託は、複数の投資家から集めた資金をまとめて、専門家が株式や債券などに投資して運用する仕組みの金融商品です。投資信託にはそれぞれ運用方針があり、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家がその方針に基づき運用を行います。 投資信託は日々「基準価額」が算出されています。基準価額は投資信託の総資産額を口数で割って算出する1口あたりの値段ですが、一般的には1万口あたりの価格で表示されるのが慣例となっています。投資信託は売買が可能で、値上がりすれば売却益が得られます。 投資信託の運用益をもとにした分配金が得られることもあります。分配金には普通分配金と、元本が購入時価格を割り込んだ場合に支払われる元本払戻金(特別分配金)があります。 投資信託は少額から購入しやすいこと、株式や債券など複数の資産に分散投資しやすいこと、運用を専門家に任せられることなどが利点です。一方で、元本割れのリスクや手数料がかかるというデメリットもある点には注意しましょう。 ⑤ 生命保険 貯蓄型の生命保険も金融資産のひとつです。生命保険は、万一のけが・病気などの場合や、死亡した場合に積み立て分に応じて給付を受け取る仕組みですが、貯蓄型生命保険では満期を迎えたときに満期保険金などを受け取れます。なお、掛け捨て型の生命保険は金融資産には含まれません。 ⑥ 商品券・小切手 商品券は券面に記載された一定金額の商品やサービスを受ける権利を約束する有価証券です。また、小切手は記載された金額の支払いを約束する有価証券です。専用の用紙に金額などの必要事項を記入し、相手に渡して使います。 金融資産と実物資産の違い 資産を「金融資産」ではなく「実物資産」で所有する方法もあります。実物資産とは、形があり、それ自体に価値がある資産のことで、土地や建物などの不動産、金銀などの貴金属や宝石、芸術品などがあります。実物資産の価値にも一定の変動があるため、金融資産と同様に投資対象として扱われることもあります。 金融資産と実物資産の決定的な違いは、実物資産は「現物」として存在するということです。金融資産の場合、かさばる現物の移動や保管、保全作業など実体の管理や受け渡しが発生しないという点では取引や管理がしやすく、現金化も比較的容易と言えます。 これに対して、実物資産は不動産や貴金属などの現物であるため、保守管理に手間がかかります。不動産などは立地や建物の状況など資産ごとに独自性があり、相場価格や適正価格がやや分かりにくいという不便さがありますし、居住中の自宅など現金化が難しいことも少なくありません。 ただし、実物資産はインフレなどの局面で強いとされており、根強い人気があります。両者の違いをふまえて投資先を決めたり、分散投資をしたりすることが重要です。 金融資産のメリット・デメリット 金融資産のメリットとして現金化のしやすさ、売買の容易さなど、流動性が高いことが挙げられます。上場株式などは売買する市場が確立されており価格も公表されているので、希望するタイミングでの現金化が比較的しやすく、売買の手続きも実物資産と比較すると非常に簡単で、少額投資もしやすいので、各種の金融資産を組み合わせることでリスクを分散させやすいことも利点です。 しかし、金融資産は、株式なら企業の倒産などで価格が急落するリスクがあります。安定性が高く一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、為替安やインフレなどで価値が損なわれることもあります。 実物資産のメリット・デメリット 実物資産のメリットは、インフレなどの金融危機の際に有利な面があることです。通貨の価値が下落しても実物資産の価値は減りにくいので、資産の目減りを防ぐ役割を期待できます。ただし、金融危機に伴い、実物資産に対する需要が減少した場合などは、市場において価格が下落することも起こり得るため、常に資産の価値を保てるわけではないという点には注意が必要です。 また、投資対象としての需要もあり、短期的には相場の変動があっても長期的に利益を得られる可能性が高いとされています。 一方、最大のデメリットは流動性が低いことです。金融資産と比べて1回あたりの取引額や取引できる最小単位が大きく、換金するまでにある程度の時間がかかることを考慮する必要があります。そのため、実物資産に投資をする際は、預貯金などの現金を手元に残しておくことが推奨されます。 また、実物資産は流動性が低いために、遺産相続の際にトラブルを招くケースもあります。たとえば、「遺産相続において、相続財産が実家の不動産だけ」という状況では、複数の相続人での分割や処分が難しいためトラブルに発展する事例があります。 実物資産は現物として存在しているために、管理や保管に手間や費用がかかるというのもデメリットのひとつです。
株式の金融資産としての特徴はなんですか。
株式の金融資産としての特徴は、金融資産の中でも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることです。
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金融
金融資産とは何か? 金融資産とは、現金や有価証券などの形で所有される経済的価値があるもの(財産)のことです。一般的な金融資産の代表例としては、通貨、株式、債券などが挙げられます。 金融資産は流動性が比較的高く売買もしやすい点が特徴です。また、需要と供給に応じた価値変動を利用して、資産を増やすための手段として活用されることもあります。有価証券など金融資産の種類によっては価値変動の幅が大きくなる点も特徴です。 金融資産の主な種類 ① 預貯金(現金) 銀行や信用金庫などの金融機関に預けているお金が預貯金です。また、広義では、自宅のタンスや金庫などに紙幣や硬貨の形で保管しているものも預貯金に含まれます。 金融機関にお金を預ける場合、預貯金額や利用するサービスに応じて金利が得られます。一定期間、預けたお金を引き出さないことが前提の定期預金では、入出金の制限がない普通預金に比べて高めの金利が設定されています。 ただし、現在の日本では一般的な普通預金では年利で0.001%程度と超低金利で推移しており、100万円を1年間預けても利息が10円程度ということになります。したがって、一般には、預貯金だけで効果的に資産形成するのは非常に難しいと考えられます。 ② 株式(外国株を含む) 株式会社が資金を調達するために発行する有価証券が株式です。株式は売買が可能で、購入すれば、株主としてその企業のオーナーの1人になることができます。株主には企業の収益に応じて配当金が分配されたり、株主優待の商品・サービスが贈られたりします。 株式は金融資産の中でも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることもあります。しかし、同時に大きな損失を発生させる可能性もあるハイリスク資産です。 ③ 債券 国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券で、国が発行する国債、企業が発行する社債などがあります。購入者は取り決められた利息を定期的に受け取れます。 債券には満期が定められており、デフォルト(債務不履行)が発生しない限りは満期になれば所有者に額面金額が払い戻されます。額面で購入して満期まで所有した場合、定期的に利子を受け取りつつ元本も全額返済されるので、株式に比べて値下がりのリスクは小さめです。大幅な値上がりによる売却益は期待しづらい代わりに、比較的安定した収益が期待できる場合が多いです。 ④ 投資信託 投資信託は、複数の投資家から集めた資金をまとめて、専門家が株式や債券などに投資して運用する仕組みの金融商品です。投資信託にはそれぞれ運用方針があり、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家がその方針に基づき運用を行います。 投資信託は日々「基準価額」が算出されています。基準価額は投資信託の総資産額を口数で割って算出する1口あたりの値段ですが、一般的には1万口あたりの価格で表示されるのが慣例となっています。投資信託は売買が可能で、値上がりすれば売却益が得られます。 投資信託の運用益をもとにした分配金が得られることもあります。分配金には普通分配金と、元本が購入時価格を割り込んだ場合に支払われる元本払戻金(特別分配金)があります。 投資信託は少額から購入しやすいこと、株式や債券など複数の資産に分散投資しやすいこと、運用を専門家に任せられることなどが利点です。一方で、元本割れのリスクや手数料がかかるというデメリットもある点には注意しましょう。 ⑤ 生命保険 貯蓄型の生命保険も金融資産のひとつです。生命保険は、万一のけが・病気などの場合や、死亡した場合に積み立て分に応じて給付を受け取る仕組みですが、貯蓄型生命保険では満期を迎えたときに満期保険金などを受け取れます。なお、掛け捨て型の生命保険は金融資産には含まれません。 ⑥ 商品券・小切手 商品券は券面に記載された一定金額の商品やサービスを受ける権利を約束する有価証券です。また、小切手は記載された金額の支払いを約束する有価証券です。専用の用紙に金額などの必要事項を記入し、相手に渡して使います。 金融資産と実物資産の違い 資産を「金融資産」ではなく「実物資産」で所有する方法もあります。実物資産とは、形があり、それ自体に価値がある資産のことで、土地や建物などの不動産、金銀などの貴金属や宝石、芸術品などがあります。実物資産の価値にも一定の変動があるため、金融資産と同様に投資対象として扱われることもあります。 金融資産と実物資産の決定的な違いは、実物資産は「現物」として存在するということです。金融資産の場合、かさばる現物の移動や保管、保全作業など実体の管理や受け渡しが発生しないという点では取引や管理がしやすく、現金化も比較的容易と言えます。 これに対して、実物資産は不動産や貴金属などの現物であるため、保守管理に手間がかかります。不動産などは立地や建物の状況など資産ごとに独自性があり、相場価格や適正価格がやや分かりにくいという不便さがありますし、居住中の自宅など現金化が難しいことも少なくありません。 ただし、実物資産はインフレなどの局面で強いとされており、根強い人気があります。両者の違いをふまえて投資先を決めたり、分散投資をしたりすることが重要です。 金融資産のメリット・デメリット 金融資産のメリットとして現金化のしやすさ、売買の容易さなど、流動性が高いことが挙げられます。上場株式などは売買する市場が確立されており価格も公表されているので、希望するタイミングでの現金化が比較的しやすく、売買の手続きも実物資産と比較すると非常に簡単で、少額投資もしやすいので、各種の金融資産を組み合わせることでリスクを分散させやすいことも利点です。 しかし、金融資産は、株式なら企業の倒産などで価格が急落するリスクがあります。安定性が高く一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、為替安やインフレなどで価値が損なわれることもあります。 実物資産のメリット・デメリット 実物資産のメリットは、インフレなどの金融危機の際に有利な面があることです。通貨の価値が下落しても実物資産の価値は減りにくいので、資産の目減りを防ぐ役割を期待できます。ただし、金融危機に伴い、実物資産に対する需要が減少した場合などは、市場において価格が下落することも起こり得るため、常に資産の価値を保てるわけではないという点には注意が必要です。 また、投資対象としての需要もあり、短期的には相場の変動があっても長期的に利益を得られる可能性が高いとされています。 一方、最大のデメリットは流動性が低いことです。金融資産と比べて1回あたりの取引額や取引できる最小単位が大きく、換金するまでにある程度の時間がかかることを考慮する必要があります。そのため、実物資産に投資をする際は、預貯金などの現金を手元に残しておくことが推奨されます。 また、実物資産は流動性が低いために、遺産相続の際にトラブルを招くケースもあります。たとえば、「遺産相続において、相続財産が実家の不動産だけ」という状況では、複数の相続人での分割や処分が難しいためトラブルに発展する事例があります。 実物資産は現物として存在しているために、管理や保管に手間や費用がかかるというのもデメリットのひとつです。
実物資産の流動性に関して注意すべき点はなんですか。
実物資産の流動性に関して注意すべき点は、流動性が低いために、遺産相続の際などにトラブルを招くケースもあります。たとえば、「遺産相続において、相続財産が実家の不動産だけ」という状況では、複数の相続人での分割や処分が難しいためトラブルに発展する事例があります。
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金融
金融資産とは何か? 金融資産とは、現金や有価証券などの形で所有される経済的価値があるもの(財産)のことです。一般的な金融資産の代表例としては、通貨、株式、債券などが挙げられます。 金融資産は流動性が比較的高く売買もしやすい点が特徴です。また、需要と供給に応じた価値変動を利用して、資産を増やすための手段として活用されることもあります。有価証券など金融資産の種類によっては価値変動の幅が大きくなる点も特徴です。 金融資産の主な種類 ① 預貯金(現金) 銀行や信用金庫などの金融機関に預けているお金が預貯金です。また、広義では、自宅のタンスや金庫などに紙幣や硬貨の形で保管しているものも預貯金に含まれます。 金融機関にお金を預ける場合、預貯金額や利用するサービスに応じて金利が得られます。一定期間、預けたお金を引き出さないことが前提の定期預金では、入出金の制限がない普通預金に比べて高めの金利が設定されています。 ただし、現在の日本では一般的な普通預金では年利で0.001%程度と超低金利で推移しており、100万円を1年間預けても利息が10円程度ということになります。したがって、一般には、預貯金だけで効果的に資産形成するのは非常に難しいと考えられます。 ② 株式(外国株を含む) 株式会社が資金を調達するために発行する有価証券が株式です。株式は売買が可能で、購入すれば、株主としてその企業のオーナーの1人になることができます。株主には企業の収益に応じて配当金が分配されたり、株主優待の商品・サービスが贈られたりします。 株式は金融資産の中でも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることもあります。しかし、同時に大きな損失を発生させる可能性もあるハイリスク資産です。 ③ 債券 国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券で、国が発行する国債、企業が発行する社債などがあります。購入者は取り決められた利息を定期的に受け取れます。 債券には満期が定められており、デフォルト(債務不履行)が発生しない限りは満期になれば所有者に額面金額が払い戻されます。額面で購入して満期まで所有した場合、定期的に利子を受け取りつつ元本も全額返済されるので、株式に比べて値下がりのリスクは小さめです。大幅な値上がりによる売却益は期待しづらい代わりに、比較的安定した収益が期待できる場合が多いです。 ④ 投資信託 投資信託は、複数の投資家から集めた資金をまとめて、専門家が株式や債券などに投資して運用する仕組みの金融商品です。投資信託にはそれぞれ運用方針があり、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家がその方針に基づき運用を行います。 投資信託は日々「基準価額」が算出されています。基準価額は投資信託の総資産額を口数で割って算出する1口あたりの値段ですが、一般的には1万口あたりの価格で表示されるのが慣例となっています。投資信託は売買が可能で、値上がりすれば売却益が得られます。 投資信託の運用益をもとにした分配金が得られることもあります。分配金には普通分配金と、元本が購入時価格を割り込んだ場合に支払われる元本払戻金(特別分配金)があります。 投資信託は少額から購入しやすいこと、株式や債券など複数の資産に分散投資しやすいこと、運用を専門家に任せられることなどが利点です。一方で、元本割れのリスクや手数料がかかるというデメリットもある点には注意しましょう。 ⑤ 生命保険 貯蓄型の生命保険も金融資産のひとつです。生命保険は、万一のけが・病気などの場合や、死亡した場合に積み立て分に応じて給付を受け取る仕組みですが、貯蓄型生命保険では満期を迎えたときに満期保険金などを受け取れます。なお、掛け捨て型の生命保険は金融資産には含まれません。 ⑥ 商品券・小切手 商品券は券面に記載された一定金額の商品やサービスを受ける権利を約束する有価証券です。また、小切手は記載された金額の支払いを約束する有価証券です。専用の用紙に金額などの必要事項を記入し、相手に渡して使います。 金融資産と実物資産の違い 資産を「金融資産」ではなく「実物資産」で所有する方法もあります。実物資産とは、形があり、それ自体に価値がある資産のことで、土地や建物などの不動産、金銀などの貴金属や宝石、芸術品などがあります。実物資産の価値にも一定の変動があるため、金融資産と同様に投資対象として扱われることもあります。 金融資産と実物資産の決定的な違いは、実物資産は「現物」として存在するということです。金融資産の場合、かさばる現物の移動や保管、保全作業など実体の管理や受け渡しが発生しないという点では取引や管理がしやすく、現金化も比較的容易と言えます。 これに対して、実物資産は不動産や貴金属などの現物であるため、保守管理に手間がかかります。不動産などは立地や建物の状況など資産ごとに独自性があり、相場価格や適正価格がやや分かりにくいという不便さがありますし、居住中の自宅など現金化が難しいことも少なくありません。 ただし、実物資産はインフレなどの局面で強いとされており、根強い人気があります。両者の違いをふまえて投資先を決めたり、分散投資をしたりすることが重要です。 金融資産のメリット・デメリット 金融資産のメリットとして現金化のしやすさ、売買の容易さなど、流動性が高いことが挙げられます。上場株式などは売買する市場が確立されており価格も公表されているので、希望するタイミングでの現金化が比較的しやすく、売買の手続きも実物資産と比較すると非常に簡単で、少額投資もしやすいので、各種の金融資産を組み合わせることでリスクを分散させやすいことも利点です。 しかし、金融資産は、株式なら企業の倒産などで価格が急落するリスクがあります。安定性が高く一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、為替安やインフレなどで価値が損なわれることもあります。 実物資産のメリット・デメリット 実物資産のメリットは、インフレなどの金融危機の際に有利な面があることです。通貨の価値が下落しても実物資産の価値は減りにくいので、資産の目減りを防ぐ役割を期待できます。ただし、金融危機に伴い、実物資産に対する需要が減少した場合などは、市場において価格が下落することも起こり得るため、常に資産の価値を保てるわけではないという点には注意が必要です。 また、投資対象としての需要もあり、短期的には相場の変動があっても長期的に利益を得られる可能性が高いとされています。 一方、最大のデメリットは流動性が低いことです。金融資産と比べて1回あたりの取引額や取引できる最小単位が大きく、換金するまでにある程度の時間がかかることを考慮する必要があります。そのため、実物資産に投資をする際は、預貯金などの現金を手元に残しておくことが推奨されます。 また、実物資産は流動性が低いために、遺産相続の際にトラブルを招くケースもあります。たとえば、「遺産相続において、相続財産が実家の不動産だけ」という状況では、複数の相続人での分割や処分が難しいためトラブルに発展する事例があります。 実物資産は現物として存在しているために、管理や保管に手間や費用がかかるというのもデメリットのひとつです。
金融資産のリスクとはどのようなことがありますか。
金融資産のリスクとは、例えば株式なら企業の倒産などで価格が急落するリスクがあります。安定性が高く一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、為替安やインフレなどで価値が損なわれることもあります。
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金融
金融資産とは何か? 金融資産とは、現金や有価証券などの形で所有される経済的価値があるもの(財産)のことです。一般的な金融資産の代表例としては、通貨、株式、債券などが挙げられます。 金融資産は流動性が比較的高く売買もしやすい点が特徴です。また、需要と供給に応じた価値変動を利用して、資産を増やすための手段として活用されることもあります。有価証券など金融資産の種類によっては価値変動の幅が大きくなる点も特徴です。 金融資産の主な種類 ① 預貯金(現金) 銀行や信用金庫などの金融機関に預けているお金が預貯金です。また、広義では、自宅のタンスや金庫などに紙幣や硬貨の形で保管しているものも預貯金に含まれます。 金融機関にお金を預ける場合、預貯金額や利用するサービスに応じて金利が得られます。一定期間、預けたお金を引き出さないことが前提の定期預金では、入出金の制限がない普通預金に比べて高めの金利が設定されています。 ただし、現在の日本では一般的な普通預金では年利で0.001%程度と超低金利で推移しており、100万円を1年間預けても利息が10円程度ということになります。したがって、一般には、預貯金だけで効果的に資産形成するのは非常に難しいと考えられます。 ② 株式(外国株を含む) 株式会社が資金を調達するために発行する有価証券が株式です。株式は売買が可能で、購入すれば、株主としてその企業のオーナーの1人になることができます。株主には企業の収益に応じて配当金が分配されたり、株主優待の商品・サービスが贈られたりします。 株式は金融資産の中でも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることもあります。しかし、同時に大きな損失を発生させる可能性もあるハイリスク資産です。 ③ 債券 国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券で、国が発行する国債、企業が発行する社債などがあります。購入者は取り決められた利息を定期的に受け取れます。 債券には満期が定められており、デフォルト(債務不履行)が発生しない限りは満期になれば所有者に額面金額が払い戻されます。額面で購入して満期まで所有した場合、定期的に利子を受け取りつつ元本も全額返済されるので、株式に比べて値下がりのリスクは小さめです。大幅な値上がりによる売却益は期待しづらい代わりに、比較的安定した収益が期待できる場合が多いです。 ④ 投資信託 投資信託は、複数の投資家から集めた資金をまとめて、専門家が株式や債券などに投資して運用する仕組みの金融商品です。投資信託にはそれぞれ運用方針があり、ファンドマネージャーと呼ばれる専門家がその方針に基づき運用を行います。 投資信託は日々「基準価額」が算出されています。基準価額は投資信託の総資産額を口数で割って算出する1口あたりの値段ですが、一般的には1万口あたりの価格で表示されるのが慣例となっています。投資信託は売買が可能で、値上がりすれば売却益が得られます。 投資信託の運用益をもとにした分配金が得られることもあります。分配金には普通分配金と、元本が購入時価格を割り込んだ場合に支払われる元本払戻金(特別分配金)があります。 投資信託は少額から購入しやすいこと、株式や債券など複数の資産に分散投資しやすいこと、運用を専門家に任せられることなどが利点です。一方で、元本割れのリスクや手数料がかかるというデメリットもある点には注意しましょう。 ⑤ 生命保険 貯蓄型の生命保険も金融資産のひとつです。生命保険は、万一のけが・病気などの場合や、死亡した場合に積み立て分に応じて給付を受け取る仕組みですが、貯蓄型生命保険では満期を迎えたときに満期保険金などを受け取れます。なお、掛け捨て型の生命保険は金融資産には含まれません。 ⑥ 商品券・小切手 商品券は券面に記載された一定金額の商品やサービスを受ける権利を約束する有価証券です。また、小切手は記載された金額の支払いを約束する有価証券です。専用の用紙に金額などの必要事項を記入し、相手に渡して使います。 金融資産と実物資産の違い 資産を「金融資産」ではなく「実物資産」で所有する方法もあります。実物資産とは、形があり、それ自体に価値がある資産のことで、土地や建物などの不動産、金銀などの貴金属や宝石、芸術品などがあります。実物資産の価値にも一定の変動があるため、金融資産と同様に投資対象として扱われることもあります。 金融資産と実物資産の決定的な違いは、実物資産は「現物」として存在するということです。金融資産の場合、かさばる現物の移動や保管、保全作業など実体の管理や受け渡しが発生しないという点では取引や管理がしやすく、現金化も比較的容易と言えます。 これに対して、実物資産は不動産や貴金属などの現物であるため、保守管理に手間がかかります。不動産などは立地や建物の状況など資産ごとに独自性があり、相場価格や適正価格がやや分かりにくいという不便さがありますし、居住中の自宅など現金化が難しいことも少なくありません。 ただし、実物資産はインフレなどの局面で強いとされており、根強い人気があります。両者の違いをふまえて投資先を決めたり、分散投資をしたりすることが重要です。 金融資産のメリット・デメリット 金融資産のメリットとして現金化のしやすさ、売買の容易さなど、流動性が高いことが挙げられます。上場株式などは売買する市場が確立されており価格も公表されているので、希望するタイミングでの現金化が比較的しやすく、売買の手続きも実物資産と比較すると非常に簡単で、少額投資もしやすいので、各種の金融資産を組み合わせることでリスクを分散させやすいことも利点です。 しかし、金融資産は、株式なら企業の倒産などで価格が急落するリスクがあります。安定性が高く一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、為替安やインフレなどで価値が損なわれることもあります。 実物資産のメリット・デメリット 実物資産のメリットは、インフレなどの金融危機の際に有利な面があることです。通貨の価値が下落しても実物資産の価値は減りにくいので、資産の目減りを防ぐ役割を期待できます。ただし、金融危機に伴い、実物資産に対する需要が減少した場合などは、市場において価格が下落することも起こり得るため、常に資産の価値を保てるわけではないという点には注意が必要です。 また、投資対象としての需要もあり、短期的には相場の変動があっても長期的に利益を得られる可能性が高いとされています。 一方、最大のデメリットは流動性が低いことです。金融資産と比べて1回あたりの取引額や取引できる最小単位が大きく、換金するまでにある程度の時間がかかることを考慮する必要があります。そのため、実物資産に投資をする際は、預貯金などの現金を手元に残しておくことが推奨されます。 また、実物資産は流動性が低いために、遺産相続の際にトラブルを招くケースもあります。たとえば、「遺産相続において、相続財産が実家の不動産だけ」という状況では、複数の相続人での分割や処分が難しいためトラブルに発展する事例があります。 実物資産は現物として存在しているために、管理や保管に手間や費用がかかるというのもデメリットのひとつです。
投資信託の利点として挙げられる特徴はなんですか。
投資信託の利点として挙げられる特徴は、株式や債券など複数の資産に分散投資しやすいこと、運用を専門家に任せられることなどです。
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金融
日本と世界の金融資産の保有割合 上記で紹介したとおり、金融資産には預貯金や株式、債券などがありますが、日本ではこれらの金融資産をどのような割合で保有しているのでしょうか。また、GDPランキング世界一の経済大国である米国ではどうなっているのでしょうか。以下では日本と米国、ユーロ圏が保有する各金融資産の割合を紹介します。 日本の金融資産の保有割合 日本銀行調査統計局が2022年8月に公開した資料「資金循環の日米欧比較」によると、日本の家計に占める金融資産の構成は以下のとおりです。 【日本】 現金・預金:54.3% 債務証券:1.3% 投資信託:4.5% 株式等:10.2% 保険・年金・定型保証:26.9% その他:2.8% 日本の金融資産の保有割合は過半数が預貯金であり、保守的な傾向が顕著です。また、個人資産が極端に預貯金に偏っていると、市中にお金が出回らず、経済の停滞を招くことにもなります。 家計が保有している莫大な金融資産を市場に開放すること、また、少子高齢化で年金制度の維持が厳しくなっているなかで個人の資産形成を進めることを目標に、日本政府は税制優遇などで投資による資産運用を推奨するようになっています。 米国やユーロ圏の金融資産の保有割合 米国とユーロ圏の金融資産の保有割合は以下のようになっています。 【米国】 現金・預金:13.7% 債務証券:2.6% 投資信託:12.6% 株式等:39.8% 保険・年金・定型保証:28.6% その他:2.8% 【ユーロ圏】 現金・預金:34.5% 債務証券:1.6% 投資信託:10.4% 株式等:19.5% 保険・年金・定型保証:31.9% その他:2.1% 全般的な傾向として、米国は日本とは反対に投資へ非常に積極的で、現金・預金の3倍近くの額を株式投資に充てています。ユーロ圏は株式に関しては日本と米国の中間という印象ですが、保険・年金・定型保証の保有割合は全体の3割弱と日本や米国とほぼ同程度と言えます。 日本人の金融資産保有額はどのくらい? 続いて、日本銀行情報サービス局内の金融広報中央委員会が2022年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」に基づいて、日本における金融資産保有額の状況を解説します。自分と似た世帯の傾向を参考にしてみてはいかがでしょうか。なお、以下で紹介するのは金融資産を持っていない世帯も含めた統計です。 1世帯あたりの金融資産保有額 金融広報中央委員会が2022年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査令和4年」(総世帯)によると、日本の1世帯あたりの金融資産保有額は以下のとおりです。 なお、中央値とは、データを昇順または降順に並べた場合に真ん中になる数値です。極端な富裕層の存在が平均値を大きく押し上げていることもあり、より実態に近いのは中央値であると考えられています。 1世帯あたりの金融資産保有額(全国) 平均値:1,150万円 中央値:280万円 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の年齢別】 世帯主の年齢別で見た場合、基本的に年齢が高くなるほど金融資産の保有額が上がる傾向にあります。若い世代は賃金が低かったり、資産形成の期間が十分ではなかったり、子育てや住宅の購入などで大きな出費が生じたりすることが影響しているとみられます。60代、70代の保有額が上がっているのは、退職金の影響と考えられます。 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の就業先産業別】 金融資産の保有額は、世帯主の就業先の産業によっても大きく異なります。一番低いのは「宿泊業、飲食サービス業」で、中央値では30万円、平均値でも469万円です。他方で「公務、教育、電気水道業」は平均値1,442万円、中央値500万円でどちらもトップです。その他に、「製造業」が平均値1,085万円、中央値で300万円と高めです。 1世帯あたりの金融資産保有額【年収別】 年収別では高収入世帯ほど金融資産の保有額が多いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【持家別】 住居が持家か持家でないかの点で比較した場合、平均値・中央値ともに持家を所有している層の方が大幅に高いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【地域別】 地域別で見ると、平均値では首都圏を含む関東地方が1,325万円、中央値では名古屋がある中部地方が348万円でそれぞれトップです。関東・中部と並ぶ3大都市圏の近畿地方は平均値1,216万円・中央値300万円でともに3位、平均値では北陸地方が1,182万円で4位、中央値では中国地方が270万円で4位です。 自分が保有している金融資産を確認する方法 将来のライフプランを立てて資産形成に取り組むなら、自分が保有している金融資産について把握しておくことが必要です。金融資産の全体像を可視化すれば、現金のまま保有する資産の額と、株式などに投資する資産の額を決めて、リスクヘッジしながら資産ポートフォリオを組めるようになります。 金融資産が預貯金だけであれば、お金を預けている銀行の通帳や、スマートフォンアプリなどでインターネットバンキングを閲覧することで総額が確認できるので簡単です。金融機関によっては投資信託の残高などもスマートフォンアプリ(インターネットバンキング)で確認できます。 インターネットを使わない場合は、金融機関から送付される「取引残高報告書」でも資産評価額の確認ができます。 また、生命保険の積立金や株の評価額なども、最近ではインターネットで情報を取得できるケースが大半です。 確認した金融資産保有額の情報は、Excelシートなどに集約して一括管理する方法もありますが、最近では資産管理用のアプリなどもリリースされているので、そうしたツールを活用して管理作業を効率化するのもおすすめです。 投資の法則である「資産の三分法」とは? 「資産の三分法」とは、資産を異なる性質を持った3つの資産に分けて保有するという手法です。以下がその3つです。 株式(投資信託や債券なども含む) 預貯金(現金) 不動産 この3つは別々の値動きを取ることが多く、価格変動を互いに補って緩和することが可能です。株や不動産の価格が下落しても、手持ちの現金があれば性急に売却する必要がありません。 また、「手持ちの現金があれば、値下がりした株や不動産を買い足して将来の値上がりに備える」といったプランを実行できます。あるいは、インフレになれば現金の価値は下落しますが、株や不動産はインフレでも価値が下がりにくく、現金の弱点を補うことができます。 3つの資産をどのような割合で保有したらよいのかという点についてですが、資産の配分比率は各個人の投資目的やリスク許容度、市場状況などにも左右されるため、誰にとっても最適な比率というものはありません。それぞれのライフプランに添って最適な配分を検討し選択していきましょう。 3つの資産を併せ持つメリット 異なる3つの資産を併せ持つことで以下のメリットを得られます。 1. リスクを分散できる 資産を前述した3グループに分けることで、それぞれのグループで価値の下落が起きた場合でも、互いに補って損失を緩和することが可能です。 2. 長期的な資産形成に適している 資産の三分法は長期的な資産形成に適しています。預貯金(普通預金や定期預金など)による運用はリスクが低い反面、高い利回りは期待できません。一方で、株式や不動産への投資は価格変動がある分、預貯金と比べリスクが高いですが、高いリターンも期待できます。 長期的に安定して利益を得るには、このように資産の三分法を活用してリスクとリターンのバランスを取ることが重要です。 3. インフレ・デフレのリスクに備えられる インフレが起きると、現金の実質的な価値が下がりますが、土地や株式は物価の上昇に合わせて価格が上がる傾向があります。このため、土地や株式を保有することは、インフレに対するリスクヘッジとしては有効です。逆にデフレの局面では、物価が下がり現金の価値が高まるため、現金を多く保有していることが大きな安心材料になります。 資産の三分法における注意点 資産の三分法は、資産を分散することでリスクを減らす手法ですが、逆に1点に集中していた場合に比べ利益率も低くなる可能性があります。預貯金に回していた資産を株式の購入に投じていれば大きな利益を得られたという局面があるかもしれません。 また、資産を別々の種類で保有することで、資産管理の手間が増大して管理運用に手が回らなくなったり、資産の全体像が見えにくくなったりする恐れもあります。
日本の家計における金融資産の保有割合で過半数に達したのはなんですか。
日本の家計における金融資産の保有割合で過半数に達したのは、預貯金であり、保守的な傾向が顕著です。
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金融
日本と世界の金融資産の保有割合 上記で紹介したとおり、金融資産には預貯金や株式、債券などがありますが、日本ではこれらの金融資産をどのような割合で保有しているのでしょうか。また、GDPランキング世界一の経済大国である米国ではどうなっているのでしょうか。以下では日本と米国、ユーロ圏が保有する各金融資産の割合を紹介します。 日本の金融資産の保有割合 日本銀行調査統計局が2022年8月に公開した資料「資金循環の日米欧比較」によると、日本の家計に占める金融資産の構成は以下のとおりです。 【日本】 現金・預金:54.3% 債務証券:1.3% 投資信託:4.5% 株式等:10.2% 保険・年金・定型保証:26.9% その他:2.8% 日本の金融資産の保有割合は過半数が預貯金であり、保守的な傾向が顕著です。また、個人資産が極端に預貯金に偏っていると、市中にお金が出回らず、経済の停滞を招くことにもなります。 家計が保有している莫大な金融資産を市場に開放すること、また、少子高齢化で年金制度の維持が厳しくなっているなかで個人の資産形成を進めることを目標に、日本政府は税制優遇などで投資による資産運用を推奨するようになっています。 米国やユーロ圏の金融資産の保有割合 米国とユーロ圏の金融資産の保有割合は以下のようになっています。 【米国】 現金・預金:13.7% 債務証券:2.6% 投資信託:12.6% 株式等:39.8% 保険・年金・定型保証:28.6% その他:2.8% 【ユーロ圏】 現金・預金:34.5% 債務証券:1.6% 投資信託:10.4% 株式等:19.5% 保険・年金・定型保証:31.9% その他:2.1% 全般的な傾向として、米国は日本とは反対に投資へ非常に積極的で、現金・預金の3倍近くの額を株式投資に充てています。ユーロ圏は株式に関しては日本と米国の中間という印象ですが、保険・年金・定型保証の保有割合は全体の3割弱と日本や米国とほぼ同程度と言えます。 日本人の金融資産保有額はどのくらい? 続いて、日本銀行情報サービス局内の金融広報中央委員会が2022年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」に基づいて、日本における金融資産保有額の状況を解説します。自分と似た世帯の傾向を参考にしてみてはいかがでしょうか。なお、以下で紹介するのは金融資産を持っていない世帯も含めた統計です。 1世帯あたりの金融資産保有額 金融広報中央委員会が2022年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査令和4年」(総世帯)によると、日本の1世帯あたりの金融資産保有額は以下のとおりです。 なお、中央値とは、データを昇順または降順に並べた場合に真ん中になる数値です。極端な富裕層の存在が平均値を大きく押し上げていることもあり、より実態に近いのは中央値であると考えられています。 1世帯あたりの金融資産保有額(全国) 平均値:1,150万円 中央値:280万円 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の年齢別】 世帯主の年齢別で見た場合、基本的に年齢が高くなるほど金融資産の保有額が上がる傾向にあります。若い世代は賃金が低かったり、資産形成の期間が十分ではなかったり、子育てや住宅の購入などで大きな出費が生じたりすることが影響しているとみられます。60代、70代の保有額が上がっているのは、退職金の影響と考えられます。 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の就業先産業別】 金融資産の保有額は、世帯主の就業先の産業によっても大きく異なります。一番低いのは「宿泊業、飲食サービス業」で、中央値では30万円、平均値でも469万円です。他方で「公務、教育、電気水道業」は平均値1,442万円、中央値500万円でどちらもトップです。その他に、「製造業」が平均値1,085万円、中央値で300万円と高めです。 1世帯あたりの金融資産保有額【年収別】 年収別では高収入世帯ほど金融資産の保有額が多いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【持家別】 住居が持家か持家でないかの点で比較した場合、平均値・中央値ともに持家を所有している層の方が大幅に高いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【地域別】 地域別で見ると、平均値では首都圏を含む関東地方が1,325万円、中央値では名古屋がある中部地方が348万円でそれぞれトップです。関東・中部と並ぶ3大都市圏の近畿地方は平均値1,216万円・中央値300万円でともに3位、平均値では北陸地方が1,182万円で4位、中央値では中国地方が270万円で4位です。 自分が保有している金融資産を確認する方法 将来のライフプランを立てて資産形成に取り組むなら、自分が保有している金融資産について把握しておくことが必要です。金融資産の全体像を可視化すれば、現金のまま保有する資産の額と、株式などに投資する資産の額を決めて、リスクヘッジしながら資産ポートフォリオを組めるようになります。 金融資産が預貯金だけであれば、お金を預けている銀行の通帳や、スマートフォンアプリなどでインターネットバンキングを閲覧することで総額が確認できるので簡単です。金融機関によっては投資信託の残高などもスマートフォンアプリ(インターネットバンキング)で確認できます。 インターネットを使わない場合は、金融機関から送付される「取引残高報告書」でも資産評価額の確認ができます。 また、生命保険の積立金や株の評価額なども、最近ではインターネットで情報を取得できるケースが大半です。 確認した金融資産保有額の情報は、Excelシートなどに集約して一括管理する方法もありますが、最近では資産管理用のアプリなどもリリースされているので、そうしたツールを活用して管理作業を効率化するのもおすすめです。 投資の法則である「資産の三分法」とは? 「資産の三分法」とは、資産を異なる性質を持った3つの資産に分けて保有するという手法です。以下がその3つです。 株式(投資信託や債券なども含む) 預貯金(現金) 不動産 この3つは別々の値動きを取ることが多く、価格変動を互いに補って緩和することが可能です。株や不動産の価格が下落しても、手持ちの現金があれば性急に売却する必要がありません。 また、「手持ちの現金があれば、値下がりした株や不動産を買い足して将来の値上がりに備える」といったプランを実行できます。あるいは、インフレになれば現金の価値は下落しますが、株や不動産はインフレでも価値が下がりにくく、現金の弱点を補うことができます。 3つの資産をどのような割合で保有したらよいのかという点についてですが、資産の配分比率は各個人の投資目的やリスク許容度、市場状況などにも左右されるため、誰にとっても最適な比率というものはありません。それぞれのライフプランに添って最適な配分を検討し選択していきましょう。 3つの資産を併せ持つメリット 異なる3つの資産を併せ持つことで以下のメリットを得られます。 1. リスクを分散できる 資産を前述した3グループに分けることで、それぞれのグループで価値の下落が起きた場合でも、互いに補って損失を緩和することが可能です。 2. 長期的な資産形成に適している 資産の三分法は長期的な資産形成に適しています。預貯金(普通預金や定期預金など)による運用はリスクが低い反面、高い利回りは期待できません。一方で、株式や不動産への投資は価格変動がある分、預貯金と比べリスクが高いですが、高いリターンも期待できます。 長期的に安定して利益を得るには、このように資産の三分法を活用してリスクとリターンのバランスを取ることが重要です。 3. インフレ・デフレのリスクに備えられる インフレが起きると、現金の実質的な価値が下がりますが、土地や株式は物価の上昇に合わせて価格が上がる傾向があります。このため、土地や株式を保有することは、インフレに対するリスクヘッジとしては有効です。逆にデフレの局面では、物価が下がり現金の価値が高まるため、現金を多く保有していることが大きな安心材料になります。 資産の三分法における注意点 資産の三分法は、資産を分散することでリスクを減らす手法ですが、逆に1点に集中していた場合に比べ利益率も低くなる可能性があります。預貯金に回していた資産を株式の購入に投じていれば大きな利益を得られたという局面があるかもしれません。 また、資産を別々の種類で保有することで、資産管理の手間が増大して管理運用に手が回らなくなったり、資産の全体像が見えにくくなったりする恐れもあります。
日本政府が投資による資産運用を推奨するようになった背景にはどのような目的がありますか。
日本政府が投資による資産運用を推奨するようになった背景には、家計が保有している莫大な金融資産を市場に開放すること、また、少子高齢化で年金制度の維持が厳しくなっているなかで個人の資産形成を進めることを目標に、日本政府は税制優遇などで投資による資産運用を推奨するようになりました。
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金融
日本と世界の金融資産の保有割合 上記で紹介したとおり、金融資産には預貯金や株式、債券などがありますが、日本ではこれらの金融資産をどのような割合で保有しているのでしょうか。また、GDPランキング世界一の経済大国である米国ではどうなっているのでしょうか。以下では日本と米国、ユーロ圏が保有する各金融資産の割合を紹介します。 日本の金融資産の保有割合 日本銀行調査統計局が2022年8月に公開した資料「資金循環の日米欧比較」によると、日本の家計に占める金融資産の構成は以下のとおりです。 【日本】 現金・預金:54.3% 債務証券:1.3% 投資信託:4.5% 株式等:10.2% 保険・年金・定型保証:26.9% その他:2.8% 日本の金融資産の保有割合は過半数が預貯金であり、保守的な傾向が顕著です。また、個人資産が極端に預貯金に偏っていると、市中にお金が出回らず、経済の停滞を招くことにもなります。 家計が保有している莫大な金融資産を市場に開放すること、また、少子高齢化で年金制度の維持が厳しくなっているなかで個人の資産形成を進めることを目標に、日本政府は税制優遇などで投資による資産運用を推奨するようになっています。 米国やユーロ圏の金融資産の保有割合 米国とユーロ圏の金融資産の保有割合は以下のようになっています。 【米国】 現金・預金:13.7% 債務証券:2.6% 投資信託:12.6% 株式等:39.8% 保険・年金・定型保証:28.6% その他:2.8% 【ユーロ圏】 現金・預金:34.5% 債務証券:1.6% 投資信託:10.4% 株式等:19.5% 保険・年金・定型保証:31.9% その他:2.1% 全般的な傾向として、米国は日本とは反対に投資へ非常に積極的で、現金・預金の3倍近くの額を株式投資に充てています。ユーロ圏は株式に関しては日本と米国の中間という印象ですが、保険・年金・定型保証の保有割合は全体の3割弱と日本や米国とほぼ同程度と言えます。 日本人の金融資産保有額はどのくらい? 続いて、日本銀行情報サービス局内の金融広報中央委員会が2022年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」に基づいて、日本における金融資産保有額の状況を解説します。自分と似た世帯の傾向を参考にしてみてはいかがでしょうか。なお、以下で紹介するのは金融資産を持っていない世帯も含めた統計です。 1世帯あたりの金融資産保有額 金融広報中央委員会が2022年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査令和4年」(総世帯)によると、日本の1世帯あたりの金融資産保有額は以下のとおりです。 なお、中央値とは、データを昇順または降順に並べた場合に真ん中になる数値です。極端な富裕層の存在が平均値を大きく押し上げていることもあり、より実態に近いのは中央値であると考えられています。 1世帯あたりの金融資産保有額(全国) 平均値:1,150万円 中央値:280万円 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の年齢別】 世帯主の年齢別で見た場合、基本的に年齢が高くなるほど金融資産の保有額が上がる傾向にあります。若い世代は賃金が低かったり、資産形成の期間が十分ではなかったり、子育てや住宅の購入などで大きな出費が生じたりすることが影響しているとみられます。60代、70代の保有額が上がっているのは、退職金の影響と考えられます。 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の就業先産業別】 金融資産の保有額は、世帯主の就業先の産業によっても大きく異なります。一番低いのは「宿泊業、飲食サービス業」で、中央値では30万円、平均値でも469万円です。他方で「公務、教育、電気水道業」は平均値1,442万円、中央値500万円でどちらもトップです。その他に、「製造業」が平均値1,085万円、中央値で300万円と高めです。 1世帯あたりの金融資産保有額【年収別】 年収別では高収入世帯ほど金融資産の保有額が多いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【持家別】 住居が持家か持家でないかの点で比較した場合、平均値・中央値ともに持家を所有している層の方が大幅に高いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【地域別】 地域別で見ると、平均値では首都圏を含む関東地方が1,325万円、中央値では名古屋がある中部地方が348万円でそれぞれトップです。関東・中部と並ぶ3大都市圏の近畿地方は平均値1,216万円・中央値300万円でともに3位、平均値では北陸地方が1,182万円で4位、中央値では中国地方が270万円で4位です。 自分が保有している金融資産を確認する方法 将来のライフプランを立てて資産形成に取り組むなら、自分が保有している金融資産について把握しておくことが必要です。金融資産の全体像を可視化すれば、現金のまま保有する資産の額と、株式などに投資する資産の額を決めて、リスクヘッジしながら資産ポートフォリオを組めるようになります。 金融資産が預貯金だけであれば、お金を預けている銀行の通帳や、スマートフォンアプリなどでインターネットバンキングを閲覧することで総額が確認できるので簡単です。金融機関によっては投資信託の残高などもスマートフォンアプリ(インターネットバンキング)で確認できます。 インターネットを使わない場合は、金融機関から送付される「取引残高報告書」でも資産評価額の確認ができます。 また、生命保険の積立金や株の評価額なども、最近ではインターネットで情報を取得できるケースが大半です。 確認した金融資産保有額の情報は、Excelシートなどに集約して一括管理する方法もありますが、最近では資産管理用のアプリなどもリリースされているので、そうしたツールを活用して管理作業を効率化するのもおすすめです。 投資の法則である「資産の三分法」とは? 「資産の三分法」とは、資産を異なる性質を持った3つの資産に分けて保有するという手法です。以下がその3つです。 株式(投資信託や債券なども含む) 預貯金(現金) 不動産 この3つは別々の値動きを取ることが多く、価格変動を互いに補って緩和することが可能です。株や不動産の価格が下落しても、手持ちの現金があれば性急に売却する必要がありません。 また、「手持ちの現金があれば、値下がりした株や不動産を買い足して将来の値上がりに備える」といったプランを実行できます。あるいは、インフレになれば現金の価値は下落しますが、株や不動産はインフレでも価値が下がりにくく、現金の弱点を補うことができます。 3つの資産をどのような割合で保有したらよいのかという点についてですが、資産の配分比率は各個人の投資目的やリスク許容度、市場状況などにも左右されるため、誰にとっても最適な比率というものはありません。それぞれのライフプランに添って最適な配分を検討し選択していきましょう。 3つの資産を併せ持つメリット 異なる3つの資産を併せ持つことで以下のメリットを得られます。 1. リスクを分散できる 資産を前述した3グループに分けることで、それぞれのグループで価値の下落が起きた場合でも、互いに補って損失を緩和することが可能です。 2. 長期的な資産形成に適している 資産の三分法は長期的な資産形成に適しています。預貯金(普通預金や定期預金など)による運用はリスクが低い反面、高い利回りは期待できません。一方で、株式や不動産への投資は価格変動がある分、預貯金と比べリスクが高いですが、高いリターンも期待できます。 長期的に安定して利益を得るには、このように資産の三分法を活用してリスクとリターンのバランスを取ることが重要です。 3. インフレ・デフレのリスクに備えられる インフレが起きると、現金の実質的な価値が下がりますが、土地や株式は物価の上昇に合わせて価格が上がる傾向があります。このため、土地や株式を保有することは、インフレに対するリスクヘッジとしては有効です。逆にデフレの局面では、物価が下がり現金の価値が高まるため、現金を多く保有していることが大きな安心材料になります。 資産の三分法における注意点 資産の三分法は、資産を分散することでリスクを減らす手法ですが、逆に1点に集中していた場合に比べ利益率も低くなる可能性があります。預貯金に回していた資産を株式の購入に投じていれば大きな利益を得られたという局面があるかもしれません。 また、資産を別々の種類で保有することで、資産管理の手間が増大して管理運用に手が回らなくなったり、資産の全体像が見えにくくなったりする恐れもあります。
日本の1世帯あたりの金融資産保有額の平均値と中央値はそれぞれいくらですか。
日本の1世帯あたりの金融資産保有額の平均値と中央値は、平均値が1,150万円、中央値が280万円です。
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金融
日本と世界の金融資産の保有割合 上記で紹介したとおり、金融資産には預貯金や株式、債券などがありますが、日本ではこれらの金融資産をどのような割合で保有しているのでしょうか。また、GDPランキング世界一の経済大国である米国ではどうなっているのでしょうか。以下では日本と米国、ユーロ圏が保有する各金融資産の割合を紹介します。 日本の金融資産の保有割合 日本銀行調査統計局が2022年8月に公開した資料「資金循環の日米欧比較」によると、日本の家計に占める金融資産の構成は以下のとおりです。 【日本】 現金・預金:54.3% 債務証券:1.3% 投資信託:4.5% 株式等:10.2% 保険・年金・定型保証:26.9% その他:2.8% 日本の金融資産の保有割合は過半数が預貯金であり、保守的な傾向が顕著です。また、個人資産が極端に預貯金に偏っていると、市中にお金が出回らず、経済の停滞を招くことにもなります。 家計が保有している莫大な金融資産を市場に開放すること、また、少子高齢化で年金制度の維持が厳しくなっているなかで個人の資産形成を進めることを目標に、日本政府は税制優遇などで投資による資産運用を推奨するようになっています。 米国やユーロ圏の金融資産の保有割合 米国とユーロ圏の金融資産の保有割合は以下のようになっています。 【米国】 現金・預金:13.7% 債務証券:2.6% 投資信託:12.6% 株式等:39.8% 保険・年金・定型保証:28.6% その他:2.8% 【ユーロ圏】 現金・預金:34.5% 債務証券:1.6% 投資信託:10.4% 株式等:19.5% 保険・年金・定型保証:31.9% その他:2.1% 全般的な傾向として、米国は日本とは反対に投資へ非常に積極的で、現金・預金の3倍近くの額を株式投資に充てています。ユーロ圏は株式に関しては日本と米国の中間という印象ですが、保険・年金・定型保証の保有割合は全体の3割弱と日本や米国とほぼ同程度と言えます。 日本人の金融資産保有額はどのくらい? 続いて、日本銀行情報サービス局内の金融広報中央委員会が2022年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」に基づいて、日本における金融資産保有額の状況を解説します。自分と似た世帯の傾向を参考にしてみてはいかがでしょうか。なお、以下で紹介するのは金融資産を持っていない世帯も含めた統計です。 1世帯あたりの金融資産保有額 金融広報中央委員会が2022年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査令和4年」(総世帯)によると、日本の1世帯あたりの金融資産保有額は以下のとおりです。 なお、中央値とは、データを昇順または降順に並べた場合に真ん中になる数値です。極端な富裕層の存在が平均値を大きく押し上げていることもあり、より実態に近いのは中央値であると考えられています。 1世帯あたりの金融資産保有額(全国) 平均値:1,150万円 中央値:280万円 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の年齢別】 世帯主の年齢別で見た場合、基本的に年齢が高くなるほど金融資産の保有額が上がる傾向にあります。若い世代は賃金が低かったり、資産形成の期間が十分ではなかったり、子育てや住宅の購入などで大きな出費が生じたりすることが影響しているとみられます。60代、70代の保有額が上がっているのは、退職金の影響と考えられます。 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の就業先産業別】 金融資産の保有額は、世帯主の就業先の産業によっても大きく異なります。一番低いのは「宿泊業、飲食サービス業」で、中央値では30万円、平均値でも469万円です。他方で「公務、教育、電気水道業」は平均値1,442万円、中央値500万円でどちらもトップです。その他に、「製造業」が平均値1,085万円、中央値で300万円と高めです。 1世帯あたりの金融資産保有額【年収別】 年収別では高収入世帯ほど金融資産の保有額が多いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【持家別】 住居が持家か持家でないかの点で比較した場合、平均値・中央値ともに持家を所有している層の方が大幅に高いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【地域別】 地域別で見ると、平均値では首都圏を含む関東地方が1,325万円、中央値では名古屋がある中部地方が348万円でそれぞれトップです。関東・中部と並ぶ3大都市圏の近畿地方は平均値1,216万円・中央値300万円でともに3位、平均値では北陸地方が1,182万円で4位、中央値では中国地方が270万円で4位です。 自分が保有している金融資産を確認する方法 将来のライフプランを立てて資産形成に取り組むなら、自分が保有している金融資産について把握しておくことが必要です。金融資産の全体像を可視化すれば、現金のまま保有する資産の額と、株式などに投資する資産の額を決めて、リスクヘッジしながら資産ポートフォリオを組めるようになります。 金融資産が預貯金だけであれば、お金を預けている銀行の通帳や、スマートフォンアプリなどでインターネットバンキングを閲覧することで総額が確認できるので簡単です。金融機関によっては投資信託の残高などもスマートフォンアプリ(インターネットバンキング)で確認できます。 インターネットを使わない場合は、金融機関から送付される「取引残高報告書」でも資産評価額の確認ができます。 また、生命保険の積立金や株の評価額なども、最近ではインターネットで情報を取得できるケースが大半です。 確認した金融資産保有額の情報は、Excelシートなどに集約して一括管理する方法もありますが、最近では資産管理用のアプリなどもリリースされているので、そうしたツールを活用して管理作業を効率化するのもおすすめです。 投資の法則である「資産の三分法」とは? 「資産の三分法」とは、資産を異なる性質を持った3つの資産に分けて保有するという手法です。以下がその3つです。 株式(投資信託や債券なども含む) 預貯金(現金) 不動産 この3つは別々の値動きを取ることが多く、価格変動を互いに補って緩和することが可能です。株や不動産の価格が下落しても、手持ちの現金があれば性急に売却する必要がありません。 また、「手持ちの現金があれば、値下がりした株や不動産を買い足して将来の値上がりに備える」といったプランを実行できます。あるいは、インフレになれば現金の価値は下落しますが、株や不動産はインフレでも価値が下がりにくく、現金の弱点を補うことができます。 3つの資産をどのような割合で保有したらよいのかという点についてですが、資産の配分比率は各個人の投資目的やリスク許容度、市場状況などにも左右されるため、誰にとっても最適な比率というものはありません。それぞれのライフプランに添って最適な配分を検討し選択していきましょう。 3つの資産を併せ持つメリット 異なる3つの資産を併せ持つことで以下のメリットを得られます。 1. リスクを分散できる 資産を前述した3グループに分けることで、それぞれのグループで価値の下落が起きた場合でも、互いに補って損失を緩和することが可能です。 2. 長期的な資産形成に適している 資産の三分法は長期的な資産形成に適しています。預貯金(普通預金や定期預金など)による運用はリスクが低い反面、高い利回りは期待できません。一方で、株式や不動産への投資は価格変動がある分、預貯金と比べリスクが高いですが、高いリターンも期待できます。 長期的に安定して利益を得るには、このように資産の三分法を活用してリスクとリターンのバランスを取ることが重要です。 3. インフレ・デフレのリスクに備えられる インフレが起きると、現金の実質的な価値が下がりますが、土地や株式は物価の上昇に合わせて価格が上がる傾向があります。このため、土地や株式を保有することは、インフレに対するリスクヘッジとしては有効です。逆にデフレの局面では、物価が下がり現金の価値が高まるため、現金を多く保有していることが大きな安心材料になります。 資産の三分法における注意点 資産の三分法は、資産を分散することでリスクを減らす手法ですが、逆に1点に集中していた場合に比べ利益率も低くなる可能性があります。預貯金に回していた資産を株式の購入に投じていれば大きな利益を得られたという局面があるかもしれません。 また、資産を別々の種類で保有することで、資産管理の手間が増大して管理運用に手が回らなくなったり、資産の全体像が見えにくくなったりする恐れもあります。
地域別で金融資産保有額の中央値が最も高い地域はどこですか。
地域別で金融資産保有額の中央値が最も高い地域は、名古屋がある中部地方が348万円でトップです。
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金融
日本と世界の金融資産の保有割合 上記で紹介したとおり、金融資産には預貯金や株式、債券などがありますが、日本ではこれらの金融資産をどのような割合で保有しているのでしょうか。また、GDPランキング世界一の経済大国である米国ではどうなっているのでしょうか。以下では日本と米国、ユーロ圏が保有する各金融資産の割合を紹介します。 日本の金融資産の保有割合 日本銀行調査統計局が2022年8月に公開した資料「資金循環の日米欧比較」によると、日本の家計に占める金融資産の構成は以下のとおりです。 【日本】 現金・預金:54.3% 債務証券:1.3% 投資信託:4.5% 株式等:10.2% 保険・年金・定型保証:26.9% その他:2.8% 日本の金融資産の保有割合は過半数が預貯金であり、保守的な傾向が顕著です。また、個人資産が極端に預貯金に偏っていると、市中にお金が出回らず、経済の停滞を招くことにもなります。 家計が保有している莫大な金融資産を市場に開放すること、また、少子高齢化で年金制度の維持が厳しくなっているなかで個人の資産形成を進めることを目標に、日本政府は税制優遇などで投資による資産運用を推奨するようになっています。 米国やユーロ圏の金融資産の保有割合 米国とユーロ圏の金融資産の保有割合は以下のようになっています。 【米国】 現金・預金:13.7% 債務証券:2.6% 投資信託:12.6% 株式等:39.8% 保険・年金・定型保証:28.6% その他:2.8% 【ユーロ圏】 現金・預金:34.5% 債務証券:1.6% 投資信託:10.4% 株式等:19.5% 保険・年金・定型保証:31.9% その他:2.1% 全般的な傾向として、米国は日本とは反対に投資へ非常に積極的で、現金・預金の3倍近くの額を株式投資に充てています。ユーロ圏は株式に関しては日本と米国の中間という印象ですが、保険・年金・定型保証の保有割合は全体の3割弱と日本や米国とほぼ同程度と言えます。 日本人の金融資産保有額はどのくらい? 続いて、日本銀行情報サービス局内の金融広報中央委員会が2022年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」に基づいて、日本における金融資産保有額の状況を解説します。自分と似た世帯の傾向を参考にしてみてはいかがでしょうか。なお、以下で紹介するのは金融資産を持っていない世帯も含めた統計です。 1世帯あたりの金融資産保有額 金融広報中央委員会が2022年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査令和4年」(総世帯)によると、日本の1世帯あたりの金融資産保有額は以下のとおりです。 なお、中央値とは、データを昇順または降順に並べた場合に真ん中になる数値です。極端な富裕層の存在が平均値を大きく押し上げていることもあり、より実態に近いのは中央値であると考えられています。 1世帯あたりの金融資産保有額(全国) 平均値:1,150万円 中央値:280万円 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の年齢別】 世帯主の年齢別で見た場合、基本的に年齢が高くなるほど金融資産の保有額が上がる傾向にあります。若い世代は賃金が低かったり、資産形成の期間が十分ではなかったり、子育てや住宅の購入などで大きな出費が生じたりすることが影響しているとみられます。60代、70代の保有額が上がっているのは、退職金の影響と考えられます。 1世帯あたりの金融資産保有額【世帯主の就業先産業別】 金融資産の保有額は、世帯主の就業先の産業によっても大きく異なります。一番低いのは「宿泊業、飲食サービス業」で、中央値では30万円、平均値でも469万円です。他方で「公務、教育、電気水道業」は平均値1,442万円、中央値500万円でどちらもトップです。その他に、「製造業」が平均値1,085万円、中央値で300万円と高めです。 1世帯あたりの金融資産保有額【年収別】 年収別では高収入世帯ほど金融資産の保有額が多いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【持家別】 住居が持家か持家でないかの点で比較した場合、平均値・中央値ともに持家を所有している層の方が大幅に高いという結果になっています。 1世帯あたりの金融資産保有額【地域別】 地域別で見ると、平均値では首都圏を含む関東地方が1,325万円、中央値では名古屋がある中部地方が348万円でそれぞれトップです。関東・中部と並ぶ3大都市圏の近畿地方は平均値1,216万円・中央値300万円でともに3位、平均値では北陸地方が1,182万円で4位、中央値では中国地方が270万円で4位です。 自分が保有している金融資産を確認する方法 将来のライフプランを立てて資産形成に取り組むなら、自分が保有している金融資産について把握しておくことが必要です。金融資産の全体像を可視化すれば、現金のまま保有する資産の額と、株式などに投資する資産の額を決めて、リスクヘッジしながら資産ポートフォリオを組めるようになります。 金融資産が預貯金だけであれば、お金を預けている銀行の通帳や、スマートフォンアプリなどでインターネットバンキングを閲覧することで総額が確認できるので簡単です。金融機関によっては投資信託の残高などもスマートフォンアプリ(インターネットバンキング)で確認できます。 インターネットを使わない場合は、金融機関から送付される「取引残高報告書」でも資産評価額の確認ができます。 また、生命保険の積立金や株の評価額なども、最近ではインターネットで情報を取得できるケースが大半です。 確認した金融資産保有額の情報は、Excelシートなどに集約して一括管理する方法もありますが、最近では資産管理用のアプリなどもリリースされているので、そうしたツールを活用して管理作業を効率化するのもおすすめです。 投資の法則である「資産の三分法」とは? 「資産の三分法」とは、資産を異なる性質を持った3つの資産に分けて保有するという手法です。以下がその3つです。 株式(投資信託や債券なども含む) 預貯金(現金) 不動産 この3つは別々の値動きを取ることが多く、価格変動を互いに補って緩和することが可能です。株や不動産の価格が下落しても、手持ちの現金があれば性急に売却する必要がありません。 また、「手持ちの現金があれば、値下がりした株や不動産を買い足して将来の値上がりに備える」といったプランを実行できます。あるいは、インフレになれば現金の価値は下落しますが、株や不動産はインフレでも価値が下がりにくく、現金の弱点を補うことができます。 3つの資産をどのような割合で保有したらよいのかという点についてですが、資産の配分比率は各個人の投資目的やリスク許容度、市場状況などにも左右されるため、誰にとっても最適な比率というものはありません。それぞれのライフプランに添って最適な配分を検討し選択していきましょう。 3つの資産を併せ持つメリット 異なる3つの資産を併せ持つことで以下のメリットを得られます。 1. リスクを分散できる 資産を前述した3グループに分けることで、それぞれのグループで価値の下落が起きた場合でも、互いに補って損失を緩和することが可能です。 2. 長期的な資産形成に適している 資産の三分法は長期的な資産形成に適しています。預貯金(普通預金や定期預金など)による運用はリスクが低い反面、高い利回りは期待できません。一方で、株式や不動産への投資は価格変動がある分、預貯金と比べリスクが高いですが、高いリターンも期待できます。 長期的に安定して利益を得るには、このように資産の三分法を活用してリスクとリターンのバランスを取ることが重要です。 3. インフレ・デフレのリスクに備えられる インフレが起きると、現金の実質的な価値が下がりますが、土地や株式は物価の上昇に合わせて価格が上がる傾向があります。このため、土地や株式を保有することは、インフレに対するリスクヘッジとしては有効です。逆にデフレの局面では、物価が下がり現金の価値が高まるため、現金を多く保有していることが大きな安心材料になります。 資産の三分法における注意点 資産の三分法は、資産を分散することでリスクを減らす手法ですが、逆に1点に集中していた場合に比べ利益率も低くなる可能性があります。預貯金に回していた資産を株式の購入に投じていれば大きな利益を得られたという局面があるかもしれません。 また、資産を別々の種類で保有することで、資産管理の手間が増大して管理運用に手が回らなくなったり、資産の全体像が見えにくくなったりする恐れもあります。
「資産の三分法」とはなんですか。
「資産の三分法」とは、資産を異なる性質を持った3つの資産に分けて保有するという手法です。
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金融
政策金利とは? 政策金利とは、各国の中央銀行が景気や物価の安定を図るために行う金融政策のひとつである、短期金利(誘導目標金利)のことだ。 中央銀行は政策金利に基づいて市中銀行に貸付を行い、景気や物価の変動に応じて政策金利を上げたり下げたりする。 ちなみに、景気を刺激するために行われる「金融緩和」と、景気の過熱を抑制するために行われる「金融引き締め」がある。 政策金利はどのような影響を与える? 政策金利の変動は、金融機関の預金金利や貸出金利から投資市場、ビジネス、消費まで広範囲に影響を及ぼす。特に米国の政策金利動向は、世界経済から資産価格まで広範囲に影響を与える重要な指標として注目されている。 政策金利が上昇すると中央銀行からの借入コストが上がるため、金融機関は個人や企業への融資の金利を引き上げる。すると借入や消費が抑えられ、経済活動が抑制される。これにより、景気過熱によるインフレ(物価上昇)を抑える効果が期待できる。 一方、政策金利が低下すると金融機関は低い金利で中央銀行から借入ができるため、個人や企業への融資の金利も下がる。社債の金利も低下するため、企業は資金を調達しやすくなり、個人も住宅や車などの購入資金を借りやすくなる。すると経済活動が活発になり、物価と景気に押し上げ圧力がかかる。 金利が上がると株価が下がりやすいのは、「融資の金利が上がる=企業の業績悪化の要因になる」と投資家が考えるからだ。 金利政策は為替相場にも影響する。例えば、米国の金利が上がると米ドルが買われるので、円安ドル高に傾く。そうなると日本から米国への輸出には有利だが、米国から日本への輸入ではコストが上昇する。 コロナ禍で世界的に利上げ基調 1990年代前半に日本で起こった日本のバブル崩壊や、2008年のリーマンショックを発端とした世界金融危機以降、日本や欧米では超低金利政策と量的緩和政策が長期化している。そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。 原油価格の高騰やコロナ禍の供給・人手不足、景気刺激策などを背景に世界的なインフレが加速している今、欧米やカナダ、韓国など多くの国が利上げ基調に転じている。 極端な例を挙げると、ウクライナ侵攻で自国通貨ルーブルが暴落したロシアでは、約20年ぶりに政策金利が20%台に引き上げられた。2ヵ月連続で利上げを行ったアルゼンチンでは、政策金利が42.5%に達している。 一方、4ヵ月間で政策金利を19%から14%に引き下げるという、異例の金融政策に踏み切ったトルコのような国もある。 米国・欧州・日本の政策金利 ここからは、コロナ禍で経済回復を目指す米国、欧州、日本の政策金利の動向を見てみよう。 米国 年内に数回の利上げ実施? 2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年比7.0%と、第2次石油危機以来の歴史的なインフレを記録した米国では、金融引き締めが予想されている。 FRB(米連邦準備理事会)は対コロナショックとして実施していた量的金融緩和を打ち切り、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げた。さらに、年内に向けて数回の利上げが実施されるとの見方が強い。「2023年末までに2.125%に達する可能性がある」と、FRB幹部のうち3人が予想している。 欧州ゼロ金利据え置き 英国は2回連続で利上げ実施 欧州中央銀行(ECB)は引き続きゼロ金利政策を維持しているが、米国と同じくインフレ懸念から政策変更を余儀なくされるだろう。ユーロ圏19ヵ国の2021年12月のインフレ率は過去最高で、前年同月比5.0%を記録した。 英国は2021年12月の消費者物価指数が前年同月比で5.4%上昇と、30年ぶりの高水準となり、イングランド銀行が2021年12月、2022年2月と2回連続で金利を0.5%まで引き上げた。 日本 2023年についに利上げ? 日本は1995年に日銀が政策金利を1.75%から1.0%、さらに0.5%に引き下げ、1999年から2000年までゼロ金利政策を実施した。2016年以降は経済活性化とデフレ脱却を目指し、マイナス金利を導入している。 日本の2021年12月のCPIは前年同月比0.5%と、欧米とは比べものにならないほど上昇が小幅だが、欧米の利上げが飛び火し、2023年春以降は日本も金融引き締めに転じる可能性がある。 政策金利を注視し、経済の先行きを予想する このように世界の政策金利は定期的に見直され、各国の状況に応じて変動している。各国、ひいては世界全体の状況を把握し、経済の先行きを予想する上で、政策金利は重要な指標になる。
政策金利とはなんですか。
政策金利とは、各国の中央銀行が景気や物価の安定を図るために行う金融政策のひとつである、短期金利(誘導目標金利)のことです。
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金融
政策金利とは? 政策金利とは、各国の中央銀行が景気や物価の安定を図るために行う金融政策のひとつである、短期金利(誘導目標金利)のことだ。 中央銀行は政策金利に基づいて市中銀行に貸付を行い、景気や物価の変動に応じて政策金利を上げたり下げたりする。 ちなみに、景気を刺激するために行われる「金融緩和」と、景気の過熱を抑制するために行われる「金融引き締め」がある。 政策金利はどのような影響を与える? 政策金利の変動は、金融機関の預金金利や貸出金利から投資市場、ビジネス、消費まで広範囲に影響を及ぼす。特に米国の政策金利動向は、世界経済から資産価格まで広範囲に影響を与える重要な指標として注目されている。 政策金利が上昇すると中央銀行からの借入コストが上がるため、金融機関は個人や企業への融資の金利を引き上げる。すると借入や消費が抑えられ、経済活動が抑制される。これにより、景気過熱によるインフレ(物価上昇)を抑える効果が期待できる。 一方、政策金利が低下すると金融機関は低い金利で中央銀行から借入ができるため、個人や企業への融資の金利も下がる。社債の金利も低下するため、企業は資金を調達しやすくなり、個人も住宅や車などの購入資金を借りやすくなる。すると経済活動が活発になり、物価と景気に押し上げ圧力がかかる。 金利が上がると株価が下がりやすいのは、「融資の金利が上がる=企業の業績悪化の要因になる」と投資家が考えるからだ。 金利政策は為替相場にも影響する。例えば、米国の金利が上がると米ドルが買われるので、円安ドル高に傾く。そうなると日本から米国への輸出には有利だが、米国から日本への輸入ではコストが上昇する。 コロナ禍で世界的に利上げ基調 1990年代前半に日本で起こった日本のバブル崩壊や、2008年のリーマンショックを発端とした世界金融危機以降、日本や欧米では超低金利政策と量的緩和政策が長期化している。そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。 原油価格の高騰やコロナ禍の供給・人手不足、景気刺激策などを背景に世界的なインフレが加速している今、欧米やカナダ、韓国など多くの国が利上げ基調に転じている。 極端な例を挙げると、ウクライナ侵攻で自国通貨ルーブルが暴落したロシアでは、約20年ぶりに政策金利が20%台に引き上げられた。2ヵ月連続で利上げを行ったアルゼンチンでは、政策金利が42.5%に達している。 一方、4ヵ月間で政策金利を19%から14%に引き下げるという、異例の金融政策に踏み切ったトルコのような国もある。 米国・欧州・日本の政策金利 ここからは、コロナ禍で経済回復を目指す米国、欧州、日本の政策金利の動向を見てみよう。 米国 年内に数回の利上げ実施? 2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年比7.0%と、第2次石油危機以来の歴史的なインフレを記録した米国では、金融引き締めが予想されている。 FRB(米連邦準備理事会)は対コロナショックとして実施していた量的金融緩和を打ち切り、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げた。さらに、年内に向けて数回の利上げが実施されるとの見方が強い。「2023年末までに2.125%に達する可能性がある」と、FRB幹部のうち3人が予想している。 欧州ゼロ金利据え置き 英国は2回連続で利上げ実施 欧州中央銀行(ECB)は引き続きゼロ金利政策を維持しているが、米国と同じくインフレ懸念から政策変更を余儀なくされるだろう。ユーロ圏19ヵ国の2021年12月のインフレ率は過去最高で、前年同月比5.0%を記録した。 英国は2021年12月の消費者物価指数が前年同月比で5.4%上昇と、30年ぶりの高水準となり、イングランド銀行が2021年12月、2022年2月と2回連続で金利を0.5%まで引き上げた。 日本 2023年についに利上げ? 日本は1995年に日銀が政策金利を1.75%から1.0%、さらに0.5%に引き下げ、1999年から2000年までゼロ金利政策を実施した。2016年以降は経済活性化とデフレ脱却を目指し、マイナス金利を導入している。 日本の2021年12月のCPIは前年同月比0.5%と、欧米とは比べものにならないほど上昇が小幅だが、欧米の利上げが飛び火し、2023年春以降は日本も金融引き締めに転じる可能性がある。 政策金利を注視し、経済の先行きを予想する このように世界の政策金利は定期的に見直され、各国の状況に応じて変動している。各国、ひいては世界全体の状況を把握し、経済の先行きを予想する上で、政策金利は重要な指標になる。
政策金利が上昇した場合、経済活動にはどのような影響があるか。
政策金利が上昇した場合、中央銀行からの借入コストが上がるため、金融機関は個人や企業への融資の金利を引き上げます。すると借入や消費が抑えられ、経済活動が抑制されます。
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金融
政策金利とは? 政策金利とは、各国の中央銀行が景気や物価の安定を図るために行う金融政策のひとつである、短期金利(誘導目標金利)のことだ。 中央銀行は政策金利に基づいて市中銀行に貸付を行い、景気や物価の変動に応じて政策金利を上げたり下げたりする。 ちなみに、景気を刺激するために行われる「金融緩和」と、景気の過熱を抑制するために行われる「金融引き締め」がある。 政策金利はどのような影響を与える? 政策金利の変動は、金融機関の預金金利や貸出金利から投資市場、ビジネス、消費まで広範囲に影響を及ぼす。特に米国の政策金利動向は、世界経済から資産価格まで広範囲に影響を与える重要な指標として注目されている。 政策金利が上昇すると中央銀行からの借入コストが上がるため、金融機関は個人や企業への融資の金利を引き上げる。すると借入や消費が抑えられ、経済活動が抑制される。これにより、景気過熱によるインフレ(物価上昇)を抑える効果が期待できる。 一方、政策金利が低下すると金融機関は低い金利で中央銀行から借入ができるため、個人や企業への融資の金利も下がる。社債の金利も低下するため、企業は資金を調達しやすくなり、個人も住宅や車などの購入資金を借りやすくなる。すると経済活動が活発になり、物価と景気に押し上げ圧力がかかる。 金利が上がると株価が下がりやすいのは、「融資の金利が上がる=企業の業績悪化の要因になる」と投資家が考えるからだ。 金利政策は為替相場にも影響する。例えば、米国の金利が上がると米ドルが買われるので、円安ドル高に傾く。そうなると日本から米国への輸出には有利だが、米国から日本への輸入ではコストが上昇する。 コロナ禍で世界的に利上げ基調 1990年代前半に日本で起こった日本のバブル崩壊や、2008年のリーマンショックを発端とした世界金融危機以降、日本や欧米では超低金利政策と量的緩和政策が長期化している。そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。 原油価格の高騰やコロナ禍の供給・人手不足、景気刺激策などを背景に世界的なインフレが加速している今、欧米やカナダ、韓国など多くの国が利上げ基調に転じている。 極端な例を挙げると、ウクライナ侵攻で自国通貨ルーブルが暴落したロシアでは、約20年ぶりに政策金利が20%台に引き上げられた。2ヵ月連続で利上げを行ったアルゼンチンでは、政策金利が42.5%に達している。 一方、4ヵ月間で政策金利を19%から14%に引き下げるという、異例の金融政策に踏み切ったトルコのような国もある。 米国・欧州・日本の政策金利 ここからは、コロナ禍で経済回復を目指す米国、欧州、日本の政策金利の動向を見てみよう。 米国 年内に数回の利上げ実施? 2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年比7.0%と、第2次石油危機以来の歴史的なインフレを記録した米国では、金融引き締めが予想されている。 FRB(米連邦準備理事会)は対コロナショックとして実施していた量的金融緩和を打ち切り、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げた。さらに、年内に向けて数回の利上げが実施されるとの見方が強い。「2023年末までに2.125%に達する可能性がある」と、FRB幹部のうち3人が予想している。 欧州ゼロ金利据え置き 英国は2回連続で利上げ実施 欧州中央銀行(ECB)は引き続きゼロ金利政策を維持しているが、米国と同じくインフレ懸念から政策変更を余儀なくされるだろう。ユーロ圏19ヵ国の2021年12月のインフレ率は過去最高で、前年同月比5.0%を記録した。 英国は2021年12月の消費者物価指数が前年同月比で5.4%上昇と、30年ぶりの高水準となり、イングランド銀行が2021年12月、2022年2月と2回連続で金利を0.5%まで引き上げた。 日本 2023年についに利上げ? 日本は1995年に日銀が政策金利を1.75%から1.0%、さらに0.5%に引き下げ、1999年から2000年までゼロ金利政策を実施した。2016年以降は経済活性化とデフレ脱却を目指し、マイナス金利を導入している。 日本の2021年12月のCPIは前年同月比0.5%と、欧米とは比べものにならないほど上昇が小幅だが、欧米の利上げが飛び火し、2023年春以降は日本も金融引き締めに転じる可能性がある。 政策金利を注視し、経済の先行きを予想する このように世界の政策金利は定期的に見直され、各国の状況に応じて変動している。各国、ひいては世界全体の状況を把握し、経済の先行きを予想する上で、政策金利は重要な指標になる。
ロシアはウクライナ侵攻による通貨の暴落を受けて政策金利をどうしましたか。
ロシアはウクライナ侵攻による通貨の暴落を受けて、約20年ぶりに政策金利が20%台に引き上げられました。
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金融
政策金利とは? 政策金利とは、各国の中央銀行が景気や物価の安定を図るために行う金融政策のひとつである、短期金利(誘導目標金利)のことだ。 中央銀行は政策金利に基づいて市中銀行に貸付を行い、景気や物価の変動に応じて政策金利を上げたり下げたりする。 ちなみに、景気を刺激するために行われる「金融緩和」と、景気の過熱を抑制するために行われる「金融引き締め」がある。 政策金利はどのような影響を与える? 政策金利の変動は、金融機関の預金金利や貸出金利から投資市場、ビジネス、消費まで広範囲に影響を及ぼす。特に米国の政策金利動向は、世界経済から資産価格まで広範囲に影響を与える重要な指標として注目されている。 政策金利が上昇すると中央銀行からの借入コストが上がるため、金融機関は個人や企業への融資の金利を引き上げる。すると借入や消費が抑えられ、経済活動が抑制される。これにより、景気過熱によるインフレ(物価上昇)を抑える効果が期待できる。 一方、政策金利が低下すると金融機関は低い金利で中央銀行から借入ができるため、個人や企業への融資の金利も下がる。社債の金利も低下するため、企業は資金を調達しやすくなり、個人も住宅や車などの購入資金を借りやすくなる。すると経済活動が活発になり、物価と景気に押し上げ圧力がかかる。 金利が上がると株価が下がりやすいのは、「融資の金利が上がる=企業の業績悪化の要因になる」と投資家が考えるからだ。 金利政策は為替相場にも影響する。例えば、米国の金利が上がると米ドルが買われるので、円安ドル高に傾く。そうなると日本から米国への輸出には有利だが、米国から日本への輸入ではコストが上昇する。 コロナ禍で世界的に利上げ基調 1990年代前半に日本で起こった日本のバブル崩壊や、2008年のリーマンショックを発端とした世界金融危機以降、日本や欧米では超低金利政策と量的緩和政策が長期化している。そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。 原油価格の高騰やコロナ禍の供給・人手不足、景気刺激策などを背景に世界的なインフレが加速している今、欧米やカナダ、韓国など多くの国が利上げ基調に転じている。 極端な例を挙げると、ウクライナ侵攻で自国通貨ルーブルが暴落したロシアでは、約20年ぶりに政策金利が20%台に引き上げられた。2ヵ月連続で利上げを行ったアルゼンチンでは、政策金利が42.5%に達している。 一方、4ヵ月間で政策金利を19%から14%に引き下げるという、異例の金融政策に踏み切ったトルコのような国もある。 米国・欧州・日本の政策金利 ここからは、コロナ禍で経済回復を目指す米国、欧州、日本の政策金利の動向を見てみよう。 米国 年内に数回の利上げ実施? 2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年比7.0%と、第2次石油危機以来の歴史的なインフレを記録した米国では、金融引き締めが予想されている。 FRB(米連邦準備理事会)は対コロナショックとして実施していた量的金融緩和を打ち切り、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げた。さらに、年内に向けて数回の利上げが実施されるとの見方が強い。「2023年末までに2.125%に達する可能性がある」と、FRB幹部のうち3人が予想している。 欧州ゼロ金利据え置き 英国は2回連続で利上げ実施 欧州中央銀行(ECB)は引き続きゼロ金利政策を維持しているが、米国と同じくインフレ懸念から政策変更を余儀なくされるだろう。ユーロ圏19ヵ国の2021年12月のインフレ率は過去最高で、前年同月比5.0%を記録した。 英国は2021年12月の消費者物価指数が前年同月比で5.4%上昇と、30年ぶりの高水準となり、イングランド銀行が2021年12月、2022年2月と2回連続で金利を0.5%まで引き上げた。 日本 2023年についに利上げ? 日本は1995年に日銀が政策金利を1.75%から1.0%、さらに0.5%に引き下げ、1999年から2000年までゼロ金利政策を実施した。2016年以降は経済活性化とデフレ脱却を目指し、マイナス金利を導入している。 日本の2021年12月のCPIは前年同月比0.5%と、欧米とは比べものにならないほど上昇が小幅だが、欧米の利上げが飛び火し、2023年春以降は日本も金融引き締めに転じる可能性がある。 政策金利を注視し、経済の先行きを予想する このように世界の政策金利は定期的に見直され、各国の状況に応じて変動している。各国、ひいては世界全体の状況を把握し、経済の先行きを予想する上で、政策金利は重要な指標になる。
2022年3月、米国のFRBはFOMC(連邦公開市場委員会)において、政策金利をどのように変更しましたか。
2022年3月、米国のFRBはFOMC(連邦公開市場委員会)において、政策金利を0.25%引き上げました。
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金融
政策金利とは? 政策金利とは、各国の中央銀行が景気や物価の安定を図るために行う金融政策のひとつである、短期金利(誘導目標金利)のことだ。 中央銀行は政策金利に基づいて市中銀行に貸付を行い、景気や物価の変動に応じて政策金利を上げたり下げたりする。 ちなみに、景気を刺激するために行われる「金融緩和」と、景気の過熱を抑制するために行われる「金融引き締め」がある。 政策金利はどのような影響を与える? 政策金利の変動は、金融機関の預金金利や貸出金利から投資市場、ビジネス、消費まで広範囲に影響を及ぼす。特に米国の政策金利動向は、世界経済から資産価格まで広範囲に影響を与える重要な指標として注目されている。 政策金利が上昇すると中央銀行からの借入コストが上がるため、金融機関は個人や企業への融資の金利を引き上げる。すると借入や消費が抑えられ、経済活動が抑制される。これにより、景気過熱によるインフレ(物価上昇)を抑える効果が期待できる。 一方、政策金利が低下すると金融機関は低い金利で中央銀行から借入ができるため、個人や企業への融資の金利も下がる。社債の金利も低下するため、企業は資金を調達しやすくなり、個人も住宅や車などの購入資金を借りやすくなる。すると経済活動が活発になり、物価と景気に押し上げ圧力がかかる。 金利が上がると株価が下がりやすいのは、「融資の金利が上がる=企業の業績悪化の要因になる」と投資家が考えるからだ。 金利政策は為替相場にも影響する。例えば、米国の金利が上がると米ドルが買われるので、円安ドル高に傾く。そうなると日本から米国への輸出には有利だが、米国から日本への輸入ではコストが上昇する。 コロナ禍で世界的に利上げ基調 1990年代前半に日本で起こった日本のバブル崩壊や、2008年のリーマンショックを発端とした世界金融危機以降、日本や欧米では超低金利政策と量的緩和政策が長期化している。そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。 原油価格の高騰やコロナ禍の供給・人手不足、景気刺激策などを背景に世界的なインフレが加速している今、欧米やカナダ、韓国など多くの国が利上げ基調に転じている。 極端な例を挙げると、ウクライナ侵攻で自国通貨ルーブルが暴落したロシアでは、約20年ぶりに政策金利が20%台に引き上げられた。2ヵ月連続で利上げを行ったアルゼンチンでは、政策金利が42.5%に達している。 一方、4ヵ月間で政策金利を19%から14%に引き下げるという、異例の金融政策に踏み切ったトルコのような国もある。 米国・欧州・日本の政策金利 ここからは、コロナ禍で経済回復を目指す米国、欧州、日本の政策金利の動向を見てみよう。 米国 年内に数回の利上げ実施? 2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年比7.0%と、第2次石油危機以来の歴史的なインフレを記録した米国では、金融引き締めが予想されている。 FRB(米連邦準備理事会)は対コロナショックとして実施していた量的金融緩和を打ち切り、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げた。さらに、年内に向けて数回の利上げが実施されるとの見方が強い。「2023年末までに2.125%に達する可能性がある」と、FRB幹部のうち3人が予想している。 欧州ゼロ金利据え置き 英国は2回連続で利上げ実施 欧州中央銀行(ECB)は引き続きゼロ金利政策を維持しているが、米国と同じくインフレ懸念から政策変更を余儀なくされるだろう。ユーロ圏19ヵ国の2021年12月のインフレ率は過去最高で、前年同月比5.0%を記録した。 英国は2021年12月の消費者物価指数が前年同月比で5.4%上昇と、30年ぶりの高水準となり、イングランド銀行が2021年12月、2022年2月と2回連続で金利を0.5%まで引き上げた。 日本 2023年についに利上げ? 日本は1995年に日銀が政策金利を1.75%から1.0%、さらに0.5%に引き下げ、1999年から2000年までゼロ金利政策を実施した。2016年以降は経済活性化とデフレ脱却を目指し、マイナス金利を導入している。 日本の2021年12月のCPIは前年同月比0.5%と、欧米とは比べものにならないほど上昇が小幅だが、欧米の利上げが飛び火し、2023年春以降は日本も金融引き締めに転じる可能性がある。 政策金利を注視し、経済の先行きを予想する このように世界の政策金利は定期的に見直され、各国の状況に応じて変動している。各国、ひいては世界全体の状況を把握し、経済の先行きを予想する上で、政策金利は重要な指標になる。
日本が1999年から2000年にかけて実施した金融政策はなんですか。
日本が1999年から2000年にかけて実施した金融政策はゼロ金利政策です。
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金融
投資信託の購入後に行うべき6つのアクション 投資信託の運用会社はいくつかの資料を定期的に公開している。例えば、「運用報告書」が挙げられる。運用報告書の作成・交付のタイミングは、年に1回決算を行う投資信託であれば年に1度、決算期間が6ヵ月未満の投資信託であれば6ヵ月に1度だ。また、毎月の運用状況が記載されている「月次レポート」を毎月発行していることも多い。 大前提として、これらの資料には定期的に目を通すようにすべきだろう。その上で、ここからは「投資信託の購入後に行うべき6つのアクション」について見ていく。 1.基準価額の推移を確認 まずは基準価額の推移だ。特にベンチマークが設定されている場合は、ベンチマークとの乖離をチェックしよう。ベンチマークとの乖離が大きければ、「なぜ乖離が発生したのか」について、運用状況や投資環境のコメント(月次レポートに掲載されていることが多い)などで確認するようにしたい。 2.純資産残高の推移を確認 純資産残高は投資信託の投資先の価格変動などによって増減する。増えている間は大きな問題はないが、減っている場合は注意が必要だ。特に、投資環境が好転しているのに、残高が減っているときは警戒したい。投資していた人たちが次々と解約している可能性があるためだ。 解約すると、投資家に返金するために、保有商品を売却する必要がある。そうなると、有望な投資先であったとしても、売却せざるを得ない状況に陥ることもある。また、残高が少ないと、分散効果やコストメリットが効きにくくなり、運用効率が下がってしまうこともある。最悪の場合、繰り上げ償還になることもある。 基準価額に比べて、純資産残高は確認する頻度が少なくなりがちだ。しかし重要な数字であるため、純資産残高もしっかり確認するようにしよう。 3.トータルリターンを確認 月次レポートには投資信託の運用成績が記載されているものの、投資家ごとに購入タイミングが異なるため、自分が本当に儲かっているのかは記載情報だけでは判断できないこともある。それを確認するのが「トータルリターン」という考え方だ。 トータルリターンとは、保有している投資信託における手数料や累計売却金額、受け取った分配金額などを含めた通算損益のことだ。2014年12月より、年に1回以上投資家へ通知されることになった。金融機関によって形式は異なるものの、しっかりと確認するようにしよう。 4.「値下がりしたとき」の対処法を準備 投資信託には元本割れのリスクがある。したがって、どこまでの値下がりなら許容できるのか、基準価額が下落しても描いていたシナリオが変わらない限り保有を続けるのかなど、あらかじめ「値下がりしたときの対処法」をイメージしておき、準備しておくことが重要だ。 もちろん、そのときになってみないと判断ができないこともある。しかし、あらかじめ、少しでもネガティブな状況を想定しておくことで、いざその状況が現実化したときに、慌てずに対応できるようになるだろう。狼狽売りをしてしまうリスクも減るはずだ。 5.「値上がりしたとき」の対処法を準備 値下がりしたときだけではなく、相場環境にかかわらず一定の利益を取れたら売却するのか、できる限り含み益を大きくさせる方向で保有を続けるのか、といった「値上がりしたときの対処法」もあらかじめイメージしておきたい。 投資環境は常に変化するため、一度決めた対処法を何が何でも堅持する必要はないが、大体のイメージを持っていれば、首尾よく上昇したときに、迅速に対応できるようになるだろう。 6.分配金がある場合は使い道を決めておく 保有している投資信託に分配金の配分予定がある場合は、あらかじめ使い道を決めておきたい。例えば、同じ投資信託に再投資する、別の投資商品に再投資する、マネー・リザーブ・ファンド(MRF/Money Reserve Fund)などに現金として貯めておき相場急落時に買い出動する軍資金にする、生活費に回す、などが挙げられる。 投資信託の「購入後」にも気を配ろう 投資信託で運用をする場合、「どの投資信託を購入すればよいか」「どのタイミングで購入すればよいか」といった「購入前」に気を配る人が多いだろう。 しかし、「購入後」のことは意外とおざなりになってしまうことがある。本稿で紹介してきたことも参考に、投資信託の購入後もしっかりと気を配り、資産運用を進めていくようにしよう。
運用報告書が作成・交付される頻度は、決算期間によってどのように異なりますか。
運用報告書が作成・交付される頻度は、年に1回決算を行う投資信託であれば年に1度、決算期間が6ヵ月未満の投資信託であれば6ヵ月に1度です。
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金融
投資信託の購入後に行うべき6つのアクション 投資信託の運用会社はいくつかの資料を定期的に公開している。例えば、「運用報告書」が挙げられる。運用報告書の作成・交付のタイミングは、年に1回決算を行う投資信託であれば年に1度、決算期間が6ヵ月未満の投資信託であれば6ヵ月に1度だ。また、毎月の運用状況が記載されている「月次レポート」を毎月発行していることも多い。 大前提として、これらの資料には定期的に目を通すようにすべきだろう。その上で、ここからは「投資信託の購入後に行うべき6つのアクション」について見ていく。 1.基準価額の推移を確認 まずは基準価額の推移だ。特にベンチマークが設定されている場合は、ベンチマークとの乖離をチェックしよう。ベンチマークとの乖離が大きければ、「なぜ乖離が発生したのか」について、運用状況や投資環境のコメント(月次レポートに掲載されていることが多い)などで確認するようにしたい。 2.純資産残高の推移を確認 純資産残高は投資信託の投資先の価格変動などによって増減する。増えている間は大きな問題はないが、減っている場合は注意が必要だ。特に、投資環境が好転しているのに、残高が減っているときは警戒したい。投資していた人たちが次々と解約している可能性があるためだ。 解約すると、投資家に返金するために、保有商品を売却する必要がある。そうなると、有望な投資先であったとしても、売却せざるを得ない状況に陥ることもある。また、残高が少ないと、分散効果やコストメリットが効きにくくなり、運用効率が下がってしまうこともある。最悪の場合、繰り上げ償還になることもある。 基準価額に比べて、純資産残高は確認する頻度が少なくなりがちだ。しかし重要な数字であるため、純資産残高もしっかり確認するようにしよう。 3.トータルリターンを確認 月次レポートには投資信託の運用成績が記載されているものの、投資家ごとに購入タイミングが異なるため、自分が本当に儲かっているのかは記載情報だけでは判断できないこともある。それを確認するのが「トータルリターン」という考え方だ。 トータルリターンとは、保有している投資信託における手数料や累計売却金額、受け取った分配金額などを含めた通算損益のことだ。2014年12月より、年に1回以上投資家へ通知されることになった。金融機関によって形式は異なるものの、しっかりと確認するようにしよう。 4.「値下がりしたとき」の対処法を準備 投資信託には元本割れのリスクがある。したがって、どこまでの値下がりなら許容できるのか、基準価額が下落しても描いていたシナリオが変わらない限り保有を続けるのかなど、あらかじめ「値下がりしたときの対処法」をイメージしておき、準備しておくことが重要だ。 もちろん、そのときになってみないと判断ができないこともある。しかし、あらかじめ、少しでもネガティブな状況を想定しておくことで、いざその状況が現実化したときに、慌てずに対応できるようになるだろう。狼狽売りをしてしまうリスクも減るはずだ。 5.「値上がりしたとき」の対処法を準備 値下がりしたときだけではなく、相場環境にかかわらず一定の利益を取れたら売却するのか、できる限り含み益を大きくさせる方向で保有を続けるのか、といった「値上がりしたときの対処法」もあらかじめイメージしておきたい。 投資環境は常に変化するため、一度決めた対処法を何が何でも堅持する必要はないが、大体のイメージを持っていれば、首尾よく上昇したときに、迅速に対応できるようになるだろう。 6.分配金がある場合は使い道を決めておく 保有している投資信託に分配金の配分予定がある場合は、あらかじめ使い道を決めておきたい。例えば、同じ投資信託に再投資する、別の投資商品に再投資する、マネー・リザーブ・ファンド(MRF/Money Reserve Fund)などに現金として貯めておき相場急落時に買い出動する軍資金にする、生活費に回す、などが挙げられる。 投資信託の「購入後」にも気を配ろう 投資信託で運用をする場合、「どの投資信託を購入すればよいか」「どのタイミングで購入すればよいか」といった「購入前」に気を配る人が多いだろう。 しかし、「購入後」のことは意外とおざなりになってしまうことがある。本稿で紹介してきたことも参考に、投資信託の購入後もしっかりと気を配り、資産運用を進めていくようにしよう。
純資産残高が減っているときに特に注意すべきことはなんですか。
純資産残高が減っているときに特に注意すべきことは、投資環境が好転しているのに、残高が減っているときは警戒したい。投資していた人たちが次々と解約している可能性があるためです。
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金融
投資信託の購入後に行うべき6つのアクション 投資信託の運用会社はいくつかの資料を定期的に公開している。例えば、「運用報告書」が挙げられる。運用報告書の作成・交付のタイミングは、年に1回決算を行う投資信託であれば年に1度、決算期間が6ヵ月未満の投資信託であれば6ヵ月に1度だ。また、毎月の運用状況が記載されている「月次レポート」を毎月発行していることも多い。 大前提として、これらの資料には定期的に目を通すようにすべきだろう。その上で、ここからは「投資信託の購入後に行うべき6つのアクション」について見ていく。 1.基準価額の推移を確認 まずは基準価額の推移だ。特にベンチマークが設定されている場合は、ベンチマークとの乖離をチェックしよう。ベンチマークとの乖離が大きければ、「なぜ乖離が発生したのか」について、運用状況や投資環境のコメント(月次レポートに掲載されていることが多い)などで確認するようにしたい。 2.純資産残高の推移を確認 純資産残高は投資信託の投資先の価格変動などによって増減する。増えている間は大きな問題はないが、減っている場合は注意が必要だ。特に、投資環境が好転しているのに、残高が減っているときは警戒したい。投資していた人たちが次々と解約している可能性があるためだ。 解約すると、投資家に返金するために、保有商品を売却する必要がある。そうなると、有望な投資先であったとしても、売却せざるを得ない状況に陥ることもある。また、残高が少ないと、分散効果やコストメリットが効きにくくなり、運用効率が下がってしまうこともある。最悪の場合、繰り上げ償還になることもある。 基準価額に比べて、純資産残高は確認する頻度が少なくなりがちだ。しかし重要な数字であるため、純資産残高もしっかり確認するようにしよう。 3.トータルリターンを確認 月次レポートには投資信託の運用成績が記載されているものの、投資家ごとに購入タイミングが異なるため、自分が本当に儲かっているのかは記載情報だけでは判断できないこともある。それを確認するのが「トータルリターン」という考え方だ。 トータルリターンとは、保有している投資信託における手数料や累計売却金額、受け取った分配金額などを含めた通算損益のことだ。2014年12月より、年に1回以上投資家へ通知されることになった。金融機関によって形式は異なるものの、しっかりと確認するようにしよう。 4.「値下がりしたとき」の対処法を準備 投資信託には元本割れのリスクがある。したがって、どこまでの値下がりなら許容できるのか、基準価額が下落しても描いていたシナリオが変わらない限り保有を続けるのかなど、あらかじめ「値下がりしたときの対処法」をイメージしておき、準備しておくことが重要だ。 もちろん、そのときになってみないと判断ができないこともある。しかし、あらかじめ、少しでもネガティブな状況を想定しておくことで、いざその状況が現実化したときに、慌てずに対応できるようになるだろう。狼狽売りをしてしまうリスクも減るはずだ。 5.「値上がりしたとき」の対処法を準備 値下がりしたときだけではなく、相場環境にかかわらず一定の利益を取れたら売却するのか、できる限り含み益を大きくさせる方向で保有を続けるのか、といった「値上がりしたときの対処法」もあらかじめイメージしておきたい。 投資環境は常に変化するため、一度決めた対処法を何が何でも堅持する必要はないが、大体のイメージを持っていれば、首尾よく上昇したときに、迅速に対応できるようになるだろう。 6.分配金がある場合は使い道を決めておく 保有している投資信託に分配金の配分予定がある場合は、あらかじめ使い道を決めておきたい。例えば、同じ投資信託に再投資する、別の投資商品に再投資する、マネー・リザーブ・ファンド(MRF/Money Reserve Fund)などに現金として貯めておき相場急落時に買い出動する軍資金にする、生活費に回す、などが挙げられる。 投資信託の「購入後」にも気を配ろう 投資信託で運用をする場合、「どの投資信託を購入すればよいか」「どのタイミングで購入すればよいか」といった「購入前」に気を配る人が多いだろう。 しかし、「購入後」のことは意外とおざなりになってしまうことがある。本稿で紹介してきたことも参考に、投資信託の購入後もしっかりと気を配り、資産運用を進めていくようにしよう。
トータルリターンとはなんですか。
トータルリターンとは、保有している投資信託における手数料や累計売却金額、受け取った分配金額などを含めた通算損益のことです。
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投資信託の購入後に行うべき6つのアクション 投資信託の運用会社はいくつかの資料を定期的に公開している。例えば、「運用報告書」が挙げられる。運用報告書の作成・交付のタイミングは、年に1回決算を行う投資信託であれば年に1度、決算期間が6ヵ月未満の投資信託であれば6ヵ月に1度だ。また、毎月の運用状況が記載されている「月次レポート」を毎月発行していることも多い。 大前提として、これらの資料には定期的に目を通すようにすべきだろう。その上で、ここからは「投資信託の購入後に行うべき6つのアクション」について見ていく。 1.基準価額の推移を確認 まずは基準価額の推移だ。特にベンチマークが設定されている場合は、ベンチマークとの乖離をチェックしよう。ベンチマークとの乖離が大きければ、「なぜ乖離が発生したのか」について、運用状況や投資環境のコメント(月次レポートに掲載されていることが多い)などで確認するようにしたい。 2.純資産残高の推移を確認 純資産残高は投資信託の投資先の価格変動などによって増減する。増えている間は大きな問題はないが、減っている場合は注意が必要だ。特に、投資環境が好転しているのに、残高が減っているときは警戒したい。投資していた人たちが次々と解約している可能性があるためだ。 解約すると、投資家に返金するために、保有商品を売却する必要がある。そうなると、有望な投資先であったとしても、売却せざるを得ない状況に陥ることもある。また、残高が少ないと、分散効果やコストメリットが効きにくくなり、運用効率が下がってしまうこともある。最悪の場合、繰り上げ償還になることもある。 基準価額に比べて、純資産残高は確認する頻度が少なくなりがちだ。しかし重要な数字であるため、純資産残高もしっかり確認するようにしよう。 3.トータルリターンを確認 月次レポートには投資信託の運用成績が記載されているものの、投資家ごとに購入タイミングが異なるため、自分が本当に儲かっているのかは記載情報だけでは判断できないこともある。それを確認するのが「トータルリターン」という考え方だ。 トータルリターンとは、保有している投資信託における手数料や累計売却金額、受け取った分配金額などを含めた通算損益のことだ。2014年12月より、年に1回以上投資家へ通知されることになった。金融機関によって形式は異なるものの、しっかりと確認するようにしよう。 4.「値下がりしたとき」の対処法を準備 投資信託には元本割れのリスクがある。したがって、どこまでの値下がりなら許容できるのか、基準価額が下落しても描いていたシナリオが変わらない限り保有を続けるのかなど、あらかじめ「値下がりしたときの対処法」をイメージしておき、準備しておくことが重要だ。 もちろん、そのときになってみないと判断ができないこともある。しかし、あらかじめ、少しでもネガティブな状況を想定しておくことで、いざその状況が現実化したときに、慌てずに対応できるようになるだろう。狼狽売りをしてしまうリスクも減るはずだ。 5.「値上がりしたとき」の対処法を準備 値下がりしたときだけではなく、相場環境にかかわらず一定の利益を取れたら売却するのか、できる限り含み益を大きくさせる方向で保有を続けるのか、といった「値上がりしたときの対処法」もあらかじめイメージしておきたい。 投資環境は常に変化するため、一度決めた対処法を何が何でも堅持する必要はないが、大体のイメージを持っていれば、首尾よく上昇したときに、迅速に対応できるようになるだろう。 6.分配金がある場合は使い道を決めておく 保有している投資信託に分配金の配分予定がある場合は、あらかじめ使い道を決めておきたい。例えば、同じ投資信託に再投資する、別の投資商品に再投資する、マネー・リザーブ・ファンド(MRF/Money Reserve Fund)などに現金として貯めておき相場急落時に買い出動する軍資金にする、生活費に回す、などが挙げられる。 投資信託の「購入後」にも気を配ろう 投資信託で運用をする場合、「どの投資信託を購入すればよいか」「どのタイミングで購入すればよいか」といった「購入前」に気を配る人が多いだろう。 しかし、「購入後」のことは意外とおざなりになってしまうことがある。本稿で紹介してきたことも参考に、投資信託の購入後もしっかりと気を配り、資産運用を進めていくようにしよう。
値下がり時の対処法を事前にイメージしておくことのメリットはなんですか。
値下がり時の対処法を事前にイメージしておくことのメリットはあらかじめ、少しでもネガティブな状況を想定しておくことで、いざその状況が現実化したときに、慌てずに対応できるようになります。
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投資信託の購入後に行うべき6つのアクション 投資信託の運用会社はいくつかの資料を定期的に公開している。例えば、「運用報告書」が挙げられる。運用報告書の作成・交付のタイミングは、年に1回決算を行う投資信託であれば年に1度、決算期間が6ヵ月未満の投資信託であれば6ヵ月に1度だ。また、毎月の運用状況が記載されている「月次レポート」を毎月発行していることも多い。 大前提として、これらの資料には定期的に目を通すようにすべきだろう。その上で、ここからは「投資信託の購入後に行うべき6つのアクション」について見ていく。 1.基準価額の推移を確認 まずは基準価額の推移だ。特にベンチマークが設定されている場合は、ベンチマークとの乖離をチェックしよう。ベンチマークとの乖離が大きければ、「なぜ乖離が発生したのか」について、運用状況や投資環境のコメント(月次レポートに掲載されていることが多い)などで確認するようにしたい。 2.純資産残高の推移を確認 純資産残高は投資信託の投資先の価格変動などによって増減する。増えている間は大きな問題はないが、減っている場合は注意が必要だ。特に、投資環境が好転しているのに、残高が減っているときは警戒したい。投資していた人たちが次々と解約している可能性があるためだ。 解約すると、投資家に返金するために、保有商品を売却する必要がある。そうなると、有望な投資先であったとしても、売却せざるを得ない状況に陥ることもある。また、残高が少ないと、分散効果やコストメリットが効きにくくなり、運用効率が下がってしまうこともある。最悪の場合、繰り上げ償還になることもある。 基準価額に比べて、純資産残高は確認する頻度が少なくなりがちだ。しかし重要な数字であるため、純資産残高もしっかり確認するようにしよう。 3.トータルリターンを確認 月次レポートには投資信託の運用成績が記載されているものの、投資家ごとに購入タイミングが異なるため、自分が本当に儲かっているのかは記載情報だけでは判断できないこともある。それを確認するのが「トータルリターン」という考え方だ。 トータルリターンとは、保有している投資信託における手数料や累計売却金額、受け取った分配金額などを含めた通算損益のことだ。2014年12月より、年に1回以上投資家へ通知されることになった。金融機関によって形式は異なるものの、しっかりと確認するようにしよう。 4.「値下がりしたとき」の対処法を準備 投資信託には元本割れのリスクがある。したがって、どこまでの値下がりなら許容できるのか、基準価額が下落しても描いていたシナリオが変わらない限り保有を続けるのかなど、あらかじめ「値下がりしたときの対処法」をイメージしておき、準備しておくことが重要だ。 もちろん、そのときになってみないと判断ができないこともある。しかし、あらかじめ、少しでもネガティブな状況を想定しておくことで、いざその状況が現実化したときに、慌てずに対応できるようになるだろう。狼狽売りをしてしまうリスクも減るはずだ。 5.「値上がりしたとき」の対処法を準備 値下がりしたときだけではなく、相場環境にかかわらず一定の利益を取れたら売却するのか、できる限り含み益を大きくさせる方向で保有を続けるのか、といった「値上がりしたときの対処法」もあらかじめイメージしておきたい。 投資環境は常に変化するため、一度決めた対処法を何が何でも堅持する必要はないが、大体のイメージを持っていれば、首尾よく上昇したときに、迅速に対応できるようになるだろう。 6.分配金がある場合は使い道を決めておく 保有している投資信託に分配金の配分予定がある場合は、あらかじめ使い道を決めておきたい。例えば、同じ投資信託に再投資する、別の投資商品に再投資する、マネー・リザーブ・ファンド(MRF/Money Reserve Fund)などに現金として貯めておき相場急落時に買い出動する軍資金にする、生活費に回す、などが挙げられる。 投資信託の「購入後」にも気を配ろう 投資信託で運用をする場合、「どの投資信託を購入すればよいか」「どのタイミングで購入すればよいか」といった「購入前」に気を配る人が多いだろう。 しかし、「購入後」のことは意外とおざなりになってしまうことがある。本稿で紹介してきたことも参考に、投資信託の購入後もしっかりと気を配り、資産運用を進めていくようにしよう。
投資信託の分配金の使い道の選択肢はどのようなものがありますか。
投資信託の分配金の使い道の選択肢は、例えば、同じ投資信託に再投資する、別の投資商品に再投資する、マネー・リザーブ・ファンド(MRF/Money Reserve Fund)などに現金として貯めておき相場急落時に買い出動する軍資金にする、生活費に回す、などが挙げられます。
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アクティブ型投資信託とは 投資信託の運用方法には大きく分けて、パッシブ運用(インデックス運用)とアクティブ運用がある。前者は、運用目標とするベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなど)に連動する運用手法だ。 後者は、そのベンチマークを上回る成績を目指す運用手法だ。アクティブ運用では、ファンドマネージャー(運用チーム)の力量が非常に重要になる。 アクティブ型投資信託で確認すべき5つのポイント それでは、数あるアクティブ型投資信託の中から投資先を選ぶときには、どのようなことを確認すればよいのだろうか。今回は5つのポイントについて紹介しよう。 必ずしもこの5つをすべて満たしていないといけないわけではないが、投資先を選ぶときの参考にしてほしい。 1.購入時手数料の有無 購入時手数料がかからないことを「ノーロード(ファンド)」と呼ぶ。運用がうまくいくかどうかは誰にもわからないが、原則として手数料は運用成績にかかわらず発生するため、確実にパフォーマンスをむしばむ。そのため、購入時手数料がかからないに越したことはない。 ノーロード型の投資信託が必ず優れているわけではないし、投資信託には購入時手数料以外の手数料も存在するが、一つの判断基準にはなるだろう。なお、同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合があるため注意が必要だ。 2.決算の回数 投資信託は定期的に決算を行い、決算日にはその期間の投資信託の損益や資産状況の計算、分配金の支払いなどが行われる。決算の頻度は、年1回や年2回、毎月など投資信託によって異なる。 投資信託を選ぶときは、決算回数が少ないものを選ぶとよいだろう。決算回数が多いと単純に事務処理などのコストが増大するし、基本的には分配金を払い出すため、投資効率が下がってしまう。普通分配金には課税が発生してしまうし、特別分配金は非課税だが元本を払い戻ししているだけだからだ。 3.過去の運用実績 多くの投資家にとって、投資信託への投資で求めているのは収益であり、言い換えれば高い運用パフォーマンスを出せるかどうかだろう。そこで重要視したいのが過去の運用実績だ。過去の運用実績がよいからといって、今後の運用もうまくいくわけではないが、未来が誰にもわからない以上、過去の実績は大きな判断材料になる。 運用実績を確認するときは、3年以上の実績を見るようにしたい。金融市場にはよいときも悪いときもあり、短期間のパフォーマンスでは、その投資信託の実力が測りきれない可能性があるためだ。 3年以上の期間があれば必ず実力を推し量れるわけではないが、上昇局面や急落などひと通りの値動きは経験しているはずだ。 4.複数の金融機関で購入できるか 1において「同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合がある」と述べた。このとおり、投資信託の商品によっては購入時手数料が異なる場合があるものの、複数の金融機関で購入できるものもあり、一方で、特定の販売会社のために作られる商品もある。 後者が必ずしも悪いわけではないが、多くの投資家の目に晒されて、比較検討され、売買される前者の方が、健全な形と言えるだろう。また単純に、その投資信託を購入したい場合に、特定の金融機関に口座開設をしなくてはいけないケースもあり、投資家側の利便性が低いことも懸念点だ。 5.同じカテゴリー内の比較 「同じカテゴリーにおいて定量的に優れているかどうか」も確認しよう。カテゴリーには国内株式や国内債券、外国株式、外国債券などがある。また、「国内株式」を国内大型バリュー、国内大型グロース、国内小型バリュー、国内小型グロースなど、さらに細かく分類することも可能だ。 複数の投資信託を「同じ土俵で比べる」ことは一定の知識がないと難しいが、まず気をつけたいのは異なるカテゴリーの投資信託を比較しないことだ。例えば、国内株式ファンドと外国債券ファンドを比べても、投資対象が大きく異なるのであまり意味がないだろう。 定量的に比べる方法として、運用パフォーマンス(トータルリターン)はもちろんのこと、シャープレシオの比較も行いたい。シャープレシオとは、リターンだけではなく背負ったリスクも勘案して、「いかに効率よく収益を稼いだか」を測る指標だ。 お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみよう アクティブ型投資信託はベンチマークを上回る成績を目指す運用手法のため、大きなパフォーマンスを期待できることが魅力だ。今回紹介した5つのポイントも参考にしながら、お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみてはいかがだろうか。
パッシブ運用(インデックス運用)はどのような運用手法ですか。
パッシブ運用(インデックス運用)は、運用目標とするベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなど)に連動する運用手法です。
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金融
アクティブ型投資信託とは 投資信託の運用方法には大きく分けて、パッシブ運用(インデックス運用)とアクティブ運用がある。前者は、運用目標とするベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなど)に連動する運用手法だ。 後者は、そのベンチマークを上回る成績を目指す運用手法だ。アクティブ運用では、ファンドマネージャー(運用チーム)の力量が非常に重要になる。 アクティブ型投資信託で確認すべき5つのポイント それでは、数あるアクティブ型投資信託の中から投資先を選ぶときには、どのようなことを確認すればよいのだろうか。今回は5つのポイントについて紹介しよう。 必ずしもこの5つをすべて満たしていないといけないわけではないが、投資先を選ぶときの参考にしてほしい。 1.購入時手数料の有無 購入時手数料がかからないことを「ノーロード(ファンド)」と呼ぶ。運用がうまくいくかどうかは誰にもわからないが、原則として手数料は運用成績にかかわらず発生するため、確実にパフォーマンスをむしばむ。そのため、購入時手数料がかからないに越したことはない。 ノーロード型の投資信託が必ず優れているわけではないし、投資信託には購入時手数料以外の手数料も存在するが、一つの判断基準にはなるだろう。なお、同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合があるため注意が必要だ。 2.決算の回数 投資信託は定期的に決算を行い、決算日にはその期間の投資信託の損益や資産状況の計算、分配金の支払いなどが行われる。決算の頻度は、年1回や年2回、毎月など投資信託によって異なる。 投資信託を選ぶときは、決算回数が少ないものを選ぶとよいだろう。決算回数が多いと単純に事務処理などのコストが増大するし、基本的には分配金を払い出すため、投資効率が下がってしまう。普通分配金には課税が発生してしまうし、特別分配金は非課税だが元本を払い戻ししているだけだからだ。 3.過去の運用実績 多くの投資家にとって、投資信託への投資で求めているのは収益であり、言い換えれば高い運用パフォーマンスを出せるかどうかだろう。そこで重要視したいのが過去の運用実績だ。過去の運用実績がよいからといって、今後の運用もうまくいくわけではないが、未来が誰にもわからない以上、過去の実績は大きな判断材料になる。 運用実績を確認するときは、3年以上の実績を見るようにしたい。金融市場にはよいときも悪いときもあり、短期間のパフォーマンスでは、その投資信託の実力が測りきれない可能性があるためだ。 3年以上の期間があれば必ず実力を推し量れるわけではないが、上昇局面や急落などひと通りの値動きは経験しているはずだ。 4.複数の金融機関で購入できるか 1において「同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合がある」と述べた。このとおり、投資信託の商品によっては購入時手数料が異なる場合があるものの、複数の金融機関で購入できるものもあり、一方で、特定の販売会社のために作られる商品もある。 後者が必ずしも悪いわけではないが、多くの投資家の目に晒されて、比較検討され、売買される前者の方が、健全な形と言えるだろう。また単純に、その投資信託を購入したい場合に、特定の金融機関に口座開設をしなくてはいけないケースもあり、投資家側の利便性が低いことも懸念点だ。 5.同じカテゴリー内の比較 「同じカテゴリーにおいて定量的に優れているかどうか」も確認しよう。カテゴリーには国内株式や国内債券、外国株式、外国債券などがある。また、「国内株式」を国内大型バリュー、国内大型グロース、国内小型バリュー、国内小型グロースなど、さらに細かく分類することも可能だ。 複数の投資信託を「同じ土俵で比べる」ことは一定の知識がないと難しいが、まず気をつけたいのは異なるカテゴリーの投資信託を比較しないことだ。例えば、国内株式ファンドと外国債券ファンドを比べても、投資対象が大きく異なるのであまり意味がないだろう。 定量的に比べる方法として、運用パフォーマンス(トータルリターン)はもちろんのこと、シャープレシオの比較も行いたい。シャープレシオとは、リターンだけではなく背負ったリスクも勘案して、「いかに効率よく収益を稼いだか」を測る指標だ。 お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみよう アクティブ型投資信託はベンチマークを上回る成績を目指す運用手法のため、大きなパフォーマンスを期待できることが魅力だ。今回紹介した5つのポイントも参考にしながら、お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみてはいかがだろうか。
ノーロード型の投資信託が選ばれる理由はなんですか。
ノーロード型の投資信託が選ばれる理由は、運用がうまくいくかどうかは誰にもわからないが、原則として手数料は運用成績にかかわらず発生するため、確実にパフォーマンスをむしばむ。そのため、購入時手数料がかからないに越したことはないからです。
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アクティブ型投資信託とは 投資信託の運用方法には大きく分けて、パッシブ運用(インデックス運用)とアクティブ運用がある。前者は、運用目標とするベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなど)に連動する運用手法だ。 後者は、そのベンチマークを上回る成績を目指す運用手法だ。アクティブ運用では、ファンドマネージャー(運用チーム)の力量が非常に重要になる。 アクティブ型投資信託で確認すべき5つのポイント それでは、数あるアクティブ型投資信託の中から投資先を選ぶときには、どのようなことを確認すればよいのだろうか。今回は5つのポイントについて紹介しよう。 必ずしもこの5つをすべて満たしていないといけないわけではないが、投資先を選ぶときの参考にしてほしい。 1.購入時手数料の有無 購入時手数料がかからないことを「ノーロード(ファンド)」と呼ぶ。運用がうまくいくかどうかは誰にもわからないが、原則として手数料は運用成績にかかわらず発生するため、確実にパフォーマンスをむしばむ。そのため、購入時手数料がかからないに越したことはない。 ノーロード型の投資信託が必ず優れているわけではないし、投資信託には購入時手数料以外の手数料も存在するが、一つの判断基準にはなるだろう。なお、同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合があるため注意が必要だ。 2.決算の回数 投資信託は定期的に決算を行い、決算日にはその期間の投資信託の損益や資産状況の計算、分配金の支払いなどが行われる。決算の頻度は、年1回や年2回、毎月など投資信託によって異なる。 投資信託を選ぶときは、決算回数が少ないものを選ぶとよいだろう。決算回数が多いと単純に事務処理などのコストが増大するし、基本的には分配金を払い出すため、投資効率が下がってしまう。普通分配金には課税が発生してしまうし、特別分配金は非課税だが元本を払い戻ししているだけだからだ。 3.過去の運用実績 多くの投資家にとって、投資信託への投資で求めているのは収益であり、言い換えれば高い運用パフォーマンスを出せるかどうかだろう。そこで重要視したいのが過去の運用実績だ。過去の運用実績がよいからといって、今後の運用もうまくいくわけではないが、未来が誰にもわからない以上、過去の実績は大きな判断材料になる。 運用実績を確認するときは、3年以上の実績を見るようにしたい。金融市場にはよいときも悪いときもあり、短期間のパフォーマンスでは、その投資信託の実力が測りきれない可能性があるためだ。 3年以上の期間があれば必ず実力を推し量れるわけではないが、上昇局面や急落などひと通りの値動きは経験しているはずだ。 4.複数の金融機関で購入できるか 1において「同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合がある」と述べた。このとおり、投資信託の商品によっては購入時手数料が異なる場合があるものの、複数の金融機関で購入できるものもあり、一方で、特定の販売会社のために作られる商品もある。 後者が必ずしも悪いわけではないが、多くの投資家の目に晒されて、比較検討され、売買される前者の方が、健全な形と言えるだろう。また単純に、その投資信託を購入したい場合に、特定の金融機関に口座開設をしなくてはいけないケースもあり、投資家側の利便性が低いことも懸念点だ。 5.同じカテゴリー内の比較 「同じカテゴリーにおいて定量的に優れているかどうか」も確認しよう。カテゴリーには国内株式や国内債券、外国株式、外国債券などがある。また、「国内株式」を国内大型バリュー、国内大型グロース、国内小型バリュー、国内小型グロースなど、さらに細かく分類することも可能だ。 複数の投資信託を「同じ土俵で比べる」ことは一定の知識がないと難しいが、まず気をつけたいのは異なるカテゴリーの投資信託を比較しないことだ。例えば、国内株式ファンドと外国債券ファンドを比べても、投資対象が大きく異なるのであまり意味がないだろう。 定量的に比べる方法として、運用パフォーマンス(トータルリターン)はもちろんのこと、シャープレシオの比較も行いたい。シャープレシオとは、リターンだけではなく背負ったリスクも勘案して、「いかに効率よく収益を稼いだか」を測る指標だ。 お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみよう アクティブ型投資信託はベンチマークを上回る成績を目指す運用手法のため、大きなパフォーマンスを期待できることが魅力だ。今回紹介した5つのポイントも参考にしながら、お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみてはいかがだろうか。
決算回数が多い投資信託を避けたほうがよい理由は何か。
決算回数が多い投資信託を避けたほうがよい理由は、決算回数が多いと単純に事務処理などのコストが増大するし、基本的には分配金を払い出すため、投資効率が下がってしまう。普通分配金には課税が発生してしまうし、特別分配金は非課税だが元本を払い戻ししているだけだからです。
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アクティブ型投資信託とは 投資信託の運用方法には大きく分けて、パッシブ運用(インデックス運用)とアクティブ運用がある。前者は、運用目標とするベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなど)に連動する運用手法だ。 後者は、そのベンチマークを上回る成績を目指す運用手法だ。アクティブ運用では、ファンドマネージャー(運用チーム)の力量が非常に重要になる。 アクティブ型投資信託で確認すべき5つのポイント それでは、数あるアクティブ型投資信託の中から投資先を選ぶときには、どのようなことを確認すればよいのだろうか。今回は5つのポイントについて紹介しよう。 必ずしもこの5つをすべて満たしていないといけないわけではないが、投資先を選ぶときの参考にしてほしい。 1.購入時手数料の有無 購入時手数料がかからないことを「ノーロード(ファンド)」と呼ぶ。運用がうまくいくかどうかは誰にもわからないが、原則として手数料は運用成績にかかわらず発生するため、確実にパフォーマンスをむしばむ。そのため、購入時手数料がかからないに越したことはない。 ノーロード型の投資信託が必ず優れているわけではないし、投資信託には購入時手数料以外の手数料も存在するが、一つの判断基準にはなるだろう。なお、同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合があるため注意が必要だ。 2.決算の回数 投資信託は定期的に決算を行い、決算日にはその期間の投資信託の損益や資産状況の計算、分配金の支払いなどが行われる。決算の頻度は、年1回や年2回、毎月など投資信託によって異なる。 投資信託を選ぶときは、決算回数が少ないものを選ぶとよいだろう。決算回数が多いと単純に事務処理などのコストが増大するし、基本的には分配金を払い出すため、投資効率が下がってしまう。普通分配金には課税が発生してしまうし、特別分配金は非課税だが元本を払い戻ししているだけだからだ。 3.過去の運用実績 多くの投資家にとって、投資信託への投資で求めているのは収益であり、言い換えれば高い運用パフォーマンスを出せるかどうかだろう。そこで重要視したいのが過去の運用実績だ。過去の運用実績がよいからといって、今後の運用もうまくいくわけではないが、未来が誰にもわからない以上、過去の実績は大きな判断材料になる。 運用実績を確認するときは、3年以上の実績を見るようにしたい。金融市場にはよいときも悪いときもあり、短期間のパフォーマンスでは、その投資信託の実力が測りきれない可能性があるためだ。 3年以上の期間があれば必ず実力を推し量れるわけではないが、上昇局面や急落などひと通りの値動きは経験しているはずだ。 4.複数の金融機関で購入できるか 1において「同じ商品であっても、購入時手数料は金融機関によって異なる場合がある」と述べた。このとおり、投資信託の商品によっては購入時手数料が異なる場合があるものの、複数の金融機関で購入できるものもあり、一方で、特定の販売会社のために作られる商品もある。 後者が必ずしも悪いわけではないが、多くの投資家の目に晒されて、比較検討され、売買される前者の方が、健全な形と言えるだろう。また単純に、その投資信託を購入したい場合に、特定の金融機関に口座開設をしなくてはいけないケースもあり、投資家側の利便性が低いことも懸念点だ。 5.同じカテゴリー内の比較 「同じカテゴリーにおいて定量的に優れているかどうか」も確認しよう。カテゴリーには国内株式や国内債券、外国株式、外国債券などがある。また、「国内株式」を国内大型バリュー、国内大型グロース、国内小型バリュー、国内小型グロースなど、さらに細かく分類することも可能だ。 複数の投資信託を「同じ土俵で比べる」ことは一定の知識がないと難しいが、まず気をつけたいのは異なるカテゴリーの投資信託を比較しないことだ。例えば、国内株式ファンドと外国債券ファンドを比べても、投資対象が大きく異なるのであまり意味がないだろう。 定量的に比べる方法として、運用パフォーマンス(トータルリターン)はもちろんのこと、シャープレシオの比較も行いたい。シャープレシオとは、リターンだけではなく背負ったリスクも勘案して、「いかに効率よく収益を稼いだか」を測る指標だ。 お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみよう アクティブ型投資信託はベンチマークを上回る成績を目指す運用手法のため、大きなパフォーマンスを期待できることが魅力だ。今回紹介した5つのポイントも参考にしながら、お気に入りのアクティブ型投資信託を探してみてはいかがだろうか。
アクティブ型投資信託のパフォーマンスを定量的に評価する際に確認したい指標は運用パフォーマンス(トータルリターン)のほかに何ですか。
アクティブ型投資信託のパフォーマンスを定量的に評価する際に確認したい指標は運用パフォーマンス(トータルリターン)のほかに、シャープレシオです。シャープレシオとは、リターンだけではなく背負ったリスクも勘案して、「いかに効率よく収益を稼いだか」を測る指標です。
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金融
「リスクオフの円買い」とは? 「リスクオフの円買い」における「リスクオフ」とは、投資資産をリスクが高めの資産からリスクが低めの資産に移す動きのことを指す。つまり、リスクを極力回避しようという投資家の行動を意味している。 ちなみに対義語は「リスクオン」で、リスクが高い投資対象に資産を移し、多少のリスクを抱えても積極的に高いリターンを狙おうという動きのことを指す。 投資家がリスクを抑えたくなるときは、相場の先行きが懸念されるときだ。例えば、株式を保有したまま株式相場が大幅に下落すれば、保有株式の価値は大きく目減りする。そのため投資家は株式を売り、相場の下落が影響しないような資産の保有に切り替えようとする。 「リスクオフの円買い」とは、こうした相場の先行きが不透明な中で、「安全資産」と呼ばれる日本円を買う動きのことを指す。特に戦争などの有事は相場の先行きの不透明感を一気に高めるため、「有事の円買い」という呼ばれ方もする。 歴史における経験則が生んだ相場格言 この「リスクオフの円買い」は歴史における経験則として、投資の世界で相場格言として使われるようになっていた。 例えば、2001年9月に米同時多発テロが起きた際、ドル円相場は円高方向に4円近く動いた。 2008年に起きたリーマン・ショックでは、この年の9~12月にかけて20円以上円高方向に振れた。2011年3月の東日本大震災発生後は、3~10月にかけて7円以上円高が進んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が起きた2020年は、3月~12月にかけて6円以上の円高となった。 しかし、ロシアがウクライナへ侵攻した2022年2月24日以降、しばらくは円高方向に為替レートが振れず、逆にその後、円安方向に為替レートが動き、市場関係者を驚かせた。「リスクオフの円買い」の相場格言が意味することの逆の現象が起きたわけだ。 具体的には、ドル円レートは115円前後で推移している状況が続いていたが、3月10日に一時116円台に乗せ、117円、118円、119円と、するすると円安方向に動いていった。3月28日には125円台に乗せ、2015年8月12日以来の水準となった。 ウクライナ侵攻では「円買い」は起きなかった では、ロシアによるウクライナ侵攻では、なぜ「リスクオフの円買い」という相場格言が当てはまらない現象が起きたのか。 為替レートは世界中の市場関係者のさまざまな思惑によって動くため、その背景を正確に説明するのは簡単ではない。しかし、「安全資産」としての日本円の地位が揺らいでいることが原因だと分析する市場関係者が多い。 日本円への信頼が揺らぎ始めている理由は何か? 日本円が安全資産と言われてきた理由は、日本の貿易収支は長らく黒字であり、円の価値が低くなりにくい状況が続いてきたからだ。日本の貿易収支が黒字だと、貨幣の需給の関係上、円の価値が低くなりにくく、日本円の安全資産としての信用度が高くなる。 しかし、日本では近年、貿易赤字となる月も出てきており、安全資産としての円の信頼性は揺らぎつつあった。 貿易黒字の牽引役はこれまで、多数の製品を海外に輸出する製造業だった。しかし、製造業界の企業が安価な労働力などを求めて海外に拠点を設けるケースが増え、工業製品の輸出ルートが「日本から海外」ではなくなりつつある。 また、東日本大震災の発生後、国内の原子力発電所による発電量が減り、火力発電のために化石燃料の輸入を増やさざるを得なかったことも、貿易黒字の縮小の要因となった。そしてロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い、原油や天然ガスの先物価格が高騰したことで、化石燃料を多く輸入するようになった日本の貿易収支がさらに悪化することに懸念が高まった。 なおロシア・ウクライナ情勢の悪化で原油の先物価格が高騰したのは、世界有数の石油や天然ガスの産出国であるロシアに対し、欧米各国などが経済制裁を発動したことにより、ロシアからの化石燃料の供給に黄信号が灯ったからだ。 今後も有事の際に同じような現象が起きる? 最後になるが、確かに今回のロシアによるウクライナ侵攻では、「リスクオフの円買い」は起きていない。しかし、それは今回のみの現象かもしれない。 「リスクオフの円買い」が本当にあてはまらなくなったかどうかを本格的に見極めるためには、次、さらには次の次の有事や経済危機などで、ドル円レートがどのように推移するかを確認する必要があるといえるだろう。
「リスクオフ」とはどのような投資行動を指しますか。
「リスクオフ」とは、投資資産をリスクが高めの資産からリスクが低めの資産に移す動きのことを指します。
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金融
「リスクオフの円買い」とは? 「リスクオフの円買い」における「リスクオフ」とは、投資資産をリスクが高めの資産からリスクが低めの資産に移す動きのことを指す。つまり、リスクを極力回避しようという投資家の行動を意味している。 ちなみに対義語は「リスクオン」で、リスクが高い投資対象に資産を移し、多少のリスクを抱えても積極的に高いリターンを狙おうという動きのことを指す。 投資家がリスクを抑えたくなるときは、相場の先行きが懸念されるときだ。例えば、株式を保有したまま株式相場が大幅に下落すれば、保有株式の価値は大きく目減りする。そのため投資家は株式を売り、相場の下落が影響しないような資産の保有に切り替えようとする。 「リスクオフの円買い」とは、こうした相場の先行きが不透明な中で、「安全資産」と呼ばれる日本円を買う動きのことを指す。特に戦争などの有事は相場の先行きの不透明感を一気に高めるため、「有事の円買い」という呼ばれ方もする。 歴史における経験則が生んだ相場格言 この「リスクオフの円買い」は歴史における経験則として、投資の世界で相場格言として使われるようになっていた。 例えば、2001年9月に米同時多発テロが起きた際、ドル円相場は円高方向に4円近く動いた。 2008年に起きたリーマン・ショックでは、この年の9~12月にかけて20円以上円高方向に振れた。2011年3月の東日本大震災発生後は、3~10月にかけて7円以上円高が進んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が起きた2020年は、3月~12月にかけて6円以上の円高となった。 しかし、ロシアがウクライナへ侵攻した2022年2月24日以降、しばらくは円高方向に為替レートが振れず、逆にその後、円安方向に為替レートが動き、市場関係者を驚かせた。「リスクオフの円買い」の相場格言が意味することの逆の現象が起きたわけだ。 具体的には、ドル円レートは115円前後で推移している状況が続いていたが、3月10日に一時116円台に乗せ、117円、118円、119円と、するすると円安方向に動いていった。3月28日には125円台に乗せ、2015年8月12日以来の水準となった。 ウクライナ侵攻では「円買い」は起きなかった では、ロシアによるウクライナ侵攻では、なぜ「リスクオフの円買い」という相場格言が当てはまらない現象が起きたのか。 為替レートは世界中の市場関係者のさまざまな思惑によって動くため、その背景を正確に説明するのは簡単ではない。しかし、「安全資産」としての日本円の地位が揺らいでいることが原因だと分析する市場関係者が多い。 日本円への信頼が揺らぎ始めている理由は何か? 日本円が安全資産と言われてきた理由は、日本の貿易収支は長らく黒字であり、円の価値が低くなりにくい状況が続いてきたからだ。日本の貿易収支が黒字だと、貨幣の需給の関係上、円の価値が低くなりにくく、日本円の安全資産としての信用度が高くなる。 しかし、日本では近年、貿易赤字となる月も出てきており、安全資産としての円の信頼性は揺らぎつつあった。 貿易黒字の牽引役はこれまで、多数の製品を海外に輸出する製造業だった。しかし、製造業界の企業が安価な労働力などを求めて海外に拠点を設けるケースが増え、工業製品の輸出ルートが「日本から海外」ではなくなりつつある。 また、東日本大震災の発生後、国内の原子力発電所による発電量が減り、火力発電のために化石燃料の輸入を増やさざるを得なかったことも、貿易黒字の縮小の要因となった。そしてロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い、原油や天然ガスの先物価格が高騰したことで、化石燃料を多く輸入するようになった日本の貿易収支がさらに悪化することに懸念が高まった。 なおロシア・ウクライナ情勢の悪化で原油の先物価格が高騰したのは、世界有数の石油や天然ガスの産出国であるロシアに対し、欧米各国などが経済制裁を発動したことにより、ロシアからの化石燃料の供給に黄信号が灯ったからだ。 今後も有事の際に同じような現象が起きる? 最後になるが、確かに今回のロシアによるウクライナ侵攻では、「リスクオフの円買い」は起きていない。しかし、それは今回のみの現象かもしれない。 「リスクオフの円買い」が本当にあてはまらなくなったかどうかを本格的に見極めるためには、次、さらには次の次の有事や経済危機などで、ドル円レートがどのように推移するかを確認する必要があるといえるだろう。
相場の先行きが不透明なときに起こるとされる「リスクオフの円買い」とは何か。
「リスクオフの円買い」とは、こうした相場の先行きが不透明な中で、「安全資産」と呼ばれる日本円を買う動きのことを指す。
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金融
「リスクオフの円買い」とは? 「リスクオフの円買い」における「リスクオフ」とは、投資資産をリスクが高めの資産からリスクが低めの資産に移す動きのことを指す。つまり、リスクを極力回避しようという投資家の行動を意味している。 ちなみに対義語は「リスクオン」で、リスクが高い投資対象に資産を移し、多少のリスクを抱えても積極的に高いリターンを狙おうという動きのことを指す。 投資家がリスクを抑えたくなるときは、相場の先行きが懸念されるときだ。例えば、株式を保有したまま株式相場が大幅に下落すれば、保有株式の価値は大きく目減りする。そのため投資家は株式を売り、相場の下落が影響しないような資産の保有に切り替えようとする。 「リスクオフの円買い」とは、こうした相場の先行きが不透明な中で、「安全資産」と呼ばれる日本円を買う動きのことを指す。特に戦争などの有事は相場の先行きの不透明感を一気に高めるため、「有事の円買い」という呼ばれ方もする。 歴史における経験則が生んだ相場格言 この「リスクオフの円買い」は歴史における経験則として、投資の世界で相場格言として使われるようになっていた。 例えば、2001年9月に米同時多発テロが起きた際、ドル円相場は円高方向に4円近く動いた。 2008年に起きたリーマン・ショックでは、この年の9~12月にかけて20円以上円高方向に振れた。2011年3月の東日本大震災発生後は、3~10月にかけて7円以上円高が進んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が起きた2020年は、3月~12月にかけて6円以上の円高となった。 しかし、ロシアがウクライナへ侵攻した2022年2月24日以降、しばらくは円高方向に為替レートが振れず、逆にその後、円安方向に為替レートが動き、市場関係者を驚かせた。「リスクオフの円買い」の相場格言が意味することの逆の現象が起きたわけだ。 具体的には、ドル円レートは115円前後で推移している状況が続いていたが、3月10日に一時116円台に乗せ、117円、118円、119円と、するすると円安方向に動いていった。3月28日には125円台に乗せ、2015年8月12日以来の水準となった。 ウクライナ侵攻では「円買い」は起きなかった では、ロシアによるウクライナ侵攻では、なぜ「リスクオフの円買い」という相場格言が当てはまらない現象が起きたのか。 為替レートは世界中の市場関係者のさまざまな思惑によって動くため、その背景を正確に説明するのは簡単ではない。しかし、「安全資産」としての日本円の地位が揺らいでいることが原因だと分析する市場関係者が多い。 日本円への信頼が揺らぎ始めている理由は何か? 日本円が安全資産と言われてきた理由は、日本の貿易収支は長らく黒字であり、円の価値が低くなりにくい状況が続いてきたからだ。日本の貿易収支が黒字だと、貨幣の需給の関係上、円の価値が低くなりにくく、日本円の安全資産としての信用度が高くなる。 しかし、日本では近年、貿易赤字となる月も出てきており、安全資産としての円の信頼性は揺らぎつつあった。 貿易黒字の牽引役はこれまで、多数の製品を海外に輸出する製造業だった。しかし、製造業界の企業が安価な労働力などを求めて海外に拠点を設けるケースが増え、工業製品の輸出ルートが「日本から海外」ではなくなりつつある。 また、東日本大震災の発生後、国内の原子力発電所による発電量が減り、火力発電のために化石燃料の輸入を増やさざるを得なかったことも、貿易黒字の縮小の要因となった。そしてロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い、原油や天然ガスの先物価格が高騰したことで、化石燃料を多く輸入するようになった日本の貿易収支がさらに悪化することに懸念が高まった。 なおロシア・ウクライナ情勢の悪化で原油の先物価格が高騰したのは、世界有数の石油や天然ガスの産出国であるロシアに対し、欧米各国などが経済制裁を発動したことにより、ロシアからの化石燃料の供給に黄信号が灯ったからだ。 今後も有事の際に同じような現象が起きる? 最後になるが、確かに今回のロシアによるウクライナ侵攻では、「リスクオフの円買い」は起きていない。しかし、それは今回のみの現象かもしれない。 「リスクオフの円買い」が本当にあてはまらなくなったかどうかを本格的に見極めるためには、次、さらには次の次の有事や経済危機などで、ドル円レートがどのように推移するかを確認する必要があるといえるだろう。
2008年のリーマン・ショックの際、ドル円相場はどのように動いたか。
2008年のリーマン・ショックの際、ドル円相場はこの年の9~12月にかけて20円以上円高方向に振れた。
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金融
「リスクオフの円買い」とは? 「リスクオフの円買い」における「リスクオフ」とは、投資資産をリスクが高めの資産からリスクが低めの資産に移す動きのことを指す。つまり、リスクを極力回避しようという投資家の行動を意味している。 ちなみに対義語は「リスクオン」で、リスクが高い投資対象に資産を移し、多少のリスクを抱えても積極的に高いリターンを狙おうという動きのことを指す。 投資家がリスクを抑えたくなるときは、相場の先行きが懸念されるときだ。例えば、株式を保有したまま株式相場が大幅に下落すれば、保有株式の価値は大きく目減りする。そのため投資家は株式を売り、相場の下落が影響しないような資産の保有に切り替えようとする。 「リスクオフの円買い」とは、こうした相場の先行きが不透明な中で、「安全資産」と呼ばれる日本円を買う動きのことを指す。特に戦争などの有事は相場の先行きの不透明感を一気に高めるため、「有事の円買い」という呼ばれ方もする。 歴史における経験則が生んだ相場格言 この「リスクオフの円買い」は歴史における経験則として、投資の世界で相場格言として使われるようになっていた。 例えば、2001年9月に米同時多発テロが起きた際、ドル円相場は円高方向に4円近く動いた。 2008年に起きたリーマン・ショックでは、この年の9~12月にかけて20円以上円高方向に振れた。2011年3月の東日本大震災発生後は、3~10月にかけて7円以上円高が進んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が起きた2020年は、3月~12月にかけて6円以上の円高となった。 しかし、ロシアがウクライナへ侵攻した2022年2月24日以降、しばらくは円高方向に為替レートが振れず、逆にその後、円安方向に為替レートが動き、市場関係者を驚かせた。「リスクオフの円買い」の相場格言が意味することの逆の現象が起きたわけだ。 具体的には、ドル円レートは115円前後で推移している状況が続いていたが、3月10日に一時116円台に乗せ、117円、118円、119円と、するすると円安方向に動いていった。3月28日には125円台に乗せ、2015年8月12日以来の水準となった。 ウクライナ侵攻では「円買い」は起きなかった では、ロシアによるウクライナ侵攻では、なぜ「リスクオフの円買い」という相場格言が当てはまらない現象が起きたのか。 為替レートは世界中の市場関係者のさまざまな思惑によって動くため、その背景を正確に説明するのは簡単ではない。しかし、「安全資産」としての日本円の地位が揺らいでいることが原因だと分析する市場関係者が多い。 日本円への信頼が揺らぎ始めている理由は何か? 日本円が安全資産と言われてきた理由は、日本の貿易収支は長らく黒字であり、円の価値が低くなりにくい状況が続いてきたからだ。日本の貿易収支が黒字だと、貨幣の需給の関係上、円の価値が低くなりにくく、日本円の安全資産としての信用度が高くなる。 しかし、日本では近年、貿易赤字となる月も出てきており、安全資産としての円の信頼性は揺らぎつつあった。 貿易黒字の牽引役はこれまで、多数の製品を海外に輸出する製造業だった。しかし、製造業界の企業が安価な労働力などを求めて海外に拠点を設けるケースが増え、工業製品の輸出ルートが「日本から海外」ではなくなりつつある。 また、東日本大震災の発生後、国内の原子力発電所による発電量が減り、火力発電のために化石燃料の輸入を増やさざるを得なかったことも、貿易黒字の縮小の要因となった。そしてロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い、原油や天然ガスの先物価格が高騰したことで、化石燃料を多く輸入するようになった日本の貿易収支がさらに悪化することに懸念が高まった。 なおロシア・ウクライナ情勢の悪化で原油の先物価格が高騰したのは、世界有数の石油や天然ガスの産出国であるロシアに対し、欧米各国などが経済制裁を発動したことにより、ロシアからの化石燃料の供給に黄信号が灯ったからだ。 今後も有事の際に同じような現象が起きる? 最後になるが、確かに今回のロシアによるウクライナ侵攻では、「リスクオフの円買い」は起きていない。しかし、それは今回のみの現象かもしれない。 「リスクオフの円買い」が本当にあてはまらなくなったかどうかを本格的に見極めるためには、次、さらには次の次の有事や経済危機などで、ドル円レートがどのように推移するかを確認する必要があるといえるだろう。
日本円の「安全資産」としての信頼性が揺らいでいる要因の一つは何か。
日本円の「安全資産」としての信頼性が揺らいでいる要因の一つは、日本では近年、貿易赤字となる月も出てきていることです。
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金融
そもそもクリプト(Crypto)とは? クリプト(crypto-)は、もともと日本語で「秘密の○○」を意味する言葉です。近年では他の言葉と組みあわせて「暗号○○」という意味の単語が作られています。たとえば、投資対象や通貨などに利用されている「クリプトカレンシー(暗号通貨)」や「クリプトアセット(暗号資産)」が該当します。 1. Crypto Currency(クリプトカレンシー) クリプトカレンシーを直訳すると「暗号通貨」です。日本では当初「仮想通貨」とも呼ばれ、現金とは異なりインターネット上で管理されているデジタル通貨を意味します。 2017年4月に施行された改正資金決済法によって仮想通貨サービス業者への規制が整備され、仮想通貨の利用が公的に認められました。代表的な仮想通貨にはビットコインやイーサリアム、リップルなどがあります。 後述のように、現在では「暗号資産(Crypto Asset)」へと呼称の統一が進められていますが、暗号通貨や仮想通貨という呼び方は広く定着しています。 2. Crypto Asset(クリプトアセット) アセット(asset)は「資産」という意味を持つ言葉です。クリプトアセットは日本語で「暗号資産」と表され、インターネット上で管理される資産を指します。 3. Crypto Token(クリプトトークン) クリプトトークンとは、既存のブロックチェーン技術を用いて発行される一部の暗号資産のことです。暗号資産は、ブロックチェーンと呼ばれるネットワーク上の分散型データベースを介して取引されます。 仮想通貨と暗号資産は同じ意味 仮想通貨・暗号通貨(クリプトカレンシー)と暗号資産(クリプトアセット)はどちらも同じものを表す言葉です。 前述のとおり、日本ではこれまで「仮想通貨」「暗号通貨」という呼称が広く使われてきましたが、呼称を「暗号資産」に統一することが進められており、世界的には「Crypto Asset(クリプトアセット)」と呼ばれています。 呼び名が分かれている理由 日本で「仮想通貨」という呼称が浸透した理由のひとつに、法令で仮想通貨という呼称が使用されていたことが挙げられます。2017年の改正資金決済法第2条5項には「仮想通貨」と記載されていました。 しかし、2018年のG20サミットにおいて通常の法定通貨と区別するために「暗号資産(クリプトアセット)」の呼称が用いられたことを受け、同年12月には金融庁が「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」へと変更すると発表しました。 その後、2020年の改正資金決済法では「暗号資産」という呼称が使用されるなど、用語の統一が進められています。 暗号資産とは何か? 暗号資産を簡潔に言い表すと、「インターネット上で取引ができるデジタル資産」です。暗号資産はデジタル資産であり、物理的な紙幣や硬貨ではありません。暗号資産の取引には、データの暗号化によってブロックごとにまとめた取引履歴を、1本の鎖状につなげていく「ブロックチェーン」の技術を使用するため、比較的安全な資産の取引が可能です。 暗号資産の発行や換金は、暗号資産交換業者の交換所で行います。金融機関を通さず直接に取引できるため、手数料がかからず、休日や時間に関係なくいつでも取引できるメリットがあります。 暗号資産の特徴 法定通貨ではなく強制通用力を持たない 法定通貨とは、国家により強制通用力を認められた通貨のことです。日本の円やアメリカのドルなどが該当します。強制通用力とは決済の手段として認められている効力のことであり、日本では日本銀行法において日本銀行券(紙幣)が「法貨として無制限に通用する」と定められています。 出典:e-Gov法令検索|平成九年法律第八十九号 日本銀行法 一方、暗号資産は強制通用力を持ちません。そのため、決済の手段として使用できない店舗も多くあります。 商品やサービスの対価として利用できる 暗号資産はインターネット上でやり取りするため、国を問わず不特定の法人・個人との取引において利用できます。 日本でも、暗号資産を導入している店舗であれば商品を購入する際、暗号資産で支払いをすることもできます。決済の内容はブロックチェーンに記録され、分散的に管理されます。 投資対象として購入する人がいる 暗号資産は価値の変動が起こりやすいため、投資目的で購入する人も少なくありません。たとえば、ビットコインは発行枚数に上限があり、2,100万枚以上に増えることはありません。そのため、需要に応じてビットコインの価値が上下します。 暗号資産が誕生した当初は1単位当たりの価格が1円もしなかったにもかかわらず、近年では数百万円まで価値が上昇しました。暗号資産は少額でも購入できるため、気軽に始められる投資先として広く普及しています。 国による価値の保証がない 暗号資産は、法定通貨とは異なり国家から価値が保証されていません。法定通貨は、国の財政状況や政情といった要素によって価値が変動するものの、国家によって価値が保証されているため、安定的に取引される傾向にあります。 一方、暗号資産は、需要や信用度などさまざまな要素が影響するため、価値が激しく変動しやすい点に注意が必要です。 世界中で利用できる 暗号資産はインターネットを介してやり取りするため、インターネットにつながっている環境であればどこからでも取引を行えます。 通常の法定通貨による取引では、金融機関を介して送金・決済します。そのため、営業時間や手数料などを考慮しなければなりません。特に海外へ送金する際は高額な手数料がかかるデメリットがあります。 暗号資産の場合、時間や手数料を気にすることなく世界中の相手と取引ができるようになります。 暗号資産の種類は? ビットコインとアルトコインの違い アルトコインは英語で「Alternative Coin」と表し、ビットコイン以外の暗号資産を総称したものです。現在、アルトコインは何千もの種類があり、年々増加しています。 ほとんどの種類がビットコインを参考に作られましたが、種類によってコインの特徴や利用できる機能などが異なります。アルトコインの多くはビットコインよりも時価総額が小さいため、価格変動が大きくなりやすい点が特徴です。 1. ビットコイン ビットコインは世界で最初に開発された暗号資産です。もともと決済機能の効率化を目的に作られたため、限定的な機能しか持っていません。ビットコインは2017年頃から価値が急激に上昇しました。現在では暗号資産の中で時価総額が最も高く、取引量もトップです。 2. イーサリアム イーサリアムは、ビットコインに次いで有名なアルトコインです。イーサリアムの代表的な特徴として、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行契約機能が挙げられます。プラットフォーム型のブロックチェーンを利用し、利用者が設定した取引や契約内容などの条件が満たされた際に自動で履行される仕組みです。 また、イーサリアムはビットコインと異なり、発行上限が設定されていません。 3. リップル リップルは、国際送金をスピーディかつ低価格で行えるアルトコインとして知られています。リップル社は「RippleNet」と呼ばれる国際送金ネットワークを構築しているほか、通貨の管理や発行なども中央集権的に行っています。 独自機能の実用性が高く、大手の金融機関や企業が数多く参入しているなど、注目度の高いアルトコインです。
暗号資産を簡潔に言い表すとどんな特徴を持つ資産か。
暗号資産を簡潔に言い表すと、「インターネット上で取引ができるデジタル資産」です。
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そもそもクリプト(Crypto)とは? クリプト(crypto-)は、もともと日本語で「秘密の○○」を意味する言葉です。近年では他の言葉と組みあわせて「暗号○○」という意味の単語が作られています。たとえば、投資対象や通貨などに利用されている「クリプトカレンシー(暗号通貨)」や「クリプトアセット(暗号資産)」が該当します。 1. Crypto Currency(クリプトカレンシー) クリプトカレンシーを直訳すると「暗号通貨」です。日本では当初「仮想通貨」とも呼ばれ、現金とは異なりインターネット上で管理されているデジタル通貨を意味します。 2017年4月に施行された改正資金決済法によって仮想通貨サービス業者への規制が整備され、仮想通貨の利用が公的に認められました。代表的な仮想通貨にはビットコインやイーサリアム、リップルなどがあります。 後述のように、現在では「暗号資産(Crypto Asset)」へと呼称の統一が進められていますが、暗号通貨や仮想通貨という呼び方は広く定着しています。 2. Crypto Asset(クリプトアセット) アセット(asset)は「資産」という意味を持つ言葉です。クリプトアセットは日本語で「暗号資産」と表され、インターネット上で管理される資産を指します。 3. Crypto Token(クリプトトークン) クリプトトークンとは、既存のブロックチェーン技術を用いて発行される一部の暗号資産のことです。暗号資産は、ブロックチェーンと呼ばれるネットワーク上の分散型データベースを介して取引されます。 仮想通貨と暗号資産は同じ意味 仮想通貨・暗号通貨(クリプトカレンシー)と暗号資産(クリプトアセット)はどちらも同じものを表す言葉です。 前述のとおり、日本ではこれまで「仮想通貨」「暗号通貨」という呼称が広く使われてきましたが、呼称を「暗号資産」に統一することが進められており、世界的には「Crypto Asset(クリプトアセット)」と呼ばれています。 呼び名が分かれている理由 日本で「仮想通貨」という呼称が浸透した理由のひとつに、法令で仮想通貨という呼称が使用されていたことが挙げられます。2017年の改正資金決済法第2条5項には「仮想通貨」と記載されていました。 しかし、2018年のG20サミットにおいて通常の法定通貨と区別するために「暗号資産(クリプトアセット)」の呼称が用いられたことを受け、同年12月には金融庁が「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」へと変更すると発表しました。 その後、2020年の改正資金決済法では「暗号資産」という呼称が使用されるなど、用語の統一が進められています。 暗号資産とは何か? 暗号資産を簡潔に言い表すと、「インターネット上で取引ができるデジタル資産」です。暗号資産はデジタル資産であり、物理的な紙幣や硬貨ではありません。暗号資産の取引には、データの暗号化によってブロックごとにまとめた取引履歴を、1本の鎖状につなげていく「ブロックチェーン」の技術を使用するため、比較的安全な資産の取引が可能です。 暗号資産の発行や換金は、暗号資産交換業者の交換所で行います。金融機関を通さず直接に取引できるため、手数料がかからず、休日や時間に関係なくいつでも取引できるメリットがあります。 暗号資産の特徴 法定通貨ではなく強制通用力を持たない 法定通貨とは、国家により強制通用力を認められた通貨のことです。日本の円やアメリカのドルなどが該当します。強制通用力とは決済の手段として認められている効力のことであり、日本では日本銀行法において日本銀行券(紙幣)が「法貨として無制限に通用する」と定められています。 出典:e-Gov法令検索|平成九年法律第八十九号 日本銀行法 一方、暗号資産は強制通用力を持ちません。そのため、決済の手段として使用できない店舗も多くあります。 商品やサービスの対価として利用できる 暗号資産はインターネット上でやり取りするため、国を問わず不特定の法人・個人との取引において利用できます。 日本でも、暗号資産を導入している店舗であれば商品を購入する際、暗号資産で支払いをすることもできます。決済の内容はブロックチェーンに記録され、分散的に管理されます。 投資対象として購入する人がいる 暗号資産は価値の変動が起こりやすいため、投資目的で購入する人も少なくありません。たとえば、ビットコインは発行枚数に上限があり、2,100万枚以上に増えることはありません。そのため、需要に応じてビットコインの価値が上下します。 暗号資産が誕生した当初は1単位当たりの価格が1円もしなかったにもかかわらず、近年では数百万円まで価値が上昇しました。暗号資産は少額でも購入できるため、気軽に始められる投資先として広く普及しています。 国による価値の保証がない 暗号資産は、法定通貨とは異なり国家から価値が保証されていません。法定通貨は、国の財政状況や政情といった要素によって価値が変動するものの、国家によって価値が保証されているため、安定的に取引される傾向にあります。 一方、暗号資産は、需要や信用度などさまざまな要素が影響するため、価値が激しく変動しやすい点に注意が必要です。 世界中で利用できる 暗号資産はインターネットを介してやり取りするため、インターネットにつながっている環境であればどこからでも取引を行えます。 通常の法定通貨による取引では、金融機関を介して送金・決済します。そのため、営業時間や手数料などを考慮しなければなりません。特に海外へ送金する際は高額な手数料がかかるデメリットがあります。 暗号資産の場合、時間や手数料を気にすることなく世界中の相手と取引ができるようになります。 暗号資産の種類は? ビットコインとアルトコインの違い アルトコインは英語で「Alternative Coin」と表し、ビットコイン以外の暗号資産を総称したものです。現在、アルトコインは何千もの種類があり、年々増加しています。 ほとんどの種類がビットコインを参考に作られましたが、種類によってコインの特徴や利用できる機能などが異なります。アルトコインの多くはビットコインよりも時価総額が小さいため、価格変動が大きくなりやすい点が特徴です。 1. ビットコイン ビットコインは世界で最初に開発された暗号資産です。もともと決済機能の効率化を目的に作られたため、限定的な機能しか持っていません。ビットコインは2017年頃から価値が急激に上昇しました。現在では暗号資産の中で時価総額が最も高く、取引量もトップです。 2. イーサリアム イーサリアムは、ビットコインに次いで有名なアルトコインです。イーサリアムの代表的な特徴として、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行契約機能が挙げられます。プラットフォーム型のブロックチェーンを利用し、利用者が設定した取引や契約内容などの条件が満たされた際に自動で履行される仕組みです。 また、イーサリアムはビットコインと異なり、発行上限が設定されていません。 3. リップル リップルは、国際送金をスピーディかつ低価格で行えるアルトコインとして知られています。リップル社は「RippleNet」と呼ばれる国際送金ネットワークを構築しているほか、通貨の管理や発行なども中央集権的に行っています。 独自機能の実用性が高く、大手の金融機関や企業が数多く参入しているなど、注目度の高いアルトコインです。
2018年12月、金融庁は仮想通貨の呼称を何に変更すると発表したか。
2018年12月、金融庁は仮想通貨の呼称を「暗号資産」へと変更すると発表しました。
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金融
そもそもクリプト(Crypto)とは? クリプト(crypto-)は、もともと日本語で「秘密の○○」を意味する言葉です。近年では他の言葉と組みあわせて「暗号○○」という意味の単語が作られています。たとえば、投資対象や通貨などに利用されている「クリプトカレンシー(暗号通貨)」や「クリプトアセット(暗号資産)」が該当します。 1. Crypto Currency(クリプトカレンシー) クリプトカレンシーを直訳すると「暗号通貨」です。日本では当初「仮想通貨」とも呼ばれ、現金とは異なりインターネット上で管理されているデジタル通貨を意味します。 2017年4月に施行された改正資金決済法によって仮想通貨サービス業者への規制が整備され、仮想通貨の利用が公的に認められました。代表的な仮想通貨にはビットコインやイーサリアム、リップルなどがあります。 後述のように、現在では「暗号資産(Crypto Asset)」へと呼称の統一が進められていますが、暗号通貨や仮想通貨という呼び方は広く定着しています。 2. Crypto Asset(クリプトアセット) アセット(asset)は「資産」という意味を持つ言葉です。クリプトアセットは日本語で「暗号資産」と表され、インターネット上で管理される資産を指します。 3. Crypto Token(クリプトトークン) クリプトトークンとは、既存のブロックチェーン技術を用いて発行される一部の暗号資産のことです。暗号資産は、ブロックチェーンと呼ばれるネットワーク上の分散型データベースを介して取引されます。 仮想通貨と暗号資産は同じ意味 仮想通貨・暗号通貨(クリプトカレンシー)と暗号資産(クリプトアセット)はどちらも同じものを表す言葉です。 前述のとおり、日本ではこれまで「仮想通貨」「暗号通貨」という呼称が広く使われてきましたが、呼称を「暗号資産」に統一することが進められており、世界的には「Crypto Asset(クリプトアセット)」と呼ばれています。 呼び名が分かれている理由 日本で「仮想通貨」という呼称が浸透した理由のひとつに、法令で仮想通貨という呼称が使用されていたことが挙げられます。2017年の改正資金決済法第2条5項には「仮想通貨」と記載されていました。 しかし、2018年のG20サミットにおいて通常の法定通貨と区別するために「暗号資産(クリプトアセット)」の呼称が用いられたことを受け、同年12月には金融庁が「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」へと変更すると発表しました。 その後、2020年の改正資金決済法では「暗号資産」という呼称が使用されるなど、用語の統一が進められています。 暗号資産とは何か? 暗号資産を簡潔に言い表すと、「インターネット上で取引ができるデジタル資産」です。暗号資産はデジタル資産であり、物理的な紙幣や硬貨ではありません。暗号資産の取引には、データの暗号化によってブロックごとにまとめた取引履歴を、1本の鎖状につなげていく「ブロックチェーン」の技術を使用するため、比較的安全な資産の取引が可能です。 暗号資産の発行や換金は、暗号資産交換業者の交換所で行います。金融機関を通さず直接に取引できるため、手数料がかからず、休日や時間に関係なくいつでも取引できるメリットがあります。 暗号資産の特徴 法定通貨ではなく強制通用力を持たない 法定通貨とは、国家により強制通用力を認められた通貨のことです。日本の円やアメリカのドルなどが該当します。強制通用力とは決済の手段として認められている効力のことであり、日本では日本銀行法において日本銀行券(紙幣)が「法貨として無制限に通用する」と定められています。 出典:e-Gov法令検索|平成九年法律第八十九号 日本銀行法 一方、暗号資産は強制通用力を持ちません。そのため、決済の手段として使用できない店舗も多くあります。 商品やサービスの対価として利用できる 暗号資産はインターネット上でやり取りするため、国を問わず不特定の法人・個人との取引において利用できます。 日本でも、暗号資産を導入している店舗であれば商品を購入する際、暗号資産で支払いをすることもできます。決済の内容はブロックチェーンに記録され、分散的に管理されます。 投資対象として購入する人がいる 暗号資産は価値の変動が起こりやすいため、投資目的で購入する人も少なくありません。たとえば、ビットコインは発行枚数に上限があり、2,100万枚以上に増えることはありません。そのため、需要に応じてビットコインの価値が上下します。 暗号資産が誕生した当初は1単位当たりの価格が1円もしなかったにもかかわらず、近年では数百万円まで価値が上昇しました。暗号資産は少額でも購入できるため、気軽に始められる投資先として広く普及しています。 国による価値の保証がない 暗号資産は、法定通貨とは異なり国家から価値が保証されていません。法定通貨は、国の財政状況や政情といった要素によって価値が変動するものの、国家によって価値が保証されているため、安定的に取引される傾向にあります。 一方、暗号資産は、需要や信用度などさまざまな要素が影響するため、価値が激しく変動しやすい点に注意が必要です。 世界中で利用できる 暗号資産はインターネットを介してやり取りするため、インターネットにつながっている環境であればどこからでも取引を行えます。 通常の法定通貨による取引では、金融機関を介して送金・決済します。そのため、営業時間や手数料などを考慮しなければなりません。特に海外へ送金する際は高額な手数料がかかるデメリットがあります。 暗号資産の場合、時間や手数料を気にすることなく世界中の相手と取引ができるようになります。 暗号資産の種類は? ビットコインとアルトコインの違い アルトコインは英語で「Alternative Coin」と表し、ビットコイン以外の暗号資産を総称したものです。現在、アルトコインは何千もの種類があり、年々増加しています。 ほとんどの種類がビットコインを参考に作られましたが、種類によってコインの特徴や利用できる機能などが異なります。アルトコインの多くはビットコインよりも時価総額が小さいため、価格変動が大きくなりやすい点が特徴です。 1. ビットコイン ビットコインは世界で最初に開発された暗号資産です。もともと決済機能の効率化を目的に作られたため、限定的な機能しか持っていません。ビットコインは2017年頃から価値が急激に上昇しました。現在では暗号資産の中で時価総額が最も高く、取引量もトップです。 2. イーサリアム イーサリアムは、ビットコインに次いで有名なアルトコインです。イーサリアムの代表的な特徴として、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行契約機能が挙げられます。プラットフォーム型のブロックチェーンを利用し、利用者が設定した取引や契約内容などの条件が満たされた際に自動で履行される仕組みです。 また、イーサリアムはビットコインと異なり、発行上限が設定されていません。 3. リップル リップルは、国際送金をスピーディかつ低価格で行えるアルトコインとして知られています。リップル社は「RippleNet」と呼ばれる国際送金ネットワークを構築しているほか、通貨の管理や発行なども中央集権的に行っています。 独自機能の実用性が高く、大手の金融機関や企業が数多く参入しているなど、注目度の高いアルトコインです。
暗号資産が法定通貨と異なる点の一つとして挙げられる特徴は何か。
暗号資産が法定通貨と異なる点の一つとして挙げられる特徴は法定通貨とは異なり国家から価値が保証されていないことです。
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金融
そもそもクリプト(Crypto)とは? クリプト(crypto-)は、もともと日本語で「秘密の○○」を意味する言葉です。近年では他の言葉と組みあわせて「暗号○○」という意味の単語が作られています。たとえば、投資対象や通貨などに利用されている「クリプトカレンシー(暗号通貨)」や「クリプトアセット(暗号資産)」が該当します。 1. Crypto Currency(クリプトカレンシー) クリプトカレンシーを直訳すると「暗号通貨」です。日本では当初「仮想通貨」とも呼ばれ、現金とは異なりインターネット上で管理されているデジタル通貨を意味します。 2017年4月に施行された改正資金決済法によって仮想通貨サービス業者への規制が整備され、仮想通貨の利用が公的に認められました。代表的な仮想通貨にはビットコインやイーサリアム、リップルなどがあります。 後述のように、現在では「暗号資産(Crypto Asset)」へと呼称の統一が進められていますが、暗号通貨や仮想通貨という呼び方は広く定着しています。 2. Crypto Asset(クリプトアセット) アセット(asset)は「資産」という意味を持つ言葉です。クリプトアセットは日本語で「暗号資産」と表され、インターネット上で管理される資産を指します。 3. Crypto Token(クリプトトークン) クリプトトークンとは、既存のブロックチェーン技術を用いて発行される一部の暗号資産のことです。暗号資産は、ブロックチェーンと呼ばれるネットワーク上の分散型データベースを介して取引されます。 仮想通貨と暗号資産は同じ意味 仮想通貨・暗号通貨(クリプトカレンシー)と暗号資産(クリプトアセット)はどちらも同じものを表す言葉です。 前述のとおり、日本ではこれまで「仮想通貨」「暗号通貨」という呼称が広く使われてきましたが、呼称を「暗号資産」に統一することが進められており、世界的には「Crypto Asset(クリプトアセット)」と呼ばれています。 呼び名が分かれている理由 日本で「仮想通貨」という呼称が浸透した理由のひとつに、法令で仮想通貨という呼称が使用されていたことが挙げられます。2017年の改正資金決済法第2条5項には「仮想通貨」と記載されていました。 しかし、2018年のG20サミットにおいて通常の法定通貨と区別するために「暗号資産(クリプトアセット)」の呼称が用いられたことを受け、同年12月には金融庁が「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」へと変更すると発表しました。 その後、2020年の改正資金決済法では「暗号資産」という呼称が使用されるなど、用語の統一が進められています。 暗号資産とは何か? 暗号資産を簡潔に言い表すと、「インターネット上で取引ができるデジタル資産」です。暗号資産はデジタル資産であり、物理的な紙幣や硬貨ではありません。暗号資産の取引には、データの暗号化によってブロックごとにまとめた取引履歴を、1本の鎖状につなげていく「ブロックチェーン」の技術を使用するため、比較的安全な資産の取引が可能です。 暗号資産の発行や換金は、暗号資産交換業者の交換所で行います。金融機関を通さず直接に取引できるため、手数料がかからず、休日や時間に関係なくいつでも取引できるメリットがあります。 暗号資産の特徴 法定通貨ではなく強制通用力を持たない 法定通貨とは、国家により強制通用力を認められた通貨のことです。日本の円やアメリカのドルなどが該当します。強制通用力とは決済の手段として認められている効力のことであり、日本では日本銀行法において日本銀行券(紙幣)が「法貨として無制限に通用する」と定められています。 出典:e-Gov法令検索|平成九年法律第八十九号 日本銀行法 一方、暗号資産は強制通用力を持ちません。そのため、決済の手段として使用できない店舗も多くあります。 商品やサービスの対価として利用できる 暗号資産はインターネット上でやり取りするため、国を問わず不特定の法人・個人との取引において利用できます。 日本でも、暗号資産を導入している店舗であれば商品を購入する際、暗号資産で支払いをすることもできます。決済の内容はブロックチェーンに記録され、分散的に管理されます。 投資対象として購入する人がいる 暗号資産は価値の変動が起こりやすいため、投資目的で購入する人も少なくありません。たとえば、ビットコインは発行枚数に上限があり、2,100万枚以上に増えることはありません。そのため、需要に応じてビットコインの価値が上下します。 暗号資産が誕生した当初は1単位当たりの価格が1円もしなかったにもかかわらず、近年では数百万円まで価値が上昇しました。暗号資産は少額でも購入できるため、気軽に始められる投資先として広く普及しています。 国による価値の保証がない 暗号資産は、法定通貨とは異なり国家から価値が保証されていません。法定通貨は、国の財政状況や政情といった要素によって価値が変動するものの、国家によって価値が保証されているため、安定的に取引される傾向にあります。 一方、暗号資産は、需要や信用度などさまざまな要素が影響するため、価値が激しく変動しやすい点に注意が必要です。 世界中で利用できる 暗号資産はインターネットを介してやり取りするため、インターネットにつながっている環境であればどこからでも取引を行えます。 通常の法定通貨による取引では、金融機関を介して送金・決済します。そのため、営業時間や手数料などを考慮しなければなりません。特に海外へ送金する際は高額な手数料がかかるデメリットがあります。 暗号資産の場合、時間や手数料を気にすることなく世界中の相手と取引ができるようになります。 暗号資産の種類は? ビットコインとアルトコインの違い アルトコインは英語で「Alternative Coin」と表し、ビットコイン以外の暗号資産を総称したものです。現在、アルトコインは何千もの種類があり、年々増加しています。 ほとんどの種類がビットコインを参考に作られましたが、種類によってコインの特徴や利用できる機能などが異なります。アルトコインの多くはビットコインよりも時価総額が小さいため、価格変動が大きくなりやすい点が特徴です。 1. ビットコイン ビットコインは世界で最初に開発された暗号資産です。もともと決済機能の効率化を目的に作られたため、限定的な機能しか持っていません。ビットコインは2017年頃から価値が急激に上昇しました。現在では暗号資産の中で時価総額が最も高く、取引量もトップです。 2. イーサリアム イーサリアムは、ビットコインに次いで有名なアルトコインです。イーサリアムの代表的な特徴として、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行契約機能が挙げられます。プラットフォーム型のブロックチェーンを利用し、利用者が設定した取引や契約内容などの条件が満たされた際に自動で履行される仕組みです。 また、イーサリアムはビットコインと異なり、発行上限が設定されていません。 3. リップル リップルは、国際送金をスピーディかつ低価格で行えるアルトコインとして知られています。リップル社は「RippleNet」と呼ばれる国際送金ネットワークを構築しているほか、通貨の管理や発行なども中央集権的に行っています。 独自機能の実用性が高く、大手の金融機関や企業が数多く参入しているなど、注目度の高いアルトコインです。
アルトコインとはどのような暗号資産のことを指すか。
アルトコインは英語で「Alternative Coin」と表し、ビットコイン以外の暗号資産を総称したものです。
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金融
そもそもクリプト(Crypto)とは? クリプト(crypto-)は、もともと日本語で「秘密の○○」を意味する言葉です。近年では他の言葉と組みあわせて「暗号○○」という意味の単語が作られています。たとえば、投資対象や通貨などに利用されている「クリプトカレンシー(暗号通貨)」や「クリプトアセット(暗号資産)」が該当します。 1. Crypto Currency(クリプトカレンシー) クリプトカレンシーを直訳すると「暗号通貨」です。日本では当初「仮想通貨」とも呼ばれ、現金とは異なりインターネット上で管理されているデジタル通貨を意味します。 2017年4月に施行された改正資金決済法によって仮想通貨サービス業者への規制が整備され、仮想通貨の利用が公的に認められました。代表的な仮想通貨にはビットコインやイーサリアム、リップルなどがあります。 後述のように、現在では「暗号資産(Crypto Asset)」へと呼称の統一が進められていますが、暗号通貨や仮想通貨という呼び方は広く定着しています。 2. Crypto Asset(クリプトアセット) アセット(asset)は「資産」という意味を持つ言葉です。クリプトアセットは日本語で「暗号資産」と表され、インターネット上で管理される資産を指します。 3. Crypto Token(クリプトトークン) クリプトトークンとは、既存のブロックチェーン技術を用いて発行される一部の暗号資産のことです。暗号資産は、ブロックチェーンと呼ばれるネットワーク上の分散型データベースを介して取引されます。 仮想通貨と暗号資産は同じ意味 仮想通貨・暗号通貨(クリプトカレンシー)と暗号資産(クリプトアセット)はどちらも同じものを表す言葉です。 前述のとおり、日本ではこれまで「仮想通貨」「暗号通貨」という呼称が広く使われてきましたが、呼称を「暗号資産」に統一することが進められており、世界的には「Crypto Asset(クリプトアセット)」と呼ばれています。 呼び名が分かれている理由 日本で「仮想通貨」という呼称が浸透した理由のひとつに、法令で仮想通貨という呼称が使用されていたことが挙げられます。2017年の改正資金決済法第2条5項には「仮想通貨」と記載されていました。 しかし、2018年のG20サミットにおいて通常の法定通貨と区別するために「暗号資産(クリプトアセット)」の呼称が用いられたことを受け、同年12月には金融庁が「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」へと変更すると発表しました。 その後、2020年の改正資金決済法では「暗号資産」という呼称が使用されるなど、用語の統一が進められています。 暗号資産とは何か? 暗号資産を簡潔に言い表すと、「インターネット上で取引ができるデジタル資産」です。暗号資産はデジタル資産であり、物理的な紙幣や硬貨ではありません。暗号資産の取引には、データの暗号化によってブロックごとにまとめた取引履歴を、1本の鎖状につなげていく「ブロックチェーン」の技術を使用するため、比較的安全な資産の取引が可能です。 暗号資産の発行や換金は、暗号資産交換業者の交換所で行います。金融機関を通さず直接に取引できるため、手数料がかからず、休日や時間に関係なくいつでも取引できるメリットがあります。 暗号資産の特徴 法定通貨ではなく強制通用力を持たない 法定通貨とは、国家により強制通用力を認められた通貨のことです。日本の円やアメリカのドルなどが該当します。強制通用力とは決済の手段として認められている効力のことであり、日本では日本銀行法において日本銀行券(紙幣)が「法貨として無制限に通用する」と定められています。 出典:e-Gov法令検索|平成九年法律第八十九号 日本銀行法 一方、暗号資産は強制通用力を持ちません。そのため、決済の手段として使用できない店舗も多くあります。 商品やサービスの対価として利用できる 暗号資産はインターネット上でやり取りするため、国を問わず不特定の法人・個人との取引において利用できます。 日本でも、暗号資産を導入している店舗であれば商品を購入する際、暗号資産で支払いをすることもできます。決済の内容はブロックチェーンに記録され、分散的に管理されます。 投資対象として購入する人がいる 暗号資産は価値の変動が起こりやすいため、投資目的で購入する人も少なくありません。たとえば、ビットコインは発行枚数に上限があり、2,100万枚以上に増えることはありません。そのため、需要に応じてビットコインの価値が上下します。 暗号資産が誕生した当初は1単位当たりの価格が1円もしなかったにもかかわらず、近年では数百万円まで価値が上昇しました。暗号資産は少額でも購入できるため、気軽に始められる投資先として広く普及しています。 国による価値の保証がない 暗号資産は、法定通貨とは異なり国家から価値が保証されていません。法定通貨は、国の財政状況や政情といった要素によって価値が変動するものの、国家によって価値が保証されているため、安定的に取引される傾向にあります。 一方、暗号資産は、需要や信用度などさまざまな要素が影響するため、価値が激しく変動しやすい点に注意が必要です。 世界中で利用できる 暗号資産はインターネットを介してやり取りするため、インターネットにつながっている環境であればどこからでも取引を行えます。 通常の法定通貨による取引では、金融機関を介して送金・決済します。そのため、営業時間や手数料などを考慮しなければなりません。特に海外へ送金する際は高額な手数料がかかるデメリットがあります。 暗号資産の場合、時間や手数料を気にすることなく世界中の相手と取引ができるようになります。 暗号資産の種類は? ビットコインとアルトコインの違い アルトコインは英語で「Alternative Coin」と表し、ビットコイン以外の暗号資産を総称したものです。現在、アルトコインは何千もの種類があり、年々増加しています。 ほとんどの種類がビットコインを参考に作られましたが、種類によってコインの特徴や利用できる機能などが異なります。アルトコインの多くはビットコインよりも時価総額が小さいため、価格変動が大きくなりやすい点が特徴です。 1. ビットコイン ビットコインは世界で最初に開発された暗号資産です。もともと決済機能の効率化を目的に作られたため、限定的な機能しか持っていません。ビットコインは2017年頃から価値が急激に上昇しました。現在では暗号資産の中で時価総額が最も高く、取引量もトップです。 2. イーサリアム イーサリアムは、ビットコインに次いで有名なアルトコインです。イーサリアムの代表的な特徴として、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行契約機能が挙げられます。プラットフォーム型のブロックチェーンを利用し、利用者が設定した取引や契約内容などの条件が満たされた際に自動で履行される仕組みです。 また、イーサリアムはビットコインと異なり、発行上限が設定されていません。 3. リップル リップルは、国際送金をスピーディかつ低価格で行えるアルトコインとして知られています。リップル社は「RippleNet」と呼ばれる国際送金ネットワークを構築しているほか、通貨の管理や発行なども中央集権的に行っています。 独自機能の実用性が高く、大手の金融機関や企業が数多く参入しているなど、注目度の高いアルトコインです。
イーサリアムの代表的な特徴は何か。
イーサリアムの代表的な特徴として、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行契約機能が挙げられます。
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金融
デリバティブとは デリバティブとは、通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品のことを指し、「金融派生商品」とも呼ばれます。 デリバティブの価値は原資産の価値によって決まります。これらの商品を取引することを、「デリバティブ取引」と呼びます。 取引の手段や決済のルールによってさまざまな商品があり、「デリバティブ」や「デリバティブ取引」はそれらの総称となります。 デリバティブ取引を行うには一定の知識が求められますが、証券会社などで対象の口座を開設することで取引できるようになります。 デリバティブの取引の種類 デリバティブには、大まかに分けて次の種類の取引があります。 先物取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で売買する取引です。新規で売買した時点での市場価格と決済した時点における約定価格の差額が、その先物取引における損益となります。 関連リンク:先物取引とは?メリット・デメリット・リスクなどをわかりやすく解説 オプション取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で購入、もしくは売却する権利を売買する取引です。 先物取引と異なるのは、先物取引が約定した期日に必ず取引と決済が行われるのに対して、オプション取引は権利を行使するか(実際に取引を行うか)を、本人が選べる点です。 スワップ取引 将来発生する利息について、異なるタイプの資産で交換する取引です。スワップ取引には、変動金利の代わりに固定金利で(あるいは、固定金利の代わりに変動金利で)利息を受け取る金利スワップと、ドル建て債券の利息の代わりに円建て債券の利息(あるいは、円建て債券の利息の代わりにドル建て債券の利息)を受け取る通貨スワップがあります。 為替予約 あらかじめ約定した日、またはその期間中に外国為替を売却または購入することを約定する取引です。 デリバティブの対象となるもの 先に解説したとおり、デリバティブ取引は多様な原資産の値動きが取引の対象となります。たとえば、先物取引には穀物などの現物として存在する商品を扱う場合もあれば、株式や債券などの金融商品の値動きを対象とした商品も存在します。 他にもさまざまなデリバティブ取引を扱う商品が資産運用をする人のニーズに応じて考案され、資産運用の手段として提供されています。 デリバティブの活用シーン デリバティブ取引を適切に利用することで、将来発生する可能性があるリスクを軽減する、リスクヘッジが可能です。 たとえば将来において、ある商品を購入する予定であるとします。その商品がこれから急激に値上がりするリスクがあった場合、あらかじめ先物取引において一定の価格で購入する契約をしておくことで、将来値上がりした場合も、事前に契約しておいた価格で購入できます。これを「買いヘッジ」と呼びます。 同様にある商品を売却する予定である場合に、将来の値下がりリスクに備えて一定の価格で売却する契約をしておくことを「売りヘッジ」と呼びます。 他にもデリバティブ取引では証拠金の払い込みだけで取引を開始できる場合もあるなど、原資産を直接やり取りする投資商品よりも比較的少額で取引を始められる場合もあります。 このようにデリバティブ取引はリスクヘッジができ、少額から始められる効率的な資産運用の手段として活用することができます。 ただし、リスクヘッジを行ったとしても、すべてのリスクを排除することはできません。取引で損失が発生した場合、その金額を支払う必要がある点に注意が必要です。 デリバティブ投資を行うメリット デリバティブ投資を行うことで、以下のメリットを得られます。 レバレッジ効果がある デリバティブ取引は開始時に証拠金を払い込むことで取引が成立するため、元手以上の取引も可能です。そのため、少額の投資でも大きなリターンを期待できる場合があります。 この効果のことを「レバレッジ」と呼びます。 ただし、利益だけでなく損失にもレバレッジがかかり、元手以上の損失が発生する可能性がある点には注意が必要です。 リスクを最小限に抑えた資産運用ができる デリバティブ取引と株式などの原資産の取引を組み合わせることで、物価や為替の大きな変動リスクに備えられます。 たとえば、原資産の購入と同時に先物市場で購入とは反対の売り建ての予約をすることで、売却額を固定化して損失を一定額までに抑えられるようになるなど、工夫次第でリスクを最小限に抑えた資産運用が可能です。 夜間に取引ができる 一般的に、株式市場の取引時間は平日昼間の数時間に限られています。それに対してデリバティブ取引は夜間や休日にも取引が可能な場合が多いため(※)、平日昼間に取引を行うのが難しいという方でも、取引に参加しやすくなっています。 ※ 商品によって取引時間は異なります。 相場が下落局面でも利益を狙うことができる 株式などの現物(原資産)の取引は、相場が下落しているときに売買で利益を狙えません。 それに対して、デリバティブ取引は買いと売り双方のポジションで取引が可能なため、相場の下落局面でも売りのポジションを持つことで利益を狙えます。 デリバティブ投資を行うデメリットと注意点 一方、デリバティブ取引を行う際は、次のデメリットと注意点を認識しておく必要があります。 複雑な仕組みを理解する必要がある デリバティブ取引には、商品や契約の内容が複雑なものも多くなっています。内容を正しく理解しないまま取引を行うことは、思わぬ損失を発生させてしまうことに繋がりかねません。 デリバティブ取引におけるレバレッジの効果は、少額で大きなリターンが期待できるという点では確かにメリットです。しかし、損失が出た場合にもその損失額が大きくなる仕組みのため、その場合はレバレッジの負の効果が生じ、デメリットにもなり得ます。 予想し得ない値動きをした際には想定し得ない損失を抱える可能性もあります。商品や契約の内容を適切に理解していなければ、これらの損失の予測は難しく、適切にリスク管理もできません。 適切なリスク管理がカギを握る 適切なリスク管理を行うためには、前述のとおり、取引の前に商品の内容について正しく理解しておく必要があります。 自分が投資した金額に対し期待できる利益の他、損失が出た場合にどの程度の損失が出る可能性があるのか、どこまでであればリスクとして許容できるのか、などを十分に検討のうえ、自身でリスク管理をできる範囲で取引を行いましょう。
デリバティブとはどのような金融商品ですか。
デリバティブとは、通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品のことを指し、「金融派生商品」とも呼ばれる金融商品です。
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金融
デリバティブとは デリバティブとは、通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品のことを指し、「金融派生商品」とも呼ばれます。 デリバティブの価値は原資産の価値によって決まります。これらの商品を取引することを、「デリバティブ取引」と呼びます。 取引の手段や決済のルールによってさまざまな商品があり、「デリバティブ」や「デリバティブ取引」はそれらの総称となります。 デリバティブ取引を行うには一定の知識が求められますが、証券会社などで対象の口座を開設することで取引できるようになります。 デリバティブの取引の種類 デリバティブには、大まかに分けて次の種類の取引があります。 先物取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で売買する取引です。新規で売買した時点での市場価格と決済した時点における約定価格の差額が、その先物取引における損益となります。 関連リンク:先物取引とは?メリット・デメリット・リスクなどをわかりやすく解説 オプション取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で購入、もしくは売却する権利を売買する取引です。 先物取引と異なるのは、先物取引が約定した期日に必ず取引と決済が行われるのに対して、オプション取引は権利を行使するか(実際に取引を行うか)を、本人が選べる点です。 スワップ取引 将来発生する利息について、異なるタイプの資産で交換する取引です。スワップ取引には、変動金利の代わりに固定金利で(あるいは、固定金利の代わりに変動金利で)利息を受け取る金利スワップと、ドル建て債券の利息の代わりに円建て債券の利息(あるいは、円建て債券の利息の代わりにドル建て債券の利息)を受け取る通貨スワップがあります。 為替予約 あらかじめ約定した日、またはその期間中に外国為替を売却または購入することを約定する取引です。 デリバティブの対象となるもの 先に解説したとおり、デリバティブ取引は多様な原資産の値動きが取引の対象となります。たとえば、先物取引には穀物などの現物として存在する商品を扱う場合もあれば、株式や債券などの金融商品の値動きを対象とした商品も存在します。 他にもさまざまなデリバティブ取引を扱う商品が資産運用をする人のニーズに応じて考案され、資産運用の手段として提供されています。 デリバティブの活用シーン デリバティブ取引を適切に利用することで、将来発生する可能性があるリスクを軽減する、リスクヘッジが可能です。 たとえば将来において、ある商品を購入する予定であるとします。その商品がこれから急激に値上がりするリスクがあった場合、あらかじめ先物取引において一定の価格で購入する契約をしておくことで、将来値上がりした場合も、事前に契約しておいた価格で購入できます。これを「買いヘッジ」と呼びます。 同様にある商品を売却する予定である場合に、将来の値下がりリスクに備えて一定の価格で売却する契約をしておくことを「売りヘッジ」と呼びます。 他にもデリバティブ取引では証拠金の払い込みだけで取引を開始できる場合もあるなど、原資産を直接やり取りする投資商品よりも比較的少額で取引を始められる場合もあります。 このようにデリバティブ取引はリスクヘッジができ、少額から始められる効率的な資産運用の手段として活用することができます。 ただし、リスクヘッジを行ったとしても、すべてのリスクを排除することはできません。取引で損失が発生した場合、その金額を支払う必要がある点に注意が必要です。 デリバティブ投資を行うメリット デリバティブ投資を行うことで、以下のメリットを得られます。 レバレッジ効果がある デリバティブ取引は開始時に証拠金を払い込むことで取引が成立するため、元手以上の取引も可能です。そのため、少額の投資でも大きなリターンを期待できる場合があります。 この効果のことを「レバレッジ」と呼びます。 ただし、利益だけでなく損失にもレバレッジがかかり、元手以上の損失が発生する可能性がある点には注意が必要です。 リスクを最小限に抑えた資産運用ができる デリバティブ取引と株式などの原資産の取引を組み合わせることで、物価や為替の大きな変動リスクに備えられます。 たとえば、原資産の購入と同時に先物市場で購入とは反対の売り建ての予約をすることで、売却額を固定化して損失を一定額までに抑えられるようになるなど、工夫次第でリスクを最小限に抑えた資産運用が可能です。 夜間に取引ができる 一般的に、株式市場の取引時間は平日昼間の数時間に限られています。それに対してデリバティブ取引は夜間や休日にも取引が可能な場合が多いため(※)、平日昼間に取引を行うのが難しいという方でも、取引に参加しやすくなっています。 ※ 商品によって取引時間は異なります。 相場が下落局面でも利益を狙うことができる 株式などの現物(原資産)の取引は、相場が下落しているときに売買で利益を狙えません。 それに対して、デリバティブ取引は買いと売り双方のポジションで取引が可能なため、相場の下落局面でも売りのポジションを持つことで利益を狙えます。 デリバティブ投資を行うデメリットと注意点 一方、デリバティブ取引を行う際は、次のデメリットと注意点を認識しておく必要があります。 複雑な仕組みを理解する必要がある デリバティブ取引には、商品や契約の内容が複雑なものも多くなっています。内容を正しく理解しないまま取引を行うことは、思わぬ損失を発生させてしまうことに繋がりかねません。 デリバティブ取引におけるレバレッジの効果は、少額で大きなリターンが期待できるという点では確かにメリットです。しかし、損失が出た場合にもその損失額が大きくなる仕組みのため、その場合はレバレッジの負の効果が生じ、デメリットにもなり得ます。 予想し得ない値動きをした際には想定し得ない損失を抱える可能性もあります。商品や契約の内容を適切に理解していなければ、これらの損失の予測は難しく、適切にリスク管理もできません。 適切なリスク管理がカギを握る 適切なリスク管理を行うためには、前述のとおり、取引の前に商品の内容について正しく理解しておく必要があります。 自分が投資した金額に対し期待できる利益の他、損失が出た場合にどの程度の損失が出る可能性があるのか、どこまでであればリスクとして許容できるのか、などを十分に検討のうえ、自身でリスク管理をできる範囲で取引を行いましょう。
オプション取引が先物取引と異なる点は何か。
オプション取引が先物取引と異なる点は、先物取引が約定した期日に必ず取引と決済が行われるのに対して、オプション取引は権利を行使するか(実際に取引を行うか)を、本人が選べる点です。
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金融
デリバティブとは デリバティブとは、通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品のことを指し、「金融派生商品」とも呼ばれます。 デリバティブの価値は原資産の価値によって決まります。これらの商品を取引することを、「デリバティブ取引」と呼びます。 取引の手段や決済のルールによってさまざまな商品があり、「デリバティブ」や「デリバティブ取引」はそれらの総称となります。 デリバティブ取引を行うには一定の知識が求められますが、証券会社などで対象の口座を開設することで取引できるようになります。 デリバティブの取引の種類 デリバティブには、大まかに分けて次の種類の取引があります。 先物取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で売買する取引です。新規で売買した時点での市場価格と決済した時点における約定価格の差額が、その先物取引における損益となります。 関連リンク:先物取引とは?メリット・デメリット・リスクなどをわかりやすく解説 オプション取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で購入、もしくは売却する権利を売買する取引です。 先物取引と異なるのは、先物取引が約定した期日に必ず取引と決済が行われるのに対して、オプション取引は権利を行使するか(実際に取引を行うか)を、本人が選べる点です。 スワップ取引 将来発生する利息について、異なるタイプの資産で交換する取引です。スワップ取引には、変動金利の代わりに固定金利で(あるいは、固定金利の代わりに変動金利で)利息を受け取る金利スワップと、ドル建て債券の利息の代わりに円建て債券の利息(あるいは、円建て債券の利息の代わりにドル建て債券の利息)を受け取る通貨スワップがあります。 為替予約 あらかじめ約定した日、またはその期間中に外国為替を売却または購入することを約定する取引です。 デリバティブの対象となるもの 先に解説したとおり、デリバティブ取引は多様な原資産の値動きが取引の対象となります。たとえば、先物取引には穀物などの現物として存在する商品を扱う場合もあれば、株式や債券などの金融商品の値動きを対象とした商品も存在します。 他にもさまざまなデリバティブ取引を扱う商品が資産運用をする人のニーズに応じて考案され、資産運用の手段として提供されています。 デリバティブの活用シーン デリバティブ取引を適切に利用することで、将来発生する可能性があるリスクを軽減する、リスクヘッジが可能です。 たとえば将来において、ある商品を購入する予定であるとします。その商品がこれから急激に値上がりするリスクがあった場合、あらかじめ先物取引において一定の価格で購入する契約をしておくことで、将来値上がりした場合も、事前に契約しておいた価格で購入できます。これを「買いヘッジ」と呼びます。 同様にある商品を売却する予定である場合に、将来の値下がりリスクに備えて一定の価格で売却する契約をしておくことを「売りヘッジ」と呼びます。 他にもデリバティブ取引では証拠金の払い込みだけで取引を開始できる場合もあるなど、原資産を直接やり取りする投資商品よりも比較的少額で取引を始められる場合もあります。 このようにデリバティブ取引はリスクヘッジができ、少額から始められる効率的な資産運用の手段として活用することができます。 ただし、リスクヘッジを行ったとしても、すべてのリスクを排除することはできません。取引で損失が発生した場合、その金額を支払う必要がある点に注意が必要です。 デリバティブ投資を行うメリット デリバティブ投資を行うことで、以下のメリットを得られます。 レバレッジ効果がある デリバティブ取引は開始時に証拠金を払い込むことで取引が成立するため、元手以上の取引も可能です。そのため、少額の投資でも大きなリターンを期待できる場合があります。 この効果のことを「レバレッジ」と呼びます。 ただし、利益だけでなく損失にもレバレッジがかかり、元手以上の損失が発生する可能性がある点には注意が必要です。 リスクを最小限に抑えた資産運用ができる デリバティブ取引と株式などの原資産の取引を組み合わせることで、物価や為替の大きな変動リスクに備えられます。 たとえば、原資産の購入と同時に先物市場で購入とは反対の売り建ての予約をすることで、売却額を固定化して損失を一定額までに抑えられるようになるなど、工夫次第でリスクを最小限に抑えた資産運用が可能です。 夜間に取引ができる 一般的に、株式市場の取引時間は平日昼間の数時間に限られています。それに対してデリバティブ取引は夜間や休日にも取引が可能な場合が多いため(※)、平日昼間に取引を行うのが難しいという方でも、取引に参加しやすくなっています。 ※ 商品によって取引時間は異なります。 相場が下落局面でも利益を狙うことができる 株式などの現物(原資産)の取引は、相場が下落しているときに売買で利益を狙えません。 それに対して、デリバティブ取引は買いと売り双方のポジションで取引が可能なため、相場の下落局面でも売りのポジションを持つことで利益を狙えます。 デリバティブ投資を行うデメリットと注意点 一方、デリバティブ取引を行う際は、次のデメリットと注意点を認識しておく必要があります。 複雑な仕組みを理解する必要がある デリバティブ取引には、商品や契約の内容が複雑なものも多くなっています。内容を正しく理解しないまま取引を行うことは、思わぬ損失を発生させてしまうことに繋がりかねません。 デリバティブ取引におけるレバレッジの効果は、少額で大きなリターンが期待できるという点では確かにメリットです。しかし、損失が出た場合にもその損失額が大きくなる仕組みのため、その場合はレバレッジの負の効果が生じ、デメリットにもなり得ます。 予想し得ない値動きをした際には想定し得ない損失を抱える可能性もあります。商品や契約の内容を適切に理解していなければ、これらの損失の予測は難しく、適切にリスク管理もできません。 適切なリスク管理がカギを握る 適切なリスク管理を行うためには、前述のとおり、取引の前に商品の内容について正しく理解しておく必要があります。 自分が投資した金額に対し期待できる利益の他、損失が出た場合にどの程度の損失が出る可能性があるのか、どこまでであればリスクとして許容できるのか、などを十分に検討のうえ、自身でリスク管理をできる範囲で取引を行いましょう。
デリバティブ取引を活用することでどのような効果が得られるか。
デリバティブ取引を適切に利用することで、将来発生する可能性があるリスクを軽減する、リスクヘッジが可能です。
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金融
デリバティブとは デリバティブとは、通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品のことを指し、「金融派生商品」とも呼ばれます。 デリバティブの価値は原資産の価値によって決まります。これらの商品を取引することを、「デリバティブ取引」と呼びます。 取引の手段や決済のルールによってさまざまな商品があり、「デリバティブ」や「デリバティブ取引」はそれらの総称となります。 デリバティブ取引を行うには一定の知識が求められますが、証券会社などで対象の口座を開設することで取引できるようになります。 デリバティブの取引の種類 デリバティブには、大まかに分けて次の種類の取引があります。 先物取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で売買する取引です。新規で売買した時点での市場価格と決済した時点における約定価格の差額が、その先物取引における損益となります。 関連リンク:先物取引とは?メリット・デメリット・リスクなどをわかりやすく解説 オプション取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で購入、もしくは売却する権利を売買する取引です。 先物取引と異なるのは、先物取引が約定した期日に必ず取引と決済が行われるのに対して、オプション取引は権利を行使するか(実際に取引を行うか)を、本人が選べる点です。 スワップ取引 将来発生する利息について、異なるタイプの資産で交換する取引です。スワップ取引には、変動金利の代わりに固定金利で(あるいは、固定金利の代わりに変動金利で)利息を受け取る金利スワップと、ドル建て債券の利息の代わりに円建て債券の利息(あるいは、円建て債券の利息の代わりにドル建て債券の利息)を受け取る通貨スワップがあります。 為替予約 あらかじめ約定した日、またはその期間中に外国為替を売却または購入することを約定する取引です。 デリバティブの対象となるもの 先に解説したとおり、デリバティブ取引は多様な原資産の値動きが取引の対象となります。たとえば、先物取引には穀物などの現物として存在する商品を扱う場合もあれば、株式や債券などの金融商品の値動きを対象とした商品も存在します。 他にもさまざまなデリバティブ取引を扱う商品が資産運用をする人のニーズに応じて考案され、資産運用の手段として提供されています。 デリバティブの活用シーン デリバティブ取引を適切に利用することで、将来発生する可能性があるリスクを軽減する、リスクヘッジが可能です。 たとえば将来において、ある商品を購入する予定であるとします。その商品がこれから急激に値上がりするリスクがあった場合、あらかじめ先物取引において一定の価格で購入する契約をしておくことで、将来値上がりした場合も、事前に契約しておいた価格で購入できます。これを「買いヘッジ」と呼びます。 同様にある商品を売却する予定である場合に、将来の値下がりリスクに備えて一定の価格で売却する契約をしておくことを「売りヘッジ」と呼びます。 他にもデリバティブ取引では証拠金の払い込みだけで取引を開始できる場合もあるなど、原資産を直接やり取りする投資商品よりも比較的少額で取引を始められる場合もあります。 このようにデリバティブ取引はリスクヘッジができ、少額から始められる効率的な資産運用の手段として活用することができます。 ただし、リスクヘッジを行ったとしても、すべてのリスクを排除することはできません。取引で損失が発生した場合、その金額を支払う必要がある点に注意が必要です。 デリバティブ投資を行うメリット デリバティブ投資を行うことで、以下のメリットを得られます。 レバレッジ効果がある デリバティブ取引は開始時に証拠金を払い込むことで取引が成立するため、元手以上の取引も可能です。そのため、少額の投資でも大きなリターンを期待できる場合があります。 この効果のことを「レバレッジ」と呼びます。 ただし、利益だけでなく損失にもレバレッジがかかり、元手以上の損失が発生する可能性がある点には注意が必要です。 リスクを最小限に抑えた資産運用ができる デリバティブ取引と株式などの原資産の取引を組み合わせることで、物価や為替の大きな変動リスクに備えられます。 たとえば、原資産の購入と同時に先物市場で購入とは反対の売り建ての予約をすることで、売却額を固定化して損失を一定額までに抑えられるようになるなど、工夫次第でリスクを最小限に抑えた資産運用が可能です。 夜間に取引ができる 一般的に、株式市場の取引時間は平日昼間の数時間に限られています。それに対してデリバティブ取引は夜間や休日にも取引が可能な場合が多いため(※)、平日昼間に取引を行うのが難しいという方でも、取引に参加しやすくなっています。 ※ 商品によって取引時間は異なります。 相場が下落局面でも利益を狙うことができる 株式などの現物(原資産)の取引は、相場が下落しているときに売買で利益を狙えません。 それに対して、デリバティブ取引は買いと売り双方のポジションで取引が可能なため、相場の下落局面でも売りのポジションを持つことで利益を狙えます。 デリバティブ投資を行うデメリットと注意点 一方、デリバティブ取引を行う際は、次のデメリットと注意点を認識しておく必要があります。 複雑な仕組みを理解する必要がある デリバティブ取引には、商品や契約の内容が複雑なものも多くなっています。内容を正しく理解しないまま取引を行うことは、思わぬ損失を発生させてしまうことに繋がりかねません。 デリバティブ取引におけるレバレッジの効果は、少額で大きなリターンが期待できるという点では確かにメリットです。しかし、損失が出た場合にもその損失額が大きくなる仕組みのため、その場合はレバレッジの負の効果が生じ、デメリットにもなり得ます。 予想し得ない値動きをした際には想定し得ない損失を抱える可能性もあります。商品や契約の内容を適切に理解していなければ、これらの損失の予測は難しく、適切にリスク管理もできません。 適切なリスク管理がカギを握る 適切なリスク管理を行うためには、前述のとおり、取引の前に商品の内容について正しく理解しておく必要があります。 自分が投資した金額に対し期待できる利益の他、損失が出た場合にどの程度の損失が出る可能性があるのか、どこまでであればリスクとして許容できるのか、などを十分に検討のうえ、自身でリスク管理をできる範囲で取引を行いましょう。
デリバティブ取引における「レバレッジ」とはどのような効果か。
デリバティブ取引における「レバレッジ」とは開始時に証拠金を払い込むことで取引が成立するため、元手以上の取引も可能になります。そのため、少額の投資でも大きなリターンを期待できる場合があります。この効果のことを「レバレッジ」と呼びます。
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金融
デリバティブとは デリバティブとは、通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品のことを指し、「金融派生商品」とも呼ばれます。 デリバティブの価値は原資産の価値によって決まります。これらの商品を取引することを、「デリバティブ取引」と呼びます。 取引の手段や決済のルールによってさまざまな商品があり、「デリバティブ」や「デリバティブ取引」はそれらの総称となります。 デリバティブ取引を行うには一定の知識が求められますが、証券会社などで対象の口座を開設することで取引できるようになります。 デリバティブの取引の種類 デリバティブには、大まかに分けて次の種類の取引があります。 先物取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で売買する取引です。新規で売買した時点での市場価格と決済した時点における約定価格の差額が、その先物取引における損益となります。 関連リンク:先物取引とは?メリット・デメリット・リスクなどをわかりやすく解説 オプション取引 ある商品(資産)を、将来の定められた時点において、一定の価格で購入、もしくは売却する権利を売買する取引です。 先物取引と異なるのは、先物取引が約定した期日に必ず取引と決済が行われるのに対して、オプション取引は権利を行使するか(実際に取引を行うか)を、本人が選べる点です。 スワップ取引 将来発生する利息について、異なるタイプの資産で交換する取引です。スワップ取引には、変動金利の代わりに固定金利で(あるいは、固定金利の代わりに変動金利で)利息を受け取る金利スワップと、ドル建て債券の利息の代わりに円建て債券の利息(あるいは、円建て債券の利息の代わりにドル建て債券の利息)を受け取る通貨スワップがあります。 為替予約 あらかじめ約定した日、またはその期間中に外国為替を売却または購入することを約定する取引です。 デリバティブの対象となるもの 先に解説したとおり、デリバティブ取引は多様な原資産の値動きが取引の対象となります。たとえば、先物取引には穀物などの現物として存在する商品を扱う場合もあれば、株式や債券などの金融商品の値動きを対象とした商品も存在します。 他にもさまざまなデリバティブ取引を扱う商品が資産運用をする人のニーズに応じて考案され、資産運用の手段として提供されています。 デリバティブの活用シーン デリバティブ取引を適切に利用することで、将来発生する可能性があるリスクを軽減する、リスクヘッジが可能です。 たとえば将来において、ある商品を購入する予定であるとします。その商品がこれから急激に値上がりするリスクがあった場合、あらかじめ先物取引において一定の価格で購入する契約をしておくことで、将来値上がりした場合も、事前に契約しておいた価格で購入できます。これを「買いヘッジ」と呼びます。 同様にある商品を売却する予定である場合に、将来の値下がりリスクに備えて一定の価格で売却する契約をしておくことを「売りヘッジ」と呼びます。 他にもデリバティブ取引では証拠金の払い込みだけで取引を開始できる場合もあるなど、原資産を直接やり取りする投資商品よりも比較的少額で取引を始められる場合もあります。 このようにデリバティブ取引はリスクヘッジができ、少額から始められる効率的な資産運用の手段として活用することができます。 ただし、リスクヘッジを行ったとしても、すべてのリスクを排除することはできません。取引で損失が発生した場合、その金額を支払う必要がある点に注意が必要です。 デリバティブ投資を行うメリット デリバティブ投資を行うことで、以下のメリットを得られます。 レバレッジ効果がある デリバティブ取引は開始時に証拠金を払い込むことで取引が成立するため、元手以上の取引も可能です。そのため、少額の投資でも大きなリターンを期待できる場合があります。 この効果のことを「レバレッジ」と呼びます。 ただし、利益だけでなく損失にもレバレッジがかかり、元手以上の損失が発生する可能性がある点には注意が必要です。 リスクを最小限に抑えた資産運用ができる デリバティブ取引と株式などの原資産の取引を組み合わせることで、物価や為替の大きな変動リスクに備えられます。 たとえば、原資産の購入と同時に先物市場で購入とは反対の売り建ての予約をすることで、売却額を固定化して損失を一定額までに抑えられるようになるなど、工夫次第でリスクを最小限に抑えた資産運用が可能です。 夜間に取引ができる 一般的に、株式市場の取引時間は平日昼間の数時間に限られています。それに対してデリバティブ取引は夜間や休日にも取引が可能な場合が多いため(※)、平日昼間に取引を行うのが難しいという方でも、取引に参加しやすくなっています。 ※ 商品によって取引時間は異なります。 相場が下落局面でも利益を狙うことができる 株式などの現物(原資産)の取引は、相場が下落しているときに売買で利益を狙えません。 それに対して、デリバティブ取引は買いと売り双方のポジションで取引が可能なため、相場の下落局面でも売りのポジションを持つことで利益を狙えます。 デリバティブ投資を行うデメリットと注意点 一方、デリバティブ取引を行う際は、次のデメリットと注意点を認識しておく必要があります。 複雑な仕組みを理解する必要がある デリバティブ取引には、商品や契約の内容が複雑なものも多くなっています。内容を正しく理解しないまま取引を行うことは、思わぬ損失を発生させてしまうことに繋がりかねません。 デリバティブ取引におけるレバレッジの効果は、少額で大きなリターンが期待できるという点では確かにメリットです。しかし、損失が出た場合にもその損失額が大きくなる仕組みのため、その場合はレバレッジの負の効果が生じ、デメリットにもなり得ます。 予想し得ない値動きをした際には想定し得ない損失を抱える可能性もあります。商品や契約の内容を適切に理解していなければ、これらの損失の予測は難しく、適切にリスク管理もできません。 適切なリスク管理がカギを握る 適切なリスク管理を行うためには、前述のとおり、取引の前に商品の内容について正しく理解しておく必要があります。 自分が投資した金額に対し期待できる利益の他、損失が出た場合にどの程度の損失が出る可能性があるのか、どこまでであればリスクとして許容できるのか、などを十分に検討のうえ、自身でリスク管理をできる範囲で取引を行いましょう。
デリバティブ取引を行う際に必要なリスク管理の姿勢とは何か。
デリバティブ取引を行う際に必要なリスク管理の姿勢とは、自分が投資した金額に対し期待できる利益の他、損失が出た場合にどの程度の損失が出る可能性があるのか、どこまでであればリスクとして許容できるのか、などを十分に検討のうえ、自身でリスク管理をできる範囲で取引を行うことです。
JCRRAG_010353
国語
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいているのが見えました。ごんは、 「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。 「何なんだろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」  こんなことを考えながらやって来ると、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきの着物を着て、腰に手拭いをさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きな鍋なべの中では、何かぐずぐず煮えていました。 「ああ、葬式だ」と、ごんは思いました。 「兵十の家のだれが死んだんだろう」  おひるがすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、六地蔵さんのかげにかくれていました。いいお天気で、遠く向こうには、お城の屋根瓦が光っています。墓地には、ひがん花が、赤い布きれのようにさきつづけていました。と、村の方から、カーン、カーン、と、鐘が鳴って来ました。葬式の出る合図です。  やがて、白い着物を着た葬列のものたちがやって来るのがちらちら見えはじめました。声も近くなりました。葬列は墓地へはいって来ました。人々が通ったあとには、ひがん花が、ふみおられていました。  ごんはのびあがって見ました。兵十が、白いかみしもをつけて、位牌をささげています。いつもは、赤いさつま芋いもみたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。 「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」  ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。  その晩、ごんは、穴の中で考えました。 「兵十のおっ母は、床とこについていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」
ごんが鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると何が見えましたか。
新兵衛の家内が髪をすいているのが見えました。
JCRRAG_010354
国語
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」  ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。  その晩、ごんは、穴の中で考えました。 「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」  兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人ふたりきりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後うしろから見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向こうへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売りは、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもっていきました。ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向むかってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、井戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。  ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。  つぎの日には、ごんは山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へいきました。裏口からのぞいて見ますと、兵十は、ひるめしをたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。へんなことに兵十のほっぺたに、かすり傷がついています。どうしたんだろうと、ごんが思っていると、兵十がひとりごとをいいました。 「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし屋のやつに、ひどい目にあわされた」と、ぶつぶつ言っています。  ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。  ごんはこうおもいながら、そっと物置の方へまわってその入口に、栗をおいてかえりました。  つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。
兵十が、赤い井戸のところで何をしていましたか。
麦をといでいました。
JCRRAG_010355
国語
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」  ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。  その晩、ごんは、穴の中で考えました。 「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」  兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人ふたりきりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後うしろから見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向こうへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売りは、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもっていきました。ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向むかってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、井戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。  ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。  つぎの日には、ごんは山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へいきました。裏口からのぞいて見ますと、兵十は、ひるめしをたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。へんなことに兵十のほっぺたに、かすり傷がついています。どうしたんだろうと、ごんが思っていると、兵十がひとりごとをいいました。 「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし屋のやつに、ひどい目にあわされた」と、ぶつぶつ言っています。  ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。  ごんはこうおもいながら、そっと物置の方へまわってその入口に、栗をおいてかえりました。  つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。
ごんは兵十におわびをしたらどう思いましたか。
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
JCRRAG_010356
国語
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」  ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。  その晩、ごんは、穴の中で考えました。 「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」  兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人ふたりきりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後うしろから見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向こうへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売りは、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもっていきました。ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向むかってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、井戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。  ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。  つぎの日には、ごんは山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へいきました。裏口からのぞいて見ますと、兵十は、ひるめしをたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。へんなことに兵十のほっぺたに、かすり傷がついています。どうしたんだろうと、ごんが思っていると、兵十がひとりごとをいいました。 「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし屋のやつに、ひどい目にあわされた」と、ぶつぶつ言っています。  ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。  ごんはこうおもいながら、そっと物置の方へまわってその入口に、栗をおいてかえりました。  つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。
ごんはいわし売りのいわしをどうしましたか。
ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向かってかけもどりました。
JCRRAG_010357
国語
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向こうから、だれか来るようです。声が聞こえます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。  ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。 「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。 「ああん?」 「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」 「何が?」 「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」 「ふうん、だれが?」 「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」  ごんは、ふたりのあとをつけていきました。 「ほんとかい?」 「ほんとだとも。うそだと思うなら、あした見に来てよ。その栗を見せてやるよ」 「へえ、へんなこともあるもんだなア」  それから、二人はだまって歩いていきました。  加助がひょいと、後ろを見ました。ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。加助は、ごんに気がつかないで、そのままさっさとあるきました。吉兵衛というお百姓の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンと木魚の音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、大きな坊主頭がうつって動いていました。ごんは、 「おねんぶつがあるんだな」と思いながら井戸のそばでしゃがんでいました。しばらくすると、また三人ほど、人をつれて吉兵衛の家へはいっていきました。お経を読む声が聞こえて来ました。  ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばでしゃがんでいました。兵十と加助は、またいっしょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみにいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。  そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置で縄をなっていました。それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。  そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が家の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。 「ようし。」  兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。  そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、土間に栗が、かためておいてあるのが目につきました。 「おや」と兵十は、びっくりしてごんに目を落としました。 「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」  ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。  兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。
月のいい晩に鳴いていた虫はなんですか。
チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。
JCRRAG_010358
国語
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向こうから、だれか来るようです。声が聞こえます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。  ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。 「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。 「ああん?」 「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」 「何が?」 「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」 「ふうん、だれが?」 「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」  ごんは、ふたりのあとをつけていきました。 「ほんとかい?」 「ほんとだとも。うそだと思うなら、あした見に来てよ。その栗を見せてやるよ」 「へえ、へんなこともあるもんだなア」  それから、二人はだまって歩いていきました。  加助がひょいと、後ろを見ました。ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。加助は、ごんに気がつかないで、そのままさっさとあるきました。吉兵衛というお百姓の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンと木魚の音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、大きな坊主頭がうつって動いていました。ごんは、 「おねんぶつがあるんだな」と思いながら井戸のそばでしゃがんでいました。しばらくすると、また三人ほど、人をつれて吉兵衛の家へはいっていきました。お経を読む声が聞こえて来ました。  ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばでしゃがんでいました。兵十と加助は、またいっしょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみにいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。  そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置で縄をなっていました。それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。  そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が家の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。 「ようし。」  兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。  そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、土間に栗が、かためておいてあるのが目につきました。 「おや」と兵十は、びっくりしてごんに目を落としました。 「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」  ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。  兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。
兵十はごんがいたずらしにきたなと思ったらどうしましたか。
兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。
JCRRAG_010359
国語
昔、ある北の国の山奥に一つの村がありました。その村に伊作、多助、太郎右衛門という三人の百姓がいました。 三人の百姓は少しばかりの田を耕しながら、その合間に炭を焼いて三里ばかり離れた城下に売りに行くのを仕事にしておりました。  三人の百姓の生まれた村というのは、それはそれは淋しい小さな村で、秋になると、山が一面に紅葉になるので、城下の人たちが紅葉を見に来るほか、何のとりえもないような村でありました。 しかし百姓たちの村に入るところに大きな河が流れて、その河には、秋になると、岩名や山魚が沢山泳いでいました。 村の人たちは、みんな楽しそうに、元気に働いていました。  伊作、多助、太郎右衛門の三人は、ある秋のおわりに、いつものように背中に炭俵を三俵ずつ背負って城下へ出かけて行きました。三人が村を出た時は、まだ河の流れに朝霧がかかっていて、河原の石の上には霜が真白に下りていました。 「今日も、晴れになるだろうな」 と伊作が橋を渡りながら、一人言のようにいうと、ほかの二人も高い声で、 「そうだな、晴れになるだろうな」 と調子を合わせて、橋を渡って行きました。三人はいつものように、炭を売った後で、町の居酒屋で酒を飲むことを楽しみに、何の考えもなく足を早めて道を歩いて行きました。  伊作は背の高い一番丈夫な男だけに、峠を登る時は、二人から100メートルほど先を歩いていました。 多助と太郎右衛門は、高い声で話をしながら坂を登って行きました。 二人は浜へ嫁に行っていた村の娘が、亭主に死なれて帰って来たという話を、まるで大事件のように力を入れて話していたのでした。
伊作、多助、太郎右衛門はある秋のおわりにどこに行きましたか。
背中に炭俵を三俵ずつ背負って炭を売るために城下へ出かけて行きました。
JCRRAG_010360
国語
昔、ある北の国の山奥に一つの村がありました。その村に伊作、多助、太郎右衛門という三人の百姓がいました。 三人の百姓は少しばかりの田を耕しながら、その合間に炭を焼いて三里ばかり離れた城下に売りに行くのを仕事にしておりました。  三人の百姓の生まれた村というのは、それはそれは淋しい小さな村で、秋になると、山が一面に紅葉になるので、城下の人たちが紅葉を見に来るほか、何のとりえもないような村でありました。 しかし百姓たちの村に入るところに大きな河が流れて、その河には、秋になると、岩名や山魚が沢山泳いでいました。 村の人たちは、みんな楽しそうに、元気に働いていました。  伊作、多助、太郎右衛門の三人は、ある秋のおわりに、いつものように背中に炭俵を三俵ずつ背負って城下へ出かけて行きました。三人が村を出た時は、まだ河の流れに朝霧がかかっていて、河原の石の上には霜が真白に下りていました。 「今日も、晴れになるだろうな」 と伊作が橋を渡りながら、一人言のようにいうと、ほかの二人も高い声で、 「そうだな、晴れになるだろうな」 と調子を合わせて、橋を渡って行きました。三人はいつものように、炭を売った後で、町の居酒屋で酒を飲むことを楽しみに、何の考えもなく足を早めて道を歩いて行きました。  伊作は背の高い一番丈夫な男だけに、峠を登る時は、二人から100メートルほど先を歩いていました。 多助と太郎右衛門は、高い声で話をしながら坂を登って行きました。 二人は浜へ嫁に行っていた村の娘が、亭主に死なれて帰って来たという話を、まるで大事件のように力を入れて話していたのでした。
伊作、多助、太郎右衛門の住んでいる村はどんな村でしたか。
三人の百姓の生まれた村というのは、それはそれは淋しい小さな村で、秋になると、山が一面に紅葉になるので、城下の人たちが紅葉を見に来るほか、何のとりえもないような村でありました。しかし百姓たちの村に入るところに大きな河が流れて、その河には、秋になると、岩名や山魚が沢山泳いでいました。村の人たちは、みんな楽しそうに、元気に働いていました。
JCRRAG_010361
国語
「伊作の足は、なんて早いんだ」 と多助は太郎右衛門に言いました。 「ああいう男は、坂の下で一服やってる頃だろうな。」 と太郎右衛門は笑いながら答えました。 多助と太郎右衛門が、峠を越して平原の見えるところまで来た時、坂の下の方で伊作が一生懸命に二人の方を見て、手を振っているのが、見えました。 「どうしたんだ? 伊作が、俺を呼んでるな。」 と多助が言いました。太郎右衛門も顔をしかめて坂の下を見下しました。 「早く来い、早く来い……面白いものが落っこちてるぞ!」 という伊作の声が聞こえて来ました。 「面白いものが落っこってるよ。」 と多助は、笑いながら言うと、太郎右衛門も大きな口を開けて笑いました。 「伊作の拾うものなんて、ろくなものじゃないだろうな!」 と太郎右衛門はつけ足して、多助と一緒に少し急いで坂を下りて行きました。  坂の下の方では、伊作はなんとももどかしそうに、二人の下りて来るのを待っていました。 「だまされたと思って、急いでくれよ!」 と多助は、炭俵をがさがさ騒がせて、走って行きました。 太郎右衛門は、もともと速く走れない男でしたから、多助に遅れて、一人で坂を下りて行きました。 太郎右衛門が伊作のいたところへ着いた時には、伊作と多助は大事そうにして、何か持ち上げて見たり触って見たりしていました。 「何が落ちてるんだって?」 太郎右衛門はまぬけな顔をして、二人の立っている間へ顔をつっこんでやりました。 「見ろ、こんなのが落ちてるんだって」 と伊作は少し身体をよけて、太郎右衛門にも見せました。 「おお! これは、奇妙な話じゃないか!」 と太郎右衛門は叫びました。 今三人の前に生後三か月ほどの一人の赤ちゃんが、美しい布きれに包まれて捨てられているのでした。 伊作の話では、伊作が最初に見つけた時は赤ちゃんはよく眠っていたということでした。 「一体何処どこの子供だろうな? いい顔つきしてるな」  多助は赤児の顔を見て、 「それだよ。いい着物を着てるしいいところの子供だろうよ。 だから、うっかり触らないほうがいいぞ。関わり合いになって牢屋にでも、ぶち込まれたら大変だ。触らぬ神に祟りなしって言うしよ」 と、つけたして言いました。 「そうだけどさ、不憫じゃないか?獣にでも見つかったら食われてしまうじゃないか?」 と、気の弱い太郎右衛門は言いました。 「子供も不憫には不憫だけどさ、子供にはもったいないような着物を着てるじゃないか?」 とふだんから少し欲の深い伊作は、赤ちゃんを包んでいる美しい布きれをほどいて見ました。 すると、赤ちゃんの腹のところに、三角に括り付けた胴巻が巻きつけてありました。 伊作は赤ちゃんが泣くのも耳に入らないと言うように、その財布を取り上げて、片方の端を持って振り回して見るとその中から小判がどっさり出て来ました。それを見て、多助も太郎右衛門もびっくりしてしまいました。 「なんてたまげた話しだ!」と多助は青い顔をして太郎右衛門を見ると、太郎右衛門は今までこんな大金を見たことがないので、がたがたふるえていました。  伊作の提案でとにかく三人はその赤児を拾うことにきめました。 「この金は、とにかくおれが預かることにするわ。」 と伊作はさっさと自分の腹へ巻きつけようとしたので、それを見た多助は大変に怒って、伊作とけんかを始めました。 そこで伊作は仕方がないので、小判を十枚だけ多助に渡しました。そして太郎右衛門には五枚だけ渡して、 「お前に子供がいなんだから、この子供を育てたらいいんじゃないか。」 と言いました。  太郎右衛門は、その時伊作に向かって、 「おれは子供が不憫だからつれて行くが、金が欲しくて子供をつれて行くわけじゃない」 と言ってどうしても金を受け取りませんでした。 多助は、もし太郎右衛門が受け取らなければその五枚の小判も伊作に取られてしまうのを知っているので、是非受け取るようにすすめたけれども受け取りませんでした。 伊作は太郎右衛門がどうしても小判を受け取れないので、その内の二枚を多助に渡し、残りの三枚を元の胴巻へ入れて、腰に巻きつけてしまいました。 多助も二枚余計にもらったので、まんざら悪い気持もしませんでした。 三人は城下へ行くのをやめて、その日は自分の村へ帰ってしまいました。
伊作が見つけたものはなんでしたか。
三人の前に生後三か月ほどの一人の赤ちゃんが、美しい布きれに包まれて捨てられているのでした。
JCRRAG_010362
国語
「伊作の足は、なんて早いんだ」 と多助は太郎右衛門に言いました。 「ああいう男は、坂の下で一服やってる頃だろうな。」 と太郎右衛門は笑いながら答えました。 多助と太郎右衛門が、峠を越して平原の見えるところまで来た時、坂の下の方で伊作が一生懸命に二人の方を見て、手を振っているのが、見えました。 「どうしたんだ? 伊作が、俺を呼んでるな。」 と多助が言いました。太郎右衛門も顔をしかめて坂の下を見下しました。 「早く来い、早く来い……面白いものが落っこちてるぞ!」 という伊作の声が聞こえて来ました。 「面白いものが落っこってるよ。」 と多助は、笑いながら言うと、太郎右衛門も大きな口を開けて笑いました。 「伊作の拾うものなんて、ろくなものじゃないだろうな!」 と太郎右衛門はつけ足して、多助と一緒に少し急いで坂を下りて行きました。  坂の下の方では、伊作はなんとももどかしそうに、二人の下りて来るのを待っていました。 「だまされたと思って、急いでくれよ!」 と多助は、炭俵をがさがさ騒がせて、走って行きました。 太郎右衛門は、もともと速く走れない男でしたから、多助に遅れて、一人で坂を下りて行きました。 太郎右衛門が伊作のいたところへ着いた時には、伊作と多助は大事そうにして、何か持ち上げて見たり触って見たりしていました。 「何が落ちてるんだって?」 太郎右衛門はまぬけな顔をして、二人の立っている間へ顔をつっこんでやりました。 「見ろ、こんなのが落ちてるんだって」 と伊作は少し身体をよけて、太郎右衛門にも見せました。 「おお! これは、奇妙な話じゃないか!」 と太郎右衛門は叫びました。 今三人の前に生後三か月ほどの一人の赤ちゃんが、美しい布きれに包まれて捨てられているのでした。 伊作の話では、伊作が最初に見つけた時は赤ちゃんはよく眠っていたということでした。 「一体何処どこの子供だろうな? いい顔つきしてるな」  多助は赤児の顔を見て、 「それだよ。いい着物を着てるしいいところの子供だろうよ。 だから、うっかり触らないほうがいいぞ。関わり合いになって牢屋にでも、ぶち込まれたら大変だ。触らぬ神に祟りなしって言うしよ」 と、つけたして言いました。 「そうだけどさ、不憫じゃないか?獣にでも見つかったら食われてしまうじゃないか?」 と、気の弱い太郎右衛門は言いました。 「子供も不憫には不憫だけどさ、子供にはもったいないような着物を着てるじゃないか?」 とふだんから少し欲の深い伊作は、赤ちゃんを包んでいる美しい布きれをほどいて見ました。 すると、赤ちゃんの腹のところに、三角に括り付けた胴巻が巻きつけてありました。 伊作は赤ちゃんが泣くのも耳に入らないと言うように、その財布を取り上げて、片方の端を持って振り回して見るとその中から小判がどっさり出て来ました。それを見て、多助も太郎右衛門もびっくりしてしまいました。 「なんてたまげた話しだ!」と多助は青い顔をして太郎右衛門を見ると、太郎右衛門は今までこんな大金を見たことがないので、がたがたふるえていました。  伊作の提案でとにかく三人はその赤児を拾うことにきめました。 「この金は、とにかくおれが預かることにするわ。」 と伊作はさっさと自分の腹へ巻きつけようとしたので、それを見た多助は大変に怒って、伊作とけんかを始めました。 そこで伊作は仕方がないので、小判を十枚だけ多助に渡しました。そして太郎右衛門には五枚だけ渡して、 「お前に子供がいなんだから、この子供を育てたらいいんじゃないか。」 と言いました。  太郎右衛門は、その時伊作に向かって、 「おれは子供が不憫だからつれて行くが、金が欲しくて子供をつれて行くわけじゃない」 と言ってどうしても金を受け取りませんでした。 多助は、もし太郎右衛門が受け取らなければその五枚の小判も伊作に取られてしまうのを知っているので、是非受け取るようにすすめたけれども受け取りませんでした。 伊作は太郎右衛門がどうしても小判を受け取れないので、その内の二枚を多助に渡し、残りの三枚を元の胴巻へ入れて、腰に巻きつけてしまいました。 多助も二枚余計にもらったので、まんざら悪い気持もしませんでした。 三人は城下へ行くのをやめて、その日は自分の村へ帰ってしまいました。
伊作が赤ちゃんのお腹に括り付けた胴巻きを振り回したらどうなりましたか。
小判がどっさり出て来ました。
JCRRAG_010363
国語
「伊作の足は、なんて早いんだ」 と多助は太郎右衛門に言いました。 「ああいう男は、坂の下で一服やってる頃だろうな。」 と太郎右衛門は笑いながら答えました。 多助と太郎右衛門が、峠を越して平原の見えるところまで来た時、坂の下の方で伊作が一生懸命に二人の方を見て、手を振っているのが、見えました。 「どうしたんだ? 伊作が、俺を呼んでるな。」 と多助が言いました。太郎右衛門も顔をしかめて坂の下を見下しました。 「早く来い、早く来い……面白いものが落っこちてるぞ!」 という伊作の声が聞こえて来ました。 「面白いものが落っこってるよ。」 と多助は、笑いながら言うと、太郎右衛門も大きな口を開けて笑いました。 「伊作の拾うものなんて、ろくなものじゃないだろうな!」 と太郎右衛門はつけ足して、多助と一緒に少し急いで坂を下りて行きました。  坂の下の方では、伊作はなんとももどかしそうに、二人の下りて来るのを待っていました。 「だまされたと思って、急いでくれよ!」 と多助は、炭俵をがさがさ騒がせて、走って行きました。 太郎右衛門は、もともと速く走れない男でしたから、多助に遅れて、一人で坂を下りて行きました。 太郎右衛門が伊作のいたところへ着いた時には、伊作と多助は大事そうにして、何か持ち上げて見たり触って見たりしていました。 「何が落ちてるんだって?」 太郎右衛門はまぬけな顔をして、二人の立っている間へ顔をつっこんでやりました。 「見ろ、こんなのが落ちてるんだって」 と伊作は少し身体をよけて、太郎右衛門にも見せました。 「おお! これは、奇妙な話じゃないか!」 と太郎右衛門は叫びました。 今三人の前に生後三か月ほどの一人の赤ちゃんが、美しい布きれに包まれて捨てられているのでした。 伊作の話では、伊作が最初に見つけた時は赤ちゃんはよく眠っていたということでした。 「一体何処どこの子供だろうな? いい顔つきしてるな」  多助は赤児の顔を見て、 「それだよ。いい着物を着てるしいいところの子供だろうよ。 だから、うっかり触らないほうがいいぞ。関わり合いになって牢屋にでも、ぶち込まれたら大変だ。触らぬ神に祟りなしって言うしよ」 と、つけたして言いました。 「そうだけどさ、不憫じゃないか?獣にでも見つかったら食われてしまうじゃないか?」 と、気の弱い太郎右衛門は言いました。 「子供も不憫には不憫だけどさ、子供にはもったいないような着物を着てるじゃないか?」 とふだんから少し欲の深い伊作は、赤ちゃんを包んでいる美しい布きれをほどいて見ました。 すると、赤ちゃんの腹のところに、三角に括り付けた胴巻が巻きつけてありました。 伊作は赤ちゃんが泣くのも耳に入らないと言うように、その財布を取り上げて、片方の端を持って振り回して見るとその中から小判がどっさり出て来ました。それを見て、多助も太郎右衛門もびっくりしてしまいました。 「なんてたまげた話しだ!」と多助は青い顔をして太郎右衛門を見ると、太郎右衛門は今までこんな大金を見たことがないので、がたがたふるえていました。  伊作の提案でとにかく三人はその赤児を拾うことにきめました。 「この金は、とにかくおれが預かることにするわ。」 と伊作はさっさと自分の腹へ巻きつけようとしたので、それを見た多助は大変に怒って、伊作とけんかを始めました。 そこで伊作は仕方がないので、小判を十枚だけ多助に渡しました。そして太郎右衛門には五枚だけ渡して、 「お前に子供がいなんだから、この子供を育てたらいいんじゃないか。」 と言いました。  太郎右衛門は、その時伊作に向かって、 「おれは子供が不憫だからつれて行くが、金が欲しくて子供をつれて行くわけじゃない」 と言ってどうしても金を受け取りませんでした。 多助は、もし太郎右衛門が受け取らなければその五枚の小判も伊作に取られてしまうのを知っているので、是非受け取るようにすすめたけれども受け取りませんでした。 伊作は太郎右衛門がどうしても小判を受け取れないので、その内の二枚を多助に渡し、残りの三枚を元の胴巻へ入れて、腰に巻きつけてしまいました。 多助も二枚余計にもらったので、まんざら悪い気持もしませんでした。 三人は城下へ行くのをやめて、その日は自分の村へ帰ってしまいました。
伊作は小判をどうしようとしましたか。
「この金は、とにかくおれが預かることにするわ。」と伊作はさっさと自分の腹へ巻きつけようとした。
JCRRAG_010364
国語
二人はその晩、拾った赤ちゃんをかわりばんこに抱いて寝ました。 赤ちゃんの柔かい肌に触れると、二人ともなんとも言えない快感を感じました。 赤ちゃんが二度ほど泣きましたが、二人はそのたびに起き上ってあやしてやったり「おしっこ」をさせてやったりしたので、朝になって、大変よく眠りました。 奥さんが早く起きて、雨戸を明けると、そこから明るい太陽が遠慮なくさし込んで来ました。 奥さんは、急に自分が偉い人間にでもなったような誇らしい気持ちがするので、不思議に思った位でした。  太郎右衛門も太郎右衛門で、自分に抱かれて眠っている子供の顔を見ていると、その子がほんとうに自分の生んだ子供のような気がするのでした。 「見ろ、この子はなんていい顔してるんだろうな!」 太郎右衛門は、朝食の準備をしている奥さんを呼んで子供の顔を見せました。 「ほんとうだね、いい顔してるよ。こんな子供に百姓させられないねえ!」 と奥さんは、子供の寝顔を見て、思いにふけながら言うのでした。  太郎右衛門が子供を拾ったという噂が村中に広がりました。 夕方になると村の奥さんたちや子供たちがぞろぞろそろって噂の捨て子を見に来ました。 そして、あまりにも美しい赤ちゃんなのでみんな驚いてしまいました。 そして、「太郎右衛門さんのところは、なんて幸せなんだろうな。」と口々に言いながら帰りました。  これまで太郎右衛門の家はただ正直というだけで、村では一番貧乏で、一番馬鹿にされて暮らした家でしたが、子供を拾ってからは大変にぎやかな幸福な家になりました。 しかし太郎右衛門の家には田畑もないのに、子供が一人ふえたので、貧乏だったのにますます貧乏になりました。 しかし太郎右衛門は一度も不平を言ったことがありません。 田を耕している時でも、山で炭を焼いている時でも、太郎右衛門は、子供のことを思い出すと、愉快で愉快でたまりませんでした。 「早く仕事を終えて子供の顔を見たいもんだ。」と心の中で思いながら仕事をしていました。  子供の名前は朝に拾ったので、朝太郎と名付けました。 その朝太郎も、もう四歳になりました。 顔立ちこそ美しいが、始終田畑や山へつれて行くので、肌が焼けて真黒になって、百姓の子供として恥ずかしくないような顔になってしまいました。 もちろん着る物も、百姓の子供の着るようなものを着せていたので、ほんとに太郎右衛門夫婦の子供だと言っても、誰も不思議に思うものがない位でした。  話は変わりますが、あの太郎右衛門と一緒に子供を見つけた伊作と多助はどうしたでしょうか? 伊作と多助はその後、だんだん仲が悪くなって、いつでも喧嘩ばかりしていました。 伊作はある年の夏、橋の畔に小さな居酒屋を作りましたが、村には一軒も酒屋がなかったので、この居酒屋がとても繁盛してだんだん儲かって行きました。 伊作は今では田を耕したり、炭を焼いたりしなくても、立派に食べて行けるようになりました。 多助は、村のはずれに小さな水車小屋を持っていましたが、毎日伊作の店に寄っては酒を飲んだり、干魚を食べたりして、全く代金を払わないので、それが原因になって二人はいつでも喧嘩をしました。 二人は喧嘩をしたかと思うと仲直りをし、仲直りをしたかと思うと、また喧嘩をしました。  村の人たちは、どうしてあんなに仲のよかった伊作と多助が、こんな喧嘩をするようになったのか誰も知りませんでした。
太郎右衛は赤子を引き取ってさらに貧乏になったのになぜ不満を言いませんでしたか。
太郎右衛門の家には田畑もないのに、子供が一人ふえたので、貧乏だったのにますます貧乏になりました。しかし太郎右衛門は一度も不平を言ったことがありません。田を耕している時でも、山で炭を焼いている時でも、太郎右衛門は、子供のことを思い出すと、愉快で愉快でたまりませんでした。「早く仕事を終えて子供の顔を見たいもんだ。」と心の中で思いながら仕事をしていました。
JCRRAG_010365
国語
 太郎右衛門と、太郎右衛門の奥さんが、この赤ちゃんを見ているうちに、今まで一度も感じたことのないような嬉しい気持になって来ました。奥さんは、太郎右衛門に向かって、 「この子はお寺の子じゃないかしら!」 と言いました。その理由は、赤児を包んでいる布きれは緞子(どんす)という立派な布で、奥さんが城下のお寺で一度見たことがあるからということでした。 「馬鹿な女だな、なんでお寺で子供を捨てるんだ?」 と太郎右衛門は奥さんを叱りました。  その晩、太郎右衛門夫婦は、大きな釜に湯をわかして馬小屋の前で赤ちゃんにお風呂に入れてやることにしました。 奥さんが何気なく赤児の帯をほどいて、馬小屋の方へつれて行こうとすると、大きな振袖の中から一枚の紙切れが落ちて来ました。 「なんだこれ!?」と言って、その紙切れを亭主の太郎右衛門に渡しました。 太郎右衛門はそれを拾って見ると、その紙きれに、このような文字が平仮名で書いてありました。 「事情があって男の子を捨てます、情けのある人の元で育ってください。あなたの子ですかと聞かれない限りは名乗り出ません。その時がくれば春風も吹くでしょう。」 この平仮名を読むために、夫婦は一晩の時間を使ってしまいました。 太郎右衛門が読んだ時と、奥さんの読んだ時と言葉がちがうので大変困りました。 「とにかく、拾った人に、親切にしてくださいって書いてるんだな」 と太郎右衛門が言うと、奥さんも、 「そうそう」 と同意しました。
太郎右衛門夫妻は赤子に付いていた手紙を読むのに一晩もかかったのはなぜですか。
夫婦は一晩の時間を使ってしまいました。太郎右衛門が読んだ時と、奥さんの読んだ時と言葉がちがうので大変困りました。
JCRRAG_010366
国語
二人はその晩、拾った赤ちゃんをかわりばんこに抱いて寝ました。 赤ちゃんの柔かい肌に触れると、二人ともなんとも言えない快感を感じました。 赤ちゃんが二度ほど泣きましたが、二人はそのたびに起き上ってあやしてやったり「おしっこ」をさせてやったりしたので、朝になって、大変よく眠りました。 奥さんが早く起きて、雨戸を明けると、そこから明るい太陽が遠慮なくさし込んで来ました。 奥さんは、急に自分が偉い人間にでもなったような誇らしい気持ちがするので、不思議に思った位でした。  太郎右衛門も太郎右衛門で、自分に抱かれて眠っている子供の顔を見ていると、その子がほんとうに自分の生んだ子供のような気がするのでした。 「見ろ、この子はなんていい顔してるんだろうな!」 太郎右衛門は、朝食の準備をしている奥さんを呼んで子供の顔を見せました。 「ほんとうだね、いい顔してるよ。こんな子供に百姓させられないねえ!」 と奥さんは、子供の寝顔を見て、思いにふけながら言うのでした。  太郎右衛門が子供を拾ったという噂が村中に広がりました。 夕方になると村の奥さんたちや子供たちがぞろぞろそろって噂の捨て子を見に来ました。 そして、あまりにも美しい赤ちゃんなのでみんな驚いてしまいました。 そして、「太郎右衛門さんのところは、なんて幸せなんだろうな。」と口々に言いながら帰りました。  これまで太郎右衛門の家はただ正直というだけで、村では一番貧乏で、一番馬鹿にされて暮らした家でしたが、子供を拾ってからは大変にぎやかな幸福な家になりました。 しかし太郎右衛門の家には田畑もないのに、子供が一人ふえたので、貧乏だったのにますます貧乏になりました。 しかし太郎右衛門は一度も不平を言ったことがありません。 田を耕している時でも、山で炭を焼いている時でも、太郎右衛門は、子供のことを思い出すと、愉快で愉快でたまりませんでした。 「早く仕事を終えて子供の顔を見たいもんだ。」と心の中で思いながら仕事をしていました。  子供の名前は朝に拾ったので、朝太郎と名付けました。 その朝太郎も、もう四歳になりました。 顔立ちこそ美しいが、始終田畑や山へつれて行くので、肌が焼けて真黒になって、百姓の子供として恥ずかしくないような顔になってしまいました。 もちろん着る物も、百姓の子供の着るようなものを着せていたので、ほんとに太郎右衛門夫婦の子供だと言っても、誰も不思議に思うものがない位でした。  話は変わりますが、あの太郎右衛門と一緒に子供を見つけた伊作と多助はどうしたでしょうか? 伊作と多助はその後、だんだん仲が悪くなって、いつでも喧嘩ばかりしていました。 伊作はある年の夏、橋の畔に小さな居酒屋を作りましたが、村には一軒も酒屋がなかったので、この居酒屋がとても繁盛してだんだん儲かって行きました。 伊作は今では田を耕したり、炭を焼いたりしなくても、立派に食べて行けるようになりました。 多助は、村のはずれに小さな水車小屋を持っていましたが、毎日伊作の店に寄っては酒を飲んだり、干魚を食べたりして、全く代金を払わないので、それが原因になって二人はいつでも喧嘩をしました。 二人は喧嘩をしたかと思うと仲直りをし、仲直りをしたかと思うと、また喧嘩をしました。  村の人たちは、どうしてあんなに仲のよかった伊作と多助が、こんな喧嘩をするようになったのか誰も知りませんでした。
村の人たち噂の捨て子を見てどうしましたか。
あまりにも美しい赤ちゃんなのでみんな驚いてしまいました。
JCRRAG_010367
国語
二人はその晩、拾った赤ちゃんをかわりばんこに抱いて寝ました。 赤ちゃんの柔かい肌に触れると、二人ともなんとも言えない快感を感じました。 赤ちゃんが二度ほど泣きましたが、二人はそのたびに起き上ってあやしてやったり「おしっこ」をさせてやったりしたので、朝になって、大変よく眠りました。 奥さんが早く起きて、雨戸を明けると、そこから明るい太陽が遠慮なくさし込んで来ました。 奥さんは、急に自分が偉い人間にでもなったような誇らしい気持ちがするので、不思議に思った位でした。  太郎右衛門も太郎右衛門で、自分に抱かれて眠っている子供の顔を見ていると、その子がほんとうに自分の生んだ子供のような気がするのでした。 「見ろ、この子はなんていい顔してるんだろうな!」 太郎右衛門は、朝食の準備をしている奥さんを呼んで子供の顔を見せました。 「ほんとうだね、いい顔してるよ。こんな子供に百姓させられないねえ!」 と奥さんは、子供の寝顔を見て、思いにふけながら言うのでした。  太郎右衛門が子供を拾ったという噂が村中に広がりました。 夕方になると村の奥さんたちや子供たちがぞろぞろそろって噂の捨て子を見に来ました。 そして、あまりにも美しい赤ちゃんなのでみんな驚いてしまいました。 そして、「太郎右衛門さんのところは、なんて幸せなんだろうな。」と口々に言いながら帰りました。  これまで太郎右衛門の家はただ正直というだけで、村では一番貧乏で、一番馬鹿にされて暮らした家でしたが、子供を拾ってからは大変にぎやかな幸福な家になりました。 しかし太郎右衛門の家には田畑もないのに、子供が一人ふえたので、貧乏だったのにますます貧乏になりました。 しかし太郎右衛門は一度も不平を言ったことがありません。 田を耕している時でも、山で炭を焼いている時でも、太郎右衛門は、子供のことを思い出すと、愉快で愉快でたまりませんでした。 「早く仕事を終えて子供の顔を見たいもんだ。」と心の中で思いながら仕事をしていました。  子供の名前は朝に拾ったので、朝太郎と名付けました。 その朝太郎も、もう四歳になりました。 顔立ちこそ美しいが、始終田畑や山へつれて行くので、肌が焼けて真黒になって、百姓の子供として恥ずかしくないような顔になってしまいました。 もちろん着る物も、百姓の子供の着るようなものを着せていたので、ほんとに太郎右衛門夫婦の子供だと言っても、誰も不思議に思うものがない位でした。  話は変わりますが、あの太郎右衛門と一緒に子供を見つけた伊作と多助はどうしたでしょうか? 伊作と多助はその後、だんだん仲が悪くなって、いつでも喧嘩ばかりしていました。 伊作はある年の夏、橋の畔に小さな居酒屋を作りましたが、村には一軒も酒屋がなかったので、この居酒屋がとても繁盛してだんだん儲かって行きました。 伊作は今では田を耕したり、炭を焼いたりしなくても、立派に食べて行けるようになりました。 多助は、村のはずれに小さな水車小屋を持っていましたが、毎日伊作の店に寄っては酒を飲んだり、干魚を食べたりして、全く代金を払わないので、それが原因になって二人はいつでも喧嘩をしました。 二人は喧嘩をしたかと思うと仲直りをし、仲直りをしたかと思うと、また喧嘩をしました。  村の人たちは、どうしてあんなに仲のよかった伊作と多助が、こんな喧嘩をするようになったのか誰も知りませんでした。
伊作と多助は喧嘩をするようになったのはなぜか。
多助は、村のはずれに小さな水車小屋を持っていましたが、毎日伊作の店に寄っては酒を飲んだり、干魚を食べたりして、全く代金を払わないので、それが原因になって二人はいつでも喧嘩をしました。
JCRRAG_010368
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小田原と熱海の間に、軽便鉄道の敷設工事が始まったのは、良平が八つの時だった。 良平は毎日村のはずれに行って、その工事を見物に行った。 工事を、といったところが、ただトロッコで土を運搬する、それが面白くて見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだうしろにたたずんでいる。 トロッコは山を下りるのだから、人手を借りずに走って来る。 あおるように車台が動いたり、土工のはんてんの裾がひらついたり、細い線路がしなったり、良平はそんな景色をながめながら、土工になりたいと思う事がある。 せめては一度でも土工と一緒にトロッコへ乗りたいと思う事もある。 トロッコは村外れの平地へ来ると、自然とそこに止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の終点へ車の土をぶちまける。 それから今度はトロッコを押して、降りてきた山の方へ登り始める。 良平はその時乗れなくても、トロッコを押す事さえ出来たらと思うのである。  ある夕方、それは二月の初旬だった。良平は二つ下の弟や、弟と同じ年の隣の子供と、トロッコの置いてある村外れへ行った。 トロッコは泥だらけになったまま、薄明るい中に並んでいる。が、そのほかはどこを見ても、土工たちの姿は見えなかった。三人の子供は恐る恐る、一番端にあるトロッコを押した。トロッコは三人の力が加わると、突然ごろりと車輪をまわした。 良平はこの音にひやりとした。しかし二度目の車輪の音は、もう彼を驚かせなかった。ごろり、ごろり、トロッコはそういう音と共に、三人の手に押されながら、線路を登って行った。  その内にかれこれ20メートル程来ると、線路の勾配が急になってきた。トロッコも三人の力では、いくら押しても動かなくなった。どうしても車と一緒に、押し戻されそうになる事がある。良平はもういいタイミングだと思ったから、年下の二人に合図をした。 「さあ、乗ろう!」  彼等は一度に手をはなすと、トロッコの上へ飛び乗った。トロッコは最初はゆっくりと、それから見る見る勢いよく、一息に線路を下り出した。 その途端につき当りの風景は、たちまち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来る。顔に当たる夕暮れの風、足の下におどるトロッコの動きや揺れ、良平はほとんど有頂天になった。  しかしトロッコは二・三分動いた後、もうもとの終点に止まっていた。 「さあ、もう一度押そうぜ」  良平は年下の二人と一緒に、またトロッコを押し上げようとした。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼らのうしろから、誰かの足音が聞こえた。足音は急に怒鳴り声に変わった。 「この野郎! 誰にことわってトロにさわってるんだ!」  そこには古い印袢天に、季節外れの麦藁帽子をかぶった、背の高い土工が立っている。 そういう姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一緒にもう10メートル程逃げ出していた。 それきり良平はお使いの帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。 ただその時の土工の姿は、今でも良平の頭のどこかに、はっきりした記憶を残していた。 薄明りの中に映った小さい黄色の麦藁帽、しかしその記憶さえも、年を重ねると色彩は薄れるらしい。  その後、十日余り経ってから、良平はまたたった一人で、ひる過ぎの工事場にたたずみながら、トロッコが来るのを眺めていた。 すると土を積んだトロッコの他にも、枕木を積んだトロッコが一台、これは本線になる筈の太い線路を登って来た。 このトロッコを押しているのは、二人とも若い男だった。良平は彼らを見た時から、何だか親しみ易いような気がした。 「この人たちならしかられない」彼はそう思いながら、トロッコの側へ走って行った。 「おじさん。押してやろうか?」  その中の一人、縞のシャツを着ている男は、うつむきながらトロッコを押したまま、思った通り良い返事をした。 「おお、押してくれよ」  良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めた。 「お前、なかなか力があるな」  もう一人、耳に巻煙草をはさんだ男も良平をほめてくれた。  その内に線路の勾配は、だんだん楽になり始めた。「もう押さなくともいいよ」良平は今にもいわれるかと内心気がかりでならなかった。が、若い二人の土工は、前よりも腰を起こしたっきり、黙々と車を押し続けていた。 良平はとうとうこらえ切れずに、おずおずこんな事を尋ねて見た。 「いつまでも押していていい?」 「いいとも」  二人は同時に返事をした。良平は「優しい人たちだ」と思った。
良平はトロッコが土を運搬する様を見ながらどう思いましたか。
土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一緒にトロッコへ乗りたいと思う事もある。
JCRRAG_010369
国語
小田原と熱海の間に、軽便鉄道の敷設工事が始まったのは、良平が八つの時だった。 良平は毎日村のはずれに行って、その工事を見物に行った。 工事を、といったところが、ただトロッコで土を運搬する、それが面白くて見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだうしろにたたずんでいる。 トロッコは山を下りるのだから、人手を借りずに走って来る。 あおるように車台が動いたり、土工のはんてんの裾がひらついたり、細い線路がしなったり、良平はそんな景色をながめながら、土工になりたいと思う事がある。 せめては一度でも土工と一緒にトロッコへ乗りたいと思う事もある。 トロッコは村外れの平地へ来ると、自然とそこに止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の終点へ車の土をぶちまける。 それから今度はトロッコを押して、降りてきた山の方へ登り始める。 良平はその時乗れなくても、トロッコを押す事さえ出来たらと思うのである。  ある夕方、それは二月の初旬だった。良平は二つ下の弟や、弟と同じ年の隣の子供と、トロッコの置いてある村外れへ行った。 トロッコは泥だらけになったまま、薄明るい中に並んでいる。が、そのほかはどこを見ても、土工たちの姿は見えなかった。三人の子供は恐る恐る、一番端にあるトロッコを押した。トロッコは三人の力が加わると、突然ごろりと車輪をまわした。 良平はこの音にひやりとした。しかし二度目の車輪の音は、もう彼を驚かせなかった。ごろり、ごろり、トロッコはそういう音と共に、三人の手に押されながら、線路を登って行った。  その内にかれこれ20メートル程来ると、線路の勾配が急になってきた。トロッコも三人の力では、いくら押しても動かなくなった。どうしても車と一緒に、押し戻されそうになる事がある。良平はもういいタイミングだと思ったから、年下の二人に合図をした。 「さあ、乗ろう!」  彼等は一度に手をはなすと、トロッコの上へ飛び乗った。トロッコは最初はゆっくりと、それから見る見る勢いよく、一息に線路を下り出した。 その途端につき当りの風景は、たちまち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来る。顔に当たる夕暮れの風、足の下におどるトロッコの動きや揺れ、良平はほとんど有頂天になった。  しかしトロッコは二・三分動いた後、もうもとの終点に止まっていた。 「さあ、もう一度押そうぜ」  良平は年下の二人と一緒に、またトロッコを押し上げようとした。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼らのうしろから、誰かの足音が聞こえた。足音は急に怒鳴り声に変わった。 「この野郎! 誰にことわってトロにさわってるんだ!」  そこには古い印袢天に、季節外れの麦藁帽子をかぶった、背の高い土工が立っている。 そういう姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一緒にもう10メートル程逃げ出していた。 それきり良平はお使いの帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。 ただその時の土工の姿は、今でも良平の頭のどこかに、はっきりした記憶を残していた。 薄明りの中に映った小さい黄色の麦藁帽、しかしその記憶さえも、年を重ねると色彩は薄れるらしい。  その後、十日余り経ってから、良平はまたたった一人で、ひる過ぎの工事場にたたずみながら、トロッコが来るのを眺めていた。 すると土を積んだトロッコの他にも、枕木を積んだトロッコが一台、これは本線になる筈の太い線路を登って来た。 このトロッコを押しているのは、二人とも若い男だった。良平は彼らを見た時から、何だか親しみ易いような気がした。 「この人たちならしかられない」彼はそう思いながら、トロッコの側へ走って行った。 「おじさん。押してやろうか?」  その中の一人、縞のシャツを着ている男は、うつむきながらトロッコを押したまま、思った通り良い返事をした。 「おお、押してくれよ」  良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めた。 「お前、なかなか力があるな」  もう一人、耳に巻煙草をはさんだ男も良平をほめてくれた。  その内に線路の勾配は、だんだん楽になり始めた。「もう押さなくともいいよ」良平は今にもいわれるかと内心気がかりでならなかった。が、若い二人の土工は、前よりも腰を起こしたっきり、黙々と車を押し続けていた。 良平はとうとうこらえ切れずに、おずおずこんな事を尋ねて見た。 「いつまでも押していていい?」 「いいとも」  二人は同時に返事をした。良平は「優しい人たちだ」と思った。
良平達が背の高い土工に怒鳴られたらどうしましたか。
良平は年下の二人と一緒にもう10メートル程逃げ出していた。
JCRRAG_010370
国語
小田原と熱海の間に、軽便鉄道の敷設工事が始まったのは、良平が八つの時だった。 良平は毎日村のはずれに行って、その工事を見物に行った。 工事を、といったところが、ただトロッコで土を運搬する、それが面白くて見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだうしろにたたずんでいる。 トロッコは山を下りるのだから、人手を借りずに走って来る。 あおるように車台が動いたり、土工のはんてんの裾がひらついたり、細い線路がしなったり、良平はそんな景色をながめながら、土工になりたいと思う事がある。 せめては一度でも土工と一緒にトロッコへ乗りたいと思う事もある。 トロッコは村外れの平地へ来ると、自然とそこに止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の終点へ車の土をぶちまける。 それから今度はトロッコを押して、降りてきた山の方へ登り始める。 良平はその時乗れなくても、トロッコを押す事さえ出来たらと思うのである。  ある夕方、それは二月の初旬だった。良平は二つ下の弟や、弟と同じ年の隣の子供と、トロッコの置いてある村外れへ行った。 トロッコは泥だらけになったまま、薄明るい中に並んでいる。が、そのほかはどこを見ても、土工たちの姿は見えなかった。三人の子供は恐る恐る、一番端にあるトロッコを押した。トロッコは三人の力が加わると、突然ごろりと車輪をまわした。 良平はこの音にひやりとした。しかし二度目の車輪の音は、もう彼を驚かせなかった。ごろり、ごろり、トロッコはそういう音と共に、三人の手に押されながら、線路を登って行った。  その内にかれこれ20メートル程来ると、線路の勾配が急になってきた。トロッコも三人の力では、いくら押しても動かなくなった。どうしても車と一緒に、押し戻されそうになる事がある。良平はもういいタイミングだと思ったから、年下の二人に合図をした。 「さあ、乗ろう!」  彼等は一度に手をはなすと、トロッコの上へ飛び乗った。トロッコは最初はゆっくりと、それから見る見る勢いよく、一息に線路を下り出した。 その途端につき当りの風景は、たちまち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来る。顔に当たる夕暮れの風、足の下におどるトロッコの動きや揺れ、良平はほとんど有頂天になった。  しかしトロッコは二・三分動いた後、もうもとの終点に止まっていた。 「さあ、もう一度押そうぜ」  良平は年下の二人と一緒に、またトロッコを押し上げようとした。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼らのうしろから、誰かの足音が聞こえた。足音は急に怒鳴り声に変わった。 「この野郎! 誰にことわってトロにさわってるんだ!」  そこには古い印袢天に、季節外れの麦藁帽子をかぶった、背の高い土工が立っている。 そういう姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一緒にもう10メートル程逃げ出していた。 それきり良平はお使いの帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。 ただその時の土工の姿は、今でも良平の頭のどこかに、はっきりした記憶を残していた。 薄明りの中に映った小さい黄色の麦藁帽、しかしその記憶さえも、年を重ねると色彩は薄れるらしい。  その後、十日余り経ってから、良平はまたたった一人で、ひる過ぎの工事場にたたずみながら、トロッコが来るのを眺めていた。 すると土を積んだトロッコの他にも、枕木を積んだトロッコが一台、これは本線になる筈の太い線路を登って来た。 このトロッコを押しているのは、二人とも若い男だった。良平は彼らを見た時から、何だか親しみ易いような気がした。 「この人たちならしかられない」彼はそう思いながら、トロッコの側へ走って行った。 「おじさん。押してやろうか?」  その中の一人、縞のシャツを着ている男は、うつむきながらトロッコを押したまま、思った通り良い返事をした。 「おお、押してくれよ」  良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めた。 「お前、なかなか力があるな」  もう一人、耳に巻煙草をはさんだ男も良平をほめてくれた。  その内に線路の勾配は、だんだん楽になり始めた。「もう押さなくともいいよ」良平は今にもいわれるかと内心気がかりでならなかった。が、若い二人の土工は、前よりも腰を起こしたっきり、黙々と車を押し続けていた。 良平はとうとうこらえ切れずに、おずおずこんな事を尋ねて見た。 「いつまでも押していていい?」 「いいとも」  二人は同時に返事をした。良平は「優しい人たちだ」と思った。
良平はトロッコを押す二人の若い男を見てどうしましたか。
良平は彼らを見た時から、何だか親しみ易いような気がした。「この人たちならしかられない」彼はそう思いながら、トロッコの側へ走って行った。
JCRRAG_010371
国語
「行きに押す所が多ければ、帰りにまた乗る所が多い」そうもまた考えたりした。  竹藪のある所へ来ると、トロッコは静かに走るのをやめた。 三人はまた前のように、重いトロッコを押し始めた。 竹藪はいつのまにか雑木林になった。爪先上りのところどころには、赤錆の線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。 その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向こうに、広々と薄ら寒い海が開けた。 と同時に良平の頭には、あまりに遠くに来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。  三人はまたトロッコへ乗った。車は海を右に曲がりながら、雑木の枝の下を走って行った。しかし良平はさっきのように、面白い気持にはなれなかった。「もう帰ってくれればいいのに」彼はそうも念じて見た。 が、行く所まで行きつかなければ、トロッコも彼等も帰れない事は、もちろん彼にもわかりきっていた。  その次に車が止まったのは、切崩した山を背負っている、藁屋根の茶店の前だった。 二人の土工はその店へはいると、乳飲み子をおぶったかみさんを相手に、ゆうゆうと茶などを飲み始めた。 良平はひとりイライラしながら、トロッコのまわりをまわって見た。 トロッコは頑丈な車体の板に、はねかえった泥がかわいていた。  しばらくしてから茶店を出て来てすぐに、巻煙草を耳に挟んだ男は、(その時はもう挟んでいなかったが)トロッコの側にいる良平に新聞紙に包んだ駄菓子をくれた。良平はひややかに「ありがとう」といった。が、すぐにひややかにしては、相手にすまないと思い直した。彼はその冷淡さを取り繕うように、包み菓子の一つを口へ入れた。 菓子には新聞紙にあったらしい、石油のにおいがしみついていた。  三人はトロッコを押しながらゆるい傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心はほかの事を考えていた。  その坂を向こうへ下り切ると、また同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。 茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気持ちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこういった。 「お前はもう帰りなさい。おれたちは今日はむこうで泊まりだから」 「あんまり帰りが遅くなるとお前の家でも心配するだろ」  良平は一瞬呆気にとられた。もうすぐ暗くなる事、去年は暮母と岩村まで来たが、今日の道のりはその三・四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、そういう事がすぐにわかったのである。 良平は泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取ってつけたようなおじぎをすると、線路伝いに走り出した。  良平はしばらく無我夢中に線路の側を走り続けた。その内に懐の菓子包みが、邪魔になる事に気がついたから、それをみちばたへ放り投げるついでに、板草履もそこへ脱ぎ捨ててしまった。 すると薄い足袋の裏へ直接小石が食いこんだが、足だけははるかに軽くなった。 彼は左に海を感じながら、急な坂道を駆け登った。時々涙がこみ上げて来ると、自然に顔がゆがんで来る。それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。  竹藪の側を駈け抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた。 良平は、いよいよ気が気でなかった。行きと帰りで、景色が変わって違うように見えるのも不安だった。 すると今度は着物までも、汗の濡れ通ったのが気になったから、やはり必死に駈け続けながら、羽織をみちばたへ脱いで捨てた。  蜜柑畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば」良平はそう思いながら、すべってもつまずいても走って行った。  やっと遠い夕闇の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は思わず泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駆け続けた。  彼の村へはいって見ると、もう両側の家家には、電燈の光がさし合っていた。良平はその電燈の光に、頭から汗の湯気が立っているのが、彼自身にもはっきりわかった。井戸端に水を汲んでいる女たちや、畑から帰って来る男たちは、良平があえぎながら走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。が、彼は無言のまま、雑貨屋だの床屋だの、明るい家の前を走り過ぎた。  彼の家の門口へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。その泣き声は彼の周囲へ、一時に父や母を集まらせた。母は何かいいながら、良平の体を抱きかかえるようにした。が、良平は手足をもがきながら、すすり泣き続けた。その声が余り激しかったせいか、近所の女衆も三・四人、薄暗い門口へ集まって来た。父母はもちろんのことその人たちは、口口に彼の泣く理由を尋ねた。しかし彼は何といわれても泣くより外に仕方がなかった。あの遠い路を駈け通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けても、足りない気持ちに迫られながら。
高い崖の向こうに、広々と薄ら寒い海が開けたら良平はどう思いましたか。
良平の頭には、あまりに遠くに来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。
JCRRAG_010372
国語
「行きに押す所が多ければ、帰りにまた乗る所が多い」そうもまた考えたりした。  竹藪のある所へ来ると、トロッコは静かに走るのをやめた。 三人はまた前のように、重いトロッコを押し始めた。 竹藪はいつのまにか雑木林になった。爪先上りのところどころには、赤錆の線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。 その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向こうに、広々と薄ら寒い海が開けた。 と同時に良平の頭には、あまりに遠くに来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。  三人はまたトロッコへ乗った。車は海を右に曲がりながら、雑木の枝の下を走って行った。しかし良平はさっきのように、面白い気持にはなれなかった。「もう帰ってくれればいいのに」彼はそうも念じて見た。 が、行く所まで行きつかなければ、トロッコも彼等も帰れない事は、もちろん彼にもわかりきっていた。  その次に車が止まったのは、切崩した山を背負っている、藁屋根の茶店の前だった。 二人の土工はその店へはいると、乳飲み子をおぶったかみさんを相手に、ゆうゆうと茶などを飲み始めた。 良平はひとりイライラしながら、トロッコのまわりをまわって見た。 トロッコは頑丈な車体の板に、はねかえった泥がかわいていた。  しばらくしてから茶店を出て来てすぐに、巻煙草を耳に挟んだ男は、(その時はもう挟んでいなかったが)トロッコの側にいる良平に新聞紙に包んだ駄菓子をくれた。良平はひややかに「ありがとう」といった。が、すぐにひややかにしては、相手にすまないと思い直した。彼はその冷淡さを取り繕うように、包み菓子の一つを口へ入れた。 菓子には新聞紙にあったらしい、石油のにおいがしみついていた。  三人はトロッコを押しながらゆるい傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心はほかの事を考えていた。  その坂を向こうへ下り切ると、また同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。 茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気持ちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこういった。 「お前はもう帰りなさい。おれたちは今日はむこうで泊まりだから」 「あんまり帰りが遅くなるとお前の家でも心配するだろ」  良平は一瞬呆気にとられた。もうすぐ暗くなる事、去年は暮母と岩村まで来たが、今日の道のりはその三・四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、そういう事がすぐにわかったのである。 良平は泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取ってつけたようなおじぎをすると、線路伝いに走り出した。  良平はしばらく無我夢中に線路の側を走り続けた。その内に懐の菓子包みが、邪魔になる事に気がついたから、それをみちばたへ放り投げるついでに、板草履もそこへ脱ぎ捨ててしまった。 すると薄い足袋の裏へ直接小石が食いこんだが、足だけははるかに軽くなった。 彼は左に海を感じながら、急な坂道を駆け登った。時々涙がこみ上げて来ると、自然に顔がゆがんで来る。それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。  竹藪の側を駈け抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた。 良平は、いよいよ気が気でなかった。行きと帰りで、景色が変わって違うように見えるのも不安だった。 すると今度は着物までも、汗の濡れ通ったのが気になったから、やはり必死に駈け続けながら、羽織をみちばたへ脱いで捨てた。  蜜柑畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば」良平はそう思いながら、すべってもつまずいても走って行った。  やっと遠い夕闇の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は思わず泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駆け続けた。  彼の村へはいって見ると、もう両側の家家には、電燈の光がさし合っていた。良平はその電燈の光に、頭から汗の湯気が立っているのが、彼自身にもはっきりわかった。井戸端に水を汲んでいる女たちや、畑から帰って来る男たちは、良平があえぎながら走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。が、彼は無言のまま、雑貨屋だの床屋だの、明るい家の前を走り過ぎた。  彼の家の門口へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。その泣き声は彼の周囲へ、一時に父や母を集まらせた。母は何かいいながら、良平の体を抱きかかえるようにした。が、良平は手足をもがきながら、すすり泣き続けた。その声が余り激しかったせいか、近所の女衆も三・四人、薄暗い門口へ集まって来た。父母はもちろんのことその人たちは、口口に彼の泣く理由を尋ねた。しかし彼は何といわれても泣くより外に仕方がなかった。あの遠い路を駈け通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けても、足りない気持ちに迫られながら。
良平はなぜ土工の二人組にもう帰りなさいと言われて泣きそうになったのですか。
もうすぐ暗くなる事、去年は暮母と岩村まで来たが、今日の道のりはその三・四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、そういう事がすぐにわかったのである。
JCRRAG_010373
国語
「行きに押す所が多ければ、帰りにまた乗る所が多い」そうもまた考えたりした。  竹藪のある所へ来ると、トロッコは静かに走るのをやめた。 三人はまた前のように、重いトロッコを押し始めた。 竹藪はいつのまにか雑木林になった。爪先上りのところどころには、赤錆の線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。 その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向こうに、広々と薄ら寒い海が開けた。 と同時に良平の頭には、あまりに遠くに来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。  三人はまたトロッコへ乗った。車は海を右に曲がりながら、雑木の枝の下を走って行った。しかし良平はさっきのように、面白い気持にはなれなかった。「もう帰ってくれればいいのに」彼はそうも念じて見た。 が、行く所まで行きつかなければ、トロッコも彼等も帰れない事は、もちろん彼にもわかりきっていた。  その次に車が止まったのは、切崩した山を背負っている、藁屋根の茶店の前だった。 二人の土工はその店へはいると、乳飲み子をおぶったかみさんを相手に、ゆうゆうと茶などを飲み始めた。 良平はひとりイライラしながら、トロッコのまわりをまわって見た。 トロッコは頑丈な車体の板に、はねかえった泥がかわいていた。  しばらくしてから茶店を出て来てすぐに、巻煙草を耳に挟んだ男は、(その時はもう挟んでいなかったが)トロッコの側にいる良平に新聞紙に包んだ駄菓子をくれた。良平はひややかに「ありがとう」といった。が、すぐにひややかにしては、相手にすまないと思い直した。彼はその冷淡さを取り繕うように、包み菓子の一つを口へ入れた。 菓子には新聞紙にあったらしい、石油のにおいがしみついていた。  三人はトロッコを押しながらゆるい傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心はほかの事を考えていた。  その坂を向こうへ下り切ると、また同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。 茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気持ちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこういった。 「お前はもう帰りなさい。おれたちは今日はむこうで泊まりだから」 「あんまり帰りが遅くなるとお前の家でも心配するだろ」  良平は一瞬呆気にとられた。もうすぐ暗くなる事、去年は暮母と岩村まで来たが、今日の道のりはその三・四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、そういう事がすぐにわかったのである。 良平は泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取ってつけたようなおじぎをすると、線路伝いに走り出した。  良平はしばらく無我夢中に線路の側を走り続けた。その内に懐の菓子包みが、邪魔になる事に気がついたから、それをみちばたへ放り投げるついでに、板草履もそこへ脱ぎ捨ててしまった。 すると薄い足袋の裏へ直接小石が食いこんだが、足だけははるかに軽くなった。 彼は左に海を感じながら、急な坂道を駆け登った。時々涙がこみ上げて来ると、自然に顔がゆがんで来る。それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。  竹藪の側を駈け抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた。 良平は、いよいよ気が気でなかった。行きと帰りで、景色が変わって違うように見えるのも不安だった。 すると今度は着物までも、汗の濡れ通ったのが気になったから、やはり必死に駈け続けながら、羽織をみちばたへ脱いで捨てた。  蜜柑畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば」良平はそう思いながら、すべってもつまずいても走って行った。  やっと遠い夕闇の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は思わず泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駆け続けた。  彼の村へはいって見ると、もう両側の家家には、電燈の光がさし合っていた。良平はその電燈の光に、頭から汗の湯気が立っているのが、彼自身にもはっきりわかった。井戸端に水を汲んでいる女たちや、畑から帰って来る男たちは、良平があえぎながら走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。が、彼は無言のまま、雑貨屋だの床屋だの、明るい家の前を走り過ぎた。  彼の家の門口へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。その泣き声は彼の周囲へ、一時に父や母を集まらせた。母は何かいいながら、良平の体を抱きかかえるようにした。が、良平は手足をもがきながら、すすり泣き続けた。その声が余り激しかったせいか、近所の女衆も三・四人、薄暗い門口へ集まって来た。父母はもちろんのことその人たちは、口口に彼の泣く理由を尋ねた。しかし彼は何といわれても泣くより外に仕方がなかった。あの遠い路を駈け通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けても、足りない気持ちに迫られながら。
良平が家に帰りついて大泣きしたら、母はどうしましたか。
母は何かいいながら、良平の体を抱きかかえるようにした。
JCRRAG_010374
国語
「行きに押す所が多ければ、帰りにまた乗る所が多い」そうもまた考えたりした。  竹藪のある所へ来ると、トロッコは静かに走るのをやめた。 三人はまた前のように、重いトロッコを押し始めた。 竹藪はいつのまにか雑木林になった。爪先上りのところどころには、赤錆の線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。 その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向こうに、広々と薄ら寒い海が開けた。 と同時に良平の頭には、あまりに遠くに来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。  三人はまたトロッコへ乗った。車は海を右に曲がりながら、雑木の枝の下を走って行った。しかし良平はさっきのように、面白い気持にはなれなかった。「もう帰ってくれればいいのに」彼はそうも念じて見た。 が、行く所まで行きつかなければ、トロッコも彼等も帰れない事は、もちろん彼にもわかりきっていた。  その次に車が止まったのは、切崩した山を背負っている、藁屋根の茶店の前だった。 二人の土工はその店へはいると、乳飲み子をおぶったかみさんを相手に、ゆうゆうと茶などを飲み始めた。 良平はひとりイライラしながら、トロッコのまわりをまわって見た。 トロッコは頑丈な車体の板に、はねかえった泥がかわいていた。  しばらくしてから茶店を出て来てすぐに、巻煙草を耳に挟んだ男は、(その時はもう挟んでいなかったが)トロッコの側にいる良平に新聞紙に包んだ駄菓子をくれた。良平はひややかに「ありがとう」といった。が、すぐにひややかにしては、相手にすまないと思い直した。彼はその冷淡さを取り繕うように、包み菓子の一つを口へ入れた。 菓子には新聞紙にあったらしい、石油のにおいがしみついていた。  三人はトロッコを押しながらゆるい傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心はほかの事を考えていた。  その坂を向こうへ下り切ると、また同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。 茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気持ちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこういった。 「お前はもう帰りなさい。おれたちは今日はむこうで泊まりだから」 「あんまり帰りが遅くなるとお前の家でも心配するだろ」  良平は一瞬呆気にとられた。もうすぐ暗くなる事、去年は暮母と岩村まで来たが、今日の道のりはその三・四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、そういう事がすぐにわかったのである。 良平は泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取ってつけたようなおじぎをすると、線路伝いに走り出した。  良平はしばらく無我夢中に線路の側を走り続けた。その内に懐の菓子包みが、邪魔になる事に気がついたから、それをみちばたへ放り投げるついでに、板草履もそこへ脱ぎ捨ててしまった。 すると薄い足袋の裏へ直接小石が食いこんだが、足だけははるかに軽くなった。 彼は左に海を感じながら、急な坂道を駆け登った。時々涙がこみ上げて来ると、自然に顔がゆがんで来る。それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。  竹藪の側を駈け抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた。 良平は、いよいよ気が気でなかった。行きと帰りで、景色が変わって違うように見えるのも不安だった。 すると今度は着物までも、汗の濡れ通ったのが気になったから、やはり必死に駈け続けながら、羽織をみちばたへ脱いで捨てた。  蜜柑畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば」良平はそう思いながら、すべってもつまずいても走って行った。  やっと遠い夕闇の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は思わず泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駆け続けた。  彼の村へはいって見ると、もう両側の家家には、電燈の光がさし合っていた。良平はその電燈の光に、頭から汗の湯気が立っているのが、彼自身にもはっきりわかった。井戸端に水を汲んでいる女たちや、畑から帰って来る男たちは、良平があえぎながら走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。が、彼は無言のまま、雑貨屋だの床屋だの、明るい家の前を走り過ぎた。  彼の家の門口へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。その泣き声は彼の周囲へ、一時に父や母を集まらせた。母は何かいいながら、良平の体を抱きかかえるようにした。が、良平は手足をもがきながら、すすり泣き続けた。その声が余り激しかったせいか、近所の女衆も三・四人、薄暗い門口へ集まって来た。父母はもちろんのことその人たちは、口口に彼の泣く理由を尋ねた。しかし彼は何といわれても泣くより外に仕方がなかった。あの遠い路を駈け通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けても、足りない気持ちに迫られながら。
良平が板草履を脱ぎ捨てたらどうなりましたか。
薄い足袋の裏へ直接小石が食いこんだが、足だけははるかに軽くなった。
JCRRAG_010375
国語
 土用波という高い波が風もないのに海岸にうちよせる頃になると、海水浴に来ている都会の人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。 今までは海岸の砂の上にも水の中にも、朝から晩まで、沢山の人が集まって来て、砂山からでも見ていると、あんなに大勢な人間が一体どこから出て来たのだろうと不思議に思えるほどですが、九月にはいってから三日目になるその日には、見わたすかぎり砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。  私の友達のMと私と妹は名残惜しいといって海水浴にいくことにしました。お婆様が波が荒くなって来るから行かない方がよくはないかとおっしゃりました。ですが、こんなにお天気はいいし、海に入らず砂浜で噂話をするだけだから大丈夫だといって言うことを聞かずに出かけました。  ちょうど昼少し過ぎで、上天気で、空には雲一つありませんでした。 昼間でも草の中にはもう虫の音がしていましたが、それでも砂は熱くって、裸足だと時々草の上にかけ上あがらなければいられないほどでした。Mはタオルを頭からかぶってどんどん飛んで行きました。私はむぎわらぼうしをかぶった妹の手を引いてから駈けました。少しでも早く海の中につかりたいので三人はいきを切って急いだのです。  うねりといいますね、その波がうねっていました。 ちゃぷりちゃぷりと小さな波が波打際でくだけるのではなく、少し沖の方に細長い小山のような波が出来て、それが陸の方を向いて段々押し寄せて来ると、やがてその小山のてっぺんが尖って来て、ざぶりと大きな音をたてて一度に崩れかかるのです。 そうするとしばらく間をおいてまたあとの波が小山のようにうちよせて来ます。 そして崩れた波はひどい勢いで砂の上にはい上がって、そこら中を白い泡で敷きつめたようにしてしまうのです。 三人はそうした波の様子を見ると少し気味悪くも思いました。けれども折角そこまで来ていながら、そのまま引き返すのはどうしてもいやでした。で、妹に帽子を脱がせて、それを砂の上に仰向けにおいて、衣物やタオルをその中に丸めこむと私たち三人は手をつなぎ合せて水の中にはいってゆきました。
九月にはいってから三日目になるその日の砂浜はどんなようすでしたか。
見わたすかぎり砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。
JCRRAG_010376
国語
 土用波という高い波が風もないのに海岸にうちよせる頃になると、海水浴に来ている都会の人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。 今までは海岸の砂の上にも水の中にも、朝から晩まで、沢山の人が集まって来て、砂山からでも見ていると、あんなに大勢な人間が一体どこから出て来たのだろうと不思議に思えるほどですが、九月にはいってから三日目になるその日には、見わたすかぎり砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。  私の友達のMと私と妹は名残惜しいといって海水浴にいくことにしました。お婆様が波が荒くなって来るから行かない方がよくはないかとおっしゃりました。ですが、こんなにお天気はいいし、海に入らず砂浜で噂話をするだけだから大丈夫だといって言うことを聞かずに出かけました。  ちょうど昼少し過ぎで、上天気で、空には雲一つありませんでした。 昼間でも草の中にはもう虫の音がしていましたが、それでも砂は熱くって、裸足だと時々草の上にかけ上あがらなければいられないほどでした。Mはタオルを頭からかぶってどんどん飛んで行きました。私はむぎわらぼうしをかぶった妹の手を引いてから駈けました。少しでも早く海の中につかりたいので三人はいきを切って急いだのです。  うねりといいますね、その波がうねっていました。 ちゃぷりちゃぷりと小さな波が波打際でくだけるのではなく、少し沖の方に細長い小山のような波が出来て、それが陸の方を向いて段々押し寄せて来ると、やがてその小山のてっぺんが尖って来て、ざぶりと大きな音をたてて一度に崩れかかるのです。 そうするとしばらく間をおいてまたあとの波が小山のようにうちよせて来ます。 そして崩れた波はひどい勢いで砂の上にはい上がって、そこら中を白い泡で敷きつめたようにしてしまうのです。 三人はそうした波の様子を見ると少し気味悪くも思いました。けれども折角そこまで来ていながら、そのまま引き返すのはどうしてもいやでした。で、妹に帽子を脱がせて、それを砂の上に仰向けにおいて、衣物やタオルをその中に丸めこむと私たち三人は手をつなぎ合せて水の中にはいってゆきました。
お婆様が波が荒くなって来るから行かない方がよくはないかと言った後私たちはどうしましたか。
こんなにお天気はいいし、海に入らず砂浜で噂話をするだけだから大丈夫だといって言うことを聞かずに出かけました。
JCRRAG_010377
国語
 土用波という高い波が風もないのに海岸にうちよせる頃になると、海水浴に来ている都会の人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。 今までは海岸の砂の上にも水の中にも、朝から晩まで、沢山の人が集まって来て、砂山からでも見ていると、あんなに大勢な人間が一体どこから出て来たのだろうと不思議に思えるほどですが、九月にはいってから三日目になるその日には、見わたすかぎり砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。  私の友達のMと私と妹は名残惜しいといって海水浴にいくことにしました。お婆様が波が荒くなって来るから行かない方がよくはないかとおっしゃりました。ですが、こんなにお天気はいいし、海に入らず砂浜で噂話をするだけだから大丈夫だといって言うことを聞かずに出かけました。  ちょうど昼少し過ぎで、上天気で、空には雲一つありませんでした。 昼間でも草の中にはもう虫の音がしていましたが、それでも砂は熱くって、裸足だと時々草の上にかけ上あがらなければいられないほどでした。Mはタオルを頭からかぶってどんどん飛んで行きました。私はむぎわらぼうしをかぶった妹の手を引いてから駈けました。少しでも早く海の中につかりたいので三人はいきを切って急いだのです。  うねりといいますね、その波がうねっていました。 ちゃぷりちゃぷりと小さな波が波打際でくだけるのではなく、少し沖の方に細長い小山のような波が出来て、それが陸の方を向いて段々押し寄せて来ると、やがてその小山のてっぺんが尖って来て、ざぶりと大きな音をたてて一度に崩れかかるのです。 そうするとしばらく間をおいてまたあとの波が小山のようにうちよせて来ます。 そして崩れた波はひどい勢いで砂の上にはい上がって、そこら中を白い泡で敷きつめたようにしてしまうのです。 三人はそうした波の様子を見ると少し気味悪くも思いました。けれども折角そこまで来ていながら、そのまま引き返すのはどうしてもいやでした。で、妹に帽子を脱がせて、それを砂の上に仰向けにおいて、衣物やタオルをその中に丸めこむと私たち三人は手をつなぎ合せて水の中にはいってゆきました。
三人は波の様子をみて少し気味悪く思ったあとどうしましたか。
折角そこまで来ていながら、そのまま引き返すのはどうしてもいやでした。で、妹に帽子を脱がせて、それを砂の上に仰向けにおいて、衣物やタオルをその中に丸めこむと私たち三人は手をつなぎ合せて水の中にはいってゆきました。
JCRRAG_010378
国語
「ひきが強いね」  とMがいいました。本当にその通りでした。ひきとは水が沖の方にひいて行く時の力のことです。その日は大変強いように私たちは思ったのです。くるぶしくらいまでより水の来ない所に立っていても、その水が退いてゆく時にはまるで急な河の流れのようで、足の下の砂がどんどん掘れるものですから、うっかりしていると倒れそうになる位でした。 その水の沖の方に動くのを見ていると目がふらふらしました。けれどもそれが私たちには面白くってならなかったのです。足の裏をくすむるように砂が掘れて足がどんどん深く埋まってゆくのがこの上なく面白かったのです。三人は手をつないだまま少しずつ深い方にはいってゆきました。沖の方を向いて立っていると、ひざの所で足がくの字に曲がりそうになります。陸の方を向いているとむこうずねにあたる水が痛い位でした。両足をそろえてまっすぐに立ったままどっちにも倒れないのを勝ちにして見たり、片足で立ちっこをして見たりして、三人は面白がって人魚のように跳ねまわりました。  そのうちにMが膝位の深さの所まで行って見ました。そうするとうねりが来るたびにMは背伸びをしなければならないほどでした。 それがまた面白そうなので私たちも段々ふかみに進んでゆきました。そして私たちはとうとう波のない時には腰位まで水につかるほどのふかみに出てしまいました。そこまで行くと波が来たらただ立っていたままでは間に合いません。どうしてもふわりと浮き上がらなければ水をのませられてしまうのです。  ふわりとうきあがると私たちは大変高い所に来たように思いました。波が行ってしまうので地面に足をつけると海岸の方を見ても海岸は見えずに波の脊中だけが見えるのでした。その中にその波がざぶんとくだけています。波打際が一面に白くなって、いきなり砂山や妹の帽子などが手に取るように見えます。それがまたこの上なく面白かったのです。私たち三人は土用波があぶないということも何も忘れてしまって波越の遊びを続けさまにやっていました。 「あら大きな波が来てよ」  と沖の方を見ていた妹が少しこわそうな声でこういきなりいいましたので、私たちも思わずその方を見ると、妹の言葉通りに、これまでのとはかけはなれて大きな波が、両手をひろげるようなかっこうで押し寄せて来るのでした。 泳ぎの上手なMも少し気味悪そうに陸の方を向いていくらかでも浅い所までにげようとした位でした。 私たちはいうまでもありません。腰から上をのめるように前に出して、両手をまたその前につきだして泳ぐような恰好をしながら歩こうとしたのですが、何しろひきがひどいので、足を上げることも前にやることも思うようには出来ません。私たちはまるで夢の中で怖い奴に追いかけられている時のような気がしました。  後から押し寄せて来る波は私たちが浅い所まで行くのを待っていてはくれません。見る見る大きく近くなって来て、そのてっぺんにはちらりちらりと白い泡がくだけ始めました。Mは後ろから大声をあげて、 「そんなにそっちへ行くと駄目だよ、波がくだけるとまきこまれるよ。今のうちに波を越す方がいいよ」  といいました。そういわれればそうです。私と妹は立ち止まって仕方なく波が来るのを待っていました。 高い波が屏風を立てつらねたように押し寄せて来ました。私たち三人は丁度具合よくくだけないうちに波の背を越すことが出来ました。 私たちは体をもまれるように感じながらもうまくその大波をやりすごすことだけは出来たのでした。三人はようやく安心して泳ぎながら顔を見合わせてにこにこしました。そして波が行ってしまうと三人ながら泳ぎをやめてもとのように底の砂の上に立とうとしました。  ところがどうでしょう、私たちは泳ぎをやめると一緒に、三人ながらずぼりと水の中に潜ってしまいました。水の中に潜っても足は砂にはつかないのです。私たちは驚きました。あわてました。そして一生懸命にめんかきをして、ようやく水の上に顔だけ出すことが出来ました。その時私たち三人が互いに見合った眼といったら、顔といったらありません。顔は真っ青でした。眼は飛び出しそうに見開いていました。今の波一つでどこか深い所に流されたのだということを私たちはいい合わさないでも知ることが出来たのです。 うまく合わさなくても私たちは陸の方を目がけて泳げるだけ泳がなければならないということがわかったのです。  三人は黙ったままで体を横にして泳ぎはじめました。けれども私たちにどれほどの力があったかを考えて見て下さい。Mは十四歳でした。私は十三歳でした。妹は十一歳でした。Mは毎年学校の水泳部に行っていたので、とにかくあたり前に泳ぐことを知っていましたが、私は横のし泳ぎを少しと、水の上に仰向けに浮くことを覚えたばかりですし、妹はようやく板を持たなくて5メートル位泳ぐことが出来るだけなのです。  私たちは見る見る沖の方へ沖の方へと流されているのです。私は頭を半分水の中につけて横のしでおよぎながら時々頭を上げて見ると、その度ごとに妹は沖の方へと私から離れてゆき、友達のMはまた岸の方へと私から離れて行って、しばらくの後のちには三人はようやく声がとどく位お互いに離ればなれになってしまいました。そして波が来るたんびに私は妹を見失ったりMを見失ったりしました。
ひきが強く、足の下の砂がどんどん掘れるものですからどうなりそうでしたか。
うっかりしていると倒れそうになる位でした。
JCRRAG_010379
国語
「ひきが強いね」  とMがいいました。本当にその通りでした。ひきとは水が沖の方にひいて行く時の力のことです。その日は大変強いように私たちは思ったのです。くるぶしくらいまでより水の来ない所に立っていても、その水が退いてゆく時にはまるで急な河の流れのようで、足の下の砂がどんどん掘れるものですから、うっかりしていると倒れそうになる位でした。 その水の沖の方に動くのを見ていると目がふらふらしました。けれどもそれが私たちには面白くってならなかったのです。足の裏をくすむるように砂が掘れて足がどんどん深く埋まってゆくのがこの上なく面白かったのです。三人は手をつないだまま少しずつ深い方にはいってゆきました。沖の方を向いて立っていると、ひざの所で足がくの字に曲がりそうになります。陸の方を向いているとむこうずねにあたる水が痛い位でした。両足をそろえてまっすぐに立ったままどっちにも倒れないのを勝ちにして見たり、片足で立ちっこをして見たりして、三人は面白がって人魚のように跳ねまわりました。  そのうちにMが膝位の深さの所まで行って見ました。そうするとうねりが来るたびにMは背伸びをしなければならないほどでした。 それがまた面白そうなので私たちも段々ふかみに進んでゆきました。そして私たちはとうとう波のない時には腰位まで水につかるほどのふかみに出てしまいました。そこまで行くと波が来たらただ立っていたままでは間に合いません。どうしてもふわりと浮き上がらなければ水をのませられてしまうのです。  ふわりとうきあがると私たちは大変高い所に来たように思いました。波が行ってしまうので地面に足をつけると海岸の方を見ても海岸は見えずに波の脊中だけが見えるのでした。その中にその波がざぶんとくだけています。波打際が一面に白くなって、いきなり砂山や妹の帽子などが手に取るように見えます。それがまたこの上なく面白かったのです。私たち三人は土用波があぶないということも何も忘れてしまって波越の遊びを続けさまにやっていました。 「あら大きな波が来てよ」  と沖の方を見ていた妹が少しこわそうな声でこういきなりいいましたので、私たちも思わずその方を見ると、妹の言葉通りに、これまでのとはかけはなれて大きな波が、両手をひろげるようなかっこうで押し寄せて来るのでした。 泳ぎの上手なMも少し気味悪そうに陸の方を向いていくらかでも浅い所までにげようとした位でした。 私たちはいうまでもありません。腰から上をのめるように前に出して、両手をまたその前につきだして泳ぐような恰好をしながら歩こうとしたのですが、何しろひきがひどいので、足を上げることも前にやることも思うようには出来ません。私たちはまるで夢の中で怖い奴に追いかけられている時のような気がしました。  後から押し寄せて来る波は私たちが浅い所まで行くのを待っていてはくれません。見る見る大きく近くなって来て、そのてっぺんにはちらりちらりと白い泡がくだけ始めました。Mは後ろから大声をあげて、 「そんなにそっちへ行くと駄目だよ、波がくだけるとまきこまれるよ。今のうちに波を越す方がいいよ」  といいました。そういわれればそうです。私と妹は立ち止まって仕方なく波が来るのを待っていました。 高い波が屏風を立てつらねたように押し寄せて来ました。私たち三人は丁度具合よくくだけないうちに波の背を越すことが出来ました。 私たちは体をもまれるように感じながらもうまくその大波をやりすごすことだけは出来たのでした。三人はようやく安心して泳ぎながら顔を見合わせてにこにこしました。そして波が行ってしまうと三人ながら泳ぎをやめてもとのように底の砂の上に立とうとしました。  ところがどうでしょう、私たちは泳ぎをやめると一緒に、三人ながらずぼりと水の中に潜ってしまいました。水の中に潜っても足は砂にはつかないのです。私たちは驚きました。あわてました。そして一生懸命にめんかきをして、ようやく水の上に顔だけ出すことが出来ました。その時私たち三人が互いに見合った眼といったら、顔といったらありません。顔は真っ青でした。眼は飛び出しそうに見開いていました。今の波一つでどこか深い所に流されたのだということを私たちはいい合わさないでも知ることが出来たのです。 うまく合わさなくても私たちは陸の方を目がけて泳げるだけ泳がなければならないということがわかったのです。  三人は黙ったままで体を横にして泳ぎはじめました。けれども私たちにどれほどの力があったかを考えて見て下さい。Mは十四歳でした。私は十三歳でした。妹は十一歳でした。Mは毎年学校の水泳部に行っていたので、とにかくあたり前に泳ぐことを知っていましたが、私は横のし泳ぎを少しと、水の上に仰向けに浮くことを覚えたばかりですし、妹はようやく板を持たなくて5メートル位泳ぐことが出来るだけなのです。  私たちは見る見る沖の方へ沖の方へと流されているのです。私は頭を半分水の中につけて横のしでおよぎながら時々頭を上げて見ると、その度ごとに妹は沖の方へと私から離れてゆき、友達のMはまた岸の方へと私から離れて行って、しばらくの後のちには三人はようやく声がとどく位お互いに離ればなれになってしまいました。そして波が来るたんびに私は妹を見失ったりMを見失ったりしました。
妹が「あら大きな波が来てよ」といって私たちがその方を見るとどうなっていましたか。
私たちも思わずその方を見ると、妹の言葉通りに、これまでのとはかけはなれて大きな波が、両手をひろげるようなかっこうで押し寄せて来るのでした。
JCRRAG_010380
国語
「ひきが強いね」  とMがいいました。本当にその通りでした。ひきとは水が沖の方にひいて行く時の力のことです。その日は大変強いように私たちは思ったのです。くるぶしくらいまでより水の来ない所に立っていても、その水が退いてゆく時にはまるで急な河の流れのようで、足の下の砂がどんどん掘れるものですから、うっかりしていると倒れそうになる位でした。 その水の沖の方に動くのを見ていると目がふらふらしました。けれどもそれが私たちには面白くってならなかったのです。足の裏をくすむるように砂が掘れて足がどんどん深く埋まってゆくのがこの上なく面白かったのです。三人は手をつないだまま少しずつ深い方にはいってゆきました。沖の方を向いて立っていると、ひざの所で足がくの字に曲がりそうになります。陸の方を向いているとむこうずねにあたる水が痛い位でした。両足をそろえてまっすぐに立ったままどっちにも倒れないのを勝ちにして見たり、片足で立ちっこをして見たりして、三人は面白がって人魚のように跳ねまわりました。  そのうちにMが膝位の深さの所まで行って見ました。そうするとうねりが来るたびにMは背伸びをしなければならないほどでした。 それがまた面白そうなので私たちも段々ふかみに進んでゆきました。そして私たちはとうとう波のない時には腰位まで水につかるほどのふかみに出てしまいました。そこまで行くと波が来たらただ立っていたままでは間に合いません。どうしてもふわりと浮き上がらなければ水をのませられてしまうのです。  ふわりとうきあがると私たちは大変高い所に来たように思いました。波が行ってしまうので地面に足をつけると海岸の方を見ても海岸は見えずに波の脊中だけが見えるのでした。その中にその波がざぶんとくだけています。波打際が一面に白くなって、いきなり砂山や妹の帽子などが手に取るように見えます。それがまたこの上なく面白かったのです。私たち三人は土用波があぶないということも何も忘れてしまって波越の遊びを続けさまにやっていました。 「あら大きな波が来てよ」  と沖の方を見ていた妹が少しこわそうな声でこういきなりいいましたので、私たちも思わずその方を見ると、妹の言葉通りに、これまでのとはかけはなれて大きな波が、両手をひろげるようなかっこうで押し寄せて来るのでした。 泳ぎの上手なMも少し気味悪そうに陸の方を向いていくらかでも浅い所までにげようとした位でした。 私たちはいうまでもありません。腰から上をのめるように前に出して、両手をまたその前につきだして泳ぐような恰好をしながら歩こうとしたのですが、何しろひきがひどいので、足を上げることも前にやることも思うようには出来ません。私たちはまるで夢の中で怖い奴に追いかけられている時のような気がしました。  後から押し寄せて来る波は私たちが浅い所まで行くのを待っていてはくれません。見る見る大きく近くなって来て、そのてっぺんにはちらりちらりと白い泡がくだけ始めました。Mは後ろから大声をあげて、 「そんなにそっちへ行くと駄目だよ、波がくだけるとまきこまれるよ。今のうちに波を越す方がいいよ」  といいました。そういわれればそうです。私と妹は立ち止まって仕方なく波が来るのを待っていました。 高い波が屏風を立てつらねたように押し寄せて来ました。私たち三人は丁度具合よくくだけないうちに波の背を越すことが出来ました。 私たちは体をもまれるように感じながらもうまくその大波をやりすごすことだけは出来たのでした。三人はようやく安心して泳ぎながら顔を見合わせてにこにこしました。そして波が行ってしまうと三人ながら泳ぎをやめてもとのように底の砂の上に立とうとしました。  ところがどうでしょう、私たちは泳ぎをやめると一緒に、三人ながらずぼりと水の中に潜ってしまいました。水の中に潜っても足は砂にはつかないのです。私たちは驚きました。あわてました。そして一生懸命にめんかきをして、ようやく水の上に顔だけ出すことが出来ました。その時私たち三人が互いに見合った眼といったら、顔といったらありません。顔は真っ青でした。眼は飛び出しそうに見開いていました。今の波一つでどこか深い所に流されたのだということを私たちはいい合わさないでも知ることが出来たのです。 うまく合わさなくても私たちは陸の方を目がけて泳げるだけ泳がなければならないということがわかったのです。  三人は黙ったままで体を横にして泳ぎはじめました。けれども私たちにどれほどの力があったかを考えて見て下さい。Mは十四歳でした。私は十三歳でした。妹は十一歳でした。Mは毎年学校の水泳部に行っていたので、とにかくあたり前に泳ぐことを知っていましたが、私は横のし泳ぎを少しと、水の上に仰向けに浮くことを覚えたばかりですし、妹はようやく板を持たなくて5メートル位泳ぐことが出来るだけなのです。  私たちは見る見る沖の方へ沖の方へと流されているのです。私は頭を半分水の中につけて横のしでおよぎながら時々頭を上げて見ると、その度ごとに妹は沖の方へと私から離れてゆき、友達のMはまた岸の方へと私から離れて行って、しばらくの後のちには三人はようやく声がとどく位お互いに離ればなれになってしまいました。そして波が来るたんびに私は妹を見失ったりMを見失ったりしました。
三人は黙ったままで体を横にして泳ぎはじめたがどうなりましたか。
私たちは見る見る沖の方へ沖の方へと流されているのです。
JCRRAG_010381
国語
私の顔が見えると妹は後ろの方からあらん限りの声をしぼって 「兄さん来てよ。もう沈む、苦しい」  と呼びかけるのです。実際妹は鼻の所くらいまで水に沈みながら声を出そうとするのですから、その度ごとに水を呑むように見えて真っ青な苦しそうな顔をして私をにらみつけるように見えます。私も前に泳ぎながら心は後ろにばかり引かれました。何度も妹のいる方へ泳いで行こうかと思いました。けれども私は悪い人間だったと見えて、こうなると自分の命が助かりたかったのです。妹の所へ行けば、二人とも一緒に沖に流されて命がないのはわかり切っていました。私はそれが恐ろしかったのです。何しろ早く岸について漁師にでも助けに行ってもらうしかないと思いました。今から思うとそれはずるい考えだったようです。  でもとにかくそう思うと私はもう後ろも向かずに無我夢中で岸の方を向いて泳ぎ出しました。力が無くなりそうになるとあおむけに水の上にはねてしばらく息をつきました。 それでも岸は少しずつ近づいて来るようでした。一生懸命に、そして立ち泳ぎのようになって足を砂につけて見ようとしたら、またずぶりと頭まで潜ってしまいました。私は慌てました。そしてまた一生懸命泳ぎ出しました。  立って見たら水が膝の所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほど時間が経ってからのことでした。 砂浜までたどり着いた私は、ほっと安心したと思うと、もう夢中で泣き声を立てながら、 「助けてくれえ」  といって砂浜を狂ったように駆けずり回りました。見るとMは遥かむこうの方で私と同じようなことをしています。私は駈けずりまわりながらも妹の方を見ることを忘れはしませんでした。波打際から随分遠い所に、波に隠れたり現われたりして、可哀そうな妹の頭だけが見えていました。  浜には船もいません、漁師もいません。その時になって私はまた水の中に飛び込んで行きたいような心持ちになりました。大事な妹を置きっぱなしにして来たのがたまらなく悲しくなりました。  その時Mが遥かむこうから一人の若い男の袖を引っぱってこっちに走って来ました。私はそれを見ると何もかも忘れてそっちの方に駈け出しました。若い男というのは、土地の者ではありますが、漁師とも見えないような通りがかりの人で、肩に何か担いでいました。 「早く!早く行って助けて下さい!あそこだ、あそこだ」  私は、涙を流し放題に流して、地団駄をふまないばかりにせき立てて、震える手をのばして妹の頭がちょっぴり水の上に浮かんでいる方を指しました。  若い男は私の指す方を見定めていましたが、やがて手早く担いでいたものを砂の上におろし、帯をくるくると解いて、衣物を一緒にその上におくと、ざぶりと波を切って海の中に入って行ってくれました。  私はぶるぶる震えて泣きながら、両手の指をそろえて口の中へ押しこんで、それをぎゅっと歯でかみしめながら、その男がどんどん沖の方に遠ざかって行くのを見送りました。私の足がどんな所に立っているのか、寒いのだか、暑いのだか、すこしも私には分かりません。手足があるのかないのかそれも分かりませんでした。  抜手を切って行く若者の頭も段々小さくなりまして、妹との距離が見る見る近よって行きました。若者の身のまわりには白い泡がきらきらと光って、水を切った手が濡れたまま飛魚が飛ぶように海の上に現われたり隠れたりします。私はそんなことを一生懸命に見つめていました。  とうとう若者の頭と妹の頭とが一つになりました。私は思わず指を口の中から放して、声を立てながら水の中にはいってゆきました。けれども二人がこっちに来るのはおそいことおそいこと。私はまた何の訳もなく砂の方に飛び上がりました。そしてまた海の中にはいって行きました。どうしてもじっとして待っていることが出来ないのです。  妹の頭は何度も水の中に沈みました。時には沈み切りに沈んだのかと思うほど長く現われて来ませんでした。若者もどうかすると水の上には見えなくなりました。そうかと思うと、ぽこんと跳ね上るように高く水の上に現われ出ました。なんだか曲泳でもしているのではないかと思われるほどでした。それでもそんなことをしているうちに、二人は段々岸近くなって来て、とうとうその顔までがはっきり見える位になりました。が、そこいらは打ち寄せる波が崩れるところなので、二人はもろともに幾度も白い泡のうずまきの中に姿を隠しました。やがて若者は這うようにして波打際にたどりつきました。妹はそんな浅い所に来ても若者におぶさりかかっていました。私は有頂天になってそこまで飛んで行きました。  飛んで行って見て驚いたのは若者の姿でした。せわしく深くいきをついて、体はつかれ切ったようにゆるんでへとへとになっていました。妹は私が近づいたのを見ると夢中で飛んで来ましたがふっと思いかえしたように私をよけて砂山の方を向いて駈け出しました。その時私は妹が私を恨んでいるのだなと気がついて、それは無理のないことだと思うと、この上なくさびしい気持ちになりました。  それにしても友達のMはどこに行ってしまったのだろうと思って、私は若者のそばに立ちながらあたりを見回すと、遥かな砂山の所をお婆様を助けながら駈け下りて来るのでした。妹は早くもそれを見付けてそっちに行こうとしているのだとわかりました。  それで私は少し安心して、若者の肩に手をかけて何か言おうとすると、若者はうるさそうに私の手を払いのけて、水の寄せたり引いたりする所にすわりこんだまま、いやな顔をして胸のあたりを撫でまわしています。私は何んだか言葉をかけるのさえためらわれて黙ったまま突っ立っていました。 「まああなたがこの子を助けて下さったんですね。お礼の申しようもございません」  すぐそばで息せき切ってしみじみといわれるお婆様の声を私は聞きました。 妹は頭からずぶ濡れになったままで泣きじゃくりをしながらお婆様にぴったり抱かれていました。  私たち三人は濡れたままで、きものやタオルを小脇に抱えてお婆様と一緒に家の方に帰りました。若者はようやく立ち上がって体を拭いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとからついて来ました。  家に着くともう妹のために布団が敷いてありました。妹は寝間着に着かえてねかしつけられると、まるで夢中になってしまって、熱を出して木の葉のようにふるえ始めました。 お婆様は気丈な方でかいがいしく世話をすますと、若者に向って心の底からお礼をいわれました。 若者は挨拶の言葉もいわないような人で、ただ黙ってうなずいてばかりいました。お婆様はようやくのことでその人の住んでいる所だけを聞き出すことが出来ました。
なぜ私は妹を見捨てようとしたのですか。
自分の命が助かりたかったのです。妹の所へ行けば、二人とも一緒に沖に流されて命がないのはわかり切っていました。私はそれが恐ろしかったのです。
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国語
私の顔が見えると妹は後ろの方からあらん限りの声をしぼって 「兄さん来てよ。もう沈む、苦しい」  と呼びかけるのです。実際妹は鼻の所くらいまで水に沈みながら声を出そうとするのですから、その度ごとに水を呑むように見えて真っ青な苦しそうな顔をして私をにらみつけるように見えます。私も前に泳ぎながら心は後ろにばかり引かれました。何度も妹のいる方へ泳いで行こうかと思いました。けれども私は悪い人間だったと見えて、こうなると自分の命が助かりたかったのです。妹の所へ行けば、二人とも一緒に沖に流されて命がないのはわかり切っていました。私はそれが恐ろしかったのです。何しろ早く岸について漁師にでも助けに行ってもらうしかないと思いました。今から思うとそれはずるい考えだったようです。  でもとにかくそう思うと私はもう後ろも向かずに無我夢中で岸の方を向いて泳ぎ出しました。力が無くなりそうになるとあおむけに水の上にはねてしばらく息をつきました。 それでも岸は少しずつ近づいて来るようでした。一生懸命に、そして立ち泳ぎのようになって足を砂につけて見ようとしたら、またずぶりと頭まで潜ってしまいました。私は慌てました。そしてまた一生懸命泳ぎ出しました。  立って見たら水が膝の所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほど時間が経ってからのことでした。 砂浜までたどり着いた私は、ほっと安心したと思うと、もう夢中で泣き声を立てながら、 「助けてくれえ」  といって砂浜を狂ったように駆けずり回りました。見るとMは遥かむこうの方で私と同じようなことをしています。私は駈けずりまわりながらも妹の方を見ることを忘れはしませんでした。波打際から随分遠い所に、波に隠れたり現われたりして、可哀そうな妹の頭だけが見えていました。  浜には船もいません、漁師もいません。その時になって私はまた水の中に飛び込んで行きたいような心持ちになりました。大事な妹を置きっぱなしにして来たのがたまらなく悲しくなりました。  その時Mが遥かむこうから一人の若い男の袖を引っぱってこっちに走って来ました。私はそれを見ると何もかも忘れてそっちの方に駈け出しました。若い男というのは、土地の者ではありますが、漁師とも見えないような通りがかりの人で、肩に何か担いでいました。 「早く!早く行って助けて下さい!あそこだ、あそこだ」  私は、涙を流し放題に流して、地団駄をふまないばかりにせき立てて、震える手をのばして妹の頭がちょっぴり水の上に浮かんでいる方を指しました。  若い男は私の指す方を見定めていましたが、やがて手早く担いでいたものを砂の上におろし、帯をくるくると解いて、衣物を一緒にその上におくと、ざぶりと波を切って海の中に入って行ってくれました。  私はぶるぶる震えて泣きながら、両手の指をそろえて口の中へ押しこんで、それをぎゅっと歯でかみしめながら、その男がどんどん沖の方に遠ざかって行くのを見送りました。私の足がどんな所に立っているのか、寒いのだか、暑いのだか、すこしも私には分かりません。手足があるのかないのかそれも分かりませんでした。  抜手を切って行く若者の頭も段々小さくなりまして、妹との距離が見る見る近よって行きました。若者の身のまわりには白い泡がきらきらと光って、水を切った手が濡れたまま飛魚が飛ぶように海の上に現われたり隠れたりします。私はそんなことを一生懸命に見つめていました。  とうとう若者の頭と妹の頭とが一つになりました。私は思わず指を口の中から放して、声を立てながら水の中にはいってゆきました。けれども二人がこっちに来るのはおそいことおそいこと。私はまた何の訳もなく砂の方に飛び上がりました。そしてまた海の中にはいって行きました。どうしてもじっとして待っていることが出来ないのです。  妹の頭は何度も水の中に沈みました。時には沈み切りに沈んだのかと思うほど長く現われて来ませんでした。若者もどうかすると水の上には見えなくなりました。そうかと思うと、ぽこんと跳ね上るように高く水の上に現われ出ました。なんだか曲泳でもしているのではないかと思われるほどでした。それでもそんなことをしているうちに、二人は段々岸近くなって来て、とうとうその顔までがはっきり見える位になりました。が、そこいらは打ち寄せる波が崩れるところなので、二人はもろともに幾度も白い泡のうずまきの中に姿を隠しました。やがて若者は這うようにして波打際にたどりつきました。妹はそんな浅い所に来ても若者におぶさりかかっていました。私は有頂天になってそこまで飛んで行きました。  飛んで行って見て驚いたのは若者の姿でした。せわしく深くいきをついて、体はつかれ切ったようにゆるんでへとへとになっていました。妹は私が近づいたのを見ると夢中で飛んで来ましたがふっと思いかえしたように私をよけて砂山の方を向いて駈け出しました。その時私は妹が私を恨んでいるのだなと気がついて、それは無理のないことだと思うと、この上なくさびしい気持ちになりました。  それにしても友達のMはどこに行ってしまったのだろうと思って、私は若者のそばに立ちながらあたりを見回すと、遥かな砂山の所をお婆様を助けながら駈け下りて来るのでした。妹は早くもそれを見付けてそっちに行こうとしているのだとわかりました。  それで私は少し安心して、若者の肩に手をかけて何か言おうとすると、若者はうるさそうに私の手を払いのけて、水の寄せたり引いたりする所にすわりこんだまま、いやな顔をして胸のあたりを撫でまわしています。私は何んだか言葉をかけるのさえためらわれて黙ったまま突っ立っていました。 「まああなたがこの子を助けて下さったんですね。お礼の申しようもございません」  すぐそばで息せき切ってしみじみといわれるお婆様の声を私は聞きました。 妹は頭からずぶ濡れになったままで泣きじゃくりをしながらお婆様にぴったり抱かれていました。  私たち三人は濡れたままで、きものやタオルを小脇に抱えてお婆様と一緒に家の方に帰りました。若者はようやく立ち上がって体を拭いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとからついて来ました。  家に着くともう妹のために布団が敷いてありました。妹は寝間着に着かえてねかしつけられると、まるで夢中になってしまって、熱を出して木の葉のようにふるえ始めました。 お婆様は気丈な方でかいがいしく世話をすますと、若者に向って心の底からお礼をいわれました。 若者は挨拶の言葉もいわないような人で、ただ黙ってうなずいてばかりいました。お婆様はようやくのことでその人の住んでいる所だけを聞き出すことが出来ました。
私は砂浜に着いたあとどうしましたか。
砂浜までたどり着いた私は、ほっと安心したと思うと、もう夢中で泣き声を立てながら、「助けてくれえ」といって砂浜を狂ったように駆けずり回りました。
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国語
私の顔が見えると妹は後ろの方からあらん限りの声をしぼって 「兄さん来てよ。もう沈む、苦しい」  と呼びかけるのです。実際妹は鼻の所くらいまで水に沈みながら声を出そうとするのですから、その度ごとに水を呑むように見えて真っ青な苦しそうな顔をして私をにらみつけるように見えます。私も前に泳ぎながら心は後ろにばかり引かれました。何度も妹のいる方へ泳いで行こうかと思いました。けれども私は悪い人間だったと見えて、こうなると自分の命が助かりたかったのです。妹の所へ行けば、二人とも一緒に沖に流されて命がないのはわかり切っていました。私はそれが恐ろしかったのです。何しろ早く岸について漁師にでも助けに行ってもらうしかないと思いました。今から思うとそれはずるい考えだったようです。  でもとにかくそう思うと私はもう後ろも向かずに無我夢中で岸の方を向いて泳ぎ出しました。力が無くなりそうになるとあおむけに水の上にはねてしばらく息をつきました。 それでも岸は少しずつ近づいて来るようでした。一生懸命に、そして立ち泳ぎのようになって足を砂につけて見ようとしたら、またずぶりと頭まで潜ってしまいました。私は慌てました。そしてまた一生懸命泳ぎ出しました。  立って見たら水が膝の所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほど時間が経ってからのことでした。 砂浜までたどり着いた私は、ほっと安心したと思うと、もう夢中で泣き声を立てながら、 「助けてくれえ」  といって砂浜を狂ったように駆けずり回りました。見るとMは遥かむこうの方で私と同じようなことをしています。私は駈けずりまわりながらも妹の方を見ることを忘れはしませんでした。波打際から随分遠い所に、波に隠れたり現われたりして、可哀そうな妹の頭だけが見えていました。  浜には船もいません、漁師もいません。その時になって私はまた水の中に飛び込んで行きたいような心持ちになりました。大事な妹を置きっぱなしにして来たのがたまらなく悲しくなりました。  その時Mが遥かむこうから一人の若い男の袖を引っぱってこっちに走って来ました。私はそれを見ると何もかも忘れてそっちの方に駈け出しました。若い男というのは、土地の者ではありますが、漁師とも見えないような通りがかりの人で、肩に何か担いでいました。 「早く!早く行って助けて下さい!あそこだ、あそこだ」  私は、涙を流し放題に流して、地団駄をふまないばかりにせき立てて、震える手をのばして妹の頭がちょっぴり水の上に浮かんでいる方を指しました。  若い男は私の指す方を見定めていましたが、やがて手早く担いでいたものを砂の上におろし、帯をくるくると解いて、衣物を一緒にその上におくと、ざぶりと波を切って海の中に入って行ってくれました。  私はぶるぶる震えて泣きながら、両手の指をそろえて口の中へ押しこんで、それをぎゅっと歯でかみしめながら、その男がどんどん沖の方に遠ざかって行くのを見送りました。私の足がどんな所に立っているのか、寒いのだか、暑いのだか、すこしも私には分かりません。手足があるのかないのかそれも分かりませんでした。  抜手を切って行く若者の頭も段々小さくなりまして、妹との距離が見る見る近よって行きました。若者の身のまわりには白い泡がきらきらと光って、水を切った手が濡れたまま飛魚が飛ぶように海の上に現われたり隠れたりします。私はそんなことを一生懸命に見つめていました。  とうとう若者の頭と妹の頭とが一つになりました。私は思わず指を口の中から放して、声を立てながら水の中にはいってゆきました。けれども二人がこっちに来るのはおそいことおそいこと。私はまた何の訳もなく砂の方に飛び上がりました。そしてまた海の中にはいって行きました。どうしてもじっとして待っていることが出来ないのです。  妹の頭は何度も水の中に沈みました。時には沈み切りに沈んだのかと思うほど長く現われて来ませんでした。若者もどうかすると水の上には見えなくなりました。そうかと思うと、ぽこんと跳ね上るように高く水の上に現われ出ました。なんだか曲泳でもしているのではないかと思われるほどでした。それでもそんなことをしているうちに、二人は段々岸近くなって来て、とうとうその顔までがはっきり見える位になりました。が、そこいらは打ち寄せる波が崩れるところなので、二人はもろともに幾度も白い泡のうずまきの中に姿を隠しました。やがて若者は這うようにして波打際にたどりつきました。妹はそんな浅い所に来ても若者におぶさりかかっていました。私は有頂天になってそこまで飛んで行きました。  飛んで行って見て驚いたのは若者の姿でした。せわしく深くいきをついて、体はつかれ切ったようにゆるんでへとへとになっていました。妹は私が近づいたのを見ると夢中で飛んで来ましたがふっと思いかえしたように私をよけて砂山の方を向いて駈け出しました。その時私は妹が私を恨んでいるのだなと気がついて、それは無理のないことだと思うと、この上なくさびしい気持ちになりました。  それにしても友達のMはどこに行ってしまったのだろうと思って、私は若者のそばに立ちながらあたりを見回すと、遥かな砂山の所をお婆様を助けながら駈け下りて来るのでした。妹は早くもそれを見付けてそっちに行こうとしているのだとわかりました。  それで私は少し安心して、若者の肩に手をかけて何か言おうとすると、若者はうるさそうに私の手を払いのけて、水の寄せたり引いたりする所にすわりこんだまま、いやな顔をして胸のあたりを撫でまわしています。私は何んだか言葉をかけるのさえためらわれて黙ったまま突っ立っていました。 「まああなたがこの子を助けて下さったんですね。お礼の申しようもございません」  すぐそばで息せき切ってしみじみといわれるお婆様の声を私は聞きました。 妹は頭からずぶ濡れになったままで泣きじゃくりをしながらお婆様にぴったり抱かれていました。  私たち三人は濡れたままで、きものやタオルを小脇に抱えてお婆様と一緒に家の方に帰りました。若者はようやく立ち上がって体を拭いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとからついて来ました。  家に着くともう妹のために布団が敷いてありました。妹は寝間着に着かえてねかしつけられると、まるで夢中になってしまって、熱を出して木の葉のようにふるえ始めました。 お婆様は気丈な方でかいがいしく世話をすますと、若者に向って心の底からお礼をいわれました。 若者は挨拶の言葉もいわないような人で、ただ黙ってうなずいてばかりいました。お婆様はようやくのことでその人の住んでいる所だけを聞き出すことが出来ました。
Mが連れてきた若い男は私に妹を助けてほしいと言われたらどうしましたか。
手早く担いでいたものを砂の上におろし、帯をくるくると解いて、衣物を一緒にその上におくと、ざぶりと波を切って海の中に入って行ってくれました。
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国語
私の顔が見えると妹は後ろの方からあらん限りの声をしぼって 「兄さん来てよ。もう沈む、苦しい」  と呼びかけるのです。実際妹は鼻の所くらいまで水に沈みながら声を出そうとするのですから、その度ごとに水を呑むように見えて真っ青な苦しそうな顔をして私をにらみつけるように見えます。私も前に泳ぎながら心は後ろにばかり引かれました。何度も妹のいる方へ泳いで行こうかと思いました。けれども私は悪い人間だったと見えて、こうなると自分の命が助かりたかったのです。妹の所へ行けば、二人とも一緒に沖に流されて命がないのはわかり切っていました。私はそれが恐ろしかったのです。何しろ早く岸について漁師にでも助けに行ってもらうしかないと思いました。今から思うとそれはずるい考えだったようです。  でもとにかくそう思うと私はもう後ろも向かずに無我夢中で岸の方を向いて泳ぎ出しました。力が無くなりそうになるとあおむけに水の上にはねてしばらく息をつきました。 それでも岸は少しずつ近づいて来るようでした。一生懸命に、そして立ち泳ぎのようになって足を砂につけて見ようとしたら、またずぶりと頭まで潜ってしまいました。私は慌てました。そしてまた一生懸命泳ぎ出しました。  立って見たら水が膝の所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほど時間が経ってからのことでした。 砂浜までたどり着いた私は、ほっと安心したと思うと、もう夢中で泣き声を立てながら、 「助けてくれえ」  といって砂浜を狂ったように駆けずり回りました。見るとMは遥かむこうの方で私と同じようなことをしています。私は駈けずりまわりながらも妹の方を見ることを忘れはしませんでした。波打際から随分遠い所に、波に隠れたり現われたりして、可哀そうな妹の頭だけが見えていました。  浜には船もいません、漁師もいません。その時になって私はまた水の中に飛び込んで行きたいような心持ちになりました。大事な妹を置きっぱなしにして来たのがたまらなく悲しくなりました。  その時Mが遥かむこうから一人の若い男の袖を引っぱってこっちに走って来ました。私はそれを見ると何もかも忘れてそっちの方に駈け出しました。若い男というのは、土地の者ではありますが、漁師とも見えないような通りがかりの人で、肩に何か担いでいました。 「早く!早く行って助けて下さい!あそこだ、あそこだ」  私は、涙を流し放題に流して、地団駄をふまないばかりにせき立てて、震える手をのばして妹の頭がちょっぴり水の上に浮かんでいる方を指しました。  若い男は私の指す方を見定めていましたが、やがて手早く担いでいたものを砂の上におろし、帯をくるくると解いて、衣物を一緒にその上におくと、ざぶりと波を切って海の中に入って行ってくれました。  私はぶるぶる震えて泣きながら、両手の指をそろえて口の中へ押しこんで、それをぎゅっと歯でかみしめながら、その男がどんどん沖の方に遠ざかって行くのを見送りました。私の足がどんな所に立っているのか、寒いのだか、暑いのだか、すこしも私には分かりません。手足があるのかないのかそれも分かりませんでした。  抜手を切って行く若者の頭も段々小さくなりまして、妹との距離が見る見る近よって行きました。若者の身のまわりには白い泡がきらきらと光って、水を切った手が濡れたまま飛魚が飛ぶように海の上に現われたり隠れたりします。私はそんなことを一生懸命に見つめていました。  とうとう若者の頭と妹の頭とが一つになりました。私は思わず指を口の中から放して、声を立てながら水の中にはいってゆきました。けれども二人がこっちに来るのはおそいことおそいこと。私はまた何の訳もなく砂の方に飛び上がりました。そしてまた海の中にはいって行きました。どうしてもじっとして待っていることが出来ないのです。  妹の頭は何度も水の中に沈みました。時には沈み切りに沈んだのかと思うほど長く現われて来ませんでした。若者もどうかすると水の上には見えなくなりました。そうかと思うと、ぽこんと跳ね上るように高く水の上に現われ出ました。なんだか曲泳でもしているのではないかと思われるほどでした。それでもそんなことをしているうちに、二人は段々岸近くなって来て、とうとうその顔までがはっきり見える位になりました。が、そこいらは打ち寄せる波が崩れるところなので、二人はもろともに幾度も白い泡のうずまきの中に姿を隠しました。やがて若者は這うようにして波打際にたどりつきました。妹はそんな浅い所に来ても若者におぶさりかかっていました。私は有頂天になってそこまで飛んで行きました。  飛んで行って見て驚いたのは若者の姿でした。せわしく深くいきをついて、体はつかれ切ったようにゆるんでへとへとになっていました。妹は私が近づいたのを見ると夢中で飛んで来ましたがふっと思いかえしたように私をよけて砂山の方を向いて駈け出しました。その時私は妹が私を恨んでいるのだなと気がついて、それは無理のないことだと思うと、この上なくさびしい気持ちになりました。  それにしても友達のMはどこに行ってしまったのだろうと思って、私は若者のそばに立ちながらあたりを見回すと、遥かな砂山の所をお婆様を助けながら駈け下りて来るのでした。妹は早くもそれを見付けてそっちに行こうとしているのだとわかりました。  それで私は少し安心して、若者の肩に手をかけて何か言おうとすると、若者はうるさそうに私の手を払いのけて、水の寄せたり引いたりする所にすわりこんだまま、いやな顔をして胸のあたりを撫でまわしています。私は何んだか言葉をかけるのさえためらわれて黙ったまま突っ立っていました。 「まああなたがこの子を助けて下さったんですね。お礼の申しようもございません」  すぐそばで息せき切ってしみじみといわれるお婆様の声を私は聞きました。 妹は頭からずぶ濡れになったままで泣きじゃくりをしながらお婆様にぴったり抱かれていました。  私たち三人は濡れたままで、きものやタオルを小脇に抱えてお婆様と一緒に家の方に帰りました。若者はようやく立ち上がって体を拭いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとからついて来ました。  家に着くともう妹のために布団が敷いてありました。妹は寝間着に着かえてねかしつけられると、まるで夢中になってしまって、熱を出して木の葉のようにふるえ始めました。 お婆様は気丈な方でかいがいしく世話をすますと、若者に向って心の底からお礼をいわれました。 若者は挨拶の言葉もいわないような人で、ただ黙ってうなずいてばかりいました。お婆様はようやくのことでその人の住んでいる所だけを聞き出すことが出来ました。
私が若者の肩に手をかけて何か言おうとしたら若者はどうしましたか。
若者はうるさそうに私の手を払いのけて、水の寄せたり引いたりする所にすわりこんだまま、いやな顔をして胸のあたりを撫でまわしています。
JCRRAG_010385
国語
私の顔が見えると妹は後ろの方からあらん限りの声をしぼって 「兄さん来てよ。もう沈む、苦しい」  と呼びかけるのです。実際妹は鼻の所くらいまで水に沈みながら声を出そうとするのですから、その度ごとに水を呑むように見えて真っ青な苦しそうな顔をして私をにらみつけるように見えます。私も前に泳ぎながら心は後ろにばかり引かれました。何度も妹のいる方へ泳いで行こうかと思いました。けれども私は悪い人間だったと見えて、こうなると自分の命が助かりたかったのです。妹の所へ行けば、二人とも一緒に沖に流されて命がないのはわかり切っていました。私はそれが恐ろしかったのです。何しろ早く岸について漁師にでも助けに行ってもらうしかないと思いました。今から思うとそれはずるい考えだったようです。  でもとにかくそう思うと私はもう後ろも向かずに無我夢中で岸の方を向いて泳ぎ出しました。力が無くなりそうになるとあおむけに水の上にはねてしばらく息をつきました。 それでも岸は少しずつ近づいて来るようでした。一生懸命に、そして立ち泳ぎのようになって足を砂につけて見ようとしたら、またずぶりと頭まで潜ってしまいました。私は慌てました。そしてまた一生懸命泳ぎ出しました。  立って見たら水が膝の所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほど時間が経ってからのことでした。 砂浜までたどり着いた私は、ほっと安心したと思うと、もう夢中で泣き声を立てながら、 「助けてくれえ」  といって砂浜を狂ったように駆けずり回りました。見るとMは遥かむこうの方で私と同じようなことをしています。私は駈けずりまわりながらも妹の方を見ることを忘れはしませんでした。波打際から随分遠い所に、波に隠れたり現われたりして、可哀そうな妹の頭だけが見えていました。  浜には船もいません、漁師もいません。その時になって私はまた水の中に飛び込んで行きたいような心持ちになりました。大事な妹を置きっぱなしにして来たのがたまらなく悲しくなりました。  その時Mが遥かむこうから一人の若い男の袖を引っぱってこっちに走って来ました。私はそれを見ると何もかも忘れてそっちの方に駈け出しました。若い男というのは、土地の者ではありますが、漁師とも見えないような通りがかりの人で、肩に何か担いでいました。 「早く!早く行って助けて下さい!あそこだ、あそこだ」  私は、涙を流し放題に流して、地団駄をふまないばかりにせき立てて、震える手をのばして妹の頭がちょっぴり水の上に浮かんでいる方を指しました。  若い男は私の指す方を見定めていましたが、やがて手早く担いでいたものを砂の上におろし、帯をくるくると解いて、衣物を一緒にその上におくと、ざぶりと波を切って海の中に入って行ってくれました。  私はぶるぶる震えて泣きながら、両手の指をそろえて口の中へ押しこんで、それをぎゅっと歯でかみしめながら、その男がどんどん沖の方に遠ざかって行くのを見送りました。私の足がどんな所に立っているのか、寒いのだか、暑いのだか、すこしも私には分かりません。手足があるのかないのかそれも分かりませんでした。  抜手を切って行く若者の頭も段々小さくなりまして、妹との距離が見る見る近よって行きました。若者の身のまわりには白い泡がきらきらと光って、水を切った手が濡れたまま飛魚が飛ぶように海の上に現われたり隠れたりします。私はそんなことを一生懸命に見つめていました。  とうとう若者の頭と妹の頭とが一つになりました。私は思わず指を口の中から放して、声を立てながら水の中にはいってゆきました。けれども二人がこっちに来るのはおそいことおそいこと。私はまた何の訳もなく砂の方に飛び上がりました。そしてまた海の中にはいって行きました。どうしてもじっとして待っていることが出来ないのです。  妹の頭は何度も水の中に沈みました。時には沈み切りに沈んだのかと思うほど長く現われて来ませんでした。若者もどうかすると水の上には見えなくなりました。そうかと思うと、ぽこんと跳ね上るように高く水の上に現われ出ました。なんだか曲泳でもしているのではないかと思われるほどでした。それでもそんなことをしているうちに、二人は段々岸近くなって来て、とうとうその顔までがはっきり見える位になりました。が、そこいらは打ち寄せる波が崩れるところなので、二人はもろともに幾度も白い泡のうずまきの中に姿を隠しました。やがて若者は這うようにして波打際にたどりつきました。妹はそんな浅い所に来ても若者におぶさりかかっていました。私は有頂天になってそこまで飛んで行きました。  飛んで行って見て驚いたのは若者の姿でした。せわしく深くいきをついて、体はつかれ切ったようにゆるんでへとへとになっていました。妹は私が近づいたのを見ると夢中で飛んで来ましたがふっと思いかえしたように私をよけて砂山の方を向いて駈け出しました。その時私は妹が私を恨んでいるのだなと気がついて、それは無理のないことだと思うと、この上なくさびしい気持ちになりました。  それにしても友達のMはどこに行ってしまったのだろうと思って、私は若者のそばに立ちながらあたりを見回すと、遥かな砂山の所をお婆様を助けながら駈け下りて来るのでした。妹は早くもそれを見付けてそっちに行こうとしているのだとわかりました。  それで私は少し安心して、若者の肩に手をかけて何か言おうとすると、若者はうるさそうに私の手を払いのけて、水の寄せたり引いたりする所にすわりこんだまま、いやな顔をして胸のあたりを撫でまわしています。私は何んだか言葉をかけるのさえためらわれて黙ったまま突っ立っていました。 「まああなたがこの子を助けて下さったんですね。お礼の申しようもございません」  すぐそばで息せき切ってしみじみといわれるお婆様の声を私は聞きました。 妹は頭からずぶ濡れになったままで泣きじゃくりをしながらお婆様にぴったり抱かれていました。  私たち三人は濡れたままで、きものやタオルを小脇に抱えてお婆様と一緒に家の方に帰りました。若者はようやく立ち上がって体を拭いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとからついて来ました。  家に着くともう妹のために布団が敷いてありました。妹は寝間着に着かえてねかしつけられると、まるで夢中になってしまって、熱を出して木の葉のようにふるえ始めました。 お婆様は気丈な方でかいがいしく世話をすますと、若者に向って心の底からお礼をいわれました。 若者は挨拶の言葉もいわないような人で、ただ黙ってうなずいてばかりいました。お婆様はようやくのことでその人の住んでいる所だけを聞き出すことが出来ました。
妹は家に着いて寝かしつけられるとどうなりましたか。
熱を出して木の葉のようにふるえ始めました。
JCRRAG_010386
国語
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を倒さねばならぬと決意した。 メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのシラクスの市にやって来た。 メロスには父も、母もいない。女房もいない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村のある律気な一人の牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近なのである。メロスはそれゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。まず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友がいた。セリヌンティウスだ。今はこのシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、町が暗いのは当たり前だが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、全体がやけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で会った若い人をつかまえて「何かあったのか?二年まえにこの市に来たときは、夜でも皆が歌をうたったりして町は賑やかであったはずだが?」と質問した。 若い人は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老人に逢い、こんどはもっと、語気を強くして質問した。老人は答えなかった。メロスは両手で老人のからだをゆさぶって質問をくりかえした。老人は、あたりを気にするような低い声で、少しだけ答えた。 「王様は、人を殺します。」 「なぜ殺すのだ?」 「悪い心を抱いているからというのですが、誰もそんな、悪い心を持ってはいないのです」 「たくさんの人を殺したのか?」 「はい、はじめは王様の妹の旦那様を。それから、御自身のお子様を。それから、自分の妹を。それから、妹さまのお子様を。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」 「おどろいた。国王は乱心したのか?」 「いいえ、乱心ではございません。人を信ずる事が出来ない、というのです。このごろは、臣下の心をも疑うようになり、少しでも派手な暮しをしている者には、人質をひとりずつ差し出すことを命じています。命令を断れば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」  聞いて、メロスは激怒した。「あきれた王だ。生かしておくわけにはいかない!」  メロスは単純な男であった。買い物を背負ったままでのそのそと王城に入って行った。
メロスは町人に王が人を殺すと聞かされてどうしましたか。
買い物を背負ったままでのそのそと王城に入って行った。
JCRRAG_010387
国語
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を倒さねばならぬと決意した。 メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのシラクスの市にやって来た。 メロスには父も、母もいない。女房もいない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村のある律気な一人の牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近なのである。メロスはそれゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。まず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友がいた。セリヌンティウスだ。今はこのシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、町が暗いのは当たり前だが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、全体がやけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で会った若い人をつかまえて「何かあったのか?二年まえにこの市に来たときは、夜でも皆が歌をうたったりして町は賑やかであったはずだが?」と質問した。 若い人は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老人に逢い、こんどはもっと、語気を強くして質問した。老人は答えなかった。メロスは両手で老人のからだをゆさぶって質問をくりかえした。老人は、あたりを気にするような低い声で、少しだけ答えた。 「王様は、人を殺します。」 「なぜ殺すのだ?」 「悪い心を抱いているからというのですが、誰もそんな、悪い心を持ってはいないのです」 「たくさんの人を殺したのか?」 「はい、はじめは王様の妹の旦那様を。それから、御自身のお子様を。それから、自分の妹を。それから、妹さまのお子様を。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」 「おどろいた。国王は乱心したのか?」 「いいえ、乱心ではございません。人を信ずる事が出来ない、というのです。このごろは、臣下の心をも疑うようになり、少しでも派手な暮しをしている者には、人質をひとりずつ差し出すことを命じています。命令を断れば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」  聞いて、メロスは激怒した。「あきれた王だ。生かしておくわけにはいかない!」  メロスは単純な男であった。買い物を背負ったままでのそのそと王城に入って行った。
メロスが市に来た目的はなんですか。
メロスには父も、母もいない。女房もいない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村のある律気な一人の牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近なのである。メロスはそれゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
JCRRAG_010388
国語
メロスは、巡回していた警官に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。 メロスは、王の前に引き出された。 「この短刀で何をするつもりだったのか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。 その王は顔面蒼白で眉間の皺は刻み込まれたように深かった。 「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。 「おまえがか?」王は、笑った。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬのだ。」 「言うな!」とメロスはいきり立って反対した。「人の心を疑うなんて、最も恥ずべき悪い行いだ。王は民の忠誠心さえ疑っている。」 「人を疑うのが正しい事なのだと、わしに教えてくれたのはおまえたちだ。人の心はあてにならない。人間はもともと私欲のかたまりなのだ。信じてはならぬ。」暴君は落ち着いてつぶやき、ほっと溜息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだ・・・」 「なんの為の平和だ。自分の地位を守るためか!?」こんどはメロスが嘲笑った。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」 「だまれ!げせんの者が!」王は、顔を挙げた。 「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹の中の奥底が透き通って見えるのだ。おまえだって磔になってから、泣いてわびたって聞かぬ。」 「ああ、王はお利口だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬ覚悟でいるというのに。命乞いなど決してしない。ただ」と言いかけて、メロスは足元に視線を落としてわずかにためらった。 「ただ、私に情けをかけるつもりなら、処刑までに三日間の期限を下さい。たった一人の妹に亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」 「ばかな!」と暴君はしわがれた声で低く笑った。 「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」 「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮れまで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」  それを聞いて王は、残虐な笑みを浮かべた。生意気なことを言うやつだ。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきにだまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代わりの男を、三日目に殺してやるのも気分がいいだろう。「人はこれだから信じられぬ!」と、わしは悲しい顔をして、その身代りの男を磔の刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいうやつらにうんと見せつけてやろう。 「その願いを聞いてやろう。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとでもおくれて来るのがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」 「なに!?何をおっしゃる。」 「ははは!いのちが大事ならおくれて来ればいい。おまえの心はわかっているぞ。」  メロスは口惜しく、地団駄を踏んだ。何も言う気もなくなった。  竹馬の友であるセリヌンティウスは深夜王城に呼び出された。暴君ディオニスの面前で、よき友とよき友は、二年ぶりに出会った。 メロスは友に全ての事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずいてメロスをひしと抱きしめた。 友と友の間はそれでよかった。セリヌンティウスは縛り上げられ、メロスはすぐに出発した。初夏、満天の星である。  メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは翌日の午前だった。 陽はすでに高く昇っており、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。 メロスの十六歳の妹も、きょうは兄の代わりに羊の群れの番をしていた。 よろめいて歩いて来る兄の疲労困憊している姿を見つけて驚いた。 そして兄にうるさい位に質問を浴びせた。 「なんでも無いよ。」メロスは無理に笑おうとした。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがいいだろう。」  妹は頬をあからめた。 「うれしい?綺麗な衣裳も買って来たぞ。さあこれから村の人たちに結婚式はあすだと知らせて来い。」  メロスはまたよろよろと歩き出して家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。  眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐに花婿の家を訪れた。少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれと頼んだ。 婿になる牧人は驚いた。「それは駄目ですよ、こっちはまだ何の仕度も出来ていない、葡萄ができる季節まで待ってくれ」と答えた。 メロスは「待つことはできない!どうか明日にしてくれ!」と更に押して頼み込んだ。 婿の牧人も頑固であり、なかなか承諾してくれない。議論は夜明けまで続いて、やっとどうにか婿をなだめすかして説き伏せることに成功した。 結婚式は真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころに黒雲が空を覆ってぽつりぽつりと雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。 祝宴に参加していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも気持ちを引きたてて狭い家の中でむんむん蒸し暑いのも我慢して、陽気に歌をうたい、手をうった。 メロスも喜色満面にしてしばらくは王との約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れて華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この良い人たちと生涯共に暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。 メロスは後ろ髪をひかれながらもついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分時間がある。 ちょっと一眠りしてそれからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっているだろう。 少しでも長くこの家にグズグズととどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものはある。 歓喜に酔っている花嫁に近寄って、 「おめでとう。私は疲れてしまったからちょっと眠りたいんだ。眼が覚めたらすぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主がいるのだから決して寂しい事は無いだろう。おまえの兄の一番嫌いなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえもそれは知っているな?亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」  花嫁は、夢見心地でうなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、 「仕度が無いのはお互いさまさ。私の家で宝といえるのは妹と羊だけだ。他には何も無いよ。君に全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」  花婿はもみ手をして照れていた。メロスは笑って村人たちにも会釈して宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで死んだように深く眠った。 "
罪の無い人を殺して、何が平和だ。とメロスが嘲笑ったら王はどうしましたか。
「だまれ!げせんの者が!」王は、顔を挙げた。
JCRRAG_010389
国語
メロスは、巡回していた警官に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。 メロスは、王の前に引き出された。 「この短刀で何をするつもりだったのか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。 その王は顔面蒼白で眉間の皺は刻み込まれたように深かった。 「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。 「おまえがか?」王は、笑った。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬのだ。」 「言うな!」とメロスはいきり立って反対した。「人の心を疑うなんて、最も恥ずべき悪い行いだ。王は民の忠誠心さえ疑っている。」 「人を疑うのが正しい事なのだと、わしに教えてくれたのはおまえたちだ。人の心はあてにならない。人間はもともと私欲のかたまりなのだ。信じてはならぬ。」暴君は落ち着いてつぶやき、ほっと溜息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだ・・・」 「なんの為の平和だ。自分の地位を守るためか!?」こんどはメロスが嘲笑った。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」 「だまれ!げせんの者が!」王は、顔を挙げた。 「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹の中の奥底が透き通って見えるのだ。おまえだって磔になってから、泣いてわびたって聞かぬ。」 「ああ、王はお利口だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬ覚悟でいるというのに。命乞いなど決してしない。ただ」と言いかけて、メロスは足元に視線を落としてわずかにためらった。 「ただ、私に情けをかけるつもりなら、処刑までに三日間の期限を下さい。たった一人の妹に亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」 「ばかな!」と暴君はしわがれた声で低く笑った。 「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」 「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮れまで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」  それを聞いて王は、残虐な笑みを浮かべた。生意気なことを言うやつだ。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきにだまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代わりの男を、三日目に殺してやるのも気分がいいだろう。「人はこれだから信じられぬ!」と、わしは悲しい顔をして、その身代りの男を磔の刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいうやつらにうんと見せつけてやろう。 「その願いを聞いてやろう。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとでもおくれて来るのがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」 「なに!?何をおっしゃる。」 「ははは!いのちが大事ならおくれて来ればいい。おまえの心はわかっているぞ。」  メロスは口惜しく、地団駄を踏んだ。何も言う気もなくなった。  竹馬の友であるセリヌンティウスは深夜王城に呼び出された。暴君ディオニスの面前で、よき友とよき友は、二年ぶりに出会った。 メロスは友に全ての事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずいてメロスをひしと抱きしめた。 友と友の間はそれでよかった。セリヌンティウスは縛り上げられ、メロスはすぐに出発した。初夏、満天の星である。  メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは翌日の午前だった。 陽はすでに高く昇っており、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。 メロスの十六歳の妹も、きょうは兄の代わりに羊の群れの番をしていた。 よろめいて歩いて来る兄の疲労困憊している姿を見つけて驚いた。 そして兄にうるさい位に質問を浴びせた。 「なんでも無いよ。」メロスは無理に笑おうとした。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがいいだろう。」  妹は頬をあからめた。 「うれしい?綺麗な衣裳も買って来たぞ。さあこれから村の人たちに結婚式はあすだと知らせて来い。」  メロスはまたよろよろと歩き出して家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。  眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐに花婿の家を訪れた。少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれと頼んだ。 婿になる牧人は驚いた。「それは駄目ですよ、こっちはまだ何の仕度も出来ていない、葡萄ができる季節まで待ってくれ」と答えた。 メロスは「待つことはできない!どうか明日にしてくれ!」と更に押して頼み込んだ。 婿の牧人も頑固であり、なかなか承諾してくれない。議論は夜明けまで続いて、やっとどうにか婿をなだめすかして説き伏せることに成功した。 結婚式は真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころに黒雲が空を覆ってぽつりぽつりと雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。 祝宴に参加していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも気持ちを引きたてて狭い家の中でむんむん蒸し暑いのも我慢して、陽気に歌をうたい、手をうった。 メロスも喜色満面にしてしばらくは王との約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れて華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この良い人たちと生涯共に暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。 メロスは後ろ髪をひかれながらもついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分時間がある。 ちょっと一眠りしてそれからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっているだろう。 少しでも長くこの家にグズグズととどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものはある。 歓喜に酔っている花嫁に近寄って、 「おめでとう。私は疲れてしまったからちょっと眠りたいんだ。眼が覚めたらすぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主がいるのだから決して寂しい事は無いだろう。おまえの兄の一番嫌いなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえもそれは知っているな?亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」  花嫁は、夢見心地でうなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、 「仕度が無いのはお互いさまさ。私の家で宝といえるのは妹と羊だけだ。他には何も無いよ。君に全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」  花婿はもみ手をして照れていた。メロスは笑って村人たちにも会釈して宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで死んだように深く眠った。 "
メロスは妹婿に結婚式を明日にしてくれと頼んだら、妹婿はどうしましたか。
婿になる牧人は驚いた。「それは駄目ですよ、こっちはまだ何の仕度も出来ていない、葡萄ができる季節まで待ってくれ」と答えた。
JCRRAG_010390
国語
えい!えい!と大声を挙げて自身をしかりつけながら走った。村を出て野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止み、日は高く昇って、段々暑くなって来た。メロスは額の汗をこぶしで払って、ここまで来れば大丈夫だ、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっとよい夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえののんきさを取り戻し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全行程の半分ほどに到達した頃、災難が降って湧いた。メロスの足は、はたと止まった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流はとうとうと下流に集まり、勢いよく橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵にはしげたを跳ね飛ばしていた。 彼は茫然と立ちすくんだ。あたりを眺めまわして、また声を限りに呼びたててみたが、繋がれた舟は残らず波にさらわれて見当たらず、橋守の姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上がり、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ!しずめてくれ!荒れ狂う流れを! 時は過ぎて行きます。太陽も既に真昼です。太陽が沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あのよい友達が、私のために死ぬのです。」  濁流は、メロスの叫びをせせら笑うように、ますます激しく躍り狂っている。波は波を呑みこんで、巻き、煽り立て、そうして時間は、刻一刻と消えて行く。そのうちメロスも覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も見てくれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う波を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきとかき分けて、獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったかのだろう、ついに哀れに思ってくれたのだろう。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹にすがりつく事が出来たのである。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先を急いだ。少しの時間も、むだには出来ない。 陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜいと荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。 「待て。」 「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」 「どっこい放すわけにはいかない。持ちもの全部を置いて行け。」 「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」 「その、いのちが欲しいのだ。」 「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」  山賊たちは、なにも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛ぶ鳥のように近くにいた一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、 「気の毒だが正義のためだ!」と猛然と一撃を加え、たちまち三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、さすがに疲労し、また午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈を感じ、これはだめだ、と気を取り直しては、よろよろと二、三歩あるいて、ついにがくりと膝を折った。立ち上がる事が出来ないのだ。
川が氾濫して、橋を破壊し、木葉微塵にはしげたを跳ね飛ばしていた光景を見たメロスはどうしましたか。
メロスは茫然と立ちすくんだ。あたりを眺めまわして、また声を限りに呼びたててみたが、繋がれた舟は残らず波にさらわれて見当たらず、橋守の姿も見えない。
JCRRAG_010391
国語
えい!えい!と大声を挙げて自身をしかりつけながら走った。村を出て野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止み、日は高く昇って、段々暑くなって来た。メロスは額の汗をこぶしで払って、ここまで来れば大丈夫だ、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっとよい夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえののんきさを取り戻し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全行程の半分ほどに到達した頃、災難が降って湧いた。メロスの足は、はたと止まった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流はとうとうと下流に集まり、勢いよく橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵にはしげたを跳ね飛ばしていた。 彼は茫然と立ちすくんだ。あたりを眺めまわして、また声を限りに呼びたててみたが、繋がれた舟は残らず波にさらわれて見当たらず、橋守の姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上がり、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ!しずめてくれ!荒れ狂う流れを! 時は過ぎて行きます。太陽も既に真昼です。太陽が沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あのよい友達が、私のために死ぬのです。」  濁流は、メロスの叫びをせせら笑うように、ますます激しく躍り狂っている。波は波を呑みこんで、巻き、煽り立て、そうして時間は、刻一刻と消えて行く。そのうちメロスも覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も見てくれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う波を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきとかき分けて、獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったかのだろう、ついに哀れに思ってくれたのだろう。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹にすがりつく事が出来たのである。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先を急いだ。少しの時間も、むだには出来ない。 陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜいと荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。 「待て。」 「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」 「どっこい放すわけにはいかない。持ちもの全部を置いて行け。」 「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」 「その、いのちが欲しいのだ。」 「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」  山賊たちは、なにも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛ぶ鳥のように近くにいた一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、 「気の毒だが正義のためだ!」と猛然と一撃を加え、たちまち三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、さすがに疲労し、また午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈を感じ、これはだめだ、と気を取り直しては、よろよろと二、三歩あるいて、ついにがくりと膝を折った。立ち上がる事が出来ないのだ。
メロスが山賊に襲われましたが、どうしましたか。
山賊たちは、なにも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛ぶ鳥のように近くにいた一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然と一撃を加え、たちまち三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。
JCRRAG_010392
国語
路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人とさっとすれ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向こうに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。 「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞こえた。 「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。 「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目です。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」 「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみします。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。 「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じておりました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」 「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」 「ああ、あなたは気が狂ったのか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」  言うまでもない。まだ陽は沈んでいない。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。 「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれてしわがれた声がかすかに出たばかりで、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、 「私だ、刑務官! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精いっぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。 「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」  セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一杯に鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しくほほえみ、 「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生まれてはじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」  メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。 「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。  群衆の中からも、すすり泣く声が聞こえた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の姿を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。 「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。人を信じるということは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」  どっと群衆の間に、歓声が起った。 「万歳、王様万歳。」  ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。よき友は、気をきかせて教えてやった。 「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなくくやしいのだ。」  勇者は、ひどく赤面した。"
一団の旅人とさっとすれ違った瞬間に、メロスが小耳にはさんだ不吉な会話はなんでしたか。
「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」
JCRRAG_010393
国語
路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人とさっとすれ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向こうに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。 「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞こえた。 「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。 「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目です。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」 「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみします。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。 「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じておりました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」 「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」 「ああ、あなたは気が狂ったのか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」  言うまでもない。まだ陽は沈んでいない。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。 「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれてしわがれた声がかすかに出たばかりで、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、 「私だ、刑務官! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精いっぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。 「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」  セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一杯に鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しくほほえみ、 「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生まれてはじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」  メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。 「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。  群衆の中からも、すすり泣く声が聞こえた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の姿を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。 「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。人を信じるということは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」  どっと群衆の間に、歓声が起った。 「万歳、王様万歳。」  ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。よき友は、気をきかせて教えてやった。 「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなくくやしいのだ。」  メロスは、ひどく赤面した。
メロスとセリヌンティウスは殴り合ったあとにどうしましたか。
「ありがとう、友よ。」と二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
JCRRAG_010394
国語
路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人とさっとすれ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向こうに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。 「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞こえた。 「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。 「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目です。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」 「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみします。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。 「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じておりました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」 「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」 「ああ、あなたは気が狂ったのか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」  言うまでもない。まだ陽は沈んでいない。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。 「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれてしわがれた声がかすかに出たばかりで、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、 「私だ、刑務官! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精いっぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。 「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」  セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一杯に鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しくほほえみ、 「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生まれてはじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」  メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。 「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。  群衆の中からも、すすり泣く声が聞こえた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の姿を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。 「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。人を信じるということは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」  どっと群衆の間に、歓声が起った。 「万歳、王様万歳。」  ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。よき友は、気をきかせて教えてやった。 「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなくくやしいのだ。」  メロスは、ひどく赤面した。
メロス、君は、まっぱだかじゃないかとセリヌンティウスに言われたらメロスはどうしましたか。
メロスは、ひどく赤面した。
JCRRAG_010395
国語
禅智内供の鼻といえば、池の尾で知らない者はない。禅智内供の鼻の長さは五・六寸あって上唇の上からアゴの下まで下がっている。 形は元も先も同じように太い。例えるなら細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がっているのである。  五十歳を越えた内供は、沙弥をやっていた過去から、内道場供奉の職に昇格した現在まで、内心では始終この鼻について悩み苦しんでいた。 もちろん表面では、べつにさほど気にしてないような顔をしてすましている。これは来世は浄土に生まれ変わるよう専念して祈る僧侶の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしているという事を、人に知られるのが嫌だったからである。内供は日常の談話の中に、鼻って単語が出て来るのを何よりも怖がっていた。  内供が鼻を持てあました理由は二つある。一つは実際に、鼻の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも一人では食えない。独りで食えば、鼻の先がお椀の中のご飯へとどいてしまう。そこで内供は弟子の一人を膳の向こうへ座らせて、飯を食う間中、広さ一寸と長さ二尺ばかりの板で、鼻を持ち上げていて貰う事にした。しかしこうして飯を食うという事は、持ち上げている弟子にとっても、持ち上げられている内供にとっても、決して容易な事ではない。一度この弟子の代わりをした中童子が、くしゃみをした拍子に手がふるえて、鼻をお粥の中へ落とした話は、当時の京都まで伝わった。けれどもこれは内供にとって、決して鼻を苦に病んだ主な理由ではない。内供は本当はこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである。  池の尾の町の者は、こういう鼻をしている禅智内供のために、内供は僧侶で幸せだといった。あの鼻では誰も妻になる女がいるまいと思ったからである。中にはまた、あの鼻だから出家したのだろうと批評する者さえあった。しかし内供は、自分が僧であるために、少しでもこの鼻に煩わしい思いをすることが少なくなったと思っていない。
禅智内供の鼻はどうなっていますか。
禅智内供の鼻の長さは五・六寸あって上唇の上からアゴの下まで下がっている。形は元も先も同じように太い。例えるなら細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がっているのである。
JCRRAG_010396
国語
禅智内供の鼻といえば、池の尾で知らない者はない。禅智内供の鼻の長さは五・六寸あって上唇の上からアゴの下まで下がっている。 形は元も先も同じように太い。例えるなら細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がっているのである。  五十歳を越えた内供は、沙弥をやっていた過去から、内道場供奉の職に昇格した現在まで、内心では始終この鼻について悩み苦しんでいた。 もちろん表面では、べつにさほど気にしてないような顔をしてすましている。これは来世は浄土に生まれ変わるよう専念して祈る僧侶の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしているという事を、人に知られるのが嫌だったからである。内供は日常の談話の中に、鼻って単語が出て来るのを何よりも怖がっていた。  内供が鼻を持てあました理由は二つある。一つは実際に、鼻の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも一人では食えない。独りで食えば、鼻の先がお椀の中のご飯へとどいてしまう。そこで内供は弟子の一人を膳の向こうへ座らせて、飯を食う間中、広さ一寸と長さ二尺ばかりの板で、鼻を持ち上げていて貰う事にした。しかしこうして飯を食うという事は、持ち上げている弟子にとっても、持ち上げられている内供にとっても、決して容易な事ではない。一度この弟子の代わりをした中童子が、くしゃみをした拍子に手がふるえて、鼻をお粥の中へ落とした話は、当時の京都まで伝わった。けれどもこれは内供にとって、決して鼻を苦に病んだ主な理由ではない。内供は本当はこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである。  池の尾の町の者は、こういう鼻をしている禅智内供のために、内供は僧侶で幸せだといった。あの鼻では誰も妻になる女がいるまいと思ったからである。中にはまた、あの鼻だから出家したのだろうと批評する者さえあった。しかし内供は、自分が僧であるために、少しでもこの鼻に煩わしい思いをすることが少なくなったと思っていない。
内供はなぜ鼻をさほど気にしてないような顔をしてすましていたのか。
自分で鼻を気にしているという事を、人に知られるのが嫌だったからである。
JCRRAG_010397
国語
禅智内供の鼻といえば、池の尾で知らない者はない。禅智内供の鼻の長さは五・六寸あって上唇の上からアゴの下まで下がっている。 形は元も先も同じように太い。例えるなら細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がっているのである。  五十歳を越えた内供は、沙弥をやっていた過去から、内道場供奉の職に昇格した現在まで、内心では始終この鼻について悩み苦しんでいた。 もちろん表面では、べつにさほど気にしてないような顔をしてすましている。これは来世は浄土に生まれ変わるよう専念して祈る僧侶の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしているという事を、人に知られるのが嫌だったからである。内供は日常の談話の中に、鼻って単語が出て来るのを何よりも怖がっていた。  内供が鼻を持てあました理由は二つある。一つは実際に、鼻の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも一人では食えない。独りで食えば、鼻の先がお椀の中のご飯へとどいてしまう。そこで内供は弟子の一人を膳の向こうへ座らせて、飯を食う間中、広さ一寸と長さ二尺ばかりの板で、鼻を持ち上げていて貰う事にした。しかしこうして飯を食うという事は、持ち上げている弟子にとっても、持ち上げられている内供にとっても、決して容易な事ではない。一度この弟子の代わりをした中童子が、くしゃみをした拍子に手がふるえて、鼻をお粥の中へ落とした話は、当時の京都まで伝わった。けれどもこれは内供にとって、決して鼻を苦に病んだ主な理由ではない。内供は本当はこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである。  池の尾の町の者は、こういう鼻をしている禅智内供のために、内供は僧侶で幸せだといった。あの鼻では誰も妻になる女がいるまいと思ったからである。中にはまた、あの鼻だから出家したのだろうと批評する者さえあった。しかし内供は、自分が僧であるために、少しでもこの鼻に煩わしい思いをすることが少なくなったと思っていない。
内供が鼻を持てあました理由の一つはなんですか。
鼻の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも一人では食えない。独りで食えば、鼻の先がお椀の中のご飯へとどいてしまう。
JCRRAG_010398
国語
 むかし、あるところに、夫婦が住んでおりました。ふたりは、長い年月のあいだ、子どもをひとりほしいと思っていましたが、どうしてもさずかりませんでした。けれども、ようやく神さまがその願いをかなえてくださりそうなようすが、おかみさんにみえてきました。  この夫婦のうちのうしろがわには、小さな窓がありました。その窓からは、世にも美しい花や野菜がいっぱい植えられている、きれいな庭が見えました。けれども、その庭は高いへいにとりかこまれていました。しかも、その庭は、たいへんな勢力をもっていて、世間の人たちからおそれられている、ある魔法使いのばあさんのものでしたから、だれひとりそのなかへ入っていこうとするものはありませんでした。  ある日のこと、おかみさんがこの窓ぎわに立って、庭を見おろしていますと、それはそれはきれいなラプンツェル(チシャ)の植えてある野菜畑が目につきました。みるからに、みずみずしく、青々としたラプンツェルです。おかみさんはそれがほしくてたまらなくなって、なんとかして食べたいものだと思いました。  しかもその思いは、日ましにはげしくなるばかりでした。けれども、それがとても手にいれられないことはわかりきっていましたので、おかみさんはすっかりやせほそって、顔色もあおざめ、見るかげもないようになってきました。  これを見て、亭主はびっくりして、たずねました。 「おまえ、どうしたんだい。」 「ああ、ああ、うちの裏の庭のラプンツェルが食べられなかったら、あたしゃ死んでしまうよ。」 と、おかみさんはこたえました。  亭主は、おかみさんがかわいくてなりませんので、 「女房を死なせるくらいなら、あのラプンツェルをとってきてやれ。どうなったって、かまうものか。」 と、思いました。  そこで亭主は、夕やみにまぎれて、へいをのりこえました。魔法使いの庭にはいるがはやいか、大急ぎでラプンツェルをひとつかみとって、おかみさんのところへもってきてやりました。  おかみさんは、それでさっそくサラダをこしらえて、がつがつ食べました。ところが、そのおいしいことといったら、これ以上のものはなかった。そのためおかみさんは、そのつぎの日になると、こんどは、まえの日の三倍もそれがほしくてたまらなくなってしまいました。  おかみさんをおちつかせるためには、亭主はもういっぺんとなりの庭におりていかなければなりませんでした。そこで、またもや夕やみをねらってでかけていきました。ところが、へいをのりこえたとたん、亭主はびっくりぎょうてんしてしまいました。むりもありません。すぐ目のまえに、魔法使いのおばあさんが立っていたのですから。 「おまえはなんてずうずうしい男なんだい。」 と、魔法使いは亭主をぐいとにらみつけて、いいました。 「わしの庭へはいりこんで、どろぼうみたいに、わしのラプンツェルをぬすんでいくとは。さあ、ひどいめにあわせてくれるぞ。」 「ああ、どうかおゆるしくださいまし。」 と、亭主はこたえていいました。 「どうにもいたしかたなく、こんなことをしでかしたんでございます。じつは、女房が、窓からこちらさまのラプンツェルを見ました。すると、どうしてもこれがほしくなって、ひと口でも食べないことには、死んじまうなどともうすものでございますから。」  これをきくと、魔法使いはいかりをやわらげて、亭主にいいました。 「ほんとうにおまえのいう通りなら、ほしいだけラプンツェルをとらせてやろう。そのかわり、ひとつだけ条件がある。おかみさんが子どもを生んだら、その子をわしにくれなければいけない。その子をしあわせにしてやろう。わしが母親のようにめんどうをみてやるよ。」  亭主はこわくてたまらないものですから、なにもかも承知してしまいました。  やがて、おかみさんが子どもを生んだら、魔法使いのおばあさんはさっそくやってきて、その子にラプンツェルという名まえをつけて、いっしょにつれていってしまいました。
おかみさんが子どもを生んだら、魔法使いのおばあさんはどうしましたか。
その子にラプンツェルという名まえをつけて、いっしょにつれていってしまいました。
JCRRAG_010399
国語
禅智内供の鼻といえば、池の尾で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇の上からアゴの下まで下がっている。 形は元も先も同じように太い。例えるなら細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がっているのである。  五十歳を越えた内供は、沙弥をやっていた過去から、内道場供奉の職に昇格した現在まで、内心では始終この鼻について悩み苦しんでいた。 もちろん表面では、べつにさほど気にしてないような顔をしてすましている。これは来世は浄土に生まれ変わるよう専念して祈る僧侶の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしているという事を、人に知られるのが嫌だったからである。内供は日常の談話の中に、鼻って単語が出て来るのを何よりも怖がっていた。  内供が鼻を持てあました理由は二つある。一つは実際に、鼻の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも一人では食えない。独りで食えば、鼻の先がお椀の中のご飯へとどいてしまう。そこで内供は弟子の一人を膳の向こうへ座らせて、飯を食う間中、広さ一寸と長さ二尺ばかりの板で、鼻を持ち上げていて貰う事にした。しかしこうして飯を食うという事は、持ち上げている弟子にとっても、持ち上げられている内供にとっても、決して容易な事ではない。一度この弟子の代わりをした中童子が、くしゃみをした拍子に手がふるえて、鼻をお粥の中へ落とした話は、当時の京都まで伝わった。けれどもこれは内供にとって、決して鼻を苦に病んだ主な理由ではない。内供は本当はこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである。  池の尾の町の者は、こういう鼻をしている禅智内供のために、内供は僧侶で幸せだといった。あの鼻では誰も妻になる女がいるまいと思ったからである。中にはまた、あの鼻だから出家したのだろうと批評する者さえあった。しかし内供は、自分が僧であるために、少しでもこの鼻に煩わしい思いをすることが少なくなったと思っていない。
池の尾の町の者はこういう鼻をしている禅智内供をみてなんと言いましたか。
内供は僧侶で幸せだといった。
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国語
内供は、積極的にも消極的にも、この傷つけられたプライドを回復しようと思っていた。  第一に内供が考えたのは、この長い鼻を実際のサイズ以上に短く見せる方法である。これは人のいない時に、鏡へ向かって、いろいろな角度から顔を映しながら、熱心に工夫してみた。どうしても、顔の位置を変えるだけでは、安心が出来なくなって、頬杖をついたりアゴの先へ指をあてがったりして、根気よく鏡を覗いて見る事もあった。しかし自分でも満足するほど、鼻が短く見えた事は、これまでただの一度もない。場合によっては苦心すればするほど、かえって鼻が長く見えるような気さえしてきた。内供は、こういう時には、鏡を箱へ片付けながら、今更のようにため息をついて、不承不承にまた元の経机へ、観音経をよみに帰るのである。  それからまた内供は、絶えず人の鼻を気にしていた。池の尾の寺は、僧供による講説などがしばしば行われる寺である。寺の中には、僧坊が隙間なく並んでいて、湯屋では寺の僧が毎日お湯を沸かしている。つまりここへ出入りする僧侶や一般人が非常に多い。内供はこういう人々の顔を根気よく観察した。一人でも自分のような鼻のある人間を見つけて、安心したかったからである。だから内供の眼には、紺の水干も白の帷子もはいらない。ましてオレンジ色の帽子や、暗い茶色の法衣なんてものは、見慣れているだけにあってないようなものである。内供は人を見ないで、ただ鼻を見た。 しかし鍵鼻はあっても、内供のような鼻は一つも見当たらない。その見当たらない事が度重なっていくうちに、内供の心は次第にまた不快になった。内供が人と話しながら、思わずぶらりと下っている鼻の先をつまんで見て、年甲斐もなく顔を赤らめたのは、全てこの時不快感によるものである。  最後に、内供は、仏教の経典や色んな宗教の経典の中に、自分と同じような鼻のある人物を見つけて、すこしでも心の支えにしようとさえ思った事がある。けれども、目連や、舎利弗の鼻が長かったとはどの経文にも書いてない。もちろん竜樹や馬鳴も、人並の鼻を備えた菩薩である。内供は、中国の話をするついでに蜀漢にいた劉備玄徳の耳が長かったという事を聞いた時に、「それが鼻だったら、どのくらい自分は心細くなくなるだろうか」と思った。  内供がこういう消極的な苦心をしている一方で、積極的に鼻の短くなる方法を試みた事は、わざわざここにいうまでもない。内供はこの方面でもほとんど出来るだけの事をした。烏瓜を煎じて飲んで見た事もある。鼠の尿を乾かした物を鼻へすりつけて見た事もある。しかし何をしたとしても、鼻は依然として、五・六寸の長さをぶらりと唇の上にぶら下げていた。
鏡に向かっていろいろな角度から顔を映したが、鼻が短く見えた事はこれまでただの一度もなかった時に、内供はどうしましたか。
内供は、こういう時には、鏡を箱へ片付けながら、今更のようにため息をついて、不承不承にまた元の経机へ、観音経をよみに帰るのである。