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663
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|---|---|---|---|---|
JCRRAG_001501
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生物学
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沖縄島から得られた沖縄諸島初記録のヨウジウオ科魚類タニヨウジ
ヨウジウオ科 Syngnathidae テングヨウジ属 Microphis のタニヨウジ Microphis retzii (Bleeker,1856)は,河川の河口域から渓流域を主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されている(Dawson,1984,1985;瀬能,2015).本種は西太平洋に広く分布し,日本国内においては西表島で初確認(Yoshino and Yoshigou,1998)されて以降,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,種子島,奄美大島,石垣島から少数の個体が報告されている(神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017;加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).
このたび著者らが沖縄島で行った採集調査において,タニヨウジが2個体採集された.本標本は沖縄諸島からの本種の初記録であると同時に,その分布の拡大傾向を示唆する証拠となるため,ここに報告する.
材料と方法
採集調査は2020年11月14日と2021年2月25日にそれぞれ沖縄県中頭郡北谷町と国頭郡国頭村の河川において手網を用いて行った.採集した個体は,10%中性ホルマリン水溶液で固定した後,70%エタノール水溶液中に保存した.各部の計測計数は基本的にDawson(1977,1985)にしたがったが,Dawson(1977,1985)に記載のない計測部位については加藤ほか(2020)にしたがった.また,計測部位の日本語名については瀬能(2013)も参照した.計測はノギスを用いて0.1mm単位で行い,標準体長(standard length)はSLと表記した.色彩の名称および表記は,財団法人日本色彩研究所(1995)にしたがった.本研究に用いた標本は,京都大学総合博物館の魚類標本(FAKU)と神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類資料(KPM-NI)として登録・保管されている.また,色彩の記載に用いた鮮時のカラーデジタル写真は,神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録されている.なお,同館における魚類の標本番号は電子台帳上ではゼロが付加された7桁の数字が使われているが,ここでは標本番号として本質的な有効数字で表記した.なお,本種の生息環境保全の観点から,本稿では採集場所の詳細については明記しない.
標本 FAKU 208280,100.9mm SL,沖縄県中頭郡北谷町の河川,2020年11月14日,タモ網,岸田岳大採集;KPM-NI 66270,98.1mm SL,沖縄県国頭郡国頭村の河川,2021年2月25日,タモ網,佐藤宏樹採集.
記載 体は前後方向に直線状に長く,尾鰭を除いた尾部は躯幹部より長い.躯幹部および尾部は複数の体輪に覆われる.各隆起線の外縁は円滑で,躯幹部上隆起線,躯幹部中央隆起線および尾部上隆起線の外縁は鋸歯状の微細構造を伴う.吻背面の中央隆起線は上顎後方から眼の前縁にかけて発達し,眼上隆起線とは連続しない.吻側面の中央隆起線は明瞭で,口の後方から眼の後縁下をわずかに越える.主鰓蓋骨の縦走隆起線は明瞭で,下方に2本の補助隆起線を伴う.躯幹部と尾部の上隆起線および下隆起線はそれぞれ不連続.躯幹部の中央隆起線は明瞭で,肛門輪で下方へ曲がり尾部の下隆起線に連続する.躯幹部腹面中央隆起線は第1躯幹輪腹面の前端から肛門前方にかけて発達する.躯幹部側面の中間板は縦走隆起線を伴うが,背方部では明瞭であるのに対して腹方部では不明瞭である.尾部上隆起線は背鰭後端で体輪の上縁から離れるが,そのまま肛門輪まで延長する.尾部の各中間板は明瞭な縦走隆起線を伴い,各縦走隆起線が連続して尾部側面中央部に一連の隆起線を形成する.臀鰭は小さく,肛門輪と第1尾輪の境界部腹面に位置する.尾鰭はよく発達し,鰭膜は深く切れ込む.
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尾部の各中間板は何を伴いますか。
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尾部の各中間板は明瞭な縦走隆起線を伴います。
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JCRRAG_001502
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生物学
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色彩 生鮮時の体色―体背面は灰色で,腹面は白色.瞳孔は黒色で,虹彩は灰色.第1背鰭は体背色より若干薄い灰色で,前縁がわずかに濃い.第2背鰭は先端を含む大部分が黒色で,後半部は灰色.胸鰭背面は灰色で,基底部がわずかに濃い.胸鰭腹面は薄い灰色で,基底は白色.胸鰭は背面,腹面ともに細く白く縁取られる.腹鰭は背面,腹面ともに灰色で基底は白色で,白く縁取られる.臀鰭は白色.尾鰭および基底背面は薄い灰色で,基底腹面は白色.上葉の後端は灰色で,下葉の後端はわずかに白色.
分布 本種はインド・太平洋域のインドネシアから台湾および日本列島沿岸に分布し(White,2012;古川ほか,2019;中島田・日比野,2022;本村,2025),国内では京都府宮津市田井および兵庫県新温泉町釜屋沖,大阪湾,和歌山県日高町,高知県沿岸,福岡県玄界灘,長崎県東シナ海沿岸,宮崎県門川町,鹿児島県沿岸・鹿児島湾,熊本県天草・湯島沿岸,有明海(流入河川の矢部川河口を含む),八代海,琉球列島,小笠原諸島から記録がある(内田・塚原,1995;Garrick,1982;鷲尾ほか,1996;後藤,2001;井手ほか,2003;川崎ほか,2004;川崎・大塚,2007;川崎,2007;川上ほか,2008;White,2012;山下ほか,2012;青沼ほか,2013;古川ほか,2014;河野ほか,2014;ジョン,2017,2022;田城ほか,2017;小枝ほか,2018,2020;公益財団法人鹿児島市水族館公社,2018;三澤ほか,2019;園山ほか,2020;国土交通省,2021;緒方,2021;中島田・日比野,2022;國島,2023;本村,2025;本研究).
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腹鰭は何色で縁取られていますか。
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腹鰭は白く縁取られています。
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JCRRAG_001503
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生物学
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沖縄島から得られた沖縄諸島初記録のヨウジウオ科魚類タニヨウジ
ヨウジウオ科 Syngnathidae テングヨウジ属 Microphis のタニヨウジ Microphis retzii (Bleeker,1856)は,河川の河口域から渓流域を主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されている(Dawson,1984,1985;瀬能,2015).本種は西太平洋に広く分布し,日本国内においては西表島で初確認(Yoshino and Yoshigou,1998)されて以降,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,種子島,奄美大島,石垣島から少数の個体が報告されている(神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017;加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).
このたび著者らが沖縄島で行った採集調査において,タニヨウジが2個体採集された.本標本は沖縄諸島からの本種の初記録であると同時に,その分布の拡大傾向を示唆する証拠となるため,ここに報告する.
材料と方法
採集調査は2020年11月14日と2021年2月25日にそれぞれ沖縄県中頭郡北谷町と国頭郡国頭村の河川において手網を用いて行った.採集した個体は,10%中性ホルマリン水溶液で固定した後,70%エタノール水溶液中に保存した.各部の計測計数は基本的にDawson(1977,1985)にしたがったが,Dawson(1977,1985)に記載のない計測部位については加藤ほか(2020)にしたがった.また,計測部位の日本語名については瀬能(2013)も参照した.計測はノギスを用いて0.1mm単位で行い,標準体長(standard length)はSLと表記した.色彩の名称および表記は,財団法人日本色彩研究所(1995)にしたがった.本研究に用いた標本は,京都大学総合博物館の魚類標本(FAKU)と神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類資料(KPM-NI)として登録・保管されている.また,色彩の記載に用いた鮮時のカラーデジタル写真は,神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録されている.なお,同館における魚類の標本番号は電子台帳上ではゼロが付加された7桁の数字が使われているが,ここでは標本番号として本質的な有効数字で表記した.なお,本種の生息環境保全の観点から,本稿では採集場所の詳細については明記しない.
標本 FAKU 208280,100.9mm SL,沖縄県中頭郡北谷町の河川,2020年11月14日,タモ網,岸田岳大採集;KPM-NI 66270,98.1mm SL,沖縄県国頭郡国頭村の河川,2021年2月25日,タモ網,佐藤宏樹採集.
記載 体は前後方向に直線状に長く,尾鰭を除いた尾部は躯幹部より長い.躯幹部および尾部は複数の体輪に覆われる.各隆起線の外縁は円滑で,躯幹部上隆起線,躯幹部中央隆起線および尾部上隆起線の外縁は鋸歯状の微細構造を伴う.吻背面の中央隆起線は上顎後方から眼の前縁にかけて発達し,眼上隆起線とは連続しない.吻側面の中央隆起線は明瞭で,口の後方から眼の後縁下をわずかに越える.主鰓蓋骨の縦走隆起線は明瞭で,下方に2本の補助隆起線を伴う.躯幹部と尾部の上隆起線および下隆起線はそれぞれ不連続.躯幹部の中央隆起線は明瞭で,肛門輪で下方へ曲がり尾部の下隆起線に連続する.躯幹部腹面中央隆起線は第1躯幹輪腹面の前端から肛門前方にかけて発達する.躯幹部側面の中間板は縦走隆起線を伴うが,背方部では明瞭であるのに対して腹方部では不明瞭である.尾部上隆起線は背鰭後端で体輪の上縁から離れるが,そのまま肛門輪まで延長する.尾部の各中間板は明瞭な縦走隆起線を伴い,各縦走隆起線が連続して尾部側面中央部に一連の隆起線を形成する.臀鰭は小さく,肛門輪と第1尾輪の境界部腹面に位置する.尾鰭はよく発達し,鰭膜は深く切れ込む.
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タニヨウジは、日本国内においてはどこで初確認されましたか。
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タニヨウジは、日本国内においては西表島で初確認されました。
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JCRRAG_001504
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生物学
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沖縄島から得られた沖縄諸島初記録のヨウジウオ科魚類タニヨウジ
ヨウジウオ科 Syngnathidae テングヨウジ属 Microphis のタニヨウジ Microphis retzii (Bleeker,1856)は,河川の河口域から渓流域を主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されている(Dawson,1984,1985;瀬能,2015).本種は西太平洋に広く分布し,日本国内においては西表島で初確認(Yoshino and Yoshigou,1998)されて以降,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,種子島,奄美大島,石垣島から少数の個体が報告されている(神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017;加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).
このたび著者らが沖縄島で行った採集調査において,タニヨウジが2個体採集された.本標本は沖縄諸島からの本種の初記録であると同時に,その分布の拡大傾向を示唆する証拠となるため,ここに報告する.
材料と方法
採集調査は2020年11月14日と2021年2月25日にそれぞれ沖縄県中頭郡北谷町と国頭郡国頭村の河川において手網を用いて行った.採集した個体は,10%中性ホルマリン水溶液で固定した後,70%エタノール水溶液中に保存した.各部の計測計数は基本的にDawson(1977,1985)にしたがったが,Dawson(1977,1985)に記載のない計測部位については加藤ほか(2020)にしたがった.また,計測部位の日本語名については瀬能(2013)も参照した.計測はノギスを用いて0.1mm単位で行い,標準体長(standard length)はSLと表記した.色彩の名称および表記は,財団法人日本色彩研究所(1995)にしたがった.本研究に用いた標本は,京都大学総合博物館の魚類標本(FAKU)と神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類資料(KPM-NI)として登録・保管されている.また,色彩の記載に用いた鮮時のカラーデジタル写真は,神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録されている.なお,同館における魚類の標本番号は電子台帳上ではゼロが付加された7桁の数字が使われているが,ここでは標本番号として本質的な有効数字で表記した.なお,本種の生息環境保全の観点から,本稿では採集場所の詳細については明記しない.
標本 FAKU 208280,100.9mm SL,沖縄県中頭郡北谷町の河川,2020年11月14日,タモ網,岸田岳大採集;KPM-NI 66270,98.1mm SL,沖縄県国頭郡国頭村の河川,2021年2月25日,タモ網,佐藤宏樹採集.
記載 体は前後方向に直線状に長く,尾鰭を除いた尾部は躯幹部より長い.躯幹部および尾部は複数の体輪に覆われる.各隆起線の外縁は円滑で,躯幹部上隆起線,躯幹部中央隆起線および尾部上隆起線の外縁は鋸歯状の微細構造を伴う.吻背面の中央隆起線は上顎後方から眼の前縁にかけて発達し,眼上隆起線とは連続しない.吻側面の中央隆起線は明瞭で,口の後方から眼の後縁下をわずかに越える.主鰓蓋骨の縦走隆起線は明瞭で,下方に2本の補助隆起線を伴う.躯幹部と尾部の上隆起線および下隆起線はそれぞれ不連続.躯幹部の中央隆起線は明瞭で,肛門輪で下方へ曲がり尾部の下隆起線に連続する.躯幹部腹面中央隆起線は第1躯幹輪腹面の前端から肛門前方にかけて発達する.躯幹部側面の中間板は縦走隆起線を伴うが,背方部では明瞭であるのに対して腹方部では不明瞭である.尾部上隆起線は背鰭後端で体輪の上縁から離れるが,そのまま肛門輪まで延長する.尾部の各中間板は明瞭な縦走隆起線を伴い,各縦走隆起線が連続して尾部側面中央部に一連の隆起線を形成する.臀鰭は小さく,肛門輪と第1尾輪の境界部腹面に位置する.尾鰭はよく発達し,鰭膜は深く切れ込む.
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吻背面の中央隆起線は上顎後方からどこにかけて発達していますか。
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吻背面の中央隆起線は上顎後方から眼の前縁にかけて発達しています。
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JCRRAG_001505
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生物学
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色彩 鮮時の色彩彩(KPM-NR 220147, 257251)は以下の通り.吻から尾部にかけた背面はあさい黄みのブラウン.躯幹部中央隆起線と尾部下隆起線上には黒い縁取りを伴った白色小斑点が並ぶ.躯幹部と尾部の体側はあさい黄みのブラウンを基調とするが,腹側は背側よりもやや淡い.眼から吻,鰓蓋後方,鰓蓋下部に向かう放射状に広がる灰みのブラウンの帯がある.躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には,黒い縁取りが伴った白色小斑点が並ぶ.吻側面,躯幹部中央隆起線の下方部,躯幹部上・下隆起線,尾部下隆起線および尾部側面中央部の隆起線にも同様の小斑点があるが,尾部末端では不明瞭である.躯幹部体側面の中央隆起線の上下につよい黄みのオレンジの不明瞭な斑が2列並ぶ.尾鰭の中央は灰みのブラウンで,透明の縁取りがある.背鰭軟条の中心部は透明で,あさい黄みのブラウンに縁取られる.
分布 西太平洋(日本,台湾,中国広東省,フィリピン,インドネシア,ポンペイ島,サモア諸島)から記録されている(Dawson,1985;周・高,2011;瀬能,2015;Haÿ et al.,2024a,b).ただし,後述の通りHaÿ et al.(2024b)によりジャワ島,バリ島,ロンボク島に分布する個体群は別種として記載されている.本種は日本国内では,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,薩南諸島(種子島・奄美大島),八重山諸島(石垣島・西表島)から記録されている[神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017(岩槻幸雄氏・投野隼人氏,私信);加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).したがって,本研究で得られた2標本は本種の沖縄島ならびに沖縄諸島からの初記録となる.
生息環境 FAKU 208280は,河口から約0.2km上流の地点において,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,採集時の水深は4050cmであった.同所からはオオウナギ Anguilla marmorata Quoy and Gaimard,1824,イッセンヨウジ Microphis leiaspis (Bleeker,1853),オオクチユゴイ Kuhlia rupestris (Lacepède,1802),タメトモハゼ Giuris tolsoni (Bleeker,1854),ヒナハゼ Redigobius bikolanus (Herre,1927)が採集された.
KPM-NI66270は,河口から約0.7km上流の右岸側で,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,水深は40–50cmで,水温は20.5℃であった.同所から魚類ではイッセンヨウジが,十脚甲殻類ではザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guérin-Méneville,1838),ツノナガヌマエビ Caridina grandirostris Stimpson,1860,ミゾレヌマエビ C. leucosticta Stimpson,1860,ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man,1892,ヌマエビ Paratya compressa(De Haan,1849)が採集された.
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吻から尾部にかけた背面はどんな色ですか。
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吻から尾部にかけた背面はあさい黄みのブラウンです。
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JCRRAG_001506
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生物学
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色彩 鮮時の色彩彩(KPM-NR 220147, 257251)は以下の通り.吻から尾部にかけた背面はあさい黄みのブラウン.躯幹部中央隆起線と尾部下隆起線上には黒い縁取りを伴った白色小斑点が並ぶ.躯幹部と尾部の体側はあさい黄みのブラウンを基調とするが,腹側は背側よりもやや淡い.眼から吻,鰓蓋後方,鰓蓋下部に向かう放射状に広がる灰みのブラウンの帯がある.躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には,黒い縁取りが伴った白色小斑点が並ぶ.吻側面,躯幹部中央隆起線の下方部,躯幹部上・下隆起線,尾部下隆起線および尾部側面中央部の隆起線にも同様の小斑点があるが,尾部末端では不明瞭である.躯幹部体側面の中央隆起線の上下につよい黄みのオレンジの不明瞭な斑が2列並ぶ.尾鰭の中央は灰みのブラウンで,透明の縁取りがある.背鰭軟条の中心部は透明で,あさい黄みのブラウンに縁取られる.
分布 西太平洋(日本,台湾,中国広東省,フィリピン,インドネシア,ポンペイ島,サモア諸島)から記録されている(Dawson,1985;周・高,2011;瀬能,2015;Haÿ et al.,2024a,b).ただし,後述の通りHaÿ et al.(2024b)によりジャワ島,バリ島,ロンボク島に分布する個体群は別種として記載されている.本種は日本国内では,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,薩南諸島(種子島・奄美大島),八重山諸島(石垣島・西表島)から記録されている[神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017(岩槻幸雄氏・投野隼人氏,私信);加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).したがって,本研究で得られた2標本は本種の沖縄島ならびに沖縄諸島からの初記録となる.
生息環境 FAKU 208280は,河口から約0.2km上流の地点において,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,採集時の水深は4050cmであった.同所からはオオウナギ Anguilla marmorata Quoy and Gaimard,1824,イッセンヨウジ Microphis leiaspis (Bleeker,1853),オオクチユゴイ Kuhlia rupestris (Lacepède,1802),タメトモハゼ Giuris tolsoni (Bleeker,1854),ヒナハゼ Redigobius bikolanus (Herre,1927)が採集された.
KPM-NI66270は,河口から約0.7km上流の右岸側で,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,水深は40–50cmで,水温は20.5℃であった.同所から魚類ではイッセンヨウジが,十脚甲殻類ではザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guérin-Méneville,1838),ツノナガヌマエビ Caridina grandirostris Stimpson,1860,ミゾレヌマエビ C. leucosticta Stimpson,1860,ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man,1892,ヌマエビ Paratya compressa(De Haan,1849)が採集された.
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灰みのブラウンで、透明の縁取りがあるのはどこですか。
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灰みのブラウンで、透明の縁取りがあるのは尾鰭の中央です。
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JCRRAG_001507
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生物学
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沖縄島から得られた沖縄諸島初記録のヨウジウオ科魚類タニヨウジ
ヨウジウオ科 Syngnathidae テングヨウジ属 Microphis のタニヨウジ Microphis retzii (Bleeker,1856)は,河川の河口域から渓流域を主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されている(Dawson,1984,1985;瀬能,2015).本種は西太平洋に広く分布し,日本国内においては西表島で初確認(Yoshino and Yoshigou,1998)されて以降,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,種子島,奄美大島,石垣島から少数の個体が報告されている(神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017;加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).
このたび著者らが沖縄島で行った採集調査において,タニヨウジが2個体採集された.本標本は沖縄諸島からの本種の初記録であると同時に,その分布の拡大傾向を示唆する証拠となるため,ここに報告する.
材料と方法
採集調査は2020年11月14日と2021年2月25日にそれぞれ沖縄県中頭郡北谷町と国頭郡国頭村の河川において手網を用いて行った.採集した個体は,10%中性ホルマリン水溶液で固定した後,70%エタノール水溶液中に保存した.各部の計測計数は基本的にDawson(1977,1985)にしたがったが,Dawson(1977,1985)に記載のない計測部位については加藤ほか(2020)にしたがった.また,計測部位の日本語名については瀬能(2013)も参照した.計測はノギスを用いて0.1mm単位で行い,標準体長(standard length)はSLと表記した.色彩の名称および表記は,財団法人日本色彩研究所(1995)にしたがった.本研究に用いた標本は,京都大学総合博物館の魚類標本(FAKU)と神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類資料(KPM-NI)として登録・保管されている.また,色彩の記載に用いた鮮時のカラーデジタル写真は,神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録されている.なお,同館における魚類の標本番号は電子台帳上ではゼロが付加された7桁の数字が使われているが,ここでは標本番号として本質的な有効数字で表記した.なお,本種の生息環境保全の観点から,本稿では採集場所の詳細については明記しない.
標本 FAKU 208280,100.9mm SL,沖縄県中頭郡北谷町の河川,2020年11月14日,タモ網,岸田岳大採集;KPM-NI 66270,98.1mm SL,沖縄県国頭郡国頭村の河川,2021年2月25日,タモ網,佐藤宏樹採集.
記載 体は前後方向に直線状に長く,尾鰭を除いた尾部は躯幹部より長い.躯幹部および尾部は複数の体輪に覆われる.各隆起線の外縁は円滑で,躯幹部上隆起線,躯幹部中央隆起線および尾部上隆起線の外縁は鋸歯状の微細構造を伴う.吻背面の中央隆起線は上顎後方から眼の前縁にかけて発達し,眼上隆起線とは連続しない.吻側面の中央隆起線は明瞭で,口の後方から眼の後縁下をわずかに越える.主鰓蓋骨の縦走隆起線は明瞭で,下方に2本の補助隆起線を伴う.躯幹部と尾部の上隆起線および下隆起線はそれぞれ不連続.躯幹部の中央隆起線は明瞭で,肛門輪で下方へ曲がり尾部の下隆起線に連続する.躯幹部腹面中央隆起線は第1躯幹輪腹面の前端から肛門前方にかけて発達する.躯幹部側面の中間板は縦走隆起線を伴うが,背方部では明瞭であるのに対して腹方部では不明瞭である.尾部上隆起線は背鰭後端で体輪の上縁から離れるが,そのまま肛門輪まで延長する.尾部の各中間板は明瞭な縦走隆起線を伴い,各縦走隆起線が連続して尾部側面中央部に一連の隆起線を形成する.臀鰭は小さく,肛門輪と第1尾輪の境界部腹面に位置する.尾鰭はよく発達し,鰭膜は深く切れ込む.
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尾鰭を除いた尾部はどの部分より長いですか。
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尾鰭を除いた尾部は躯幹部より長いです。
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JCRRAG_001508
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生物学
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色彩 鮮時の色彩彩(KPM-NR 220147, 257251)は以下の通り.吻から尾部にかけた背面はあさい黄みのブラウン.躯幹部中央隆起線と尾部下隆起線上には黒い縁取りを伴った白色小斑点が並ぶ.躯幹部と尾部の体側はあさい黄みのブラウンを基調とするが,腹側は背側よりもやや淡い.眼から吻,鰓蓋後方,鰓蓋下部に向かう放射状に広がる灰みのブラウンの帯がある.躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には,黒い縁取りが伴った白色小斑点が並ぶ.吻側面,躯幹部中央隆起線の下方部,躯幹部上・下隆起線,尾部下隆起線および尾部側面中央部の隆起線にも同様の小斑点があるが,尾部末端では不明瞭である.躯幹部体側面の中央隆起線の上下につよい黄みのオレンジの不明瞭な斑が2列並ぶ.尾鰭の中央は灰みのブラウンで,透明の縁取りがある.背鰭軟条の中心部は透明で,あさい黄みのブラウンに縁取られる.
分布 西太平洋(日本,台湾,中国広東省,フィリピン,インドネシア,ポンペイ島,サモア諸島)から記録されている(Dawson,1985;周・高,2011;瀬能,2015;Haÿ et al.,2024a,b).ただし,後述の通りHaÿ et al.(2024b)によりジャワ島,バリ島,ロンボク島に分布する個体群は別種として記載されている.本種は日本国内では,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,薩南諸島(種子島・奄美大島),八重山諸島(石垣島・西表島)から記録されている[神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017(岩槻幸雄氏・投野隼人氏,私信);加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).したがって,本研究で得られた2標本は本種の沖縄島ならびに沖縄諸島からの初記録となる.
生息環境 FAKU 208280は,河口から約0.2km上流の地点において,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,採集時の水深は4050cmであった.同所からはオオウナギ Anguilla marmorata Quoy and Gaimard,1824,イッセンヨウジ Microphis leiaspis (Bleeker,1853),オオクチユゴイ Kuhlia rupestris (Lacepède,1802),タメトモハゼ Giuris tolsoni (Bleeker,1854),ヒナハゼ Redigobius bikolanus (Herre,1927)が採集された.
KPM-NI66270は,河口から約0.7km上流の右岸側で,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,水深は40–50cmで,水温は20.5℃であった.同所から魚類ではイッセンヨウジが,十脚甲殻類ではザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guérin-Méneville,1838),ツノナガヌマエビ Caridina grandirostris Stimpson,1860,ミゾレヌマエビ C. leucosticta Stimpson,1860,ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man,1892,ヌマエビ Paratya compressa(De Haan,1849)が採集された.
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FAKU 208280は、どこで採集されましたか。
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FAKU 208280は、河口から約0.2km上流の地点において、陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集されました。
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JCRRAG_001509
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生物学
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沖縄島から得られた沖縄諸島初記録のヨウジウオ科魚類タニヨウジ
ヨウジウオ科 Syngnathidae テングヨウジ属 Microphis のタニヨウジ Microphis retzii (Bleeker,1856)は,河川の河口域から渓流域を主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されている(Dawson,1984,1985;瀬能,2015).本種は西太平洋に広く分布し,日本国内においては西表島で初確認(Yoshino and Yoshigou,1998)されて以降,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,種子島,奄美大島,石垣島から少数の個体が報告されている(神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017;加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).
このたび著者らが沖縄島で行った採集調査において,タニヨウジが2個体採集された.本標本は沖縄諸島からの本種の初記録であると同時に,その分布の拡大傾向を示唆する証拠となるため,ここに報告する.
材料と方法
採集調査は2020年11月14日と2021年2月25日にそれぞれ沖縄県中頭郡北谷町と国頭郡国頭村の河川において手網を用いて行った.採集した個体は,10%中性ホルマリン水溶液で固定した後,70%エタノール水溶液中に保存した.各部の計測計数は基本的にDawson(1977,1985)にしたがったが,Dawson(1977,1985)に記載のない計測部位については加藤ほか(2020)にしたがった.また,計測部位の日本語名については瀬能(2013)も参照した.計測はノギスを用いて0.1mm単位で行い,標準体長(standard length)はSLと表記した.色彩の名称および表記は,財団法人日本色彩研究所(1995)にしたがった.本研究に用いた標本は,京都大学総合博物館の魚類標本(FAKU)と神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類資料(KPM-NI)として登録・保管されている.また,色彩の記載に用いた鮮時のカラーデジタル写真は,神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録されている.なお,同館における魚類の標本番号は電子台帳上ではゼロが付加された7桁の数字が使われているが,ここでは標本番号として本質的な有効数字で表記した.なお,本種の生息環境保全の観点から,本稿では採集場所の詳細については明記しない.
標本 FAKU 208280,100.9mm SL,沖縄県中頭郡北谷町の河川,2020年11月14日,タモ網,岸田岳大採集;KPM-NI 66270,98.1mm SL,沖縄県国頭郡国頭村の河川,2021年2月25日,タモ網,佐藤宏樹採集.
記載 体は前後方向に直線状に長く,尾鰭を除いた尾部は躯幹部より長い.躯幹部および尾部は複数の体輪に覆われる.各隆起線の外縁は円滑で,躯幹部上隆起線,躯幹部中央隆起線および尾部上隆起線の外縁は鋸歯状の微細構造を伴う.吻背面の中央隆起線は上顎後方から眼の前縁にかけて発達し,眼上隆起線とは連続しない.吻側面の中央隆起線は明瞭で,口の後方から眼の後縁下をわずかに越える.主鰓蓋骨の縦走隆起線は明瞭で,下方に2本の補助隆起線を伴う.躯幹部と尾部の上隆起線および下隆起線はそれぞれ不連続.躯幹部の中央隆起線は明瞭で,肛門輪で下方へ曲がり尾部の下隆起線に連続する.躯幹部腹面中央隆起線は第1躯幹輪腹面の前端から肛門前方にかけて発達する.躯幹部側面の中間板は縦走隆起線を伴うが,背方部では明瞭であるのに対して腹方部では不明瞭である.尾部上隆起線は背鰭後端で体輪の上縁から離れるが,そのまま肛門輪まで延長する.尾部の各中間板は明瞭な縦走隆起線を伴い,各縦走隆起線が連続して尾部側面中央部に一連の隆起線を形成する.臀鰭は小さく,肛門輪と第1尾輪の境界部腹面に位置する.尾鰭はよく発達し,鰭膜は深く切れ込む.
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タニヨウジはどこを主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されていますか。
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タニヨウジは河川の河口域から渓流域を主な生息地とする両側回遊性魚類と推測されています。
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JCRRAG_001510
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生物学
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ヒトの遺伝子の数は2万1306個
・当初は10万個あると思われていたヒト遺伝子
1980年当初は、ギルバートによって遺伝子数は10万個ほどであろうとの推測が立てられていました。これは、ヒトの遺伝子の平均的な大きさ3×104塩基対とヒトゲノムの大きさ3×109塩基対から概算したもので、10万という数字は切りも良く、論文や教科書に広く引用されるようになりました。
しかし、2003年にヒトゲノムが解読され、ヒト遺伝子の数は3万5千個ほどであるとの報告がなされました。さらに数年後には、ヒト遺伝子の数は2万個~2万4千個ほどしかないと大幅な訂正がなされました。
2018年には、米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒト遺伝子の数が現時点で2万1306個になると発表しました。
ちなみにこの2万個1306個という数は生物界では決して多い遺伝子数ではありません。寄生虫であるセンチュウですら約2万個の遺伝子を持っています。マウスは2万2千個、イネやトウモロコシは4万5千個ほどもあります。
・遺伝子の数だけが重要なのではない
当初、人間が2万個ほどしか遺伝子を持っていないと分かった時は、ショックを受けた人が多くいました。人間のような複雑な生物が、センチュウと同じ遺伝子数というのが気に食わなかったようです。
しかし、その後研究により、ヒトの体では選択的スプライシングが活発に行われていることが判明しました。選択的スプライシングとは、1つの遺伝子から複数のmRNAを合成できるスプライシングのことです。
また、チンパンジーとの遺伝子の比較により、遺伝子の数(種類)そのものではなく、その遺伝子の発現の仕方の方が重要であることもわかってきました。
遺伝子の数(種類)というハード面だけでなく、それぞれの遺伝子がどのように作用し合い発現が調節されているのかというソフト面を今後は研究していく必要があります。
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センチュウは約何個の遺伝子を持っていますか。
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センチュウは約2万個の遺伝子を持っています。
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JCRRAG_001511
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生物学
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材料および方法
著者らは2020年8月21–23日に新潟県佐渡市の東側に位置する加茂湖(周囲約17km)に面する樹崎神社(38°03'43.4"N 138°25'49.9"E)の境内(約25m四方)において、アカテガニの巣穴調査を実施した。調査はすべて日中に実施し、調査期間中の天候は晴れ、気温は33–36℃であった。境内を歩いて回り、目視にて地面に形成される直径20mm以上の巣穴構造をアカテガニ巣穴と定義した。佐渡島にはアカテガニと近縁で一般的に生息環境の重複が知られるベンケイガニとクロベンケイガニの生息も報告されており(伊藤・本間2001)、島の北東部にある達者地区ではこれら3種が同所的に観察される(Toyota et al.2023)。本研究の調査地である加茂湖周辺にも著者らのこれまでの調査からアカテガニに加えてクロベンケイガニとベンケイガニの生息は確認しているが、樹崎神社の境内とその周辺ではクロベンケイガニとベンケイガニは観察されていない。先行研究からもクロベンケイガニは天候に関わらず、沢と海岸林下部の湿った植生で主に活動していることが報告されており(伊藤ら2011)、樹崎神社境内はクロベンケイガニの営巣地には適していないと考えられる。樹崎神社の境内とその周辺の水辺に面した岸壁にはアカテガニとカクベンケイガニ Parasesarma pictum が優占しているが、カクベンケイガニは陸地に巣穴を形成せず、岩の隙間などに身を隠していることから、境内にある巣穴はアカテガニによって形成されたものと考えられた。
発見したアカテガニ巣穴の近くに視認性向上のためピンクテープを付したペグを用いてマーキングした。境内にある樹木を「生木」と「根元だけの枯木(切株や倒壊後の根元部分を含む)」に分けて、幹部から半径1mの円周内にある巣穴数を全ての生木/枯木について集計した。本調査では、幹部から半径1m以内で重複する別の樹木には巣穴は見られなかった。2020年10月9日に境内にあるすべての生木(126株)について、幹や葉の形態に基づいた種同定を実施した。
目視にてアカテガニが確認できた巣穴については、巣穴入り口部の直径をデジタルノギスで測定した。その後、徒手やヒバサミを使用して巣穴内部のアカテガニの捕獲を試み、捕獲できた個体については雌雄と抱卵の有無を確認し、甲幅長(carapacewidth:CW)をデジタルノギスで測定した。計測後のアカテガニは捕獲地点に放逐した。巣穴の直径について、生木/枯木あるいは生木の場合は樹種、そして捕獲されたアカテガニのCWを共変量とした共分散分析を実施した(JMP Pro18, SAS Institute Inc.)。
結果および考察
樹崎神社境内には126株の生木と43株の根元だけの枯木があり、そのうち幹根元を基点として半径1mの円周内にある全ての巣穴について、株毎に計数した。その結果、27株(21.4%)の生木と18株(41.8%)の枯木根元周辺にアカテガニの巣穴があった。枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、枯死した幹の内部に造巣している事例も見られた。アカテガニの巣穴は、生木周辺から69個、枯木周辺から50個、そして生木/枯木のない裸地から3地点(巣穴を中心として半径1m以内を1地点とした)4個であった。先行研究から、本種は裸地状態の平地は造巣地として利用しないことが報告されており(稲飯ら2014)、本研究もその結果を支持した。生木と比較して枯木根元に巣穴が多く見られたが、その全てが根元に隣接、あるいは枯死した幹内部に巣穴が形成されていた。また、巣穴内部にアカテガニが視認できた巣穴は、生木で52地点(巣穴利用率:75.3%)、枯木で41地点(巣穴利用率:82.0%)であった。以上のことから、本調査で確認した直径20mm以上の巣穴はアカテガニのものと判断した。
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枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、何の内部に造巣している事例も見られましたか。
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枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、枯死した幹の内部に造巣している事例も見られました。
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JCRRAG_001512
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生物学
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緒言
アカテガニ Chiromantes haematocheir は、十脚目ベンケイガニ科に属する半陸生カニの一種であり、国内では青森県以南の海岸や河口近くの林縁部に生息する(酒井1976; 三宅1982; 柚原・鈴木2021)。本種は水圏に近い陸域で活動する一方で、抱卵雌は幼生の孵化が近づくと海岸や河口域周辺に移動し水中にゾエア幼生を放出する。このアカテガニの幼生放出行動のタイミングは、日周性(昼夜)、潮汐性(満潮・干潮)、あるいは月周期(満月・新月)といった周期的な環境要因によって調節される(Saigusa and Hidaka1978; Saigusa1981)。海水中に放出されたゾエア幼生は、プランクトン生活を送り、沿岸部で成長しながら汽水域に移動し、メガロパ幼生へと変態する(小林2000; 村山ら2019)。本種は孵化後、ゾエア5期とメガロパ1期を経て稚ガニになり(北見・本間1981; 小林2000; Matsumoto et al.2020; 村山ら2019; Toyota et al.2023)、水中環境から陸上環境へと移動すると考えられる。このように、アカテガニは生活史の中で海・川・森・里それぞれの領域が隣接していることを必要とするため、森里川海の環境保全のシンボル種となっている。
近年、海岸や河川における護岸を目的としたコンクリートによる埋め立てや、陸域の造巣地と幼生放出時に利用する海岸との間に道路が敷かれ、雌親のゾエア幼生の放出が妨げられるなどして、アカテガニの個体数が全国で急減している(荒川2022; 岡野ら2019)。このような背景のもと、近年ではアカテガニの保全を目的としたビオトープ造成(近藤ら2017)や、本種を指標種に据えた都市公園緑地の景観構成要素の評価手法などが提案されている(稲飯ら2014)。アカテガニは近縁のクロベンケイガニ Orisarma dehaani やベンケイガニ O.intermedium よりも高い乾燥耐性を有しており、より内陸地での生息が可能となっている(Saigusa1978)。また、本種は地面だけでなく樹洞を巣として利用したり、樹上に登る行動が頻繁に観察されている(柳井2017)。木登りは特に雨天時に顕著であり、その理由として樹幹を伝う雨水を呼吸に利用していると考えられている(柳井2017)。アカテガニに好適な生息環境は、都市公園内などの人工物のある環境下では調査されており、森林沿いにある人工水路や裸地状態の平地は全く利用しないこと、森林内では巣穴を掘るよりも石垣の空隙をよく利用することなどが明らかになっている(稲飯ら2014)。人工物の利用が難しい天然の環境では、本種は、ヨシなどの植物の根元や落葉の間などに直径数cmの穴を掘って巣穴として利用しており、その内部は複雑に入り組んでいる(北見・本間1981)。捕食者などの接近により巣穴に避難する際は、自身のものに限らず身近な巣穴を利用すると考えられるが、ある程度の巣穴への選好性が認められている(北見・本間1981)。アカテガニの造巣地周辺の植物相が記載されている先行研究はあるが(稲飯2014; 北見・本間1981; 岡野ら2019)、それらの造巣地としての選好性については詳しく調べられていない。
新潟県佐渡市(佐渡島)にある加茂湖(海と繋がった汽水湖であり新潟県の最大の湖)は、長江川や貝喰川、外城川などに代表される大小13本の流入河川を擁する汽水湖であるが(加茂湖自然環境調査研究グループ1998)、海との接続によって、湖内はほぼ海水であり、牡蠣養殖などの漁業が盛んである。湖畔にはヨシ原が点在し、一部には冬季に干潟のように干出する場所も存在する。我々は加茂湖に面した樹崎神社の境内にアカテガニの巣穴が多く見られること、その多くは神社家屋や石碑周辺ではなく境内にある生木や枯木の根本周辺に集中していることを発見した。これまでに、アカテガニの保全を目的とした公園緑地の効果を評価する活動の中で、草本や木本が生い茂る環境で本種の観察事例が多いことは報告されてきたが(稲飯ら2014; 岡野ら2019)、本種の巣穴形成に関する環境についてはこれまで報告例がない。そこで本研究では、アカテガニが土を掘って巣穴を形成する際に樹木への選好性が存在するのかを明らかにすることを目的に、樹崎神社の境内のすべての生木の同定とアカテガニ巣穴数の関連を調査した。
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アカテガニは、何科に属する半陸生カニの一種ですか。
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アカテガニは、ベンケイガニ科に属する半陸生カニの一種です。
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JCRRAG_001513
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生物学
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緒言
アカテガニ Chiromantes haematocheir は、十脚目ベンケイガニ科に属する半陸生カニの一種であり、国内では青森県以南の海岸や河口近くの林縁部に生息する(酒井1976; 三宅1982; 柚原・鈴木2021)。本種は水圏に近い陸域で活動する一方で、抱卵雌は幼生の孵化が近づくと海岸や河口域周辺に移動し水中にゾエア幼生を放出する。このアカテガニの幼生放出行動のタイミングは、日周性(昼夜)、潮汐性(満潮・干潮)、あるいは月周期(満月・新月)といった周期的な環境要因によって調節される(Saigusa and Hidaka1978; Saigusa1981)。海水中に放出されたゾエア幼生は、プランクトン生活を送り、沿岸部で成長しながら汽水域に移動し、メガロパ幼生へと変態する(小林2000; 村山ら2019)。本種は孵化後、ゾエア5期とメガロパ1期を経て稚ガニになり(北見・本間1981; 小林2000; Matsumoto et al.2020; 村山ら2019; Toyota et al.2023)、水中環境から陸上環境へと移動すると考えられる。このように、アカテガニは生活史の中で海・川・森・里それぞれの領域が隣接していることを必要とするため、森里川海の環境保全のシンボル種となっている。
近年、海岸や河川における護岸を目的としたコンクリートによる埋め立てや、陸域の造巣地と幼生放出時に利用する海岸との間に道路が敷かれ、雌親のゾエア幼生の放出が妨げられるなどして、アカテガニの個体数が全国で急減している(荒川2022; 岡野ら2019)。このような背景のもと、近年ではアカテガニの保全を目的としたビオトープ造成(近藤ら2017)や、本種を指標種に据えた都市公園緑地の景観構成要素の評価手法などが提案されている(稲飯ら2014)。アカテガニは近縁のクロベンケイガニ Orisarma dehaani やベンケイガニ O.intermedium よりも高い乾燥耐性を有しており、より内陸地での生息が可能となっている(Saigusa1978)。また、本種は地面だけでなく樹洞を巣として利用したり、樹上に登る行動が頻繁に観察されている(柳井2017)。木登りは特に雨天時に顕著であり、その理由として樹幹を伝う雨水を呼吸に利用していると考えられている(柳井2017)。アカテガニに好適な生息環境は、都市公園内などの人工物のある環境下では調査されており、森林沿いにある人工水路や裸地状態の平地は全く利用しないこと、森林内では巣穴を掘るよりも石垣の空隙をよく利用することなどが明らかになっている(稲飯ら2014)。人工物の利用が難しい天然の環境では、本種は、ヨシなどの植物の根元や落葉の間などに直径数cmの穴を掘って巣穴として利用しており、その内部は複雑に入り組んでいる(北見・本間1981)。捕食者などの接近により巣穴に避難する際は、自身のものに限らず身近な巣穴を利用すると考えられるが、ある程度の巣穴への選好性が認められている(北見・本間1981)。アカテガニの造巣地周辺の植物相が記載されている先行研究はあるが(稲飯2014; 北見・本間1981; 岡野ら2019)、それらの造巣地としての選好性については詳しく調べられていない。
新潟県佐渡市(佐渡島)にある加茂湖(海と繋がった汽水湖であり新潟県の最大の湖)は、長江川や貝喰川、外城川などに代表される大小13本の流入河川を擁する汽水湖であるが(加茂湖自然環境調査研究グループ1998)、海との接続によって、湖内はほぼ海水であり、牡蠣養殖などの漁業が盛んである。湖畔にはヨシ原が点在し、一部には冬季に干潟のように干出する場所も存在する。我々は加茂湖に面した樹崎神社の境内にアカテガニの巣穴が多く見られること、その多くは神社家屋や石碑周辺ではなく境内にある生木や枯木の根本周辺に集中していることを発見した。これまでに、アカテガニの保全を目的とした公園緑地の効果を評価する活動の中で、草本や木本が生い茂る環境で本種の観察事例が多いことは報告されてきたが(稲飯ら2014; 岡野ら2019)、本種の巣穴形成に関する環境についてはこれまで報告例がない。そこで本研究では、アカテガニが土を掘って巣穴を形成する際に樹木への選好性が存在するのかを明らかにすることを目的に、樹崎神社の境内のすべての生木の同定とアカテガニ巣穴数の関連を調査した。
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アカテガニの抱卵雌は、幼生の孵化が近づくと、水中に何を放出しますか。
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アカテガニの抱卵雌は、幼生の孵化が近づくと、水中にゾエア幼生を放出します。
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JCRRAG_001514
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生物学
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材料および方法
著者らは2020年8月21–23日に新潟県佐渡市の東側に位置する加茂湖(周囲約17km)に面する樹崎神社(38°03'43.4"N 138°25'49.9"E)の境内(約25m四方)において、アカテガニの巣穴調査を実施した。調査はすべて日中に実施し、調査期間中の天候は晴れ、気温は33–36℃であった。境内を歩いて回り、目視にて地面に形成される直径20mm以上の巣穴構造をアカテガニ巣穴と定義した。佐渡島にはアカテガニと近縁で一般的に生息環境の重複が知られるベンケイガニとクロベンケイガニの生息も報告されており(伊藤・本間2001)、島の北東部にある達者地区ではこれら3種が同所的に観察される(Toyota et al.2023)。本研究の調査地である加茂湖周辺にも著者らのこれまでの調査からアカテガニに加えてクロベンケイガニとベンケイガニの生息は確認しているが、樹崎神社の境内とその周辺ではクロベンケイガニとベンケイガニは観察されていない。先行研究からもクロベンケイガニは天候に関わらず、沢と海岸林下部の湿った植生で主に活動していることが報告されており(伊藤ら2011)、樹崎神社境内はクロベンケイガニの営巣地には適していないと考えられる。樹崎神社の境内とその周辺の水辺に面した岸壁にはアカテガニとカクベンケイガニ Parasesarma pictum が優占しているが、カクベンケイガニは陸地に巣穴を形成せず、岩の隙間などに身を隠していることから、境内にある巣穴はアカテガニによって形成されたものと考えられた。
発見したアカテガニ巣穴の近くに視認性向上のためピンクテープを付したペグを用いてマーキングした。境内にある樹木を「生木」と「根元だけの枯木(切株や倒壊後の根元部分を含む)」に分けて、幹部から半径1mの円周内にある巣穴数を全ての生木/枯木について集計した。本調査では、幹部から半径1m以内で重複する別の樹木には巣穴は見られなかった。2020年10月9日に境内にあるすべての生木(126株)について、幹や葉の形態に基づいた種同定を実施した。
目視にてアカテガニが確認できた巣穴については、巣穴入り口部の直径をデジタルノギスで測定した。その後、徒手やヒバサミを使用して巣穴内部のアカテガニの捕獲を試み、捕獲できた個体については雌雄と抱卵の有無を確認し、甲幅長(carapacewidth:CW)をデジタルノギスで測定した。計測後のアカテガニは捕獲地点に放逐した。巣穴の直径について、生木/枯木あるいは生木の場合は樹種、そして捕獲されたアカテガニのCWを共変量とした共分散分析を実施した(JMP Pro18, SAS Institute Inc.)。
結果および考察
樹崎神社境内には126株の生木と43株の根元だけの枯木があり、そのうち幹根元を基点として半径1mの円周内にある全ての巣穴について、株毎に計数した。その結果、27株(21.4%)の生木と18株(41.8%)の枯木根元周辺にアカテガニの巣穴があった。枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、枯死した幹の内部に造巣している事例も見られた。アカテガニの巣穴は、生木周辺から69個、枯木周辺から50個、そして生木/枯木のない裸地から3地点(巣穴を中心として半径1m以内を1地点とした)4個であった。先行研究から、本種は裸地状態の平地は造巣地として利用しないことが報告されており(稲飯ら2014)、本研究もその結果を支持した。生木と比較して枯木根元に巣穴が多く見られたが、その全てが根元に隣接、あるいは枯死した幹内部に巣穴が形成されていた。また、巣穴内部にアカテガニが視認できた巣穴は、生木で52地点(巣穴利用率:75.3%)、枯木で41地点(巣穴利用率:82.0%)であった。以上のことから、本調査で確認した直径20mm以上の巣穴はアカテガニのものと判断した。
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佐渡島には何の生息も報告されていますか。
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佐渡島にはベンケイガニとクロベンケイガニの生息も報告されています。
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JCRRAG_001515
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生物学
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通常の牛乳に含まれるA1型β-カゼインは,アミノ酸配列の60番目から66番目にTyr-Pro-Phe-Pro-Gly-Pro-Ileという配列をもつが,ペプシンやトリプシンの作用等によりこの部分が切り出されると生理活性ペプチドであるβ-カソモルフィン-7(BCM-7)が生成され,このBCM-7が腸管で炎症を引き起こすと推定されている.一方,A2型β-カゼインは,67番目のアミノ酸がHisからProに置換されていることから,酵素が作用しにくく,BCM-7が生成されない.そのため,A2ミルクはBCM-7を介した不快症状が起きにくいということから,「おなかにやさしい牛乳」とされている.
しかし,行き過ぎた訴求や科学的に誤った解釈や誤解を避けるため,「A2ミルク」を用いた臨床研究がいくつか行われており,いずれも通常の牛乳の摂取で発現する消化器症状がA2ミルクの摂取では起こらなかったと報告している.また,これらの研究では,乳糖不耐症を示す被験者に対しても,A2ミルクは不快症状が現れないと報告されている.しかし,どのようなメカニズムで不快症状を緩和しているのか,科学的根拠は得られていないが,そもそも消化器不快症状は乳糖そのものではなく,BCM-7が関連している可能性があるとされている.これらのことから,A2ミルクは,乳糖不耐症も緩和される次世代型の牛乳として期待が高まりつつある.
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どんな症状が、乳糖そのものではなく、BCM-7が関連している可能性があるとされていますか。
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消化器不快症状が、乳糖そのものではなく、BCM-7が関連している可能性があるとされています。
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JCRRAG_001516
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生物学
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材料および方法
著者らは2020年8月21–23日に新潟県佐渡市の東側に位置する加茂湖(周囲約17km)に面する樹崎神社(38°03'43.4"N 138°25'49.9"E)の境内(約25m四方)において、アカテガニの巣穴調査を実施した。調査はすべて日中に実施し、調査期間中の天候は晴れ、気温は33–36℃であった。境内を歩いて回り、目視にて地面に形成される直径20mm以上の巣穴構造をアカテガニ巣穴と定義した。佐渡島にはアカテガニと近縁で一般的に生息環境の重複が知られるベンケイガニとクロベンケイガニの生息も報告されており(伊藤・本間2001)、島の北東部にある達者地区ではこれら3種が同所的に観察される(Toyota et al.2023)。本研究の調査地である加茂湖周辺にも著者らのこれまでの調査からアカテガニに加えてクロベンケイガニとベンケイガニの生息は確認しているが、樹崎神社の境内とその周辺ではクロベンケイガニとベンケイガニは観察されていない。先行研究からもクロベンケイガニは天候に関わらず、沢と海岸林下部の湿った植生で主に活動していることが報告されており(伊藤ら2011)、樹崎神社境内はクロベンケイガニの営巣地には適していないと考えられる。樹崎神社の境内とその周辺の水辺に面した岸壁にはアカテガニとカクベンケイガニ Parasesarma pictum が優占しているが、カクベンケイガニは陸地に巣穴を形成せず、岩の隙間などに身を隠していることから、境内にある巣穴はアカテガニによって形成されたものと考えられた。
発見したアカテガニ巣穴の近くに視認性向上のためピンクテープを付したペグを用いてマーキングした。境内にある樹木を「生木」と「根元だけの枯木(切株や倒壊後の根元部分を含む)」に分けて、幹部から半径1mの円周内にある巣穴数を全ての生木/枯木について集計した。本調査では、幹部から半径1m以内で重複する別の樹木には巣穴は見られなかった。2020年10月9日に境内にあるすべての生木(126株)について、幹や葉の形態に基づいた種同定を実施した。
目視にてアカテガニが確認できた巣穴については、巣穴入り口部の直径をデジタルノギスで測定した。その後、徒手やヒバサミを使用して巣穴内部のアカテガニの捕獲を試み、捕獲できた個体については雌雄と抱卵の有無を確認し、甲幅長(carapacewidth:CW)をデジタルノギスで測定した。計測後のアカテガニは捕獲地点に放逐した。巣穴の直径について、生木/枯木あるいは生木の場合は樹種、そして捕獲されたアカテガニのCWを共変量とした共分散分析を実施した(JMP Pro18, SAS Institute Inc.)。
結果および考察
樹崎神社境内には126株の生木と43株の根元だけの枯木があり、そのうち幹根元を基点として半径1mの円周内にある全ての巣穴について、株毎に計数した。その結果、27株(21.4%)の生木と18株(41.8%)の枯木根元周辺にアカテガニの巣穴があった。枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、枯死した幹の内部に造巣している事例も見られた。アカテガニの巣穴は、生木周辺から69個、枯木周辺から50個、そして生木/枯木のない裸地から3地点(巣穴を中心として半径1m以内を1地点とした)4個であった。先行研究から、本種は裸地状態の平地は造巣地として利用しないことが報告されており(稲飯ら2014)、本研究もその結果を支持した。生木と比較して枯木根元に巣穴が多く見られたが、その全てが根元に隣接、あるいは枯死した幹内部に巣穴が形成されていた。また、巣穴内部にアカテガニが視認できた巣穴は、生木で52地点(巣穴利用率:75.3%)、枯木で41地点(巣穴利用率:82.0%)であった。以上のことから、本調査で確認した直径20mm以上の巣穴はアカテガニのものと判断した。
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クロベンケイガニは天候に関わらず、どこで主に活動していることが報告されていますか。
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クロベンケイガニは天候に関わらず、沢と海岸林下部の湿った植生で主に活動していることが報告されています。
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JCRRAG_001517
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生物学
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材料および方法
著者らは2020年8月21–23日に新潟県佐渡市の東側に位置する加茂湖(周囲約17km)に面する樹崎神社(38°03'43.4"N 138°25'49.9"E)の境内(約25m四方)において、アカテガニの巣穴調査を実施した。調査はすべて日中に実施し、調査期間中の天候は晴れ、気温は33–36℃であった。境内を歩いて回り、目視にて地面に形成される直径20mm以上の巣穴構造をアカテガニ巣穴と定義した。佐渡島にはアカテガニと近縁で一般的に生息環境の重複が知られるベンケイガニとクロベンケイガニの生息も報告されており(伊藤・本間2001)、島の北東部にある達者地区ではこれら3種が同所的に観察される(Toyota et al.2023)。本研究の調査地である加茂湖周辺にも著者らのこれまでの調査からアカテガニに加えてクロベンケイガニとベンケイガニの生息は確認しているが、樹崎神社の境内とその周辺ではクロベンケイガニとベンケイガニは観察されていない。先行研究からもクロベンケイガニは天候に関わらず、沢と海岸林下部の湿った植生で主に活動していることが報告されており(伊藤ら2011)、樹崎神社境内はクロベンケイガニの営巣地には適していないと考えられる。樹崎神社の境内とその周辺の水辺に面した岸壁にはアカテガニとカクベンケイガニ Parasesarma pictum が優占しているが、カクベンケイガニは陸地に巣穴を形成せず、岩の隙間などに身を隠していることから、境内にある巣穴はアカテガニによって形成されたものと考えられた。
発見したアカテガニ巣穴の近くに視認性向上のためピンクテープを付したペグを用いてマーキングした。境内にある樹木を「生木」と「根元だけの枯木(切株や倒壊後の根元部分を含む)」に分けて、幹部から半径1mの円周内にある巣穴数を全ての生木/枯木について集計した。本調査では、幹部から半径1m以内で重複する別の樹木には巣穴は見られなかった。2020年10月9日に境内にあるすべての生木(126株)について、幹や葉の形態に基づいた種同定を実施した。
目視にてアカテガニが確認できた巣穴については、巣穴入り口部の直径をデジタルノギスで測定した。その後、徒手やヒバサミを使用して巣穴内部のアカテガニの捕獲を試み、捕獲できた個体については雌雄と抱卵の有無を確認し、甲幅長(carapacewidth:CW)をデジタルノギスで測定した。計測後のアカテガニは捕獲地点に放逐した。巣穴の直径について、生木/枯木あるいは生木の場合は樹種、そして捕獲されたアカテガニのCWを共変量とした共分散分析を実施した(JMP Pro18, SAS Institute Inc.)。
結果および考察
樹崎神社境内には126株の生木と43株の根元だけの枯木があり、そのうち幹根元を基点として半径1mの円周内にある全ての巣穴について、株毎に計数した。その結果、27株(21.4%)の生木と18株(41.8%)の枯木根元周辺にアカテガニの巣穴があった。枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、枯死した幹の内部に造巣している事例も見られた。アカテガニの巣穴は、生木周辺から69個、枯木周辺から50個、そして生木/枯木のない裸地から3地点(巣穴を中心として半径1m以内を1地点とした)4個であった。先行研究から、本種は裸地状態の平地は造巣地として利用しないことが報告されており(稲飯ら2014)、本研究もその結果を支持した。生木と比較して枯木根元に巣穴が多く見られたが、その全てが根元に隣接、あるいは枯死した幹内部に巣穴が形成されていた。また、巣穴内部にアカテガニが視認できた巣穴は、生木で52地点(巣穴利用率:75.3%)、枯木で41地点(巣穴利用率:82.0%)であった。以上のことから、本調査で確認した直径20mm以上の巣穴はアカテガニのものと判断した。
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アカテガニとカクベンケイガニが優占しているのはどのようなところですか。
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アカテガニとカクベンケイガニが優占しているのは樹崎神社の境内とその周辺の水辺に面した岸壁です。
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JCRRAG_001518
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生物学
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材料および方法
著者らは2020年8月21–23日に新潟県佐渡市の東側に位置する加茂湖(周囲約17km)に面する樹崎神社(38°03'43.4"N 138°25'49.9"E)の境内(約25m四方)において、アカテガニの巣穴調査を実施した。調査はすべて日中に実施し、調査期間中の天候は晴れ、気温は33–36℃であった。境内を歩いて回り、目視にて地面に形成される直径20mm以上の巣穴構造をアカテガニ巣穴と定義した。佐渡島にはアカテガニと近縁で一般的に生息環境の重複が知られるベンケイガニとクロベンケイガニの生息も報告されており(伊藤・本間2001)、島の北東部にある達者地区ではこれら3種が同所的に観察される(Toyota et al.2023)。本研究の調査地である加茂湖周辺にも著者らのこれまでの調査からアカテガニに加えてクロベンケイガニとベンケイガニの生息は確認しているが、樹崎神社の境内とその周辺ではクロベンケイガニとベンケイガニは観察されていない。先行研究からもクロベンケイガニは天候に関わらず、沢と海岸林下部の湿った植生で主に活動していることが報告されており(伊藤ら2011)、樹崎神社境内はクロベンケイガニの営巣地には適していないと考えられる。樹崎神社の境内とその周辺の水辺に面した岸壁にはアカテガニとカクベンケイガニ Parasesarma pictum が優占しているが、カクベンケイガニは陸地に巣穴を形成せず、岩の隙間などに身を隠していることから、境内にある巣穴はアカテガニによって形成されたものと考えられた。
発見したアカテガニ巣穴の近くに視認性向上のためピンクテープを付したペグを用いてマーキングした。境内にある樹木を「生木」と「根元だけの枯木(切株や倒壊後の根元部分を含む)」に分けて、幹部から半径1mの円周内にある巣穴数を全ての生木/枯木について集計した。本調査では、幹部から半径1m以内で重複する別の樹木には巣穴は見られなかった。2020年10月9日に境内にあるすべての生木(126株)について、幹や葉の形態に基づいた種同定を実施した。
目視にてアカテガニが確認できた巣穴については、巣穴入り口部の直径をデジタルノギスで測定した。その後、徒手やヒバサミを使用して巣穴内部のアカテガニの捕獲を試み、捕獲できた個体については雌雄と抱卵の有無を確認し、甲幅長(carapacewidth:CW)をデジタルノギスで測定した。計測後のアカテガニは捕獲地点に放逐した。巣穴の直径について、生木/枯木あるいは生木の場合は樹種、そして捕獲されたアカテガニのCWを共変量とした共分散分析を実施した(JMP Pro18, SAS Institute Inc.)。
結果および考察
樹崎神社境内には126株の生木と43株の根元だけの枯木があり、そのうち幹根元を基点として半径1mの円周内にある全ての巣穴について、株毎に計数した。その結果、27株(21.4%)の生木と18株(41.8%)の枯木根元周辺にアカテガニの巣穴があった。枯木根元を利用した巣穴は、根本周辺だけでなく、枯死した幹の内部に造巣している事例も見られた。アカテガニの巣穴は、生木周辺から69個、枯木周辺から50個、そして生木/枯木のない裸地から3地点(巣穴を中心として半径1m以内を1地点とした)4個であった。先行研究から、本種は裸地状態の平地は造巣地として利用しないことが報告されており(稲飯ら2014)、本研究もその結果を支持した。生木と比較して枯木根元に巣穴が多く見られたが、その全てが根元に隣接、あるいは枯死した幹内部に巣穴が形成されていた。また、巣穴内部にアカテガニが視認できた巣穴は、生木で52地点(巣穴利用率:75.3%)、枯木で41地点(巣穴利用率:82.0%)であった。以上のことから、本調査で確認した直径20mm以上の巣穴はアカテガニのものと判断した。
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本研究は、アカテガニがどこを造巣地として利用しないという結果を支持しましたか。
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本研究は、アカテガニが裸地状態の平地を造巣地として利用しないという結果を支持しました。
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JCRRAG_001519
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生物学
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、東アジア地域に分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類である。日本においては、北海道から九州、山間部から都市部、さらには海岸部等にまで広く分布し、津軽海峡を境に南にホンドタヌキNyctereutes procyonoides viverrinus 北にエゾタヌキNyctereutes procyonoides albus が生息している(Kauhala and Saeki, 2016)。タヌキは人間の生活圏の近くにも生息する身近な哺乳類として親しまれている一方、餌付けによる人馴れ(福井,2013;小島,2016)、農業被害(竹内・佐伯,2008)、衛生上の問題(村杉ほか,1996;内田ほか,1999)等の課題があることが指摘されている。近年、日本の様々な地域において、タヌキの疥癬症が流行している。日本におけるタヌキの疥癬症は、1981年に岐阜県で初めて感染個体が確認され(鈴木ほか,1981)、その後全国各地で疥癬症に感染した事例(以下、疥癬タヌキ)が報告されている(例えば、山本ほか,1998;落合ほか, 2003;松本ほか,2011;鈴木ほか,2020)。疥癬症は、ヒゼンダニ類が皮膚に寄生することで生じる掻痒性の皮膚病である。ヒゼンダニ類は宿主範囲が広く、人や愛玩動物、多くの野生哺乳類等において、疥癬症を発症させる(板垣・大石,1984)。種としてのセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei は宿主に対応した生理的変種に分かれ、タヌキに寄生して疥癬症を引き起こすイヌセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei var. canisは、ヒトに寄生することはほとんどないと考えられており(斎藤,2019)、愛玩動物であるネコFelis catusへの寄生も難しいとされる(Arlian et al. 1988)。しかし、センコウヒゼンダニによって引き起こされる野生動物の疥癬症例は数多く、タヌキのほかに、キツネVulpes vulpes、ハクビシンPaguma larvata、イノシシSus scrofa、ニホンカモシカCapriconis crispus、ニホンアナグマMeles anakuma、ニホンテンMartes melampus 等の日本に生息する様々な野生哺乳類種において感染が報告されている(塚田ほか,1999;落合ほか,2003;Makouloutou et al. 2015)。野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態は悪化する(Skerratt et al. 1999;Borchard et al. 2012)。ヒゼンダニ類は宿主の角質層にトンネルを掘ることで角質層を錯角化し(内川,2001;今井,2006)、痂皮形成や脱毛といった症状を引き起こす(Pence and Ueckermann, 2002)。重度感染した場合は、特に痂皮形成や炎症等によって生存や活動に必要なエネルギー量が増加し、健常個体よりも長時間にわたって採餌活動を行わなければならないこと(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005)、目の周りの皮膚が分厚くなり痂皮ができて視覚障害が生じること(Skerratt et al. 1999)、脱毛や痂皮形成によって毛皮による体温の維持管理能力が低下すること(内田ほか,2008)、体温を保つために必要な脂肪の蓄積量が変化すること(鈴木ほか,2020)等の理由により、夜行性の野生動物が昼間に活動するようになることが報告されている(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005;Borchard et al. 2012)。日本では、タヌキが比較的身近な野生哺乳類であることもあり、疥癬タヌキや疥癬タヌキに寄生しているヒゼンダニに関する研究は少なからず行われてきた(例えば、Saito and Koike, 2017;鈴木ほか,2020;杉浦,2020)。しかし、疥癬タヌキの昼間の活動に関しては目撃例等の定性的な記録に留まっており、定量的な報告はほとんどみられない。タヌキは人の生活圏に近い場所にも多く生息しており、さらにタヌキの疥癬症は都市部ほど感染率が高くなる傾向が指摘されている(Saito and Koike, 2017)。このような人の生活圏に近い場所にも生息するタヌキが疥癬症の影響によって昼間に活動することは、人や愛玩動物との遭遇頻度、ヒゼンダニ類やタヌキが媒介するウイルスの付着、拡大の機会を増加させることに直結し、様々な問題を引き起こす可能性がある。例えば、愛玩動物への疥癬症の伝播(鈴木ほか,1981)、人の生活圏へのヒゼンダニ類の侵入機会の増加といった公衆衛生上の問題や、疥癬症そのものの伝播以外にも、狂犬病等のより危険性が高いウイルスが日本に侵入した場合には、その感染の機会を拡大してしまう恐れ等が考えられる。そのため、疥癬タヌキの昼間の活動は、人獣共通感染症等、人と野生動物の共存を考える上で注意が必要となる可能性があり、事例を積み重ねていく必要がある。そこで本報告は、東京都西部の南多摩地域に位置する都市公園でのカメラトラップ調査によってタヌキの活動時間を定量的に評価し、疥癬タヌキの活動時間について基礎的な知見を得ることを目的とした。
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、どこに分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類ですか。
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、東アジア地域に分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類です。
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JCRRAG_001520
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生物学
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色彩 鮮時の色彩彩(KPM-NR 220147, 257251)は以下の通り.吻から尾部にかけた背面はあさい黄みのブラウン.躯幹部中央隆起線と尾部下隆起線上には黒い縁取りを伴った白色小斑点が並ぶ.躯幹部と尾部の体側はあさい黄みのブラウンを基調とするが,腹側は背側よりもやや淡い.眼から吻,鰓蓋後方,鰓蓋下部に向かう放射状に広がる灰みのブラウンの帯がある.躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には,黒い縁取りが伴った白色小斑点が並ぶ.吻側面,躯幹部中央隆起線の下方部,躯幹部上・下隆起線,尾部下隆起線および尾部側面中央部の隆起線にも同様の小斑点があるが,尾部末端では不明瞭である.躯幹部体側面の中央隆起線の上下につよい黄みのオレンジの不明瞭な斑が2列並ぶ.尾鰭の中央は灰みのブラウンで,透明の縁取りがある.背鰭軟条の中心部は透明で,あさい黄みのブラウンに縁取られる.
分布 西太平洋(日本,台湾,中国広東省,フィリピン,インドネシア,ポンペイ島,サモア諸島)から記録されている(Dawson,1985;周・高,2011;瀬能,2015;Haÿ et al.,2024a,b).ただし,後述の通りHaÿ et al.(2024b)によりジャワ島,バリ島,ロンボク島に分布する個体群は別種として記載されている.本種は日本国内では,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,薩南諸島(種子島・奄美大島),八重山諸島(石垣島・西表島)から記録されている[神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017(岩槻幸雄氏・投野隼人氏,私信);加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).したがって,本研究で得られた2標本は本種の沖縄島ならびに沖縄諸島からの初記録となる.
生息環境 FAKU 208280は,河口から約0.2km上流の地点において,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,採集時の水深は4050cmであった.同所からはオオウナギ Anguilla marmorata Quoy and Gaimard,1824,イッセンヨウジ Microphis leiaspis (Bleeker,1853),オオクチユゴイ Kuhlia rupestris (Lacepède,1802),タメトモハゼ Giuris tolsoni (Bleeker,1854),ヒナハゼ Redigobius bikolanus (Herre,1927)が採集された.
KPM-NI66270は,河口から約0.7km上流の右岸側で,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,水深は40–50cmで,水温は20.5℃であった.同所から魚類ではイッセンヨウジが,十脚甲殻類ではザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guérin-Méneville,1838),ツノナガヌマエビ Caridina grandirostris Stimpson,1860,ミゾレヌマエビ C. leucosticta Stimpson,1860,ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man,1892,ヌマエビ Paratya compressa(De Haan,1849)が採集された.
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躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には、何が並びますか。
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躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には、黒い縁取りが伴った白色小斑点が並びます。
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JCRRAG_001521
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生物学
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色彩 鮮時の色彩彩(KPM-NR 220147, 257251)は以下の通り.吻から尾部にかけた背面はあさい黄みのブラウン.躯幹部中央隆起線と尾部下隆起線上には黒い縁取りを伴った白色小斑点が並ぶ.躯幹部と尾部の体側はあさい黄みのブラウンを基調とするが,腹側は背側よりもやや淡い.眼から吻,鰓蓋後方,鰓蓋下部に向かう放射状に広がる灰みのブラウンの帯がある.躯幹部中央隆起線および尾部下隆起線には,黒い縁取りが伴った白色小斑点が並ぶ.吻側面,躯幹部中央隆起線の下方部,躯幹部上・下隆起線,尾部下隆起線および尾部側面中央部の隆起線にも同様の小斑点があるが,尾部末端では不明瞭である.躯幹部体側面の中央隆起線の上下につよい黄みのオレンジの不明瞭な斑が2列並ぶ.尾鰭の中央は灰みのブラウンで,透明の縁取りがある.背鰭軟条の中心部は透明で,あさい黄みのブラウンに縁取られる.
分布 西太平洋(日本,台湾,中国広東省,フィリピン,インドネシア,ポンペイ島,サモア諸島)から記録されている(Dawson,1985;周・高,2011;瀬能,2015;Haÿ et al.,2024a,b).ただし,後述の通りHaÿ et al.(2024b)によりジャワ島,バリ島,ロンボク島に分布する個体群は別種として記載されている.本種は日本国内では,静岡県,三重県,和歌山県,高知県,宮崎県,薩南諸島(種子島・奄美大島),八重山諸島(石垣島・西表島)から記録されている[神田ほか,2009;加藤,2010;吉郷,2014;瀬能,2015;Iwatsuki et al.,2017(岩槻幸雄氏・投野隼人氏,私信);加藤ほか,2020;酒井,2021;岡村ほか,2023;橋本ほか,2023).したがって,本研究で得られた2標本は本種の沖縄島ならびに沖縄諸島からの初記録となる.
生息環境 FAKU 208280は,河口から約0.2km上流の地点において,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,採集時の水深は4050cmであった.同所からはオオウナギ Anguilla marmorata Quoy and Gaimard,1824,イッセンヨウジ Microphis leiaspis (Bleeker,1853),オオクチユゴイ Kuhlia rupestris (Lacepède,1802),タメトモハゼ Giuris tolsoni (Bleeker,1854),ヒナハゼ Redigobius bikolanus (Herre,1927)が採集された.
KPM-NI66270は,河口から約0.7km上流の右岸側で,陸上植物の一部が水中に浸漬している部分で採集された.川底は砂礫からなり,水深は40–50cmで,水温は20.5℃であった.同所から魚類ではイッセンヨウジが,十脚甲殻類ではザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guérin-Méneville,1838),ツノナガヌマエビ Caridina grandirostris Stimpson,1860,ミゾレヌマエビ C. leucosticta Stimpson,1860,ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man,1892,ヌマエビ Paratya compressa(De Haan,1849)が採集された.
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本種は日本国内では、どこから記録されていますか。
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本種は日本国内では、静岡県、三重県、和歌山県、高知県、宮崎県、薩南諸島(種子島・奄美大島)、八重山諸島(石垣島・西表島)から記録されています。
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JCRRAG_001522
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生物学
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二次象牙質の蓄積量やセメント質の層構造などの、歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられる。しかし、現在のところ破壊的な観察方法しか存在しないため、CT撮影によりこれが非破壊的に観察可能かどうかを調べた。二次象牙質はその境界を明瞭には観察できなかったが、セメント質の層構造は、個体によっては、観察することができた。実験後の被写体を従来方法で観察し、今回の結果と比較することにより、従来から観察されてきた層構造と同一のものを、非破壊的に観察できていることが確認された。
キーワード: 象牙質、セメント質、年齢推定、CT
背景と研究目的:ヒトは、他の霊長類に比べ、突出して長寿である。食料生産や医療技術の発達を差し引いても、その長い寿命は、ヒトの、生物としての、大きな特徴である[1]。この特徴がどのように進化してきたのかを調べるには、過去の人類の寿命を明らかにする必要がある。化石標本から各個体の死亡時の年齢を調べ、その時代におけるヒトの生活史を復元することが、これを可能にする現在唯一の方法である。化石からその死亡時の年齢を推定する方法は様々あるが、中でも、歯の内部の微細構造を用いた方法は、他の方法にはない有利な点を備えている。たとえば、歯は人体で最も硬い組織であり、保存されやすく、標本数が確保されやすい。また、骨は一生の間に内部組織が常に置き換えられるのに対して、歯は既にある内部組織を保ったまま付加的に成長する。このため歯には、内部の微細構造に、個体が成長してきた記録が残されており、この点で、骨よりも年齢推定に適している。成熟個体に適用可能な、歯牙の微細構造を用いた方法として、二次象牙質を用いたものと、セメント質を用いたものが挙げられる。二次象牙質は、歯牙内腔の壁面に、一生を通じて徐々に蓄積される硬組織であり、その蓄積量が年齢を示す指標として用いられる。セメント質は、歯根の表面に、1年に1本形成されるといわれる層構造を作りながら蓄積し、この層の数が年齢推定に利用される。しかし、二次象牙質は、年齢との関連が低い一次象牙質と接しており、この境界が識別され、分離されなければ、年齢との高い相関を得ることは難しいと考えられる。実際、(大型放射光施設のX線を用いない)通常のマイクロCT(Computed Tomography)を用いた著者らの研究では、一次と二次の象牙質を分離することはできず、その合算体積(に相当する量)と年齢との間に、弱い相関を報告しているのみである[2]。また、セメント質の層構造を通常のマイクロCT撮影を用いて可視化に成功した例は、我々の知る限り、これまでに報告されておらず、著者らの予備的調査においても可視化することはできなかった。
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何などの歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられますか。
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二次象牙質の蓄積量やセメント質の層構造などの、歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられます。
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JCRRAG_001523
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生物学
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二次象牙質の蓄積量やセメント質の層構造などの、歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられる。しかし、現在のところ破壊的な観察方法しか存在しないため、CT撮影によりこれが非破壊的に観察可能かどうかを調べた。二次象牙質はその境界を明瞭には観察できなかったが、セメント質の層構造は、個体によっては、観察することができた。実験後の被写体を従来方法で観察し、今回の結果と比較することにより、従来から観察されてきた層構造と同一のものを、非破壊的に観察できていることが確認された。
キーワード: 象牙質、セメント質、年齢推定、CT
背景と研究目的:ヒトは、他の霊長類に比べ、突出して長寿である。食料生産や医療技術の発達を差し引いても、その長い寿命は、ヒトの、生物としての、大きな特徴である[1]。この特徴がどのように進化してきたのかを調べるには、過去の人類の寿命を明らかにする必要がある。化石標本から各個体の死亡時の年齢を調べ、その時代におけるヒトの生活史を復元することが、これを可能にする現在唯一の方法である。化石からその死亡時の年齢を推定する方法は様々あるが、中でも、歯の内部の微細構造を用いた方法は、他の方法にはない有利な点を備えている。たとえば、歯は人体で最も硬い組織であり、保存されやすく、標本数が確保されやすい。また、骨は一生の間に内部組織が常に置き換えられるのに対して、歯は既にある内部組織を保ったまま付加的に成長する。このため歯には、内部の微細構造に、個体が成長してきた記録が残されており、この点で、骨よりも年齢推定に適している。成熟個体に適用可能な、歯牙の微細構造を用いた方法として、二次象牙質を用いたものと、セメント質を用いたものが挙げられる。二次象牙質は、歯牙内腔の壁面に、一生を通じて徐々に蓄積される硬組織であり、その蓄積量が年齢を示す指標として用いられる。セメント質は、歯根の表面に、1年に1本形成されるといわれる層構造を作りながら蓄積し、この層の数が年齢推定に利用される。しかし、二次象牙質は、年齢との関連が低い一次象牙質と接しており、この境界が識別され、分離されなければ、年齢との高い相関を得ることは難しいと考えられる。実際、(大型放射光施設のX線を用いない)通常のマイクロCT(Computed Tomography)を用いた著者らの研究では、一次と二次の象牙質を分離することはできず、その合算体積(に相当する量)と年齢との間に、弱い相関を報告しているのみである[2]。また、セメント質の層構造を通常のマイクロCT撮影を用いて可視化に成功した例は、我々の知る限り、これまでに報告されておらず、著者らの予備的調査においても可視化することはできなかった。
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他の霊長類に比べ、突出して長寿なのは何ですか。
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他の霊長類に比べ、突出して長寿なのはヒトです。
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JCRRAG_001524
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生物学
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二次象牙質の蓄積量やセメント質の層構造などの、歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられる。しかし、現在のところ破壊的な観察方法しか存在しないため、CT撮影によりこれが非破壊的に観察可能かどうかを調べた。二次象牙質はその境界を明瞭には観察できなかったが、セメント質の層構造は、個体によっては、観察することができた。実験後の被写体を従来方法で観察し、今回の結果と比較することにより、従来から観察されてきた層構造と同一のものを、非破壊的に観察できていることが確認された。
キーワード: 象牙質、セメント質、年齢推定、CT
背景と研究目的:ヒトは、他の霊長類に比べ、突出して長寿である。食料生産や医療技術の発達を差し引いても、その長い寿命は、ヒトの、生物としての、大きな特徴である[1]。この特徴がどのように進化してきたのかを調べるには、過去の人類の寿命を明らかにする必要がある。化石標本から各個体の死亡時の年齢を調べ、その時代におけるヒトの生活史を復元することが、これを可能にする現在唯一の方法である。化石からその死亡時の年齢を推定する方法は様々あるが、中でも、歯の内部の微細構造を用いた方法は、他の方法にはない有利な点を備えている。たとえば、歯は人体で最も硬い組織であり、保存されやすく、標本数が確保されやすい。また、骨は一生の間に内部組織が常に置き換えられるのに対して、歯は既にある内部組織を保ったまま付加的に成長する。このため歯には、内部の微細構造に、個体が成長してきた記録が残されており、この点で、骨よりも年齢推定に適している。成熟個体に適用可能な、歯牙の微細構造を用いた方法として、二次象牙質を用いたものと、セメント質を用いたものが挙げられる。二次象牙質は、歯牙内腔の壁面に、一生を通じて徐々に蓄積される硬組織であり、その蓄積量が年齢を示す指標として用いられる。セメント質は、歯根の表面に、1年に1本形成されるといわれる層構造を作りながら蓄積し、この層の数が年齢推定に利用される。しかし、二次象牙質は、年齢との関連が低い一次象牙質と接しており、この境界が識別され、分離されなければ、年齢との高い相関を得ることは難しいと考えられる。実際、(大型放射光施設のX線を用いない)通常のマイクロCT(Computed Tomography)を用いた著者らの研究では、一次と二次の象牙質を分離することはできず、その合算体積(に相当する量)と年齢との間に、弱い相関を報告しているのみである[2]。また、セメント質の層構造を通常のマイクロCT撮影を用いて可視化に成功した例は、我々の知る限り、これまでに報告されておらず、著者らの予備的調査においても可視化することはできなかった。
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骨は一生の間に内部組織が常に置き換えられるのに対して、歯はどう成長しますか。
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骨は一生の間に内部組織が常に置き換えられるのに対して、歯は既にある内部組織を保ったまま付加的に成長します。
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JCRRAG_001525
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生物学
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二次象牙質の蓄積量やセメント質の層構造などの、歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられる。しかし、現在のところ破壊的な観察方法しか存在しないため、CT撮影によりこれが非破壊的に観察可能かどうかを調べた。二次象牙質はその境界を明瞭には観察できなかったが、セメント質の層構造は、個体によっては、観察することができた。実験後の被写体を従来方法で観察し、今回の結果と比較することにより、従来から観察されてきた層構造と同一のものを、非破壊的に観察できていることが確認された。
キーワード: 象牙質、セメント質、年齢推定、CT
背景と研究目的:ヒトは、他の霊長類に比べ、突出して長寿である。食料生産や医療技術の発達を差し引いても、その長い寿命は、ヒトの、生物としての、大きな特徴である[1]。この特徴がどのように進化してきたのかを調べるには、過去の人類の寿命を明らかにする必要がある。化石標本から各個体の死亡時の年齢を調べ、その時代におけるヒトの生活史を復元することが、これを可能にする現在唯一の方法である。化石からその死亡時の年齢を推定する方法は様々あるが、中でも、歯の内部の微細構造を用いた方法は、他の方法にはない有利な点を備えている。たとえば、歯は人体で最も硬い組織であり、保存されやすく、標本数が確保されやすい。また、骨は一生の間に内部組織が常に置き換えられるのに対して、歯は既にある内部組織を保ったまま付加的に成長する。このため歯には、内部の微細構造に、個体が成長してきた記録が残されており、この点で、骨よりも年齢推定に適している。成熟個体に適用可能な、歯牙の微細構造を用いた方法として、二次象牙質を用いたものと、セメント質を用いたものが挙げられる。二次象牙質は、歯牙内腔の壁面に、一生を通じて徐々に蓄積される硬組織であり、その蓄積量が年齢を示す指標として用いられる。セメント質は、歯根の表面に、1年に1本形成されるといわれる層構造を作りながら蓄積し、この層の数が年齢推定に利用される。しかし、二次象牙質は、年齢との関連が低い一次象牙質と接しており、この境界が識別され、分離されなければ、年齢との高い相関を得ることは難しいと考えられる。実際、(大型放射光施設のX線を用いない)通常のマイクロCT(Computed Tomography)を用いた著者らの研究では、一次と二次の象牙質を分離することはできず、その合算体積(に相当する量)と年齢との間に、弱い相関を報告しているのみである[2]。また、セメント質の層構造を通常のマイクロCT撮影を用いて可視化に成功した例は、我々の知る限り、これまでに報告されておらず、著者らの予備的調査においても可視化することはできなかった。
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二次象牙質はどこに一生を通じて徐々に蓄積される硬組織ですか。
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二次象牙質は、歯牙内腔の壁面に、一生を通じて徐々に蓄積される硬組織です。
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JCRRAG_001526
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生物学
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蜂蜜生産および授粉用昆虫として世界中で広く利用されてきたセイヨウミツバチApis melliferaは、近年、コロニー崩壊症候群(colony collapse disorder)による衰退が懸念されている(van Engelsdorp et al. 2009)。その原因として、ミツバチヘギイタダニの感染(Le Conte et al. 2010)、ノゼマ病(Higes et al. 2008)、ネオニコチノイド系農薬の使用(Blacquière et al. 2012)、気候変動等の複数の要因が複合的に影響していることが示唆されており(van Engelsdorp and Meixner 2010)、セイヨウミツバチの寄与する作物の授粉(調節サービス)のほか蜂蜜の生産(供給サービス)や野生植物の送粉(基盤サービス)といった生態系サービスの持続性が危ぶまれている(Ghazoul, 2005)。そのような養蜂事情の激変ともいえる変化が一つのきっかけとなり、在来のハナバチ類のポリネーターとしての機能の重要性に注目が集まっている(Winfree et al 2008)。日本では、セイヨウミツバチの導入以降衰退していた在来種のニホンミツバチApis cerana japonicaの養蜂に期待が寄せられるようになってきた(吉田 2000)。ニホンミツバチは、アジアに生息するトウヨウミツバチApis ceranaの1亜種(佐々木 1999)であり、日本では本州、四国、九州に生息し、奄美群島がその南限とされている(Takahashi et al. 2007)。セイヨウミツバチよりやや少ない数千~3万頭から成るコロニーを季節を通じて維持する(菅原 2005)。ニホンミツバチの養蜂は、セイヨウミツバチのそれとは異なり、野生個体群(ソース個体群)から分封群や捕獲群を飼育下に移して管理する。これらの飼育下のコロニー(シンク個体群)は、野生個体群の成長への寄与度は高くないため、持続可能な養蜂のためには、ソース個体群としての野生個体群が十分な大きさで維持されることが前提となる(Pulliam 1988)。ニホンミツバチの持続可能な養蜂を科学的にデザインする上では、野生個体群の大きさの推定に加え、養蜂に伴う人為干渉が野生個体群にもたらす影響を予測できるようにすることが必要である。また、ニホンミツバチの野生個体群の現状を正確に把握して、絶滅のリスク評価を行うためには、野生下における生態の理解が必要であるが、野生のニホンミツバチの生態に関する知見は、これまでに必ずしも十分に蓄積しているとはいえない(ポリネーター利用実態等調査委員会 2014)。ニホンミツバチの分布の南限域とされる奄美大島でも、最近ではニホンミツバチの養蜂への関心が高まりつつあり、養蜂のために本州・九州からニホンミツバチが持ち込まれているとの情報もある(奄美大島在住の養蜂家私信)。一方、奄美大島の宇検村で採集したニホンミツバチが本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つとの報告があり(Takahashi et al. 2007)、奄美大島のニホンミツバチが南限域の個体群であるだけでなく、遺伝的に隔離された地域個体群である可能性がある。著者らの予備的観察からも、奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズが小さいことが示唆されている。奄美大島は、固有の動物種を多く含む地史を特徴としており(環境省自然環境局生物多様性センター 2010)、奄美大島のニホンミツバチが保全の実践において配慮すべき独立した「保全単位」(本城ほか 2006)である可能性が高い。その保全上の価値を評価するためには、生態的特性を含む基礎的な生物学的情報を十分に得ることが必要である(鷲谷・矢原 1996)。ニホンミツバチは、草原を本来の生息場所とするセイヨウミツバチとは異なり、森林の資源により強く依存した生活を営むとされる(佐々木 1999, 2010)。東北地方の里地・里山地域における著者らの研究(藤原ほか 2014)からも、餌資源の多くを森林の植物に依存していることが明らかにされた。しかし、餌に関しては、ジェネラリストとしての性格が強く、作物や園芸植物、路傍の外来植物などもよく利用していた。営巣場所についてはスペシャリストとしての性格が強く、本来の営巣場所は広葉樹の大径木の樹洞であるとされている(佐々木 1999)。拡大造林によって針葉樹の人工林が森林面積の多くを占めるようになった現在では、広葉樹の大径木がほとんどない森林域が広がる地域が少なくない。人家の縁の下や屋根裏、人間が仕掛けた空の木箱への営巣は、森林域に不足している樹洞の代替物としての利用とみなすことができる(佐々木 1999)。
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セイヨウミツバチは近年、何による衰退が懸念されていますか。
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セイヨウミツバチは近年、コロニー崩壊症候群(colony collapse disorder)による衰退が懸念されています。
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JCRRAG_001527
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生物学
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蜂蜜生産および授粉用昆虫として世界中で広く利用されてきたセイヨウミツバチApis melliferaは、近年、コロニー崩壊症候群(colony collapse disorder)による衰退が懸念されている(van Engelsdorp et al. 2009)。その原因として、ミツバチヘギイタダニの感染(Le Conte et al. 2010)、ノゼマ病(Higes et al. 2008)、ネオニコチノイド系農薬の使用(Blacquière et al. 2012)、気候変動等の複数の要因が複合的に影響していることが示唆されており(van Engelsdorp and Meixner 2010)、セイヨウミツバチの寄与する作物の授粉(調節サービス)のほか蜂蜜の生産(供給サービス)や野生植物の送粉(基盤サービス)といった生態系サービスの持続性が危ぶまれている(Ghazoul, 2005)。そのような養蜂事情の激変ともいえる変化が一つのきっかけとなり、在来のハナバチ類のポリネーターとしての機能の重要性に注目が集まっている(Winfree et al 2008)。日本では、セイヨウミツバチの導入以降衰退していた在来種のニホンミツバチApis cerana japonicaの養蜂に期待が寄せられるようになってきた(吉田 2000)。ニホンミツバチは、アジアに生息するトウヨウミツバチApis ceranaの1亜種(佐々木 1999)であり、日本では本州、四国、九州に生息し、奄美群島がその南限とされている(Takahashi et al. 2007)。セイヨウミツバチよりやや少ない数千~3万頭から成るコロニーを季節を通じて維持する(菅原 2005)。ニホンミツバチの養蜂は、セイヨウミツバチのそれとは異なり、野生個体群(ソース個体群)から分封群や捕獲群を飼育下に移して管理する。これらの飼育下のコロニー(シンク個体群)は、野生個体群の成長への寄与度は高くないため、持続可能な養蜂のためには、ソース個体群としての野生個体群が十分な大きさで維持されることが前提となる(Pulliam 1988)。ニホンミツバチの持続可能な養蜂を科学的にデザインする上では、野生個体群の大きさの推定に加え、養蜂に伴う人為干渉が野生個体群にもたらす影響を予測できるようにすることが必要である。また、ニホンミツバチの野生個体群の現状を正確に把握して、絶滅のリスク評価を行うためには、野生下における生態の理解が必要であるが、野生のニホンミツバチの生態に関する知見は、これまでに必ずしも十分に蓄積しているとはいえない(ポリネーター利用実態等調査委員会 2014)。ニホンミツバチの分布の南限域とされる奄美大島でも、最近ではニホンミツバチの養蜂への関心が高まりつつあり、養蜂のために本州・九州からニホンミツバチが持ち込まれているとの情報もある(奄美大島在住の養蜂家私信)。一方、奄美大島の宇検村で採集したニホンミツバチが本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つとの報告があり(Takahashi et al. 2007)、奄美大島のニホンミツバチが南限域の個体群であるだけでなく、遺伝的に隔離された地域個体群である可能性がある。著者らの予備的観察からも、奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズが小さいことが示唆されている。奄美大島は、固有の動物種を多く含む地史を特徴としており(環境省自然環境局生物多様性センター 2010)、奄美大島のニホンミツバチが保全の実践において配慮すべき独立した「保全単位」(本城ほか 2006)である可能性が高い。その保全上の価値を評価するためには、生態的特性を含む基礎的な生物学的情報を十分に得ることが必要である(鷲谷・矢原 1996)。ニホンミツバチは、草原を本来の生息場所とするセイヨウミツバチとは異なり、森林の資源により強く依存した生活を営むとされる(佐々木 1999, 2010)。東北地方の里地・里山地域における著者らの研究(藤原ほか 2014)からも、餌資源の多くを森林の植物に依存していることが明らかにされた。しかし、餌に関しては、ジェネラリストとしての性格が強く、作物や園芸植物、路傍の外来植物などもよく利用していた。営巣場所についてはスペシャリストとしての性格が強く、本来の営巣場所は広葉樹の大径木の樹洞であるとされている(佐々木 1999)。拡大造林によって針葉樹の人工林が森林面積の多くを占めるようになった現在では、広葉樹の大径木がほとんどない森林域が広がる地域が少なくない。人家の縁の下や屋根裏、人間が仕掛けた空の木箱への営巣は、森林域に不足している樹洞の代替物としての利用とみなすことができる(佐々木 1999)。
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日本では、セイヨウミツバチの導入以降、何が衰退していましたか。
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日本では、セイヨウミツバチの導入以降、在来種のニホンミツバチApis cerana japonicaの養蜂が衰退していました。
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JCRRAG_001528
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生物学
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蜂蜜生産および授粉用昆虫として世界中で広く利用されてきたセイヨウミツバチApis melliferaは、近年、コロニー崩壊症候群(colony collapse disorder)による衰退が懸念されている(van Engelsdorp et al. 2009)。その原因として、ミツバチヘギイタダニの感染(Le Conte et al. 2010)、ノゼマ病(Higes et al. 2008)、ネオニコチノイド系農薬の使用(Blacquière et al. 2012)、気候変動等の複数の要因が複合的に影響していることが示唆されており(van Engelsdorp and Meixner 2010)、セイヨウミツバチの寄与する作物の授粉(調節サービス)のほか蜂蜜の生産(供給サービス)や野生植物の送粉(基盤サービス)といった生態系サービスの持続性が危ぶまれている(Ghazoul, 2005)。そのような養蜂事情の激変ともいえる変化が一つのきっかけとなり、在来のハナバチ類のポリネーターとしての機能の重要性に注目が集まっている(Winfree et al 2008)。日本では、セイヨウミツバチの導入以降衰退していた在来種のニホンミツバチApis cerana japonicaの養蜂に期待が寄せられるようになってきた(吉田 2000)。ニホンミツバチは、アジアに生息するトウヨウミツバチApis ceranaの1亜種(佐々木 1999)であり、日本では本州、四国、九州に生息し、奄美群島がその南限とされている(Takahashi et al. 2007)。セイヨウミツバチよりやや少ない数千~3万頭から成るコロニーを季節を通じて維持する(菅原 2005)。ニホンミツバチの養蜂は、セイヨウミツバチのそれとは異なり、野生個体群(ソース個体群)から分封群や捕獲群を飼育下に移して管理する。これらの飼育下のコロニー(シンク個体群)は、野生個体群の成長への寄与度は高くないため、持続可能な養蜂のためには、ソース個体群としての野生個体群が十分な大きさで維持されることが前提となる(Pulliam 1988)。ニホンミツバチの持続可能な養蜂を科学的にデザインする上では、野生個体群の大きさの推定に加え、養蜂に伴う人為干渉が野生個体群にもたらす影響を予測できるようにすることが必要である。また、ニホンミツバチの野生個体群の現状を正確に把握して、絶滅のリスク評価を行うためには、野生下における生態の理解が必要であるが、野生のニホンミツバチの生態に関する知見は、これまでに必ずしも十分に蓄積しているとはいえない(ポリネーター利用実態等調査委員会 2014)。ニホンミツバチの分布の南限域とされる奄美大島でも、最近ではニホンミツバチの養蜂への関心が高まりつつあり、養蜂のために本州・九州からニホンミツバチが持ち込まれているとの情報もある(奄美大島在住の養蜂家私信)。一方、奄美大島の宇検村で採集したニホンミツバチが本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つとの報告があり(Takahashi et al. 2007)、奄美大島のニホンミツバチが南限域の個体群であるだけでなく、遺伝的に隔離された地域個体群である可能性がある。著者らの予備的観察からも、奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズが小さいことが示唆されている。奄美大島は、固有の動物種を多く含む地史を特徴としており(環境省自然環境局生物多様性センター 2010)、奄美大島のニホンミツバチが保全の実践において配慮すべき独立した「保全単位」(本城ほか 2006)である可能性が高い。その保全上の価値を評価するためには、生態的特性を含む基礎的な生物学的情報を十分に得ることが必要である(鷲谷・矢原 1996)。ニホンミツバチは、草原を本来の生息場所とするセイヨウミツバチとは異なり、森林の資源により強く依存した生活を営むとされる(佐々木 1999, 2010)。東北地方の里地・里山地域における著者らの研究(藤原ほか 2014)からも、餌資源の多くを森林の植物に依存していることが明らかにされた。しかし、餌に関しては、ジェネラリストとしての性格が強く、作物や園芸植物、路傍の外来植物などもよく利用していた。営巣場所についてはスペシャリストとしての性格が強く、本来の営巣場所は広葉樹の大径木の樹洞であるとされている(佐々木 1999)。拡大造林によって針葉樹の人工林が森林面積の多くを占めるようになった現在では、広葉樹の大径木がほとんどない森林域が広がる地域が少なくない。人家の縁の下や屋根裏、人間が仕掛けた空の木箱への営巣は、森林域に不足している樹洞の代替物としての利用とみなすことができる(佐々木 1999)。
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奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズがどうであることが示唆されていますか。
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奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズが小さいことが示唆されています。
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JCRRAG_001529
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生物学
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蜂蜜生産および授粉用昆虫として世界中で広く利用されてきたセイヨウミツバチApis melliferaは、近年、コロニー崩壊症候群(colony collapse disorder)による衰退が懸念されている(van Engelsdorp et al. 2009)。その原因として、ミツバチヘギイタダニの感染(Le Conte et al. 2010)、ノゼマ病(Higes et al. 2008)、ネオニコチノイド系農薬の使用(Blacquière et al. 2012)、気候変動等の複数の要因が複合的に影響していることが示唆されており(van Engelsdorp and Meixner 2010)、セイヨウミツバチの寄与する作物の授粉(調節サービス)のほか蜂蜜の生産(供給サービス)や野生植物の送粉(基盤サービス)といった生態系サービスの持続性が危ぶまれている(Ghazoul, 2005)。そのような養蜂事情の激変ともいえる変化が一つのきっかけとなり、在来のハナバチ類のポリネーターとしての機能の重要性に注目が集まっている(Winfree et al 2008)。日本では、セイヨウミツバチの導入以降衰退していた在来種のニホンミツバチApis cerana japonicaの養蜂に期待が寄せられるようになってきた(吉田 2000)。ニホンミツバチは、アジアに生息するトウヨウミツバチApis ceranaの1亜種(佐々木 1999)であり、日本では本州、四国、九州に生息し、奄美群島がその南限とされている(Takahashi et al. 2007)。セイヨウミツバチよりやや少ない数千~3万頭から成るコロニーを季節を通じて維持する(菅原 2005)。ニホンミツバチの養蜂は、セイヨウミツバチのそれとは異なり、野生個体群(ソース個体群)から分封群や捕獲群を飼育下に移して管理する。これらの飼育下のコロニー(シンク個体群)は、野生個体群の成長への寄与度は高くないため、持続可能な養蜂のためには、ソース個体群としての野生個体群が十分な大きさで維持されることが前提となる(Pulliam 1988)。ニホンミツバチの持続可能な養蜂を科学的にデザインする上では、野生個体群の大きさの推定に加え、養蜂に伴う人為干渉が野生個体群にもたらす影響を予測できるようにすることが必要である。また、ニホンミツバチの野生個体群の現状を正確に把握して、絶滅のリスク評価を行うためには、野生下における生態の理解が必要であるが、野生のニホンミツバチの生態に関する知見は、これまでに必ずしも十分に蓄積しているとはいえない(ポリネーター利用実態等調査委員会 2014)。ニホンミツバチの分布の南限域とされる奄美大島でも、最近ではニホンミツバチの養蜂への関心が高まりつつあり、養蜂のために本州・九州からニホンミツバチが持ち込まれているとの情報もある(奄美大島在住の養蜂家私信)。一方、奄美大島の宇検村で採集したニホンミツバチが本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つとの報告があり(Takahashi et al. 2007)、奄美大島のニホンミツバチが南限域の個体群であるだけでなく、遺伝的に隔離された地域個体群である可能性がある。著者らの予備的観察からも、奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズが小さいことが示唆されている。奄美大島は、固有の動物種を多く含む地史を特徴としており(環境省自然環境局生物多様性センター 2010)、奄美大島のニホンミツバチが保全の実践において配慮すべき独立した「保全単位」(本城ほか 2006)である可能性が高い。その保全上の価値を評価するためには、生態的特性を含む基礎的な生物学的情報を十分に得ることが必要である(鷲谷・矢原 1996)。ニホンミツバチは、草原を本来の生息場所とするセイヨウミツバチとは異なり、森林の資源により強く依存した生活を営むとされる(佐々木 1999, 2010)。東北地方の里地・里山地域における著者らの研究(藤原ほか 2014)からも、餌資源の多くを森林の植物に依存していることが明らかにされた。しかし、餌に関しては、ジェネラリストとしての性格が強く、作物や園芸植物、路傍の外来植物などもよく利用していた。営巣場所についてはスペシャリストとしての性格が強く、本来の営巣場所は広葉樹の大径木の樹洞であるとされている(佐々木 1999)。拡大造林によって針葉樹の人工林が森林面積の多くを占めるようになった現在では、広葉樹の大径木がほとんどない森林域が広がる地域が少なくない。人家の縁の下や屋根裏、人間が仕掛けた空の木箱への営巣は、森林域に不足している樹洞の代替物としての利用とみなすことができる(佐々木 1999)。
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ニホンミツバチは、何の資源により強く依存した生活を営むとされていますか。
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ニホンミツバチは、森林の資源により強く依存した生活を営むとされています。
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JCRRAG_001530
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生物学
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蜂蜜生産および授粉用昆虫として世界中で広く利用されてきたセイヨウミツバチApis melliferaは、近年、コロニー崩壊症候群(colony collapse disorder)による衰退が懸念されている(van Engelsdorp et al. 2009)。その原因として、ミツバチヘギイタダニの感染(Le Conte et al. 2010)、ノゼマ病(Higes et al. 2008)、ネオニコチノイド系農薬の使用(Blacquière et al. 2012)、気候変動等の複数の要因が複合的に影響していることが示唆されており(van Engelsdorp and Meixner 2010)、セイヨウミツバチの寄与する作物の授粉(調節サービス)のほか蜂蜜の生産(供給サービス)や野生植物の送粉(基盤サービス)といった生態系サービスの持続性が危ぶまれている(Ghazoul, 2005)。そのような養蜂事情の激変ともいえる変化が一つのきっかけとなり、在来のハナバチ類のポリネーターとしての機能の重要性に注目が集まっている(Winfree et al 2008)。日本では、セイヨウミツバチの導入以降衰退していた在来種のニホンミツバチApis cerana japonicaの養蜂に期待が寄せられるようになってきた(吉田 2000)。ニホンミツバチは、アジアに生息するトウヨウミツバチApis ceranaの1亜種(佐々木 1999)であり、日本では本州、四国、九州に生息し、奄美群島がその南限とされている(Takahashi et al. 2007)。セイヨウミツバチよりやや少ない数千~3万頭から成るコロニーを季節を通じて維持する(菅原 2005)。ニホンミツバチの養蜂は、セイヨウミツバチのそれとは異なり、野生個体群(ソース個体群)から分封群や捕獲群を飼育下に移して管理する。これらの飼育下のコロニー(シンク個体群)は、野生個体群の成長への寄与度は高くないため、持続可能な養蜂のためには、ソース個体群としての野生個体群が十分な大きさで維持されることが前提となる(Pulliam 1988)。ニホンミツバチの持続可能な養蜂を科学的にデザインする上では、野生個体群の大きさの推定に加え、養蜂に伴う人為干渉が野生個体群にもたらす影響を予測できるようにすることが必要である。また、ニホンミツバチの野生個体群の現状を正確に把握して、絶滅のリスク評価を行うためには、野生下における生態の理解が必要であるが、野生のニホンミツバチの生態に関する知見は、これまでに必ずしも十分に蓄積しているとはいえない(ポリネーター利用実態等調査委員会 2014)。ニホンミツバチの分布の南限域とされる奄美大島でも、最近ではニホンミツバチの養蜂への関心が高まりつつあり、養蜂のために本州・九州からニホンミツバチが持ち込まれているとの情報もある(奄美大島在住の養蜂家私信)。一方、奄美大島の宇検村で採集したニホンミツバチが本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つとの報告があり(Takahashi et al. 2007)、奄美大島のニホンミツバチが南限域の個体群であるだけでなく、遺伝的に隔離された地域個体群である可能性がある。著者らの予備的観察からも、奄美大島のニホンミツバチは、本州や九州のものより体サイズが小さいことが示唆されている。奄美大島は、固有の動物種を多く含む地史を特徴としており(環境省自然環境局生物多様性センター 2010)、奄美大島のニホンミツバチが保全の実践において配慮すべき独立した「保全単位」(本城ほか 2006)である可能性が高い。その保全上の価値を評価するためには、生態的特性を含む基礎的な生物学的情報を十分に得ることが必要である(鷲谷・矢原 1996)。ニホンミツバチは、草原を本来の生息場所とするセイヨウミツバチとは異なり、森林の資源により強く依存した生活を営むとされる(佐々木 1999, 2010)。東北地方の里地・里山地域における著者らの研究(藤原ほか 2014)からも、餌資源の多くを森林の植物に依存していることが明らかにされた。しかし、餌に関しては、ジェネラリストとしての性格が強く、作物や園芸植物、路傍の外来植物などもよく利用していた。営巣場所についてはスペシャリストとしての性格が強く、本来の営巣場所は広葉樹の大径木の樹洞であるとされている(佐々木 1999)。拡大造林によって針葉樹の人工林が森林面積の多くを占めるようになった現在では、広葉樹の大径木がほとんどない森林域が広がる地域が少なくない。人家の縁の下や屋根裏、人間が仕掛けた空の木箱への営巣は、森林域に不足している樹洞の代替物としての利用とみなすことができる(佐々木 1999)。
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本来の営巣場所はどこであるとされていますか。
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本来の営巣場所は広葉樹の大径木の樹洞であるとされています。
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JCRRAG_001531
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生物学
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野生動物に餌を与える行為(以下、餌付け)は、民家の庭先や市街地の公園などで広く見られ、人々にとって最も一般的な野生動物との触れ合い方の一つである。それが近年、野生動物の行動の変化や生物間相互作用の変化を引き起こすことが明らかになり、生態系保全の観点からその行為が見直されつつある(Shutt and Lees 2021)。例えば、餌付けは、生物を特定の場所に誘引することで捕食者から狙われるリスクを高めたり(Hanmer et al. 2016)、人馴れを促進することで生物の警戒心を下げることに繋がっている(Uchida et al. 2016)。また、局所的に生物の密度を高めることで、生物同士の接触増加による感染症の伝搬リスクが高まることが指摘されている(Adelman et al. 2015)。さらに市街地などでの餌付けは、人間の生活圏への野生動物の誘因や、直接的な人間との接触機会を増やすことから、人獣共通感染症や有害獣発生などにも繋がる可能性がある。そして、餌付けはしばしば対象種以外の野生動物を誘引するため、予期せぬ種への波及効果をもたらす危険性もある(Galbraith et al. 2017)。そのため、北海道庁ではこうしたリスクを鑑みて、2013年に指定餌付け行為に関する禁止条例を発令して、地方自治体規模での餌付けの規制に乗り出した。しかしながら、国内において餌付けが野生動物に与える影響を調査した事例は少なく、餌付けとの関連が報告されているものの多くは、人的被害に繋がりやすい大型の哺乳類に限られている(例えば、和田 1995;山中 2020)。餌付けがもたらす影響は、生物種の生態や行動などによって異なる可能性が高いため、さまざまな種や分類群を対象に餌付けの実態を報告する必要がある。北海道に生息するエゾモモンガPteromys volans oriiは、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガP. volansの亜種であり、北海道のほぼ全域に分布する。本種は、夜行性の滑空性哺乳類であり樹上生活者であるため、森林が重要な生活環境となっている。エゾモモンガは都市近郊林にも生息していることが報告されており(Asari and Yanagawa 2019)、夜行性で小型哺乳類であるがゆえに認知されていないが意外にも身近な存在である(野村ほか 2016)。北海道の都市では、公園や民家の庭で、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多く、本種がこうした人為由来の餌資源を利用する可能性がある。他のリス科哺乳類の研究から、餌付けがある場合、個体は豊富な餌をより多く利用するために、対捕食者行動よりも採食行動に多くの時間とコストを割いたり、人にさらされる機会が多くなることで人馴れが生じて警戒心が低下するといった、対捕食者行動の低下が見られることがわかっている(Uchida et al,2016;Uchida et al,2019)。本種は夜行性であるため、昼行性リス類と比べて、人にさらされるリスクは比較的少ないと考えられるが、餌付け餌に執着することで、餌台などの特定の場所への誘因や滞在時間の長期化を引き起こし、捕食者に発見されやすくなる可能性が十分に考えられる。本種は、猛禽類や中型哺乳類の食物になっており(松岡,1977;米田ほか,1979;Hanski et al, 2000;Murakami, 2003;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018;渡辺ほか,2019)、もし餌付けにより採食行動や対捕食者行動の変化が生じた場合、捕食危険性を高める可能性が高いと言える。
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エゾモモンガPteromys volans oriiは何の亜種ですか。
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エゾモモンガPteromys volans oriiは、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガP.volansの亜種です。
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JCRRAG_001532
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生物学
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野生動物に餌を与える行為(以下、餌付け)は、民家の庭先や市街地の公園などで広く見られ、人々にとって最も一般的な野生動物との触れ合い方の一つである。それが近年、野生動物の行動の変化や生物間相互作用の変化を引き起こすことが明らかになり、生態系保全の観点からその行為が見直されつつある(Shutt and Lees 2021)。例えば、餌付けは、生物を特定の場所に誘引することで捕食者から狙われるリスクを高めたり(Hanmer et al. 2016)、人馴れを促進することで生物の警戒心を下げることに繋がっている(Uchida et al. 2016)。また、局所的に生物の密度を高めることで、生物同士の接触増加による感染症の伝搬リスクが高まることが指摘されている(Adelman et al. 2015)。さらに市街地などでの餌付けは、人間の生活圏への野生動物の誘因や、直接的な人間との接触機会を増やすことから、人獣共通感染症や有害獣発生などにも繋がる可能性がある。そして、餌付けはしばしば対象種以外の野生動物を誘引するため、予期せぬ種への波及効果をもたらす危険性もある(Galbraith et al. 2017)。そのため、北海道庁ではこうしたリスクを鑑みて、2013年に指定餌付け行為に関する禁止条例を発令して、地方自治体規模での餌付けの規制に乗り出した。しかしながら、国内において餌付けが野生動物に与える影響を調査した事例は少なく、餌付けとの関連が報告されているものの多くは、人的被害に繋がりやすい大型の哺乳類に限られている(例えば、和田 1995;山中 2020)。餌付けがもたらす影響は、生物種の生態や行動などによって異なる可能性が高いため、さまざまな種や分類群を対象に餌付けの実態を報告する必要がある。北海道に生息するエゾモモンガPteromys volans oriiは、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガP. volansの亜種であり、北海道のほぼ全域に分布する。本種は、夜行性の滑空性哺乳類であり樹上生活者であるため、森林が重要な生活環境となっている。エゾモモンガは都市近郊林にも生息していることが報告されており(Asari and Yanagawa 2019)、夜行性で小型哺乳類であるがゆえに認知されていないが意外にも身近な存在である(野村ほか 2016)。北海道の都市では、公園や民家の庭で、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多く、本種がこうした人為由来の餌資源を利用する可能性がある。他のリス科哺乳類の研究から、餌付けがある場合、個体は豊富な餌をより多く利用するために、対捕食者行動よりも採食行動に多くの時間とコストを割いたり、人にさらされる機会が多くなることで人馴れが生じて警戒心が低下するといった、対捕食者行動の低下が見られることがわかっている(Uchida et al,2016;Uchida et al,2019)。本種は夜行性であるため、昼行性リス類と比べて、人にさらされるリスクは比較的少ないと考えられるが、餌付け餌に執着することで、餌台などの特定の場所への誘因や滞在時間の長期化を引き起こし、捕食者に発見されやすくなる可能性が十分に考えられる。本種は、猛禽類や中型哺乳類の食物になっており(松岡,1977;米田ほか,1979;Hanski et al, 2000;Murakami, 2003;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018;渡辺ほか,2019)、もし餌付けにより採食行動や対捕食者行動の変化が生じた場合、捕食危険性を高める可能性が高いと言える。
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餌付けは、生物を特定の場所に誘引することでどのようなリスクを高めますか。
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餌付けは、生物を特定の場所に誘引することで捕食者から狙われるリスクを高めます。
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JCRRAG_001533
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生物学
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野生動物に餌を与える行為(以下、餌付け)は、民家の庭先や市街地の公園などで広く見られ、人々にとって最も一般的な野生動物との触れ合い方の一つである。それが近年、野生動物の行動の変化や生物間相互作用の変化を引き起こすことが明らかになり、生態系保全の観点からその行為が見直されつつある(Shutt and Lees 2021)。例えば、餌付けは、生物を特定の場所に誘引することで捕食者から狙われるリスクを高めたり(Hanmer et al. 2016)、人馴れを促進することで生物の警戒心を下げることに繋がっている(Uchida et al. 2016)。また、局所的に生物の密度を高めることで、生物同士の接触増加による感染症の伝搬リスクが高まることが指摘されている(Adelman et al. 2015)。さらに市街地などでの餌付けは、人間の生活圏への野生動物の誘因や、直接的な人間との接触機会を増やすことから、人獣共通感染症や有害獣発生などにも繋がる可能性がある。そして、餌付けはしばしば対象種以外の野生動物を誘引するため、予期せぬ種への波及効果をもたらす危険性もある(Galbraith et al. 2017)。そのため、北海道庁ではこうしたリスクを鑑みて、2013年に指定餌付け行為に関する禁止条例を発令して、地方自治体規模での餌付けの規制に乗り出した。しかしながら、国内において餌付けが野生動物に与える影響を調査した事例は少なく、餌付けとの関連が報告されているものの多くは、人的被害に繋がりやすい大型の哺乳類に限られている(例えば、和田 1995;山中 2020)。餌付けがもたらす影響は、生物種の生態や行動などによって異なる可能性が高いため、さまざまな種や分類群を対象に餌付けの実態を報告する必要がある。北海道に生息するエゾモモンガPteromys volans oriiは、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガP. volansの亜種であり、北海道のほぼ全域に分布する。本種は、夜行性の滑空性哺乳類であり樹上生活者であるため、森林が重要な生活環境となっている。エゾモモンガは都市近郊林にも生息していることが報告されており(Asari and Yanagawa 2019)、夜行性で小型哺乳類であるがゆえに認知されていないが意外にも身近な存在である(野村ほか 2016)。北海道の都市では、公園や民家の庭で、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多く、本種がこうした人為由来の餌資源を利用する可能性がある。他のリス科哺乳類の研究から、餌付けがある場合、個体は豊富な餌をより多く利用するために、対捕食者行動よりも採食行動に多くの時間とコストを割いたり、人にさらされる機会が多くなることで人馴れが生じて警戒心が低下するといった、対捕食者行動の低下が見られることがわかっている(Uchida et al,2016;Uchida et al,2019)。本種は夜行性であるため、昼行性リス類と比べて、人にさらされるリスクは比較的少ないと考えられるが、餌付け餌に執着することで、餌台などの特定の場所への誘因や滞在時間の長期化を引き起こし、捕食者に発見されやすくなる可能性が十分に考えられる。本種は、猛禽類や中型哺乳類の食物になっており(松岡,1977;米田ほか,1979;Hanski et al, 2000;Murakami, 2003;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018;渡辺ほか,2019)、もし餌付けにより採食行動や対捕食者行動の変化が生じた場合、捕食危険性を高める可能性が高いと言える。
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エゾモモンガは夜行性で何類ですか。
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エゾモモンガは夜行性で小型哺乳類です。
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JCRRAG_001534
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生物学
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野生動物に餌を与える行為(以下、餌付け)は、民家の庭先や市街地の公園などで広く見られ、人々にとって最も一般的な野生動物との触れ合い方の一つである。それが近年、野生動物の行動の変化や生物間相互作用の変化を引き起こすことが明らかになり、生態系保全の観点からその行為が見直されつつある(Shutt and Lees 2021)。例えば、餌付けは、生物を特定の場所に誘引することで捕食者から狙われるリスクを高めたり(Hanmer et al. 2016)、人馴れを促進することで生物の警戒心を下げることに繋がっている(Uchida et al. 2016)。また、局所的に生物の密度を高めることで、生物同士の接触増加による感染症の伝搬リスクが高まることが指摘されている(Adelman et al. 2015)。さらに市街地などでの餌付けは、人間の生活圏への野生動物の誘因や、直接的な人間との接触機会を増やすことから、人獣共通感染症や有害獣発生などにも繋がる可能性がある。そして、餌付けはしばしば対象種以外の野生動物を誘引するため、予期せぬ種への波及効果をもたらす危険性もある(Galbraith et al. 2017)。そのため、北海道庁ではこうしたリスクを鑑みて、2013年に指定餌付け行為に関する禁止条例を発令して、地方自治体規模での餌付けの規制に乗り出した。しかしながら、国内において餌付けが野生動物に与える影響を調査した事例は少なく、餌付けとの関連が報告されているものの多くは、人的被害に繋がりやすい大型の哺乳類に限られている(例えば、和田 1995;山中 2020)。餌付けがもたらす影響は、生物種の生態や行動などによって異なる可能性が高いため、さまざまな種や分類群を対象に餌付けの実態を報告する必要がある。北海道に生息するエゾモモンガPteromys volans oriiは、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガP. volansの亜種であり、北海道のほぼ全域に分布する。本種は、夜行性の滑空性哺乳類であり樹上生活者であるため、森林が重要な生活環境となっている。エゾモモンガは都市近郊林にも生息していることが報告されており(Asari and Yanagawa 2019)、夜行性で小型哺乳類であるがゆえに認知されていないが意外にも身近な存在である(野村ほか 2016)。北海道の都市では、公園や民家の庭で、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多く、本種がこうした人為由来の餌資源を利用する可能性がある。他のリス科哺乳類の研究から、餌付けがある場合、個体は豊富な餌をより多く利用するために、対捕食者行動よりも採食行動に多くの時間とコストを割いたり、人にさらされる機会が多くなることで人馴れが生じて警戒心が低下するといった、対捕食者行動の低下が見られることがわかっている(Uchida et al,2016;Uchida et al,2019)。本種は夜行性であるため、昼行性リス類と比べて、人にさらされるリスクは比較的少ないと考えられるが、餌付け餌に執着することで、餌台などの特定の場所への誘因や滞在時間の長期化を引き起こし、捕食者に発見されやすくなる可能性が十分に考えられる。本種は、猛禽類や中型哺乳類の食物になっており(松岡,1977;米田ほか,1979;Hanski et al, 2000;Murakami, 2003;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018;渡辺ほか,2019)、もし餌付けにより採食行動や対捕食者行動の変化が生じた場合、捕食危険性を高める可能性が高いと言える。
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どの都市では、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多いですか。
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北海道の都市では、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多いです。
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JCRRAG_001535
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生物学
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野生動物に餌を与える行為(以下、餌付け)は、民家の庭先や市街地の公園などで広く見られ、人々にとって最も一般的な野生動物との触れ合い方の一つである。それが近年、野生動物の行動の変化や生物間相互作用の変化を引き起こすことが明らかになり、生態系保全の観点からその行為が見直されつつある(Shutt and Lees 2021)。例えば、餌付けは、生物を特定の場所に誘引することで捕食者から狙われるリスクを高めたり(Hanmer et al. 2016)、人馴れを促進することで生物の警戒心を下げることに繋がっている(Uchida et al. 2016)。また、局所的に生物の密度を高めることで、生物同士の接触増加による感染症の伝搬リスクが高まることが指摘されている(Adelman et al. 2015)。さらに市街地などでの餌付けは、人間の生活圏への野生動物の誘因や、直接的な人間との接触機会を増やすことから、人獣共通感染症や有害獣発生などにも繋がる可能性がある。そして、餌付けはしばしば対象種以外の野生動物を誘引するため、予期せぬ種への波及効果をもたらす危険性もある(Galbraith et al. 2017)。そのため、北海道庁ではこうしたリスクを鑑みて、2013年に指定餌付け行為に関する禁止条例を発令して、地方自治体規模での餌付けの規制に乗り出した。しかしながら、国内において餌付けが野生動物に与える影響を調査した事例は少なく、餌付けとの関連が報告されているものの多くは、人的被害に繋がりやすい大型の哺乳類に限られている(例えば、和田 1995;山中 2020)。餌付けがもたらす影響は、生物種の生態や行動などによって異なる可能性が高いため、さまざまな種や分類群を対象に餌付けの実態を報告する必要がある。北海道に生息するエゾモモンガPteromys volans oriiは、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガP. volansの亜種であり、北海道のほぼ全域に分布する。本種は、夜行性の滑空性哺乳類であり樹上生活者であるため、森林が重要な生活環境となっている。エゾモモンガは都市近郊林にも生息していることが報告されており(Asari and Yanagawa 2019)、夜行性で小型哺乳類であるがゆえに認知されていないが意外にも身近な存在である(野村ほか 2016)。北海道の都市では、公園や民家の庭で、鳥類やエゾリスSciurus vulgaris orientisを対象とした餌台の設置や餌付け行為が見られることが多く、本種がこうした人為由来の餌資源を利用する可能性がある。他のリス科哺乳類の研究から、餌付けがある場合、個体は豊富な餌をより多く利用するために、対捕食者行動よりも採食行動に多くの時間とコストを割いたり、人にさらされる機会が多くなることで人馴れが生じて警戒心が低下するといった、対捕食者行動の低下が見られることがわかっている(Uchida et al,2016;Uchida et al,2019)。本種は夜行性であるため、昼行性リス類と比べて、人にさらされるリスクは比較的少ないと考えられるが、餌付け餌に執着することで、餌台などの特定の場所への誘因や滞在時間の長期化を引き起こし、捕食者に発見されやすくなる可能性が十分に考えられる。本種は、猛禽類や中型哺乳類の食物になっており(松岡,1977;米田ほか,1979;Hanski et al, 2000;Murakami, 2003;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018;渡辺ほか,2019)、もし餌付けにより採食行動や対捕食者行動の変化が生じた場合、捕食危険性を高める可能性が高いと言える。
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餌付けがある場合、個体は対捕食者行動よりも何に多くの時間とコストを割きますか。
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餌付けがある場合、個体は対捕食者行動よりも採食行動に多くの時間とコストを割きます。
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JCRRAG_001536
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生物学
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本観察の結果は、餌台を介した餌付けがエゾモモンガの採食行動を変化させていることを示唆している。餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に低かった。本調査地の餌台は、いずれも人の手が届く高さの2m以下に設置されている。エゾモモンガが採食する樹種や樹木の部位を考慮すると(柳川1999;門崎2001;浅利ほか2008;南部・柳川2010;山口ほか2020)、本種は通常、樹上10m以上の高さで採食をしていると考えられ、餌台の高さはそれよりも明らかに低い。そのため、餌付けによって誘引された結果、エゾモモンガが通常よりも低い位置で採食を行っていたと考えられる。本種は、捕食者から逃げる際に、木の上から滑空を行う(Goldingay, 2000;Suzuki et al, 2012)。そのため、採食時の滞在の高さが低いことは、効率的に滑空することを難しくし、捕食リスクを高めることに繋がる危険性がある。また、餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に長かった。餌付け餌の利用により、低い位置かつ長時間滞在することで、捕食リスクがさらに高まることが考えられる。一方で、こうしたエゾモモンガの採食行動は、季節によっても変化すると考えられる。例えば、本種が夏季に好んで採食するカラコギカエデの種子は(浅利ほか2008)、ハルニレやカラマツなどの樹種に比べると樹高がやや低いため、自然と採食する高さも変化するだろう。本調査地においても、ハンノキの花穂を樹冠から切り取り、樹冠よりも低い位置へ持ってきて採食する行動が見られている。このように、そもそも得られる資源によりエゾモモンガが採食する高さを変化させている可能性もあるため、餌台への誘因が自然由来の食物利用時の季節変動から逸脱した行動変化に繋がっている可能性についても示していくことが重要であろう。本調査により、イエネコが都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示された。調査期間中に、エゾモモンガが捕食された事例を2例得ることができた。情報提供者の観察によると、毛色のパターンの一致から、同一個体のイエネコである可能性が高い。さらに、調査員の観察からキタキツネが餌台でヒマワリの種を食べているエゾモモンガに襲い掛かり、捕獲失敗する行動も1例観察した。本調査地では、すでにエゾフクロウによる捕食が確認されている(渡辺ほか2019)。また、タイリクモモンガにおいても、フクロウやオオタカといった猛禽類による捕食が観察されている(Hanski et al, 2000;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018)。それに対して、本調査で確認された捕食イベントは、いずれも地上性の捕食者によるものであった。このことから、餌台の設置は、イエネコやキタキツネといった地上性の捕食者による捕食リスクを高める可能性がある。特に、地上を頻繁に利用するエゾリスなどと比べて、本種は主に樹上で生活するため、地上付近での長時間の滞在は、地上の捕食者からの捕食リスクを高めると考えられる。また、エゾモモンガは森林の分断化や縮小の影響を受けやすく(Hanski et al, 2000)、北海道においても個体群の消失が懸念されている(浅利ほか2009)。そのような状況にさらされている本種において、分断林の様な小規模集団における捕食リスクの増加は、集団の安定性にさらに深刻な影響をもたらしかねない。しかし、本調査中にイエネコが観察されたのは、観察および聞き取りから得られた日数の合計47日間のうち5日間のみであったため、イエネコの捕食がエゾモモンガの個体群にもたらす影響は議論の余地があるだろう。さらに、本種がイエネコの存在や捕食イベントを感知し、採食行動や場所を変えるといった行動の変化を考慮する必要もあるだろう。実際、イエネコがエゾモモンガを襲った餌台Eは、イエネコによる捕食イベントの翌日に、別のイエネコが餌台Eの約70cm真下に座っており、捕食イベント後にエゾモモンガに利用されていない。このため、エゾモモンガが餌台を捕食リスクの高い場所として認識し、避けていた可能性がある。餌付けによる捕食リスクの評価のためにも、今後長期的かつ広範囲でモニタリングをしていく必要があると言える。また、餌付けが地上の捕食者のみならず、鳥類の捕食者からの捕食危険性を高める可能性の有無についても検討していく必要がある。
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エゾモモンガは通常、どれぐらいの高さで採食をしていますか。
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エゾモモンガは通常、樹上10m以上の高さで採食をしています。
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JCRRAG_001537
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生物学
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本観察の結果は、餌台を介した餌付けがエゾモモンガの採食行動を変化させていることを示唆している。餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に低かった。本調査地の餌台は、いずれも人の手が届く高さの2m以下に設置されている。エゾモモンガが採食する樹種や樹木の部位を考慮すると(柳川1999;門崎2001;浅利ほか2008;南部・柳川2010;山口ほか2020)、本種は通常、樹上10m以上の高さで採食をしていると考えられ、餌台の高さはそれよりも明らかに低い。そのため、餌付けによって誘引された結果、エゾモモンガが通常よりも低い位置で採食を行っていたと考えられる。本種は、捕食者から逃げる際に、木の上から滑空を行う(Goldingay, 2000;Suzuki et al, 2012)。そのため、採食時の滞在の高さが低いことは、効率的に滑空することを難しくし、捕食リスクを高めることに繋がる危険性がある。また、餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に長かった。餌付け餌の利用により、低い位置かつ長時間滞在することで、捕食リスクがさらに高まることが考えられる。一方で、こうしたエゾモモンガの採食行動は、季節によっても変化すると考えられる。例えば、本種が夏季に好んで採食するカラコギカエデの種子は(浅利ほか2008)、ハルニレやカラマツなどの樹種に比べると樹高がやや低いため、自然と採食する高さも変化するだろう。本調査地においても、ハンノキの花穂を樹冠から切り取り、樹冠よりも低い位置へ持ってきて採食する行動が見られている。このように、そもそも得られる資源によりエゾモモンガが採食する高さを変化させている可能性もあるため、餌台への誘因が自然由来の食物利用時の季節変動から逸脱した行動変化に繋がっている可能性についても示していくことが重要であろう。本調査により、イエネコが都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示された。調査期間中に、エゾモモンガが捕食された事例を2例得ることができた。情報提供者の観察によると、毛色のパターンの一致から、同一個体のイエネコである可能性が高い。さらに、調査員の観察からキタキツネが餌台でヒマワリの種を食べているエゾモモンガに襲い掛かり、捕獲失敗する行動も1例観察した。本調査地では、すでにエゾフクロウによる捕食が確認されている(渡辺ほか2019)。また、タイリクモモンガにおいても、フクロウやオオタカといった猛禽類による捕食が観察されている(Hanski et al, 2000;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018)。それに対して、本調査で確認された捕食イベントは、いずれも地上性の捕食者によるものであった。このことから、餌台の設置は、イエネコやキタキツネといった地上性の捕食者による捕食リスクを高める可能性がある。特に、地上を頻繁に利用するエゾリスなどと比べて、本種は主に樹上で生活するため、地上付近での長時間の滞在は、地上の捕食者からの捕食リスクを高めると考えられる。また、エゾモモンガは森林の分断化や縮小の影響を受けやすく(Hanski et al, 2000)、北海道においても個体群の消失が懸念されている(浅利ほか2009)。そのような状況にさらされている本種において、分断林の様な小規模集団における捕食リスクの増加は、集団の安定性にさらに深刻な影響をもたらしかねない。しかし、本調査中にイエネコが観察されたのは、観察および聞き取りから得られた日数の合計47日間のうち5日間のみであったため、イエネコの捕食がエゾモモンガの個体群にもたらす影響は議論の余地があるだろう。さらに、本種がイエネコの存在や捕食イベントを感知し、採食行動や場所を変えるといった行動の変化を考慮する必要もあるだろう。実際、イエネコがエゾモモンガを襲った餌台Eは、イエネコによる捕食イベントの翌日に、別のイエネコが餌台Eの約70cm真下に座っており、捕食イベント後にエゾモモンガに利用されていない。このため、エゾモモンガが餌台を捕食リスクの高い場所として認識し、避けていた可能性がある。餌付けによる捕食リスクの評価のためにも、今後長期的かつ広範囲でモニタリングをしていく必要があると言える。また、餌付けが地上の捕食者のみならず、鳥類の捕食者からの捕食危険性を高める可能性の有無についても検討していく必要がある。
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エゾモモンガが餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりもどうでしたか。
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エゾモモンガが餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に低かったです。
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JCRRAG_001538
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生物学
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本観察の結果は、餌台を介した餌付けがエゾモモンガの採食行動を変化させていることを示唆している。餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に低かった。本調査地の餌台は、いずれも人の手が届く高さの2m以下に設置されている。エゾモモンガが採食する樹種や樹木の部位を考慮すると(柳川1999;門崎2001;浅利ほか2008;南部・柳川2010;山口ほか2020)、本種は通常、樹上10m以上の高さで採食をしていると考えられ、餌台の高さはそれよりも明らかに低い。そのため、餌付けによって誘引された結果、エゾモモンガが通常よりも低い位置で採食を行っていたと考えられる。本種は、捕食者から逃げる際に、木の上から滑空を行う(Goldingay, 2000;Suzuki et al, 2012)。そのため、採食時の滞在の高さが低いことは、効率的に滑空することを難しくし、捕食リスクを高めることに繋がる危険性がある。また、餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に長かった。餌付け餌の利用により、低い位置かつ長時間滞在することで、捕食リスクがさらに高まることが考えられる。一方で、こうしたエゾモモンガの採食行動は、季節によっても変化すると考えられる。例えば、本種が夏季に好んで採食するカラコギカエデの種子は(浅利ほか2008)、ハルニレやカラマツなどの樹種に比べると樹高がやや低いため、自然と採食する高さも変化するだろう。本調査地においても、ハンノキの花穂を樹冠から切り取り、樹冠よりも低い位置へ持ってきて採食する行動が見られている。このように、そもそも得られる資源によりエゾモモンガが採食する高さを変化させている可能性もあるため、餌台への誘因が自然由来の食物利用時の季節変動から逸脱した行動変化に繋がっている可能性についても示していくことが重要であろう。本調査により、イエネコが都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示された。調査期間中に、エゾモモンガが捕食された事例を2例得ることができた。情報提供者の観察によると、毛色のパターンの一致から、同一個体のイエネコである可能性が高い。さらに、調査員の観察からキタキツネが餌台でヒマワリの種を食べているエゾモモンガに襲い掛かり、捕獲失敗する行動も1例観察した。本調査地では、すでにエゾフクロウによる捕食が確認されている(渡辺ほか2019)。また、タイリクモモンガにおいても、フクロウやオオタカといった猛禽類による捕食が観察されている(Hanski et al, 2000;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018)。それに対して、本調査で確認された捕食イベントは、いずれも地上性の捕食者によるものであった。このことから、餌台の設置は、イエネコやキタキツネといった地上性の捕食者による捕食リスクを高める可能性がある。特に、地上を頻繁に利用するエゾリスなどと比べて、本種は主に樹上で生活するため、地上付近での長時間の滞在は、地上の捕食者からの捕食リスクを高めると考えられる。また、エゾモモンガは森林の分断化や縮小の影響を受けやすく(Hanski et al, 2000)、北海道においても個体群の消失が懸念されている(浅利ほか2009)。そのような状況にさらされている本種において、分断林の様な小規模集団における捕食リスクの増加は、集団の安定性にさらに深刻な影響をもたらしかねない。しかし、本調査中にイエネコが観察されたのは、観察および聞き取りから得られた日数の合計47日間のうち5日間のみであったため、イエネコの捕食がエゾモモンガの個体群にもたらす影響は議論の余地があるだろう。さらに、本種がイエネコの存在や捕食イベントを感知し、採食行動や場所を変えるといった行動の変化を考慮する必要もあるだろう。実際、イエネコがエゾモモンガを襲った餌台Eは、イエネコによる捕食イベントの翌日に、別のイエネコが餌台Eの約70cm真下に座っており、捕食イベント後にエゾモモンガに利用されていない。このため、エゾモモンガが餌台を捕食リスクの高い場所として認識し、避けていた可能性がある。餌付けによる捕食リスクの評価のためにも、今後長期的かつ広範囲でモニタリングをしていく必要があると言える。また、餌付けが地上の捕食者のみならず、鳥類の捕食者からの捕食危険性を高める可能性の有無についても検討していく必要がある。
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エゾモモンガは、誰から逃げる際に、木の上から滑空を行いますか。
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エゾモモンガは、捕食者から逃げる際に、木の上から滑空を行います。
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JCRRAG_001539
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生物学
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本観察の結果は、餌台を介した餌付けがエゾモモンガの採食行動を変化させていることを示唆している。餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に低かった。本調査地の餌台は、いずれも人の手が届く高さの2m以下に設置されている。エゾモモンガが採食する樹種や樹木の部位を考慮すると(柳川1999;門崎2001;浅利ほか2008;南部・柳川2010;山口ほか2020)、本種は通常、樹上10m以上の高さで採食をしていると考えられ、餌台の高さはそれよりも明らかに低い。そのため、餌付けによって誘引された結果、エゾモモンガが通常よりも低い位置で採食を行っていたと考えられる。本種は、捕食者から逃げる際に、木の上から滑空を行う(Goldingay, 2000;Suzuki et al, 2012)。そのため、採食時の滞在の高さが低いことは、効率的に滑空することを難しくし、捕食リスクを高めることに繋がる危険性がある。また、餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に長かった。餌付け餌の利用により、低い位置かつ長時間滞在することで、捕食リスクがさらに高まることが考えられる。一方で、こうしたエゾモモンガの採食行動は、季節によっても変化すると考えられる。例えば、本種が夏季に好んで採食するカラコギカエデの種子は(浅利ほか2008)、ハルニレやカラマツなどの樹種に比べると樹高がやや低いため、自然と採食する高さも変化するだろう。本調査地においても、ハンノキの花穂を樹冠から切り取り、樹冠よりも低い位置へ持ってきて採食する行動が見られている。このように、そもそも得られる資源によりエゾモモンガが採食する高さを変化させている可能性もあるため、餌台への誘因が自然由来の食物利用時の季節変動から逸脱した行動変化に繋がっている可能性についても示していくことが重要であろう。本調査により、イエネコが都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示された。調査期間中に、エゾモモンガが捕食された事例を2例得ることができた。情報提供者の観察によると、毛色のパターンの一致から、同一個体のイエネコである可能性が高い。さらに、調査員の観察からキタキツネが餌台でヒマワリの種を食べているエゾモモンガに襲い掛かり、捕獲失敗する行動も1例観察した。本調査地では、すでにエゾフクロウによる捕食が確認されている(渡辺ほか2019)。また、タイリクモモンガにおいても、フクロウやオオタカといった猛禽類による捕食が観察されている(Hanski et al, 2000;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018)。それに対して、本調査で確認された捕食イベントは、いずれも地上性の捕食者によるものであった。このことから、餌台の設置は、イエネコやキタキツネといった地上性の捕食者による捕食リスクを高める可能性がある。特に、地上を頻繁に利用するエゾリスなどと比べて、本種は主に樹上で生活するため、地上付近での長時間の滞在は、地上の捕食者からの捕食リスクを高めると考えられる。また、エゾモモンガは森林の分断化や縮小の影響を受けやすく(Hanski et al, 2000)、北海道においても個体群の消失が懸念されている(浅利ほか2009)。そのような状況にさらされている本種において、分断林の様な小規模集団における捕食リスクの増加は、集団の安定性にさらに深刻な影響をもたらしかねない。しかし、本調査中にイエネコが観察されたのは、観察および聞き取りから得られた日数の合計47日間のうち5日間のみであったため、イエネコの捕食がエゾモモンガの個体群にもたらす影響は議論の余地があるだろう。さらに、本種がイエネコの存在や捕食イベントを感知し、採食行動や場所を変えるといった行動の変化を考慮する必要もあるだろう。実際、イエネコがエゾモモンガを襲った餌台Eは、イエネコによる捕食イベントの翌日に、別のイエネコが餌台Eの約70cm真下に座っており、捕食イベント後にエゾモモンガに利用されていない。このため、エゾモモンガが餌台を捕食リスクの高い場所として認識し、避けていた可能性がある。餌付けによる捕食リスクの評価のためにも、今後長期的かつ広範囲でモニタリングをしていく必要があると言える。また、餌付けが地上の捕食者のみならず、鳥類の捕食者からの捕食危険性を高める可能性の有無についても検討していく必要がある。
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エゾモモンガが餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりもどうでしたか。
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エゾモモンガが餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に長かったです。
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JCRRAG_001540
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生物学
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本観察の結果は、餌台を介した餌付けがエゾモモンガの採食行動を変化させていることを示唆している。餌付け餌を利用する場合の採食中に滞在する高さは、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に低かった。本調査地の餌台は、いずれも人の手が届く高さの2m以下に設置されている。エゾモモンガが採食する樹種や樹木の部位を考慮すると(柳川1999;門崎2001;浅利ほか2008;南部・柳川2010;山口ほか2020)、本種は通常、樹上10m以上の高さで採食をしていると考えられ、餌台の高さはそれよりも明らかに低い。そのため、餌付けによって誘引された結果、エゾモモンガが通常よりも低い位置で採食を行っていたと考えられる。本種は、捕食者から逃げる際に、木の上から滑空を行う(Goldingay, 2000;Suzuki et al, 2012)。そのため、採食時の滞在の高さが低いことは、効率的に滑空することを難しくし、捕食リスクを高めることに繋がる危険性がある。また、餌付け餌を利用する場合、一か所に滞在する時間は、自然由来の食物を利用する場合よりも有意に長かった。餌付け餌の利用により、低い位置かつ長時間滞在することで、捕食リスクがさらに高まることが考えられる。一方で、こうしたエゾモモンガの採食行動は、季節によっても変化すると考えられる。例えば、本種が夏季に好んで採食するカラコギカエデの種子は(浅利ほか2008)、ハルニレやカラマツなどの樹種に比べると樹高がやや低いため、自然と採食する高さも変化するだろう。本調査地においても、ハンノキの花穂を樹冠から切り取り、樹冠よりも低い位置へ持ってきて採食する行動が見られている。このように、そもそも得られる資源によりエゾモモンガが採食する高さを変化させている可能性もあるため、餌台への誘因が自然由来の食物利用時の季節変動から逸脱した行動変化に繋がっている可能性についても示していくことが重要であろう。本調査により、イエネコが都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示された。調査期間中に、エゾモモンガが捕食された事例を2例得ることができた。情報提供者の観察によると、毛色のパターンの一致から、同一個体のイエネコである可能性が高い。さらに、調査員の観察からキタキツネが餌台でヒマワリの種を食べているエゾモモンガに襲い掛かり、捕獲失敗する行動も1例観察した。本調査地では、すでにエゾフクロウによる捕食が確認されている(渡辺ほか2019)。また、タイリクモモンガにおいても、フクロウやオオタカといった猛禽類による捕食が観察されている(Hanski et al, 2000;Byholm et al, 2012;Turika et al, 2018)。それに対して、本調査で確認された捕食イベントは、いずれも地上性の捕食者によるものであった。このことから、餌台の設置は、イエネコやキタキツネといった地上性の捕食者による捕食リスクを高める可能性がある。特に、地上を頻繁に利用するエゾリスなどと比べて、本種は主に樹上で生活するため、地上付近での長時間の滞在は、地上の捕食者からの捕食リスクを高めると考えられる。また、エゾモモンガは森林の分断化や縮小の影響を受けやすく(Hanski et al, 2000)、北海道においても個体群の消失が懸念されている(浅利ほか2009)。そのような状況にさらされている本種において、分断林の様な小規模集団における捕食リスクの増加は、集団の安定性にさらに深刻な影響をもたらしかねない。しかし、本調査中にイエネコが観察されたのは、観察および聞き取りから得られた日数の合計47日間のうち5日間のみであったため、イエネコの捕食がエゾモモンガの個体群にもたらす影響は議論の余地があるだろう。さらに、本種がイエネコの存在や捕食イベントを感知し、採食行動や場所を変えるといった行動の変化を考慮する必要もあるだろう。実際、イエネコがエゾモモンガを襲った餌台Eは、イエネコによる捕食イベントの翌日に、別のイエネコが餌台Eの約70cm真下に座っており、捕食イベント後にエゾモモンガに利用されていない。このため、エゾモモンガが餌台を捕食リスクの高い場所として認識し、避けていた可能性がある。餌付けによる捕食リスクの評価のためにも、今後長期的かつ広範囲でモニタリングをしていく必要があると言える。また、餌付けが地上の捕食者のみならず、鳥類の捕食者からの捕食危険性を高める可能性の有無についても検討していく必要がある。
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本調査により、何が都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示されましたか。
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本調査により、イエネコが都市近郊林におけるエゾモモンガの捕食者となっている可能性が示されました。
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JCRRAG_001541
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生物学
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通常の牛乳に含まれるA1型β-カゼインは,アミノ酸配列の60番目から66番目にTyr-Pro-Phe-Pro-Gly-Pro-Ileという配列をもつが,ペプシンやトリプシンの作用等によりこの部分が切り出されると生理活性ペプチドであるβ-カソモルフィン-7(BCM-7)が生成され,このBCM-7が腸管で炎症を引き起こすと推定されている.一方,A2型β-カゼインは,67番目のアミノ酸がHisからProに置換されていることから,酵素が作用しにくく,BCM-7が生成されない.そのため,A2ミルクはBCM-7を介した不快症状が起きにくいということから,「おなかにやさしい牛乳」とされている.
しかし,行き過ぎた訴求や科学的に誤った解釈や誤解を避けるため,「A2ミルク」を用いた臨床研究がいくつか行われており,いずれも通常の牛乳の摂取で発現する消化器症状がA2ミルクの摂取では起こらなかったと報告している.また,これらの研究では,乳糖不耐症を示す被験者に対しても,A2ミルクは不快症状が現れないと報告されている.しかし,どのようなメカニズムで不快症状を緩和しているのか,科学的根拠は得られていないが,そもそも消化器不快症状は乳糖そのものではなく,BCM-7が関連している可能性があるとされている.これらのことから,A2ミルクは,乳糖不耐症も緩和される次世代型の牛乳として期待が高まりつつある.
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A2ミルクは、「A2ミルク」を用いた臨床研究で、どんな被験者に対しても不快症状が現れないと報告されていますか。
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A2ミルクは、「A2ミルク」を用いた臨床研究で、乳糖不耐症を示す被験者に対しても不快症状が現れないと報告されています。
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JCRRAG_001542
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生物学
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遺伝子頻度の変化と進化:ハーディ・ワインベルグの法則
遺伝子プールとは?
交配可能な集団に存在する遺伝子のすべてを遺伝子プールと呼ぶ。遺伝子頻度とは遺伝子プール内における遺伝子の出現頻度である。
遺伝子頻度と遺伝子型の頻度
遺伝子プールにおける、1つの遺伝子座における対立遺伝子の頻度を遺伝子頻度と呼ぶ。遺伝子頻度はある遺伝子の数を全体の遺伝子数で割って計算できる。
遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度を掛けた値となる。
例えば、100個体の集団でAとaの2つの対立遺伝子が存在し、AA、Aa、aaの遺伝子型を持った個体が64、32、4個体存在したとする。
Aとaが自由交配によって混ぜ合わさると考えると、実際の遺伝子型の組み合わせは次の通りになる。
これに、実際の遺伝子型の頻度(1=100%とする)を当てはめると次のようになる。
それぞれの遺伝子型の頻度は、遺伝子の頻度を掛け合わせた値であるから、次の計算式が成り立つ。
Aとaを求めると次のようになる。
一般的には、遺伝子頻度はp、qといった値として参考書などには掲載されている。遺伝子型の頻度は、pとqの値によって決定する。
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遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度をどうした値となりますか。
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遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度を掛けた値となります。
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JCRRAG_001543
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生物学
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、東アジア地域に分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類である。日本においては、北海道から九州、山間部から都市部、さらには海岸部等にまで広く分布し、津軽海峡を境に南にホンドタヌキNyctereutes procyonoides viverrinus 北にエゾタヌキNyctereutes procyonoides albus が生息している(Kauhala and Saeki, 2016)。タヌキは人間の生活圏の近くにも生息する身近な哺乳類として親しまれている一方、餌付けによる人馴れ(福井,2013;小島,2016)、農業被害(竹内・佐伯,2008)、衛生上の問題(村杉ほか,1996;内田ほか,1999)等の課題があることが指摘されている。近年、日本の様々な地域において、タヌキの疥癬症が流行している。日本におけるタヌキの疥癬症は、1981年に岐阜県で初めて感染個体が確認され(鈴木ほか,1981)、その後全国各地で疥癬症に感染した事例(以下、疥癬タヌキ)が報告されている(例えば、山本ほか,1998;落合ほか, 2003;松本ほか,2011;鈴木ほか,2020)。疥癬症は、ヒゼンダニ類が皮膚に寄生することで生じる掻痒性の皮膚病である。ヒゼンダニ類は宿主範囲が広く、人や愛玩動物、多くの野生哺乳類等において、疥癬症を発症させる(板垣・大石,1984)。種としてのセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei は宿主に対応した生理的変種に分かれ、タヌキに寄生して疥癬症を引き起こすイヌセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei var. canisは、ヒトに寄生することはほとんどないと考えられており(斎藤,2019)、愛玩動物であるネコFelis catusへの寄生も難しいとされる(Arlian et al. 1988)。しかし、センコウヒゼンダニによって引き起こされる野生動物の疥癬症例は数多く、タヌキのほかに、キツネVulpes vulpes、ハクビシンPaguma larvata、イノシシSus scrofa、ニホンカモシカCapriconis crispus、ニホンアナグマMeles anakuma、ニホンテンMartes melampus 等の日本に生息する様々な野生哺乳類種において感染が報告されている(塚田ほか,1999;落合ほか,2003;Makouloutou et al. 2015)。野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態は悪化する(Skerratt et al. 1999;Borchard et al. 2012)。ヒゼンダニ類は宿主の角質層にトンネルを掘ることで角質層を錯角化し(内川,2001;今井,2006)、痂皮形成や脱毛といった症状を引き起こす(Pence and Ueckermann, 2002)。重度感染した場合は、特に痂皮形成や炎症等によって生存や活動に必要なエネルギー量が増加し、健常個体よりも長時間にわたって採餌活動を行わなければならないこと(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005)、目の周りの皮膚が分厚くなり痂皮ができて視覚障害が生じること(Skerratt et al. 1999)、脱毛や痂皮形成によって毛皮による体温の維持管理能力が低下すること(内田ほか,2008)、体温を保つために必要な脂肪の蓄積量が変化すること(鈴木ほか,2020)等の理由により、夜行性の野生動物が昼間に活動するようになることが報告されている(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005;Borchard et al. 2012)。日本では、タヌキが比較的身近な野生哺乳類であることもあり、疥癬タヌキや疥癬タヌキに寄生しているヒゼンダニに関する研究は少なからず行われてきた(例えば、Saito and Koike, 2017;鈴木ほか,2020;杉浦,2020)。しかし、疥癬タヌキの昼間の活動に関しては目撃例等の定性的な記録に留まっており、定量的な報告はほとんどみられない。タヌキは人の生活圏に近い場所にも多く生息しており、さらにタヌキの疥癬症は都市部ほど感染率が高くなる傾向が指摘されている(Saito and Koike, 2017)。このような人の生活圏に近い場所にも生息するタヌキが疥癬症の影響によって昼間に活動することは、人や愛玩動物との遭遇頻度、ヒゼンダニ類やタヌキが媒介するウイルスの付着、拡大の機会を増加させることに直結し、様々な問題を引き起こす可能性がある。例えば、愛玩動物への疥癬症の伝播(鈴木ほか,1981)、人の生活圏へのヒゼンダニ類の侵入機会の増加といった公衆衛生上の問題や、疥癬症そのものの伝播以外にも、狂犬病等のより危険性が高いウイルスが日本に侵入した場合には、その感染の機会を拡大してしまう恐れ等が考えられる。そのため、疥癬タヌキの昼間の活動は、人獣共通感染症等、人と野生動物の共存を考える上で注意が必要となる可能性があり、事例を積み重ねていく必要がある。そこで本報告は、東京都西部の南多摩地域に位置する都市公園でのカメラトラップ調査によってタヌキの活動時間を定量的に評価し、疥癬タヌキの活動時間について基礎的な知見を得ることを目的とした。
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近年、日本の様々な地域において、タヌキの何が流行していますか。
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近年、日本の様々な地域において、タヌキの疥癬症が流行しています。
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JCRRAG_001544
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生物学
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、東アジア地域に分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類である。日本においては、北海道から九州、山間部から都市部、さらには海岸部等にまで広く分布し、津軽海峡を境に南にホンドタヌキNyctereutes procyonoides viverrinus 北にエゾタヌキNyctereutes procyonoides albus が生息している(Kauhala and Saeki, 2016)。タヌキは人間の生活圏の近くにも生息する身近な哺乳類として親しまれている一方、餌付けによる人馴れ(福井,2013;小島,2016)、農業被害(竹内・佐伯,2008)、衛生上の問題(村杉ほか,1996;内田ほか,1999)等の課題があることが指摘されている。近年、日本の様々な地域において、タヌキの疥癬症が流行している。日本におけるタヌキの疥癬症は、1981年に岐阜県で初めて感染個体が確認され(鈴木ほか,1981)、その後全国各地で疥癬症に感染した事例(以下、疥癬タヌキ)が報告されている(例えば、山本ほか,1998;落合ほか, 2003;松本ほか,2011;鈴木ほか,2020)。疥癬症は、ヒゼンダニ類が皮膚に寄生することで生じる掻痒性の皮膚病である。ヒゼンダニ類は宿主範囲が広く、人や愛玩動物、多くの野生哺乳類等において、疥癬症を発症させる(板垣・大石,1984)。種としてのセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei は宿主に対応した生理的変種に分かれ、タヌキに寄生して疥癬症を引き起こすイヌセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei var. canisは、ヒトに寄生することはほとんどないと考えられており(斎藤,2019)、愛玩動物であるネコFelis catusへの寄生も難しいとされる(Arlian et al. 1988)。しかし、センコウヒゼンダニによって引き起こされる野生動物の疥癬症例は数多く、タヌキのほかに、キツネVulpes vulpes、ハクビシンPaguma larvata、イノシシSus scrofa、ニホンカモシカCapriconis crispus、ニホンアナグマMeles anakuma、ニホンテンMartes melampus 等の日本に生息する様々な野生哺乳類種において感染が報告されている(塚田ほか,1999;落合ほか,2003;Makouloutou et al. 2015)。野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態は悪化する(Skerratt et al. 1999;Borchard et al. 2012)。ヒゼンダニ類は宿主の角質層にトンネルを掘ることで角質層を錯角化し(内川,2001;今井,2006)、痂皮形成や脱毛といった症状を引き起こす(Pence and Ueckermann, 2002)。重度感染した場合は、特に痂皮形成や炎症等によって生存や活動に必要なエネルギー量が増加し、健常個体よりも長時間にわたって採餌活動を行わなければならないこと(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005)、目の周りの皮膚が分厚くなり痂皮ができて視覚障害が生じること(Skerratt et al. 1999)、脱毛や痂皮形成によって毛皮による体温の維持管理能力が低下すること(内田ほか,2008)、体温を保つために必要な脂肪の蓄積量が変化すること(鈴木ほか,2020)等の理由により、夜行性の野生動物が昼間に活動するようになることが報告されている(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005;Borchard et al. 2012)。日本では、タヌキが比較的身近な野生哺乳類であることもあり、疥癬タヌキや疥癬タヌキに寄生しているヒゼンダニに関する研究は少なからず行われてきた(例えば、Saito and Koike, 2017;鈴木ほか,2020;杉浦,2020)。しかし、疥癬タヌキの昼間の活動に関しては目撃例等の定性的な記録に留まっており、定量的な報告はほとんどみられない。タヌキは人の生活圏に近い場所にも多く生息しており、さらにタヌキの疥癬症は都市部ほど感染率が高くなる傾向が指摘されている(Saito and Koike, 2017)。このような人の生活圏に近い場所にも生息するタヌキが疥癬症の影響によって昼間に活動することは、人や愛玩動物との遭遇頻度、ヒゼンダニ類やタヌキが媒介するウイルスの付着、拡大の機会を増加させることに直結し、様々な問題を引き起こす可能性がある。例えば、愛玩動物への疥癬症の伝播(鈴木ほか,1981)、人の生活圏へのヒゼンダニ類の侵入機会の増加といった公衆衛生上の問題や、疥癬症そのものの伝播以外にも、狂犬病等のより危険性が高いウイルスが日本に侵入した場合には、その感染の機会を拡大してしまう恐れ等が考えられる。そのため、疥癬タヌキの昼間の活動は、人獣共通感染症等、人と野生動物の共存を考える上で注意が必要となる可能性があり、事例を積み重ねていく必要がある。そこで本報告は、東京都西部の南多摩地域に位置する都市公園でのカメラトラップ調査によってタヌキの活動時間を定量的に評価し、疥癬タヌキの活動時間について基礎的な知見を得ることを目的とした。
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日本におけるタヌキの疥癬症は、何年に初めて確認されましたか。
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日本におけるタヌキの疥癬症は、1981年に初めて確認されました。
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JCRRAG_001545
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生物学
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、東アジア地域に分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類である。日本においては、北海道から九州、山間部から都市部、さらには海岸部等にまで広く分布し、津軽海峡を境に南にホンドタヌキNyctereutes procyonoides viverrinus 北にエゾタヌキNyctereutes procyonoides albus が生息している(Kauhala and Saeki, 2016)。タヌキは人間の生活圏の近くにも生息する身近な哺乳類として親しまれている一方、餌付けによる人馴れ(福井,2013;小島,2016)、農業被害(竹内・佐伯,2008)、衛生上の問題(村杉ほか,1996;内田ほか,1999)等の課題があることが指摘されている。近年、日本の様々な地域において、タヌキの疥癬症が流行している。日本におけるタヌキの疥癬症は、1981年に岐阜県で初めて感染個体が確認され(鈴木ほか,1981)、その後全国各地で疥癬症に感染した事例(以下、疥癬タヌキ)が報告されている(例えば、山本ほか,1998;落合ほか, 2003;松本ほか,2011;鈴木ほか,2020)。疥癬症は、ヒゼンダニ類が皮膚に寄生することで生じる掻痒性の皮膚病である。ヒゼンダニ類は宿主範囲が広く、人や愛玩動物、多くの野生哺乳類等において、疥癬症を発症させる(板垣・大石,1984)。種としてのセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei は宿主に対応した生理的変種に分かれ、タヌキに寄生して疥癬症を引き起こすイヌセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei var. canisは、ヒトに寄生することはほとんどないと考えられており(斎藤,2019)、愛玩動物であるネコFelis catusへの寄生も難しいとされる(Arlian et al. 1988)。しかし、センコウヒゼンダニによって引き起こされる野生動物の疥癬症例は数多く、タヌキのほかに、キツネVulpes vulpes、ハクビシンPaguma larvata、イノシシSus scrofa、ニホンカモシカCapriconis crispus、ニホンアナグマMeles anakuma、ニホンテンMartes melampus 等の日本に生息する様々な野生哺乳類種において感染が報告されている(塚田ほか,1999;落合ほか,2003;Makouloutou et al. 2015)。野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態は悪化する(Skerratt et al. 1999;Borchard et al. 2012)。ヒゼンダニ類は宿主の角質層にトンネルを掘ることで角質層を錯角化し(内川,2001;今井,2006)、痂皮形成や脱毛といった症状を引き起こす(Pence and Ueckermann, 2002)。重度感染した場合は、特に痂皮形成や炎症等によって生存や活動に必要なエネルギー量が増加し、健常個体よりも長時間にわたって採餌活動を行わなければならないこと(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005)、目の周りの皮膚が分厚くなり痂皮ができて視覚障害が生じること(Skerratt et al. 1999)、脱毛や痂皮形成によって毛皮による体温の維持管理能力が低下すること(内田ほか,2008)、体温を保つために必要な脂肪の蓄積量が変化すること(鈴木ほか,2020)等の理由により、夜行性の野生動物が昼間に活動するようになることが報告されている(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005;Borchard et al. 2012)。日本では、タヌキが比較的身近な野生哺乳類であることもあり、疥癬タヌキや疥癬タヌキに寄生しているヒゼンダニに関する研究は少なからず行われてきた(例えば、Saito and Koike, 2017;鈴木ほか,2020;杉浦,2020)。しかし、疥癬タヌキの昼間の活動に関しては目撃例等の定性的な記録に留まっており、定量的な報告はほとんどみられない。タヌキは人の生活圏に近い場所にも多く生息しており、さらにタヌキの疥癬症は都市部ほど感染率が高くなる傾向が指摘されている(Saito and Koike, 2017)。このような人の生活圏に近い場所にも生息するタヌキが疥癬症の影響によって昼間に活動することは、人や愛玩動物との遭遇頻度、ヒゼンダニ類やタヌキが媒介するウイルスの付着、拡大の機会を増加させることに直結し、様々な問題を引き起こす可能性がある。例えば、愛玩動物への疥癬症の伝播(鈴木ほか,1981)、人の生活圏へのヒゼンダニ類の侵入機会の増加といった公衆衛生上の問題や、疥癬症そのものの伝播以外にも、狂犬病等のより危険性が高いウイルスが日本に侵入した場合には、その感染の機会を拡大してしまう恐れ等が考えられる。そのため、疥癬タヌキの昼間の活動は、人獣共通感染症等、人と野生動物の共存を考える上で注意が必要となる可能性があり、事例を積み重ねていく必要がある。そこで本報告は、東京都西部の南多摩地域に位置する都市公園でのカメラトラップ調査によってタヌキの活動時間を定量的に評価し、疥癬タヌキの活動時間について基礎的な知見を得ることを目的とした。
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野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態はどうなりますか。
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野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態は悪化します。
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JCRRAG_001546
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生物学
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タヌキNyctereutes procyonoidesは、東アジア地域に分布する食肉目イヌ科の中型哺乳類である。日本においては、北海道から九州、山間部から都市部、さらには海岸部等にまで広く分布し、津軽海峡を境に南にホンドタヌキNyctereutes procyonoides viverrinus 北にエゾタヌキNyctereutes procyonoides albus が生息している(Kauhala and Saeki, 2016)。タヌキは人間の生活圏の近くにも生息する身近な哺乳類として親しまれている一方、餌付けによる人馴れ(福井,2013;小島,2016)、農業被害(竹内・佐伯,2008)、衛生上の問題(村杉ほか,1996;内田ほか,1999)等の課題があることが指摘されている。近年、日本の様々な地域において、タヌキの疥癬症が流行している。日本におけるタヌキの疥癬症は、1981年に岐阜県で初めて感染個体が確認され(鈴木ほか,1981)、その後全国各地で疥癬症に感染した事例(以下、疥癬タヌキ)が報告されている(例えば、山本ほか,1998;落合ほか, 2003;松本ほか,2011;鈴木ほか,2020)。疥癬症は、ヒゼンダニ類が皮膚に寄生することで生じる掻痒性の皮膚病である。ヒゼンダニ類は宿主範囲が広く、人や愛玩動物、多くの野生哺乳類等において、疥癬症を発症させる(板垣・大石,1984)。種としてのセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei は宿主に対応した生理的変種に分かれ、タヌキに寄生して疥癬症を引き起こすイヌセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei var. canisは、ヒトに寄生することはほとんどないと考えられており(斎藤,2019)、愛玩動物であるネコFelis catusへの寄生も難しいとされる(Arlian et al. 1988)。しかし、センコウヒゼンダニによって引き起こされる野生動物の疥癬症例は数多く、タヌキのほかに、キツネVulpes vulpes、ハクビシンPaguma larvata、イノシシSus scrofa、ニホンカモシカCapriconis crispus、ニホンアナグマMeles anakuma、ニホンテンMartes melampus 等の日本に生息する様々な野生哺乳類種において感染が報告されている(塚田ほか,1999;落合ほか,2003;Makouloutou et al. 2015)。野生哺乳類がヒゼンダニ類に寄生され疥癬症を発症すると、その宿主の健康状態は悪化する(Skerratt et al. 1999;Borchard et al. 2012)。ヒゼンダニ類は宿主の角質層にトンネルを掘ることで角質層を錯角化し(内川,2001;今井,2006)、痂皮形成や脱毛といった症状を引き起こす(Pence and Ueckermann, 2002)。重度感染した場合は、特に痂皮形成や炎症等によって生存や活動に必要なエネルギー量が増加し、健常個体よりも長時間にわたって採餌活動を行わなければならないこと(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005)、目の周りの皮膚が分厚くなり痂皮ができて視覚障害が生じること(Skerratt et al. 1999)、脱毛や痂皮形成によって毛皮による体温の維持管理能力が低下すること(内田ほか,2008)、体温を保つために必要な脂肪の蓄積量が変化すること(鈴木ほか,2020)等の理由により、夜行性の野生動物が昼間に活動するようになることが報告されている(Skerratt et al. 1999;Hartley and English, 2005;Borchard et al. 2012)。日本では、タヌキが比較的身近な野生哺乳類であることもあり、疥癬タヌキや疥癬タヌキに寄生しているヒゼンダニに関する研究は少なからず行われてきた(例えば、Saito and Koike, 2017;鈴木ほか,2020;杉浦,2020)。しかし、疥癬タヌキの昼間の活動に関しては目撃例等の定性的な記録に留まっており、定量的な報告はほとんどみられない。タヌキは人の生活圏に近い場所にも多く生息しており、さらにタヌキの疥癬症は都市部ほど感染率が高くなる傾向が指摘されている(Saito and Koike, 2017)。このような人の生活圏に近い場所にも生息するタヌキが疥癬症の影響によって昼間に活動することは、人や愛玩動物との遭遇頻度、ヒゼンダニ類やタヌキが媒介するウイルスの付着、拡大の機会を増加させることに直結し、様々な問題を引き起こす可能性がある。例えば、愛玩動物への疥癬症の伝播(鈴木ほか,1981)、人の生活圏へのヒゼンダニ類の侵入機会の増加といった公衆衛生上の問題や、疥癬症そのものの伝播以外にも、狂犬病等のより危険性が高いウイルスが日本に侵入した場合には、その感染の機会を拡大してしまう恐れ等が考えられる。そのため、疥癬タヌキの昼間の活動は、人獣共通感染症等、人と野生動物の共存を考える上で注意が必要となる可能性があり、事例を積み重ねていく必要がある。そこで本報告は、東京都西部の南多摩地域に位置する都市公園でのカメラトラップ調査によってタヌキの活動時間を定量的に評価し、疥癬タヌキの活動時間について基礎的な知見を得ることを目的とした。
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野生動物の疥癬症例が数多いのはどのダニですか。
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野生動物の疥癬症例が数多いのはセンコウヒゼンダニです。
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JCRRAG_001547
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生物学
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近年ニホンジカ(Cervus nippon, 以下シカ)が増加して、植生に強い影響を及ぼし(Takatsuki, 2009)、さらに間接的に動物への波及効果も起きることが報告されるようになった(Hino, 2000;Yamada and Takatsuki, 2015)。植生が変化すれば、必然的に果実の量や組成も変化し、草食性昆虫が減少するし、群落の構造の変化により、それを生息地として利用する昆虫も影響を受ける(Yamada and Takatsuki, 2015)。ホンドテン(Martes melampus、以下テン)は果実や昆虫をよく採食する(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001;荒井ほか,2003)。したがって、シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じてテンの食性にも影響を及ぼすと予測される。しかし、これまでの多くのテンの食性分析は1年間の調査であり(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001など)、シカの増加前後での比較はできない。荒井ほか(2003)はテンの食性を5年間調べているが、季節変化主体で経年変化についてあまり議論していない。Tsuji et al.(2014)は、東京都西部におけるテンの食性には果実、哺乳類、昆虫などに経年変化があることを明らかにしたが、これはおもに生息地の結実量の年変動をとらえるための調査である。本調査ではこれまでおこなわれたことがない、シカの増加とテンの食性の経年変化に着目した。九州を含む各地でシカが増加している。本調査地でのシカ個体数のデータはないが、福岡県のシカ捕獲数は2000年から2013年にかけて5倍に増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。農業被害額は1996年にはわずか5万円と実質ほとんど被害がなかったが、2001年には496万円になり、2010年には2945万円と14年間で600倍近く(9年間でも5.9倍)増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。シカの増加はしばしば植生に大きな変化をもたらす(Takatsuki, 2009)。植生変化は低木類の果実を減少させ、草食性の昆虫を減少させるといった変化を通じてテンの食性に間接的に影響する可能性がある。一方、シカが増えれば晩冬から早春に死体が出て、肉食動物の食性に影響する可能性が高い。シカ死体の増加と肉食性哺乳類の食性の経年変化については、北海道ではエゾシカCervus nippon yesoensisの増加にともなって、エゾヒグマUrsus arcrtosの食性が変化し、エゾシカの利用率が増加したことが知られている(Kobayashi et al. 2012)。テン類では、アメリカテンMartes americanaは齧歯類を主要な食物としているが、大型獣の死体があればよく利用し、利用頻度は低くても資源量としては重要であることが示されているし(Cumberl and et al. 2002)、フィッシャーMartes pennantiは大型獣の死体を貯食することが知られている(Huner and Peter, 2013)。これまで日本のテンの食性でシカを記録したものはなかったが、最近、山梨県北部での分析例で初めて記録された(足立ほか2016)。シカの増加は全国的な問題になっており、シカの個体数増加がテンを含む食肉目の食性にまで波及することを示すことは、シカの影響の広がりを認識する上で有意義である。本研究ではこのことに併せて、基礎的なテン食性について種子散布に着目して分析した。これまでのテンの食性研究は、テンの生活史のひとつとして食性を取り上げているものが多かったが、最近では種子散布者としての面にも着目されるようになった(アメリカテン:Hickey et al. 1999、ムナジロテンMartes foinaとマツテンM.martes:Schaumann and Heinken, 2002、ホンドテン:Otani, 2002;Tsuji et al. 2011;Yasumoto and Takatsuki, 2015)。Yasumoto and Takatsuki(2015)は東京西部のテンの糞分析をし、糞から多量に検出されたサルナシActinidia arguta (Siebold et Zucc.) Planch. ex Miq.の種子に注目した。そして、サルナシ果実の果皮が緑色で、甘い匂いがすることから、哺乳類散布であると想定した上で、サルナシ種子はテンによって林縁に強く偏った指向性散布されている可能性を示した。このように、テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、テンの種子散布の可能性を示すのに有効である。以上の背景から、本研究では九州のテンの食性について11年間という長期にわたる変化を明らかにする。その際、これまで着目されることがなかったシカによる植生の変化とテンの食性の関係と、テンによるシカの死亡個体の利用に着目する。またテンによる種子散布の可能性を、テンが利用する果実の生育地、生育型の特徴と、味、色などの特徴について考察する。
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ホンドテンは何をよく採集しますか。
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ホンドテンは、果実や昆虫をよく採食します。
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JCRRAG_001548
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生物学
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近年ニホンジカ(Cervus nippon, 以下シカ)が増加して、植生に強い影響を及ぼし(Takatsuki, 2009)、さらに間接的に動物への波及効果も起きることが報告されるようになった(Hino, 2000;Yamada and Takatsuki, 2015)。植生が変化すれば、必然的に果実の量や組成も変化し、草食性昆虫が減少するし、群落の構造の変化により、それを生息地として利用する昆虫も影響を受ける(Yamada and Takatsuki, 2015)。ホンドテン(Martes melampus、以下テン)は果実や昆虫をよく採食する(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001;荒井ほか,2003)。したがって、シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じてテンの食性にも影響を及ぼすと予測される。しかし、これまでの多くのテンの食性分析は1年間の調査であり(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001など)、シカの増加前後での比較はできない。荒井ほか(2003)はテンの食性を5年間調べているが、季節変化主体で経年変化についてあまり議論していない。Tsuji et al.(2014)は、東京都西部におけるテンの食性には果実、哺乳類、昆虫などに経年変化があることを明らかにしたが、これはおもに生息地の結実量の年変動をとらえるための調査である。本調査ではこれまでおこなわれたことがない、シカの増加とテンの食性の経年変化に着目した。九州を含む各地でシカが増加している。本調査地でのシカ個体数のデータはないが、福岡県のシカ捕獲数は2000年から2013年にかけて5倍に増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。農業被害額は1996年にはわずか5万円と実質ほとんど被害がなかったが、2001年には496万円になり、2010年には2945万円と14年間で600倍近く(9年間でも5.9倍)増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。シカの増加はしばしば植生に大きな変化をもたらす(Takatsuki, 2009)。植生変化は低木類の果実を減少させ、草食性の昆虫を減少させるといった変化を通じてテンの食性に間接的に影響する可能性がある。一方、シカが増えれば晩冬から早春に死体が出て、肉食動物の食性に影響する可能性が高い。シカ死体の増加と肉食性哺乳類の食性の経年変化については、北海道ではエゾシカCervus nippon yesoensisの増加にともなって、エゾヒグマUrsus arcrtosの食性が変化し、エゾシカの利用率が増加したことが知られている(Kobayashi et al. 2012)。テン類では、アメリカテンMartes americanaは齧歯類を主要な食物としているが、大型獣の死体があればよく利用し、利用頻度は低くても資源量としては重要であることが示されているし(Cumberl and et al. 2002)、フィッシャーMartes pennantiは大型獣の死体を貯食することが知られている(Huner and Peter, 2013)。これまで日本のテンの食性でシカを記録したものはなかったが、最近、山梨県北部での分析例で初めて記録された(足立ほか2016)。シカの増加は全国的な問題になっており、シカの個体数増加がテンを含む食肉目の食性にまで波及することを示すことは、シカの影響の広がりを認識する上で有意義である。本研究ではこのことに併せて、基礎的なテン食性について種子散布に着目して分析した。これまでのテンの食性研究は、テンの生活史のひとつとして食性を取り上げているものが多かったが、最近では種子散布者としての面にも着目されるようになった(アメリカテン:Hickey et al. 1999、ムナジロテンMartes foinaとマツテンM.martes:Schaumann and Heinken, 2002、ホンドテン:Otani, 2002;Tsuji et al. 2011;Yasumoto and Takatsuki, 2015)。Yasumoto and Takatsuki(2015)は東京西部のテンの糞分析をし、糞から多量に検出されたサルナシActinidia arguta (Siebold et Zucc.) Planch. ex Miq.の種子に注目した。そして、サルナシ果実の果皮が緑色で、甘い匂いがすることから、哺乳類散布であると想定した上で、サルナシ種子はテンによって林縁に強く偏った指向性散布されている可能性を示した。このように、テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、テンの種子散布の可能性を示すのに有効である。以上の背景から、本研究では九州のテンの食性について11年間という長期にわたる変化を明らかにする。その際、これまで着目されることがなかったシカによる植生の変化とテンの食性の関係と、テンによるシカの死亡個体の利用に着目する。またテンによる種子散布の可能性を、テンが利用する果実の生育地、生育型の特徴と、味、色などの特徴について考察する。
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シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じて、何の食性にも影響を及ぼすと予測されますか。
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シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じて、テンの食性にも影響を及ぼすと予測されます。
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JCRRAG_001549
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生物学
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近年ニホンジカ(Cervus nippon, 以下シカ)が増加して、植生に強い影響を及ぼし(Takatsuki, 2009)、さらに間接的に動物への波及効果も起きることが報告されるようになった(Hino, 2000;Yamada and Takatsuki, 2015)。植生が変化すれば、必然的に果実の量や組成も変化し、草食性昆虫が減少するし、群落の構造の変化により、それを生息地として利用する昆虫も影響を受ける(Yamada and Takatsuki, 2015)。ホンドテン(Martes melampus、以下テン)は果実や昆虫をよく採食する(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001;荒井ほか,2003)。したがって、シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じてテンの食性にも影響を及ぼすと予測される。しかし、これまでの多くのテンの食性分析は1年間の調査であり(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001など)、シカの増加前後での比較はできない。荒井ほか(2003)はテンの食性を5年間調べているが、季節変化主体で経年変化についてあまり議論していない。Tsuji et al.(2014)は、東京都西部におけるテンの食性には果実、哺乳類、昆虫などに経年変化があることを明らかにしたが、これはおもに生息地の結実量の年変動をとらえるための調査である。本調査ではこれまでおこなわれたことがない、シカの増加とテンの食性の経年変化に着目した。九州を含む各地でシカが増加している。本調査地でのシカ個体数のデータはないが、福岡県のシカ捕獲数は2000年から2013年にかけて5倍に増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。農業被害額は1996年にはわずか5万円と実質ほとんど被害がなかったが、2001年には496万円になり、2010年には2945万円と14年間で600倍近く(9年間でも5.9倍)増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。シカの増加はしばしば植生に大きな変化をもたらす(Takatsuki, 2009)。植生変化は低木類の果実を減少させ、草食性の昆虫を減少させるといった変化を通じてテンの食性に間接的に影響する可能性がある。一方、シカが増えれば晩冬から早春に死体が出て、肉食動物の食性に影響する可能性が高い。シカ死体の増加と肉食性哺乳類の食性の経年変化については、北海道ではエゾシカCervus nippon yesoensisの増加にともなって、エゾヒグマUrsus arcrtosの食性が変化し、エゾシカの利用率が増加したことが知られている(Kobayashi et al. 2012)。テン類では、アメリカテンMartes americanaは齧歯類を主要な食物としているが、大型獣の死体があればよく利用し、利用頻度は低くても資源量としては重要であることが示されているし(Cumberl and et al. 2002)、フィッシャーMartes pennantiは大型獣の死体を貯食することが知られている(Huner and Peter, 2013)。これまで日本のテンの食性でシカを記録したものはなかったが、最近、山梨県北部での分析例で初めて記録された(足立ほか2016)。シカの増加は全国的な問題になっており、シカの個体数増加がテンを含む食肉目の食性にまで波及することを示すことは、シカの影響の広がりを認識する上で有意義である。本研究ではこのことに併せて、基礎的なテン食性について種子散布に着目して分析した。これまでのテンの食性研究は、テンの生活史のひとつとして食性を取り上げているものが多かったが、最近では種子散布者としての面にも着目されるようになった(アメリカテン:Hickey et al. 1999、ムナジロテンMartes foinaとマツテンM.martes:Schaumann and Heinken, 2002、ホンドテン:Otani, 2002;Tsuji et al. 2011;Yasumoto and Takatsuki, 2015)。Yasumoto and Takatsuki(2015)は東京西部のテンの糞分析をし、糞から多量に検出されたサルナシActinidia arguta (Siebold et Zucc.) Planch. ex Miq.の種子に注目した。そして、サルナシ果実の果皮が緑色で、甘い匂いがすることから、哺乳類散布であると想定した上で、サルナシ種子はテンによって林縁に強く偏った指向性散布されている可能性を示した。このように、テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、テンの種子散布の可能性を示すのに有効である。以上の背景から、本研究では九州のテンの食性について11年間という長期にわたる変化を明らかにする。その際、これまで着目されることがなかったシカによる植生の変化とテンの食性の関係と、テンによるシカの死亡個体の利用に着目する。またテンによる種子散布の可能性を、テンが利用する果実の生育地、生育型の特徴と、味、色などの特徴について考察する。
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植生変化は何類の果実を減少させますか。
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植生変化は低木類の果実を減少させます。
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JCRRAG_001550
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生物学
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近年ニホンジカ(Cervus nippon, 以下シカ)が増加して、植生に強い影響を及ぼし(Takatsuki, 2009)、さらに間接的に動物への波及効果も起きることが報告されるようになった(Hino, 2000;Yamada and Takatsuki, 2015)。植生が変化すれば、必然的に果実の量や組成も変化し、草食性昆虫が減少するし、群落の構造の変化により、それを生息地として利用する昆虫も影響を受ける(Yamada and Takatsuki, 2015)。ホンドテン(Martes melampus、以下テン)は果実や昆虫をよく採食する(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001;荒井ほか,2003)。したがって、シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じてテンの食性にも影響を及ぼすと予測される。しかし、これまでの多くのテンの食性分析は1年間の調査であり(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001など)、シカの増加前後での比較はできない。荒井ほか(2003)はテンの食性を5年間調べているが、季節変化主体で経年変化についてあまり議論していない。Tsuji et al.(2014)は、東京都西部におけるテンの食性には果実、哺乳類、昆虫などに経年変化があることを明らかにしたが、これはおもに生息地の結実量の年変動をとらえるための調査である。本調査ではこれまでおこなわれたことがない、シカの増加とテンの食性の経年変化に着目した。九州を含む各地でシカが増加している。本調査地でのシカ個体数のデータはないが、福岡県のシカ捕獲数は2000年から2013年にかけて5倍に増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。農業被害額は1996年にはわずか5万円と実質ほとんど被害がなかったが、2001年には496万円になり、2010年には2945万円と14年間で600倍近く(9年間でも5.9倍)増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。シカの増加はしばしば植生に大きな変化をもたらす(Takatsuki, 2009)。植生変化は低木類の果実を減少させ、草食性の昆虫を減少させるといった変化を通じてテンの食性に間接的に影響する可能性がある。一方、シカが増えれば晩冬から早春に死体が出て、肉食動物の食性に影響する可能性が高い。シカ死体の増加と肉食性哺乳類の食性の経年変化については、北海道ではエゾシカCervus nippon yesoensisの増加にともなって、エゾヒグマUrsus arcrtosの食性が変化し、エゾシカの利用率が増加したことが知られている(Kobayashi et al. 2012)。テン類では、アメリカテンMartes americanaは齧歯類を主要な食物としているが、大型獣の死体があればよく利用し、利用頻度は低くても資源量としては重要であることが示されているし(Cumberl and et al. 2002)、フィッシャーMartes pennantiは大型獣の死体を貯食することが知られている(Huner and Peter, 2013)。これまで日本のテンの食性でシカを記録したものはなかったが、最近、山梨県北部での分析例で初めて記録された(足立ほか2016)。シカの増加は全国的な問題になっており、シカの個体数増加がテンを含む食肉目の食性にまで波及することを示すことは、シカの影響の広がりを認識する上で有意義である。本研究ではこのことに併せて、基礎的なテン食性について種子散布に着目して分析した。これまでのテンの食性研究は、テンの生活史のひとつとして食性を取り上げているものが多かったが、最近では種子散布者としての面にも着目されるようになった(アメリカテン:Hickey et al. 1999、ムナジロテンMartes foinaとマツテンM.martes:Schaumann and Heinken, 2002、ホンドテン:Otani, 2002;Tsuji et al. 2011;Yasumoto and Takatsuki, 2015)。Yasumoto and Takatsuki(2015)は東京西部のテンの糞分析をし、糞から多量に検出されたサルナシActinidia arguta (Siebold et Zucc.) Planch. ex Miq.の種子に注目した。そして、サルナシ果実の果皮が緑色で、甘い匂いがすることから、哺乳類散布であると想定した上で、サルナシ種子はテンによって林縁に強く偏った指向性散布されている可能性を示した。このように、テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、テンの種子散布の可能性を示すのに有効である。以上の背景から、本研究では九州のテンの食性について11年間という長期にわたる変化を明らかにする。その際、これまで着目されることがなかったシカによる植生の変化とテンの食性の関係と、テンによるシカの死亡個体の利用に着目する。またテンによる種子散布の可能性を、テンが利用する果実の生育地、生育型の特徴と、味、色などの特徴について考察する。
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これまでのテンの食性研究はテンの何として食性を取り上げているものが多かったですか。
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これまでのテンの食性研究は、テンの生活史のひとつとして食性を取り上げているものが多かったです。
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JCRRAG_001551
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生物学
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近年ニホンジカ(Cervus nippon, 以下シカ)が増加して、植生に強い影響を及ぼし(Takatsuki, 2009)、さらに間接的に動物への波及効果も起きることが報告されるようになった(Hino, 2000;Yamada and Takatsuki, 2015)。植生が変化すれば、必然的に果実の量や組成も変化し、草食性昆虫が減少するし、群落の構造の変化により、それを生息地として利用する昆虫も影響を受ける(Yamada and Takatsuki, 2015)。ホンドテン(Martes melampus、以下テン)は果実や昆虫をよく採食する(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001;荒井ほか,2003)。したがって、シカによる植生変化は果実の変化と昆虫の変化を通じてテンの食性にも影響を及ぼすと予測される。しかし、これまでの多くのテンの食性分析は1年間の調査であり(山岸,1990;山本,1994;中村ほか,2001など)、シカの増加前後での比較はできない。荒井ほか(2003)はテンの食性を5年間調べているが、季節変化主体で経年変化についてあまり議論していない。Tsuji et al.(2014)は、東京都西部におけるテンの食性には果実、哺乳類、昆虫などに経年変化があることを明らかにしたが、これはおもに生息地の結実量の年変動をとらえるための調査である。本調査ではこれまでおこなわれたことがない、シカの増加とテンの食性の経年変化に着目した。九州を含む各地でシカが増加している。本調査地でのシカ個体数のデータはないが、福岡県のシカ捕獲数は2000年から2013年にかけて5倍に増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。農業被害額は1996年にはわずか5万円と実質ほとんど被害がなかったが、2001年には496万円になり、2010年には2945万円と14年間で600倍近く(9年間でも5.9倍)増加している(福岡県第2特定鳥獣(シカ)管理計画第4期)。シカの増加はしばしば植生に大きな変化をもたらす(Takatsuki, 2009)。植生変化は低木類の果実を減少させ、草食性の昆虫を減少させるといった変化を通じてテンの食性に間接的に影響する可能性がある。一方、シカが増えれば晩冬から早春に死体が出て、肉食動物の食性に影響する可能性が高い。シカ死体の増加と肉食性哺乳類の食性の経年変化については、北海道ではエゾシカCervus nippon yesoensisの増加にともなって、エゾヒグマUrsus arcrtosの食性が変化し、エゾシカの利用率が増加したことが知られている(Kobayashi et al. 2012)。テン類では、アメリカテンMartes americanaは齧歯類を主要な食物としているが、大型獣の死体があればよく利用し、利用頻度は低くても資源量としては重要であることが示されているし(Cumberl and et al. 2002)、フィッシャーMartes pennantiは大型獣の死体を貯食することが知られている(Huner and Peter, 2013)。これまで日本のテンの食性でシカを記録したものはなかったが、最近、山梨県北部での分析例で初めて記録された(足立ほか2016)。シカの増加は全国的な問題になっており、シカの個体数増加がテンを含む食肉目の食性にまで波及することを示すことは、シカの影響の広がりを認識する上で有意義である。本研究ではこのことに併せて、基礎的なテン食性について種子散布に着目して分析した。これまでのテンの食性研究は、テンの生活史のひとつとして食性を取り上げているものが多かったが、最近では種子散布者としての面にも着目されるようになった(アメリカテン:Hickey et al. 1999、ムナジロテンMartes foinaとマツテンM.martes:Schaumann and Heinken, 2002、ホンドテン:Otani, 2002;Tsuji et al. 2011;Yasumoto and Takatsuki, 2015)。Yasumoto and Takatsuki(2015)は東京西部のテンの糞分析をし、糞から多量に検出されたサルナシActinidia arguta (Siebold et Zucc.) Planch. ex Miq.の種子に注目した。そして、サルナシ果実の果皮が緑色で、甘い匂いがすることから、哺乳類散布であると想定した上で、サルナシ種子はテンによって林縁に強く偏った指向性散布されている可能性を示した。このように、テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、テンの種子散布の可能性を示すのに有効である。以上の背景から、本研究では九州のテンの食性について11年間という長期にわたる変化を明らかにする。その際、これまで着目されることがなかったシカによる植生の変化とテンの食性の関係と、テンによるシカの死亡個体の利用に着目する。またテンによる種子散布の可能性を、テンが利用する果実の生育地、生育型の特徴と、味、色などの特徴について考察する。
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テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、どんな可能性を示すのに有効ですか。
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テンが利用する果実の散布型やその生育地を考慮することは、テンの種子散布の可能性を示すのに有効です。
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JCRRAG_001552
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生物学
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれ、前者は生息環境の悪化により現在も個体数が減少傾向を示すのに対し(IUCN2016http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22692167A93339099.en2018年3月30日確認)、後者は一時羽数が大きく減少したものの、現在は増加傾向にある(正富,2010;正富ほか,2017;Masatomi and Masatomi, 2018)。タンチョウは1880年代まで北海道に広く生息していたが(井上,1970)、1900年代に目撃記録が全道的に途絶え、個体群は絶滅したかと疑われた。道北のオホーツク海側でも、1780年代に書かれた北海記の記載からクッチャロ湖での生息が推測されるほか(久井,未発表)、日本海側では天塩日誌(松浦,1857)に「広野にして鶴、雁多しと」の記述がある。しかし、越冬環境がないため秋に南へ移動し、その途中の天敵等の攻撃や越冬地での捕獲、さらに越冬環境の消失・悪化等により、同じころに消滅したと思われる。ところが、1920年代に北海道東部(道東)の釧路湿原で少数の生存が確認され(斎藤,1926)、1952年のセンサスでは33羽が記録された(北海道教育庁振興部文化課,1975)。ただし、その後の個体群成長過程から、実際はその2~3倍が生息していたと推定される(Koga, 2008;正富,2010)。さらに、1950年代からの冬期給餌等により個体数は急増し、2015年に少なくとも1,637羽が数えられ(正富ほか, 2017)、その後も増加傾向は継続していると思われる。他方、湿原の農地化や宅地化などによる生息適地の減少と環境悪化により、道東の生息密度は徐々に高まり(正富, 2000)、小面積湿地の散在する根室半島地区や、繁殖に不適な高層湿原主体の霧多布湿原地域は、繁殖番い数が環境収容力の上限に達している(正富, 2010)。また、広い繁殖環境を保つ風蓮湖とそこへ流入する河川流域や、海岸湖沼の連なりと大きな河川流域を持つ十勝地区でも、残存湿原面積に対する繁殖番い密度の増大や近接巣間距離の測定値から、飽和に近い状態が容易に推測できる(Masatomi and Masatomi, 2018)。このため、新たな繁殖地を求める主に若齢個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきた。その一つが、湿原で囲まれた大小の湖沼が海岸沿いに点在する北海道北部地域(道北)である。道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、宗谷地方でタンチョウの記録はない(北海道開発局, 1972;北海道, 1975;正富・富士元, 1987a,b)。ところが、2002年にサロベツ原野とその周辺でタンチョウ2羽を複数回目撃したほか、2004年には営巣も確認し、その後オホーツク海側のクッチャロ湖でも生息・繁殖を認めた。しかし、道北のタンチョウは春~秋期のみ目撃され、冬は道東への回帰移動が一部確認されているものの、移動経路や越冬場所の多くは推測にとどまっている。繁殖地の過密化や越冬期の集中化、それに伴うリスクの増大等の課題を抱える北海道のタンチョウにとり、道北への進出は、種維持の面で新たな展開である。しかし、目下群れの成長段階で、変動の著しい状態にあると想定される道北のタンチョウについて、2016年以降の飛行調査の中断により全体的動向把握が不可能な状況に置かれている。そのため、飛行調査再開が強く望まれるとともに、それにより得られた資料を基に、道北やその他地域への進出の確実な把握と、各地域個体群の現状の比較解析を踏まえ、北海道個体群保全について総合的な対応を検討する必要がある。しかし、現在、その検討の基礎資料となる道北のタンチョウに関する記載が見当たらない。そこで、総括的論議を行う前段階として、出現の初期から実施した調査をもとに生息記録を集め、分布の過程と2015年までの状況、並びに飛行調査継続の必要性を含めたいくつかの問題点を取り上げて報告しておきたい。
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タンチョウは何年代まで北海道に広く生息していましたか。
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タンチョウは1880年代まで北海道に広く生息していました。
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JCRRAG_001553
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生物学
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれ、前者は生息環境の悪化により現在も個体数が減少傾向を示すのに対し(IUCN2016http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22692167A93339099.en2018年3月30日確認)、後者は一時羽数が大きく減少したものの、現在は増加傾向にある(正富,2010;正富ほか,2017;Masatomi and Masatomi, 2018)。タンチョウは1880年代まで北海道に広く生息していたが(井上,1970)、1900年代に目撃記録が全道的に途絶え、個体群は絶滅したかと疑われた。道北のオホーツク海側でも、1780年代に書かれた北海記の記載からクッチャロ湖での生息が推測されるほか(久井,未発表)、日本海側では天塩日誌(松浦,1857)に「広野にして鶴、雁多しと」の記述がある。しかし、越冬環境がないため秋に南へ移動し、その途中の天敵等の攻撃や越冬地での捕獲、さらに越冬環境の消失・悪化等により、同じころに消滅したと思われる。ところが、1920年代に北海道東部(道東)の釧路湿原で少数の生存が確認され(斎藤,1926)、1952年のセンサスでは33羽が記録された(北海道教育庁振興部文化課,1975)。ただし、その後の個体群成長過程から、実際はその2~3倍が生息していたと推定される(Koga, 2008;正富,2010)。さらに、1950年代からの冬期給餌等により個体数は急増し、2015年に少なくとも1,637羽が数えられ(正富ほか, 2017)、その後も増加傾向は継続していると思われる。他方、湿原の農地化や宅地化などによる生息適地の減少と環境悪化により、道東の生息密度は徐々に高まり(正富, 2000)、小面積湿地の散在する根室半島地区や、繁殖に不適な高層湿原主体の霧多布湿原地域は、繁殖番い数が環境収容力の上限に達している(正富, 2010)。また、広い繁殖環境を保つ風蓮湖とそこへ流入する河川流域や、海岸湖沼の連なりと大きな河川流域を持つ十勝地区でも、残存湿原面積に対する繁殖番い密度の増大や近接巣間距離の測定値から、飽和に近い状態が容易に推測できる(Masatomi and Masatomi, 2018)。このため、新たな繁殖地を求める主に若齢個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきた。その一つが、湿原で囲まれた大小の湖沼が海岸沿いに点在する北海道北部地域(道北)である。道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、宗谷地方でタンチョウの記録はない(北海道開発局, 1972;北海道, 1975;正富・富士元, 1987a,b)。ところが、2002年にサロベツ原野とその周辺でタンチョウ2羽を複数回目撃したほか、2004年には営巣も確認し、その後オホーツク海側のクッチャロ湖でも生息・繁殖を認めた。しかし、道北のタンチョウは春~秋期のみ目撃され、冬は道東への回帰移動が一部確認されているものの、移動経路や越冬場所の多くは推測にとどまっている。繁殖地の過密化や越冬期の集中化、それに伴うリスクの増大等の課題を抱える北海道のタンチョウにとり、道北への進出は、種維持の面で新たな展開である。しかし、目下群れの成長段階で、変動の著しい状態にあると想定される道北のタンチョウについて、2016年以降の飛行調査の中断により全体的動向把握が不可能な状況に置かれている。そのため、飛行調査再開が強く望まれるとともに、それにより得られた資料を基に、道北やその他地域への進出の確実な把握と、各地域個体群の現状の比較解析を踏まえ、北海道個体群保全について総合的な対応を検討する必要がある。しかし、現在、その検討の基礎資料となる道北のタンチョウに関する記載が見当たらない。そこで、総括的論議を行う前段階として、出現の初期から実施した調査をもとに生息記録を集め、分布の過程と2015年までの状況、並びに飛行調査継続の必要性を含めたいくつかの問題点を取り上げて報告しておきたい。
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と何の二つの地域個体群に分かれますか。
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれます。
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JCRRAG_001554
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生物学
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれ、前者は生息環境の悪化により現在も個体数が減少傾向を示すのに対し(IUCN2016http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22692167A93339099.en2018年3月30日確認)、後者は一時羽数が大きく減少したものの、現在は増加傾向にある(正富,2010;正富ほか,2017;Masatomi and Masatomi, 2018)。タンチョウは1880年代まで北海道に広く生息していたが(井上,1970)、1900年代に目撃記録が全道的に途絶え、個体群は絶滅したかと疑われた。道北のオホーツク海側でも、1780年代に書かれた北海記の記載からクッチャロ湖での生息が推測されるほか(久井,未発表)、日本海側では天塩日誌(松浦,1857)に「広野にして鶴、雁多しと」の記述がある。しかし、越冬環境がないため秋に南へ移動し、その途中の天敵等の攻撃や越冬地での捕獲、さらに越冬環境の消失・悪化等により、同じころに消滅したと思われる。ところが、1920年代に北海道東部(道東)の釧路湿原で少数の生存が確認され(斎藤,1926)、1952年のセンサスでは33羽が記録された(北海道教育庁振興部文化課,1975)。ただし、その後の個体群成長過程から、実際はその2~3倍が生息していたと推定される(Koga, 2008;正富,2010)。さらに、1950年代からの冬期給餌等により個体数は急増し、2015年に少なくとも1,637羽が数えられ(正富ほか, 2017)、その後も増加傾向は継続していると思われる。他方、湿原の農地化や宅地化などによる生息適地の減少と環境悪化により、道東の生息密度は徐々に高まり(正富, 2000)、小面積湿地の散在する根室半島地区や、繁殖に不適な高層湿原主体の霧多布湿原地域は、繁殖番い数が環境収容力の上限に達している(正富, 2010)。また、広い繁殖環境を保つ風蓮湖とそこへ流入する河川流域や、海岸湖沼の連なりと大きな河川流域を持つ十勝地区でも、残存湿原面積に対する繁殖番い密度の増大や近接巣間距離の測定値から、飽和に近い状態が容易に推測できる(Masatomi and Masatomi, 2018)。このため、新たな繁殖地を求める主に若齢個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきた。その一つが、湿原で囲まれた大小の湖沼が海岸沿いに点在する北海道北部地域(道北)である。道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、宗谷地方でタンチョウの記録はない(北海道開発局, 1972;北海道, 1975;正富・富士元, 1987a,b)。ところが、2002年にサロベツ原野とその周辺でタンチョウ2羽を複数回目撃したほか、2004年には営巣も確認し、その後オホーツク海側のクッチャロ湖でも生息・繁殖を認めた。しかし、道北のタンチョウは春~秋期のみ目撃され、冬は道東への回帰移動が一部確認されているものの、移動経路や越冬場所の多くは推測にとどまっている。繁殖地の過密化や越冬期の集中化、それに伴うリスクの増大等の課題を抱える北海道のタンチョウにとり、道北への進出は、種維持の面で新たな展開である。しかし、目下群れの成長段階で、変動の著しい状態にあると想定される道北のタンチョウについて、2016年以降の飛行調査の中断により全体的動向把握が不可能な状況に置かれている。そのため、飛行調査再開が強く望まれるとともに、それにより得られた資料を基に、道北やその他地域への進出の確実な把握と、各地域個体群の現状の比較解析を踏まえ、北海道個体群保全について総合的な対応を検討する必要がある。しかし、現在、その検討の基礎資料となる道北のタンチョウに関する記載が見当たらない。そこで、総括的論議を行う前段階として、出現の初期から実施した調査をもとに生息記録を集め、分布の過程と2015年までの状況、並びに飛行調査継続の必要性を含めたいくつかの問題点を取り上げて報告しておきたい。
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どんな個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきましたか。
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新たな繁殖地を求める主に若齢個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきました。
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JCRRAG_001555
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生物学
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれ、前者は生息環境の悪化により現在も個体数が減少傾向を示すのに対し(IUCN2016http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22692167A93339099.en2018年3月30日確認)、後者は一時羽数が大きく減少したものの、現在は増加傾向にある(正富,2010;正富ほか,2017;Masatomi and Masatomi, 2018)。タンチョウは1880年代まで北海道に広く生息していたが(井上,1970)、1900年代に目撃記録が全道的に途絶え、個体群は絶滅したかと疑われた。道北のオホーツク海側でも、1780年代に書かれた北海記の記載からクッチャロ湖での生息が推測されるほか(久井,未発表)、日本海側では天塩日誌(松浦,1857)に「広野にして鶴、雁多しと」の記述がある。しかし、越冬環境がないため秋に南へ移動し、その途中の天敵等の攻撃や越冬地での捕獲、さらに越冬環境の消失・悪化等により、同じころに消滅したと思われる。ところが、1920年代に北海道東部(道東)の釧路湿原で少数の生存が確認され(斎藤,1926)、1952年のセンサスでは33羽が記録された(北海道教育庁振興部文化課,1975)。ただし、その後の個体群成長過程から、実際はその2~3倍が生息していたと推定される(Koga, 2008;正富,2010)。さらに、1950年代からの冬期給餌等により個体数は急増し、2015年に少なくとも1,637羽が数えられ(正富ほか, 2017)、その後も増加傾向は継続していると思われる。他方、湿原の農地化や宅地化などによる生息適地の減少と環境悪化により、道東の生息密度は徐々に高まり(正富, 2000)、小面積湿地の散在する根室半島地区や、繁殖に不適な高層湿原主体の霧多布湿原地域は、繁殖番い数が環境収容力の上限に達している(正富, 2010)。また、広い繁殖環境を保つ風蓮湖とそこへ流入する河川流域や、海岸湖沼の連なりと大きな河川流域を持つ十勝地区でも、残存湿原面積に対する繁殖番い密度の増大や近接巣間距離の測定値から、飽和に近い状態が容易に推測できる(Masatomi and Masatomi, 2018)。このため、新たな繁殖地を求める主に若齢個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきた。その一つが、湿原で囲まれた大小の湖沼が海岸沿いに点在する北海道北部地域(道北)である。道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、宗谷地方でタンチョウの記録はない(北海道開発局, 1972;北海道, 1975;正富・富士元, 1987a,b)。ところが、2002年にサロベツ原野とその周辺でタンチョウ2羽を複数回目撃したほか、2004年には営巣も確認し、その後オホーツク海側のクッチャロ湖でも生息・繁殖を認めた。しかし、道北のタンチョウは春~秋期のみ目撃され、冬は道東への回帰移動が一部確認されているものの、移動経路や越冬場所の多くは推測にとどまっている。繁殖地の過密化や越冬期の集中化、それに伴うリスクの増大等の課題を抱える北海道のタンチョウにとり、道北への進出は、種維持の面で新たな展開である。しかし、目下群れの成長段階で、変動の著しい状態にあると想定される道北のタンチョウについて、2016年以降の飛行調査の中断により全体的動向把握が不可能な状況に置かれている。そのため、飛行調査再開が強く望まれるとともに、それにより得られた資料を基に、道北やその他地域への進出の確実な把握と、各地域個体群の現状の比較解析を踏まえ、北海道個体群保全について総合的な対応を検討する必要がある。しかし、現在、その検討の基礎資料となる道北のタンチョウに関する記載が見当たらない。そこで、総括的論議を行う前段階として、出現の初期から実施した調査をもとに生息記録を集め、分布の過程と2015年までの状況、並びに飛行調査継続の必要性を含めたいくつかの問題点を取り上げて報告しておきたい。
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道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、どこの地方でタンチョウの記録はありませんか。
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道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、宗谷地方でのタンチョウの記録はありません。
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JCRRAG_001556
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生物学
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世界におけるタンチョウGrus japonensis Müllerは大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれ、前者は生息環境の悪化により現在も個体数が減少傾向を示すのに対し(IUCN2016http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22692167A93339099.en2018年3月30日確認)、後者は一時羽数が大きく減少したものの、現在は増加傾向にある(正富,2010;正富ほか,2017;Masatomi and Masatomi, 2018)。タンチョウは1880年代まで北海道に広く生息していたが(井上,1970)、1900年代に目撃記録が全道的に途絶え、個体群は絶滅したかと疑われた。道北のオホーツク海側でも、1780年代に書かれた北海記の記載からクッチャロ湖での生息が推測されるほか(久井,未発表)、日本海側では天塩日誌(松浦,1857)に「広野にして鶴、雁多しと」の記述がある。しかし、越冬環境がないため秋に南へ移動し、その途中の天敵等の攻撃や越冬地での捕獲、さらに越冬環境の消失・悪化等により、同じころに消滅したと思われる。ところが、1920年代に北海道東部(道東)の釧路湿原で少数の生存が確認され(斎藤,1926)、1952年のセンサスでは33羽が記録された(北海道教育庁振興部文化課,1975)。ただし、その後の個体群成長過程から、実際はその2~3倍が生息していたと推定される(Koga, 2008;正富,2010)。さらに、1950年代からの冬期給餌等により個体数は急増し、2015年に少なくとも1,637羽が数えられ(正富ほか, 2017)、その後も増加傾向は継続していると思われる。他方、湿原の農地化や宅地化などによる生息適地の減少と環境悪化により、道東の生息密度は徐々に高まり(正富, 2000)、小面積湿地の散在する根室半島地区や、繁殖に不適な高層湿原主体の霧多布湿原地域は、繁殖番い数が環境収容力の上限に達している(正富, 2010)。また、広い繁殖環境を保つ風蓮湖とそこへ流入する河川流域や、海岸湖沼の連なりと大きな河川流域を持つ十勝地区でも、残存湿原面積に対する繁殖番い密度の増大や近接巣間距離の測定値から、飽和に近い状態が容易に推測できる(Masatomi and Masatomi, 2018)。このため、新たな繁殖地を求める主に若齢個体が、繁殖個体不在の他地域へ進出する例が2000年代に入り目立ってきた。その一つが、湿原で囲まれた大小の湖沼が海岸沿いに点在する北海道北部地域(道北)である。道内各地で鳥類調査が始められた1950年代以降も、宗谷地方でタンチョウの記録はない(北海道開発局, 1972;北海道, 1975;正富・富士元, 1987a,b)。ところが、2002年にサロベツ原野とその周辺でタンチョウ2羽を複数回目撃したほか、2004年には営巣も確認し、その後オホーツク海側のクッチャロ湖でも生息・繁殖を認めた。しかし、道北のタンチョウは春~秋期のみ目撃され、冬は道東への回帰移動が一部確認されているものの、移動経路や越冬場所の多くは推測にとどまっている。繁殖地の過密化や越冬期の集中化、それに伴うリスクの増大等の課題を抱える北海道のタンチョウにとり、道北への進出は、種維持の面で新たな展開である。しかし、目下群れの成長段階で、変動の著しい状態にあると想定される道北のタンチョウについて、2016年以降の飛行調査の中断により全体的動向把握が不可能な状況に置かれている。そのため、飛行調査再開が強く望まれるとともに、それにより得られた資料を基に、道北やその他地域への進出の確実な把握と、各地域個体群の現状の比較解析を踏まえ、北海道個体群保全について総合的な対応を検討する必要がある。しかし、現在、その検討の基礎資料となる道北のタンチョウに関する記載が見当たらない。そこで、総括的論議を行う前段階として、出現の初期から実施した調査をもとに生息記録を集め、分布の過程と2015年までの状況、並びに飛行調査継続の必要性を含めたいくつかの問題点を取り上げて報告しておきたい。
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道北のタンチョウはいつのみ目撃されていますか。
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道北のタンチョウは春~秋期のみ目撃されています。
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JCRRAG_001557
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生物学
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キタサンショウウオSalamandrella keyserlingiiは、全長約11-13 cm の小型サンショウウオで、ロシア、カザフスタン、モンゴル、中国、北朝鮮、日本の6ヶ国に分布している。日本国内では北海道の釧路湿原と上士幌町、北方領土の国後島に局所的に分布する(佐藤・松井, 2013;Matsui et al, 2019)。国内で本種が主に分布する釧路湿原域では、ヨシPhragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.やスゲ類Carex spp.が優占する低層湿原が主要な生息地であり、3月下旬から5月上旬にその湿地内の止水域で繁殖活動を行う(Hasumi and Kanda, 1998;照井・野本, 2022)。非繁殖期は、主に陸上で活動し(Hasumi and Kanda, 2007;照井ほか, 2012)、小型の無脊椎動物を採餌する(佐藤, 2014)。キタサンショウウオは、冬期は、ヤチボウズ(根本から隆起したカブスゲC.cespitosa L.)やミズゴケ類Sphagnum spp.のブルテ、土中などに入り越冬すると考えられている(橋本, 1972;高山, 1975;佐藤・松井, 2013)。行動圏の詳細は明らかになっていないが、繁殖水域で捕獲した個体が、非繁殖期に約100 m 離れた地点で再捕獲された報告がある(佐藤・松井2013)。
釧路湿原域では、国立公園の特別保護地区指定や地方自治体による天然記念物指定によって保護されている個体群もあるが、本種の生息地の3分の2 程度が保護区外にあり、道路建設、宅地・農地開発などによる生息地の分断化や消失が継続している(佐藤・松井, 2013)。特に、近年では太陽光発電施設の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しい(環境省, 2020a)。このような背景から、環境省のレッドリスト(環境省, 2020b)では、それまで選定されていた準絶滅危惧のカテゴリーから、より絶滅の危険性が高いという評価である絶滅危惧IB類に2ランク上昇した。北海道のレッドリスト(北海道 2015)においても絶滅危惧IB類に選定されており、保全対策が急務となっている。
太陽光発電施設の建設を含む大規模開発事業が実施される際は、両棲類に対する環境保全措置として、ミティゲーション5原則に則り、事業影響の「回避」、「低減」、「代償」のいずれかを目的とした対策が行われているが、多くの場合「代償」措置として移転事業が実施される(長谷川ほか, 2015)。移転による保全対策は国内外で行われており、国外では多くの移転事例の報告やレビューがなされている(例えば、Germano and Bishop, 2009;Smith et al, 2020)。国内においても、トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensisの保全措置として道路建設時に卵嚢や幼生を代替産卵水域へ移転した事例があり、事業後20年以上経過しても個体群が維持されていることが報告されている(大磯ほか, 2020)。しかし、国内の移転事例の多くは、その効果を判断できるほど十分なモニタリングが行われていない状況にある(長谷川ほか, 2015)。キタサンショウウオの保全対策としては、過去に大規模な移転事業が実施されているが、長期モニタリングの結果、十分な効果が得られているとは言えない状況であることがわかり、移転による保全には留意するべき課題が多いことが報告されている(照井ほか 2022)。釧路湿原域における大規模開発事業におけるキタサンショウウオの保全対策の一例として、太陽光発電施設建設事業地で実施した本種の生息状況調査の結果に基づいて、本種の主要な繁殖水域及び非繁殖期の活動場所が確認された区域への太陽光発電パネルの設置を部分的にやめる(「回避」する)ことに事業者が同意し、保全区域として保全した事例も存在する(照井・佐藤, 2020)。ただし、開発計画が変更される事例は太陽光発電施設の建設に関わらず全国的に見ても非常に稀であり、必ずしも開発事業者と合意形成ができるとは限らない。そして、事業計画の変更が難しく、選択可能な保全対策が移転しかない場合も十分に考えられる。
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キタサンショウウオは全長何cmですか。
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キタサンショウウオは全長約11-13 cmです。
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JCRRAG_001558
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生物学
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キタサンショウウオSalamandrella keyserlingiiは、全長約11-13 cm の小型サンショウウオで、ロシア、カザフスタン、モンゴル、中国、北朝鮮、日本の6ヶ国に分布している。日本国内では北海道の釧路湿原と上士幌町、北方領土の国後島に局所的に分布する(佐藤・松井, 2013;Matsui et al, 2019)。国内で本種が主に分布する釧路湿原域では、ヨシPhragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.やスゲ類Carex spp.が優占する低層湿原が主要な生息地であり、3月下旬から5月上旬にその湿地内の止水域で繁殖活動を行う(Hasumi and Kanda, 1998;照井・野本, 2022)。非繁殖期は、主に陸上で活動し(Hasumi and Kanda, 2007;照井ほか, 2012)、小型の無脊椎動物を採餌する(佐藤, 2014)。キタサンショウウオは、冬期は、ヤチボウズ(根本から隆起したカブスゲC.cespitosa L.)やミズゴケ類Sphagnum spp.のブルテ、土中などに入り越冬すると考えられている(橋本, 1972;高山, 1975;佐藤・松井, 2013)。行動圏の詳細は明らかになっていないが、繁殖水域で捕獲した個体が、非繁殖期に約100 m 離れた地点で再捕獲された報告がある(佐藤・松井2013)。
釧路湿原域では、国立公園の特別保護地区指定や地方自治体による天然記念物指定によって保護されている個体群もあるが、本種の生息地の3分の2 程度が保護区外にあり、道路建設、宅地・農地開発などによる生息地の分断化や消失が継続している(佐藤・松井, 2013)。特に、近年では太陽光発電施設の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しい(環境省, 2020a)。このような背景から、環境省のレッドリスト(環境省, 2020b)では、それまで選定されていた準絶滅危惧のカテゴリーから、より絶滅の危険性が高いという評価である絶滅危惧IB類に2ランク上昇した。北海道のレッドリスト(北海道 2015)においても絶滅危惧IB類に選定されており、保全対策が急務となっている。
太陽光発電施設の建設を含む大規模開発事業が実施される際は、両棲類に対する環境保全措置として、ミティゲーション5原則に則り、事業影響の「回避」、「低減」、「代償」のいずれかを目的とした対策が行われているが、多くの場合「代償」措置として移転事業が実施される(長谷川ほか, 2015)。移転による保全対策は国内外で行われており、国外では多くの移転事例の報告やレビューがなされている(例えば、Germano and Bishop, 2009;Smith et al, 2020)。国内においても、トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensisの保全措置として道路建設時に卵嚢や幼生を代替産卵水域へ移転した事例があり、事業後20年以上経過しても個体群が維持されていることが報告されている(大磯ほか, 2020)。しかし、国内の移転事例の多くは、その効果を判断できるほど十分なモニタリングが行われていない状況にある(長谷川ほか, 2015)。キタサンショウウオの保全対策としては、過去に大規模な移転事業が実施されているが、長期モニタリングの結果、十分な効果が得られているとは言えない状況であることがわかり、移転による保全には留意するべき課題が多いことが報告されている(照井ほか 2022)。釧路湿原域における大規模開発事業におけるキタサンショウウオの保全対策の一例として、太陽光発電施設建設事業地で実施した本種の生息状況調査の結果に基づいて、本種の主要な繁殖水域及び非繁殖期の活動場所が確認された区域への太陽光発電パネルの設置を部分的にやめる(「回避」する)ことに事業者が同意し、保全区域として保全した事例も存在する(照井・佐藤, 2020)。ただし、開発計画が変更される事例は太陽光発電施設の建設に関わらず全国的に見ても非常に稀であり、必ずしも開発事業者と合意形成ができるとは限らない。そして、事業計画の変更が難しく、選択可能な保全対策が移転しかない場合も十分に考えられる。
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キタサンショウウオは、冬期はどのような場所で越冬すると考えられていますか。
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キタサンショウウオは、冬期はヤチボウズ(根本から隆起したカブスゲC.cespitosa L.)やミズゴケ類Sphagnum spp.のブルテ、土中などに入り越冬すると考えられています。
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JCRRAG_001559
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生物学
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キタサンショウウオSalamandrella keyserlingiiは、全長約11-13 cm の小型サンショウウオで、ロシア、カザフスタン、モンゴル、中国、北朝鮮、日本の6ヶ国に分布している。日本国内では北海道の釧路湿原と上士幌町、北方領土の国後島に局所的に分布する(佐藤・松井, 2013;Matsui et al, 2019)。国内で本種が主に分布する釧路湿原域では、ヨシPhragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.やスゲ類Carex spp.が優占する低層湿原が主要な生息地であり、3月下旬から5月上旬にその湿地内の止水域で繁殖活動を行う(Hasumi and Kanda, 1998;照井・野本, 2022)。非繁殖期は、主に陸上で活動し(Hasumi and Kanda, 2007;照井ほか, 2012)、小型の無脊椎動物を採餌する(佐藤, 2014)。キタサンショウウオは、冬期は、ヤチボウズ(根本から隆起したカブスゲC.cespitosa L.)やミズゴケ類Sphagnum spp.のブルテ、土中などに入り越冬すると考えられている(橋本, 1972;高山, 1975;佐藤・松井, 2013)。行動圏の詳細は明らかになっていないが、繁殖水域で捕獲した個体が、非繁殖期に約100 m 離れた地点で再捕獲された報告がある(佐藤・松井2013)。
釧路湿原域では、国立公園の特別保護地区指定や地方自治体による天然記念物指定によって保護されている個体群もあるが、本種の生息地の3分の2 程度が保護区外にあり、道路建設、宅地・農地開発などによる生息地の分断化や消失が継続している(佐藤・松井, 2013)。特に、近年では太陽光発電施設の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しい(環境省, 2020a)。このような背景から、環境省のレッドリスト(環境省, 2020b)では、それまで選定されていた準絶滅危惧のカテゴリーから、より絶滅の危険性が高いという評価である絶滅危惧IB類に2ランク上昇した。北海道のレッドリスト(北海道 2015)においても絶滅危惧IB類に選定されており、保全対策が急務となっている。
太陽光発電施設の建設を含む大規模開発事業が実施される際は、両棲類に対する環境保全措置として、ミティゲーション5原則に則り、事業影響の「回避」、「低減」、「代償」のいずれかを目的とした対策が行われているが、多くの場合「代償」措置として移転事業が実施される(長谷川ほか, 2015)。移転による保全対策は国内外で行われており、国外では多くの移転事例の報告やレビューがなされている(例えば、Germano and Bishop, 2009;Smith et al, 2020)。国内においても、トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensisの保全措置として道路建設時に卵嚢や幼生を代替産卵水域へ移転した事例があり、事業後20年以上経過しても個体群が維持されていることが報告されている(大磯ほか, 2020)。しかし、国内の移転事例の多くは、その効果を判断できるほど十分なモニタリングが行われていない状況にある(長谷川ほか, 2015)。キタサンショウウオの保全対策としては、過去に大規模な移転事業が実施されているが、長期モニタリングの結果、十分な効果が得られているとは言えない状況であることがわかり、移転による保全には留意するべき課題が多いことが報告されている(照井ほか 2022)。釧路湿原域における大規模開発事業におけるキタサンショウウオの保全対策の一例として、太陽光発電施設建設事業地で実施した本種の生息状況調査の結果に基づいて、本種の主要な繁殖水域及び非繁殖期の活動場所が確認された区域への太陽光発電パネルの設置を部分的にやめる(「回避」する)ことに事業者が同意し、保全区域として保全した事例も存在する(照井・佐藤, 2020)。ただし、開発計画が変更される事例は太陽光発電施設の建設に関わらず全国的に見ても非常に稀であり、必ずしも開発事業者と合意形成ができるとは限らない。そして、事業計画の変更が難しく、選択可能な保全対策が移転しかない場合も十分に考えられる。
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何による保全対策が国内外で行われていますか。
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移転による保全対策が国内外で行われています。
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JCRRAG_001560
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生物学
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キタサンショウウオSalamandrella keyserlingiiは、全長約11-13 cm の小型サンショウウオで、ロシア、カザフスタン、モンゴル、中国、北朝鮮、日本の6ヶ国に分布している。日本国内では北海道の釧路湿原と上士幌町、北方領土の国後島に局所的に分布する(佐藤・松井, 2013;Matsui et al, 2019)。国内で本種が主に分布する釧路湿原域では、ヨシPhragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.やスゲ類Carex spp.が優占する低層湿原が主要な生息地であり、3月下旬から5月上旬にその湿地内の止水域で繁殖活動を行う(Hasumi and Kanda, 1998;照井・野本, 2022)。非繁殖期は、主に陸上で活動し(Hasumi and Kanda, 2007;照井ほか, 2012)、小型の無脊椎動物を採餌する(佐藤, 2014)。キタサンショウウオは、冬期は、ヤチボウズ(根本から隆起したカブスゲC.cespitosa L.)やミズゴケ類Sphagnum spp.のブルテ、土中などに入り越冬すると考えられている(橋本, 1972;高山, 1975;佐藤・松井, 2013)。行動圏の詳細は明らかになっていないが、繁殖水域で捕獲した個体が、非繁殖期に約100 m 離れた地点で再捕獲された報告がある(佐藤・松井2013)。
釧路湿原域では、国立公園の特別保護地区指定や地方自治体による天然記念物指定によって保護されている個体群もあるが、本種の生息地の3分の2 程度が保護区外にあり、道路建設、宅地・農地開発などによる生息地の分断化や消失が継続している(佐藤・松井, 2013)。特に、近年では太陽光発電施設の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しい(環境省, 2020a)。このような背景から、環境省のレッドリスト(環境省, 2020b)では、それまで選定されていた準絶滅危惧のカテゴリーから、より絶滅の危険性が高いという評価である絶滅危惧IB類に2ランク上昇した。北海道のレッドリスト(北海道 2015)においても絶滅危惧IB類に選定されており、保全対策が急務となっている。
太陽光発電施設の建設を含む大規模開発事業が実施される際は、両棲類に対する環境保全措置として、ミティゲーション5原則に則り、事業影響の「回避」、「低減」、「代償」のいずれかを目的とした対策が行われているが、多くの場合「代償」措置として移転事業が実施される(長谷川ほか, 2015)。移転による保全対策は国内外で行われており、国外では多くの移転事例の報告やレビューがなされている(例えば、Germano and Bishop, 2009;Smith et al, 2020)。国内においても、トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensisの保全措置として道路建設時に卵嚢や幼生を代替産卵水域へ移転した事例があり、事業後20年以上経過しても個体群が維持されていることが報告されている(大磯ほか, 2020)。しかし、国内の移転事例の多くは、その効果を判断できるほど十分なモニタリングが行われていない状況にある(長谷川ほか, 2015)。キタサンショウウオの保全対策としては、過去に大規模な移転事業が実施されているが、長期モニタリングの結果、十分な効果が得られているとは言えない状況であることがわかり、移転による保全には留意するべき課題が多いことが報告されている(照井ほか 2022)。釧路湿原域における大規模開発事業におけるキタサンショウウオの保全対策の一例として、太陽光発電施設建設事業地で実施した本種の生息状況調査の結果に基づいて、本種の主要な繁殖水域及び非繁殖期の活動場所が確認された区域への太陽光発電パネルの設置を部分的にやめる(「回避」する)ことに事業者が同意し、保全区域として保全した事例も存在する(照井・佐藤, 2020)。ただし、開発計画が変更される事例は太陽光発電施設の建設に関わらず全国的に見ても非常に稀であり、必ずしも開発事業者と合意形成ができるとは限らない。そして、事業計画の変更が難しく、選択可能な保全対策が移転しかない場合も十分に考えられる。
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本種は国内ではどのような湿原が主要な生息地ですか。
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本種は国内ではヨシPhragmites australis (Cav.) Trin.ex Steud.やスゲ類Carex spp.が優占する低層湿原が主要な生息地です。
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JCRRAG_001561
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生物学
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遺伝子頻度の変化と進化:ハーディ・ワインベルグの法則
遺伝子プールとは?
交配可能な集団に存在する遺伝子のすべてを遺伝子プールと呼ぶ。遺伝子頻度とは遺伝子プール内における遺伝子の出現頻度である。
遺伝子頻度と遺伝子型の頻度
遺伝子プールにおける、1つの遺伝子座における対立遺伝子の頻度を遺伝子頻度と呼ぶ。遺伝子頻度はある遺伝子の数を全体の遺伝子数で割って計算できる。
遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度を掛けた値となる。
例えば、100個体の集団でAとaの2つの対立遺伝子が存在し、AA、Aa、aaの遺伝子型を持った個体が64、32、4個体存在したとする。
Aとaが自由交配によって混ぜ合わさると考えると、実際の遺伝子型の組み合わせは次の通りになる。
これに、実際の遺伝子型の頻度(1=100%とする)を当てはめると次のようになる。
それぞれの遺伝子型の頻度は、遺伝子の頻度を掛け合わせた値であるから、次の計算式が成り立つ。
Aとaを求めると次のようになる。
一般的には、遺伝子頻度はp、qといった値として参考書などには掲載されている。遺伝子型の頻度は、pとqの値によって決定する。
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遺伝子頻度とは何における遺伝子の出現頻度ですか。
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遺伝子頻度とは遺伝子プール内における遺伝子の出現頻度です。
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JCRRAG_001562
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生物学
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キタサンショウウオSalamandrella keyserlingiiは、全長約11-13 cm の小型サンショウウオで、ロシア、カザフスタン、モンゴル、中国、北朝鮮、日本の6ヶ国に分布している。日本国内では北海道の釧路湿原と上士幌町、北方領土の国後島に局所的に分布する(佐藤・松井, 2013;Matsui et al, 2019)。国内で本種が主に分布する釧路湿原域では、ヨシPhragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.やスゲ類Carex spp.が優占する低層湿原が主要な生息地であり、3月下旬から5月上旬にその湿地内の止水域で繁殖活動を行う(Hasumi and Kanda, 1998;照井・野本, 2022)。非繁殖期は、主に陸上で活動し(Hasumi and Kanda, 2007;照井ほか, 2012)、小型の無脊椎動物を採餌する(佐藤, 2014)。キタサンショウウオは、冬期は、ヤチボウズ(根本から隆起したカブスゲC.cespitosa L.)やミズゴケ類Sphagnum spp.のブルテ、土中などに入り越冬すると考えられている(橋本, 1972;高山, 1975;佐藤・松井, 2013)。行動圏の詳細は明らかになっていないが、繁殖水域で捕獲した個体が、非繁殖期に約100 m 離れた地点で再捕獲された報告がある(佐藤・松井2013)。
釧路湿原域では、国立公園の特別保護地区指定や地方自治体による天然記念物指定によって保護されている個体群もあるが、本種の生息地の3分の2 程度が保護区外にあり、道路建設、宅地・農地開発などによる生息地の分断化や消失が継続している(佐藤・松井, 2013)。特に、近年では太陽光発電施設の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しい(環境省, 2020a)。このような背景から、環境省のレッドリスト(環境省, 2020b)では、それまで選定されていた準絶滅危惧のカテゴリーから、より絶滅の危険性が高いという評価である絶滅危惧IB類に2ランク上昇した。北海道のレッドリスト(北海道 2015)においても絶滅危惧IB類に選定されており、保全対策が急務となっている。
太陽光発電施設の建設を含む大規模開発事業が実施される際は、両棲類に対する環境保全措置として、ミティゲーション5原則に則り、事業影響の「回避」、「低減」、「代償」のいずれかを目的とした対策が行われているが、多くの場合「代償」措置として移転事業が実施される(長谷川ほか, 2015)。移転による保全対策は国内外で行われており、国外では多くの移転事例の報告やレビューがなされている(例えば、Germano and Bishop, 2009;Smith et al, 2020)。国内においても、トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensisの保全措置として道路建設時に卵嚢や幼生を代替産卵水域へ移転した事例があり、事業後20年以上経過しても個体群が維持されていることが報告されている(大磯ほか, 2020)。しかし、国内の移転事例の多くは、その効果を判断できるほど十分なモニタリングが行われていない状況にある(長谷川ほか, 2015)。キタサンショウウオの保全対策としては、過去に大規模な移転事業が実施されているが、長期モニタリングの結果、十分な効果が得られているとは言えない状況であることがわかり、移転による保全には留意するべき課題が多いことが報告されている(照井ほか 2022)。釧路湿原域における大規模開発事業におけるキタサンショウウオの保全対策の一例として、太陽光発電施設建設事業地で実施した本種の生息状況調査の結果に基づいて、本種の主要な繁殖水域及び非繁殖期の活動場所が確認された区域への太陽光発電パネルの設置を部分的にやめる(「回避」する)ことに事業者が同意し、保全区域として保全した事例も存在する(照井・佐藤, 2020)。ただし、開発計画が変更される事例は太陽光発電施設の建設に関わらず全国的に見ても非常に稀であり、必ずしも開発事業者と合意形成ができるとは限らない。そして、事業計画の変更が難しく、選択可能な保全対策が移転しかない場合も十分に考えられる。
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何の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しいですか。
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太陽光発電の乱立によるキタサンショウウオの生息環境の悪化が著しいです。
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JCRRAG_001563
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生物学
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遺伝子頻度の変化と進化:ハーディ・ワインベルグの法則
遺伝子プールとは?
交配可能な集団に存在する遺伝子のすべてを遺伝子プールと呼ぶ。遺伝子頻度とは遺伝子プール内における遺伝子の出現頻度である。
遺伝子頻度と遺伝子型の頻度
遺伝子プールにおける、1つの遺伝子座における対立遺伝子の頻度を遺伝子頻度と呼ぶ。遺伝子頻度はある遺伝子の数を全体の遺伝子数で割って計算できる。
遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度を掛けた値となる。
例えば、100個体の集団でAとaの2つの対立遺伝子が存在し、AA、Aa、aaの遺伝子型を持った個体が64、32、4個体存在したとする。
Aとaが自由交配によって混ぜ合わさると考えると、実際の遺伝子型の組み合わせは次の通りになる。
これに、実際の遺伝子型の頻度(1=100%とする)を当てはめると次のようになる。
それぞれの遺伝子型の頻度は、遺伝子の頻度を掛け合わせた値であるから、次の計算式が成り立つ。
Aとaを求めると次のようになる。
一般的には、遺伝子頻度はp、qといった値として参考書などには掲載されている。遺伝子型の頻度は、pとqの値によって決定する。
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遺伝子頻度はある遺伝子の数を何で割って計算できますか。
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遺伝子頻度はある遺伝子の数を全体の遺伝子数で割って計算できます。
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JCRRAG_001564
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生物学
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遺伝子頻度の変化と進化:ハーディ・ワインベルグの法則
遺伝子プールとは?
交配可能な集団に存在する遺伝子のすべてを遺伝子プールと呼ぶ。遺伝子頻度とは遺伝子プール内における遺伝子の出現頻度である。
遺伝子頻度と遺伝子型の頻度
遺伝子プールにおける、1つの遺伝子座における対立遺伝子の頻度を遺伝子頻度と呼ぶ。遺伝子頻度はある遺伝子の数を全体の遺伝子数で割って計算できる。
遺伝子型の頻度は、それぞれの遺伝子の頻度を掛けた値となる。
例えば、100個体の集団でAとaの2つの対立遺伝子が存在し、AA、Aa、aaの遺伝子型を持った個体が64、32、4個体存在したとする。
Aとaが自由交配によって混ぜ合わさると考えると、実際の遺伝子型の組み合わせは次の通りになる。
これに、実際の遺伝子型の頻度(1=100%とする)を当てはめると次のようになる。
それぞれの遺伝子型の頻度は、遺伝子の頻度を掛け合わせた値であるから、次の計算式が成り立つ。
Aとaを求めると次のようになる。
一般的には、遺伝子頻度はp、qといった値として参考書などには掲載されている。遺伝子型の頻度は、pとqの値によって決定する。
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一般的には、遺伝子頻度はどんな値で参考書などに掲載されていますか。
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一般的には、遺伝子頻度はp、qといった値で参考書などに掲載されています。
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JCRRAG_001565
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生物学
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ヒトの遺伝子の数は2万1306個
・当初は10万個あると思われていたヒト遺伝子
1980年当初は、ギルバートによって遺伝子数は10万個ほどであろうとの推測が立てられていました。これは、ヒトの遺伝子の平均的な大きさ3×104塩基対とヒトゲノムの大きさ3×109塩基対から概算したもので、10万という数字は切りも良く、論文や教科書に広く引用されるようになりました。
しかし、2003年にヒトゲノムが解読され、ヒト遺伝子の数は3万5千個ほどであるとの報告がなされました。さらに数年後には、ヒト遺伝子の数は2万個~2万4千個ほどしかないと大幅な訂正がなされました。
2018年には、米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒト遺伝子の数が現時点で2万1306個になると発表しました。
ちなみにこの2万個1306個という数は生物界では決して多い遺伝子数ではありません。寄生虫であるセンチュウですら約2万個の遺伝子を持っています。マウスは2万2千個、イネやトウモロコシは4万5千個ほどもあります。
・遺伝子の数だけが重要なのではない
当初、人間が2万個ほどしか遺伝子を持っていないと分かった時は、ショックを受けた人が多くいました。人間のような複雑な生物が、センチュウと同じ遺伝子数というのが気に食わなかったようです。
しかし、その後研究により、ヒトの体では選択的スプライシングが活発に行われていることが判明しました。選択的スプライシングとは、1つの遺伝子から複数のmRNAを合成できるスプライシングのことです。
また、チンパンジーとの遺伝子の比較により、遺伝子の数(種類)そのものではなく、その遺伝子の発現の仕方の方が重要であることもわかってきました。
遺伝子の数(種類)というハード面だけでなく、それぞれの遺伝子がどのように作用し合い発現が調節されているのかというソフト面を今後は研究していく必要があります。
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2018年に米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒト遺伝子の数が現時点で何個になると発表しましたか。
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2018年に米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒト遺伝子の数が現時点で2万1306個になると発表しました。
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JCRRAG_001566
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生物学
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A2ミルクとは
A2ミルクは,牛乳を飲むと現れる「お腹にガスが溜まる」「ゴロゴロする」「下痢をする」などの消化器不快症状がおきにくい「おなかにやさしい牛乳」とされており,近年注目を集めている.
乳中の主要タンパク質であるカゼインには,αS1-カゼイン,αS2-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼインという下位分類が存在する.そのうちのβ-カゼインには12種類の遺伝子変異体が存在し.その多くをA1型とA2型が占めている.両者にはアミノ酸の1置換の違いが存在し,67位のアミノ酸がHisであればA1型,ProであればA2型となり,残りの10種の遺伝子変異体も67位アミノ酸の種類によってA1型グループとA2型グループに大別される.
牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の遺伝的特性によって異なり,国内の大多数の乳牛はA1/A2ヘテロ,あるいはA2/A2ホモであり,分泌される乳中のβ-カゼインは,A1/A2ヘテロはA1型とA2型,A2/A2ホモの場合はA2型のみとなる.通常の牛乳は多個体の乳を合わせているため,A1型とA2型の両方が含まれているが,A1型を含まないA2型のみの牛乳のことをA2ミルクと呼ぶ.
消化器不快症状の要因
牛乳を飲むと現れる不快症状の原因はほとんどが「乳糖不耐症」であると言われてきた.乳糖不耐は,乳糖を分解するラクターゼの分泌量が成長に伴い減少することで,乳糖が分解されずに引き起こされる.それ以外にも,消化物であるペプチドが腸管を刺激することで不快症状が現れるほか,カゼインの消化不良および乳アレルギーなども原因の一つであると考えられている.しかし,多くの場合,主観的な判断で「乳糖不耐症」と思い込んでいることもある.そのため,何が原因で消化器不快症状が引き起こされるか良く分かっていない.
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乳中の主要タンパク質であるカゼインには、どのような下位分類が存在しますか?
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乳中の主要タンパク質であるカゼインには、αS1-カゼイン、αS2-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインという下位分類が存在します。
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JCRRAG_001567
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生物学
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A2ミルクとは
A2ミルクは,牛乳を飲むと現れる「お腹にガスが溜まる」「ゴロゴロする」「下痢をする」などの消化器不快症状がおきにくい「おなかにやさしい牛乳」とされており,近年注目を集めている.
乳中の主要タンパク質であるカゼインには,αS1-カゼイン,αS2-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼインという下位分類が存在する.そのうちのβ-カゼインには12種類の遺伝子変異体が存在し.その多くをA1型とA2型が占めている.両者にはアミノ酸の1置換の違いが存在し,67位のアミノ酸がHisであればA1型,ProであればA2型となり,残りの10種の遺伝子変異体も67位アミノ酸の種類によってA1型グループとA2型グループに大別される.
牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の遺伝的特性によって異なり,国内の大多数の乳牛はA1/A2ヘテロ,あるいはA2/A2ホモであり,分泌される乳中のβ-カゼインは,A1/A2ヘテロはA1型とA2型,A2/A2ホモの場合はA2型のみとなる.通常の牛乳は多個体の乳を合わせているため,A1型とA2型の両方が含まれているが,A1型を含まないA2型のみの牛乳のことをA2ミルクと呼ぶ.
消化器不快症状の要因
牛乳を飲むと現れる不快症状の原因はほとんどが「乳糖不耐症」であると言われてきた.乳糖不耐は,乳糖を分解するラクターゼの分泌量が成長に伴い減少することで,乳糖が分解されずに引き起こされる.それ以外にも,消化物であるペプチドが腸管を刺激することで不快症状が現れるほか,カゼインの消化不良および乳アレルギーなども原因の一つであると考えられている.しかし,多くの場合,主観的な判断で「乳糖不耐症」と思い込んでいることもある.そのため,何が原因で消化器不快症状が引き起こされるか良く分かっていない.
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A2ミルクはどのような症状がおきにくいとされていますか?
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A2ミルクは、牛乳を飲むと現れる「お腹にガスが溜まる」「ゴロゴロする」「下痢をする」などの消化器不快症状がおきにくいとされています。
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JCRRAG_001568
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生物学
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A2ミルクとは
A2ミルクは,牛乳を飲むと現れる「お腹にガスが溜まる」「ゴロゴロする」「下痢をする」などの消化器不快症状がおきにくい「おなかにやさしい牛乳」とされており,近年注目を集めている.
乳中の主要タンパク質であるカゼインには,αS1-カゼイン,αS2-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼインという下位分類が存在する.そのうちのβ-カゼインには12種類の遺伝子変異体が存在し.その多くをA1型とA2型が占めている.両者にはアミノ酸の1置換の違いが存在し,67位のアミノ酸がHisであればA1型,ProであればA2型となり,残りの10種の遺伝子変異体も67位アミノ酸の種類によってA1型グループとA2型グループに大別される.
牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の遺伝的特性によって異なり,国内の大多数の乳牛はA1/A2ヘテロ,あるいはA2/A2ホモであり,分泌される乳中のβ-カゼインは,A1/A2ヘテロはA1型とA2型,A2/A2ホモの場合はA2型のみとなる.通常の牛乳は多個体の乳を合わせているため,A1型とA2型の両方が含まれているが,A1型を含まないA2型のみの牛乳のことをA2ミルクと呼ぶ.
消化器不快症状の要因
牛乳を飲むと現れる不快症状の原因はほとんどが「乳糖不耐症」であると言われてきた.乳糖不耐は,乳糖を分解するラクターゼの分泌量が成長に伴い減少することで,乳糖が分解されずに引き起こされる.それ以外にも,消化物であるペプチドが腸管を刺激することで不快症状が現れるほか,カゼインの消化不良および乳アレルギーなども原因の一つであると考えられている.しかし,多くの場合,主観的な判断で「乳糖不耐症」と思い込んでいることもある.そのため,何が原因で消化器不快症状が引き起こされるか良く分かっていない.
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牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の何によって異なりますか?
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牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の遺伝的特性によって異なります。
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JCRRAG_001569
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生物学
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ヒトの遺伝子の数は2万1306個
・当初は10万個あると思われていたヒト遺伝子
1980年当初は、ギルバートによって遺伝子数は10万個ほどであろうとの推測が立てられていました。これは、ヒトの遺伝子の平均的な大きさ3×104塩基対とヒトゲノムの大きさ3×109塩基対から概算したもので、10万という数字は切りも良く、論文や教科書に広く引用されるようになりました。
しかし、2003年にヒトゲノムが解読され、ヒト遺伝子の数は3万5千個ほどであるとの報告がなされました。さらに数年後には、ヒト遺伝子の数は2万個~2万4千個ほどしかないと大幅な訂正がなされました。
2018年には、米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒト遺伝子の数が現時点で2万1306個になると発表しました。
ちなみにこの2万個1306個という数は生物界では決して多い遺伝子数ではありません。寄生虫であるセンチュウですら約2万個の遺伝子を持っています。マウスは2万2千個、イネやトウモロコシは4万5千個ほどもあります。
・遺伝子の数だけが重要なのではない
当初、人間が2万個ほどしか遺伝子を持っていないと分かった時は、ショックを受けた人が多くいました。人間のような複雑な生物が、センチュウと同じ遺伝子数というのが気に食わなかったようです。
しかし、その後研究により、ヒトの体では選択的スプライシングが活発に行われていることが判明しました。選択的スプライシングとは、1つの遺伝子から複数のmRNAを合成できるスプライシングのことです。
また、チンパンジーとの遺伝子の比較により、遺伝子の数(種類)そのものではなく、その遺伝子の発現の仕方の方が重要であることもわかってきました。
遺伝子の数(種類)というハード面だけでなく、それぞれの遺伝子がどのように作用し合い発現が調節されているのかというソフト面を今後は研究していく必要があります。
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選択的スプライシングとは、1つの遺伝子から何を合成できるスプライシングのことですか。
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選択的スプライシングとは、1つの遺伝子から複数のmRNAを合成できるスプライシングのことです。
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JCRRAG_001570
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生物学
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A2ミルクとは
A2ミルクは,牛乳を飲むと現れる「お腹にガスが溜まる」「ゴロゴロする」「下痢をする」などの消化器不快症状がおきにくい「おなかにやさしい牛乳」とされており,近年注目を集めている.
乳中の主要タンパク質であるカゼインには,αS1-カゼイン,αS2-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼインという下位分類が存在する.そのうちのβ-カゼインには12種類の遺伝子変異体が存在し.その多くをA1型とA2型が占めている.両者にはアミノ酸の1置換の違いが存在し,67位のアミノ酸がHisであればA1型,ProであればA2型となり,残りの10種の遺伝子変異体も67位アミノ酸の種類によってA1型グループとA2型グループに大別される.
牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の遺伝的特性によって異なり,国内の大多数の乳牛はA1/A2ヘテロ,あるいはA2/A2ホモであり,分泌される乳中のβ-カゼインは,A1/A2ヘテロはA1型とA2型,A2/A2ホモの場合はA2型のみとなる.通常の牛乳は多個体の乳を合わせているため,A1型とA2型の両方が含まれているが,A1型を含まないA2型のみの牛乳のことをA2ミルクと呼ぶ.
消化器不快症状の要因
牛乳を飲むと現れる不快症状の原因はほとんどが「乳糖不耐症」であると言われてきた.乳糖不耐は,乳糖を分解するラクターゼの分泌量が成長に伴い減少することで,乳糖が分解されずに引き起こされる.それ以外にも,消化物であるペプチドが腸管を刺激することで不快症状が現れるほか,カゼインの消化不良および乳アレルギーなども原因の一つであると考えられている.しかし,多くの場合,主観的な判断で「乳糖不耐症」と思い込んでいることもある.そのため,何が原因で消化器不快症状が引き起こされるか良く分かっていない.
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通常の牛乳はなぜA1型とA2型の両方が含まれているのですか?
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通常の牛乳は多個体の乳を合わせているため、A1型とA2型の両方が含まれています。
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JCRRAG_001571
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生物学
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A2ミルクとは
A2ミルクは,牛乳を飲むと現れる「お腹にガスが溜まる」「ゴロゴロする」「下痢をする」などの消化器不快症状がおきにくい「おなかにやさしい牛乳」とされており,近年注目を集めている.
乳中の主要タンパク質であるカゼインには,αS1-カゼイン,αS2-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼインという下位分類が存在する.そのうちのβ-カゼインには12種類の遺伝子変異体が存在し.その多くをA1型とA2型が占めている.両者にはアミノ酸の1置換の違いが存在し,67位のアミノ酸がHisであればA1型,ProであればA2型となり,残りの10種の遺伝子変異体も67位アミノ酸の種類によってA1型グループとA2型グループに大別される.
牛乳中に含有されるβ-カゼイン型は牛の遺伝的特性によって異なり,国内の大多数の乳牛はA1/A2ヘテロ,あるいはA2/A2ホモであり,分泌される乳中のβ-カゼインは,A1/A2ヘテロはA1型とA2型,A2/A2ホモの場合はA2型のみとなる.通常の牛乳は多個体の乳を合わせているため,A1型とA2型の両方が含まれているが,A1型を含まないA2型のみの牛乳のことをA2ミルクと呼ぶ.
消化器不快症状の要因
牛乳を飲むと現れる不快症状の原因はほとんどが「乳糖不耐症」であると言われてきた.乳糖不耐は,乳糖を分解するラクターゼの分泌量が成長に伴い減少することで,乳糖が分解されずに引き起こされる.それ以外にも,消化物であるペプチドが腸管を刺激することで不快症状が現れるほか,カゼインの消化不良および乳アレルギーなども原因の一つであると考えられている.しかし,多くの場合,主観的な判断で「乳糖不耐症」と思い込んでいることもある.そのため,何が原因で消化器不快症状が引き起こされるか良く分かっていない.
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乳糖不耐は、何の分泌量が成長に伴い減少することで引き起こされますか?
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乳糖不耐は、乳糖を分解するラクターゼの分泌量が成長に伴い減少することで引き起こされます。
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JCRRAG_001572
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生物学
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通常の牛乳に含まれるA1型β-カゼインは,アミノ酸配列の60番目から66番目にTyr-Pro-Phe-Pro-Gly-Pro-Ileという配列をもつが,ペプシンやトリプシンの作用等によりこの部分が切り出されると生理活性ペプチドであるβ-カソモルフィン-7(BCM-7)が生成され,このBCM-7が腸管で炎症を引き起こすと推定されている.一方,A2型β-カゼインは,67番目のアミノ酸がHisからProに置換されていることから,酵素が作用しにくく,BCM-7が生成されない.そのため,A2ミルクはBCM-7を介した不快症状が起きにくいということから,「おなかにやさしい牛乳」とされている.
しかし,行き過ぎた訴求や科学的に誤った解釈や誤解を避けるため,「A2ミルク」を用いた臨床研究がいくつか行われており,いずれも通常の牛乳の摂取で発現する消化器症状がA2ミルクの摂取では起こらなかったと報告している.また,これらの研究では,乳糖不耐症を示す被験者に対しても,A2ミルクは不快症状が現れないと報告されている.しかし,どのようなメカニズムで不快症状を緩和しているのか,科学的根拠は得られていないが,そもそも消化器不快症状は乳糖そのものではなく,BCM-7が関連している可能性があるとされている.これらのことから,A2ミルクは,乳糖不耐症も緩和される次世代型の牛乳として期待が高まりつつある.
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A2型β-カゼインは、67番目のアミノ酸が何からProに置換されていますか?
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A2型β-カゼインは、67番目のアミノ酸がHisからProに置換されています。
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JCRRAG_001573
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生物学
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スミツキザメ Carcharhinus tjutjot (Bleeker, 1852)は,最大全長が1.2mほどになるメジロザメ科魚類である(青沼ほか,2013;小枝,2018).本種はインド・太平洋域に分布し,国内では京都府以西の日本海沿岸,和歌山県以西の太平洋沿岸,琉球列島,および小笠原諸島より報告されている(White, 2012;中島田・日比野,2022;本村,2025).
今回,2023年10月に大阪湾からスミツキザメの1標本が得られた.これまで大阪湾および大阪府から本種の報告はなく,標本に基づく初記録となるためここに報告する.
材料と方法
計測部位および方法は,岸本ほか(2006)にしたがい,投影法を用いて,ノギスを使用して1mm単位まで計測した.左体側の上顎歯(前から6列目)を抜歯し,その形態を観察した.色彩の記載は生鮮時に撮影したカラー写真と目視観察に基づく.ただし,本標本は1年ほど冷凍保存されていたことから,採集時と比べて褪色が若干進んでいる可能性がある.記載個体は10%中性ホルマリンで固定され70%エタノールに置換後,大阪府立自然史博物館(OMNH)に登録・保管されている.
標本 OMNH-P52741,全長657mm,雄,大阪府泉南郡岬町沖,小型底びき網(板びき網),2023年10月12日,中出浩徳.
記載 全長に対する体各部の割合(%)は以下のとおり:尾鰭前長71.5;頭長22.9;躯幹部長27.0;尾部長23.4;総排泄孔前長49.3;体高14.3;尾柄高3.3;吻長7.1;口前吻長7.4;眼窩径1.6;第1鰓裂長2.5;両眼間隔8.3;鼻孔間隔4.5;口幅7.0;第1背鰭長14.6;第1背鰭高7.7;第2背鰭長8.5;第2背鰭高2.2;胸鰭長14.3;腹鰭長8.5;臀鰭長8.2;臀鰭高3.1;尾鰭上葉長25.4;尾鰭下葉長10.0;交接器長4.8
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全長に対する尾鰭前長の割合は何%ですか?
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全長に対する尾鰭前長の割合は71.5%です。
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JCRRAG_001574
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生物学
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A2ミルクへの正しい理解が必要
牛乳は,人間の食生活において重要な栄養源であり,世界中の社会と食文化に深く根付いてきた.しかし,消化器不快症状やそれに伴う牛乳有害説,人口減少,少子高齢化のほか,物価の高騰も相まって消費者の牛乳離れが続いている.そのような中で,A2ミルクへの関心の高まりで,これまで牛乳を摂取していなかった一部の消費者層にその価値を広げる可能性がある.しかし,A2ミルクの優位性に関しては,科学的証拠がまだ不十分であり,現在も議論および論争中である.また,通常の牛乳においても消化器不快症状の要因やそのメカニズムも明らかになっていない.そのため,A2ミルクが安全な食品であることを強調すれば,逆に通常の牛乳は人体に有害であることを認めることにもなってしまい,結果的に消費者の牛乳離れを誘発する恐れがある.通常の牛乳およびA2ミルクの問題は正しい知識に基づき慎重に対応しなければならない.そのために,今後も学術および産業応用の両面で継続的な研究が必要となってくる.
酪農業界の現状とA2ミルクへの期待
国内の乳牛は99%以上がホルスタイン種であり,その中でもA2/A2ホモの乳牛は3~4割程度で多くはない.そのため,私たちがA2ミルクを普及させるためには,先ずは保有する乳牛の遺伝子解析を行い,A2/A2の乳牛を集め育種改良を進める必要がある.さらに,得られた生乳を同一ロットで殺菌・充填しA1型が混在しないように生産しなければならない.乳牛は育種計画から実際に生乳を得るまで約3年を要するため,乳牛すべてをA2/A2とすると5~10年がかりの事業である.このようなことから,A2ミルクの生産量は限られてしまう.しかし,A2ミルクの社会実装につながる技術開発が進み,付加価値の高いブランド牛乳が広く浸透し需要も高まれば,厳しい情勢が続く酪農業界の活性化に繋がる可能性があることから,A2ミルクへの期待が高まっている.
著者らは,カゼインミセル構造の観点からA2ミルクと通常の牛乳の乳加工性の差異について検討しているが,A2ミルクの優位性を示すことができれば,A2ミルクの普及に繋がると期待し研究を進めている.
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乳牛は育種計画から実際に生乳を得るまで何年を要しますか?
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乳牛は育種計画から実際に生乳を得るまで約3年を要します。
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JCRRAG_001575
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生物学
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A2ミルクへの正しい理解が必要
牛乳は,人間の食生活において重要な栄養源であり,世界中の社会と食文化に深く根付いてきた.しかし,消化器不快症状やそれに伴う牛乳有害説,人口減少,少子高齢化のほか,物価の高騰も相まって消費者の牛乳離れが続いている.そのような中で,A2ミルクへの関心の高まりで,これまで牛乳を摂取していなかった一部の消費者層にその価値を広げる可能性がある.しかし,A2ミルクの優位性に関しては,科学的証拠がまだ不十分であり,現在も議論および論争中である.また,通常の牛乳においても消化器不快症状の要因やそのメカニズムも明らかになっていない.そのため,A2ミルクが安全な食品であることを強調すれば,逆に通常の牛乳は人体に有害であることを認めることにもなってしまい,結果的に消費者の牛乳離れを誘発する恐れがある.通常の牛乳およびA2ミルクの問題は正しい知識に基づき慎重に対応しなければならない.そのために,今後も学術および産業応用の両面で継続的な研究が必要となってくる.
酪農業界の現状とA2ミルクへの期待
国内の乳牛は99%以上がホルスタイン種であり,その中でもA2/A2ホモの乳牛は3~4割程度で多くはない.そのため,私たちがA2ミルクを普及させるためには,先ずは保有する乳牛の遺伝子解析を行い,A2/A2の乳牛を集め育種改良を進める必要がある.さらに,得られた生乳を同一ロットで殺菌・充填しA1型が混在しないように生産しなければならない.乳牛は育種計画から実際に生乳を得るまで約3年を要するため,乳牛すべてをA2/A2とすると5~10年がかりの事業である.このようなことから,A2ミルクの生産量は限られてしまう.しかし,A2ミルクの社会実装につながる技術開発が進み,付加価値の高いブランド牛乳が広く浸透し需要も高まれば,厳しい情勢が続く酪農業界の活性化に繋がる可能性があることから,A2ミルクへの期待が高まっている.
著者らは,カゼインミセル構造の観点からA2ミルクと通常の牛乳の乳加工性の差異について検討しているが,A2ミルクの優位性を示すことができれば,A2ミルクの普及に繋がると期待し研究を進めている.
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私たちがA2ミルクを普及させるためには、先ずは何を進める必要がありますか?
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私たちがA2ミルクを普及させるためには、先ずは保有する乳牛の遺伝子解析を行い、A2/A2の乳牛を集め育種改良を進める必要があります。
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JCRRAG_001576
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生物学
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A2ミルクへの正しい理解が必要
牛乳は,人間の食生活において重要な栄養源であり,世界中の社会と食文化に深く根付いてきた.しかし,消化器不快症状やそれに伴う牛乳有害説,人口減少,少子高齢化のほか,物価の高騰も相まって消費者の牛乳離れが続いている.そのような中で,A2ミルクへの関心の高まりで,これまで牛乳を摂取していなかった一部の消費者層にその価値を広げる可能性がある.しかし,A2ミルクの優位性に関しては,科学的証拠がまだ不十分であり,現在も議論および論争中である.また,通常の牛乳においても消化器不快症状の要因やそのメカニズムも明らかになっていない.そのため,A2ミルクが安全な食品であることを強調すれば,逆に通常の牛乳は人体に有害であることを認めることにもなってしまい,結果的に消費者の牛乳離れを誘発する恐れがある.通常の牛乳およびA2ミルクの問題は正しい知識に基づき慎重に対応しなければならない.そのために,今後も学術および産業応用の両面で継続的な研究が必要となってくる.
酪農業界の現状とA2ミルクへの期待
国内の乳牛は99%以上がホルスタイン種であり,その中でもA2/A2ホモの乳牛は3~4割程度で多くはない.そのため,私たちがA2ミルクを普及させるためには,先ずは保有する乳牛の遺伝子解析を行い,A2/A2の乳牛を集め育種改良を進める必要がある.さらに,得られた生乳を同一ロットで殺菌・充填しA1型が混在しないように生産しなければならない.乳牛は育種計画から実際に生乳を得るまで約3年を要するため,乳牛すべてをA2/A2とすると5~10年がかりの事業である.このようなことから,A2ミルクの生産量は限られてしまう.しかし,A2ミルクの社会実装につながる技術開発が進み,付加価値の高いブランド牛乳が広く浸透し需要も高まれば,厳しい情勢が続く酪農業界の活性化に繋がる可能性があることから,A2ミルクへの期待が高まっている.
著者らは,カゼインミセル構造の観点からA2ミルクと通常の牛乳の乳加工性の差異について検討しているが,A2ミルクの優位性を示すことができれば,A2ミルクの普及に繋がると期待し研究を進めている.
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消費者の牛乳離れが続いているのはどうしてですか?
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消費者の牛乳離れが続いているのは、消化器不快症状やそれに伴う牛乳有害説、人口減少、少子高齢化のほか、物価の高騰も相まっているためです。
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JCRRAG_001577
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生物学
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本研究の目的は分子数標準化インタラクトーム技術による細胞内少数分子、特に転写因子(以下 TF)の隠れた相互作用の探索である。生物は少数成分で重要な働きを制御すると考えられ、その機能解析は生物学の進展に不可欠である。蛋白質の機能解明において蛋白質-蛋白質間相互作用(PPI)情報は必須であるが、細胞内における少数の蛋白質分子のPPI検出は不可能であった。Nucleic Acids Programmable Protein Assay(NAPPA)は、蛋白質分子数を標準化できるインタラクトーム技術であり、従来のDNAアレイと同様に構築できる。この技術により、細胞内における少数分子であるTFをクエリに用いたPPIネットワークを構築し、1545PPIを検出した(TF同士の相互作用190)。免疫沈降-質量分析法で検出された結果(888PPI、TF同士の相互作用は41)と NAPPAの比較では、22PPI(TF同士の相互作用は2)が両技術で検出された。酵母ツーハイブリッド法の結果(4PPI、TF同士の相互作用は1)と他の二つの方法の結果との比較では、重なりがなかった。このことからNAPPA によるPPI検出は、免疫沈降-質量分析法、酵母ツーハイブリッド法と補完関係にあることが示された。
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NAPPAによるPPI検出は、免疫沈降-質量分析法、酵母ツーハイブリッド法とどのような関係にあることが示されましたか?
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NAPPAによるPPI検出は、免疫沈降-質量分析法、酵母ツーハイブリッド法と補完関係にあることが示されました。
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JCRRAG_001578
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生物学
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核相交代
核内の染色体のセット数が父親と母親から受け継がれた2セットである場合は複相(2n, diploid phase)、染色体のセット数が1セットである場合は単相(1n, haploid phase)と呼ばれ、これらの染色体セット数の構成状態を核(nuclear phase)という。そして、有性生殖に伴い単相と複相が交互に現れる現象のことを核相交代(alternation of nuclear phases)と呼ぶ。なお、複相あるいは複相の細胞や個体のことを二倍体、単相あるいは単相の細胞や体のことを半数体または一倍体と呼ぶことがある。
世代交代
生活環の中で異なる繁殖様式を示す生物体が交代することを世代交代(alternation of generations)と呼ぶ。ここでいう世代(generation)は同時期に出生した一群の個体という意味ではなく、繁殖様式で区別される生物体という意味である。なお、本稿で世代は多細胞個体を想定するが、ヒビミドロ目のコディオルム体のように長期にわたり生存、成長する特徴的な細胞は単細胞でも世代と呼ばれることがある。なお、これら世代の生活様式は主に光合成による独立栄養生活が想定されるが果胞子体(後述)のような寄生生活の場合もある。
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核相交代とは何ですか?
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核相交代とは、有性生殖に伴い単相と複相が交互に現れる現象のことを指します。
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JCRRAG_001579
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生物学
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本研究に用いた標本は採集時に漁業者によって締められており,後頭部に切り込みがある.体は細く延長し,頭は縦扁する.体背縁は吻端から第1背鰭起部まで緩やかに上昇し,そこから尾柄部に向かって緩やかに下降する.第1背鰭は躯幹部のほぼ中央に位置し,上端が鈍い三角形.後縁部は緩やかに湾曲し,後部が細く尖り伸長する.第2背鰭は第1背鰭よりはるかに小さく,上端が円みを帯びる低い三角形.第2背鰭は尾鰭前尾部のほぼ真ん中に位置し,後部が細く顕著に伸長する.第1,2背鰭間に弱い隆起線がある.腹鰭は第1,2背鰭間の中央直下に位置し,交接器と総排泄孔を挟むように隣接する.腹鰭は小さく鈍い三角形で,側面からみた大きさは臀鰭と同程度.腹鰭後端は伸長しない.臀鰭起部は第2背鰭起部の直下に位置する.臀鰭後端はわずかに伸長し,後縁は湾入する.尾柄は細長く,その側面と背面には明瞭な隆起線がない.尾鰭上葉と下葉の起点直前にV字状の顕著な尾柄欠刻がある.尾鰭は二叉形で,上葉は下葉に比べて著しく長い.尾鰭の先端は尖り,下葉は上葉と比べてやや鈍い.尾鰭上葉先端部付近の欠刻は顕著で,その直上に小さな突出部がある.下葉は小さく,側面から見た大きさは腹鰭よりやや大きい.胸鰭基底前端は第5鰓裂直下に位置する.胸鰭は後方へ緩やかにカーブする三角形で,先端はやや尖り,弱い鎌状を示す.胸鰭後端は第1背鰭起点直下を越える.総排泄孔は尾鰭を除いた体部の後方1/3に位置する.クラスパーは未発達で柔らかく,その後端は腹鰭後端を越えない.
体全体が楯鱗に覆われるが,各鰭の基底後端は無鱗.吻部は先端がやや尖り,鼻孔より前方で左右に急に細くなる.鼻は吻部腹面にあり,口前部の前方1/2に位置する.鼻孔は1対で,三角形の鼻弁によりそれぞれ前鼻孔と後鼻孔に分けられる.前鼻孔の外縁は吻部の側縁とほぼ接する.眼は丸く,口裂先端直上に位置する.眼の前下縁に瞬膜を備え,瞬膜の基部には楯鱗がない.ロレンチーニ器官は吻部腹面前部に多数並び,口裂の外側と眼の下方にかけて列状に分布する.噴水孔はない.口は頭部腹面にあり,眼の直下に位置する.口裂は弓状に強く湾曲する.舌は幅広く,前縁が丸い.舌の前端は浅く切れ込む.口蓋部と舌の表面は楯鱗に覆われる.唇褶はきわめて小さく,上下が後端で癒合する.6列目の上顎歯は小さく尖る三角形で,主咬頭と2つの遠心副咬頭を有する.主咬頭は遠心側に傾き,切縁には鋸歯がある.副咬頭は小さく三角形に尖り,近心側の副咬頭の近心縁には鋸歯がある.上顎歯は片側でおよそ13列並ぶ.3列目の下顎歯は咬頭の下部のみが幅広く,先端が鋭く尖る三角形で,副咬頭はない.片側でおよそ11列並ぶ.鰓裂は頭部側面に5対並び,いずれも鰓裂上端が眼上端直下を越えない.
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第1背鰭はどこに位置しますか?
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第1背鰭は躯幹部のほぼ中央に位置します。
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JCRRAG_001580
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生物学
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スミツキザメ Carcharhinus tjutjot (Bleeker, 1852)は,最大全長が1.2mほどになるメジロザメ科魚類である(青沼ほか,2013;小枝,2018).本種はインド・太平洋域に分布し,国内では京都府以西の日本海沿岸,和歌山県以西の太平洋沿岸,琉球列島,および小笠原諸島より報告されている(White, 2012;中島田・日比野,2022;本村,2025).
今回,2023年10月に大阪湾からスミツキザメの1標本が得られた.これまで大阪湾および大阪府から本種の報告はなく,標本に基づく初記録となるためここに報告する.
材料と方法
計測部位および方法は,岸本ほか(2006)にしたがい,投影法を用いて,ノギスを使用して1mm単位まで計測した.左体側の上顎歯(前から6列目)を抜歯し,その形態を観察した.色彩の記載は生鮮時に撮影したカラー写真と目視観察に基づく.ただし,本標本は1年ほど冷凍保存されていたことから,採集時と比べて褪色が若干進んでいる可能性がある.記載個体は10%中性ホルマリンで固定され70%エタノールに置換後,大阪府立自然史博物館(OMNH)に登録・保管されている.
標本 OMNH-P52741,全長657mm,雄,大阪府泉南郡岬町沖,小型底びき網(板びき網),2023年10月12日,中出浩徳.
記載 全長に対する体各部の割合(%)は以下のとおり:尾鰭前長71.5;頭長22.9;躯幹部長27.0;尾部長23.4;総排泄孔前長49.3;体高14.3;尾柄高3.3;吻長7.1;口前吻長7.4;眼窩径1.6;第1鰓裂長2.5;両眼間隔8.3;鼻孔間隔4.5;口幅7.0;第1背鰭長14.6;第1背鰭高7.7;第2背鰭長8.5;第2背鰭高2.2;胸鰭長14.3;腹鰭長8.5;臀鰭長8.2;臀鰭高3.1;尾鰭上葉長25.4;尾鰭下葉長10.0;交接器長4.8
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2023年10月に大阪湾から得られたものは何の1標本ですか?
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2023年10月に大阪湾から得られたものはスミツキザメの1標本です。
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JCRRAG_001581
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生物学
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本研究に用いた標本は採集時に漁業者によって締められており,後頭部に切り込みがある.体は細く延長し,頭は縦扁する.体背縁は吻端から第1背鰭起部まで緩やかに上昇し,そこから尾柄部に向かって緩やかに下降する.第1背鰭は躯幹部のほぼ中央に位置し,上端が鈍い三角形.後縁部は緩やかに湾曲し,後部が細く尖り伸長する.第2背鰭は第1背鰭よりはるかに小さく,上端が円みを帯びる低い三角形.第2背鰭は尾鰭前尾部のほぼ真ん中に位置し,後部が細く顕著に伸長する.第1,2背鰭間に弱い隆起線がある.腹鰭は第1,2背鰭間の中央直下に位置し,交接器と総排泄孔を挟むように隣接する.腹鰭は小さく鈍い三角形で,側面からみた大きさは臀鰭と同程度.腹鰭後端は伸長しない.臀鰭起部は第2背鰭起部の直下に位置する.臀鰭後端はわずかに伸長し,後縁は湾入する.尾柄は細長く,その側面と背面には明瞭な隆起線がない.尾鰭上葉と下葉の起点直前にV字状の顕著な尾柄欠刻がある.尾鰭は二叉形で,上葉は下葉に比べて著しく長い.尾鰭の先端は尖り,下葉は上葉と比べてやや鈍い.尾鰭上葉先端部付近の欠刻は顕著で,その直上に小さな突出部がある.下葉は小さく,側面から見た大きさは腹鰭よりやや大きい.胸鰭基底前端は第5鰓裂直下に位置する.胸鰭は後方へ緩やかにカーブする三角形で,先端はやや尖り,弱い鎌状を示す.胸鰭後端は第1背鰭起点直下を越える.総排泄孔は尾鰭を除いた体部の後方1/3に位置する.クラスパーは未発達で柔らかく,その後端は腹鰭後端を越えない.
体全体が楯鱗に覆われるが,各鰭の基底後端は無鱗.吻部は先端がやや尖り,鼻孔より前方で左右に急に細くなる.鼻は吻部腹面にあり,口前部の前方1/2に位置する.鼻孔は1対で,三角形の鼻弁によりそれぞれ前鼻孔と後鼻孔に分けられる.前鼻孔の外縁は吻部の側縁とほぼ接する.眼は丸く,口裂先端直上に位置する.眼の前下縁に瞬膜を備え,瞬膜の基部には楯鱗がない.ロレンチーニ器官は吻部腹面前部に多数並び,口裂の外側と眼の下方にかけて列状に分布する.噴水孔はない.口は頭部腹面にあり,眼の直下に位置する.口裂は弓状に強く湾曲する.舌は幅広く,前縁が丸い.舌の前端は浅く切れ込む.口蓋部と舌の表面は楯鱗に覆われる.唇褶はきわめて小さく,上下が後端で癒合する.6列目の上顎歯は小さく尖る三角形で,主咬頭と2つの遠心副咬頭を有する.主咬頭は遠心側に傾き,切縁には鋸歯がある.副咬頭は小さく三角形に尖り,近心側の副咬頭の近心縁には鋸歯がある.上顎歯は片側でおよそ13列並ぶ.3列目の下顎歯は咬頭の下部のみが幅広く,先端が鋭く尖る三角形で,副咬頭はない.片側でおよそ11列並ぶ.鰓裂は頭部側面に5対並び,いずれも鰓裂上端が眼上端直下を越えない.
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本研究に用いられた標本は採集時に誰によって締められていますか?
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本研究に用いられた標本は採集時に漁業者によって締められています。
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JCRRAG_001582
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生物学
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真核生物の遺伝子は、主にRNAポリメラーゼII(PolII)によって転写され、複数の基本転写因子(Transcription Factor; TFIIB, TFIID, TFIIF, TFIIE, TFIIH)がその制御を担っている。基本転写因子は、転写開始段階までに遺伝子のプロモーター領域にPolIIをリクルートすることで、転写開始前複合体(Preinitiation complex; PIC)を形成する。その後、二本鎖DNAの開裂とRNA合成が始まり、転写は伸長段階へと移行する。近年の電子顕微鏡を用いた研究から、転写開始前複合体の構造が低分解能で明らかになった。これまでに我々は、ヒト基本転写因子TFIIE複合体の結晶構造を2.1オングストロームの分解能で決定している。一方、古細菌の基本転写因子はTBP, TFB, TFE(TFIIEオルソログタンパク質)の3つのみが保存されており、古細菌の転写装置はよりシンプルな構成であると捉えることができる。そのため、古細菌のTFEの立体構造を明らかにし、ヒトのTFIIE複合体と比較することで、分子進化の過程で保存された機能的に重要な構造の理解につながることが期待される。本研究では、TFIIE複合体およびそのオルソログにおいてヒトから古細菌まで保存された分子メカニズムを理解することを目的とし、古細菌のTFEの結晶構造を決定した。
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真核生物の遺伝子の転写の制御を担う基本転写因子は何ですか。
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真核生物の遺伝子の転写の制御を担う基本転写因子はTFIIB、TFIID、TFIIF、TFIIE、TFIIHです。
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JCRRAG_001583
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生物学
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クリハラリスの繁殖生態についてはいくつか報告がある。まず、クリハラリスでは妊娠個体が一年中確認されており、周年繁殖することが知られている(Tamura 1999;安田ほか 2012)。時期は地域によって異なるが、繁殖期には二回のピークがあり、国内では妊娠率が冬季に低下し、春や夏に上昇することも明らかになっている。妊娠期間と泌乳期間はそれぞれ約48日と約50日である(Tamura and Terauchi 1994)。性成熟については情報が多くないが、1歳前後で性成熟することが報告されている(Tamura and Terauchi 1994;田村2004)。他のリス科哺乳類においても一般的には1歳前後で繁殖を開始するため(McAdam et al. 2007)、性成熟については他のリス類と同様の傾向を示すと予想される。性成熟後は、約40日の周期で発情周期が回っている(Tamura and Terauchi 1994)。また、一度の出産で1-4頭の仔を産み、多くは2頭である(Tamura 1999;安田ほか 2012)。
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国内で妊娠率が低下するのはいつですか?
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国内で妊娠率が低下するのは、冬季です。
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JCRRAG_001584
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生物学
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スミツキザメ Carcharhinus tjutjot (Bleeker, 1852)は,最大全長が1.2mほどになるメジロザメ科魚類である(青沼ほか,2013;小枝,2018).本種はインド・太平洋域に分布し,国内では京都府以西の日本海沿岸,和歌山県以西の太平洋沿岸,琉球列島,および小笠原諸島より報告されている(White, 2012;中島田・日比野,2022;本村,2025).
今回,2023年10月に大阪湾からスミツキザメの1標本が得られた.これまで大阪湾および大阪府から本種の報告はなく,標本に基づく初記録となるためここに報告する.
材料と方法
計測部位および方法は,岸本ほか(2006)にしたがい,投影法を用いて,ノギスを使用して1mm単位まで計測した.左体側の上顎歯(前から6列目)を抜歯し,その形態を観察した.色彩の記載は生鮮時に撮影したカラー写真と目視観察に基づく.ただし,本標本は1年ほど冷凍保存されていたことから,採集時と比べて褪色が若干進んでいる可能性がある.記載個体は10%中性ホルマリンで固定され70%エタノールに置換後,大阪府立自然史博物館(OMNH)に登録・保管されている.
標本 OMNH-P52741,全長657mm,雄,大阪府泉南郡岬町沖,小型底びき網(板びき網),2023年10月12日,中出浩徳.
記載 全長に対する体各部の割合(%)は以下のとおり:尾鰭前長71.5;頭長22.9;躯幹部長27.0;尾部長23.4;総排泄孔前長49.3;体高14.3;尾柄高3.3;吻長7.1;口前吻長7.4;眼窩径1.6;第1鰓裂長2.5;両眼間隔8.3;鼻孔間隔4.5;口幅7.0;第1背鰭長14.6;第1背鰭高7.7;第2背鰭長8.5;第2背鰭高2.2;胸鰭長14.3;腹鰭長8.5;臀鰭長8.2;臀鰭高3.1;尾鰭上葉長25.4;尾鰭下葉長10.0;交接器長4.8
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これまでスミツキザメの報告がなかったのはどこですか?
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これまでスミツキザメの報告がなかったのは大阪湾および大阪府です。
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JCRRAG_001585
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生物学
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生物的防除とは、病原菌や害虫の天敵となる微生物や昆虫類、性フェロモン等を用いて病害虫の防除を行う方法である。意図的な外来昆虫の移入である生物的防除は、その効果について古くから研究されている。外来植物の生物的防除は、原産地におけるスペシャリストの天敵を導入し、外来植物だけを食害させることで、外来植物が在来植物に比べて生育が不利になるというメカニズムを応用した外来植物の防除法である(Julien and Griffiths 1998)。しかしながら、意に反して在来生態系に思いもよらない影響を与えることがしばしばある。標的の外来植物だけでなく在来植物にも被害が及ぶことを“non-target effect”と呼ばれており(本稿では非標的効果と呼ぶ)、数ある事例についてはこれまでの総説を参考にされたい(Louda et al. 2003; Noonburg and Byers 2005)。非標的効果は、直接効果だけでなく、生物間相互作用や食物網を通じて、間接的に影響を及ぼす場合もある(Louda et al. 2003)。その中で見かけの競争は、導入した天敵が標的の外来植物に対しては弱い効果しかないため外来植物の個体群がある一定数維持され、天敵の昆虫の個体数が外来植物上で増加し、在来植物に強い影響をもたらす場合に起こることが報告されている(McEvoy and Coombs 1999; Holt and Hochberg 2001)。最も有名な研究例は、Loudaらによる一連の研究だろう。彼らはユーラシア原産で北米に侵入したジャコウアザミCarduus nutans L.の増殖を抑制するために導入されたゾウムシRhinocyllus conicusが、北米在来のアザミも食害することを報告した(Louda et al. 1997)。その後、単に食害するだけではなく、ジャコウアザミが近くにいるとより食害されるという見かけの競争が明らかになった(Rand et al. 2004; Russel et al. 2007)。非標的効果についてレビューした最近の論文によると、導入前の厳正な試験等によって、こうした外来昆虫が在来植物に個体群レベルで及ぼす負の影響は1%にも満たないことも分かっている(Suckling and Sforza 2014; Hinz et al. 2020)。しかし、直接的に負の影響を与えなくても、食物網を介して間接的に負の影響を与えることは多くの形で起こっていることが想像に難くない。
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外来昆虫が在来植物に個体群レベルで及ぼす負の影響はどれくらいですか?
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外来昆虫が在来植物に個体群レベルで及ぼす負の影響は、1%にも満たないです。
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JCRRAG_001586
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生物学
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生物的防除とは、病原菌や害虫の天敵となる微生物や昆虫類、性フェロモン等を用いて病害虫の防除を行う方法である。意図的な外来昆虫の移入である生物的防除は、その効果について古くから研究されている。外来植物の生物的防除は、原産地におけるスペシャリストの天敵を導入し、外来植物だけを食害させることで、外来植物が在来植物に比べて生育が不利になるというメカニズムを応用した外来植物の防除法である(Julien and Griffiths 1998)。しかしながら、意に反して在来生態系に思いもよらない影響を与えることがしばしばある。標的の外来植物だけでなく在来植物にも被害が及ぶことを“non-target effect”と呼ばれており(本稿では非標的効果と呼ぶ)、数ある事例についてはこれまでの総説を参考にされたい(Louda et al. 2003; Noonburg and Byers 2005)。非標的効果は、直接効果だけでなく、生物間相互作用や食物網を通じて、間接的に影響を及ぼす場合もある(Louda et al. 2003)。その中で見かけの競争は、導入した天敵が標的の外来植物に対しては弱い効果しかないため外来植物の個体群がある一定数維持され、天敵の昆虫の個体数が外来植物上で増加し、在来植物に強い影響をもたらす場合に起こることが報告されている(McEvoy and Coombs 1999; Holt and Hochberg 2001)。最も有名な研究例は、Loudaらによる一連の研究だろう。彼らはユーラシア原産で北米に侵入したジャコウアザミCarduus nutans L.の増殖を抑制するために導入されたゾウムシRhinocyllus conicusが、北米在来のアザミも食害することを報告した(Louda et al. 1997)。その後、単に食害するだけではなく、ジャコウアザミが近くにいるとより食害されるという見かけの競争が明らかになった(Rand et al. 2004; Russel et al. 2007)。非標的効果についてレビューした最近の論文によると、導入前の厳正な試験等によって、こうした外来昆虫が在来植物に個体群レベルで及ぼす負の影響は1%にも満たないことも分かっている(Suckling and Sforza 2014; Hinz et al. 2020)。しかし、直接的に負の影響を与えなくても、食物網を介して間接的に負の影響を与えることは多くの形で起こっていることが想像に難くない。
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ジャコウアザミはどこ原産でどこに侵入しましたか?
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ジャコウアザミはユーラシア原産で北米に侵入しました。
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JCRRAG_001587
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生物学
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進化生物学者のグールド(Stephen Jay Gould, 1941-2002)は、形質の進化を駆動する要因を自然選択(functional)、系統的な制約(historical)、物理的な制約(structural)の三要素に大別した(Gould 2002)。さらに彼は、これら三要素を頂点に描く三角形を‟aptive triangle”と名付け、生物の形質が取りうる範囲を表現した(図1)。つまり生物の形質には自然選択による最適化の指向とともに、祖先形質を受け継ぐことによる系統的な制約、物理法則による制約が作用しており、それぞれの要素の重みは種ごとに異なると考えたのである。生物の形態や運動は自然選択をほとんど必要とせず、物理法則(特に力学に言及)に従った結果として形成される場合もあるため、生物を力学的に洞察する重要性が唱えられた(Gould 2002)。
生物の形態や運動を力学的に分析する学問はバイオメカニクス(Biomechanics)と呼ばれる。バイオメカニクスによって生物の形態や運動を研究することは、それ自体に生物現象の解明という生物学的な意義がある。また、生物の行動は小さな動きの積み重ねであり、力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動は、捕食や逃避の成功率、エネルギー収支を介して繁殖成績および適応度にまで影響し得る。そのため、バイオメカニクスは力学的な洞察によって生命現象を解明することによって生態についても理解を深める学問である(Alexander 2002)。
テイラーとトーマスは、バイオメカニクスが形態や運動が有する機能と制約の相互作用を調べることを可能にし、生物の進化を研究する有効なアプローチであると主張している(Taylor and Thomas 2014)。つまり、機能と制約の相互作用を力学と数学に基づいて定量的に評価することで、グールドが提案した抽象的な三角形を具象化できると考えたのだ(Taylor and Thomas 2014)。こうした考えに基づいて彼らは、進化バイオメカニクス(evolutionary biomechanics)という新しい学問分野を提唱した(Taylor and Thomas 2014)。
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力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動は、何や何の成功率にまで影響し得ますか?
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力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動は、捕食や逃避の成功率、エネルギー収支を介して繁殖成績および適応度にまで影響し得ます。
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JCRRAG_001588
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生物学
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実験は,前述の一時的な曝露実験で薬剤耐性を獲得しなかったミジンコ,S. kingiおよびD. magnaを用いた。
まず,S. kingiを亜致死レベルのPBに15世代にわたり継続的に曝露すると,その親から産まれた幼体は元のクローンの3倍程度の薬剤耐性を獲得するが,曝露初期(5世代目まで)では逆に感受性が高い幼体を産出した。この結果から,曝露初期段階ではS. kingi個体群への影響が強く現れ,継続的にPBが水中に残存し続けると,薬剤耐性を持つことが確認された。一方,ガイドライン種であるオオミジンコ(D. magna)は15世代にわたる継続的なピリミカーブ曝露で薬剤耐性を獲得したが,曝露初期(5世代目まで)の段階において,親個体よりも感受性が高くなる前述のS. kingiと同じ現象は確認されなかった。
生物によっては薬物に強くなるまでに十数世代ほどの時間がかかる点(健全な幼体の産仔まで2週間かかるとして,10世代で8か月程度)を考慮すると,私の疑問であった「実環境中において水生生物は薬剤耐性を獲得するため,ガイドライン試験データだけでは,薬剤影響は過大評価されているのではないか?」は半分不正解ということになる。一方,迅速に薬剤耐性を獲得できなかったミジンコ種も長期薬剤曝露により,薬剤耐性を獲得することが分かった。野外では農薬以外にも様々なストレス要因が化学物質感受性の変化に関与している。例えば,少量の餌を与えたミジンコは,多量給餌したものと比べて,薬剤耐性を獲得しやすいという報告もある。また,ミジンコのフェンバレレート(ピレスロイド系殺虫剤)への感受性(半数影響濃度,EC₅₀値)と生息地水中の電気伝導度(総イオン濃度の指標)が相関を示した報告もあることから,薬剤に対する感受性を変化させる要因は薬剤の継続的な曝露だけとは限らない。
これらのことを考慮すると,単一化学物質の曝露実験では,水生生物の薬剤耐性獲得能は過少評価されている可能性もある。野外環境中における薬剤耐性獲得メカニズムのさらなる解明のため,複数ストレスの存在下における多世代影響について,調査が必要と考えている。
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15世代にわたる断続的なピリミカーブ曝露をされることでオオミジンコはどうなりましたか?
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15世代にわたる断続的なピリミカーブ曝露をされることで、オオミジンコは薬剤耐性を獲得しました。ただし5世代目までの曝露初期の段階においては、S. kingiのように親個体よりも感受性が高くなることはありませんでした。
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JCRRAG_001589
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生物学
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進化生物学者のグールド(Stephen Jay Gould, 1941-2002)は、形質の進化を駆動する要因を自然選択(functional)、系統的な制約(historical)、物理的な制約(structural)の三要素に大別した(Gould 2002)。さらに彼は、これら三要素を頂点に描く三角形を‟aptive triangle”と名付け、生物の形質が取りうる範囲を表現した(図1)。つまり生物の形質には自然選択による最適化の指向とともに、祖先形質を受け継ぐことによる系統的な制約、物理法則による制約が作用しており、それぞれの要素の重みは種ごとに異なると考えたのである。生物の形態や運動は自然選択をほとんど必要とせず、物理法則(特に力学に言及)に従った結果として形成される場合もあるため、生物を力学的に洞察する重要性が唱えられた(Gould 2002)。
生物の形態や運動を力学的に分析する学問はバイオメカニクス(Biomechanics)と呼ばれる。バイオメカニクスによって生物の形態や運動を研究することは、それ自体に生物現象の解明という生物学的な意義がある。また、生物の行動は小さな動きの積み重ねであり、力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動は、捕食や逃避の成功率、エネルギー収支を介して繁殖成績および適応度にまで影響し得る。そのため、バイオメカニクスは力学的な洞察によって生命現象を解明することによって生態についても理解を深める学問である(Alexander 2002)。
テイラーとトーマスは、バイオメカニクスが形態や運動が有する機能と制約の相互作用を調べることを可能にし、生物の進化を研究する有効なアプローチであると主張している(Taylor and Thomas 2014)。つまり、機能と制約の相互作用を力学と数学に基づいて定量的に評価することで、グールドが提案した抽象的な三角形を具象化できると考えたのだ(Taylor and Thomas 2014)。こうした考えに基づいて彼らは、進化バイオメカニクス(evolutionary biomechanics)という新しい学問分野を提唱した(Taylor and Thomas 2014)。
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形質の進化を駆動する要因を自然選択、系統的な制約、物理的な制約の三要素に大別したのは、何学者の誰ですか?
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形質の進化を駆動する要因を自然選択、系統的な制約、物理的な制約の三要素に大別したのは、進化生物学者のグールドです。
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JCRRAG_001590
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生物学
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実験は,前述の一時的な曝露実験で薬剤耐性を獲得しなかったミジンコ,S. kingiおよびD. magnaを用いた。
まず,S. kingiを亜致死レベルのPBに15世代にわたり継続的に曝露すると,その親から産まれた幼体は元のクローンの3倍程度の薬剤耐性を獲得するが,曝露初期(5世代目まで)では逆に感受性が高い幼体を産出した。この結果から,曝露初期段階ではS. kingi個体群への影響が強く現れ,継続的にPBが水中に残存し続けると,薬剤耐性を持つことが確認された。一方,ガイドライン種であるオオミジンコ(D. magna)は15世代にわたる継続的なピリミカーブ曝露で薬剤耐性を獲得したが,曝露初期(5世代目まで)の段階において,親個体よりも感受性が高くなる前述のS. kingiと同じ現象は確認されなかった。
生物によっては薬物に強くなるまでに十数世代ほどの時間がかかる点(健全な幼体の産仔まで2週間かかるとして,10世代で8か月程度)を考慮すると,私の疑問であった「実環境中において水生生物は薬剤耐性を獲得するため,ガイドライン試験データだけでは,薬剤影響は過大評価されているのではないか?」は半分不正解ということになる。一方,迅速に薬剤耐性を獲得できなかったミジンコ種も長期薬剤曝露により,薬剤耐性を獲得することが分かった。野外では農薬以外にも様々なストレス要因が化学物質感受性の変化に関与している。例えば,少量の餌を与えたミジンコは,多量給餌したものと比べて,薬剤耐性を獲得しやすいという報告もある。また,ミジンコのフェンバレレート(ピレスロイド系殺虫剤)への感受性(半数影響濃度,EC₅₀値)と生息地水中の電気伝導度(総イオン濃度の指標)が相関を示した報告もあることから,薬剤に対する感受性を変化させる要因は薬剤の継続的な曝露だけとは限らない。
これらのことを考慮すると,単一化学物質の曝露実験では,水生生物の薬剤耐性獲得能は過少評価されている可能性もある。野外環境中における薬剤耐性獲得メカニズムのさらなる解明のため,複数ストレスの存在下における多世代影響について,調査が必要と考えている。
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一時的な曝露実験では薬剤耐性を獲得しなかったミジンコは何および何ですか?
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一時的な曝露実験では薬剤耐性を獲得しなかったミジンコは、S. kingiおよびD. magnaです。
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JCRRAG_001591
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生物学
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本研究の目的は分子数標準化インタラクトーム技術による細胞内少数分子、特に転写因子(以下 TF)の隠れた相互作用の探索である。生物は少数成分で重要な働きを制御すると考えられ、その機能解析は生物学の進展に不可欠である。蛋白質の機能解明において蛋白質-蛋白質間相互作用(PPI)情報は必須であるが、細胞内における少数の蛋白質分子のPPI検出は不可能であった。Nucleic Acids Programmable Protein Assay(NAPPA)は、蛋白質分子数を標準化できるインタラクトーム技術であり、従来のDNAアレイと同様に構築できる。この技術により、細胞内における少数分子であるTFをクエリに用いたPPIネットワークを構築し、1545PPIを検出した(TF同士の相互作用190)。免疫沈降-質量分析法で検出された結果(888PPI、TF同士の相互作用は41)と NAPPAの比較では、22PPI(TF同士の相互作用は2)が両技術で検出された。酵母ツーハイブリッド法の結果(4PPI、TF同士の相互作用は1)と他の二つの方法の結果との比較では、重なりがなかった。このことからNAPPA によるPPI検出は、免疫沈降-質量分析法、酵母ツーハイブリッド法と補完関係にあることが示された。
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本研究の目的は何による、何の隠れた相互作用の探索ですか?
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本研究の目的は、分子数標準化インタラクトーム技術による、細胞内少数分子、特に転写因子の隠れた相互作用の探索です。
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JCRRAG_001592
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生物学
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進化生物学者のグールド(Stephen Jay Gould, 1941-2002)は、形質の進化を駆動する要因を自然選択(functional)、系統的な制約(historical)、物理的な制約(structural)の三要素に大別した(Gould 2002)。さらに彼は、これら三要素を頂点に描く三角形を‟aptive triangle”と名付け、生物の形質が取りうる範囲を表現した(図1)。つまり生物の形質には自然選択による最適化の指向とともに、祖先形質を受け継ぐことによる系統的な制約、物理法則による制約が作用しており、それぞれの要素の重みは種ごとに異なると考えたのである。生物の形態や運動は自然選択をほとんど必要とせず、物理法則(特に力学に言及)に従った結果として形成される場合もあるため、生物を力学的に洞察する重要性が唱えられた(Gould 2002)。
生物の形態や運動を力学的に分析する学問はバイオメカニクス(Biomechanics)と呼ばれる。バイオメカニクスによって生物の形態や運動を研究することは、それ自体に生物現象の解明という生物学的な意義がある。また、生物の行動は小さな動きの積み重ねであり、力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動は、捕食や逃避の成功率、エネルギー収支を介して繁殖成績および適応度にまで影響し得る。そのため、バイオメカニクスは力学的な洞察によって生命現象を解明することによって生態についても理解を深める学問である(Alexander 2002)。
テイラーとトーマスは、バイオメカニクスが形態や運動が有する機能と制約の相互作用を調べることを可能にし、生物の進化を研究する有効なアプローチであると主張している(Taylor and Thomas 2014)。つまり、機能と制約の相互作用を力学と数学に基づいて定量的に評価することで、グールドが提案した抽象的な三角形を具象化できると考えたのだ(Taylor and Thomas 2014)。こうした考えに基づいて彼らは、進化バイオメカニクス(evolutionary biomechanics)という新しい学問分野を提唱した(Taylor and Thomas 2014)。
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誰と誰が、バイオメカニクスが形態や運動が有する機能と制約の相互作用を調べることを可能にし、生物の進化を研究する有効なアプローチであると主張していますか。
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テイラーとトーマスが、バイオメカニクスが形態や運動が有する機能と制約の相互作用を調べることを可能にし、生物の進化を研究する有効なアプローチであると主張しています。
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JCRRAG_001593
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生物学
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昆虫の外部形態には、形状やサイズにしばしば雌雄差が見られる。例えば、雌との交尾機会を巡って雄同士が闘争を行う種では、雄は発達した武器形質を持つ。また、派手な装飾を持つ種の雄では、より派手な装飾の方が雌から好まれる。また、昆虫ではしばしば脚の形態にも雌雄差が見られ、雄の脚が太く発達した種や、雄の前脚が長く発達している種が知られている。これらの種の雄の発達した脚は、雄間闘争や雌に対する求愛において使用されると考えられている。また、雄だけではなく、雌においても脚は重要であり、雄からの性的嫌がらせに対して雌がしばしば脚を用いて抵抗することも知られている。このように、昆虫の脚は、雌雄を問わず繁殖において重要な役割を持つ。しかしながら、脚の形態に焦点を当てた研究は、雄の角のような武器や派手な装飾と比べると、数少ないままである。筆者らは、本特集と同じ題目で、第 67 回日本生態学会名古屋大会(2020 年)にて自由集会を企画し、昆虫の脚と繁殖の関係について紹介する予定であった。残念ながら、その自由集会は中止となったが、そこで紹介する予定だった研究内容を本特集でまとめ、昆虫の雄の脚が繁殖に与える影響について議論したい。
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発達した武器形質を持つ雄はどのような種類の昆虫に見られますか?
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発達した武器形質を持つ雄は、雌との交尾機会を巡って雄同士が闘争を行う種類の昆虫に見られます。
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JCRRAG_001594
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生物学
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本研究の目的は分子数標準化インタラクトーム技術による細胞内少数分子、特に転写因子(以下 TF)の隠れた相互作用の探索である。生物は少数成分で重要な働きを制御すると考えられ、その機能解析は生物学の進展に不可欠である。蛋白質の機能解明において蛋白質-蛋白質間相互作用(PPI)情報は必須であるが、細胞内における少数の蛋白質分子のPPI検出は不可能であった。Nucleic Acids Programmable Protein Assay(NAPPA)は、蛋白質分子数を標準化できるインタラクトーム技術であり、従来のDNAアレイと同様に構築できる。この技術により、細胞内における少数分子であるTFをクエリに用いたPPIネットワークを構築し、1545PPIを検出した(TF同士の相互作用190)。免疫沈降-質量分析法で検出された結果(888PPI、TF同士の相互作用は41)と NAPPAの比較では、22PPI(TF同士の相互作用は2)が両技術で検出された。酵母ツーハイブリッド法の結果(4PPI、TF同士の相互作用は1)と他の二つの方法の結果との比較では、重なりがなかった。このことからNAPPA によるPPI検出は、免疫沈降-質量分析法、酵母ツーハイブリッド法と補完関係にあることが示された。
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何の何において、蛋白質-蛋白質間相互作用(PPI)情報が必須ですか?
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蛋白質の機能解明において、蛋白質-蛋白質間相互作用(PPI)情報が必須です。
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JCRRAG_001595
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生物学
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昆虫の外部形態には、形状やサイズにしばしば雌雄差が見られる。例えば、雌との交尾機会を巡って雄同士が闘争を行う種では、雄は発達した武器形質を持つ。また、派手な装飾を持つ種の雄では、より派手な装飾の方が雌から好まれる。また、昆虫ではしばしば脚の形態にも雌雄差が見られ、雄の脚が太く発達した種や、雄の前脚が長く発達している種が知られている。これらの種の雄の発達した脚は、雄間闘争や雌に対する求愛において使用されると考えられている。また、雄だけではなく、雌においても脚は重要であり、雄からの性的嫌がらせに対して雌がしばしば脚を用いて抵抗することも知られている。このように、昆虫の脚は、雌雄を問わず繁殖において重要な役割を持つ。しかしながら、脚の形態に焦点を当てた研究は、雄の角のような武器や派手な装飾と比べると、数少ないままである。筆者らは、本特集と同じ題目で、第 67 回日本生態学会名古屋大会(2020 年)にて自由集会を企画し、昆虫の脚と繁殖の関係について紹介する予定であった。残念ながら、その自由集会は中止となったが、そこで紹介する予定だった研究内容を本特集でまとめ、昆虫の雄の脚が繁殖に与える影響について議論したい。
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派手な装飾を持つ種類の昆虫では、どのような雄が雌に好まれますか?
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派手な装飾を持つ種類の昆虫では、より派手な装飾を持つ雄が雌に好まれます。
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JCRRAG_001596
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生物学
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核相交代
核内の染色体のセット数が父親と母親から受け継がれた2セットである場合は複相(2n, diploid phase)、染色体のセット数が1セットである場合は単相(1n, haploid phase)と呼ばれ、これらの染色体セット数の構成状態を核(nuclear phase)という。そして、有性生殖に伴い単相と複相が交互に現れる現象のことを核相交代(alternation of nuclear phases)と呼ぶ。なお、複相あるいは複相の細胞や個体のことを二倍体、単相あるいは単相の細胞や体のことを半数体または一倍体と呼ぶことがある。
世代交代
生活環の中で異なる繁殖様式を示す生物体が交代することを世代交代(alternation of generations)と呼ぶ。ここでいう世代(generation)は同時期に出生した一群の個体という意味ではなく、繁殖様式で区別される生物体という意味である。なお、本稿で世代は多細胞個体を想定するが、ヒビミドロ目のコディオルム体のように長期にわたり生存、成長する特徴的な細胞は単細胞でも世代と呼ばれることがある。なお、これら世代の生活様式は主に光合成による独立栄養生活が想定されるが果胞子体(後述)のような寄生生活の場合もある。
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二倍体とは何ですか?
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二倍体とは、複相あるいは複相の細胞や個体のことです。
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JCRRAG_001597
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生物学
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核相交代
核内の染色体のセット数が父親と母親から受け継がれた2セットである場合は複相(2n, diploid phase)、染色体のセット数が1セットである場合は単相(1n, haploid phase)と呼ばれ、これらの染色体セット数の構成状態を核(nuclear phase)という。そして、有性生殖に伴い単相と複相が交互に現れる現象のことを核相交代(alternation of nuclear phases)と呼ぶ。なお、複相あるいは複相の細胞や個体のことを二倍体、単相あるいは単相の細胞や体のことを半数体または一倍体と呼ぶことがある。
世代交代
生活環の中で異なる繁殖様式を示す生物体が交代することを世代交代(alternation of generations)と呼ぶ。ここでいう世代(generation)は同時期に出生した一群の個体という意味ではなく、繁殖様式で区別される生物体という意味である。なお、本稿で世代は多細胞個体を想定するが、ヒビミドロ目のコディオルム体のように長期にわたり生存、成長する特徴的な細胞は単細胞でも世代と呼ばれることがある。なお、これら世代の生活様式は主に光合成による独立栄養生活が想定されるが果胞子体(後述)のような寄生生活の場合もある。
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世代交代とは、どこで異なる何を示す生物体が交代することを指しますか?
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世代交代とは、生活環の中で異なる繁殖様式を示す生物体が交代することを指します。
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JCRRAG_001598
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生物学
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核相交代
核内の染色体のセット数が父親と母親から受け継がれた2セットである場合は複相(2n, diploid phase)、染色体のセット数が1セットである場合は単相(1n, haploid phase)と呼ばれ、これらの染色体セット数の構成状態を核(nuclear phase)という。そして、有性生殖に伴い単相と複相が交互に現れる現象のことを核相交代(alternation of nuclear phases)と呼ぶ。なお、複相あるいは複相の細胞や個体のことを二倍体、単相あるいは単相の細胞や体のことを半数体または一倍体と呼ぶことがある。
世代交代
生活環の中で異なる繁殖様式を示す生物体が交代することを世代交代(alternation of generations)と呼ぶ。ここでいう世代(generation)は同時期に出生した一群の個体という意味ではなく、繁殖様式で区別される生物体という意味である。なお、本稿で世代は多細胞個体を想定するが、ヒビミドロ目のコディオルム体のように長期にわたり生存、成長する特徴的な細胞は単細胞でも世代と呼ばれることがある。なお、これら世代の生活様式は主に光合成による独立栄養生活が想定されるが果胞子体(後述)のような寄生生活の場合もある。
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半数体あるいは一倍体と呼ばれるものは、どのようなものですか。
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半数体あるいは一倍体と呼ばれるものは、単相あるいは単相の細胞や個体のものです。
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JCRRAG_001599
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生物学
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老化細胞では、老化関連分泌表現型(SASP)遺伝子群の活性化などの転写制御を反映する特異的な3次元ゲノム構造が形成される。しかし、細胞老化に伴うゲノム構造の再編成の機序は未解決である。そこで、その機序を解明するためにヒト胎児肺由来のIMR-90細胞を用いて同調的に細胞老化を誘導できる培養細胞株を構築した。この細胞株とStable Isotope Labeling by Amino acids in Cell culture(SILAC)法を組み合わせて、老化細胞と増殖細胞において核に含まれるタンパク質を質量分析により定量的に比較した。その結果、約2000種類の核内タンパク質の細胞老化に伴う継的な変化が明らかになった。同時に行った、次世代シーケンサーを用いた3'-RNA-seq解析によるmRNAの定量解析との相関も含め、本発表では、細胞老化に伴うゲノム構造の再編成に関与するタンパク質とその作用機序の一端について議論する。
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3'-RNA-seq解析によるmRNAの定量解析には何が用いられますか?
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3'-RNA-seq解析によるmRNAの定量解析には、次世代シーケンサーが用いられます。
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JCRRAG_001600
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生物学
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老化細胞では、老化関連分泌表現型(SASP)遺伝子群の活性化などの転写制御を反映する特異的な3次元ゲノム構造が形成される。しかし、細胞老化に伴うゲノム構造の再編成の機序は未解決である。そこで、その機序を解明するためにヒト胎児肺由来のIMR-90細胞を用いて同調的に細胞老化を誘導できる培養細胞株を構築した。この細胞株とStable Isotope Labeling by Amino acids in Cell culture(SILAC)法を組み合わせて、老化細胞と増殖細胞において核に含まれるタンパク質を質量分析により定量的に比較した。その結果、約2000種類の核内タンパク質の細胞老化に伴う継的な変化が明らかになった。同時に行った、次世代シーケンサーを用いた3'-RNA-seq解析によるmRNAの定量解析との相関も含め、本発表では、細胞老化に伴うゲノム構造の再編成に関与するタンパク質とその作用機序の一端について議論する。
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老化細胞で形成されるのは何ですか?
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老化細胞で形成されるのは、老化関連分泌表現型(SASP)遺伝子群の活性化などの転写制御を反映する特異的な3次元ゲノム構造です。
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Subsets and Splits
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